JP5830845B2 - 遷移金属リン酸塩およびナトリウム二次電池 - Google Patents

遷移金属リン酸塩およびナトリウム二次電池 Download PDF

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Description

本発明は、遷移金属リン酸塩に関し、詳しくは、ナトリウム二次電池における正極活物質として用いられる遷移金属リン酸塩に関する。
非水電解質二次電池であるリチウム二次電池は携帯電話やノートパソコンなどの小型電源として既に実用化されている。電気自動車用や分散型電力貯蔵用などの大型電源として、二次電池の需要はさらに増大しつつある。
リチウム二次電池で使用されているリチウムは、資源的に豊富ではないことから、将来、リチウム資源の枯渇が懸念される。一方、リチウムと同じアルカリ金属元素に分類されるナトリウムは、リチウムに比べて資源的に豊富であり、リチウムより1桁安価である。リチウム二次電池の代わりに、ナトリウム二次電池を使用することができれば、資源枯渇の心配なしに、車載用二次電池や分散型電力貯蔵用二次電池などの大型二次電池を大量に生産することが可能となる。
ナトリウム二次電池の正極に用いられる正極活物質としては、高い結晶性を有し、ナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができる物質が知られている。特許文献1、2は、一般式NaPO(Mは遷移金属)で表され、かつ高い結晶性を有する遷移金属リン酸塩を開示し、当該遷移金属リン酸塩は、550℃以上の高温で、原料を熱処理することによって、得られている。
特表2004−533706号公報 特開2008−260666号公報
上記の従来技術における遷移金属リン酸塩を正極活物質として用いて製造されるナトリウム二次電池は、放電容量およびレート特性の観点で、好適なものではない。本発明の目的は、従来に比し、放電容量およびレート特性をより向上させたナトリウム二次電池、およびその正極活物質として好適な遷移金属リン酸塩を提供することである。
本発明者らは、結晶性の低い遷移金属リン酸塩を正極活物質として用いて製造されたナトリウム二次電池は、放電容量およびレート特性の双方を向上させることができることを見出した。
本発明は次の<1>〜<9>を提供する。
<1> Na、PおよびM(ここで、Mは、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含有する遷移金属リン酸塩であって、以下の粉末X線回折測定により決定されたI/Iの値が0.6以下である遷移金属リン酸塩。
<粉末X線回折測定>
遷移金属リン酸塩とシリコンとを、遷移金属リン酸塩:シリコンの重量比が8:1であるように含有する混合物に、CuKα線を照射することによりX線回折図形を得て、該X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をI、シリコンの最大ピークの強度をIとし、IをIで除して、I/Iの値を決定する方法。
<2> 前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの半値幅が0.3°以上1.5°以下である<1>の遷移金属リン酸塩。
<3> 以下の式(1)で表される<1>または<2>の遷移金属リン酸塩。
NaPO (1)
(ここで、xは0を超え1.5以下であり、yは0.8以上1.2以下であり、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
<4> 斜方晶系結晶構造を有する<1>〜<3>のいずれかの遷移金属リン酸塩。
<5> 斜方晶系結晶構造の空間群がPnma空間群であり、前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークが、Pnma空間群の(121)面に同定される<4>の遷移金属リン酸塩。
<6> BET比表面積が40m/g以上80m/g以下である<1>〜<5>のいずれかの遷移金属リン酸塩。
<7> 前記Mが、FeまたはMnあるいは両方を含有する<1>〜<6>のいずれかの遷移金属リン酸塩。
<8> <1>〜<7>のいずれかの遷移金属リン酸塩を有する電極。
<9> <8>の電極を、正極として有するナトリウム二次電池。
本発明によれば、従来のナトリウム二次電池に比べ、大きな放電容量および優れたレート特性を有するナトリウム二次電池が提供される。本発明の遷移金属リン酸塩は、そのナトリウム二次電池の正極活物質として好適である。本発明のナトリウム二次電池は、リチウム二次電池に比べ、きわめて安価な材料で構成され、工業的に極めて有用である。
本発明におけるX線回折図形の一例を示す。
<遷移金属リン酸塩>
本発明の遷移金属リン酸塩は、Na、PおよびM(ここで、Mは、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)を含有する遷移金属リン酸塩であって、以下の粉末X線回折測定により決定されたI/Iの値が0.6以下である。
<粉末X線回折測定>
遷移金属リン酸塩とシリコンとを、遷移金属リン酸塩:シリコンの重量比が8:1であるように含有する混合物に、CuKα線を照射することによりX線回折図形を得て、該X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をI、シリコンの最大ピークの強度をIとし、IをIで除して、I/Iの値を決定する方法。
本発明の遷移金属リン酸塩は、低い結晶性を有するにもかかわらず、大きな放電容量および優れたレート特性を有するナトリウム二次電池を与える。
上記粉末X線回折測定において、シリコンはSi標準試料である。X線回折図形は、遷移金属リン酸塩とシリコンとを、遷移金属リン酸塩:シリコンの重量比が8:1であるように含有する混合物に、CuKα線を照射することにより得られる。より具体的には、粉末X線回折装置を用いて、該混合物に、下記条件でCuKα線を照射することにより、X線回折図形を得ることができる。
X線源:CuKα線
電圧−電流:40kV−140mA
測定角度範囲:2θ=10〜90°
ステップ:0.02°
スキャンスピード:4°/分
発散スリット幅(DS):1°
散乱スリット幅(SS):1°
受光スリット幅(RS):0.3mm
上記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をI、シリコンの最大ピークの強度をIとし、IをIで除して、I/Iの値が決定される。本発明におけるI/Iの値は0.6以下である。シリコンの最大ピークは、X線回折図形における2θ=28°付近に出現し、立方晶の(111)面に同定される。I/Iの値が0.6を超えるときには、上記本発明の効果が得られ難い。本発明の効果をより高める観点で、I/Iの値は、好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.4以下である。I/Iの値は、好ましくは0.1以上である。
本発明の効果をより高める観点で、前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの半値幅は、好ましくは0.3°以上1.5°以下であり、より好ましくは0.4°以上1.5°以下、さらにより好ましくは0.4°以上1.0°以下である。
