JP6452304B2 - 細胞シート培養基材、細胞シート培養基材複合物、及び細胞シート/培養基材複合の製造方法 - Google Patents

細胞シート培養基材、細胞シート培養基材複合物、及び細胞シート/培養基材複合の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、医学、生物、創薬、薬学等の分野において有用な培養基材、細胞シート培養基材複合物、及び細胞シート培養基材複合の製造方法に関するものである。
近年の再生医療技術の発展に伴い、患者本人の細胞を生体外で培養したり、再生したり、或いはその機能を高めたりしてから生体内へ戻し治療するといった技術が開発され、実用化されつつある。これまで、治療困難であった臓器は、他人の臓器と置き換えることで治療されてきており、臓器移植技術は日本においても一般化されつつある。移植対象となる臓器も皮膚、角膜、腎臓、肝臓、心臓等と実に多様であり、術後の経過も一昔前と比較して格段に改善され、医療の一技術として確立されている。
日本では約50年前にアイバンクが設立され、移植活動も開始された。現在、角膜移植の必要な国内の患者は年間約2万人が存在しているといわれているが、未だドナー登録者数が十分ではなく、実際に移植治療が行えているのはその約1/10の2000人程度である。角膜移植というほぼ確立された技術があるにもかかわらず、ドナー不足が問題であるため、次なる医療技術が求められているのが現状である。このような背景のもと、患者本人の正常な細胞を所望の大きさまで培養し移植しようとする再生医療技術が開発さて、実用化されつつある。
特開平02−211865号公報(特許文献1)には、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上にて、細胞を上限臨界溶解温度以下または下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上または下限臨界溶解温度以下にすることにより酵素処理なくして培養細胞を剥離させる新規な細胞培養法が示されている。また、特開平05−192138号公報(特許文献2)には、この温度応答性細胞培養基材を利用して皮膚細胞を上限臨界溶解温度以下或いは下限臨界溶解温度以上で培養し、その後上限臨界溶解温度以上或いは下限臨界溶解温度以下にすることにより培養皮膚細胞を低損傷で剥離させることが記載されている。温度応答性細胞培養基材を利用することにより、従来の培養技術に対しさまざまな新規な展開をはかれるようになってきた。さらに、再表02−008387号公報(特許文献3)では温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上で心筋組織の細胞を培養し、心筋様細胞シートを得、その後、培地温度を上限臨界溶解温度以上又は下限臨界溶解温度以下とし、培養した重層化細胞シートをポリマー膜に密着させ、そのままポリマー膜と共に剥離させること、及びそれを所定の方法で3次元構造化させることにより、構造欠陥の少ない、in vitroでの心筋様組織として幾つかの機能を備えた細胞シート、及び3次元構造が構築されることが見いだされている。しかしながら、上述した従来技術では心筋様細胞シートの積層化は無限に行えるものではなく、3層程度が限界であり、簡便に多数回積層化できる技術が強く望まれていた。
前述のような細胞シートの積層限界という問題を解決するために、FASEB.J.,20(6),708−710(2006)(非特許文献1)では生体内で細胞シートを積層化することが試みられ、1mm厚の心筋シート積層化物の得られたことが示されている。その中で、厚みのある細胞シート積層化物を得るためには、積層化された各細胞もしくは各細胞シートへ栄養や酸素が供給されることが必須であることが分かったが、FASEB.J.,20(6),708−710(2006)(非特許文献1)の方法では、動物の生体内へ細胞シートを繰り返して移植する必要があり、その都度、移植部位を開口しなくてはならず、被移植側の負担の大きな方法であり、この課題を解決するような、簡便に多数回積層化できる技術が強く望まれていた。
前述の問題を解決する方法として、動物の生体組織由来の血管床を用い、その上に細胞シートを積層化して培養液を灌流培養する方法により細胞シートを積層化する方法(特許文献4)、及び、コラーゲンゲルにより形成された人工血管床を用いて細胞シートを積層化する方法(特許文献5)により、動物生体内の組織を利用することなく、細胞シートの積層限界を克服することが可能となった。
特開平02−211865号公報 特開平05−192138号公報 再公表2002−008387号公報 国際公開第2012/036224号 国際公開第2012/036225号
FASEB.J.,20(6),708−710(2006)
細胞シートを生体外で多数回積層するためには、生体由来の血管床(特許文献4)及びコラーゲン製の人工血管床(特許文献5)を用いて行う方法であった。前者の血管床は、生体組織を利用するために、細胞シートと血管床との間にも血管網が形成され、動脈静脈を有した細胞シート積層化物が得られる一方、血管床として生体組織を用いていたため、工業的な生産が困難であるという課題を抱えていた。また、後者の人工血管床では、工業的に生産が可能である一方、積層化した細胞シートを長期間培養すると、細胞シートの代謝作用により耐久性が乏しいのみならず、動脈と静脈を有した積層化細胞シートを得ることが困難であった。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、工業的に生産可能な材料を用い、培養面に貫通孔及び送液用流路を設置した構造を有する培養基材を発明した。これにより、生体外の環境においても積層化細胞シートを維持培養することが可能となった。また、本発明が提供する培養基材は一般的な工業用材料を用いるため、生体由来及び天然由来の材料を用いた先行技術と比較して、耐久性に優れているという利点を有しており、また、動脈と静脈を有した積層化細胞シートを得ることも可能となり、実用性の高い技術である。
