JP5840054B2 - 複合材料、培養容器及び細胞培養器用仕切り部材 - Google Patents

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Description

本発明は、複合材料、培養容器及び細胞培養器用仕切り部材に関する。
生体環境下では、細胞の成長に、他の細胞から分泌(産生)されたタンパク質などの物質が関与していることが知られている。細胞を培養する場合には、このような生体環境に類似させて、他の細胞、即ちフィーダー細胞と共に目的細胞を培養することが行われている。特に、近年注目を集めている誘導性多能性幹細胞(iPS細胞)などの幹細胞では、一般に、未分化状態を維持しつつ培養するため、動物由来のフィーダー細胞との共培養が行われている。
しかしながら、目的細胞を利用する場合には、他の細胞と分離することが必要になるが、一旦、培養系に他の細胞を混在してしまうと、目的細胞の単離が困難なことが多い。細胞の状態に対して良好な培養を行うために、フィーダー細胞が産生する物質を単離し、精製して利用することも求められるが、このような産生物質を含有する専用の培養液の開発には時間がかかる。
このため、共培養下の細胞を分離するために、細胞が通過せず、タンパク質などの物質を透過する膜等の開発が行われている。例えば、特許文献1は、ポリ乳酸などのポリエステル類による所定の多孔質薄膜と、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル類による不織布とを含む複合膜を用いて、互いに異なる細胞群を仕切って細胞共培養することが開示されている。
一方、細胞に対する親和性の高さから、コラーゲンを利用した技術も細胞培養の分野では種々提案されている。例えば、特許文献2には、コラーゲン水溶液を凍結乾燥した多孔質コラーゲンシートが開示されている。また、特許文献3及び4並びに、非特許文献1には、コラーゲンを線維化させたコラーゲンゲルが開示されている。更には、非特許文献2には、コラーゲン水溶液を乾燥させた透明フィルムが開示されている。
特開2009−207430号公報 国際公開第2006/021992号パンフレット 特開2005−261292号公報 特開2007−297360号公報
組織培養、1998年、第13(1)巻、第26頁〜第30頁 J. Biol. Macromolecules, (1999) Vol.24, pp.337-340
フィーダー細胞と幹細胞などの目的細胞とでは、形態が異なることも多いため、光学顕微鏡などによる観察によって充分に目的細胞の状態を把握できる。しかしながら、細胞の分離を目的として用いられる分離膜や物質の透過のみを考慮したコラーゲンシートなどでは、細胞観察の容易性の観点まで考慮されていない。このため、上述したいずれの技術も、細胞の不透過及び物質の透過に加えて、観察に適した透明性をも有するものではない。
従って、本発明の目的は、細胞を通過させずに培養液成分などの物質を通過可能であると共に、細胞の観察に適した透明性をも有するコラーゲンゲル膜及びこれを用いた培養容器を提供することである。
本発明は以下のとおりである。
[1] 波長600nmでの吸光度が0.02以上0.1未満の線維化コラーゲンを含有し、かつ、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜と、孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料とを備えた複合材料。
] 前記架橋されたコラーゲン線維の架橋が、水溶性架橋剤によるものである[1]に記載の複合材料。
] 前記架橋されたコラーゲン線維におけるコラーゲンが、アルカリ処理又は酸処理コラーゲンである[1]又はに記載の複合材料。
] 前記架橋されたコラーゲン線維におけるコラーゲンが、該コラーゲン中の官能基が化学修飾された化学修飾コラーゲンである[1]〜[]のいずれかに記載の複合材料。
] 培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、
波長600nmでの吸光度が0.02以上0.1未満の線維化コラーゲンを含有し、かつ、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜と、を有する培養容器。
] 培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、前記溶液収容部に挿入されて前記培養領域を上下に仕切ると共に、下部開口が、[1]〜[]のいずれかに記載の複合材料で閉じられた筒状の仕切り部材とを有する培養容器。
] 前記仕切り部材の外周部には、前記溶液収容部の開口縁部に支持される支持部材が設けられている[]に記載の培養容器。
] 前記支持部材には、前記開口縁部に位置決めされる突起が設けられている[]に記載の培養容器。
] 前記[1]〜[]のいずれかに記載の複合材料と、前記複合材料の周囲を支持する支持部材と、を有する細胞培養用仕切り部材。
本発明によれば、細胞を通過させずに培養液成分などの物質を通過可能であると共に、細胞の観察に適した透明性をも有するコラーゲンゲル膜及びこれを用いた培養容器を提供することができる。
本発明の第一の実施形態にかかる培養容器の断面図である。 本発明の第二の実施形態にかかる培養容器の断面図である。 本発明の他の実施形態にかかる培養容器の斜視図である。 図3のA−A’断面図である。 本発明の実施例1にかかるコラーゲンゲル膜上で培養された細胞の光学顕微鏡写真像である。 本発明の実施例2にかかるコラーゲンゲル膜上で培養された細胞のSEM写真像である。 図6A枠内を拡大したSEM写真像である。 本発明の実施例3にかかるコラーゲン濃度が異なるコラーゲンゲル膜における透過性を確認したゲル写真である。 本発明の実施例6にかかるコラーゲンゲル膜上で培養されたiPS細胞の光学顕微鏡写真像である。 図8A枠内を拡大した光学顕微鏡写真像である。
本発明のコラーゲンゲル膜は、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜である。
本発明のコラーゲンゲル膜によれば、コラーゲンゲル膜に含まれるコラーゲンを、架橋されたコラーゲン線維とし、0.03質量%〜0.5質量%という濃度で含む2mm〜5mmの厚みのコラーゲンゲル膜とするので、培養時の細胞を通過させることなく培養液中の有用なタンパク質等の物質を通過させると共に、細胞を観察するには充分な透明性も備える。
本発明の複合材料は、前記コラーゲンゲル膜と、孔径20μm〜5000μmの孔を有する水溶性高分子材料とを備えた複合材料である。
本複合材料によれば、前記コラーゲンゲル膜を、孔径20μm〜5000μmの孔を有する前記水溶性高分子材料と共に備えているので、コラーゲンゲル膜を前記水溶性高分子材料で保持することができる。また水溶性高分子材料は孔径20μm〜5000μmの孔を有するので、コラーゲンゲル膜を水溶性高分子材料の表面に保持することが可能であり、コラーゲンゲル膜のゲル強度を補って取り扱いしやすくすることができ、また、コラーゲンゲル膜による物質の通過容易性、細胞を観察する際の十分な透明性を損なわない。これにより、前記コラーゲンゲル膜の作用を損なわずに取り扱い性を高めることができる。
