JP2009254271A - 心筋細胞の誘導方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】骨髄細胞または臍帯血由来細胞を、脂肪組織から単離された細胞とともに共培養することによって、心筋前駆および/または心筋細胞へ分化誘導する技術を実用的なものとするため、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と支持細胞が接触した状態での共培養を実現すると同時に、共培養後の両細胞群の容易な分離を可能とするため、特定の膜材料を用いる新規な共培養方法を提供する。
【解決手段】平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に、特定の開孔率、平均孔直径、平均膜厚を有する多孔薄膜が積層された複合膜を用い、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養する。
【選択図】図4
【解決手段】平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に、特定の開孔率、平均孔直径、平均膜厚を有する多孔薄膜が積層された複合膜を用い、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養する。
【選択図】図4
Description
本発明は、多孔薄膜が不織布と一体化された特定の複合膜を用いて、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を共培養することで、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化誘導する技術に関する。
心筋細胞は成体になるとその増殖が停止するため、一度心筋梗塞に陥った心臓領域の心筋回復は困難であり、これまで心筋は再生不可能な組織の代表格として認識されてきた。
ところが近年、心臓内に心筋細胞の幹/前駆細胞が存在し、その分裂や心筋細胞への分化も一部では認められることが示されたことから(例えば非特許文献1)、心筋の再生医療に関する研究が急速に進歩しつつある。特に最近では胎児期の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)や、骨髄間質中に存在する間葉系幹細胞が、ある特定の培養条件にて心筋前駆および/または心筋細胞に誘導されることが示され、このような多分化能を有する幹細胞ソースから誘導された心筋前駆および/または心筋細胞を患部に移植する心筋再生治療が盛んに検討されている。
ところが近年、心臓内に心筋細胞の幹/前駆細胞が存在し、その分裂や心筋細胞への分化も一部では認められることが示されたことから(例えば非特許文献1)、心筋の再生医療に関する研究が急速に進歩しつつある。特に最近では胎児期の万能細胞である胚性幹細胞(ES細胞)や、骨髄間質中に存在する間葉系幹細胞が、ある特定の培養条件にて心筋前駆および/または心筋細胞に誘導されることが示され、このような多分化能を有する幹細胞ソースから誘導された心筋前駆および/または心筋細胞を患部に移植する心筋再生治療が盛んに検討されている。
しかし、ES細胞を用いて心筋再生治療を行う場合、株化ヒトES細胞から分化誘導して得られた心筋細胞は免疫拒絶反応が生じること、逆に各患者のES細胞作成は倫理的に問題があること、また移植の際に未分化なES細胞が混入することでがん化が懸念されること等の問題から、実際の医療現場への適用には大きな障壁があり、現状では困難である。
また間葉系幹細胞を用いる場合、脱メチル化酵素や5−アザシチジン、ジメチルスルホキシド等を培養系に添加すると、心筋細胞へ分化することが報告されているが(例えば特許文献1)、この方法で誘導された心筋細胞は、DNAの脱メチル化処理が施されているため、将来的に移植部位における奇形発生の恐れがあるなど、臨床応用にはハードルが高い。
このような細胞治療における拒絶反応の問題を回避するためには、患者自身から取得した幹細胞ソース(自己由来幹細胞)もしくはヒト白血球型抗原(HLA)がほぼ100%一致した幹細胞ソースを使用し、これらを心筋前駆および/または心筋細胞に誘導して移植する必要がある。また移植後の患部における奇形細胞の発生やがん化を避けるためには、幹細胞ソースに含まれる未分化細胞群の心筋前駆および/または心筋細胞への誘導は、脱メチル化反応で実施するような薬物処理や遺伝子操作等に頼らないことが好ましいと考えられる。
このような課題を解決する手段として、特許文献2には、骨髄細胞または臍帯血由来細胞を、脂肪組織から単離された細胞とともに培養することにより、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化させる方法が開示されている。この方法の特徴は、幹細胞ソースが骨髄細胞または臍帯血由来細胞であるため、患者の自己骨髄を利用する場合にはHLAは100%一致し、また同種の骨髄や臍帯血を利用する場合でも骨髄バンクや臍帯血バンクを利用することでHLAがほぼ100%一致するものを選択することが可能であるため、移植時の拒絶反応が回避できることである。さらに骨髄細胞または臍帯血由来細胞の心筋前駆および/または心筋細胞への誘導は、脂肪組織から単離された細胞との「共培養」にて達成されるが、細胞共培養法は「細胞による細胞の制御」であり、生体内における幹細胞の増殖や分化誘導のメカニズムに極めて近いため、移植後の奇形細胞の発生やがん化の懸念は殆どないことも特徴である。また心臓疾患の患者に、自己骨髄を移植して心臓機能を回復させる治療方法はすでに実用化されているが、この場合は、骨髄に含まれる血管内皮前駆細胞が梗塞を起こした心筋において血管を形成することで心臓機能を改善している。従って特許文献2に記載の方法を心筋梗塞治療に応用すれば、心筋再生と血管新生という2つの相乗効果によって心臓機能の著しい改善が期待されることから、これも該治療方法の大きな特徴と言える。
上記の心筋前駆および/または心筋細胞の誘導方法では、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、脂肪組織から単離された細胞(いわゆる支持細胞)は、両者が接触した状態、もくしは極めて近接した状態で共培養されることが、心筋前駆および/または心筋細胞への誘導効率の点から好都合である。そのため、2つの細胞群を単純に混合共培養すれば、良好な誘導効率にて心筋前駆および/または心筋細胞を含む細胞懸濁液を得ることができる。
ところが上記の共培養法を臨床応用に展開するためには、共培養終了後、誘導された心筋前駆および/または心筋細胞を含む骨髄細胞または臍帯血に由来する有用細胞群(いわゆるHLAが一致もしくはほぼ一致した細胞群であり、血管新生を誘導する血管内皮前駆細胞も含む。)を、脂肪組織由来の細胞群から分離する必要がある。この操作は、脂肪組織が同種由来である場合は移植時の拒絶反応を避けるために必須であり、また仮に自己由来であっても余分な細胞の移植はリスク低減の観点から極力避けることが極めて好ましいことは周知の事実であり、特に心臓への細胞移植による再生医療では重要となる。
骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、脂肪組織から単離された細胞(支持細胞)を、単純に混合共培養した場合、支持細胞の分離は著しく困難であり、それを達成するには非常に煩雑なプロセスが必要となることが予想される。このような細胞分離プロセスは、該共培養法を心臓再生治療として実用化する上では大きな障害となることは明らかである。
すなわち、骨髄細胞または臍帯血由来細胞を、脂肪組織から単離された細胞とともに共培養することによる、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞の心筋前駆および/または心筋細胞への分化誘導技術を心臓疾患治療として実用化するためには、1)骨髄細胞または臍帯血由来細胞と支持細胞が接触した状態もくしは極めて近接した状態での共培養を実現すること、2)共培養後の両細胞群の分離が容易であること、の2点を満たす培養手技が必要である。
一般に2種の細胞群を共培養し、しかも共培養後に両細胞群を容易に分離する手段として多孔膜材料を用いる方法が考えられる。しかし両者が接触した状態もしくは極めて近接した状態で共培養するとなると、用いる多孔膜材料は極めて薄く(数μm程度)、開孔率が高く、しかも実用的な機械的強度を有するような特殊な性能が必要となる。
そのような性能を有する膜材料として、特許文献3に開示された、孔径均一性の高い孔群と高い開孔率を有する特定の多孔薄膜が支持多孔膜と一体化された複合多孔膜が候補として挙げられる。
そのような性能を有する膜材料として、特許文献3に開示された、孔径均一性の高い孔群と高い開孔率を有する特定の多孔薄膜が支持多孔膜と一体化された複合多孔膜が候補として挙げられる。
上記の複合多孔膜を構成する支持多孔膜としては、不織布、三次元網状連通孔を有する多孔質体(多孔質膜)、織布や編布、メッシュ類などを用いることができる。しかし、上記の細胞共培養用途に用いる場合、支持多孔膜には種々の大きさの細胞(数μm〜数十μm)を含む細胞浮遊液の透過性(細胞通過性)や、細胞浮遊液を吸収させることによる細胞の支持多孔膜への導入とそれら導入細胞の3次元的な保持機能に優れることが要求されるため、支持多孔膜は細胞サイズに応じた比較的大きな孔径(数μm〜数十μm程度)や空隙率の設計が容易な多孔質材料であることが好ましい。不織布はこのような構造設計の幅が広いため、支持多孔膜として特に好ましいと言える。
不織布を用いて特許文献3に記載の複合多孔膜を製造する場合、不織布の繊維径や平均孔径が小さく、空隙率も低いものほど不織布表面のミクロな平滑性が向上するため、不織布上に成膜一体化される多孔薄膜のアンジュレーションが抑えられ、膜破れのないきれいな薄膜を製造することができる。そのような複合膜形成に優れた不織布としては、メルトブロー法によって得られる微細短繊維不織布(繊維径は1〜3μm程度)をカレンダー処理したものが挙げられる。
ところが一般にメルトブロー法による微細短繊維不織布は、繊維長が短いため繊維の絡み合いが弱く、目付け(単位面積あたりの繊維量、g/m2)を高くして不織布強度を保持する必要がある。そのため短繊維不織布製品は比較的厚いものが多く、孔径や空隙率も相対的に小さくなってしまう。従って微細短繊維不織布を用いた複合多孔膜を細胞共培養用途に用いる場合、赤血球などの無核で変形能の高い細胞は不織布内を通過する(または導入する)ことが容易であるが、白血球系細胞やその他の有核の培養細胞等は変形能が小さくサイズも比較的大きいためそれが困難となり、不織布表面付近での細胞の目詰まりが生じやすい。従って、種々の細胞の不織布中への導入や、それら導入細胞を保持するためには比較的高い空隙率と大きな孔径を有し、しかも厚みが小さい不織布が必要であるが、微細短繊維でそのような不織布を製造することは困難である。
これに対しスパンボンド法で得られるような長繊維不織布は、繊維の絡み合いが大きいため少ない目付け量でも不織布強度は高く、薄くて、比較的大きな孔径と大きな空隙率を有する製品の製造が容易であり、種々の細胞浮遊液の透過性や細胞導入性に優れる。ところがこのような長繊維不織布を構成する繊維の直径は、一般的に多孔薄膜の膜厚よりもかなり大きいため、特許文献3に記載の方法で複合多孔膜を製造すると、不織布表面に一体成膜(接着成膜)された多孔薄膜は激しいアンジュレーションを生じて膜面に亀裂が生じ、膜破れのないきれいな複合多孔膜を得ることができないのである。
すなわち多孔薄膜と不織布を一体化した膜破れのない複合多孔膜を製造しようとする場合、製造に適した不織布が孔径や空隙率の小さい短繊維不織布に制限されてしまうため、このような従来の複合多孔膜を、骨髄細胞または臍帯血由来細胞を脂肪組織から単離された細胞とともに共培養する心筋前駆および/または心筋細胞への分化誘導技術に適用することは、実用上、困難が生じていた。
Cell,Vol.114,763−776(2003).