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の、細胞シート培養基材が提供される。細胞シートを維持、培養するための液体が流れる流路と、前記流路の上部に設けた細胞シートが接する培養面と、前記流路に繋がり、前記流路に前記液体を流入又は流出させる接続部と、前記流路と前記培養面を繋ぐ複数の貫通路と、前記貫通路に繋がり、前記流路に沿って配置され、前記培養面の表面に開口した複数の貫通孔とを備える。
この形態によれば、培養期間が長期間にわたっても耐久性に優れ、なおかつ、品質が一定した細胞シート培養基材を提供することが可能となる。また、工業的に大量生産することも可能となる。
前記の細胞シート培養基材においては、前記流路の途中に、前記細胞シートの大きさ以内に前記貫通孔が分布された流路を設けることが好ましい。
この形態によれば、細胞シートに接触する貫通孔の数が増加し、その結果、この貫通孔から供給される培地等の量を増加させることができる。これにより、細胞培養基材上に付着させた細胞シートに供給される酸素の量、栄養条件等が向上し、細胞シートの生存率が向上する。
前記の細胞シート培養基材においては、前記流路が2以上の通路からなることが好ましい。
これによれば、流路毎に流す培地等の流速を変えることが可能となる。各流路の流速に差を設けることにより、圧力勾配が形成されることになり、これにより、圧力が高い動脈側流路と圧力の低い静脈側流路を形成することができ、動脈と静脈が細胞シートを得ることが可能となる。
前記の細胞シート培養基材においては、前記貫通孔の直径が100μm〜300μmであることが好ましく、さらに好ましくは120μm〜280μmがよく、最も好ましくは150μm〜250μmである。
この形態によれば、細胞シートに供給される培地等の圧力を最適化することができる。貫通孔が100μmより小さい場合は細胞シートに供給される培地の圧力量が低すぎるため適当ではなく、逆に300μmより大きい場合は圧力が高くなりすぎるため、細胞シートに形成される血管網を破壊してしまうため、適当ではない。
前記の細胞シート培養基材においては、隣接した前記貫通孔同士の中心間の距離が100μm〜1mmであることが好ましく、さらに好ましくは、200μm〜800μmが良く、最も好ましくは250μm〜750μmが良い。
これの形態によれば、工業的に複数の貫通孔を形成する際に適当である。100μmより小さいと、貫通孔同士が隣接しすぎてしまい、強度不足となってしまい、1mmより大きい場合は、貫通孔の数が少なくなってしまい、細胞シートへ供給される培地量が減少してしまい、適当でない。
前記の細胞シート培養基材においては、前記流路に連結する、前記液体の保持槽を備えていることが好ましい。
これによれば、流路に連結する培地の送液手段の小型化を図ることが可能となり、装置の簡素化及びコスト削減を図ることが出来る。流路に流す培地の流速は、保持槽(静水圧負荷用コネクタ)へ入れる培地の量を変えることにより制御可能であり、大がかりな装置を要しない。
前記の細胞シート培養基材においては、前記細胞シート培養基材の材料が、生体適合性材料であることが好ましい。
この形態によれば、細胞シートを付着した細胞シート/培養基材複合物を、移植を要する臓器、組織に移植することが可能となる。
前記の細胞シート培養基材においては、前記生体適合性材料が、シリコーン樹脂、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール若しくはポリエチレングリコールのいずれか又はこれら2種以上を組合せたものであることが好ましい。
この形態によれば、細胞シートを付着した細胞シート/培養基材複合物を、移植を要する臓器、組織に移植することが可能となる。
細胞シート培養基材の前記培養面に、細胞シートが付着したものである細胞シート/培養基材複合物であることが好ましい。
この形態によれば、細胞数を増加することができ、より治療効果が高い細胞シート/培養基材複合物を得ることが可能となる。
前記の細胞シート/培養基材複合物においては、前記細胞シートが2以上の層からなることが好ましい。
この形態によれば、培養基材で維持培養する細胞数を増加することができ、より厚い細胞シート積層化物を得ることが可能となる。
前記の細胞シート/培養基材複合物においては、前記細胞シートが、血管内皮細胞を含むものであることが好ましい。
この形態によれば、細胞シート内に血管網を構築させることができ、血管網を有した細胞シート積層化物を得ることが可能となる。
本発明の第2の観点によれば、以下のような、工程を含む細胞シート/培養基材複合物の製造方法が提供される。細胞シート/培養基材複合物を製造する方法であって、
(a)0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培地をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで細胞を剥離して細胞シートを得る工程;
(b)工程(a)で得られた細胞シートを、前記細胞シート培養基材上に積層する工程;及び
(c)工程(b)で得られた細胞シートを付着させた細胞シート付着培養基材に対し、前記流路に培地を灌流させて、所定時間培養する工程を含む、細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
これにり、細胞シートを積層した細胞シート/培養基材複合物を得ることができる。
前記工程(b)で得られた細胞シートを積載した細胞シート積載培養基材に、さらに前記工程(a)で得られた細胞シートを積層する工程を1回以上繰り返して、2層以上の細胞シートを付着させることで、細胞シート/培養基材複合物の製造方法が提供される。
これによれば、細胞シートを複数層積層した細胞シート/培養基材複合物を得ることができる。
前記の細胞シート/培養基材複合物の製造方法においては、前記工程(b)において、前記細胞シートを前記培養面に付着させる前に、前記培養面にハイドロゲルを被覆する工程を含むことが好ましい。