また、本発明の培養容器は、培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、前記培養領域を上下に仕切る上記のコラーゲンゲル膜と、を有する培養容器である。
本発明の培養容器によれば、培養液を収容可能な溶液収容部の培養領域を、上述したコラーゲンゲル膜で上下に仕切っているので、コラーゲンゲル膜を挟んで培養領域が分かれている。コラーゲンゲル膜は、上記のとおり、細胞を通過させることなく培養液中の有用なタンパク質等の物質を通過させるので、溶液収容部に培養液を収容した場合には、コラーゲンゲル膜を挟んで培養液中の成分が通過して、溶液収容部全体に拡散可能である一方で、細胞はコラーゲンゲル膜を挟んでの移動が抑制される。また、コラーゲンゲル膜は、細胞を観察するには充分な透明性を有するので、培養領域の上下にそれぞれ配置する細胞の観察を妨げない。
この結果、共培養の場合には、それぞれの収容空間に細胞を配置させることにより、細胞の観察を行いながら共培養を行って、共培養後に容易に細胞を分離することができる。また、共培養に限らず、細胞培養後に細胞のみを分離して、細胞産生物質のみを含む培養液を容易に回収することができる。
また本発明の他の培養容器は、培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、前記溶液収容部に挿入されて前記培養領域を上下に仕切ると共に、下部開口が、上記コラーゲンゲル膜と孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料とを備えた複合材料で閉じられた筒状の仕切り部材とを有する培養容器である。
本培養容器によれば、前記溶液収容部に挿入されて前記培養領域を上下に仕切ると共に、下部開口が、上記コラーゲンゲル膜と孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料とを備えた複合材料で閉じられた筒状の仕切り部材を有するので、コラーゲンゲル膜を用いることによる上述した効果に加えて、培養領域におけるコラーゲンゲル膜の位置を調整することができる。例えば、コラーゲンゲル膜を溶液収容部から浮かせることができ、上下に仕切られたそれぞれの培養領域を所望の大きさに設定することができる。また、仕切り部材は溶液収容部に挿入可能となっているので、上下に仕切られた培養領域のそれぞれの細胞を播種する際に、仕切り部材を容易に取り外すことができ、操作しやすい。
本発明の細胞培養用仕切り部材は、前記複合材料と、該複合材料の周囲を支持する支持部材と、を有する細胞培養用仕切り部材である。
本細胞培養用仕切り部材によれば、前記複合材料の周囲を支持する支持部材により、前記複合材料の取り扱い性を更に向上させることができる。また、本細胞培養用仕切り部材は、支持部材により前記複合材料の周囲が保持されているので、他の、細胞培養用の培養容器における溶液収容部に組み込み可能となる。これにより、他の細胞培養用の培養容器の溶液収容部に前記複合材料を挿入して、前記溶液収容部における培養領域を簡便に仕切ることができる。その結果、本発明に係るコラーゲンゲル膜及び複合材料による利点を、他の培養容器についても享受することができる。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても本工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また、本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
また、本発明において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
以下、本発明について説明する。
[コラーゲンゲル膜]
本発明のコラーゲンゲル膜は、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜である。
本発明で用いられるコラーゲンは、その由来について特に限定されるものではないが、資源量およびコラーゲン収率の観点から脊椎動物の真皮に由来するコラーゲンが好ましく用いられる。中でも、BSE等の病原体を保有する可能性が家畜よりも潜在的に低い魚類真皮コラーゲン、例えば、鮭皮、サメ皮、マグロ皮、タラ皮、カレイ皮、スズキ皮、タイ皮等が用いられる。特に好ましくは、スズキ皮とタイ皮である。
脊椎動物の真皮に由来するコラーゲンはtype Iコラーゲンが主成分であり、type IIIコラーゲンが僅かに含まれる。Type Iコラーゲンのみを精製して用いても、コラーゲンゲル膜の機能は損なわれないため、このような精製物を本発明に使用してもよい。
脊椎動物の真皮からコラーゲンを製造する方法としては、酸処理もしくはアルカリ処理を用いてもよい。アルカリ処理を用いた場合、一部のアミノ酸が変質するが、コラーゲンゲル膜の機能は損なわれないため、このようなアルカリ処理物を本発明に使用することができる。
本発明におけるコラーゲンは、3本鎖螺旋構造のコラーゲン分子が会合して得られた線維状コラーゲンである。このようなコラーゲン線維は、例えば、Journal of Agricultural Good Chemistry, Vol.48, pp.2028-2032 (2000) に開示されている構造を有する。
線維化コラーゲンゲルの作製には、コラーゲン溶液に中性緩衝液を加えてコラーゲンの線維化を惹起させ、コラーゲン線維ネットワークから構成されるゲルを得るゲル化方法を挙げることができる。このようなコラーゲン線維は、線維化が充分に行われており、細胞培養用として充分な強度および柔軟性を有するものである。なお、線維化と同時にゲル化した場合には、線維化コラーゲン分子の長さが、線維化を充分に行ってから架橋したコラーゲン分子よりも短くなり、また、線維化とともに架橋反応をするため、コラーゲンゲル内のコラーゲン分子の数が増加し、この結果、その分コラーゲン分子間の架橋点が増える傾向がある。このため、コラーゲンゲル膜としての強度は高くなるが、コラーゲンゲルの網目構造がより緻密になり、物質透過性に劣る。線維化が充分であることは、吸光度に基づいて判断することができる。例えば、倒立顕微鏡「オリンパスTMT−2−21 RFM」で測定した値とする波長600nmの光に対する光路長2mmでの吸光度が0.02以上の場合には、線維化が充分であると判断できる。
コラーゲン線維を架橋する際に用いられる架橋剤としては、タンパク質を架橋できれば特に制限はないが、水溶性を有する水溶性架橋剤であることが好ましい。水溶性架橋剤によって架橋されたコラーゲン線維とすることによって、未反応の架橋剤を洗浄することができるなどの利点が得られる。中でも、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドなどのカルボジイミド系架橋剤、グルタルアルデヒドなどのアルデヒド系架橋剤、グリセロールジグリシジルエーテルやグリセロールトリグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのイソシアネート系架橋剤、およびトランスグルタミナーゼなどの酵素系架橋剤が、経済性、安全性および操作性の観点から好ましく用いられ、特に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩が、水溶性を示し、架橋時に生成する副生物を、水による洗浄作業で容易に除去することができるため、好ましい。
