JP4992115B2 - 複合膜とその製造方法 - Google Patents
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Description
特に本発明の複合膜は、不織布が多孔薄膜の支持体として機能するだけでなく細胞の効果的な3次元足場としても機能し、しかも多孔薄膜が不織布からの細胞移動(漏出)を物理的に阻止する機能、および薄膜両面での2種の細胞の効果的な接着型の共培養が可能となる薄さを有しているため、優れた細胞培養基材または細胞共培養用の膜として有用となる。
すなわち多孔薄膜と不織布を一体化した膜破れのない複合多孔膜を製造しようとする場合、使用可能な不織布が制限されるため、特に細胞培養用途(細胞培養用基材や細胞共培養用の膜)への複合多孔膜の幅広い応用が制限されていた。
Thin Solid Films,327−329,854(1998).
本発明者は、多孔薄膜をスパンボンド長繊維不織布上に形成させて得られた、膜破れの激しい複合多孔膜を電子顕微鏡で解析したところ、不織布の繊維径がハニカム構造膜の厚みに比べて大きくなると(多孔薄膜の厚みが一般的に3〜5μm程度であるのに対し長繊維不織布の繊維径は約15μm)、繊維径による不織布表面のミクロな凹凸が激しくなる結果、不織布表面に一体成膜(接着成膜)された多孔薄膜は激しいアンジュレーションを生じて膜面(特に繊維に沿った部分)に亀裂が生じてきれいな複合多孔膜を得ることができないことに気づいた。また繊維密度が低く不織布表面の繊維間距離が比較的大きいため、不織布表面で多孔薄膜のアンジュレーション(沈み込み)を抑制することができないため、これもきれいな多孔薄膜の製造を妨げる原因になると考えられた。
(1)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に、開孔率が10〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦20、孔直径の標準偏差σd(μm)は0≦σd/D≦0.6であって、且つ、多孔薄膜内部にて隣接する孔が連通している構造を有する有機高分子化合物から形成された多孔薄膜が積層され、多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入していることを特徴とする複合膜。
(2)多孔薄膜の平均孔直径D(μm)に対する平均膜厚T(μm)の比が0.05≦T/D≦2である(1)記載の複合膜。
(3)多孔薄膜の平均膜厚T(μm)が0.1≦T≦30であり、その標準偏差σt(μm)が0≦σt/T≦0.5である(1)又は(2)に記載の複合膜。
(4)多孔薄膜の開孔率が15〜80%である(1)〜(3)のいずれか一に記載の複合膜。
(5)多孔薄膜が有する貫通孔の割合が20%以上である請求項(1)〜(4)のいずれか一に記載の複合膜。
(6)不織布を構成する平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である(1)〜(5)のいずれか一に記載の複合膜。
(7)不織布の平均流量孔径が1μm以上である(1)〜(6)のいずれか一項に記載の複合膜。
(8)不織布の平均流量孔径が1〜100μmである(1)〜(7)のいずれか一に記載の複合膜。
(9)細胞培養液中で、互いに異なる細胞群を相互に接触可能な状態で仕切って、細胞を共培養するために用いられる、(1)〜(8)のいずれか一に記載の複合膜。
(10)(1)〜(8)のいずれか一に記載の複合膜により細胞培養液を仕切り、細胞培養液中で互いに異なる細胞群を相互に接触可能な状態としたことを特徴とする細胞共培養装置。
(11)平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布に、有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液と相溶しない液体を保持させ、該不織布上に有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液をキャストし、次いで、膜近傍の相対湿度が20〜100%の環境下で疎水性有機溶媒を蒸発させて該有機高分子化合物を主成分として含んでなる多孔薄膜を不織布上に成膜する工程を含む(1)〜(8)のいずれか一に記載の複合膜の製造方法。
(12)不織布を構成する平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である(11)に記載の製造方法。
(13)有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液と相溶しない液体が水である(11)又は(12)に記載の製造方法。