これによれば、細胞シートと培養基材との接着効率を向上させることができ、また、前記貫通孔と細胞シートとの間に血管網をより形成させることができる。
前記の細胞シート/培養基材複合物の製造方法においては、前記工程(a)において、前記ポリマーがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)であることが好ましい。
これに得られる細胞シートは、培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された細胞シートは接着性蛋白質を有し、細胞をシート状に剥離させた際には細胞−細胞間のデスモソーム構造がある程度保持されたものとなる。このことにより、培養基材上へ載せたとき良好に接着することができ、効率良く生着することができるようになる。
前記の細胞シート/培養基材複合物の製造方法においては、前記ハイドロゲルが、フィブリンゲル、ゼラチンゲル、フィブロネクチン、ラミニン、及びコラーゲンからなる群から1種又は2種以上から選択されるものであることが好ましい。
これによれば、細胞シートと培養基材との接着効率を向上させることができ、また、前記貫通孔と細胞シートとの間に血管網をより形成させることができる。
前記の細胞シート/培養基材複合物の製造方法においては、前記ハイドロゲルが、血管内皮細胞を混合したものであることが好ましい。
これによれば、細胞シートと培養基材との接着効率を向上させることができ、また、前記貫通孔と細胞シートとの間に血管網をさらに効果的に形成させることができる。
シート状の細胞組織での血管網形成の確認の図である。青は核を示し、緑はCD31を発現している部位を示す。 ハイドロゲルの種類と血管網構築の関係を示す図である。緑は血管内皮細胞を示す。 ハイドロゲルの濃度と血管網構築関係を示す図である。緑は血管内皮細胞を示す。 ハイドロゲルを足場とした細胞組織での血管網形成の確認の図である。青は核を示し、緑はCD31を発現している部位を示す。 培養基材設計の概要(1本流路型)を示す図である。 培養基材設計の概要(流路モニタリング機能付き)を示す図である。 培養基材設計の概要(動静脈型)を示す図である。 作製した培養基材の拡大写真を示す図である。 作製した培養基材の写真を示す図である。 培養基材の作製方法を示す図である。 培養基材の表面処理方法を示す図である。 静水圧負荷用コネクタに設置した培養基材を示す図である。 シート状の細胞組織(斎ぼうシート)の培養基材上での培養を示す図である。 流路内への細胞の播種の様子を示す図である。赤はHUVEC細胞を示す。 シート状細胞組織(細胞シート)への灌流の確認についての図である。 ゲルを足場とした細胞組織への灌流の確認についての図である。 血管網の三次元分布を示す図である。緑はHUVEC細胞の位置を示し、赤はマイクロスフェアを示す。 デバイス貫通孔内に形成された血管内皮細胞による管腔構造(左)及び管腔構造の中を通る蛍光ビーズ(右)を示す図である。 生体への埋め込み可能な培養基材の試作図である。
本発明は、工業的に量産可能であり、細胞シートを生体外において簡便に積層化し、維持培養するための細胞培養基材を得ることを目的としている。また、得られた細胞培養基材上に細胞シートを積層化することで、動脈静脈を有した細胞シート/培養基材混合物を得ることである。これの発明の完成により、工業的に細胞シート積層化物を生体外において量産とするものである。
本発明の細胞シートに使用される細胞の種類は特に限定されるものではなく、得られた細胞シート積層化物を使って移植したい部位の細胞、又は評価を行いたい臓器由来若しくは組織由来の細胞を使用すれば良い。例えば、心筋組織の再生、或いは心筋機能を評価する方法を目的とした場合、使用する細胞としては心筋細胞、心筋芽細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞のいずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。肝組織の再生、肝組織を模擬した人工肝臓の作製、或いは肝組織の機能を評価する方法等を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、肝実質細胞、類洞内皮細胞、クッパー細胞、星細胞、ピット細胞、胆管上皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。腎組織の再生、腎組織を模擬した人工腎臓の作製、或いは腎機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、腎細胞、顆粒細胞、集合管上皮細胞、壁側上皮細胞、足細胞、メサンギウム細胞、平滑筋細胞、尿細管細胞、間在細胞、糸球体細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。副腎組織の再生、副腎を模擬した人工副腎の作製、或いは副腎機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、副腎髄質細胞、副腎皮質細胞、球状層細胞、束状層細胞、網上層細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。皮膚の再生、或いは皮膚機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、表皮角化細胞、メラノサイト、立毛筋細胞、毛包細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。粘膜組織の再生、或いは粘膜組織の機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、粘膜を構成する組織から採取される細胞を使用すればよい。粘膜の種類としては、頬側粘膜、胃粘膜、腸管粘膜、嗅上皮、口腔粘膜、子宮粘膜などが挙げられる。粘膜組織から採取される細胞のうち、いずれか1種、もしくは2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。上記の細胞の含有比率についても特に限定されるものではない。その際、細胞シート内に血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞等が混合されていると、細胞シート内に血管網の構築が効率良く行われ、好都合である。