二次電池の放電容量をより大きくする観点で、本発明の遷移金属リン酸塩は、好ましくは、以下の式(1)で表される。
NaPO (1)
(ここで、xは0を超え1.5以下であり、yは0.8以上1.2以下であり、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)
式(1)においてxは、好ましくは0.8以上1.2以下であり、より好ましくは0.9以上1.1以下であり、さらにより好ましくは1.0である。yは、好ましくは0.9以上1.1以下であり、より好ましくは1.0である。
本発明において、Mは、遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素である。遷移金属元素としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuなどが挙げられる。ナトリウム二次電池の放電容量をより大きくする観点では、Mは、好ましくは2価になりえる遷移金属元素である。さらにより大きな放電容量を有し安価な二次電池を製造する観点で、Mは、より好ましくはFeまたはMnあるいは両方を含有し、Mは、さらにより好ましくはFeまたはMnあるいは両方である。
遷移金属リン酸塩の結晶構造の空間群としては、P222、P2221、P22、P2、C222、C222、F222、I222、I2、Pmm2、Pmc2、Pcc2、Pma2、Pca2、Pnc2、Pmn2、Pba2、Pna2、Pnn2、Cmm2、Cmc2、Ccc2、Amm2、Abm2、Ama2、Aba2、Fmm2、Fdd2、Imm2、Iba2、Ima2、Pmmm、Pnnn、Pccm、Pban、Pmma、Pnna、Pmna、Pcca、Pbam、Pccn、Pbcm、Pnnm、Pmmn、Pbcn、Pbca、Pnma、Cmcm、Cmca、Cmmm、Cccm、Cmma、Ccca、Fmmm、Fddd、Immm、Ibam、IbcaおよびImmaからなる群より選ばれる空間群が挙げられる。ナトリウム二次電池の容量が高くなる点で、本発明の遷移金属リン酸塩は、好ましくは斜方晶系結晶構造を有する。斜方晶系結晶構造の空間群は、好ましくはPnma空間群である。Pnma空間群の斜方晶系結晶構造を有する遷移金属リン酸塩としては、NaFePO、NaMnPOなどが挙げられる。本発明においては、前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークは、Pnma空間群の(121)面に同定されることが好ましい。例えば、NaFePOの最大ピークは、Pnma空間群の(121)面に帰属し、このピークは2θ=33°付近に出現する。
本発明の遷移金属リン酸塩は、40m/g以上80m/g以下のBET比表面積を有することが好ましい。BET比表面積が40m2/g以上であることにより、ナトリウム二次電池の放電容量がより大きくなりる。BET比表面積が80m2/g以下であることにより、電極における遷移金属リン酸塩の充填性がより向上する。遷移金属リン酸塩のBET比表面積は、好ましくは45m2/g以上70m2/g以下である。
<遷移金属リン酸塩の製造方法>
次に本発明の遷移金属リン酸塩の製造方法を説明する。
本発明の遷移金属リン酸塩は、以下の析出反応によって製造することができる。遷移金属リン酸塩に対応する各金属元素を含有する各水溶液およびリンを含有する水溶液を、接触混合して析出物を生成し、該析出物を加熱して遷移金属リン酸塩を製造する。各金属元素を含有する各水溶液は、各金属元素の化合物を水に溶かして得ることができる。リンを含有する水溶液は、リンの化合物を水に溶かして得ることができる。加熱の温度は、例えば100〜200℃程度であり、加熱の時間は、容器のサイズにもよるが、例えば5分〜1時間程度である。
好ましい組成の一つであるNaFePO4で表されるリン酸鉄ナトリウムの製造方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、塩化鉄(II)四水和物、リン酸水素二アンモニウムをNa:Fe:Pのモル比が4:1:1となるように秤量し、次いで、秤量した各化合物をイオン交換水に溶解させて各水溶液を調整し、各水溶液を接触混合して析出物を生成し、該析出物を加熱して、固液分離してNaFePO4を製造する。
他の好ましい組成の一つであるNaMnPO4で表されるリン酸マンガンナトリウムの製造方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、塩化マンガン(II)六水和物、リン酸水素二アンモニウムをNa:Mn:Pのモル比が4:1:1となるように秤量し、次いで、秤量した各化合物をイオン交換水に溶解させて各水溶液を調整し、各水溶液を接触混合して析出物を生成し、該析出物を加熱して、固液分離してNaMnPO4を製造する。
NaMnFe1−xPO4で表されるリン酸マンガン鉄ナトリウムの製造方法としては、例えば、水酸化ナトリウム、塩化マンガン(II)六水和物、塩化鉄(II)四水和物、リン酸水素二アンモニウムをNa:Mn:Fe:Pのモル比が4:x:(1−x):1となるように秤量し、次いで、秤量した各化合物をイオン交換水に溶解させて各水溶液を調整し、各水溶液を接触混合して析出物を生成し、該析出物を加熱して、固液分離してNaMnFe1−xPO4を製造する。
上記方法において、秤量におけるNaモル比は、得られるNaMPO組成におけるNaの化学量論量よりも大きい。これは、方法における一つのポイントである。
Na、M(ここで、Mは遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を表す。)およびPの各元素を含有する化合物としては、金属材料、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ハロゲン化物、アンモニウム塩、シュウ酸塩、リン酸塩、アルコキシドなどが挙げられる。化合物が水に溶解し難い、例えば、化合物が金属材料、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩などである場合は、化合物は塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、リン酸などを含有する水溶液に溶解させることもできる。Naを含有する化合物としては水酸化物および/または炭酸塩が好ましく、Mを含有する化合物としては塩化物および/または硝酸塩が好ましく、Pを含有する化合物としてはリン酸および/またはリン酸アンモニウム塩が好ましい。上記の2種以上の元素を含有する複合化合物を用いてもよい。
水溶液中でFe、MnなどのMを2価イオンとして安定化するために、水溶液は還元剤を含有することが好ましい。還元剤としては、例えばアスコルビン酸、シュウ酸、塩化スズ、ヨウ化カリウム、二酸化硫黄、過酸化水素、アニリンなどが挙げられ、好ましくはアスコルビン酸またはアニリンを含み、より好ましくはアスコルビン酸である。