(14)細胞培養液中に(1)〜(8)のいずれか一項に記載の複合膜を配置して、少なくとも2つの培養領域を設け、少なくとも2つの隣接する培養領域に、互いに異なる細胞群をそれぞれ導入して細胞を共培養することを含む細胞共培養方法。
多孔薄膜が形成された後、不織布に保持させた液体は、そのまま乾燥除去するか、一旦アルコールなどの適切な溶剤に浸漬して液体を置換除去し、乾燥することで複合膜が得られる。
なお細胞共培養を行う際、複合膜の不織布側に、さらに1枚以上の不織布を重ねても良い。不織布を重ねることで、不織布側に導入された第1の細胞の3次元培養領域が大きくなる。この場合、重ねる不織布は複合膜を構成する不織布と同じであっても異なっていても構わない。
(1)複合膜を構成する多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率、及び貫通孔の割合
多孔薄膜の平均孔直径D、孔直径の標準偏差σd、開孔率及び貫通孔の割合は、多孔薄膜の膜平面に対する垂直方向からの光学顕微鏡又は走査型電子顕微鏡写真を撮影した上で、得られる平面像(写真)にて観測される多孔薄膜の孔群(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)を解析することで算出される。
具体的には、得られた複合膜をその中心付近から1辺6.7cmの正方形サンプルに打ち抜き、その中心(点A)、及び4つの四隅をB’、C’、D’、E’とし、それら4つの点と点Aとの4つの中点をそれぞれB、C、D、Eとする。A〜Eの5点の近傍を走査型電子顕微鏡写真(日立製作所製S−3000N)を多孔薄膜が接着した側の膜面の垂直方向から撮影する(1000〜3000倍)。
こうして得られた5枚の写真を画像解析ソフト(Image−Pro Plus(Media Cybernetics社製、Version 4.0 for Windows(登録商標))にそれぞれ取り込む。各写真において約200個の孔を含んだ画像範囲を無作為に選択した後、写真全体の中の孔領域を自動識別可能な状態までコントラストを調整して、平均孔直径を自動計算する。なお孔形状の多くは真円ではないため、長径と短径の平均値から各孔の孔直径が算出され、これが平均化される。得られた5つの平均孔直径をさらに平均して「平均孔直径D」を算出する。なお、画像解析ソフトによるコントラスト自動調整だけで孔領域を自動識別させることができない場合は、予め画像解析ソフトに取り込む写真の孔部分を黒く塗りつぶしておくなどの手動作業を行う必要がある。
孔直径の標準偏差σdとは、上記の「平均孔直径D」を規定した5つの画像範囲におけるそれぞれの孔直径の標準偏差を更に平均化した値である。「開孔率」は、同じ画像範囲において得られた5つの開孔率を平均化したものである。いずれも上記の画像解析によって算出できる。
貫通孔の割合は、上記のD、σd及び開孔率を算出したそれぞれの5つの画像領域において、各写真に含まれる全孔数(貫通孔と非貫通孔をあわせたもの)をN1、そのうち貫通している状態の孔数をN2とすると、両者を数えてN2/N1×100(%)の値を計算し、それら5つの平均値として算出する。
(2)複合膜を構成する多孔薄膜の平均膜厚T、膜厚の標準偏差σtの測定方法、及び孔の断面構造観察
膜断面観察が可能なように凍結割断処理(複合膜をエタノールに浸漬して液体窒素にて凍結後、割断する)した複合膜を、走査型電子顕微鏡用の円盤状試料台に両面テープ等を用いて緩やかに不織布側にて接着固定して白金蒸着する(蒸着膜厚は約12nmになるように設定)。これを走査型電子顕微鏡(日立製作所製S−3000N)で、膜の真横方向(膜平面方向)から観察し、複合膜を構成する多孔薄膜の平均膜厚Tおよび膜厚の標準偏差σtを測定する。
具体的には、上述(1)の平均孔直径Dを算出する際に選んだ、A〜Eの5点近傍の断面を走査型顕微鏡で観察しながら、その画像におけるスケールを用いて、50μm間隔で多孔薄膜厚を算出する。5点それぞれにおいて、約10点膜厚を測定して平均膜厚を計算する。次いで、5点の平均膜厚の値を平均化して、「平均膜厚T」を算出する。さらにこれらのデータを用いて膜厚の標準偏差σtを算出する。
(3)不織布の平均流量孔径の測定
平均流量孔径は、ASTM E1294−89に準拠し、パームポロメーター(PMI(Porous Materials,Inc.)社製)を用いてハーフドライ法により求めた。浸液は同じくPMI社製SILWICK(表面張力19.1dyn/cm)を用いた。
(4)不織布の平均繊維径の測定
複合膜を構成する不織布、または複合膜の製造に用いる不織布を、デジタルマイクロスコープ(キーエンス製VT−8000)を用いて観察し、細繊維および微細繊維の直径を各30点ずつ測定し、平均値を算出して平均繊維径の値とした。
1)不織布