本発明で用いられる細胞は、生体組織から直接採取した細胞、直接採取し培養系等で分化させた細胞、或いは細胞株が挙げられるがその種類は、何ら制約されるものではない。これらの細胞の由来は特に制約されるものではないが、例えば、ヒト、或いはラット、マウス、モルモット、マーモセット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サル、チンパンジーあるいはそれらの免疫不全動物等が挙げられるが、本発明の細胞シート積層化物をヒトの治療に用いる場合はヒト、ブタ、サル、チンパンジー由来の細胞を用いる方が望ましい。
本発明に利用される細胞は特に限定するものではないが、例えば細胞を試薬、タンパク質、遺伝子等の少なくとも1つ以上の方法によって蛍光染色及び/または色素染色したものでも良い。レポーター遺伝子が導入されている細胞を利用した際、レポーター遺伝子が発現して作られるレポータータンパクによる蛍光、又はレポータータンパクが特異的な基質と反応する際に放出する蛍光を検出すれば、細胞シート又は細胞シート積層体の活性を知ることができる。利用されるレポーター遺伝子、又はレポータータンパク質は特に限定されないが、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、DsReD、β−グルクロニダーゼ、LacZ、カエデ、ルシフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ等が挙げられる。細胞へ遺伝子を導入する方法は定法に従えば良く、特に限定されないが、例えば、リポフェクション法、ウイルスベクター法、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法等が挙げられる。また、これらの遺伝子導入法を利用して、レポーター遺伝子が宿主ゲノム内に導入された遺伝子導入動物(トランスジェニック アニマル)由来の細胞を利用しても良い。レポーター遺伝子の発現を調節するプロモーター配列についても特に限定されるものではなく、レポーター遺伝子発現の検出目的に応じ、適宜選択すればよい。
本発明における細胞シートは、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培地をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで培養した細胞をシート状に剥離させることで得られる。その際、細胞は0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養される。その温度とは通常、細胞を培養する温度である37℃が好ましい。本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。その際、培養、剥離されるものが細胞であることから、分離が5℃〜50℃の範囲で行われるため、温度応答性ポリマーとしては、ポリ−N−n−プロピルアクリルアミド(単独重合体の下限臨界溶解温度21℃)、ポリ−N−n−プロピルメタクリルアミド(同27℃)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(同32℃)、ポリ−N−イソプロピルメタクリルアミド(同43℃)、ポリ−N−シクロプロピルアクリルアミド(同45℃)、ポリ−N−エトキシエチルアクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N−エトキシエチルメタクリルアミド(同約45℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルアクリルアミド(同約28℃)、ポリ−N−テトラヒドロフルフリルメタクリルアミド(同約35℃)、ポリ−N,N−エチルメチルアクリルアミド(同56℃)、ポリ−N,N−ジエチルアクリルアミド(同32℃)などが挙げられる。本発明に用いられる共重合のためのモノマーとしては、ポリアクリルアミド、ポリ−N、N−ジエチルアクリルアミド、ポリ−N、N−ジメチルアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリアクリル酸及びその塩、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース、カルボキシメチルセルロースなどの含水ポリマーなどが挙げられるが、特に制約されるものではない。
本発明で用いられる、上述の各ポリマーの基材表面への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。培養基材表面への温度応答性ポリマーの被覆量は、1.1〜2.3μg/cmの範囲が良く、好ましくは1.4〜1.9μg/cmであり、さらに好ましくは1.5〜1.8μg/cmである。1.1μg/cmより少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該ポリマー上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に2.3μg/cm以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。このような場合、温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆すれば、基材表面の温度応答性ポリマー被覆量は2.3μg/cm以上であっても良く、その際の温度応答性ポリマーの被覆量は9.0μg/cm以下が良く、好ましくは8.0μg/cm以下が良く、7.0μg/cm以下が好都合である。