WO2001/048150パンフレット
WO2005/063967パンフレット
WO2005/014149パンフレット
本発明の課題は、骨髄細胞または臍帯血由来細胞を、脂肪組織から単離された細胞(支持細胞)とともに共培養することによって、遺伝子操作を施すことなく、心筋前駆および/または心筋細胞へ分化誘導する技術を実用的な心筋再生医療に発展させることである。具体的には、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と支持細胞が接触した状態もくしは極めて近接した状態での共培養を実現すると同時に、共培養後の両細胞群の容易な分離も可能とするため、特定の膜材料を用いた新規な心筋細胞の誘導方法を提供することである。
本発明者らは、多孔薄膜をスパンボンド長繊維不織布上に形成させて得られた、膜破れの激しい複合多孔膜を電子顕微鏡で解析したところ、不織布の繊維径が多孔薄膜の厚みに比べて大きくなると(多孔薄膜の厚みが一般的に3〜5μm程度であるのに対し長繊維不織布の繊維径は約15μm)、繊維径による不織布表面のミクロな凹凸が激しくなる結果、不織布表面に一体成膜(接着成膜)された多孔薄膜は激しいアンジュレーションを生じて膜面(特に繊維に沿った部分)に亀裂が生じてきれいな複合多孔膜を得ることができないことに気づいた。また繊維密度が低く不織布表面の繊維間距離が比較的大きいため、不織布表面で多孔薄膜のアンジュレーション(沈み込み)を抑制することができないため、これもきれいな多孔薄膜の製造を妨げる原因になると考えられた。
そこで種々の不織布を用いた複合膜製造検討を実施したところ、驚くべきことに繊維径の大きな長繊維と繊維径の小さな微細短繊維からなる不織布を用いると、不織布の繊維目付け量や繊維密度が低く、平均流量孔径が大きくても、不織布上に膜破れのない多孔薄膜が容易に形成され、しかも得られた複合膜は、不織布中への脂肪組織から単離された細胞を含む細胞浮遊液の透過性、およびこれら細胞の導入性と細胞保持性に優れることが分かった。しかも複合膜強度も十分なため、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と支持細胞が接触した状態もくしは極めて近接した状態での共培養を容易に実現すると同時に、共培養後の両細胞群の分離も可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち本発明は以下の構成を有する。
(1)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に多孔薄膜が積層された複合膜を用い、哺乳動物から単離された骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養することで、遺伝子操作を施すことなく、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化させることを特徴とする心筋細胞の誘導方法であって、該多孔薄膜の開孔率が15〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦15、孔直径の標準偏差σd(μm)が0≦σd/D≦0.6であって、且つ、多孔薄膜内部にて隣接する孔が連通し、多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入していることを特徴とする上記誘導方法。
(2)多孔薄膜の平均膜厚T(μm)が0.1≦T≦10であり、膜厚の標準偏差σt(μm)が0≦σt/T≦0.5である前記(1)に記載の心筋細胞の誘導方法。
(3)多孔薄膜が有する貫通孔の割合が20%以上である前記1又は2のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(4)平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である前記(1)〜(3)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(5)不織布の平均流量孔径が1μm以上である前記(1)〜(4)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(6)不織布の平均流量孔径が1〜100μmである前記(1)〜(5)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(7)骨髄細胞が間葉系幹細胞あるいは造血幹細胞である前記(1)〜(6)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(8)臍帯血由来細胞が単核球である前記(1)〜(7)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(9)得られる心筋前駆細胞および/または心筋細胞が、sarcomeric actin陽性である前記(1)〜(8)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(10)前記(1)〜(9)のいずれか一に記載の方法で作製される心筋前駆細胞および/または心筋細胞。
(11)前記(1)〜(6)のいずれか一に記載の複合膜を含んでなり、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養することで、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化誘導させることが可能な細胞共培養装置。
(12)哺乳動物から単離された骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、相互に接触可能な状態で仕切って共培養するための複合膜であって、以下の性質(i)を有する不織布の少なくとも一方の面上に、以下の性質(ii)を有する多孔薄膜が、該多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入することにより積層されていることを特徴とする複合膜。
(i)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布
(ii)有機高分子化合物からなり、開孔率が15〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦15、孔直径の標準偏差σd(μm)が0≦σd/D≦0.6である多孔薄膜
(2)多孔薄膜の平均膜厚T(μm)が0.1≦T≦10であり、膜厚の標準偏差σt(μm)が0≦σt/T≦0.5である前記(1)に記載の心筋細胞の誘導方法。
(3)多孔薄膜が有する貫通孔の割合が20%以上である前記1又は2のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(4)平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である前記(1)〜(3)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(5)不織布の平均流量孔径が1μm以上である前記(1)〜(4)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(6)不織布の平均流量孔径が1〜100μmである前記(1)〜(5)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(7)骨髄細胞が間葉系幹細胞あるいは造血幹細胞である前記(1)〜(6)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(8)臍帯血由来細胞が単核球である前記(1)〜(7)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(9)得られる心筋前駆細胞および/または心筋細胞が、sarcomeric actin陽性である前記(1)〜(8)のいずれか一に記載の心筋細胞の誘導方法。
(10)前記(1)〜(9)のいずれか一に記載の方法で作製される心筋前駆細胞および/または心筋細胞。
(11)前記(1)〜(6)のいずれか一に記載の複合膜を含んでなり、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養することで、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化誘導させることが可能な細胞共培養装置。
(12)哺乳動物から単離された骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、相互に接触可能な状態で仕切って共培養するための複合膜であって、以下の性質(i)を有する不織布の少なくとも一方の面上に、以下の性質(ii)を有する多孔薄膜が、該多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入することにより積層されていることを特徴とする複合膜。
(i)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布
(ii)有機高分子化合物からなり、開孔率が15〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦15、孔直径の標準偏差σd(μm)が0≦σd/D≦0.6である多孔薄膜
本発明の方法を用いれば、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞を、特定の多孔薄膜を介して相互に接触可能な状態または近接した状態で仕切って共培養することができるため、遺伝子操作を施すことなく、骨髄細胞または臍帯血由来細胞の効果的な心筋細胞への誘導が可能である。しかも多孔薄膜は、特定の不織布と複合化されることで実用的な機械的強度を有するため、共培養終了後に培養系から心筋前駆および/または心筋細胞を含む骨髄細胞または臍帯血細胞に由来する有用細胞群(いわゆるHLAが一致もしくはほぼ一致した細胞群であり、さらに血管新生を誘導する血管内皮前駆細胞も含む。)のみを分離することが容易である。その結果、共培養後の有用細胞群のみを心筋梗塞部位へ移植することができるため、安全かつ効果的な治療を実施することが可能となる。
以下に、本発明を詳細に説明する。
細胞
本発明の方法で用いられる脂肪組織から単離された細胞とは、哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。すなわち、哺乳動物の胎児、新生児、成体の任意の部位の脂肪組織を使用することができる。細胞は、例えば実体顕微鏡下で、正確に脂肪組織のみを回収し、機械的処理および/またはコラゲナーゼ処理やディスパーゼ処理等の酵素処理を施すことにより、個々の単一の細胞として単離することができる。
こうして脂肪組織から単離された細胞中には、脂肪細胞、脂肪前駆細胞、体性幹細胞等も含まれるが、本発明で用いられる脂肪組織由来の細胞には、そのような細胞が含まれていてもよい。これらの細胞は、Lin陰性、c−kit陰性〜弱陽性、およびβ1インテグリン陽性であることが確認されている。
骨髄細胞は、哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。すなわち、哺乳動物の胎児、新生児、成体の骨髄由来の任意の細胞を用いることができるが、骨髄間質細胞、特に間葉系幹細胞、あるいは造血幹細胞分画の細胞が好ましい。これら骨髄細胞の哺乳動物からの採取は、周知の方法にしたがって行われる。骨髄細胞としては採取直後のものを用いることが好ましいが、凍結保存されている骨髄細胞を用いてもよい。