I/Iの値は、前記析出物の加熱温度、加熱時間によりコントロールすることができる。加熱時間が短くなるにつれI/Iの値は小さくなる傾向にあり、加熱時間が長くなるにつれI/Iの値は大きくなる傾向にある。加熱温度が低くなるにつれI/Iの値は小さくなる傾向にあり、加熱温度が高くなるにつれI/Iの値は大きくなる傾向にある。析出物を加熱した後の固液分離は、例えば、濾過、遠心分離、液体蒸発等などの操作で行うことができる。固液分離により得られた固形物を洗浄することもできる。該洗浄に用いる溶媒は、好ましくは水であり、より好ましくは純水および/またはイオン交換水である。洗浄後、固形物は乾燥してもよい。該乾燥の温度は好ましくは20℃以上200℃以下である。乾燥時の雰囲気は特に限定されるものではなく、乾燥は、常圧下または減圧下で行ってよい。洗浄と乾燥とを2回以上繰り返してもよい。
遷移金属リン酸塩の粉砕、分級等を、ボールミルや振動ミル、ジェットミル等を用いて行い、遷移金属リン酸塩の粒度を調節することができる。粉砕、分級、洗浄および乾燥を2回以上繰り返してもよい。
本発明の効果を損なわない範囲で、本発明の遷移金属リン酸塩におけるNa、P、上記Mの一部を、他元素で置換してもよい。他元素の例としては、Li、B、C、N、F、Mg、Al、Si、S、Cl、K、Ca、Sc、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Rh、Ag、In、Sn、I、Ba、Hf、Ta、W、Ir、Ln(希土類元素)等が挙げられる。
遷移金属リン酸塩の表面処理を行ってもよい。例えば、遷移金属リン酸塩をコア材として、そのコア材の表面に、B、Al、Mg、Ga、In、Si、Ge、Sn、Nb、Ta、W、Moおよび遷移金属元素からなる群より選ばれる1種以上の元素を含有する化合物を被着させる処理である。これらの元素の中でも、B、Al、Mg、Mn、Fe、Co、Ni、Nb、Ta、WおよびMoからなる群より選ばれる1種以上が好ましく、操作性の観点からAlがより好ましい。該化合物としては、例えば上記元素の酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、有機酸塩またはこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、酸化物、水酸化物、オキシ水酸化物、炭酸塩またはこれらの混合物が好ましい。これらの中でもより好ましくはアルミナである。また、上記の表面処理後の遷移金属リン酸塩を熱処理してもよい。表面処理後の遷移金属リン酸塩のBET比表面積が、処理前のものと異なる場合があるが、その場合、遷移金属リン酸塩のBET比表面積は処理前のものとする。
上述の遷移金属リン酸塩を、または表面処理を行った遷移金属リン酸塩を、ナトリウム二次電池における正極活物質として用いることができる。
<遷移金属リン酸塩を有する電極;正極>
次に、本発明の遷移金属リン酸塩を有する電極について説明する。本発明の電極は、ナトリウム二次電池における正極として、有用である。以下、本発明の電極を、正極ともいう。
正極は、本発明の遷移金属リン酸塩(正極活物質)、導電材およびバインダーを含む正極合剤が正極集電体に担持されて製造される。この場合、ナトリウム二次電池用正極は導電材を有する。前記導電材としては炭素材料が挙げられ、炭素材料の例として黒鉛粉末、カーボンブラック、アセチレンブラック、繊維状炭素材料などが挙げられる。カーボンブラックやアセチレンブラックは、微粒で表面積が大きい。これらは、正極合剤中に少量添加されると、正極内部の導電性が高まり、二次電池の充放電効率およびレート特性が向上する。しかしながらこれらは正極合剤中に多く添加されすぎると、バインダーによる正極合剤と正極集電体との結着性が低下し、正極内部の抵抗が増大する。正極合剤中の導電材の割合は、通常、正極活物質100重量部に対して5重量部以上30重量部以下である。導電材が繊維状炭素材料である場合には、この割合を下げることも可能である。
ナトリウム二次電池用正極の導電性をより高める観点で、導電材は、繊維状炭素材料を含有することが好ましいことがある。繊維状炭素材料を含有する場合、繊維状炭素材料の長さをa、該材料の長さ方向に垂直な断面の径をbとしたとき、a/bは、通常20〜1000である。繊維状炭素材料の長さをa、本発明の遷移金属リン酸塩における一次粒子および一次粒子の凝集粒子の体積基準の平均粒径(D50)をcとしたとき、a/cの値は、通常2〜100であり、好ましくは2〜50である。a/cが2を下回る場合には、正極活物質における粒子間の導電性が十分でないことがあり、100を超える場合には、正極合剤と正極集電体との結着性が低下する場合がある。繊維状炭素材料の電気伝導度は高い方がよい。繊維状炭素材料の電気伝導度は、繊維状炭素材料を、その密度が1.0〜1.5g/cm3となるように成形した試料の電気伝導度の測定により、決定され、繊維状炭素材料の電気伝導度は、通常1S/cm以上であり、好ましくは2S/cm以上である。
繊維状炭素材料として、具体的には、黒鉛化炭素繊維、カーボンナノチューブを挙げることができる。カーボンナノチュ−ブは、シングルウォール、マルチウォールのいずれでもよい。繊維状炭素材料は、市販されているものを、粉砕して、上記のa/bおよびa/cの範囲となるように調製して用いればよい。粉砕は、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれでもよく、乾式粉砕としては、ボールミル、ロッキングミル、遊星ボールミルによる粉砕が挙げられ、湿式粉砕としては、ボールミル、分散機による粉砕が挙げられる。分散機としては、ディスパーマット(英弘精機株式会社製、製品名)が挙げられる。
本発明のナトリウム二次電池用正極において、繊維状炭素材料を用いる場合は、正極の導電性をより高める観点で、繊維状炭素材料の割合は、正極活物質100重量部に対して0.1重量部以上30重量部以下であることが好ましい。導電材として、繊維状炭素材料とそれ以外の炭素材料(黒鉛粉末、カーボンブラック、アセチレンブラックなど)を併用してもよい。この場合、繊維状炭素材料以外の炭素材料は、球状で微粒であることが好ましい。繊維状炭素材料以外の炭素材料を併用する際には、繊維状炭素材料以外の炭素材料の割合は、正極活物質100重量部に対して好ましくは0.1重量部〜30重量部である。
前記バインダーとしては、熱可塑性樹脂が挙げられ、熱可塑性樹脂の例として具体的には、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVdFということがある。)、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある。)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、六フッ化プロピレン・フッ化ビニリデン系共重合体、四フッ化エチレン・パーフルオロビニルエーテル系共重合体などのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂等が挙げられる。これらの二種以上を混合して用いてもよい。バインダーとしてフッ素樹脂およびポリオレフィン樹脂を用いてもよく、正極合剤に対する該フッ素樹脂の割合が1重量%〜10重量%、該ポリオレフィン樹脂の割合が0.1〜2重量%となるように、正極合剤がこれらの樹脂を含有することによって、正極集電体との結着性により優れた正極合剤を得ることができる。