不織布は、WO2004/094136A1パンフレットに記載された実施例1〜4と同様の条件で製造されたスパンボンド長繊維ウエブ/メルトブロー短繊維ウエブ/スパンボンド長繊維ウエブからなる3層積層ウエブを、フラットロールに通して熱圧着して得たポリエチレンテレフタレート製3層積層不織布を用いた。この不織布は、光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することで、平均繊維径15μmの長繊維(細繊維)と平均繊維径1.6μmの短繊維(微細繊維)が交絡して混和した構造を観察することができる。不織布の平均流量孔径は10.4μm、総目付け量20g/m2(不織布1m2当たりの繊維重量)、厚み0.034mmであり、細繊維と微細繊維の総重量における、細繊維の重量割合(wt%)は17wt%である。
2)不織布の親水化(コーティング)
2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)と2−(N、N−ジメチルアミノ)エチルメタクリレート(DMAMA)をランダム共重合したコポリマー(HEMA/DMAMA=97/3(モル比))の0.2wt%エタノール溶液を調製し、これをコーティング溶液とした。不織布をコーティング溶液に浸漬時間が5秒になるように連続的に浸漬した後、ニップロールに挟んで通過させて余分なコーティング溶液を除去し、乾燥してコーティングした不織布を得た。上記コポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の1−1に記載した方法に従った。
クロロホルムを溶媒として、ポリスルホン(PSU:テイジンアコモエンジニアリングプラスチックス製 UDEL P−3500)とポリアクリルアミド系両親媒性ポリマー(既述の化学式(I))を溶質とする1.0g/Lの疎水性有機溶媒溶液を調製した。PSU/ポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーは重量比で9/1であった。化学式(1)のポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーの合成は、WO2005/014149A1パンフレットの実施例1の2に記載した方法に従った。この両親媒性ポリマーは、ユニットmとユニットnのモル比がm/n=4/1のランダムコポリマーである。
2)で準備したコーティング不織布を一辺16cmの正方形に切り、ビーカー中にて純水に浸漬し、超音波洗浄器で5分間脱気しながら十分に水を保持させた。この水を充分保持した不織布(含水不織布)をビーカーから取り出してガラス板上に置き、更に一辺15cmの正方形を打ち抜いた厚さ1mmの金属枠を、金属枠の打ち抜き部全面から該含水不織布が露出するように不織布上に重ねて配置し、ガラス板、含水不織布、金属枠を重ねた状態にしてクリップで固定した。
この含水不織布が露出した金属枠の打ち抜き部に、準備しておいたPSUとポリアクリルアミド系両親媒性ポリマーを含むクロロホルム溶液を、静かに14cm3流し入れ、室温25℃、相対湿度40%の恒温恒湿室中にて、溶液表面に相対湿度60%の空気を6リットル/分で吹き付けクロロホルム除去を行って、含水不織布上にPSUを主成分とする多孔薄膜を形成させた。続いて金属枠をはずし、室温で不織布を風乾し、複合膜を得た。 得られた複合膜の膜厚は35μmであり、多孔薄膜の開孔率は45%、平均孔直径Dは3.8μm、σd/Dは0.20、貫通孔の割合は68%、多孔薄膜の平均膜厚Tは3.0μm、σt/Tは0.20であった。
複合膜の表面を、多孔薄膜側から撮影した走査型電子顕微鏡写真を図4に示す。太い繊維が平均繊維径15μmの長繊維、細い繊維が平均繊維径1.6μmの微細短繊維である。多孔薄膜に膜破れは見られず、多孔薄膜の孔を通して不織布の構造を観察することができる。多孔薄膜には、不織布繊維が侵入(接着)し、その結果、孔が閉塞している状態も観察することができる。
また多孔薄膜近傍の複合膜断面を撮影した走査型電子顕微鏡写真を図5に示す。多孔薄膜の孔は膜内部で膨らんだ球状貫通孔構造であり、互いに隣接する孔が膜面方向に互いに連通していることも観察できる。
4)複合膜への細胞導入性の評価
製造した複合膜を13mmφの円形状に切り抜き、ガラス製リング(旭テクノグラス株式会社製、クローニングリング、内径10mm、外径12mm、高さ10mm)の1つの端面に、複合膜の不織布面にて接着してカップ型容器を作成した。接着剤にはポリマー濃度17%のPSUのクロロホルム溶液を用いた。