このようにして得られるコラーゲン線維は、ナノサイズの線維が互いに絡み合って構成されており、マイクロサイズの細胞は、コラーゲン線維の間への侵入が阻止される一方で、細胞よりもサイズの小さいタンパク質などの物質はコラーゲン線維の間に侵入し、通過可能である。この結果、細胞を通過させず物質を通過するという選択性をコラーゲンゲル膜は備えることができる。
コラーゲン線維の長さは、アミノ酸が約1000個連なったポリペプチド鎖3本が螺旋状に組み合わさった立体構造の観点から300nm程度であることが好ましい。コラーゲン繊維の長さが250nm〜350nmであれば、特有の構造を採りやすく、充分な強度を得ることができるため、好ましい。
コラーゲン線維を構成するコラーゲンは、細胞に対する生物学的応答性を調整する目的で、種々の生体高分子を結合したコラーゲンであってもよい。生物学的応答性を調整する方法としては、フィブロネクチンやビトロネクチン、ラミニン、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)配列を持つペプチドなど細胞接着のリガンドを結合させる方法を挙げることができる。
また、コラーゲン線維を構成するコラーゲンは、水溶性化合物に対する物理化学的応答性を調整する目的で、側鎖に対して種々の化学修飾が施されたコラーゲンであってもよい。物理化学的応答性を調整する方法としては、サクシニル化、メチル化あるいはミリスチル化によりコラーゲンの等電点や疎水性を調整する方法を挙げることができる。
コラーゲンに対する生体高分子の結合や側鎖への化学修飾は、コラーゲンの線維化又はコラーゲン線維の架橋化の前に行ってもよく、線維化の前後、又は架橋化の前後のいずれの段階で行ってもよい。化学修飾により線維化能が低下する場合、架橋化により化学修飾に利用するコラーゲン側鎖の官能基が現象する場合があるため、化学修飾は線維化の後及び架橋化の前に行うことが好ましい。
本発明のコラーゲンゲル膜におけるコラーゲン線維の含有量としては、コラーゲンゲル膜の全質量の0.03質量%〜0.5質量%である。0.03質量%未満では、細胞培養における細胞足場としてのゲルが形成されない。一方、0.5質量%を超えるとコラーゲン線維密度が高くなって透明性とタンパク質透過性に劣る。
コラーゲン線維の含有量は、強度とタンパク質の透過性の観点から、0.05質量%〜0.1質量%であることがより好ましい。
コラーゲンゲル膜は、コラーゲン線維を含むヒドロゲルである。ハイドロゲルに占める水(液状成分)の割合は、コラーゲンゲル膜の全質量に対して99.5〜99.95質量%であるのが好ましく、0.05〜0.1質量%であることが更に好ましい。ハイドロゲルに含まれる液状成分の割合がこの範囲であれば、細胞の観察を阻害することなく実用上十分なゲル層の強度が得られるため、好ましい。
液状成分は、コラーゲン線維を維持できる溶液に由来する成分であればよい。このような溶液としては、水、酸性溶液などを挙げることができる。
コラーゲンゲル膜の厚みは、2mm〜5mmである。2mm未満では強度が低下してゲルの形態が維持できない。一方、5mmを超えるとタンパク質の透過性が劣化する場合や、細胞観察時の焦点距離の調整が複雑になり、観察容易性に劣る。コラーゲンゲル膜の厚みは、強度と観察容易性の観点から2.5mm〜3.5mmであることが好ましい。
コラーゲンゲル膜の透明性については、例えば、吸光度に基づいて評価することができ、架橋されたコラーゲン線維が、波長600nmの光に対する光路長2mmでの吸光度が0.02以上0.1未満である線維化コラーゲンを含むコラーゲンゲル膜である。吸光度が0.1を超えると透明性が低下する場合があり、細胞の観察時において通常用いられる光学顕微鏡による観察に向かない。0.02未満では、コラーゲン線維が充分に線維化していない場合があり、ゲルの強度が充分でない場合がある。本発明におけるコラーゲンゲル膜の吸光度による透過性は、倒立顕微鏡「オリンパスTMT−2−21 RFM」で測定した値とする。なお、線維化コラーゲンと、線維化コラーゲンを架橋させたコラーゲンゲルとでは、吸光度について大きく変わらないため、線維化コラーゲンの吸光度をコラーゲンンゲル膜の吸光度としてもよい。
このようなコラーゲンゲル膜は、細胞に対する親和性も高く、各種の細胞を良好に成育させる。
コラーゲンゲル膜を有する培養系において培養可能な細胞としては特に制限はない。例えば、繊維芽細胞、筋芽細胞、骨芽細胞、神経細胞、血液細胞、リンパ球系細胞、肝細胞、胚性幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)等の細胞を挙げることができる。これらの細胞を組み合わせて共培養する場合には、繊維芽細胞と幹細胞(胚性幹細胞又は人工多能性幹細胞など)との組み合わせ、骨芽細胞と軟骨細胞との組み合わせなどを挙げることができる。
細胞に用いられる培養液としては、培養対象となる細胞の種類に応じて適宜選択することができる。使用可能な培養液としては、公知のもののいずれであってもよく、例えば、DMEM、MEM、F12、DME、RPMI1640、MCDB104、199、MCDB153、L15、SkBM、Basal培地などを挙げることができる。また、これらの培養液には、一般に添加可能な各種の成分、例えば、グルコース、FBS(ウシ胎仔血清)またはヒト血清、抗生物質(ペニシリン、ストレプトマイシンなど)を添加してもよい。なお、血清を添加する場合の濃度は、そのときの培養状態によって適宜変更することができるが、通常10%(v/v)とすることができる。
細胞の培養は、培養液中、コラーゲンゲル膜の存在下において行えばよい。細胞は、それぞれの性質に応じて、コラーゲンゲル膜に付着して又は付着せずに培養する。
なお、細胞の培養には、通常の培養条件、例えば37℃の温度で5%CO濃度のインキュベーター内での培養が適用される。
コラーゲンゲル膜は、細胞を通過させない一方で、培養液中の各種成分を透過することができる。このため、コラーゲンゲル膜を挟んで一方の領域に一の細胞を配置させ、他方の領域に他の細胞を配置させることによって、一の培養系において、複数の細胞の培養を行うことができる。このとき、コラーゲンゲル膜は適度な透明性も有しているので、コラーゲンゲル膜を挟んで複数の細胞が存在していても、それぞれの状態を観察することができる。
細胞の観察には、細胞の形態等の観察において通常用いられる方法を挙げることができ、例えば、目視、光学顕微鏡、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡等による観察を挙げることができる。