温度応答性ポリマーの被覆量が9.0μg/cm以上であると温度応答性ポリマー被覆層の上にさらに細胞接着性タンパク質を被覆しても細胞が付着し難くなり好ましくない。そのような細胞接着性タンパク質の種類は何ら限定されるものではないが、例えば、コラーゲン、ラミニン、ラミニン5、フィブロネクチン、マトリゲル等の単独、もしくは2種以上の混合物が挙げられる。また、これらの細胞接着性タンパク質の被覆方法は常法に従えば良く、通常、細胞接着性タンパク質の水溶液を基材表面に塗布し、その後その水溶液を除去しリンスする方法がとられている。本発明は、温度応答性培養皿を利用したなるべく細胞シートそのものを利用しようとする技術である。従って、温度応答性ポリマー層上の細胞接着性タンパク質の被覆量が極度に多くなっては好ましくない。温度応答性ポリマーの被覆量、並びに細胞接着性タンパク質の被覆量の測定は常法に従えば良く、例えばFT−IR−ATRを用いて細胞付着部を直接測る方法、あらかじめラベル化したポリマーを同様な方法で固定化し細胞付着部に固定化されたラベル化ポリマー量より推測する方法などが挙げられるがいずれの方法を用いても良い。
本発明の方法において、培養時に播種する細胞数は使用細胞の動物種によって異なるが、一般的に0.4×10〜2.5×10個/cmが良く、好ましくは0.5×10〜2.1×10個/cmが良く、さらに好ましくは0.6×10〜1.7×10個/cmが良い。播種濃度が0.4×10個/cm以下の場合、一般に細胞の増殖が悪く、得られる細胞シートの機能の発現程度が悪化し、本発明を実施する点において好ましくない。本発明においては、培養した細胞シートを温度応答性基材から剥離回収するには、培養された細胞の付着した培養基材の温度を培養基材上の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって剥離させることができる。その際、培地中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞をより早く、より高効率に剥離、回収する目的で、基材を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
以上のことを温度応答性ポリマーとしてポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)を例にとり説明する。ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)は31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖が凝集し、白濁する。逆に31℃以下の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆、固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃以下の温度では、基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が基材表面に被覆、固定されているため、基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できないほどの表面となり、培養中の細胞、もしくは細胞シートも冷却するだけで剥離させられることになる。
被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外のポリマー化合物、セラミックス類など全て用いることができる。
本発明における細胞シートは培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された細胞シートは接着性蛋白質を有し、細胞をシート状に剥離させた際には細胞−細胞間のデスモソーム構造がある程度保持されたものとなる。このことにより、血管床上へ載せたとき良好に接着することができ、効率良く生着することができるようになる。一般に蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜40%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間の基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものとなる。これに対して、本発明の細胞シートは、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に60%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。
本発明における細胞シートの積層体を作製する方法についても特に限定されるものではないが、例えば、培養細胞をシート状で剥離させ、必要に応じ培養細胞移動治具を用いて培養細胞シート同士を積層化させることで得られる。その際、培地の温度は、培養基材表面に被覆された前記ポリマーが上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記ポリマーが下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。また、必要に応じ、細胞シートを移動させるための治具を利用しても良い。そのような治具としては、剥離した細胞シートを捕捉できるものであれば材質、形状共に何ら限定されるものではないが、それらの材質としては、通常、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコン、ポリビニルアルコール、ウレタン、セルロース及びその誘導体、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリングルー等の材料を膜状、多孔膜状、不織布状、織布状として細胞シートに接触させて使用される。
