JP2015065942A - 細胞培養担体および細胞培養容器 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】厚み方向に貫通する複数のマイクロポアを有する陽極酸化膜からなる細胞培養担体であって、複数のマイクロポアの平均密度は、1個/μm2以上15000個/μm2以下であり、平均開口率が51%以上である細胞培養担体。
【選択図】図1
Description
すなわち、本発明は、以下の構成の細胞培養担体および細胞培養容器を提供する。
複数のマイクロポアの平均密度は、1個/μm2以上15000個/μm2以下であり、
平均開口率が51%以上である細胞培養担体。
細胞が付着する表面が培養室内に位置し且つ表面から裏面まで細胞培養液で満たされるように配置される(1)〜(3)のいずれかに記載の細胞培養担体とを備える細胞培養容器。
細胞培養担体が、培養ウェルの底板部の少なくとも一部を構成し、
培養ウェルが、底板部が収容室内に位置するように配置され、培養室が複数のマイクロポアを介して収容室に連通する(4)に記載の細胞培養容器。
受容部が、側部に拡張部を支持する支持部を有する(6)に記載の細胞培養容器。
本発明の細胞培養担体は、厚み方向に貫通する複数のマイクロポアを有する陽極酸化膜からなる細胞培養担体であって、複数のマイクロポアの平均密度は、1個/μm2以上15000個/μm2以下であり、平均開口率が51%以上である細胞培養担体である。
次に、本発明の細胞培養担体について、図1を用いて説明する。
本発明の細胞培養担体1は、表面2から裏面3まで厚み方向Zに貫通する複数のマイクロポア4を有する。この複数のマイクロポア4は、表面側開口部5および裏面側開口部6を有し、表面側開口部5と裏面側開口部6とが厚み方向Zに真っすぐ延びる細胞培養担体1の内周面7により接続されている。すなわち、表面側開口部5の平均開口径Aと裏面側開口部6の平均開口径Bとが同じ値となるように形成されている。
本発明の細胞培養担体1においては、上述したように、細胞の生存率を大きく向上させるために、平均開口率が51%以上となるように複数のマイクロポア4を形成している。すなわち、細胞培養担体1が後述する細胞培養容器に配置された際に、細胞培養液が複数のマイクロポア4を介して表面2側および裏面3側に流通する流通量を大きく増加することができ、表面2上で培養される細胞の周囲に存在する細胞培養液を順次入れ換えることで、細胞の生存率を大きく向上させることができる。
なお、細胞培養担体の平均開口率は、複数のマイクロポアを流通する細胞培養液の流通量がさらに増加する理由から、58%以上がより好ましく、65%以上がさらに好ましい。また、細胞培養担体の平均開口率は、90%以下であることが好ましい。
例えば、本発明の細胞培養担体1は、図3に示すように、複数のマイクロポア4の表面側開口部5の平均開口径Aの値が裏面側開口部6の平均開口径Bの値より小さくなるように形成することができる。また、表面側開口部5と裏面側開口部6は、裏面側開口部6に向かって拡径するように滑らかに傾斜する細胞培養担体1の内周面7により互いに接続されている。これにより、複数のマイクロポア4は、表面側開口部5から裏面側開口部6に向かって平均直径が漸増する形状を有する。
また、本発明の細胞培養担体は、複数のマイクロポアが表面側開口部から裏面側開口部に向かって平均直径が段階的に増加または段階的に減少する形状を有することもできる。
また、開口部が表面2上で培養される細胞の増殖の妨げとならない理由から、図3に示すように、複数のマイクロポア4を表面側開口部5から裏面側開口部6に向かって平均直径が漸増する形状として、表面開口部5の平均開口径Aをより小さく形成することがさらに好ましい。
なお、図3および4に示すように、複数のマイクロポアを表面側開口部から裏面側開口部に向かって平均直径が増加または減少する形状とした場合には、複数のマイクロポアの表面側開口部の平均開口径Aおよび裏面側開口部の平均開口径Bのうち、小さい平均開口径が40nm以上80nm以下であることが好ましい。また、複数のマイクロポアの表面側開口部の平均開口径Aおよび裏面側開口部の平均開口径Bのうち、大きい平均開口径が65nm以上100nm以下であることが好ましい。
平均開口径の値を上記の範囲とすることで、細胞培養液が複数のマイクロポアを介して細胞培養担体の表面側および裏面側に流通する流通量をさらに増加させ、細胞の生存率をさらに向上させることができる。また、平均開口径の値を上記の範囲とすることで、細胞培養担体の表面上で培養される細胞の増殖が妨げられるのを抑制することができる。
ここで、平均密度は、表面写真(倍率20000倍)をFE−SEMにより撮影し、その1μm×1μmの視野に存在するマイクロポアの個数を数え、これにより求められる密度について1μm×1μmの視野の5箇所分の平均値を算出した値である。
また、複数のマイクロポアのアスペクト比(平均長さ/平均開口径)は、細胞培養液の流通量をより増加させる理由から、5000以下であることが好ましく、3000以下であることがより好ましく、2000以下であることがさらに好ましい。