前記正極集電体としては、Al、Ni、ステンレスなどが挙げられ、薄膜に加工しやすく、安価であるという観点で好ましくはAlである。正極集電体に正極合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法;または有機溶媒などをさらに用いて正極合剤ペーストを得て、該ペーストを正極集電体に塗布し、乾燥して、得られたシートをプレスして、正極合剤を集電体に固着する方法が挙げられる。ペーストは、正極活物質、導電材、バインダーおよび有機溶媒を含有する。有機溶媒の例としては、N,N―ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸メチル等のエステル系溶媒、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等(以下、NMPということがある。)のアミド系溶媒等が挙げられる。
正極合剤ペーストを正極集電体へ塗布する方法としては、例えば、スリットダイ塗工法、スクリーン塗工法、カーテン塗工法、ナイフ塗工法、グラビア塗工法、静電スプレー法等が挙げられる。以上により、ナトリウム二次電池用正極を製造することができる。
<ナトリウム二次電池>
ナトリウム二次電池がセパレータを有する場合には、上述の正極、セパレータ、負極およびセパレータをこの順に積層または積層かつ巻回することにより得られる電極群を、電池缶などの電池ケース内に収納し、該ケース内に、電解質を含有する有機溶媒からなる電解液を注入することによって、製造することができる。ナトリウム二次電池がセパレータを有さない場合には、例えば、正極、固体電解質、負極および固体電解質をこの順に積層または積層かつ巻回することにより得られる電極群を、電池缶などの電池ケース内に収納して、製造することができる。
前記の電極群の形状としては、例えば、該電極群を巻回の軸と垂直方向に切断したときの断面が、円、楕円、長方形、角がとれたような長方形等となるような形状が挙げられる。電池の形状としては、例えば、ペーパー型、コイン型、円筒型、角型などの形状が挙げられる。
<負極>
前記負極は、正極よりも低い電位で、ナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができればよく、負極としては、負極材料を含む負極合剤が負極集電体に担持された電極、または負極材料単独からなる電極が挙げられる。負極材料としては、炭素材料、カルコゲン化合物(酸化物、硫化物など)、窒化物、金属または合金で、正極よりも低い電位でナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができる材料が挙げられる。これらの負極材料は混合されてもよい。
前記の負極材料につき、以下に例示する。前記炭素材料の例として、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、高分子焼成体などの中で、正極よりも低い電位で、ナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができる材料が挙げられる。これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、併用してもよく、結晶質または非晶質のいずれでもよい。これらの炭素材料、酸化物、硫化物、窒化物は、主に、負極集電体に担持されて、電極として用いられる。
正極よりも低い電位で、ナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができる前記金属の例として、具体的には、ナトリウム金属、シリコン金属、スズ金属が挙げられる。正極よりも低い電位でナトリウムイオンがドープされることができかつ脱ドープされることができる前記合金の例としては、Na−Al、Na−Ni、Na−Siなどのナトリウム合金、Si−Znなどのシリコン合金、Sn−Mn、Sn−Co、Sn−Ni、Sn−Cu、Sn−Laなどのスズ合金、Cu2Sb、La3Ni2Sn7などの合金が挙げられる。これらの金属、合金は、主に、単独で電極として用いられる(例えば箔状で用いられる。)。
前記の負極合剤は、必要に応じて、バインダーを含有してもよい。バインダーとしては、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、具体的には、PVDF、熱可塑性ポリイミド、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。電解液が後述のエチレンカーボネートを含有しない場合、ポリエチレンカーボネートを含有した負極合剤を用いると、得られる電池のサイクル特性と大電流放電特性とが向上することがある。
前記の負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどが挙げられ、ナトリウムと合金を作り難く、薄膜に加工しやすいという観点で、好ましくはCuである。負極集電体に負極合剤を担持させる方法としては、正極の場合と同様であり、加圧成型による方法;または溶媒などをさらに用いて負極合剤ペーストを得て、該ペーストを負極集電体に塗布し、乾燥して、得られたシートをプレスして、負極合剤を集電体に固着する方法等が挙げられる。
<セパレータ>
前記セパレータとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、含窒素芳香族重合体などの材料からなる、多孔質フィルム、不織布、織布などの形態を有する部材が挙げられる。セパレータは、2種以上の前記材料からなってもよいし、前記部材が積層された積層セパレータであってもよい。セパレータとしては、例えば特開2000−30686号公報、特開平10−324758号公報等に記載のセパレータが挙げられる。セパレータの厚みは、電池の体積エネルギー密度が上がり、かつ内部抵抗が小さくなるという観点で、通常5〜200μm程度、好ましくは5〜40μm程度である。セパレータは、機械的強度が保たれる限り薄いほど好ましい。
セパレータは、好ましくは、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する。二次電池において、セパレータは、正極と負極との間に配置される。セパレータは、正極−負極間の短絡等が原因で電池内に異常電流が流れた際に、電流を遮断して、過大電流が流れることを阻止する(シャットダウンする)機能を有することが好ましい。したがって、セパレータには、通常の使用温度を越えた場合に、できるだけ低温でシャットダウンする(セパレータが、熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムを有する場合には、多孔質フィルムの微細孔が閉塞する)こと、およびシャットダウンした後、ある程度の高温まで電池内の温度が上昇しても、その温度により破膜することなく、シャットダウンした状態を維持すること、換言すれば、耐熱性が高いことが好ましい。かかるセパレータとして、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが互いに積層された積層フィルムなどの耐熱材料を有する多孔質フィルム、好ましくは、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが互いに積層された積層フィルムが挙げられ、このような耐熱材料を有する多孔質フィルムがセパレータであることにより、熱破膜温度をより防ぐことが可能となる。ここで、耐熱多孔層は、多孔質フィルムの両面に積層されていてもよい。