このカップ型容器を、複合膜を下にして吸水性シート(例えばセルロース製不織布)の上に置き、カップ内の複合膜上に細胞懸濁液(細胞培養液(GIBCO社製、D−MEM)にモデル細胞としてヒト子宮頚部腺癌細胞(ATCC番号:CCL−2)が1×104個/100μLとなるように加えたもの)の1mLを滴下した。殆どの培養液が複合膜を通過して吸水シートに吸収された後、引き続いて同様に5%のグルタルアルデヒドを5mL通液し、複合膜を乾燥した。
乾燥後、複合膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、殆どの細胞が不織布を通過して不織布側の多孔薄膜面またはその近傍に到達していることが分かった。
以上の結果、本発明の複合膜は不織布内の細胞通過性が良好なため、不織布側から細胞懸濁液を通液することで第1の細胞を不織布内部、さらには不織布側の多孔薄膜表面もしくはその近傍まで容易に導入することができ、しかも多孔薄膜の膜破れもないため導入細胞の移動(漏出)を多孔薄膜面で物理的に阻止することができることが明らかとなった。
この状態の複合膜を、第2の細胞を含む細胞懸濁液に浸漬すれば第1と第2の細胞の接触型共培養が可能となる。従って本発明の複合膜は、細胞培養液中で、互いに異なる細胞群を多孔薄膜にて相互に接触可能な状態で仕切って、細胞を共培養するために用いられる細胞共培養用の膜として有効に使用することができることが分かる。さらに3次元培養足場として機能する不織布中にて1種の細胞を培養する場合でも、不織布領域からの細胞の移動や漏出を多孔薄膜で物理的に阻止できるので、培養後の培養液中からの細胞除去が容易なセパレート型細胞培養基材としても効果を発揮する。
1)不織布
不織布として単一繊維からなるスパンボンド長繊維不織布を用いた。具体的には、実施例1の3層積層ウエブ製造工程において、メルトブロー短繊維の積層工程を省くことで製造した単層スパンボンド長繊維ウエブを、フラットロールに通して熱圧着して得たポリエチレンテレフタレート製単層不織布である。この不織布は、平均繊維径15μmの長繊維のみからなる。不織布の平均流量孔径は10.5μm、総目付け量20g/m2(不織布1m2当たりの繊維重量)、厚み0.040mmである。
2)複合膜の製造
実施例1の2)および3)と同様の手法で複合膜の製造を行った。
ところが製造した複合膜の多孔薄膜部位を走査型電子顕微鏡で観察すると、多孔薄膜は繊維にて部分的に支えられているが、繊維のない領域(繊維間の空隙)では多孔薄膜が不織布内部に深く垂れ下がった(入り込んだ)ような状態になっており、その垂れ下がりに多孔薄膜が耐えられず膜が裂けてしまっている状態が多く観察された。
3)複合膜への細胞導入性の評価
実施例1の4)と同様の手法で細胞導入性の評価を行った。
評価終了後の複合膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、不織布中や多孔薄膜面には細胞が殆ど存在しないことが分かった。多孔薄膜の裂け目から細胞が培養液と共に吸水性シートに漏出してしまったことが分かった。
以上の結果、細繊維のみからなる不織布を用いて複合膜を製造すると、膜破れのない多孔薄膜を一体成膜できないため、細胞の導入性(通過性)は良好であるが、細胞共培養用の膜やセパレート型細胞培養基材として用いることはできない。
1)不織布
不織布として単一繊維からなるメルトブロー短繊維不織布を用いた。具体的には平均繊維径が1.6μm、平均流量孔径が6.4μm、目付け量40g/m2(不織布1m2当たりの繊維重量)、厚み0.2mmのポリエチレンテレフタレート不織布(旭化成(株)製;マイクロウエブ)である。
2)複合膜の製造
実施例1の2)および3)と同様の手法で複合膜の製造を行った。
製造した複合膜の多孔薄膜部位を走査型電子顕微鏡で観察すると、使用したメルトブロー短繊維不織布は繊維密度が比較的高く、繊維径も小さいため多孔薄膜の形成が比較的フラットに仕上がり膜破れも発生していない良好な形状を示した。
3)複合膜への細胞導入性の評価
実施例1の4)と同様の手法で細胞導入性の評価を行った。
本評価における細胞懸濁液の透過には、実施例1や比較例1に比べてかなりの時間を要した。評価終了後の複合膜を走査型電子顕微鏡で観察すると、多孔薄膜面近傍や不織布中に存在する細胞は少なく、細胞懸濁液導入側の不織布表面付近に殆どの細胞が捕捉され、不織布表面が細胞にて閉塞した状態であることが分かった。
以上の結果、微細繊維のみからなる不織布を用いて複合膜を製造すると、膜破れのない多孔薄膜を良好に一体化成膜できるが、不織布中、さらには不織布側の多孔薄膜表面もしくはその近傍への細胞導入効率が非常に悪いため、細胞共培養用の膜材料やセパレート型細胞培養基材には適さないことが分かった。
また本発明の複合膜は、共培養に限らず、細胞の単独培養用基材としても有効である。例えば本複合膜を用いれば、3次元培養足場として機能する不織布中にて細胞を3次元培養できると同時に、これらの細胞が不織布領域から脱離・漏出することを多孔薄膜で物理的に阻止できるので、培養終了後に細胞から産生された有用化学物質(多孔薄膜を通過可能)を含む培養液から細胞除去が極めて容易なセパレート型細胞培養基材としても効果を発揮する。