平均開口径Aの値と平均開口径Bの値の比率を上記の範囲とすることで、複数のマイクロポアを介して表面側と裏面側との間でよりスムーズに細胞培養液を流通させることができ、細胞の生存率をさらに向上させることができる。
後述する各処理を施すアルミニウム基板については、特許文献1(特開2010−226975号公報)の[0010]〜[0012]段落に記載されたものを用いることができる。また、熱処理、脱脂処理、鏡面仕上げ処理についても、特許文献1(特開2010−226975号公報)の[0013]〜[0023]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
陽極酸化処理(A)は、アルミニウム基板を陽極酸化することにより、アルミニウム基板の表面にマイクロポアを有する酸化膜を形成する処理である。陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができるが、マイクロポアを高い規則性で配列させる観点から、自己規則化法や定電圧処理を用いるのが好ましい。
ここで、陽極酸化処理については、特許文献1(特開2010−226975号公報)の[0024]〜[0071]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
分離処理(B)は、上記陽極酸化処理(A)後にアルミニウム基板を除去し、陽極酸化膜をアルミニウム基板から分離する処理である。アルミニウム基板の除去には、例えば、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する処理液に、上記陽極酸化処理されたアルミニウム基板を接触させることにより、アルミニウム基板を除去した陽極酸化膜を得ることができる。
ここで、分離処理については、特許文献1(特開2010−226975号公報)の[0072]〜[0076]段落に記載された各処理と同様の処理を施すことができる。
貫通化処理(C)は、上記分離処理(B)により分離された陽極酸化膜のマイクロポアを貫通化させる処理である。この貫通化処理により、平均開口率が51%以上の細胞培養担体を得ることができる。
ここで、貫通化処理は、特許文献1に記載の貫通化処理(C)と比べて薄い濃度の酸水溶液またはアルカリ水溶液に長時間にわたって接触させることが好ましい。これにより、穏やかに貫通化処理が進行して、51%以上の平均開口率を確実に達成することができる。
貫通化処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は、51%以上の平均開口率をより確実に得られる理由から、0.1〜0.9質量%であるのが好ましい。同様の理由から、酸水溶液の温度は、15〜35℃であるのが好ましい。
貫通化処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は、51%以上の平均開口率をより確実に得られる理由から、0.01〜0.09質量%であるのが好ましい。同様の理由から、アルカリ水溶液の温度は、10〜30℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、5g/L、30℃のリン酸水溶液、0.2g/L、15℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.2g/L、15℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、51%以上の平均開口率をより確実に得られる理由から、121〜200分であるのが好ましく、130〜190分であるのがより好ましく、135〜180分であるのが更に好ましい。
また、上記分離処理の後であって上記貫通化処理の前、または、上記貫通化処理の後任意に、上記陽極酸化処理により形成した酸化皮膜を50℃以上の温度で少なくとも10分間加熱する加熱処理を施すこともできる。
開口拡大処理(D)は、上記貫通化処理により得られた陽極酸化膜の表面部分または裏面部分を、酸水溶液またはアルカリ水溶液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、0.5〜30分であるのが好ましく、1〜25分であるのがより好ましく、3〜20分であるのが更に好ましい。
本発明の細胞培養容器は、細胞培養液を収容する培養室を有する少なくとも1つの培養ウェルと、細胞が付着する表面が培養室内に位置し且つ表面から裏面まで細胞培養液で満たされるように配置される上述した細胞培養担体とを備える細胞培養容器である。
細胞培養容器21は、上端部が開放された円筒形状を有し、その内部に細胞培養液Mを収容する培養室22を有する培養ウェル23と、表面2および裏面3が培養室22内に位置するように配置された細胞培養担体1とを備える。培養室22内には、円筒形状の支持部24が配置されており、この支持部24が細胞培養担体1を下側から支持することにより、細胞培養担体1の裏面3と培養室22の底板部25との間に細胞培養液Mで満たされた隙間26が生じる。