以下、耐熱樹脂を含有する耐熱多孔層と熱可塑性樹脂を含有する多孔質フィルムとが互いに積層された積層フィルムからなるセパレータを説明する。ここで、このセパレータの厚みは、通常5μm以上40μm以下、好ましくは5μm以上20μm以下である。耐熱多孔層の厚みをA(μm)、多孔質フィルムの厚みをB(μm)としたときには、A/Bの値が、0.1以上1以下であることが好ましい。このセパレータは、イオン透過性の観点から、ガーレー法による透気度が50〜300秒/100ccであることが好ましく、50〜200秒/100ccであることがさらに好ましい。このセパレータの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。
積層フィルムにおいて、耐熱多孔層は、耐熱樹脂を含有することが好ましい。イオン透過性をより高めるために、耐熱多孔層の厚みは、薄いことが好ましく、具体的には、好ましくは1μm以上10μm以下であり、さらに好ましくは1μm以上5μm以下であり、特に好ましくは1μm以上4μm以下である。耐熱多孔層は微細孔を有し、その孔のサイズ(直径)は通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。耐熱多孔層は、後述のフィラーを含有することもできる。耐熱多孔層は、無機粉末から形成されていてもよい。
耐熱多孔層に含有される耐熱樹脂の例としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリサルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、芳香族ポリエステル、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドが挙げられる。耐熱樹脂は、耐熱性をより高める観点で、好ましくはポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミドであり、より好ましくはポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミドであり、さらにより好ましくは芳香族ポリアミド(パラ配向芳香族ポリアミド、メタ配向芳香族ポリアミド)、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミドイミド等の含窒素芳香族重合体であり、とりわけ好ましくは芳香族ポリアミドであり、製造面で特に好ましくはパラ配向芳香族ポリアミド(以下、パラアラミドということがある。)である。耐熱樹脂として、ポリ−4−メチルペンテン−1、環状オレフィン系重合体を挙げることもできる。これらの耐熱樹脂を用いることにより、積層フィルムの耐熱性を高めること、すなわち積層フィルムの熱破膜温度を高めることができる。
積層フィルムの熱破膜温度は、耐熱樹脂の種類に依存し、使用場面、使用目的に応じ、選択使用される。通常、熱破膜温度は160℃以上である。熱破膜温度は、耐熱樹脂が上記含窒素芳香族重合体である場合は400℃程度に、耐熱樹脂がポリ−4−メチルペンテン−1である場合は250℃程度に、耐熱樹脂が環状オレフィン系重合体である場合は300℃程度に、夫々、コントロールされることができる。耐熱多孔層が、無機粉末からなる場合には、熱破膜温度は、例えば500℃以上にコントロールされることも可能である。
上記パラアラミドは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドとの縮合重合により得られ、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば、4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に延びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になる。パラアラミドとして、具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン−2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロロ−パラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合体等などのパラ配向型またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示される。
上記芳香族ポリイミドは、好ましくは芳香族の二酸無水物とジアミンとの縮重合により製造される全芳香族ポリイミドである。二酸無水物の具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4―ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。ジアミンとしては、オキシジアニリン、パラフェニレンジアミン、ベンゾフェノンジアミン、3,3’−メチレンジアニリン、3,3’−ジアミノベンソフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ナフタレンジアミンなどが挙げられる。また、溶媒に可溶なポリイミドが好適に使用できる。このようなポリイミドとしては、例えば、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物と、芳香族ジアミンとの重縮合物のポリイミドが挙げられる。
上記芳香族ポリアミドイミドとしては、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジイソシアネートの縮重合により得られるもの、芳香族二酸無水物および芳香族ジイソシアネートの縮重合により得られるものが挙げられる。芳香族ジカルボン酸の具体例としてはイソフタル酸、テレフタル酸などが挙げられる。芳香族二酸無水物の具体例としては、無水トリメリット酸などが挙げられる。芳香族ジイソシアネートの具体例としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、オルソトリレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
耐熱多孔層が、耐熱樹脂を含有する場合には、耐熱多孔層は、1種以上のフィラーを含有していてもよい。耐熱多孔層に含有されていてもよいフィラーは、有機粉末、無機粉末およびこれらの混合物からなる群より選ばれる1種以上であってよい。フィラーを構成する粒子は、その平均粒子径が、0.01μm以上1μm以下であることが好ましい。フィラーの形状としては、略球状、板状、柱状、針状、ウィスカー状、繊維状等が挙げられ、均一な孔が形成されやすい観点から、好ましくは略球状である。略球状粒子としては、粒子のアスペクト比(粒子の長径/粒子の短径)が1以上1.5以下である粒子が挙げられる。粒子のアスペクト比は、電子顕微鏡写真により測定することができる。