[複合材料]
本発明の複合材料は、上述した本発明のコラーゲンゲル膜と、孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料とを備えている。
本発明の複合材料は、上述したとおり、培養中の細胞を通過させずに物質を通過可能であると共に透明性に優れたコラーゲンゲル膜に加えて、孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料を備えているので、コラーゲンゲル膜のゲル強度を補い、取扱い性に優れた複合材料とすることができる。
本複合材料におけるコラーゲンゲル膜については、上述したコラーゲンゲル膜をそのまま適用することができる。
水不溶性高分子材料としては、孔径20μm〜5000μmの孔を構成可能であればよく、透明性の高いものであることが、細胞の観察容易性の観点から好ましい。
このような水不溶性高分子材料としては、ナイロン、PET等を挙げることができる。なかでも、観察容易性の観点から、透明であることが好ましい。
また水不溶性高分子材料の孔径は、20μm〜5000μmである。20μm未満ではタンパク質の透過性が劣る場合があり、一方、コラーゲンゲル膜を水不溶性高分子材料上に維持しやすく、また、タンパク質透過性、及びiPS細胞のコロニーサイズが100μm〜500μm程度であるために観察容易性の観点から5000μm以下である。また、コラーゲンゲル膜を水不溶性高分子材料の一面上により確実に保持可能にするという点で、3000μm以下、好ましくは2000μm未満の孔径を有する水不溶性高分子材料とすることが好ましく、一方、水不溶性高分子材料の両面にコラーゲンゲル膜を容易に形成可能とする点で、500μm超、好ましくは1000μm以上の孔径を有する水不溶性高分子材料とすることが好ましい。
なお、水不溶性高分子材料の孔径とは、孔の形状によって異なるが、孔の形状が円形の孔の場合にはその直径を意味し、楕円の場合には円の中心を通過する最大径を意味する。孔の形状が矩形又は多角形の場合には、矩形又は多角形の中心を通過する最大径の長さを意味する。
水不溶性高分子材料の形状としては、上述した孔径の孔が複数設けられていれば特に制限はなく、コラーゲンゲル膜と同一又は異なる形状に調整されたシート状、メッシュ状等を挙げることができる。タンパク質透過性及び観察容易性の観点からメッシュ状であることが好ましい。孔の形状についても特に制限はなく、矩形、円形、楕円などを挙げることができる。
水不溶性高分子膜材料とコラーゲンゲル膜との一体化は、従来公知の方法で一体化されていればよく、特に制限されない。例えば、水不溶性高分子材料とコラーゲンゲル膜とを押圧する方法や、水不溶性高分子材料上でコラーゲンゲル膜の線維化及び架橋を行う方法により一体化することができる。
コラーゲンゲル膜20を確実に保持する観点から、コラーゲンゲル膜20は水不溶性高分子材料の面上に配置されていることが好ましい。コラーゲンゲル膜を水溶性高分子材料面上に配置するには、対象となる面上にコラーゲンゲル膜を載置又は形成させればよい。
前記コラーゲンゲル膜は、水不溶性高分子材料の一面のみに配置されていてもよく、両面に配置されていてもよい。水不溶性高分子材料の一面のみに配置されている場合には、細胞を培養する面にコラーゲンゲル膜を配置していることが好ましい。水不溶性高分子材料の両面にコラーゲンゲル膜を有する複合材料は、例えば、水不溶性高分子材料の孔径を調整することにより作製することができる。
[培養容器]
次に、図面を参照して、本発明にかかる培養容器について説明する。
図1には、本発明の一実施形態にかかる培養容器10が記載されている。
培養容器10には、本発明における溶液収容部に相当し、所定の深さWを有する平底の円筒状のウェル12が複数(図示せず)設けられている。各ウェル12には、細胞培養時には、細胞培養のための培養液が注入される。
各ウェル12の内部は、深さWの細胞培養のための培養領域14となっており、付着性又は浮遊性の細胞を培養可能となっている。
培養容器10の材質としては、通常用いられている透明なものであれば特に制限なく挙げることができ、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、ポリスチレン、ポリカーボネートなど)、シリコーンなどを挙げることができる。また、ウェル12の底面には、細胞付着性を向上させる処理が付されているものであってもよい。
培養容器10の表面には、水不溶性高分子材料22が配置されており、水不溶性高分子材料22の一部は、ウェル12の内部に侵入し、ウェル12の培養領域14の中央やや下方となる位置に配置されている。ウェル12の内部となる水不溶性高分子材料22上には、上述したコラーゲンゲル膜20が載置されて、複合材料24を構成している。コラーゲンゲル膜20と水不溶性高分子材料22とは、予め一体化したものであってもよい。
各ウェル12の培養領域14は、コラーゲンゲル膜20によって上下に仕切られており、コラーゲンゲル膜20の下が第一の培養領域16となり、コラーゲンゲル膜20の上が第二の培養領域18となっている。
本実施形態の培養容器10の作用について、フィーダー細胞と、幹細胞などの付着性の目的細胞との共培養を例に説明する。
培養容器10は、複合材料24を取り外して培養液を各ウェル12に注入し、第一の培養領域16を得る。第一の培養領域16には、フィーダー細胞を播種する。次いで、複合材料24を、コラーゲンゲル膜20がウェル12の内部となるように載置し、培養液をコラーゲンゲル膜20よりも上方に液面がくるよう注入して、第二の培養領域18を確保した後に、目的細胞を第二の培養領域18に播種する。目的細胞は、第二の培養領域18において、コラーゲンゲル膜20上に付着する。
これにより、第一の培養領域16でフィーダー細胞を培養し、第二の培養領域18で目的細胞を培養することができる。
培養期間中では、第一の培養領域16と第二の培養領域18とのそれぞれに細胞が配置されている。ウェル12の内部では、培養液の成分及びフィーダー細胞から産生されたタンパク質等は、コラーゲンゲル膜20及び水不溶性高分子材料22を透過可能であるので、第一の培養領域16のみならず、複合材料24を通過して第二の培養領域18まで拡散可能となる。このため、第二の培養領域18で位置している目的細胞にも供給される。
また、第一の培養領域16及び第二の培養領域18のそれぞれに位置している細胞を観察する場合には、コラーゲンゲル膜20には透明性も備わっているため、複合材料24が介在していても、通常、光学顕微鏡を用いて焦点距離を合わせるだけで、簡便に観察することができる。
所定の培養期間後には、複合材料24のみを培養容器10から取り出せば、共培養下にあったフィーダー細胞と目的細胞とが簡便に分離される。その後、複合材料24上に存在していた目的細胞のみを単離すればよい。
このようにして、本実施形態の培養容器10を用いることによって、培養下にある複数に細胞を、細胞を通過させずに培養液成分などの物質を通過させて培養することができるともに、培養しながら細胞の観察も容易に行うことができる。