かくして本発明により、厚みのある細胞シート積層化物が得られる。本発明のように血管網を構築させなかった場合、積層化された細胞シートが生存し続けるためには3層程度の積層しかできなかった。本発明によれば細胞シートを4層以上積層化することができるようになる。その際、積層化方法は特に限定されないが、一度に細胞シートを積層化するよりも、3層以下の細胞シートを複数回に分けて積層化する方が好ましい。また、その積層化時期は血管床と繋がる血管網が十分に構築されたときとする方が好ましい。積層化回数は、細胞シート積層化物が使用される目的に適宜合わせれば良く特に問われないが、好ましくは5層以上、より好ましくは10層以上、さらに好ましくは15層以上が良い。細胞シート積層化物の厚みが増せば、本発明の効果を顕著に受けられ、また移植先においても大量の細胞を移植できることとなり好都合である。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
(シート状の細胞組織(細胞シート)の作製方法)
本実験は、正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)(Lonza Inc.,Walkersville,USA)もしくは 緑色蛍光タンパク発現正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(GFP−HUVEC)(Angio−proteomie,Boston,USA)及び正常ヒト皮膚線維芽細胞(NHDF)(Lonza Inc.,Walkersville,USA)を用いた。温度応答性培養皿(φ=35mm,UpCell(登録商標),CellSeed Inc.,Tokyo,Japan)に総細胞数1×10cells/dishの密度で細胞を播種した。HUVEC:NHDFの比率は1:3,1:4,1:7とした。Endothelial growth medium(EGM−2)(Lonza Inc.,Walkersville,USA)中で37℃、CO濃度5%環境下で1〜4日培養後、コンフルエントの状態で20℃で20分以上静置し、HUVEC及びNHDFもしくはGFP−HUVEC及びNHDFで構成されたシート状の細胞組織を回収した(S.Sekiya,et al.,Biochemical and biophysical research communications 341,573−582(2006);T.Sasagawa,et al.,Biomaterials 31,1646−1654(2010);N.Asakawa,et al.,Biomaterials 31,3903−3909(2010))。回収したシート状の細胞組織をEGM−2中で37℃、CO濃度5%環境下で培養すると、血管内皮細胞が管腔構造を有する血管網を形成することを確認した(図1)。
(ハイドロゲルを足場とする細胞組織の作製方法)
架橋前のハイドロゲルの溶液に細胞懸濁液を混合した後にゲル化し、ハイドロゲルを足場とする細胞組織を作製した。ハイドロゲル中の細胞密度が2−4×10 cells/mLとなる範囲で用いた(B.Carrion,et al.,Biotechnology and bioengineering 107(6),1020−1028(2010);S.Kim,et al.,Lab Chip 13,1489−1500(2013))。細胞の種類は、HUVECもしくはGFP発現HUVECのみ、HUVEC 及びNHDFもしくはGFP発現HUVEC及びNHDFの組み合わせで用いた。ハイドロゲルの種類は、フィブリンゲル、コラーゲンゲルもしくはフィブリンゲルとコラーゲンゲルの混合ゲル用いた(図2)。フィブリンゲルの濃度は1.0、2.5、10、25mg/mLの範囲で用いた。10、25mg/mLのフィブリンゲルでは血管内皮細胞による血管網が形成されにくく、1.0mg/mLのフィブリンゲルでは足場構造の維持が困難なため、2.5mg/mLが最適であった(図3)。ハイドロゲル中に混合した血管内皮細胞が管腔構造を有する血管網を形成することを確認した(図4)。
(本発明培養基材の設計)
培養する細胞組織の直下に、貫通孔を介し培養液を灌流するための流路を有する培養基材を設計した。設計(1)の培養基材は、1本の流路を通して培養液を灌流する最も基本的な設計の培養基材である(図5)。設計(2)は、細胞シートへの灌流に不可欠な圧力負荷の大きさを、流量により制御するために改良を加えた設計である(図6−a)。ある断面積及び長さの流路を流体が流れる時、圧力と流量は線形関係を有することを利用したものである。実際に作製した培養基材での測定結果を図6−bに示した。そして、設計(3)は、圧力勾配を形成するために送液系統を2本(圧力の高い動脈側と圧力の低い静脈側)有する設計である(図7)。
実施例1:本発明培養基材の作製方法
エラストマー材料であるシリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン,PDMS)(Sylgard 184,Dow Corning Co.,MI,USA)を用い、直径100〜200μmの範囲かつ高さ50〜250μmの範囲の貫通孔、高さ200〜500μmかつ幅200μm〜10mmの範囲の流路を有する培養基材を作製した(図8及び9)。培養基材の作製方法を図10及び以下に示す。まず、培養基材の部材作製用のマイクロモールドは、一般的なフォトリソグラフィー法により作製した。モールド上に未架橋のシリコーン樹脂(PDMS)を滴下し、スピンコート(800〜1500rpmの範囲、30s)により塗布した。80℃、60分で加温し、シリコーン樹脂を反応させた。50〜200μmの範囲の厚さで、直径100〜200μmの貫通孔を有するシリコーン樹脂シートを作製した(部材(1))。また、同様の方法で、高さ200〜500μmかつ幅200μm〜10mmの範囲の送液用流路を有するシリコーン樹脂を作製した(部材(2))。これら貫通孔付きシリコーン樹脂シート(部材(1))及び送液用流路付きシリコーン樹脂(部材(2))を酸素プラズマ処理(100W,O 15Pa,10秒)により接合した。そして、作製したデバイスに送液用のチューブもしくはコネクタを接続するための孔(φ=1〜3mm)を形成した。