フィラーとしての有機粉末としては、例えば、スチレン、ビニルケトン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、アクリル酸メチル等の単独あるいは2種類以上の共重合体;ポリテトラフルオロエチレン、4フッ化エチレン−6フッ化プロピレン共重合体、4フッ化エチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド等のフッ素系樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリオレフィン;ポリメタクリレート;等の有機物からなる粉末が挙げられる。これらの有機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの有機粉末の中でも、化学的安定性の点で、ポリテトラフルオロエチレン粉末が好ましい。
フィラーとしての無機粉末としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等の無機物からなる粉末が挙げられる。これらの中でも、好ましくは導電性の低い無機物からなる粉末である。好ましい無機粉末の具体例としては、アルミナ、シリカ、二酸化チタン、硫酸バリウムまたは炭酸カルシウム等からなる粉末が挙げられる。無機粉末は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの無機粉末の中でも、化学的安定性の点で、アルミナ粉末が好ましい。ここで、より好ましくはアルミナ粉末を構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であることであり、さらにより好ましくはフィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子であり、かつその一部または全部のアルミナ粒子が略球状であることである。耐熱多孔層が、無機粉末から形成される場合には、上記例示の無機粉末を用いればよく、必要に応じてバインダーと混ぜて用いればよい。
耐熱多孔層が耐熱樹脂を含有する場合、フィラーの含有量は、フィラーの材質の比重に依存する。例えば、フィラーを構成する粒子のすべてがアルミナ粒子である場合、フィラーの含有量は、耐熱多孔層の総重量100に対して、通常5以上95以下であり、好ましくは20以上95以下であり、より好ましくは30以上90以下である。これらの範囲は、フィラーの材質の比重に依存して適宜設定できる。
積層フィルムにおける多孔質フィルムは、微細孔を有する。多孔質フィルムは、好ましくはシャットダウン機能を有し、この場合、熱可塑性樹脂を含有する。多孔質フィルムの厚みは、通常3〜30μmであり、好ましくは3〜25μmである。多孔質フィルムの孔のサイズは通常3μm以下、好ましくは1μm以下である。多孔質フィルムの空孔率は、通常30〜80体積%、好ましくは40〜70体積%である。二次電池が通常の使用温度を越えた場合、多孔質フィルムは、それを構成する熱可塑性樹脂の軟化により、微細孔を閉塞することができる。
多孔質フィルムに含有される熱可塑性樹脂としては、80〜180℃で軟化するものが挙げられ、二次電池における電解液に溶解しないものが選択される。このような熱可塑性樹脂として、具体的には、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂が挙げられ、2種以上の熱可塑性樹脂を混合して用いてもよい。より低温で軟化してシャットダウンする観点で、多孔質フィルムはポリエチレンを含有することが好ましい。ポリエチレンの例としては、具体的には、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレンが挙げられ、分子量が100万以上の超高分子量ポリエチレンも挙げられる。多孔質フィルムの突刺し強度をより高める観点では、多孔質フィルムは、超高分子量ポリエチレンを含有することが好ましい。多孔質フィルムを容易に製造するために、熱可塑性樹脂は、低分子量(重量平均分子量1万以下)のポリオレフィンからなるワックスを含有することが好ましい場合もある。
耐熱材料を有する多孔質フィルムとしては、耐熱樹脂および/または無機粉末からなる多孔質フィルムや、耐熱樹脂および/または無機粉末が、ポリオレフィン樹脂や熱可塑性ポリウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂フィルムに分散した多孔質フィルムを挙げることもできる。ここで、耐熱樹脂、無機粉末としては、上述のものを挙げることができる。
<電解液>
電解液において、電解質の例としては、NaClO4、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32、NaN(SO、NaN(SOCF)(COCF)、Na(CSO)、NaC(SO2CF33、Na210Cl10、NaBOB(ここで、BOBは、bis(oxalato)borateのことである。)、低級脂肪族カルボン酸ナトリウム塩、NaAlCl4などのナトリウム塩が挙げられ、2種以上の電解質を混合して使用してもよい。ナトリウム塩として、これらの中でも、NaPF6、NaAsF6、NaSbF6、NaBF4、NaCF3SO3、NaN(SO2CF32およびNaC(SO2CF33からなる群からなる群より選ばれる少なくとも1種のフッ素含有ナトリウム塩が好ましい。
前記電解液において、有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート(以下、PCということがある。)、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ビニレンカーボネート、イソプロピルメチルカーボネート、プロピルメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、または上記の有機溶媒にさらにフッ素置換基を導入したものが挙げられる。これらのうちの二種以上の有機溶媒が混合された混合溶媒を用いてもよい。混合溶媒は、好ましくはカーボネート類を含む混合溶媒であり、さらに好ましくは環状カーボネートと非環状カーボネートの混合溶媒、または環状カーボネートとエーテル類の混合溶媒である。
<固体電解質>
上記の電解液の代わりに固体電解質を用いてもよい。固体電解質としては、例えばポリエチレンオキサイド系の高分子、ポリオルガノシロキサン鎖もしくはポリオキシアルキレン鎖の少なくとも一種以上を含む高分子などの有機系固体電解質を用いることができる。高分子に電解液を保持させた、いわゆるゲルタイプのものを用いることもできる。Na2S−SiS2、Na2S−GeS2、Na2S−P25、Na2S−B23、Na2S−SiS2−Na3PO4、Na2S−SiS2−Na2SO4等の無機系固体電解質を用いてもよい。無機系固体電解質としてNaZr(PO)などのNASICON型電解質を挙げることもできる。これら固体電解質を用いて、安全性をより高めることができることがある。本発明のナトリウム二次電池において、固体電解質を用いる場合には、固体電解質がセパレータの役割を果たす場合もあり、その場合には、セパレータを必要としないこともある。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明はこれらに限定されない。粉末X線回折測定、BET比表面積の測定は下記の方法で行った。充放電試験用の電極とナトリウム二次電池の作製は下記の方法で行った。
(1)粉末X線回折測定