第一の実施形態では、複合材料24を取り外すことによって、第二の培養領域18で培養していた目的細胞を、簡便にフィーダー細胞から分離したが、これに限定されない。例えば、フィーダー細胞を第二の培養領域18で培養を行うことによって、第一の培養領域16及び第二の培養領域18に細胞産生物質が放出される。その後に、複合材料24をウェル12から取り出すことによって、培養系からフィーダー細胞を除去することができるので、フィーダー細胞から産生された物質を含有し、フィーダー細胞を含有しない培養上清を、簡便に回収することができる。
第一の実施形態にかかる培養容器10では、コラーゲンゲル膜20と水不溶性高分子材料22とで構成された複合材料24によって第一の培養領域16と第二の培養領域18を得たが、これに限定されない。
図2には、本発明の第二の実施形態にかかる培養容器30が記載されている。なお、培養容器30において、図1に示される第一の実施形態にかかる培養容器10と共通の部材には、同一の符合を付して説明を省略する。
培養容器30は、本発明における溶液収容部に相当し、培養領域14を形成する円形皿状の培養皿32と、培養皿32に挿入されて、培養領域14を上下に仕切る円筒状の仕切り部材34とで構成されている。
培養皿32は、第一の実施形態における培養容器10と同様に透明な素材であればいずれの材料で構成されていてもよい。このような材料としては、上述したものをそのまま挙げることができる。
仕切り部材34は、培養皿32よりも径の短い円筒で構成されており、上下方向に開口し、上部開口部36と下部開口部38とを備えている。下部開口部38は、上述した複合材料24で閉じられている。
また仕切り部材34の外周部には、同心円状の支持部材40が備えられ、仕切り部材34と一体化されている。これにより、仕切り部材34は、支持部材40によって培養皿32の縁部に支持されて、仕切り部材34の下部開口部38に配置された複合材料24は、培養皿32の底面から浮いた状態を維持している。
支持部材40の裏面には、培養皿32の縁部に支持部材40を位置決めさせる突起部42が、支持部材40及び仕切り部材34と同心円状で且つ、培養皿32の縁部より内側となる位置に設けられている。これにより、仕切り部材34は、培養皿32の上部に載置されたときに、所定の位置に配置されて培養皿32からの脱落が防止される。
次に、培養容器30の作用について、フィーダー細胞と目的細胞との共培養を例に説明する。
仕切り部材34を、支持部材40を操作して培養皿32から外し、培養皿32に、培養液を注入してフィーダー細胞を播種する。次いで、支持部材40を培養皿32の縁部に突起部42を合わせて位置決めしつつ載置すると、仕切り部材34の下部開口部38が培養液の液面よりも下方に配置される。このとき、培養皿32の培養領域14が仕切られて、仕切り部材34の内部であってコラーゲンゲル膜20よりも上方に、第二の培養領域18が得られる。この第二の培養領域18に目的細胞を播種して、共培養を開始する。
培養期間中では、第一の培養領域16で培養されているフィーダー細胞から産生された物質は、仕切り部材34の下部開口部38に備えられた複合材料24を通過して、第二の培養領域18で培養されている目的細胞へ供給される。
また、仕切り部材34には透明性も備わっているため、第一の培養領域16及び第二の培養領域18のそれぞれで培養している各細胞を、通常、光学顕微鏡を用いて焦点距離を合わせるだけで、簡便に観察することができる。
所定の培養期間後では、支持部材40を仕切り部材34と共に引き上げることによって、第二の培養領域18に配置された細胞を第一の培養領域16で培養しているフィーダー細部から容易に分離する。
このようにして、本実施形態の培養皿32を用いることによって、培養下にある複数に細胞を、細胞を通過させずに培養液成分などの物質を通過させて培養することができるともに、培養しながら細胞の観察もすることができる。
なお、本実施形態の培養容器30には、支持部材40の、培養皿32の縁部内側となる位置に突起部42を設けたが、これに限定されず、培養皿32の縁部外側であってもよい。また、突起部42は、支持部材40及び仕切り部材34と同心円状となるように設けたが、これに限定されず、支持部材40の表面の一部のみに一箇所又は複数箇所設けたものであってもよく、また突起部42はなくてもよい。
本実施形態の培養容器30では、支持部材40を、円筒状の仕切り部材34と同心円状となる円盤状としたが、これに限定されず、仕切り部材34を支持することができれば、矩形や、支持棒状などの形状であってもよい。
また、仕切り部材34の内部に複合材料24を挿入した形態としたが、これに限定されない。例えば、コラーゲンゲル膜20の側面が第一の培養領域16に直接接触する形態であってもよい。この場合には、コラーゲンゲル膜20の側面から、タンパク質などの物質が通過することができる。
本実施形態の培養容器30の支持部材40は、仕切り部材34と一体化したものとしたが、仕切り部材34における下部開口部38の位置を調整可能な調整機構を備えたものであってもよい。このような調整機構としては、所望の位置に下部開口部38を位置決め可能な複数の突起又は、ねじ機構を備えたものとしてもよい。
本実施形態の培養容器10、30では、コラーゲンゲル膜20と水不溶性高分子材料22とを備えた複合材料24を用いて、第一の培養領域16及び第二の培養領域18のそれぞれに細胞を播種して培養を行ったが、これに限定されない。
例えば、コラーゲンゲル膜20のみを用いて、コラーゲンゲル膜20の一方の面に細胞を播種して培養した後に、コラーゲンゲル膜20を反転させ、他方の面に対して別の細胞を播種することにより、コラーゲンゲル膜20上に複数の細胞を配置させて用いてもよい。
また、このようにして得られた両面に細胞が配置されたコラーゲンゲル膜20を、水不溶性高分子材料22上に、細胞が離れないように載置して、培養液中で複合材料24を構成してもよい。
本発明の実施形態にかかる培養容器10、30には、無菌培養を考慮して、それぞれ蓋を備えたものであってもよい。
また、培養容器10、30における複合材料24は、コラーゲンゲル膜20を水不溶性高分子材料22の一面にのみに有していたが、これに限定されない。例えば、コラーゲンゲル膜20が水不溶性高分子22の上面(おもて面)のみならず裏面に配置されていてもよい。
コラーゲンゲル膜20を水不溶性高分子22のおもて面と裏面の双方に配置させる方法としては特に制限はなく、水不溶性高分子22の両面にそれぞれコラーゲンゲル膜20を貼り合わせてもよい。
好ましくは、コラーゲンゲル膜20を構成するコラーゲンが通過可能な大きさの孔径を有する水不溶性高分子材料22上で、コラーゲンの線維化及び架橋を行うことにより、コラーゲンゲル膜20の両面に水不溶性高分子材料22を有する複合材料を得る。これにより、コラーゲンゲル膜20の両面に水不溶性高分子材料22を有する複合材料を簡便に得ることができる。
コラーゲンが通過可能な大きさの孔径としては、500μm〜5000μmであることが好ましく、1000μm〜5000μmであることがより好ましい。