前記骨髄細胞と脂肪組織は同じ種に由来するものであることが好ましい。つまり、マウス骨髄細胞にはマウス脂肪組織由来の細胞を使用し、ヒト骨髄細胞にはヒト脂肪組織由来の細胞を使用して共培養することが好ましい。さらに共培養した後、骨髄細胞に由来する細胞群を分離して特定の哺乳動物に移植する場合は、骨髄細胞は被移植哺乳動物自身のものを用いるか、HLAの一致率のできるだけ高いものを用いることが好ましい。
臍帯血由来細胞は、哺乳動物由来のものであれば特に限定されないが、臍帯血中の単核球分画が好ましい。臍帯血からの細胞の採取は、周知の方法に従って行われる。また骨髄細胞と同様に、臍帯血由来細胞と脂肪組織は同じ種に由来するものであることが好ましい。さらに共培養した後、臍帯血由来細胞に由来する細胞群を分離して特定の哺乳動物に移植する場合は、臍帯血由来細胞は被移植哺乳動物の細胞とHLAの一致率ができるだけ高いものを用いることが好ましい。
細胞
本発明の方法で用いられる脂肪組織から単離された細胞とは、哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。すなわち、哺乳動物の胎児、新生児、成体の任意の部位の脂肪組織を使用することができる。細胞は、例えば実体顕微鏡下で、正確に脂肪組織のみを回収し、機械的処理および/またはコラゲナーゼ処理やディスパーゼ処理等の酵素処理を施すことにより、個々の単一の細胞として単離することができる。
こうして脂肪組織から単離された細胞中には、脂肪細胞、脂肪前駆細胞、体性幹細胞等も含まれるが、本発明で用いられる脂肪組織由来の細胞には、そのような細胞が含まれていてもよい。これらの細胞は、Lin陰性、c−kit陰性〜弱陽性、およびβ1インテグリン陽性であることが確認されている。
骨髄細胞は、哺乳動物由来のものであれば特に限定されない。すなわち、哺乳動物の胎児、新生児、成体の骨髄由来の任意の細胞を用いることができるが、骨髄間質細胞、特に間葉系幹細胞、あるいは造血幹細胞分画の細胞が好ましい。これら骨髄細胞の哺乳動物からの採取は、周知の方法にしたがって行われる。骨髄細胞としては採取直後のものを用いることが好ましいが、凍結保存されている骨髄細胞を用いてもよい。
前記骨髄細胞と脂肪組織は同じ種に由来するものであることが好ましい。つまり、マウス骨髄細胞にはマウス脂肪組織由来の細胞を使用し、ヒト骨髄細胞にはヒト脂肪組織由来の細胞を使用して共培養することが好ましい。さらに共培養した後、骨髄細胞に由来する細胞群を分離して特定の哺乳動物に移植する場合は、骨髄細胞は被移植哺乳動物自身のものを用いるか、HLAの一致率のできるだけ高いものを用いることが好ましい。
臍帯血由来細胞は、哺乳動物由来のものであれば特に限定されないが、臍帯血中の単核球分画が好ましい。臍帯血からの細胞の採取は、周知の方法に従って行われる。また骨髄細胞と同様に、臍帯血由来細胞と脂肪組織は同じ種に由来するものであることが好ましい。さらに共培養した後、臍帯血由来細胞に由来する細胞群を分離して特定の哺乳動物に移植する場合は、臍帯血由来細胞は被移植哺乳動物の細胞とHLAの一致率ができるだけ高いものを用いることが好ましい。
複合膜
本発明で用いる複合膜は、多孔薄膜と不織布が積層し、かつ、接着した構造(多孔薄膜が部分的に不織布に侵入した構造)を有している。例えば、多孔薄膜1枚と不織布1枚が積層された2層構造(すなわち、「多孔薄膜/不織布」の構造)、不織布の両面が多孔薄膜である3層サンドイッチ構造(「多孔薄膜/不織布/多孔薄膜」の構造)、等の構造が挙げられる。複合膜は、不織布が2枚の多孔薄膜によって挟まれた構造の場合は、それぞれの多孔薄膜の平均孔直径や開孔率等の物性、又は多孔薄膜を構成する物質等は同一であっても、異なっていてもよい。ただし、1枚の多孔薄膜と1枚の不織布からなる構造が、製造も容易であり使い勝手もよい。
本発明で用いる複合膜は、多孔薄膜と不織布が積層し、かつ、接着した構造(多孔薄膜が部分的に不織布に侵入した構造)を有している。例えば、多孔薄膜1枚と不織布1枚が積層された2層構造(すなわち、「多孔薄膜/不織布」の構造)、不織布の両面が多孔薄膜である3層サンドイッチ構造(「多孔薄膜/不織布/多孔薄膜」の構造)、等の構造が挙げられる。複合膜は、不織布が2枚の多孔薄膜によって挟まれた構造の場合は、それぞれの多孔薄膜の平均孔直径や開孔率等の物性、又は多孔薄膜を構成する物質等は同一であっても、異なっていてもよい。ただし、1枚の多孔薄膜と1枚の不織布からなる構造が、製造も容易であり使い勝手もよい。
本発明の複合膜の膜厚は、厚すぎると種々の形態への加工特性が低下し、細胞浮遊液の導入速度が低下する可能性もあるため、その膜厚は5mm以下が好ましく、3mm以下がより好ましく、1mm以下が最も好ましい。一方、薄すぎると取り扱い性や加工性が低下するので、その膜厚は1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上が最も好ましい。
まず、複合膜を構成する多孔薄膜について説明する。
多孔薄膜が有する孔を、多孔薄膜平面に対して垂直な方向から見た時の孔の形状は、特に外力(例えば、複合膜自体を一軸方向に引っ張る等)を加えない限り基本的に円形である。孔の形状は、不織布との積層(接着)状態によって若干変形して楕円状になったりすることもある。本発明における円形とは、完全な真円の他に、このような楕円状も含む。特に不織布繊維の一部と接着した部分の孔は変形している。
多孔薄膜が有する孔を、多孔薄膜平面に対して垂直な方向から見た時の孔の形状は、特に外力(例えば、複合膜自体を一軸方向に引っ張る等)を加えない限り基本的に円形である。孔の形状は、不織布との積層(接着)状態によって若干変形して楕円状になったりすることもある。本発明における円形とは、完全な真円の他に、このような楕円状も含む。特に不織布繊維の一部と接着した部分の孔は変形している。
多孔薄膜の膜平面を顕微鏡写真により観察した場合の、多孔薄膜の開孔率は15〜80%であり、好ましくは20〜70%、より好ましくは25〜60%、最も好ましくは30〜50%である。開孔率が15%未満であると、多孔薄膜の両面に存在する骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、脂肪組織から単離された細胞との細胞間接着の効率が低くなったりする。また、80%を超えると、多孔薄膜の強度が著しく低下するため、多孔薄膜の破損(破れ、亀裂)などの原因となる。
平均孔直径D(μm)の値は、0.5≦D≦15、好ましくは1≦D≦10、より好ましくは1≦D≦7、最も好ましくは1≦D≦5である。Dが15μmを超えると、多孔薄膜両側面に存在する骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、脂肪組織から単離された細胞をコンタミの起こらないように隔てて培養することが難しい。Dが0.5μmより小さいと骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞の、細胞間接着効率が低くなる。
孔直径の標準偏差σd(μm)は0≦σd/D≦0.6であり、好ましくは0≦σd/D≦0.5、より好ましくは0≦σd/D≦0.4、特に好ましくは0≦σd/D≦0.3である。σd/Dが0.6を超えると、孔直径の大きさの分布が広くなり、膜を介した効果的な細胞間接触と、膜によって仕切られた2種の細胞の明確な分離(コンタミ防止)を両立することが困難になる。
孔直径の標準偏差σd(μm)は0≦σd/D≦0.6であり、好ましくは0≦σd/D≦0.5、より好ましくは0≦σd/D≦0.4、特に好ましくは0≦σd/D≦0.3である。σd/Dが0.6を超えると、孔直径の大きさの分布が広くなり、膜を介した効果的な細胞間接触と、膜によって仕切られた2種の細胞の明確な分離(コンタミ防止)を両立することが困難になる。
本発明で用いる複合膜は、不織布の少なくとも一方の面上に多孔薄膜が積層されていればよい。なお不織布と多孔薄膜は接着していることで、容易に両者が分離しないことが実用上好ましい。特に多孔薄膜に隣接する不織布面の少なくとも一部において、多孔薄膜の一部が不織布中に侵入していることが好ましい。このような浸入状態は、複合膜における多孔薄膜の表面を電子顕微鏡で観察すると、多孔薄膜が不織布の繊維間空隙や繊維交絡部分に侵入した結果、孔形状が乱れたり、孔が多孔薄膜の不織布側面において閉塞したりしている状態(非貫通構造)を観察することができ、この構造の存在によって多孔薄膜と不織布の高い接着性が発現する。
多孔薄膜と不織布が接着すれば、不織布が多孔薄膜の孔を閉塞させる現象が起こるため、多孔薄膜が有する孔の全てが貫通した状態となることは極めて稀である。従って複合膜においては、多孔薄膜が有する貫通孔の割合は好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、さらに好ましくは40%以上、最も好ましくは50%以上である。貫通孔の割合が20%未満であると、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞の接触効率が低下する。
本発明において、多孔薄膜の「貫通孔」とは、多孔薄膜側からの複合膜平面の顕微鏡観察(主に電子顕微鏡観察)によって、孔の反対側の不織布構造(多孔薄膜に接着していない繊維もしくは繊維間の空隙)が、その孔を通して観察可能なものをいう。
多孔薄膜の平均膜厚T(μm)は、複合膜の断面を顕微鏡(主に電子顕微鏡)により観察した場合に測定することが可能であり、0.1≦T≦10であり、好ましくは0.5≦T≦7、さらに好ましくは1≦T≦5である。Tが0.1未満であると、膜強度が著しく低下するため使用時における膜破れの原因となり易い。また、Tが10を超えると骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞の接触が困難になる。
膜厚の標準偏差σt(μm)は、好ましくは0≦σt/T≦0.5であり、より好ましくは、0≦σt/T≦0.4、特に好ましくは0≦σt/T≦0.3である。σt/Tが0.5を超えると、膜厚の分布が広くなり、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞の接触が困難な個所が生じ、接触効率が低下する。
なお、開孔率、D、σd、貫通孔の割合を、実験的に規定できないものは、本発明の多孔薄膜の範囲外である。例えば不織布や、主に相分離法にて得られる3次元網状に連通孔を有する多孔質体は、実施例に記載の方法ではこれらを規定することが困難であるので、本発明にいう多孔薄膜とは明らかに異なる。
多孔薄膜の有する孔は膜内部にて隣接する孔と連通していることが好ましい。さらに孔は膜内部にて球状に膨らんだ孔構造であることが、細胞間接着において好都合である。 このような、膜内部にて隣接する孔が連通した膜構造の製造方法は特に限定されるものではないが、公知の水滴を鋳型とした製膜方法(Thin Solid Films,327−329,854(1998))で作られる多孔薄膜内部では、隣接する孔が連通している部分が多く見られるので、この成膜技術を本発明の複合膜の製造に好ましく応用することができる。
多孔薄膜を形成する素材は有機素材でも無機素材でも構わないが、膜形成が容易な点で有機高分子化合物が好ましい。有機高分子化合物としては、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酢酸、ポリカプロラクトン、ポリエチレンアジペートなどのポリエステル類、ポリウレタン類、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリビニルアセタール類、ポリアミド類、ポリスチレン類、ポリスルホン類、セルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル類、ポリエーテルスルホン類、ポリカーボネート類、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体などの単独素材、これらから選ばれる2種以上のポリマーアロイやブレンド物、又は上記ポリマーを形成するモノマーの共重合体などが挙げられるが、上記の例に限定されるものではない。