粉末X線回折装置として、株式会社リガク製の粉末X線回折測定装置RINT2500TTR型を用いた。遷移金属リン酸塩とシリコンとを、遷移金属リン酸塩:シリコンの重量比が8:1であるように含有する混合物に、下記条件で、CuKα線を照射することによりX線回折図形を得て、該X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をI、シリコンの最大ピークの強度をIとし、IをIで除して、I/Iの値を決定した。シリコンとしては、National Institute of Standards and Technology(NIST)製の640c Silicon Powderを用いた。
X線源:CuKα線
電圧−電流:40kV−140mA
測定角度範囲:2θ=10〜90°
ステップ:0.02°
スキャンスピード:4°/分
発散スリット幅(DS):1°
散乱スリット幅(SS):1°
受光スリット幅(RS):0.3mm
(2)遷移金属リン酸塩のBET比表面積の測定
遷移金属リン酸塩粉末約1gを窒素気流中150℃、15分間乾燥した後、マイクロメリテックス製フローソーブII2300を用いて、遷移金属リン酸塩のBET比表面積を測定した。
(3)遷移金属リン酸塩の組成分析
遷移金属リン酸塩粉末を塩酸に溶解させた後、誘導結合プラズマ発光分析法(SPS3000、以下ICP−AESと呼ぶことがある)を用いて、遷移金属リン酸塩の組成分析を行った。
(4)ナトリウム二次電池の作製
正極活物質として、遷移金属リン酸塩粉末を用いた。導電材として、アセチレンブラック(以下、ABということがある。)を用いた。バインダーとして、PTFEを用いた。正極活物質:AB:PTFE=75:20:5(重量比)となるように、正極活物質、導電材およびバインダーを混合、混練することにより正極合剤を得て、正極集電体となるSUS製メッシュ(#100、10mmφ)に前記正極合剤を塗布し、150℃で8時間真空で乾燥して正極を得た。得られた正極の重量を測定し、正極の重量からSUS製メッシュの重量を減じることにより正極合剤重量を算出し、上記正極合剤の重量比から正極活物質粉末重量を算出した。得られた正極と、電解液としてのPCにNaClO4を1モル/リットルとなるように溶解したもの(以下、NaClO4/PCと表すことがある。)と、セパレータとしてのポリエチレン製多孔質フィルムと、負極としての金属ナトリウムとを組み合わせて、ナトリウム二次電池(コイン型電池、R2032)を作製した。
上記のコイン型電池を用いて、25℃保持下、以下に示す条件で充放電試験を実施した。
<充放電試験>
・充電:充電最大電圧4.2V、定電流充電、0.1Cレート(充電時間10時間)
・放電:放電最小電圧1.5V、定電流放電、0.1Cレート(1.5Vカットオフ)
<放電レート特性試験>
・充電:充電最大電圧4.2V、定電流−定電圧充電、0.1Cレート
・放電1:放電最小電圧1.5V、定電流放電、0.1Cレート
・放電2:放電最小電圧1.5V、定電流放電、1Cレート
実施例1
(A)遷移金属リン酸塩粉末Sの合成
水酸化ナトリウム(NaOH)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、および塩化鉄(II)四水和物(FeCl・4HO)を、ナトリウム(Na):鉄(Fe):リン(P)のモル比が4:1:1であるように秤量し、秤量した各化合物を各々ガラス製の100mlビーカーに入れ、ビーカーにイオン交換水を加えて各水溶液を得た。前記塩化鉄(II)四水和物の水溶液にアスコルビン酸を0.6g投入し、攪拌しながら溶解させた。次に、前記水酸化ナトリウムの水溶液と前記リン酸水素二アンモニウムの水溶液とを攪拌しながら混合して、得られた混合水溶液に、前記の塩化鉄(II)四水和物とアスコルビン酸とを溶解させた水溶液を加えることにより、析出物を含む固液混合物を得た。得られた固液混合物をナス型フラスコに入れ、次いで該ナス型フラスコを170℃に設定したオイルバスにて20分加熱した後、固液混合物を濾過し、水洗濾過、乾燥を行って遷移金属リン酸塩粉末Sを得た。
(B)遷移金属リン酸塩粉末Sの各種評価
前記粉末Sとシリコンとを8:1の重量比で混合した。混合はメノウ乳鉢を用いて2分間行った。得られた混合物について、X線回折測定を行ったところ、単相の斜方晶型NaFePOとSiのピークが観測された。このときの粉末X線回折図形を図1に示す。図1において、前記粉末Sの最大ピークは、斜方晶型NaFePO(空間群はPnmaである。)の(121)面のピーク(2θ=33°)であり、そのピークの半値幅は0.4°であった。遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をIとし、シリコンの最大ピークの強度をIとしたときのI/Iの値は0.2であった。前記粉末Sについて、ICP−AESにて組成分析を行った結果、Na:Fe:Pのモル比は1:1:1であった。粉末SのBET比表面積を測定したところ、BET比表面積は45m/gであった。粉末Sを用いてナトリウム二次電池を作製し、上記充放電試験を行ったところ、二次電池は充放電できることが確認され、0.1Cレートでの放電容量は120mAh/gであり、大きかった。二次電池の放電レート特性試験を行ったところ、1Cレートにおける放電容量は88mAh/gであり、0.1Cレートの放電容量に対して73%の放電容量であり、レート特性に優れることが確認された。
実施例2
(A)遷移金属リン酸塩粉末S2の合成
水酸化ナトリウム(NaOH)、リン酸水素二アンモニウム((NHHPO)、および塩化鉄(II)四水和物(FeCl・4HO)を、ナトリウム(Na):鉄(Fe):リン(P)のモル比が4:1:1であるように秤量し、秤量した各化合物を各々ガラス製の100mlビーカーに入れ、ビーカーにイオン交換水を加えて各水溶液を得た。前記塩化鉄(II)四水和物の水溶液にアスコルビン酸を0.6g投入し、攪拌しながら溶解させた。次に、前記水酸化ナトリウムの水溶液と前記リン酸水素二アンモニウム水溶液とを攪拌しながら混合して、得られた混合水溶液に前記の塩化鉄(II)四水和物とアスコルビン酸を溶解させた水溶液を加えることにより、析出物を含む固液混合物を得た。得られた固液混合物をナス型フラスコに入れ、次いで該ナス型フラスコを170℃に設定したオイルバスにて40分加熱した後、固液混合物を濾過し、水洗濾過、乾燥を行って遷移金属リン酸塩粉末S2を得た。
(B)遷移金属リン酸塩粉末S2の各種評価
前記粉末S2とシリコンとを8:1の重量比で混合した。混合はメノウ乳鉢を用いて2分間行った。得られた混合物について、X線回折測定を行ったところ、単相の斜方晶型NaFePOとSiのピークが観測された。前記粉末S2の最大ピークは、斜方晶型NaFePO(空間群はPnmaである。)の(121)面のピーク(2θ=33°)であり、そのピークの半値幅は0.3°であった。遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をIとし、シリコンの最大ピークの強度をIとしたときのI/Iの値は0.6であった。前記粉末S2について、ICP−AESにて組成分析を行った結果、Na:Fe:Pのモル比は1:1:1であった。粉末S2のBET比表面積を測定したところ、BET比表面積は40m/gであった。粉末S2を用いてナトリウム二次電池を作製し、上記充放電試験を行ったところ、二次電池は充放電できることが確認され、0.1Cレートでの放電容量は110mAh/gであり、大きかった。二次電池の放電レート特性試験を行ったところ、1Cレートにおける放電容量は79mAh/gであり、0.1Cレートの放電容量に対して72%の放電容量であり、レート特性に優れることが確認された。