また、一般的に、細胞培養では、細胞培養液Mが著しく劣化して細胞の生存率が大きく低下しないように、定期的に培養室22内の細胞培養液Mを交換する必要がある。本発明の細胞培養容器21では、培養室22側および収容室27側に流通する細胞培養液Mの流通量を増加させることにより培養室22内に収容された細胞培養液Mの劣化を抑制しているため、細胞培養液Mを交換する回数を減らすことができる。さらに、後述する細胞培養液の交換方法で示すように、細胞Cへの負荷を低減して細胞培養液Mを交換することができ、細胞の生存率の低下をさらに抑制することができる。
また、本発明の細胞培養容器で用いられる細胞培養液としては、培養される細胞の種別に応じて適宜調製されたものを使用することができる。
このように、培養室22内にピペットPを直接挿入しないため、細胞培養液Mを穏やかに交換することができる。
(1)電解研磨処理
高純度アルミニウム基板(住友軽金属株式会社製、純度99.999質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積でカットし、以下の組成の電解研磨液を用いて、電圧10V、液温度65℃の条件で電解研磨処理を行った。陰極はカーボン電極とし、電源は、GP−250−30R(株式会社高砂製作所社製)を用いた。
・85質量%リン酸(和光純薬工業株式会社製試薬) 1320mL
・純水 80mL
・硫酸 600mL
上記で得られた電解研磨処理後のサンプルに、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧を40.0V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で25分間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理を施した。この処理を4回繰り返した。
さらに、再陽極酸化処理条件として、0.5mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧41.7V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で15時間陽極酸化処理を施した。更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化膜を形成させた。
上記で得られた陽極酸化処理後のサンプルを、20質量%塩酸、および、0.1mol/L塩化第二銅の混合水溶液を用いて、10℃、20分間浸漬させることにより、アルミニウム基板を溶解して除去し、マイクロポアを有する陽極酸化膜からなる微細構造体を
作製した。
(4)貫通化処理
上記で得られた分離処理後のサンプルを、pH緩衝作用のあるKCl溶液に10分間浸漬させ、マイクロポア内部にKCl溶液を充分に進入させた。その後、バリア層側のみを0.01M−KOHに、15℃、140分間浸漬させることにより陽極酸化膜の底部を除去し、裏面開口径を拡大したマイクロポアを有する陽極酸化膜からなる細胞培養担体を作製した。
得られた開口形成拡大処理後の細胞培養担体についてそれぞれ5箇所の表面写真、裏面写真および断面写真(倍率20000倍)をFE−SEMにより撮影した。
平均開口径Aは、5箇所の表面写真について1μm×1μmの視野に存在する全てのマイクロポアの径を測定して、これらの平均値を算出することにより得られた。
平均開口径Bは、5箇所の裏面写真について1μm×1μmの視野に存在する全てのマイクロポアの径を測定して、これらの平均値を算出することにより得られた。
中心間距離は、5箇所の表面写真および5箇所の裏面写真について1μm×1μmの視野に存在する全てのマイクロポアの中心間距離を測定して、これらの平均値を算出することにより得られた。
なお、表面は陽極酸化処理においてマイクロポアの形成が開始された面、裏面は分離処理においてアルミニウム基板が除去された面を指す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:75nm、 ・裏面の平均開口径B:75nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
(5)滅菌処理
上記で得られた細胞培養担体をエタノールで5min超音波洗浄した後、オーブンで乾燥させ、滅菌処理を行った。
(6)細胞培養工程
滅菌後、室温に戻した細胞培養担体を用いて細胞の培養を行った。
(a)使用細胞:BAE(ウシ大動脈血管内皮細胞)
(b)使用培養液:Eagle最小培地、10%牛胎児血清
(c)前処理:高さ10mm、内径35mmのシャーレを準備し、厚み1mm、外径35mm、高さ5mmのポリスチレンで構成された円筒型の支持部をシャーレ内に設置した。その後、細胞培養液をシャーレ内に高さ8mmまで満たした後、細胞培養液中に細胞培養担体を沈めて支持部に設置した。さらに、細胞培養担体の表面上に、厚み1mm、外径10mm、高さ5mmのポリスチレンで構成された培養ウェル23の側部を設置した。