次に、不織布について説明する。
不織布は、多孔薄膜を支持・補強し、複合膜に充分な機械的強度を付与する機能を担うが、機械的強度付与だけでなく脂肪組織から単離した細胞等の足場としての機能も考慮する必要があるので、細胞を含む細胞浮遊液の透過性や、不織布内部への細胞導入性と導入された細胞の3次元保持性に適した孔径を有することが好ましい。したがって不織布は、平均流量孔径が1μm以上、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm、特に好ましくは5〜50μmであることが好ましい。平均流量孔径が1μm未満であると、不織布内部、さらには不織布側の多孔薄膜面もしくはその近傍への脂肪組織由来細胞等の導入が困難となり多孔薄膜を介した効果的な細胞共培養ができない場合が発生する。平均流量孔径が100μmを超えると、多孔薄膜の支持が不十分となるため多孔薄膜が破れやすくなるし、脂肪組織由来細胞等の3次元保持や足場としての機能が発揮できなくなる。
不織布は、多孔薄膜を支持・補強し、複合膜に充分な機械的強度を付与する機能を担うが、機械的強度付与だけでなく脂肪組織から単離した細胞等の足場としての機能も考慮する必要があるので、細胞を含む細胞浮遊液の透過性や、不織布内部への細胞導入性と導入された細胞の3次元保持性に適した孔径を有することが好ましい。したがって不織布は、平均流量孔径が1μm以上、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは1〜50μm、特に好ましくは5〜50μmであることが好ましい。平均流量孔径が1μm未満であると、不織布内部、さらには不織布側の多孔薄膜面もしくはその近傍への脂肪組織由来細胞等の導入が困難となり多孔薄膜を介した効果的な細胞共培養ができない場合が発生する。平均流量孔径が100μmを超えると、多孔薄膜の支持が不十分となるため多孔薄膜が破れやすくなるし、脂肪組織由来細胞等の3次元保持や足場としての機能が発揮できなくなる。
不織布の膜厚は、大きすぎると複合膜を種々の形態へ加工することが困難になり、また不織布内部への脂肪組織由来細胞の導入性が低下する場合もあるので、膜厚は好ましくは5mm以下、より好ましくは3mm以下、最も好ましくは1mm以下である。不織布が薄すぎると、支持層としての役割を果たせなくなる場合があるので、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、最も好ましくは10μm以上である。
不織布としては、天然繊維、合成高分子繊維、再生高分子繊維、ガラス繊維に代表される無機繊維、有機/無機複合繊維などから得られるものが挙げられるが、特に孔径や目付けのバリエーションが豊富であり、加工性にも優れる有機高分子不織布は好ましく用いることができる。
有機高分子不織布に用いられる高分子素材としては、例えばポリアルキレンテレフタレート類、ポリカーボネート類、ポリウレタン類、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリビニルアセタール、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリスチレン、ポリスルホン類、セルロース及びセルロース誘導体類、ポリフェニレンエーテル類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等、及びこれらを構成するモノマーの共重合体、更には上記高分子の1種又は2種以上のアロイ、ブレンド等が挙げられるが、本発明の不織布の素材は上記の例に限定されるものではない。
不織布の目付量は、多すぎると多孔薄膜の貫通性を阻害する場合や、不織布中への細胞の導入が困難な場合がある。少なすぎると多孔薄膜の支持・補強が充分にできない場合や、複合膜として充分な強度を達成できない場合がある。従って、不織布の目付量は、好ましくは5〜250g/m2、より好ましくは10〜150g/m2、更に好ましくは10〜100g/m2である。
本発明の方法に用いられる複合膜を構成する不織布は、少なくとも1種の細繊維と、少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する複合不織布である。
細繊維とは、不織布全体の機械的強度保持と多孔薄膜の良好な一体成膜性の観点から平均繊維径が7〜30μmであり、10〜25μmが好ましく、13〜20μmが特に好ましい。細繊維の繊維径が7μmより小さいと複合不織布あるいは複合膜全体の機械的強度が不十分となり扱いが困難になる。一方、繊維径が30μmよりも大きいと多孔薄膜と接着する面積が多くなることで孔の貫通性を著しく阻害する場合があり、また複合不織布表面に一体成膜(接着成膜)された多孔薄膜が、複合不織布表面の繊維径に起因するミクロな凹凸によって激しいアンジュレーションを生じ、膜面(特に繊維に沿った部分)に亀裂が生じて膜破れが発生しやすくなる。細繊維は、長繊維でも短繊維でも構わないが、細繊維が比較的少ない目付け量にて複合不織布さらには複合膜の機械的強度を主体となって担うことになるため、長繊維であることが好ましい。
細繊維とは、不織布全体の機械的強度保持と多孔薄膜の良好な一体成膜性の観点から平均繊維径が7〜30μmであり、10〜25μmが好ましく、13〜20μmが特に好ましい。細繊維の繊維径が7μmより小さいと複合不織布あるいは複合膜全体の機械的強度が不十分となり扱いが困難になる。一方、繊維径が30μmよりも大きいと多孔薄膜と接着する面積が多くなることで孔の貫通性を著しく阻害する場合があり、また複合不織布表面に一体成膜(接着成膜)された多孔薄膜が、複合不織布表面の繊維径に起因するミクロな凹凸によって激しいアンジュレーションを生じ、膜面(特に繊維に沿った部分)に亀裂が生じて膜破れが発生しやすくなる。細繊維は、長繊維でも短繊維でも構わないが、細繊維が比較的少ない目付け量にて複合不織布さらには複合膜の機械的強度を主体となって担うことになるため、長繊維であることが好ましい。
一方、微細繊維とは、平均繊維径が0.5〜5μmであり、1〜5μmが好ましく、1〜3μmが特に好ましい。微細繊維の繊維径が0.5μmより小さいと繊維強度が弱く切れやすくなるため、成膜中や複合膜使用時に繊維屑が発生することがあり用途によっては好ましくない場合がある。また微細繊維の繊維径が5μmよりも大きいと、細繊維の繊維径に近くなるため、微細繊維の導入の意義が薄れてしまう。さらに細繊維と微細繊維が絡みにくくなるため、両繊維が交絡して混和した構造が不十分となり、繊維の複合化効果が十分に発現されなくなってしまう。微細繊維は長繊維であっても短繊維であっても構わないが、細繊維との交絡や細繊維領域への進入が起こりやすいことが好ましいので、短繊維であることが好ましい。
複合不織布を構成する細繊維と微細繊維の総重量における、微細繊維の重量割合(wt%)は特に限定されないが、1〜50wt%が好ましく、5〜40wt%がより好ましく、10〜30wt%が特に好ましい。1wt%未満であると微細繊維の導入効果が発揮できない。50%を超えると複合不織布の機械的強度が低下する。
複合不織布における細繊維と微細繊維が交絡して混和した構造とは、細繊維にて形成される不織布層中に微細繊維が進入した構造であり、そのような構造の存在は光学顕微鏡(特に実体顕微鏡)や電子顕微鏡にて確認することができる。細繊維層への微細繊維の進入の程度は、本発明の効果が得られるのであれば特に限定はされないが、細繊維層の隙間を微細繊維が均等に埋めた、微細繊維が細繊維層へ十分進入した構造が特に好ましい。
細繊維層に微細繊維が進入した構造の複合不織布は、種々の方法によって得ることが可能である。例えば、スパンボンド法によって製造された細繊維不織布(長繊維不織布)とメルトブロー法によって製造された微細繊維不織布(短繊維不織布)を重ね、熱エンボスロールを用いる熱圧着法にて積層する方法が挙げられる。ただし、このような方法では細繊維層への微細繊維の進入が不十分となりやすい。これに対し、WO2004/094136号パンフレットに記載の方法、すなわちスパンボンド長繊維不織布の製造プロセスにおいて、移動する捕集体面上に溶融紡糸された多数本の連続長繊維からなる堆積長繊維ウエブに、直接メルトブロー微細繊維を吹き付けることを基本とする方法を用いると、微細繊維の進入が良好な不織布が得られる。具体的には、移動捕集体面上に溶融紡糸された多数本の連続長繊維からなる第一の堆積長繊維ウエブ(SW1)の全面に、メルトブロー微細繊維ウエブ(MW)が直接吹き付け形成される。更にこのMW層全面に同じく多数本の連続長繊維からなる第二の堆積長繊維ウエブ(SW2)を堆積すると、全体としてシート状SMSウエブ積層体が形成される。このように、MW層がサンドイッチ状に熱圧着される工程によって一体化されることでメルトブロー微細短繊維が全面でスパンボンド細長繊維層に高度に進入した複合不織布構造が得られるが、このような複合不織布は本発明において特に好ましい構造である。
本発明で用いる複合膜は、親水性向上、タンパク非吸着性向上、細胞接着性の制御などのために、親水化処理に代表される膜表面改質を施してもよい。
膜表面改質の具体的な方法としては、(a)複合膜の表面に元来存在する官能基に高分子反応によって目的の親水性官能基等を導入する方法、(b)複合膜に電子線やγ線を照射してラジカルを発生させ、これに目的の親水性官能基を有するモノマーを作用させてグラフト重合する方法、(c)複合膜に必要な開始剤基を導入した後、必要に応じて触媒等を加えて行う種々のリビング重合法(例えばリビングラジカル重合法やリビングアニオン重合法)にて目的の官能基を有するモノマーをグラフト重合する方法、(d)複合膜に浸漬法やスプレー法を用いて目的の官能基を有するポリマーをコーティングする方法等が挙げられる。特に(d)のコーティング法は、コーティング用ポリマーの合成反応時において導入したい官能基の種類や量、重合連鎖分布等も容易に設計できるし、更にコーティングプロセス自体も簡便で、生産性も高くなるので好ましい。コーティング方法の詳細は、WO2005/014149A1パンフレットの記載に従えば良い。
またコーティング剤は、WO2005/014149A1パンフレットに記載の公知の合成親水性ポリマーや、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン等、ゼラチン、レクチン、ポリリジン等の従来公知の天然ポリマーの1種又は2種以上を用いることができる。
膜表面改質の具体的な方法としては、(a)複合膜の表面に元来存在する官能基に高分子反応によって目的の親水性官能基等を導入する方法、(b)複合膜に電子線やγ線を照射してラジカルを発生させ、これに目的の親水性官能基を有するモノマーを作用させてグラフト重合する方法、(c)複合膜に必要な開始剤基を導入した後、必要に応じて触媒等を加えて行う種々のリビング重合法(例えばリビングラジカル重合法やリビングアニオン重合法)にて目的の官能基を有するモノマーをグラフト重合する方法、(d)複合膜に浸漬法やスプレー法を用いて目的の官能基を有するポリマーをコーティングする方法等が挙げられる。特に(d)のコーティング法は、コーティング用ポリマーの合成反応時において導入したい官能基の種類や量、重合連鎖分布等も容易に設計できるし、更にコーティングプロセス自体も簡便で、生産性も高くなるので好ましい。コーティング方法の詳細は、WO2005/014149A1パンフレットの記載に従えば良い。
またコーティング剤は、WO2005/014149A1パンフレットに記載の公知の合成親水性ポリマーや、コラーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、プロテオグリカン、グリコサミノグリカン等、ゼラチン、レクチン、ポリリジン等の従来公知の天然ポリマーの1種又は2種以上を用いることができる。
共培養方法