上記実施例における遷移金属リン酸塩粉末のFeの一部または全部をMnに置き換えても、上記と同様の効果が得られる。
比較例1
(A)比較粉末Rの合成
炭酸ナトリウム(NaCO)、シュウ酸鉄二水和物(FeC・2HO)、およびリン酸水素二アンモニウム((NHHPO)を、ナトリウム(Na):鉄(Fe):リン(P)のモル比が1:1:1であるように秤量し、メノウ乳鉢で混合した。得られた試料をアルミナ製るつぼに入れ、窒素ガスを2リットル/分の流量で通気しながら、450℃の電気炉で10時間にわたって仮焼成した。
仮焼成後の試料を、メノウ乳鉢で粉砕した後に再び窒素ガスを5リットル/分の流量で通気しながら、800℃の電気炉で24時間にわたって本焼成を行い、さらにボールミルにより粉砕を行って遷移金属リン酸塩粉末Rを得た。
(B)比較粉末Rの各種評価
前記粉末Rとシリコンとを8:1の重量比で混合した。混合はメノウ乳鉢を用いて2分間行った。得られた混合物について、X線回折測定を行ったところ、単相の斜方晶型NaFePOとSiのピークが観測された。このときのX線回折図形において、前記粉末Rの最大ピークは、斜方晶型NaFePO(空間群はPnmaである。)の(301)面のピークであり、そのピークの半値幅は0.1°であった。遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をIとし、シリコンの最大ピークの強度をIとしたときのI/Iの値は1.6であった。前記粉末Rについて、ICP−AES法にて組成分析を行った結果、Na:Fe:Pのモル比は1:1:1であった。粉末RのBET比表面積を測定したところ、BET比表面積は0.26m/gであった。粉末Rを用いてナトリウム二次電池を作製し、上記充放電試験を行ったところ、二次電池は充放電できることが確認され、0.1Cレートでの放電容量は60mAh/gであった。二次電池の放電レート特性試験を行ったところ、1Cレートにおける放電容量は32mAh/gであり、0.1Cレートの放電容量に対して53%の放電容量であった。
製造例1(積層フィルムの製造)
(1)塗工スラリーの製造
NMP4200gに塩化カルシウム272.7gを溶解した後、これにパラフェニレンジアミン132.9gを添加して完全に溶解させた。得られた溶液に、テレフタル酸ジクロライド243.3gを徐々に添加して重合し、パラアラミドを得て、さらにNMPで希釈して、濃度2.0重量%のパラアラミド溶液(A)を得た。得られたパラアラミド溶液100gに、アルミナ粉末(a)2g(日本アエロジル社製、アルミナC、平均粒径0.02μm)とアルミナ粉末(b)2g(住友化学株式会社製スミコランダム、AA03、平均粒径0.3μm)とをフィラーとして計4g添加して混合し、ナノマイザーで3回処理し、さらに1000メッシュの金網で濾過、減圧下で脱泡して、塗工スラリー(B)を製造した。パラアラミドおよびアルミナ粉末の合計重量に対するアルミナ粉末(フィラー)の重量は、67重量%となる。
(2)積層フィルムの製造および評価
多孔質フィルムとしては、ポリエチレン製多孔質フィルム(膜厚12μm、透気度140秒/100cc、平均孔径0.1μm、空孔率50%)を用いた。厚み100μmのPETフィルムの上に上記ポリエチレン製多孔質フィルムを固定し、テスター産業株式会社製バーコーターにより、該多孔質フィルム上に塗工スラリー(B)を塗工した。PETフィルムと塗工された該多孔質フィルムとを一体にしたまま、水中に浸漬させ、パラアラミド多孔質膜(耐熱多孔層)を析出させた後、溶媒を乾燥させて、耐熱多孔層と多孔質フィルムとが積層された積層フィルム1を得た。積層フィルム1の厚みは16μmであり、パラアラミド多孔質膜(耐熱多孔層)の厚みは4μmであった。積層フィルム1の透気度は180秒/100cc、空孔率は50%であった。積層フィルム1における耐熱多孔層の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察をしたところ、0.03〜0.06μm程度の比較的小さな微細孔と0.1〜1μm程度の比較的大きな微細孔とを有することがわかった。尚、積層フィルムの評価は以下の方法で行った。
<積層フィルムの評価>
(A)厚み測定
積層フィルムの厚み、多孔質フィルムの厚みは、JIS規格(K7130−1992)に従い、測定した。また、耐熱多孔層の厚みとしては、積層フィルムの厚みから多孔質フィルムの厚みを差し引いた値を用いた。
(B)ガーレー法による透気度の測定
積層フィルムの透気度は、JIS P8117に基づいて、株式会社安田精機製作所製のデジタルタイマー式ガーレー式デンソメータで測定した。
(C)空孔率
得られた積層フィルムのサンプルを一辺の長さ10cmの正方形に切り取り、重量W(g)と厚みD(cm)を測定した。サンプル中のそれぞれの層の重量(Wi(g);iは1からnの整数)を求め、Wiとそれぞれの層の材質の真比重(真比重i(g/cm3))とから、それぞれの層の体積を求めて、次式より空孔率(体積%)を求めた。
空孔率(体積%)=100×{1−(W1/真比重1+W2/真比重2+・・+Wn/真比重n)/(10×10×D)}
上記実施例のそれぞれにおいて、セパレータとして、製造例1により得られた積層フィルムを用いることにより、熱破膜温度をより高めることのできるリチウム二次電池を得ることができる。

Claims (8)

  1. Na、PおよびM(ここで、Mは、Feを表す。)を含有する遷移金属リン酸塩であって、以下の粉末X線回折測定により決定されたI/Iの値が0.6以下である遷移金属リン酸塩。
    <粉末X線回折測定>
    遷移金属リン酸塩とシリコンとを、遷移金属リン酸塩:シリコンの重量比が8:1であるように含有する混合物に、CuKα線を照射することによりX線回折図形を得て、該X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの強度をI、シリコンの最大ピークの強度をIとし、IをIで除して、I/Iの値を決定する方法。
  2. 前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークの半値幅が0.3°以上1.5°以下である請求項1に記載の遷移金属リン酸塩。
  3. 以下の式(1)で表される請求項1または2に記載の遷移金属リン酸塩。
    NaPO (1)
    (ここで、xは0を超え1.5以下であり、yは0.8以上1.2以下であり、MはFeを表す。)
  4. 斜方晶系結晶構造を有する請求項1〜3のいずれかに記載の遷移金属リン酸塩。
  5. 斜方晶系結晶構造の空間群がPnma空間群であり、前記X線回折図形における遷移金属リン酸塩の最大ピークが、Pnma空間群の(121)面に同定される請求項4に記載の遷移金属リン酸塩。
  6. BET比表面積が40m/g以上80m/g以下である請求項1〜5のいずれかに記載の遷移金属リン酸塩。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の遷移金属リン酸塩を有する電極。
  8. 請求項記載の電極を、正極として有するナトリウム二次電池。
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