さらに本発明の複合膜は、均一性の高い直径数μm〜十数μmの孔および高い開孔率を有する多孔薄膜を有し、しかも不織布により膜全体として実用的な機械的強度を兼ね備えている。従ってμmオーダーの対象物、例えば、血液細胞や各種培養細胞、細菌類、酵母類などの濾過分離や回収におけるメインフィルター、プレフィルター、又はファイナルフィルターとして広く使用することが可能である。
具体的には、抗体医薬等に代表される高付加価値医薬品、食品、栄養剤などを製造するバイオプロセス領域における、バッチ式や循環式での細胞分離フィルターとして使用することが可能となる。
検査・診断領域では、微量の血液から検査・診断用の有核細胞(白血球系細胞)を取得するための小型フィルターとして使用することもできる。
2 培養液と細胞2の導入口
3 細胞取り出し口
4 複合膜
5 培養液容器
6 カップ型容器
7 フレキシブルハウジング
Claims (14)
- 平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布の少なくとも一方の面上に、開孔率が10〜80%、平均孔直径D(μm)が0.5≦D≦20、孔直径の標準偏差σd(μm)は0≦σd/D≦0.6であって、且つ、多孔薄膜内部にて隣接する孔が連通している構造を有する有機高分子化合物から形成された多孔薄膜が積層され、多孔薄膜を構成する有機高分子化合物が不織布中に侵入していることを特徴とする複合膜。
- 多孔薄膜の平均孔直径D(μm)に対する平均膜厚T(μm)の比が0.05≦T/D≦2である請求項1記載の複合膜。
- 多孔薄膜の平均膜厚T(μm)が0.1≦T≦30であり、その標準偏差σt(μm)が0≦σt/T≦0.5である請求項1又は2に記載の複合膜。
- 多孔薄膜の開孔率が15〜80%である請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合膜。
- 多孔薄膜が有する貫通孔の割合が20%以上である請求項1〜4のいずれか一項に記載の複合膜。
- 不織布を構成する平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である請求項1〜5のいずれか一項に記載の複合膜。
- 不織布の平均流量孔径が1μm以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の複合膜。
- 不織布の平均流量孔径が1〜100μmである請求項1〜7のいずれか一項に記載の複合膜。
- 細胞培養液中で、互いに異なる細胞群を相互に接触可能な状態で仕切って、細胞を共培養するために用いられる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜。
- 請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜により細胞培養液を仕切り、細胞培養液中で互いに異なる細胞群を相互に接触可能な状態としたことを特徴とする細胞共培養装置。
- 平均繊維径7〜30μmの少なくとも1種の細繊維と、平均繊維径0.5〜5μmの少なくとも1種の微細繊維が交絡して混和した構造を有する不織布に、有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液と相溶しない液体を保持させ、該不織布上に有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液をキャストし、次いで、膜近傍の相対湿度が20〜100%の環境下で疎水性有機溶媒を蒸発させて該有機高分子化合物を主成分として含んでなる多孔薄膜を不織布上に成膜する工程を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜の製造方法。
- 不織布を構成する平均繊維径7〜30μmの細繊維が長繊維であり、平均繊維径0.5〜5μmの微細繊維が短繊維である請求項11に記載の製造方法。
- 有機高分子化合物の疎水性有機溶媒溶液と相溶しない液体が水である請求項11又は12に記載の製造方法。
- 細胞培養液中に請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合膜を配置して、少なくとも2つの培養領域を設け、少なくとも2つの隣接する培養領域に、互いに異なる細胞群をそれぞれ導入して細胞を共培養することを含む細胞共培養方法。
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