水不溶性高分子材料22の両面に配置されるコラーゲンゲル膜20の厚みは、同一であってもよく異なっていてもよい。水不溶性高分子材料22のおもて面、即ち、第二の培養領域18に面した側のコラーゲンゲルと、裏面、即ち第一の培養領域16に面した側のコラーゲンゲルの厚みの比率は、例えば、裏面の厚みに対しておもて面の厚みを0.5倍〜3倍とすることができ、0.8倍〜2倍が好ましい。おもて面を厚くした場合には、位相差顕微鏡で観察するときにおもて面に培養した細胞に焦点が合わせやすく観察しやすい点で好ましい。おもて面を厚くする場合には、例えば、裏面の厚みに対して1倍を超え、3倍以下とすることができ、1.2倍〜2倍が好ましい。
[仕切り部材]
また、本発明にかかるコラーゲンゲル膜20及び水不溶性高分子材料22で構成される複合材料24は、市販のウェルプレートの各ウェルに挿入して、ウェルの培養領域を仕切ることができる仕切り部材の形態であってもよい。これにより、本発明の複合材料を市販の細胞培養用の培養プレートに簡便に適用することができる。
図3及び図4には、本発明に係る仕切り部材の一例としての、市販のウェルプレートの所定の深さWを有する各ウェルに挿入可能であると共に、水不溶性高分子材料22の両面にコラーゲンゲル膜20を有する仕切り部材50を示す。なお、図3及び図4の仕切り部材50において、図1に示される第一の実施形態にかかる培養容器10と共通の部材には、同一の符合を付して説明を省略する。
図3及び図4に示される仕切り部材50は、市販の6ウェルプレート60の各ウェル62に挿入可能な大きさの円筒の支持部52と、水不溶性高分子材料22及びコラーゲンゲル膜20で構成された複合材料56とを有している。支持部52は、支持部52の底面近傍に、複合材料56の周囲を支持して配置させている。
仕切り部材50における複合材料56は、水不溶性高分子材料22の両面にコラーゲンゲル膜20を備えている。この場合の水不溶性高分子材料22の孔径は、500μm〜5mm、例えば、2mmとすることができるが、前述のとおり、これに限定されない。また、コラーゲンゲル膜20の厚みは、例えば、全体として3mmであり、水不溶性高分子材料22の上面(おもて面)側に2mm、裏面側に1mmとすることができるが、前述のとおり、これに限定されず、上述した本発明におけるコラーゲンゲル膜について既述した範囲内であればよい。
仕切り部材50の下端部には、水不溶性高分子材料22が連結されている。水不溶性高分子材料22と仕切り部材50との連結方法については特に制限はなく、はめ込み、接着等を挙げることができる。
仕切り部材50の上端部は外周方向に延長して保持部54を構成している。保持部54は、仕切り部材50を各ウェル62に挿入したときにウェル62の端部に接触して、仕切り部材50をウェル62の内部に位置決めする。これにより、ウェル62の内部の培養領域が2つに仕切られ、第一の培養領域16と第二の培養領域18が形成される(図4参照)。
仕切り部材50の作用について説明する。
仕切り部材50を、市販のウェルプレート60のウェル62に、下端部をウェル62の底面に対向させて挿入すると、ウェル62内の培養領域14は、仕切り部材50の下端部に配置された複合材料56により、第一の培養領域16と第二の培養領域18とに仕切られる。
複合材料56には、水不溶性高分子材料22の両側にコラーゲンゲル膜20が配置されているので、コラーゲン膜の両面で培養することができる。
このように、仕切り部材50は、仕切り部材50を市販のウェルプレート60のウェル62に挿入することにより、本発明の他の実施形態に係る培養容器10、培養皿30と同様に、第一の培養領域16と第二の培養領域18とに培養領域14全体を簡便に仕切ることができる。これにより、それぞれの異なる種類の細胞の培養が可能となるなど、培養容器10、培養皿30と同様の効果を奏することができる。
仕切り部材50は、市販の6ウェルプレートの各ウェルに挿入可能な大きさ及び形状としたが、これに限定されない。仕切り部材52の大きさには特に制限はなく、市販の6ウェルプレート以外の他のプレート、例えば、24ウェルプレート等のウェルサイズに適合した形状及びサイズであってもよい。また、仕切り部材50は、1つのウェルに挿入可能な形状としたが、これに限定されない。例えば、2つ以上のウェルに適合する仕切り部材50を連結させたものであってもよい。これにより、ウェルプレート上の複数のウェルに対して同時に挿入可能となる。
なお、本実施形態における仕切り部材50では、水不溶性高分子材料22の両面にコラーゲンゲル膜20を備えた複合材料56を備えたものとしたが、これに限定されず、水不溶性高分子材料22のおもて面のみにコラーゲンゲル膜20を備えた複合材料24を有するものとしてもよい。また、水不溶性高分子材料22の両面にコラーゲンゲル膜20を備えた複合材料56は、前記培養容器10、30における複合材料24の代えて用いてもよい。
また、本実施形態における仕切り部材50では、支持部52の形状を円筒状としたが、これに限定されない。市販のウェルの形状に応じて矩形等であってもよい。また、支持部52の形状に応じて保持部54を支持部52の周囲に設けたが、これに限定されない。保持部54は、仕切り部材50をウェル62内の所定の位置に位置決め可能であれば、支持部52の上端部の一部のみに設けてもよい。
以下、本発明を実施例にて詳細に説明する。しかしながら、本発明はそれらに何ら限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
[実施例1]
<コラーゲンゲル膜を組み込んだ培養容器の作製>
豚皮由来アテロコラーゲン水溶液(濃度0.53%、pH3希塩酸溶媒、新田ゼラチン製)を、pH3希塩酸で10倍に希釈した。このコラーゲン溶液5mLに、pH7.0、30mMのリン酸緩衝液(200mM塩化ナトリウム含有)を45mL添加した。そのコラーゲン水溶液を、ポリスチレントレーに置いたカップ状培養容器(セルインサート、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に流し込んだ。カップ状培養容器は、事前に枠を残して底面のフィルムを剥がし、ナイロンメッシュ(孔径125μm)を接着剤で貼り付けた。流し込むコラーゲン水溶液の容量は、ナイロンメッシュ上に形成されるゲルの厚みが1mmになるように設定した。その後、37℃で24時間、湿度を与えながら加温してコラーゲンを線維化させた。100mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド水溶液を、カップに10ml加え、24時間静置してコラーゲン線維ゲルを架橋して、架橋されたコラーゲンゲル膜を得た(コラーゲン濃度:0.05質量%)。
<コラーゲンゲル膜の可視光透過実験>
上記で得られたコラーゲンゲル膜と同一濃度のコラーゲンゲルを、上記と同様にして、光路長2mmの石英セル内に作製した。倒立顕微鏡オリンパスTMT−2−21 RFMを使用し、分光光度計(Jasco社製、V-650)を用いて、波長600nmの可視光に対する吸光度を測定したところ、吸光度は0.02であった。
<コラーゲンゲル膜上での細胞培養>