実施例2:培養基材の表面処理
作製した培養基材表面への細胞接着性を高める方法として、3つの方法を実施した。一つ目の方法は、培養基材表面を酸素プラズマ(100 W,O 15Pa,180秒)により親水化処理をした後、ポリエチレンイミン溶液(1wt%)(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)に室温で30分浸漬し、蒸留水で洗浄した(T.G.Vladkova,International Journal of polymer science 2010(2010))。二つ目の方法は、ポリエチレンイミンコート後、グルタルアルデヒド溶液(0.1〜1wt%)(Wako Pure Chemical Industries,Ltd.,Osaka,Japan)に室温で30分浸漬し、蒸留水で洗浄した。そして、コラーゲン溶液(10μg/mL)(KOKEN Co.,Ltd,Tokyo,Japan)に室温で30分浸漬し、蒸留水で洗浄した(Y.Zheng,et al.,Biomaterials 32(23),5391−5401(2011))。培養基材表面よりハイドロゲルの剥離を回避する方法として、ポリエチレンイミンコート後、グルタルアルデヒド溶液(0.1〜1wt%)に室温で30分浸漬し、蒸留水で洗浄した後、コラーゲンゲルを塗布し、ポリエチレンイミンとコラーゲンゲルを架橋する方法が有効であった(図11)。最後に、三つ目の方法は、酸素プラズマ(100W,O 15Pa,180秒)により親水化処理をした後、FBS溶液に37℃、一晩浸漬し、蒸留水で洗浄した。培養基材は細胞組織培養前に、EOG滅菌法により滅菌した。
実施例3:静水圧負荷用コネクタの作製方法
培養基材の流路へ安定的に静水圧を負荷するための静水圧負荷用コネクタを作製した。静水圧負荷用コネクタに培養基材を設置した写真を図12に示した。静水圧負荷用コネクタは3Dプリンター(EDEN)(Objet Geometries,Ltd,Billerica,MA, USA)により作製した。液溜めの液面高さにより、培養基材の流路に負荷する静水圧(0〜2mmHg程度の範囲)をコントロールする。2mmHg以上での送液には、シリコーンチューブを介してシリンジポンプを用いた。図12に示すように、設計(3)の培養基材は送液系統を2系統(動脈側・静脈側)有するため、静水圧負荷用コネクタの液溜めは各送液系統の入口及び出口を合わせて4つある。送液系統ごとに赤色(動脈側)及び青色(静脈側)の色素溶液で満たした。
実施例4:本発明培養基材上でのシート状の細胞組織(細胞シート)の培養
図13aに示すようにHUVEC及びNHDFもしくGFP−HUVEC及びNHDFで構成されたシート状の細胞組織を培養基材上に乗せ、37℃、CO濃度5%環境下で2時間静置し、細胞組織を培養基材表面に接着させた。その後、細胞組織の剥離防止と管腔構造の形成促進のために細胞組織をコラーゲンで覆った。EGM−2もしくはVEFG(50ng/mL)(R&D Systems,Minneapolis,USA)を添加したEGM−2を用い、37℃、CO濃度5%環境下で培養した。液溜め及び流路内の培養液は24時間ごとに交換した。3〜5日経過後、シート状の細胞組織内での血管内皮細胞による血管網の形成及び、貫通孔への細胞の遊走が確認された(図13−b,c)。
実施例5:本発明培養基材上でのハイドロゲルを足場とした細胞組織の培養
細胞(HUVECもしくはGFP−HUVEC 3×10cells/mL,NHDF 0.6×10cells/mL)とフィブリンゲル溶液(Fibrinogen 2.5mg/mL,aprotinin 0.15U/mL,thrombin 0.5U/mL)の混合液を作製し、培養基材上に滴下しゲル化した。その後、図14に示すように、流路内にHUVECもしくはGFP−HUVEC細胞を送液し流路内に播種し、37℃、CO濃度5%環境下で一晩静置した。そして、EGM−2もしくはVEFG(50ng/mL)を添加したEGM−2を用い、37℃、CO濃度5%環境下で培養した。液溜めの中及び流路内の培養液は24時間ごとに交換した。
実施例6:シート状細胞組織(細胞シート)への灌流の確認
液溜め及び流路内に蛍光分子(Rhodamine−dextran,Mw=1×10〜3×10)(Sigma−Aldrich Inc.,St.Louis,MO,USA)を含む溶液を満たし、およそ2mmHgの静水圧がかかるよう液溜めの液面の高さを調整した。蛍光顕微鏡での観察により、シート状の細胞組織中に形成された血管網への蛍光分子の導入が確認された(図15)。このことから、培養基材の流路より細胞組織中の血管網への培養液の灌流が可能であることが示された。
実施例7:ゲルを足場とした細胞組織への灌流の確認
液溜め及び流路内に蛍光分子(Rhodamine−dextran,Mw=1×10〜3×10)もしくは蛍光ビーズ(φ=4μm)を含む溶液を満たし、およそ2mmHgの静水圧がかかるよう液溜めの液面の高さを調整した。蛍光顕微鏡での観察により、ハイドロゲルを足場とする細胞組織中の血管網への蛍光分子(図16−a)及び蛍光ビーズ(図16−b,c)の導入が確認された。さらに、多光子顕微鏡を用いた蛍光分布の3次元計測により、細胞組織部分及び貫通孔部分に血管内皮細胞による管腔構造が形成されていることが確認された(図17)。さらに、貫通孔部分に血管内皮細胞で形成された管腔構造の中を蛍光ビーズが通過して細胞組織の血管網へ運ばれている様子が確認された(図18)。以上のことから、本培養基材を用い、細胞組織中の血管網への培養液の灌流が可能であることが示された。
実施例8:生体への埋め込みが可能なサイズの培養基材
生体への埋め込みが可能なサイズ(縦18mm,横11mm,厚さ1mm)の培養基材を試作した(図19)。本発明は、柔軟性を有するシリコーン樹脂を用いており、試作した培養基材自体も柔軟性を有するため、曲率を有する生体組織への埋め込みが可能である。生体への埋め込みに適した材料である生分解性ポリマーであるポリカプロラクトン(PCL)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)や生体適合性ポリマーであるポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)などの材料を用いることも可能だと考えられる。