本発明の方法によれば、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞は、複合膜の多孔薄膜によって物理的にセパレートされることで細胞混合や融合が抑制されるが、多孔薄膜の孔を介して両者は接触することが可能である。その結果、共培養後の有用細胞の単離が容易となるという特徴を有する。また不織布が3次元細胞培養空間を提供し、接着性細胞の足場としても機能しうるので、細胞の長期培養に有効となる。
本発明の方法によれば、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞は、複合膜の多孔薄膜によって物理的にセパレートされることで細胞混合や融合が抑制されるが、多孔薄膜の孔を介して両者は接触することが可能である。その結果、共培養後の有用細胞の単離が容易となるという特徴を有する。また不織布が3次元細胞培養空間を提供し、接着性細胞の足場としても機能しうるので、細胞の長期培養に有効となる。
本発明において共培養とは、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、脂肪組織から単離された細胞を単に1つの培養液中で同時に培養するだけでなく、両者が相互に接触するか、または極めて近接した状態となることによって、骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に誘導する場合を含む。
複合膜を用い、培養液中において骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞を共培養する方法は、両者が相互に接触するか、または極めて近接した状態となるように配置されれば良く、各細胞を多孔薄膜のどちらの面側に配置するかは特定されない。しかし共培養終了後に、心筋前駆細胞および/または心筋細胞を含む骨髄細胞または臍帯血由来細胞に由来する有用細胞群を効率的に単離・回収するためには、脂肪組織から単離された細胞を多孔薄膜の不織布側面に配置し、骨髄細胞または臍帯血由来細胞はその反対側面に配置することが好ましい。
上記のような配置にて2種の細胞の共培養を行うには、まず複合膜における不織布側の多孔薄膜表面またはその近傍に第1の細胞(ここでは脂肪組織から単離された細胞を第1の細胞とする)を導入する必要がある。細胞導入の方法は特に限定されないが、例えば脂肪組織由来細胞を含む細胞浮遊液を、複合膜の不織布面から多孔薄膜側に通液する方法が挙げられる。通液することで液体成分の大部分は透過排出され、細胞のみが不織布側の多孔薄膜表面またはその近傍に導入、捕捉される。液体成分の排出が遅い場合には、排出側(多孔薄膜側)を減圧するか、導入側(不織布側)を加圧してもよい。または排出側の多孔薄膜に吸水体(吸水シート等)を接触させておくと、簡単に液体成分の排出を加速することができる。次に脂肪組織由来細胞を導入した複合膜を、第2の細胞(ここでは骨髄細胞または臍帯血由来細胞を第2の細胞とする)を含む細胞培養液中に配置することで共培養を行うことができる。特に底面がフラットな市販の培養ディッシュに骨髄細胞または臍帯血由来細胞の細胞を含む細胞浮遊液を入れ、これに脂肪組織由来細胞が導入された複合膜を、多孔薄膜面が培養ディッシュの底面に接するような状態に配置すれば、両細胞を効率良く接触させることができる。なお、第1の細胞と第2の細胞の接触効率を良くするためには、第2の細胞を含む細胞培養液に接する複合膜の面積が大きいことが好ましい。
細胞の培養液としては、DMEM培養液、MEM培養液、α−MEM培養液、RPMI培養液、DMEM/F12培養液等、通常哺乳動物の細胞培養に用いられる培養液に適量の牛血清またはヒト血清を添加したものを使用する。添加される血清の量は、特に限定されず、細胞の起源や種類に応じて適宜設定される。好ましくは0%〜20%、より好ましくは5%〜10%程度の血清を添加する。血清に代えて、ニュートリドーマ(Behringer製)などの、血清に代わる無血清培養液を使用してもよい。
培養時における骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞との混合比は(細胞数比)、1:1〜1:10が好ましく、特に骨髄細胞の場合であれば1:4程度が好適である。
培養時における骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞との混合比は(細胞数比)、1:1〜1:10が好ましく、特に骨髄細胞の場合であれば1:4程度が好適である。
共培養の期間は、1日以上が好ましく、1〜3日間が特に好ましい。この期間において骨髄細胞または臍帯血由来細胞が心筋前駆細胞に誘導される。
培養の温度やCO2等の条件は、用いる細胞の性質に応じて適宜設定されるが、一般に4〜6%CO2、33〜37℃、特に5%CO2、37℃程度で行われる。培養に際しては、細胞の分化増殖を促すサイトカインを適宜培養液に添加してもよい。そのようなサイトカインとしては、例えば、EGF、TGF−α、HB−EGF、FGF、HGF等のEGFファミリー、TGF−β等のTGF−βファミリー、LIF等のILファミリー、VEGF−A等のVEGFファミリー、PDGF−AB、PDGF−BB等のPDGFファミリー、エフリンB等のエフリンファミリー、SCF(Stem Cell Factor)などを挙げることができる。特に、LIF、HB−EGF、PDGFが好ましい。
添加されるサイトカインの量は、用いるサイトカインや細胞の性質に応じて適宜設定される。マウスの脂肪組織から単離された細胞を用いた場合、LIFであれば1000μg/ml〜5000μg/ml程度、HB−EGFであれば100ng/ml〜1μg/ml程度、PDGF−ABであれば1ng/ml〜50ng/ml程度添加するとよいが、これに限定されるものではない。
培養の温度やCO2等の条件は、用いる細胞の性質に応じて適宜設定されるが、一般に4〜6%CO2、33〜37℃、特に5%CO2、37℃程度で行われる。培養に際しては、細胞の分化増殖を促すサイトカインを適宜培養液に添加してもよい。そのようなサイトカインとしては、例えば、EGF、TGF−α、HB−EGF、FGF、HGF等のEGFファミリー、TGF−β等のTGF−βファミリー、LIF等のILファミリー、VEGF−A等のVEGFファミリー、PDGF−AB、PDGF−BB等のPDGFファミリー、エフリンB等のエフリンファミリー、SCF(Stem Cell Factor)などを挙げることができる。特に、LIF、HB−EGF、PDGFが好ましい。
添加されるサイトカインの量は、用いるサイトカインや細胞の性質に応じて適宜設定される。マウスの脂肪組織から単離された細胞を用いた場合、LIFであれば1000μg/ml〜5000μg/ml程度、HB−EGFであれば100ng/ml〜1μg/ml程度、PDGF−ABであれば1ng/ml〜50ng/ml程度添加するとよいが、これに限定されるものではない。
必要な共培養期間が終了したら、培養ディッシュ側の細胞群(第2の細胞である骨髄細胞または臍帯血由来細胞から誘導された心筋前駆細胞および/または心筋細胞を含む有用細胞群)を取り出す。取り出す方法としては、第1の細胞(脂肪組織から単離された細胞)を保持した複合膜を培養ディッシュから除去し、残った培養液(細胞浮遊液)から有用細胞を遠心濃縮等で回収する方法が挙げられる。複合膜を培養ディッシュから取り出す際にはピペッティング操作によって多孔薄膜面に接着した細胞を洗い流しても良い。また培養系がクローズド系の場合は、使用したものと同じ培養液やPBS溶液等を新たに流し、液流にて有用細胞を流し出し、遠心濃縮回収することができる。
本発明では、共培養によって心筋前駆細胞および/または心筋細胞を提供する。ここで心筋前駆細胞とは、心筋細胞に分化する能力を備えた細胞であって、心筋幹細胞を包含する。これらの細胞は、その起源となる細胞とは異なり、心筋細胞に特徴的な形態的特性、タンパク発現、遺伝子発現を示す。例えば、電子顕微鏡下、心筋細胞はミトコンドリアに富み、ANP顆粒を含有し、Z帯を有し、倒立顕微鏡下、ビーティングする紡錘形をした細胞で、徐々に集合してシートを形成し、同調してビーティングする細胞として観察される。また、心筋前駆細胞はそれよりも丸い球形の細胞で、徐々に紡錘形となり、ビーティングする細胞として観察される。一方、タンパク発現においては、心筋細胞に特徴的なsarcomeric actin(α−sarcomeric Muscular Actin(Sr−1))およびcardiac actinの発現がみられ、遺伝子発現では心筋細胞に特徴的なα,β−MHC、MLC−2v、BNPの発現や、転写因子GATA−4やNKX2.5の発現がみられる。これらの特徴から、分化誘導された細胞は心筋細胞または心筋前駆細胞であることが確認できる。
細胞共培養を行う際、複合膜の不織布側に、さらに1枚以上の不織布を重ねても良い。不織布を重ねることで、不織布側に導入された第1の細胞の3次元培養領域が大きくなる。この場合、重ねる不織布は複合膜を構成する不織布と同じであっても異なっていても構わない。
本発明で用いる複合膜は、実用的な機械的強度を有するので、種々の形態への加工が可能であり、種々の共培養形態が可能となる。例えば同じ大きさの四角形に切断した2枚の複合膜を、内側を不織布にして重ね合わせて3辺をヒートシールして得られる袋状の複合膜を細胞培養液中に1枚配置すれば(袋の開口部は液面より上に出すか、封じておく)、袋状複合膜の内部と外部(袋の内部と外部)に多孔薄膜で隔てられた2つの隣接する培養領域が得られるので、内部と外部の2つの培養領域にて細胞を共培養することができる。同様に2枚の袋状複合膜を培養液中に配置すれば、多孔膜にて隔てられた培養領域が3つ得られ、3枚装入すれば4つの培養領域が得られる。このような方法で、培養液中の共培養の効率を上げることもできる。
不織布の両面が多孔薄膜である3層サンドイッチ構造の複合膜の場合は、膜切断面から不織布中に細胞を導入することにより、支持細胞を閉じ込めた複合膜とすることができ、1枚のシートで細胞共培養を行うことができる。
共培養装置
細胞共培養装置は、複合膜と種々の部材を組み合わせて製造され、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞を共培養して、心筋前駆細胞および/または心筋細胞を誘導、取得するために用いられる。
細胞共培養装置の基本構造は、ガラスやプラスチック製の筒状体の1つの端面に接着させて一体化したカップ型容器と、該カップ型容器と培養液を内部に入れることが可能な容器を組み合わせたものである。筒状体の形態や大きさは特に限定されないが、例えば図1や図2のような形態が挙げられる。1つの端面への複合膜の接着は、複合膜の不織布側からでも多孔薄膜側からでも良く、用途や目的に応じて選択される。ただし既述のように、まず不織布側から複合膜中へ第1の細胞を導入する場合は、不織布面を筒状体に接着した形態が使いやすい。
また培養系へのコンタミネーションを防ぐため、外気と遮断した形で共培養を行う場合には、カップ型容器と、該カップ型容器と培養液を内部に入れることが可能な容器は一体化させておく必要がある。例えば図3に示したような基本ユニットの出入り口を配管等で接続することでクローズドタイプの共培養装置とすることができる。図3の基本ユニットは、細胞1(脂肪組織から単離された細胞が好ましい)の導入口(1)、培養液と細胞2(骨髄細胞または臍帯血由来細胞が好ましい)の導入口(2)、細胞(第2の細胞である骨髄細胞または臍帯血由来細胞から誘導された心筋前駆細胞および/または心筋細胞を含む有用細胞群であることが好ましい)の取り出し口(3)、複合膜(4)、培養液容器(5)、カップ型容器(6)、フレキシブルハウジング(7)からなるが、必要に応じて新たな導入口等を付設することは可能である。フレキシブルハウジング(7)は気密性が保たれているが、柔らかいため細胞1と2を各パーツへ導入後、カップ型容器(6)を培養液容器(5)の底面まで降ろすことが可能な構造になっており、これによって細胞1と2の接触効率を上げることができる。
細胞共培養装置は、複合膜と種々の部材を組み合わせて製造され、骨髄細胞または臍帯血由来細胞と脂肪組織から単離された細胞を共培養して、心筋前駆細胞および/または心筋細胞を誘導、取得するために用いられる。