市販の骨芽細胞株MC3T3−E1を、10%血清(Fetal Bovine Serum)を添加したMEMα改変型培地(以下α−MEMと略す)で培養した。2日おきに培地交換し、セミコンフルエントになったところで細胞を0.02%トリプシン−0.25%EDTA溶液で剥がして5×10cells/cmになるように継代培養した。
ゲル膜は6ウェルプレート(IWAKI製)に配置して、蒸留水に浸漬しながら、10kGyのガンマ線で滅菌した。ゲル膜の外側に5mlのリン酸緩衝液(PBS、pH7.3)を加えて、外側と内側の液面が平衡化したのち、そのPBSを取り除いて、この作業を3回繰り返して洗浄した。培養直前に外側にα−MEMを5ml添加して、培地を取り除き、再度α−MEMを5ml添加して37℃で1時間インキュベートした後、5×10cells/cmになるように細胞を播種した。α−MEMを培地として、3〜4日で培地を交換して、37℃、5%COインキュベーター中で培養した。
<ゲル膜上での細胞の接着と増殖>
培養を開始して3日目と7日目に、コラーゲンゲル膜上の細胞を位相差顕微鏡で観察した。細胞の観察は、OLYMPUS社製の光学顕微鏡TMT−2−21RENを用いた。3日目に細胞の接着と形状が明確に確認でき、7日間で増殖が確認できた(図5)。
[実施例2]
<コラーゲンゲルと細胞のSEM観察>
実施例1で得られ、7日間培養したコラーゲンゲル膜を、1mlのPBSで2回洗浄した。洗浄後、1mlの2.5%グルタルアルデヒド−PBS溶液に1時間浸漬し、細胞を固定した。固定後、1mlの蒸留水で2回洗浄した。エタノール濃度が50v/v%、60v/v%、70v/v%、80v/v%及び90v/v%の水溶液に、各10分ずつ順番に浸漬した。その後100v/v%エタノールに各15分ずつ3回浸漬し、水を完全に除去した。更にt−ブチルアルコールに3回各10分浸漬した後、凍結乾燥を行った。
その試料にイオンコーター(E−1020、HITACHI製)を用いて金を蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)用試料とした。SEM観察は、HITACHI製の走査型電子顕微鏡S−3200Nを用いた。ゲル膜は100nm程度のコラーゲン線維が絡み合い、架橋され、その膜状に細胞が接着しており、細胞がそのゲル膜を通過することはできないことが確認できた(図6A及び図6B)。
[実施例3]
<タンパク質の透過実験>
テラピア皮より抽出したコラーゲン水溶液(濃度1.0%、pH3希塩酸溶媒)を、0.05%、0.1%及び0.4%の最終コラーゲン濃度となるように、pH3希塩酸でそれぞれ希釈した。このコラーゲン溶液20mLに、pH7、30mMのリン酸緩衝液(300mM塩化ナトリウム含有)を20mL添加した。そのコラーゲン水溶液を、ポリスチレントレーに置いたカップ状培養容器(セルインサート、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に流し込んだ。カップ状培養容器は、事前に底面のフィルムを剥がし、ナイロンメッシュ(孔径125μm)を接着剤で貼り付けた。流し込むコラーゲン水溶液の容量は、ナイロンメッシュ上に形成されるゲルの厚みが3mmになるように設定した。その後、37℃で24時間、湿度を与えながら加温してコラーゲンを線維化させた。その後、100mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド水溶液を、カップに10ml加え、24時間静置してコラーゲン線維ゲルを架橋して、架橋されたコラーゲンゲル膜を得た。
得られたゲル膜をそれぞれ6ウェルプレートに配置した。ゲル膜の外側に2mlの0.2%血清アルブミン水溶液を加えた。ゲル膜を通過してゲル膜の内側に水溶液が透過し、内側に透過した水溶液が1mlに達したら採取して、15μlに濃縮した。濃縮液を電気泳動し、透過前の0.2%血清アルブミン水溶液とバンドを比較した。結果を図7に示す。なお、図7において、レーン1は0.2%アルブミン水溶液、レーン2は0.05%コラーゲン濃度のゲル、レーン3は0.1%コラーゲン濃度のゲル、レーン4は0.4%コラーゲン濃度のゲル、レーンMはマーカーをそれぞれ表す。
図7に示されるように、コラーゲン濃度0.05%〜0.4%のゲル膜であっても、ゲル膜を透過した溶液のタンパク質量は減少しているが、高分子量の血清成分を透過していることが確認できた。なお、高分子量の血清成分が確認できるため、低分子量の血清成分も透過していると確認できる。従って、本実施例のコラーゲンゲル膜は、低分子の血清分のみならず高分子の血清成分も充分な透過性を有していることがわかった。
[実施例4]
<ゲル膜の強度実験と液体の透過実験>
実施例2と同様にして、コラーゲン濃度0.025%、0.05%、0.1%及び0.5%であって、厚みが1mm、2mm、3mm及び4mmの各コラーゲンゲル膜を作製し、得られたゲル膜をそれぞれ6ウェルプレートに配置した。
ゲル膜の外側に5mlの水を加えて45分間後に、ゲル膜の内側に通過した水の液面の高さを観察した。強度及び透過度の評価は、以下のように行った。結果を表1に示す。
<強度>
○:取扱い時に破損しない。
△:取扱い時に若干の破損部が認められるが崩れることはない。
×:取扱い時に破損して崩れる。
<透過度>
○:外側と内側の液面が同じであった。
△:外側の液面より内側の液面の方が低かったが、外側から内側へ水の透過が認められた。
−:ゲルが破損して、透過度の測定ができなかった。
表1に示されるように、コラーゲン濃度が0.05%以上且つ厚みが2mm以上であれば、強度及び液体の透過性も充分であった。更に、コラーゲン濃度が0.1%以上であれば、2mmの厚みでも充分な強度のゲル膜を得ることができることがわかる。また、コラーゲン濃度が0.5%の場合には、4mmの厚みで水の透過が認められ、4mm未満の厚みであれば、水分が内部に充分に透過できることがわかった。なお、コラーゲン濃度0.5%且つコラーゲンゲルの厚みが4mmでは、外側と内側の液面が平衡化せずに、ゲル膜の一部の乾燥が認められるものの、水は内側へ透過しており、使用上、問題ないと判断できる。
一方、コラーゲン濃度がいずれの濃度であっても、コラーゲンゲルの厚みが1mmでは、ゲル膜が均一で作製できないうえに、外側の水で破損した。さらに、コラーゲンゲルの厚みで3mmであっても、コラーゲン濃度が0.025%ではゲルが破損して使用できないものであった。
[実施例5]
<線維化ゲル膜と未線維化ゲル膜の強度実験>
実施例2と同様にして、厚みが3mmのコラーゲン濃度0.05質量%、0.1質量%及び0.5質量%のコラーゲンゲル膜を作製し、得られたゲル膜をそれぞれ6ウェルプレートに配置した。ゲル膜の外側に5mlの水を加えて、45分間でゲル膜を通過して内側に水の液面の高さを観察した。一方、線維化しない(未線維化)ゲル膜(コラーゲン濃度0.05質量%)を作製し、同様に観察した。強度の評価は、次の通りである。○:破損しない、×:破損した。不可:ゲルが作製できず測定不可。結果を表2に示す。
表2に示されるように、線維化されたコラーゲンを用いたコラーゲンゲル膜では、0.05%〜0.5%の濃度のいずれにおいても、適度な強度のコラーゲンゲル膜であった。