本発明に示される製造方法であれば、細胞シート内に血管網を構築させられ、その細胞シートを積層化すれば厚みのある細胞シート積層化物を簡便に作製することができるようになる。このような厚みのある細胞シート積層化物は生体内組織様のものとして、さまざまな組織の再生医療に有用なものである。

Claims (15)

  1. 細胞シートを維持、培養するための液体が流れる流路と、
    前記流路の上部に設けた細胞シートが接する培養面と、
    前記流路に繋がり、前記流路に前記液体を流入又は流出させる接続部と、
    前記流路と前記培養面を繋ぐ複数の貫通路と、
    前記貫通路に繋がり、前記流路に沿って配置され、前記培養面の表面に開口した複数の貫通孔
    を備えた細胞シート培養基材であって、ここで、前記細胞シート培養基材の材料は、シリコーン樹脂、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール若しくはポリエチレングリコールのいずれか又はこれら2種以上を組合せたものである、細胞シート培養基材
  2. 前記流路の途中に、前記細胞シートの大きさ以内に前記貫通孔が分布された流路を設けている、請求項1に記載の細胞シート培養基材。
  3. 前記流路が2以上の通路からなる、請求項1又は2に記載の細胞シート培養基材。
  4. 前記貫通孔の直径が100μm〜300μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞シート培養基材。
  5. 隣接した前記貫通孔同士の中心間の距離が100μm〜1mmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞シート培養基材。
  6. 前記流路に連結する、前記液体の保持槽を備えている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞シート培養基材。
  7. 請求項1〜のいずれか1項に記載の細胞シート培養基材の前記培養面に、細胞シートが付着している細胞シート/培養基材複合物。
  8. 前記細胞シートが2以上の層からなる、請求項に記載の細胞シート/培養基材複合物。
  9. 前記細胞シートが血管内皮細胞を含む、請求項又はに記載の細胞シート/培養基材複合物。
  10. 細胞シート/培養基材複合物を製造する方法であって、
    (a)0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養支持体上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培地をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで細胞を剥離して細胞シートを得る工程;
    (b)工程(a)で得られた細胞シートを細胞シート培養基材上に積層する工程、ここで、前記細胞シート培養基材は、
    細胞シートを維持、培養するための液体が流れる流路と、
    前記流路の上部に設けた細胞シートが接する培養面と、
    前記流路に繋がり、前記流路に前記液体を流入又は流出させる接続部と、
    前記流路と前記培養面を繋ぐ複数の貫通路と、
    前記貫通路に繋がり、前記流路に沿って配置され、前記培養面の表面に開口した複数の貫通孔
    を備え、ここで、前記細胞シート培養基材の材料は、シリコーン樹脂、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、乳酸グリコール酸共重合体、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリビニルアルコール若しくはポリエチレングリコールのいずれか又はこれら2種以上を組合せたものである工程;及び
    (c)工程(b)で得られた細胞シートを付着させた細胞シート付着培養基材に対し、前記流路に培地を灌流させて、所定時間培養する工程
    を含む細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
  11. 前記工程(b)で得られた細胞シートを積載した細胞シート積載培養基材に、さらに前記工程(a)で得られた細胞シートを積層する工程を1回以上繰り返して、2層以上の細胞シートを付着させた請求項10に記載の細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
  12. 前記工程(b)において、前記細胞シートを前記培養面に付着させる前に、前記培養面にハイドロゲルを被覆する工程をさらに含む、請求項10又は11に記載の細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
  13. 前記工程(a)において、前記ポリマーがポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)である、請求項10〜12のいずれか1項に記載の細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
  14. 前記ハイドロゲルが、フィブリンゲル、ゼラチンゲル、フィブロネクチン、ラミニン、及びコラーゲンからなる群から1種又は2種以上から選択されるものである、請求項12に記載の細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
  15. 前記ハイドロゲルが血管内皮細胞を混合したものである、請求項12に記載の細胞シート/培養基材複合物の製造方法。
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