細胞共培養装置の基本構造は、ガラスやプラスチック製の筒状体の1つの端面に接着させて一体化したカップ型容器と、該カップ型容器と培養液を内部に入れることが可能な容器を組み合わせたものである。筒状体の形態や大きさは特に限定されないが、例えば図1や図2のような形態が挙げられる。1つの端面への複合膜の接着は、複合膜の不織布側からでも多孔薄膜側からでも良く、用途や目的に応じて選択される。ただし既述のように、まず不織布側から複合膜中へ第1の細胞を導入する場合は、不織布面を筒状体に接着した形態が使いやすい。
また培養系へのコンタミネーションを防ぐため、外気と遮断した形で共培養を行う場合には、カップ型容器と、該カップ型容器と培養液を内部に入れることが可能な容器は一体化させておく必要がある。例えば図3に示したような基本ユニットの出入り口を配管等で接続することでクローズドタイプの共培養装置とすることができる。図3の基本ユニットは、細胞1(脂肪組織から単離された細胞が好ましい)の導入口(1)、培養液と細胞2(骨髄細胞または臍帯血由来細胞が好ましい)の導入口(2)、細胞(第2の細胞である骨髄細胞または臍帯血由来細胞から誘導された心筋前駆細胞および/または心筋細胞を含む有用細胞群であることが好ましい)の取り出し口(3)、複合膜(4)、培養液容器(5)、カップ型容器(6)、フレキシブルハウジング(7)からなるが、必要に応じて新たな導入口等を付設することは可能である。フレキシブルハウジング(7)は気密性が保たれているが、柔らかいため細胞1と2を各パーツへ導入後、カップ型容器(6)を培養液容器(5)の底面まで降ろすことが可能な構造になっており、これによって細胞1と2の接触効率を上げることができる。
本発明で用いられる測定方法は以下の通りである。
(1)複合膜を構成する多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率、及び貫通孔の割合
多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率及び貫通孔の割合は、多孔薄膜の膜平面に対する垂直方向からの光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡写真を撮影した上で、得られる平面像(写真)にて観測される多孔薄膜の孔群(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)を解析することで算出される。
具体的には、得られた複合膜をその中心付近から1辺6.7cmの正方形サンプルに打ち抜き、その中心(点A)、及び4つの四隅をB’、C’、D’、E’とし、それら4つの点と点Aとの4つの中点をそれぞれB、C、D、Eとする。A〜Eの5点の近傍を走査型電子顕微鏡写真(日立製作所製S−3000N)を多孔薄膜が接着した側の膜面の垂直方向から撮影する(1000〜3000倍)。
こうして得られた5枚の写真を画像解析ソフト(Image−Pro Plus(Media Cybernetics社製、Version 4.0 for Windows(登録商標))にそれぞれ取り込む。各写真において約200個の孔を含んだ画像範囲を無作為に選択した後、写真全体の中の孔領域を自動識別可能な状態までコントラストを調整して、平均孔直径を自動計算する。なお孔形状の多くは真円ではないため、長径と短径の平均値から各孔の孔直径が算出され、これが平均化される。得られた5つの平均孔直径をさらに平均して「平均孔直径D」を算出する。なお、画像解析ソフトによるコントラスト自動調整だけで孔領域を自動識別させることができない場合は、予め画像解析ソフトに取り込む写真の孔部分を黒く塗りつぶしておくなどの手動作業を行う必要がある。
孔直径の標準偏差σdとは、上記の「平均孔直径D」を規定した5つの画像範囲におけるそれぞれの孔直径の標準偏差を更に平均化した値である。「開孔率」は、同じ画像範囲において得られた5つの開孔率を平均化したものである。いずれも上記の画像解析によって算出できる。
貫通孔の割合は、上記のD、σd及び開孔率を算出したそれぞれの5つの画像領域において、各写真に含まれる全孔数(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)をN1、そのうち貫通している状態の孔数をN2とすると、両者を数えてN2/N1×100(%)の値を計算し、それら5つの平均値として算出する。
(1)複合膜を構成する多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率、及び貫通孔の割合
多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率及び貫通孔の割合は、多孔薄膜の膜平面に対する垂直方向からの光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡写真を撮影した上で、得られる平面像(写真)にて観測される多孔薄膜の孔群(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)を解析することで算出される。
具体的には、得られた複合膜をその中心付近から1辺6.7cmの正方形サンプルに打ち抜き、その中心(点A)、及び4つの四隅をB’、C’、D’、E’とし、それら4つの点と点Aとの4つの中点をそれぞれB、C、D、Eとする。A〜Eの5点の近傍を走査型電子顕微鏡写真(日立製作所製S−3000N)を多孔薄膜が接着した側の膜面の垂直方向から撮影する(1000〜3000倍)。
こうして得られた5枚の写真を画像解析ソフト(Image−Pro Plus(Media Cybernetics社製、Version 4.0 for Windows(登録商標))にそれぞれ取り込む。各写真において約200個の孔を含んだ画像範囲を無作為に選択した後、写真全体の中の孔領域を自動識別可能な状態までコントラストを調整して、平均孔直径を自動計算する。なお孔形状の多くは真円ではないため、長径と短径の平均値から各孔の孔直径が算出され、これが平均化される。得られた5つの平均孔直径をさらに平均して「平均孔直径D」を算出する。なお、画像解析ソフトによるコントラスト自動調整だけで孔領域を自動識別させることができない場合は、予め画像解析ソフトに取り込む写真の孔部分を黒く塗りつぶしておくなどの手動作業を行う必要がある。
孔直径の標準偏差σdとは、上記の「平均孔直径D」を規定した5つの画像範囲におけるそれぞれの孔直径の標準偏差を更に平均化した値である。「開孔率」は、同じ画像範囲において得られた5つの開孔率を平均化したものである。いずれも上記の画像解析によって算出できる。
貫通孔の割合は、上記のD、σd及び開孔率を算出したそれぞれの5つの画像領域において、各写真に含まれる全孔数(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)をN1、そのうち貫通している状態の孔数をN2とすると、両者を数えてN2/N1×100(%)の値を計算し、それら5つの平均値として算出する。
(2)複合膜を構成する多孔薄膜の平均膜厚T、膜厚の標準偏差σtの測定方法、及び孔の断面構造観察
膜断面観察が可能なように凍結割断処理(複合膜をエタノールに浸漬して液体窒素にて凍結後、割断する)した複合膜を、走査型電子顕微鏡用の円盤状試料台に両面テープ等を用いて緩やかに不織布側にて接着固定して白金蒸着する(蒸着膜厚は約12nmになるように設定)。これを走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3000N)で、膜の真横方向(膜平面方向)から観察し、複合膜を構成する多孔薄膜の平均膜厚Tおよび膜厚の標準偏差σtを測定する。
具体的には、上述(1)の平均孔直径Dを算出する際に選んだ、A〜Eの5点近傍の断面を走査型顕微鏡で観察しながら、その画像におけるスケールを用いて、50μm間隔で多孔薄膜厚を算出する。5点それぞれにおいて、約10点膜厚を測定して平均膜厚を計算する。次いで、5点の平均膜厚の値を平均化して、「平均膜厚T」を算出する。さらにこれらのデータを用いて膜厚の標準偏差σtを算出する。
膜断面観察が可能なように凍結割断処理(複合膜をエタノールに浸漬して液体窒素にて凍結後、割断する)した複合膜を、走査型電子顕微鏡用の円盤状試料台に両面テープ等を用いて緩やかに不織布側にて接着固定して白金蒸着する(蒸着膜厚は約12nmになるように設定)。これを走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3000N)で、膜の真横方向(膜平面方向)から観察し、複合膜を構成する多孔薄膜の平均膜厚Tおよび膜厚の標準偏差σtを測定する。
具体的には、上述(1)の平均孔直径Dを算出する際に選んだ、A〜Eの5点近傍の断面を走査型顕微鏡で観察しながら、その画像におけるスケールを用いて、50μm間隔で多孔薄膜厚を算出する。5点それぞれにおいて、約10点膜厚を測定して平均膜厚を計算する。次いで、5点の平均膜厚の値を平均化して、「平均膜厚T」を算出する。さらにこれらのデータを用いて膜厚の標準偏差σtを算出する。
(3)不織布の平均流量孔径の測定
平均流量孔径は、ASTM E1294−89に準拠し、パームポロメーター(PMI(Porous Materials,Inc.)社製)を用いてハーフドライ法により求めた。浸液は同じくPMI社製SILWICK(表面張力19.1dyn/cm)を用いた。
平均流量孔径は、ASTM E1294−89に準拠し、パームポロメーター(PMI(Porous Materials,Inc.)社製)を用いてハーフドライ法により求めた。浸液は同じくPMI社製SILWICK(表面張力19.1dyn/cm)を用いた。
(4)不織布の平均繊維径の測定
複合膜を構成する複合不織布を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VT−8000)を用いて観察し、細繊維および微細繊維の直径を各30点ずつ測定し、平均値を算出して平均繊維径の値とした。
複合膜を構成する複合不織布を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VT−8000)を用いて観察し、細繊維および微細繊維の直径を各30点ずつ測定し、平均値を算出して平均繊維径の値とした。
以下に本発明を、実施例及び比較例に基づき詳細に説明する。ただし、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
[実施例1]
[実施例1]
1)不織布
不織布は、WO2004/094136A1パンフレットに記載された実施例1〜4と同様の条件で製造されたスパンボンド長繊維ウエブ/メルトブロー短繊維ウエブ/スパンボンド長繊維ウエブからなる3層積層ウエブを、フラットロールに通して熱圧着して得たポリエチレンテレフタレート製3層積層不織布を用いた。この不織布は、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することで、平均繊維径15μmの長繊維(細繊維)と平均繊維径1.6μmの短繊維(微細繊維)が交絡して混和した構造を観察することができる。不織布の平均流量孔径は10.4μm、総目付け量20g/m2(不織布1m2当たりの繊維重量)、厚み0.034mmであり、細繊維と微細繊維の総重量における、細繊維の重量割合(wt%)は17wt%である。
不織布は、WO2004/094136A1パンフレットに記載された実施例1〜4と同様の条件で製造されたスパンボンド長繊維ウエブ/メルトブロー短繊維ウエブ/スパンボンド長繊維ウエブからなる3層積層ウエブを、フラットロールに通して熱圧着して得たポリエチレンテレフタレート製3層積層不織布を用いた。この不織布は、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することで、平均繊維径15μmの長繊維(細繊維)と平均繊維径1.6μmの短繊維(微細繊維)が交絡して混和した構造を観察することができる。不織布の平均流量孔径は10.4μm、総目付け量20g/m2(不織布1m2当たりの繊維重量)、厚み0.034mmであり、細繊維と微細繊維の総重量における、細繊維の重量割合(wt%)は17wt%である。