これに対して、線維化されていないコラーゲンを用いたコラーゲンゲル膜では、0.05質量%ではゲル膜が作製できず、0.5質量%では架橋反応が早くて厚みが均一なゲル膜を作製できなかった。一方、コラーゲン濃度0.1質量%は、強度が不充分となり破損したことを確認した。
[実施例6]
<コラーゲンゲル膜を組み込んだ培養容器の作製>
豚皮由来アテロコラーゲン水溶液(濃度0.53%、pH3希塩酸溶媒、新田ゼラチン製)を、pH3希塩酸で10倍に希釈した。このコラーゲン溶液5mLに、pH7.0、30mMのリン酸緩衝液(200mM塩化ナトリウム含有)を45mL添加した。そのコラーゲン水溶液を、ポリスチレントレーに置いたカップ状培養容器(セルインサート、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社)に流し込んだ。カップ状培養容器は、事前に枠を残して底面のフィルムを剥がし、ナイロンメッシュ(孔径2mm)を接着剤で貼り付けた。
流し込むコラーゲン水溶液の容量は、ナイロンメッシュ上に形成されるゲルの厚みが3mmになるように設定した。その後、37℃で24時間、湿度を与えながら加温してコラーゲンを線維化させた。100mMの1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド水溶液を、カップに10ml加え、24時間静置してコラーゲン線維ゲルを架橋して、架橋されたコラーゲンゲル膜を得た(コラーゲン濃度:0.05質量%)。コラーゲン水溶液をカップ状培養容器に流し込むことによりコラーゲンがナイロンメッシュの孔から裏側に流れ出て、この状態で、線維化及び架橋化を行った。これにより、得られたカップ状培養容器では、ナイロンメッシュのおもて面側に2mm、ナイロンメッシュの裏面側に1mmの厚みでそれぞれコラーゲンゲル膜が形成された。
<フィーダー細胞(MEF:マウス胎仔線維芽細胞)の作製>
マウスフィーダー細胞(MEF、マウス胎仔線維芽細胞)を、保存容器から取り出し、37℃の湯浴で融解した。フィーダー細胞用の培地(10%ウシ胎児血清(FBS)及び1%グルタミン補填DMEM)を9ml入れた15mlの遠沈管に、前記フィーダー細胞を移し、ピペッティングで混和した。100×gで1分間遠心して、上清を取り除き、沈渣に1mlのフィーダー細胞用培地を添加した。
37℃、5%CO下で培養し、翌日、細胞の生着を確認し、市販の6ウェルプレート(IWAKI社)の各ウェルに播種して、iPS細胞の培養に用いた。
<iPS細胞の準備>
マウスiPS細胞(APS−00002)は、理化学研究所 バイオリソースセンターより購入した。
上記と同一のマウスフィーダー細胞(MEF、マウス胎仔線維芽細胞)上にiPS細胞を播種して、iPS培養用培地(15%FBS、0.1mM 非必須アミノ酸、0.1mM 2−メルカプトエタノール、及び1000U LIF(Leukemia Inhibitory Factor)を補填したDMEM)にて、3日間培養した。その後、iPS細胞の培地を取り除き、PBSを添加して洗浄した。
トリプシン/EDTA溶液を所定量添加して、フィーダー細胞を剥離して取り除き、フィーダー細胞除去後の培養物をその状態で更に2分間静置した。その後、iPS細胞が完全にフィーダー細胞から剥離したことを顕微鏡で観察した。次いで、iPS細胞のみを単離して、iPS培養用培地を添加した。iPS細胞を遠沈管に移し、ピペッティングを20回行い、単一細胞状態にし、100×gで1分間遠心して、上清を取り除いた。
遠心分離後の沈渣に1mlのフィーダー細胞用培地を添加して、iPS細胞を回収した。
<培養容器による培養>
上記で得られたカップ状培養容器を、フィーダー細胞を播種したウェル内に挿入した。次いで、カップ状培養容器のコラーゲンゲル膜上に、上記のようにして準備したiPS細胞を播種した。37℃、5%CO下で培養し、翌日、細胞の生着を確認し、毎日培地を交換した。観察は目視にて行った。
5日間分離培養した結果を図8A及び図8Bに示す。図8A及び図8Bに示されるように、カップ状培養容器にて培養したiPS細胞は、特有の球状の凝集体となっており、未分化能が維持されていることが確認できた。このような状態は従来法の共培養と同様の傾向である。
このように、本発明にかかるコラーゲンゲル膜を使用し、且つ、フィーダー細胞と分離した培養方法でも、従来法と同様に未分化能を維持した状態でiPS細胞を培養できることは明らかであった。
従って、本発明によれば、細胞を通過させずに培養液成分などの物質を通過可能であると共に、細胞の観察に適した透明性をも有するコラーゲンゲル膜と、これを用いたこれを用いた培養容器を提供することができる。
10 培養容器
12 ウェル(溶液収容部)
14 培養領域
16 第一の培養領域
18 第二の培養領域
20 コラーゲンゲル膜
22 水不溶性高分子材料
24 複合材料
30 培養容器
32 培養皿
34 仕切り部材
38 下部開口部
40 支持部材
42 突起部(突起)
50 仕切り部材
52 支持部
54 保持部
56 複合材料
60 市販のウェルプレート
62 ウェル

Claims (9)

  1. 波長600nmでの吸光度が0.02以上0.1未満の線維化コラーゲンを含有し、かつ、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜と、孔径20μm〜5000μmの孔を有する水不溶性高分子膜材料とを備えた複合材料。
  2. 前記架橋されたコラーゲン線維の架橋が、水溶性架橋剤によるものである請求項1に記載の複合材料。
  3. 前記架橋されたコラーゲン線維におけるコラーゲンが、アルカリ処理又は酸処理コラーゲンである請求項1又は請求項2に記載の複合材料。
  4. 前記架橋されたコラーゲン線維におけるコラーゲンが、該コラーゲン中の官能基が化学修飾された化学修飾コラーゲンである請求項1〜請求項のいずれか1項記載の複合材料。
  5. 培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、
    波長600nmでの吸光度が0.02以上0.1未満の線維化コラーゲンを含有し、かつ、架橋されたコラーゲン線維を0.03質量%〜0.5質量%含み、厚み2mm〜5mmであるコラーゲンゲル膜と、
    を有する培養容器。
  6. 培養液を収容して細胞を培養可能な培養領域となる溶液収容部と、
    前記溶液収容部に挿入されて前記培養領域を上下に仕切ると共に、下部開口が、請求項1〜請求項のいずれか1項記載の複合材料で閉じられた筒状の仕切り部材と
    を有する培養容器。
  7. 前記仕切り部材の外周部には、前記溶液収容部の開口縁部に支持される支持部材が設けられている請求項記載の培養容器。
  8. 前記支持部材には、前記開口縁部に位置決めされる突起が設けられている請求項記載の培養容器。
  9. 請求項1〜請求項のいずれか1項記載の複合材料と、
    前記複合材料の周囲を支持する支持部材と、
    を有する細胞培養器用仕切り部材。
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