(d)細胞の播種:予め培養しておいた細胞をトリプシン処理で回収し、細胞濃度を40000cell/mLに調製した。培養ウェルの培養室内の培地を捨てた後、細胞数が7000cell/cm2となるように先程調整した細胞液を培養室内に播種した。
(e)培養:CO2インキュベーターを用いて37℃で3日間培養した。
実施例1の(4)貫通化処理において、0.01M−KOHの処理時間を150分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、細胞培養担体を作製して細胞培養を行った。以下に、細胞培養担体の形状を確認した結果を示す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:81nm、 ・裏面の平均開口径B:81nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
実施例1の(4)貫通化処理において、0.01M−KOHの処理時間を160分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、細胞培養担体を作製して細胞培養を行った。以下に、細胞培養担体の形状を確認した結果を示す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:90nm、 ・裏面の平均開口径B:90nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
実施例1の(4)貫通化処理において、0.01M−KOHの処理時間を170分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、細胞培養担体を作製して細胞培養を行った。以下に、細胞培養担体の形状を確認した結果を示す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:95nm、 ・裏面の平均開口径B:95nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
実施例2と同様の方法により細胞培養担体を作製した。続いて、細胞培養工程における使用細胞と使用培養液を以下に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法により、細胞培養を行った。
(a)使用細胞:ラット肝細胞
(b)使用培養液:DMEM培地
実施例2と同様の方法により細胞培養担体を作製した。続いて、細胞培養工程における使用細胞と使用培養液を以下に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法により、細胞培養を行った。
(a)使用細胞:HepG2細胞(ヒト胚芽腫由来細胞)
(b)使用培養液:ウィリアムズE培地、10%牛胎児血清
実施例2と同様の方法により細胞培養担体を作製した。続いて、細胞培養工程における使用細胞と使用培養液を以下に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法により、細胞培養を行った。
(a)使用細胞:HuH7細胞(ヒト肝ガン由来細胞)
(b)使用培養液:ウィリアムズE培地、10%牛胎児血清
実施例2と同様の方法により細胞培養担体を作製した。続いて、細胞培養工程における使用細胞と使用培養液を以下に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法により、細胞培養を行った。
(a)使用細胞:RIN−5F細胞(ラットランゲルハンス島由来細胞)
(b)使用培地:RPMI−1640培地、10%牛胎児血清
実施例2と同様の方法により細胞培養担体を作製した。続いて、細胞培養工程における使用細胞と使用培養液を以下に示すように変更した以外は、実施例2と同様の方法により、細胞培養を行った。
(a)使用細胞:129SV細胞(マウスES細胞)
(b)使用培地:ES細胞用培地
特許文献1の段落[0104]に記載されたメンブレン2の作製方法および段落[0127]に記載された比較例1の作製方法を参考にして、以下に示すように細胞培養担体の作製を行った。
(1)電解研磨処理
純度99.99質量%の高純度アルミニウム基板を用いた以外は、実施例1と同様の方法により電解研磨処理を行った。
上記で得られた電解研磨処理後のサンプルに、0.50mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧を40.0V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で2.5時間陽極酸化処理を施した。更に陽極酸化処理後のサンプルに、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理を施した。この処理を4回繰り返した。