2)不織布の親水化(コーティング)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2−(N、N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA)をランダム共重合したコポリマー(HEMA/DMAMA=97/3(モル比))の0.2wt%エタノール溶液を調製し、これをコーティング溶液とした。不織布をコーティング溶液に浸漬時間が5秒になるように連続的に浸漬した後、ニップロールに挟んで通過させて余分なコーティング溶液を除去し、乾燥してコーティングした不織布を得た。上記コポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の1−1に記載した方法に従った。
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2−(N、N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA)をランダム共重合したコポリマー(HEMA/DMAMA=97/3(モル比))の0.2wt%エタノール溶液を調製し、これをコーティング溶液とした。不織布をコーティング溶液に浸漬時間が5秒になるように連続的に浸漬した後、ニップロールに挟んで通過させて余分なコーティング溶液を除去し、乾燥してコーティングした不織布を得た。上記コポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の1−1に記載した方法に従った。
3)複合膜の製造
クロロホルムを溶媒として、ポリスルホン(PSU:テイジンアコモエンジニアリングプラスチックス製 UDEL P−3500)とポリアクリルアミド系両親媒性ポリマー(既述の化学式(I))を溶質とする1.0g/Lの疎水性有機溶媒溶液を調製した。PSU/ポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは重量比で9/1であった。化学式(1)のポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の2に記載した方法に従った。この両親媒性ポリマーは、ユニットmとユニットnのモル比がm/n=4/1のランダムコポリマーである。
2)で準備したコーティング不織布を一辺16cmの正方形に切り、ビーカー中にて純水に浸漬し、超音波洗浄器で5分間脱気しながら十分に水を保持させた。この水を充分保持した不織布(含水不織布)をビーカーから取り出してガラス板上に置き、更に一辺15cmの正方形を打ち抜いた厚さ1mmの金属枠を、金属枠の打ち抜き部全面から該含水不織布が露出するように不織布上に重ねて配置し、ガラス板、含水不織布、金属枠を重ねた状態にしてクリップで固定した。
この含水不織布が露出した金属枠の打ち抜き部に、準備しておいたPSUとポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーを含むクロロホルム溶液を、静かに14cm3流し入れ、室温25℃、相対湿度40%の恒温恒湿室中にて、溶液表面に相対湿度60%の空気を6リットル/分で吹き付けクロロホルム除去を行って、含水不織布上にPSUを主成分とする多孔薄膜を形成させた。続いて金属枠をはずし、室温で不織布を風乾し、複合膜を得た。
得られた複合膜の膜厚は35μmであり、多孔薄膜の開孔率は45%、平均孔直径Dは3.8μm、σd/Dは0.20、貫通孔の割合は68%、多孔薄膜の平均膜厚Tは3.0μm、σt/Tは0.20であった。
複合膜の表面を、多孔薄膜側から撮影した走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。太い繊維が平均繊維径15μmの長繊維、細い繊維が平均繊維径1.6μmの微細短繊維である。多孔薄膜に膜破れは見られず、多孔薄膜の孔を通して不織布の構造を観察することができる。多孔薄膜には、不織布繊維が侵入(接着)し、その結果、孔が閉塞している状態も観察することができる。
また多孔薄膜近傍の複合膜断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。多孔薄膜の孔は膜内部で膨らんだ球状貫通孔構造であり、互いに隣接する孔が膜面方向に互いに連通していることも観察できる。
クロロホルムを溶媒として、ポリスルホン(PSU:テイジンアコモエンジニアリングプラスチックス製 UDEL P−3500)とポリアクリルアミド系両親媒性ポリマー(既述の化学式(I))を溶質とする1.0g/Lの疎水性有機溶媒溶液を調製した。PSU/ポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは重量比で9/1であった。化学式(1)のポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の2に記載した方法に従った。この両親媒性ポリマーは、ユニットmとユニットnのモル比がm/n=4/1のランダムコポリマーである。
2)で準備したコーティング不織布を一辺16cmの正方形に切り、ビーカー中にて純水に浸漬し、超音波洗浄器で5分間脱気しながら十分に水を保持させた。この水を充分保持した不織布(含水不織布)をビーカーから取り出してガラス板上に置き、更に一辺15cmの正方形を打ち抜いた厚さ1mmの金属枠を、金属枠の打ち抜き部全面から該含水不織布が露出するように不織布上に重ねて配置し、ガラス板、含水不織布、金属枠を重ねた状態にしてクリップで固定した。
この含水不織布が露出した金属枠の打ち抜き部に、準備しておいたPSUとポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーを含むクロロホルム溶液を、静かに14cm3流し入れ、室温25℃、相対湿度40%の恒温恒湿室中にて、溶液表面に相対湿度60%の空気を6リットル/分で吹き付けクロロホルム除去を行って、含水不織布上にPSUを主成分とする多孔薄膜を形成させた。続いて金属枠をはずし、室温で不織布を風乾し、複合膜を得た。
得られた複合膜の膜厚は35μmであり、多孔薄膜の開孔率は45%、平均孔直径Dは3.8μm、σd/Dは0.20、貫通孔の割合は68%、多孔薄膜の平均膜厚Tは3.0μm、σt/Tは0.20であった。
複合膜の表面を、多孔薄膜側から撮影した走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。太い繊維が平均繊維径15μmの長繊維、細い繊維が平均繊維径1.6μmの微細短繊維である。多孔薄膜に膜破れは見られず、多孔薄膜の孔を通して不織布の構造を観察することができる。多孔薄膜には、不織布繊維が侵入(接着)し、その結果、孔が閉塞している状態も観察することができる。
また多孔薄膜近傍の複合膜断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。多孔薄膜の孔は膜内部で膨らんだ球状貫通孔構造であり、互いに隣接する孔が膜面方向に互いに連通していることも観察できる。
4)マウス脂肪組織細胞とマウス骨髄細胞の共培養
製造した複合膜を13mmφの円形状に切り抜き、ガラス製リング(旭テクノグラス株式会社製、クローニングリング、内径10mm、外径12mm、高さ10mm)の1つの端面に、複合膜の不織布面にて接着してカップ型容器を作成した。接着剤にはポリマー濃度17%のPSUのクロロホルム溶液を用いた。
このカップ型容器を121℃で20分間オートクレーブ滅菌した後、クリーンベンチ内でタイプI型コラーゲンをDMEM10%FCS溶液で100倍希釈したものに10分静置浸漬し、これを取り出して複合膜を下にして吸水性シート(セルロース製不織布、オートクレーブ滅菌済み)の上に置いて余分なコラーゲン溶液を吸収除去した。続いてこのカップ型容器を、別の吸水性シート上に複合膜を下にして置き、カップ内の複合膜上にマウスの脂肪組織から単離した細胞の懸濁液(8×106個を含む)を滴下した。殆どの液体が複合膜を通過して吸水シートに吸収されたことで、マウス脂肪組織由来の細胞が導入された複合膜付きのカップ型容器を得た。
なおマウスの脂肪組織由来の細胞を含む懸濁液は、次のように作成した。まず生後2日目のマウス10匹分から背部の脂肪組織を実体顕微鏡下で回収し、眼科手術用ハサミで細切後、さらに18G、21G、22Gの注射針にて、組織を細切した。37℃で10分、ディスパーゼ液に浸透して細胞をほぐし、次に40μmのナイロンメッシュに通すことで組織片を除去し、遠心処理後、10mlのDMEM10%FCS溶液にサスペンドし、細胞数をカウントした。
次に12wellの培養プレートから任意に得らればれた4つのwellに、No.1〜No.4のナンバリングを施し、No.1〜No.4のwellに各々DMEM10%FCSの培養液を入れた。次にNo.1〜No.3のwellにPKH67 Green Fluorescent cell Linker Kit(SIGMA製)で蛍光標識したマウス骨髄細胞の1×106個を播種し、さらにNo.1のwellに、マウス脂肪組織由来の細胞が導入された複合膜付きカップ型容器を、複合膜がwellの底面に接するように浸漬、静置し、5%CO2、37℃で共培養を開始した。なお、No.2〜No.4のwellは、以下の実施例2〜比較例2の実験に使用した。
7日間共培養を行った後、カップ型容器をNo.1のwellより取り去り、残った細胞の培養をさらに7日間継続した。
製造した複合膜を13mmφの円形状に切り抜き、ガラス製リング(旭テクノグラス株式会社製、クローニングリング、内径10mm、外径12mm、高さ10mm)の1つの端面に、複合膜の不織布面にて接着してカップ型容器を作成した。接着剤にはポリマー濃度17%のPSUのクロロホルム溶液を用いた。
このカップ型容器を121℃で20分間オートクレーブ滅菌した後、クリーンベンチ内でタイプI型コラーゲンをDMEM10%FCS溶液で100倍希釈したものに10分静置浸漬し、これを取り出して複合膜を下にして吸水性シート(セルロース製不織布、オートクレーブ滅菌済み)の上に置いて余分なコラーゲン溶液を吸収除去した。続いてこのカップ型容器を、別の吸水性シート上に複合膜を下にして置き、カップ内の複合膜上にマウスの脂肪組織から単離した細胞の懸濁液(8×106個を含む)を滴下した。殆どの液体が複合膜を通過して吸水シートに吸収されたことで、マウス脂肪組織由来の細胞が導入された複合膜付きのカップ型容器を得た。
なおマウスの脂肪組織由来の細胞を含む懸濁液は、次のように作成した。まず生後2日目のマウス10匹分から背部の脂肪組織を実体顕微鏡下で回収し、眼科手術用ハサミで細切後、さらに18G、21G、22Gの注射針にて、組織を細切した。37℃で10分、ディスパーゼ液に浸透して細胞をほぐし、次に40μmのナイロンメッシュに通すことで組織片を除去し、遠心処理後、10mlのDMEM10%FCS溶液にサスペンドし、細胞数をカウントした。
次に12wellの培養プレートから任意に得らればれた4つのwellに、No.1〜No.4のナンバリングを施し、No.1〜No.4のwellに各々DMEM10%FCSの培養液を入れた。次にNo.1〜No.3のwellにPKH67 Green Fluorescent cell Linker Kit(SIGMA製)で蛍光標識したマウス骨髄細胞の1×106個を播種し、さらにNo.1のwellに、マウス脂肪組織由来の細胞が導入された複合膜付きカップ型容器を、複合膜がwellの底面に接するように浸漬、静置し、5%CO2、37℃で共培養を開始した。なお、No.2〜No.4のwellは、以下の実施例2〜比較例2の実験に使用した。
7日間共培養を行った後、カップ型容器をNo.1のwellより取り去り、残った細胞の培養をさらに7日間継続した。
5)細胞観察
7日間の共培養後、位相差顕微鏡にてwell中の培養液を観察した結果、多数の増殖細胞の存在が確認され(図6)、さらに蛍光顕微鏡にて蛍光発色が観察されたことから、増殖細胞はマウス骨髄細胞由来である事が明らかとなった(図7)。
さらに14日後の培養液中には、倒立顕微鏡下、紡錘形の形態的特徴を有し、ビーティングする心筋細胞様の細胞が存在し、これらは実体顕微鏡下にてミトコンドリアに富み、ANP顆粒を含有し、Z帯を有することが観察された。
7日間の共培養後、位相差顕微鏡にてwell中の培養液を観察した結果、多数の増殖細胞の存在が確認され(図6)、さらに蛍光顕微鏡にて蛍光発色が観察されたことから、増殖細胞はマウス骨髄細胞由来である事が明らかとなった(図7)。
さらに14日後の培養液中には、倒立顕微鏡下、紡錘形の形態的特徴を有し、ビーティングする心筋細胞様の細胞が存在し、これらは実体顕微鏡下にてミトコンドリアに富み、ANP顆粒を含有し、Z帯を有することが観察された。
6)免疫染色による心筋細胞の確認
上記5)にて観察された培養14日後の心筋細胞様の細胞が、心筋細胞の特徴を備えていることを確認するために、蛍光ラベルしたanti−sarcomeric actin(α−Sarcomeric Muscular Actin(Sr−1))抗体(DAKO製)およびanti−cardiac actin(MBL製)を用いた免疫染色を行った。その結果、観察された心筋細胞様の細胞は、上記抗体にて濃青色に染色されることが分かり心筋細胞への誘導が確認された(図8)。なお、sarcomeric actinおよびcardiac actinは、いずれも心筋細胞に特徴的な発現が認められているタンパクである。
上記5)にて観察された培養14日後の心筋細胞様の細胞が、心筋細胞の特徴を備えていることを確認するために、蛍光ラベルしたanti−sarcomeric actin(α−Sarcomeric Muscular Actin(Sr−1))抗体(DAKO製)およびanti−cardiac actin(MBL製)を用いた免疫染色を行った。その結果、観察された心筋細胞様の細胞は、上記抗体にて濃青色に染色されることが分かり心筋細胞への誘導が確認された(図8)。なお、sarcomeric actinおよびcardiac actinは、いずれも心筋細胞に特徴的な発現が認められているタンパクである。
[実施例2]
実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.4のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞未播種)に、ヒト臍帯血からFicoll−Paque Plusを用いて単核球分画のみを分離したヒト臍帯血由来単核球細胞を1×106個播種した。それ以外は、実施例1と同様の手順で、マウス脂肪組織由来細胞が導入された複合膜付きカップ型容器を用い、脂肪組織由来細胞との共培養を実施した。
その結果、実施例1と同様の評価にて、14日後のヒト臍帯血由来単核球細胞中に心筋細胞の存在を確認した。
実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.4のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞未播種)に、ヒト臍帯血からFicoll−Paque Plusを用いて単核球分画のみを分離したヒト臍帯血由来単核球細胞を1×106個播種した。それ以外は、実施例1と同様の手順で、マウス脂肪組織由来細胞が導入された複合膜付きカップ型容器を用い、脂肪組織由来細胞との共培養を実施した。
その結果、実施例1と同様の評価にて、14日後のヒト臍帯血由来単核球細胞中に心筋細胞の存在を確認した。
[比較例1]
実施例1において、複合膜付きカップ型容器の代わりに、0.4ミクロンのポアを有する市販の膜付きカップ型容器(Cell culture insert、FALCON製)を使用する以外は、実施例1と同様にしてマウス骨髄細胞とマウス脂肪組織由来細胞の共培養を実施した。この膜は、ポリエチレンテレフタレート製の単層膜で厚みが約15μ、開孔率は約5%である。
具体的には、実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.2のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞播種)に、カップ内部の膜面にマウス脂肪組織由来細胞を載せた市販膜付きカップ型容器を浸漬、静置した。
この膜を用いた場合、共培養7日後には、well中に細胞が殆ど観察されず、多くが死滅したことが分かった。膜の厚みが大きく、開孔率も低い既存の膜では細胞間接着を含めた細胞間相互作用が殆ど起こりえないためであると考えられた。
実施例1において、複合膜付きカップ型容器の代わりに、0.4ミクロンのポアを有する市販の膜付きカップ型容器(Cell culture insert、FALCON製)を使用する以外は、実施例1と同様にしてマウス骨髄細胞とマウス脂肪組織由来細胞の共培養を実施した。この膜は、ポリエチレンテレフタレート製の単層膜で厚みが約15μ、開孔率は約5%である。
具体的には、実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.2のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞播種)に、カップ内部の膜面にマウス脂肪組織由来細胞を載せた市販膜付きカップ型容器を浸漬、静置した。
この膜を用いた場合、共培養7日後には、well中に細胞が殆ど観察されず、多くが死滅したことが分かった。膜の厚みが大きく、開孔率も低い既存の膜では細胞間接着を含めた細胞間相互作用が殆ど起こりえないためであると考えられた。
[比較例2]
実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.3のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞播種)をそのまま培養した(骨髄細胞の単独培養)。
この場合も、培養7日後には、well中に生細胞が観察されず、殆ど死滅したことが分かった。この培養条件では、マウス骨髄細胞を単独で増殖させることはできないことが分かった。
実施例1の4)にて準備した12wellの培養プレートのNo.3のwell(DMEM10%FCS培養液入り、マウス骨髄細胞播種)をそのまま培養した(骨髄細胞の単独培養)。
この場合も、培養7日後には、well中に生細胞が観察されず、殆ど死滅したことが分かった。この培養条件では、マウス骨髄細胞を単独で増殖させることはできないことが分かった。
本発明の方法では、患者本人の骨髄細胞(HLA100%一致)もしくはHLAが極めて一致した骨髄細胞もしくは臍帯血由来細胞から、支持細胞(脂肪組織から単離された細胞)との細胞共培養という極めて安全性の高い誘導方法にて、遺伝子操作を施すことなく、心筋細胞および/または心筋前駆細胞を得ることが可能である。しかも骨髄細胞または臍帯血由来細胞と支持細胞は多孔薄膜にてセパレートされているので、共培養後に支持細胞を分離することが容易であり、コンタミネーションも起こらず、同種の支持細胞を使うことも可能である。したがって、本発明の方法は、心臓領域の再生医療に好適に利用することができる。
1 細胞1の導入口
2 培養液と細胞2の導入口
3 細胞取り出し口
4 複合膜
5 培養液容器
6 カップ型容器
7 フレキシブルハウジング
2 培養液と細胞2の導入口
3 細胞取り出し口
4 複合膜
5 培養液容器
6 カップ型容器
7 フレキシブルハウジング
Claims (12)
- 平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に多孔薄膜が積層された複合膜を用い、哺乳動物から単離された骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養することで、遺伝子操作を施すことなく、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化させることを特徴とする心筋細胞の誘導方法であって、該多孔薄膜の開孔率が15〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦15、孔直径の標準偏差σd(μm)が0≦σd/D≦0.6であって、且つ、多孔薄膜内部にて隣接する孔が連通し、多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入していることを特徴とする上記誘導方法。
- 多孔薄膜の平均膜厚T(μm)が0.1≦T≦10であり、膜厚の標準偏差σt(μm)が0≦σt/T≦0.5である請求項1に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 多孔薄膜が有する貫通孔の割合が20%以上である請求項1又は2のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である請求項1〜3のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 不織布の平均流量孔径が1μm以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 不織布の平均流量孔径が1〜100μmである請求項1〜5のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 骨髄細胞が間葉系幹細胞あるいは造血幹細胞である請求項1〜6のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 臍帯血由来細胞が単核球である請求項1〜7のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 得られる心筋前駆細胞および/または心筋細胞が、sarcomeric actin陽性である請求項1〜8のいずれか一項に記載の心筋細胞の誘導方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法で作製される心筋前駆細胞および/または心筋細胞。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合膜を含んでなり、哺乳動物の骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って共培養することで、該骨髄細胞または臍帯血由来細胞を心筋前駆および/または心筋細胞に分化誘導させることが可能な細胞共培養装置。
- 哺乳動物から単離された骨髄細胞または臍帯血由来細胞と、哺乳動物の脂肪組織から単離された細胞を、相互に接触可能な状態で仕切って共培養するための複合膜であって、以下の性質(i)を有する不織布の少なくとも一方の面上に、以下の性質(ii)を有する多孔薄膜が、該多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入することにより積層されていることを特徴とする複合膜。
(i)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布
(ii)有機高分子化合物からなり、開孔率が15〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦15、孔直径の標準偏差σd(μm)が0≦σd/D≦0.6である多孔薄膜
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-
2008
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