さらに、再陽極酸化処理条件として、0.5mol/Lシュウ酸の電解液で、電圧41.7V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で10時間陽極酸化処理を施した。更に、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬させて脱膜処理を施すことにより、アルミニウム基板表面に、マイクロポアが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化膜を形成させた。
実施例1と同様の方法により分離処理を行った。
(4)貫通化処理
上記で得られた分離処理後のサンプルを、pH緩衝作用のあるKCl溶液に10分間浸漬させ、細孔内部にKCl溶液を充分に浸透させた。その後、バリア層側のみを0.1M−KOHに、30℃、4分間浸漬させることにより陽極酸化膜の底部を除去し、表面側開口部から裏面側開口部まで一様な直径のマイクロポアを有する陽極酸化膜からなる細胞培養担体を作製した。
なお、特許文献1の段落[0104]には、(4)アルミ除去、貫通化処理工程において、「バリア層側のみを0.1M−KOHに、30℃、45分間浸漬させることにより陽極酸化膜の底部を除去する」ことが記載されているが、撮影により確認された微細構造体の形状を得る(貫通孔の平均開口径が30nmなど)ためには、その処理時間は長すぎると考えられる。実際に、分離処理後のサンプルを0.1M−KOHに、30℃、45分間浸漬させた結果、そのほとんどが溶解されてしまった。このため、特許文献1の記載は、「0.1M−KOHに、30℃、4分間浸漬させる」などの誤記であると考えられる。
・細胞培養担体の厚さ: 100μm、 ・マイクロポアの深さ:100μm
・表面の平均開口径A:30nm、 ・裏面の平均開口径B:30nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
実施例1と同様の方法により細胞培養を行った。
実施例1の(4)貫通化処理において、0.1M−KOHの処理時間を5分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、細胞培養担体を作製して細胞培養を行った。以下に、細胞培養担体の形状を確認した結果を示す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:43nm、 ・裏面の平均開口径B:43nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
実施例1の(4)貫通化処理において、0.1M−KOHの処理時間を9分間とした以外は、実施例1と同様の方法により、細胞培養担体を作製して細胞培養を行った。以下に、細胞培養担体の形状を確認した結果を示す。
・細胞培養担体の厚さ: 150μm、 ・マイクロポアの深さ:150μm
・表面の平均開口径A:68nm、 ・裏面の平均開口径B:68nm
・マイクロポアの中心間距離:100nm
細胞生存率は、光学顕微鏡を用いて、100個の細胞を無作為に選択し、その選択された細胞の中で生存している細胞をカウントして算出した。細胞生存率が92.5%以上をA、90%以上92.5%未満をB、90%未満をCとした。この結果を下記第1表に示す。
また、異なる細胞腫を培養した実施例2、5〜9は、いずれも高い細胞生存率を示しており、細胞種によらずに細胞生存率を大きく向上できることがわかった。
Claims (8)
- 厚み方向に貫通する複数のマイクロポアを有する陽極酸化膜からなる細胞培養担体であって、
複数の前記マイクロポアの平均密度は、1個/μm2以上15000個/μm2以下であり、
平均開口率が51%以上である細胞培養担体。 - 複数の前記マイクロポアの平均開口径が、40nm以上100nm以下である請求項1に記載の細胞培養担体。
- 厚みが10μm以上300μm以下である請求項1または2に記載の細胞培養担体。
- 細胞培養液を収容する培養室を有する少なくとも1つの培養ウェルと、
細胞が付着する表面が前記培養室内に位置し且つ表面から裏面まで細胞培養液で満たされるように配置される請求項1〜3のいずれか一項に記載の細胞培養担体とを備える細胞培養容器。 - 前記細胞培養担体が、表面および裏面が前記培養室内に位置するように配置される請求項4に記載の細胞培養容器。
- 前記培養室より多くの細胞培養液を収容する収容室を有する受容部をさらに備え、
前記細胞培養担体が、前記培養ウェルの底板部の少なくとも一部を構成し、
前記培養ウェルが、前記底板部が前記収容室内に位置するように配置され、前記培養室が複数のマイクロポアを介して前記収容室に連通する請求項4に記載の細胞培養容器。 - 前記培養ウェルが、前記底板部の側部から前記受容部の側部に向かって平板状に延びる拡張部を有し、
前記受容部が、前記側部に前記拡張部を支持する支持部を有する請求項6に記載の細胞培養容器。 - 前記拡張部が、厚み方向に貫通する複数のマイクロポアを有する陽極酸化膜からなり、前記細胞培養担体と一体に設けられる請求項7に記載の細胞培養容器。
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