本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、ポリウレタン系エラストマーの中でも、JIS A 硬度が70以上であるポリウレタン系エラストマー単独又は該ポリウレタン系エラストマーを主成分とする熱可塑性エラストマー組成物からなるベースフィルムの少なくとも一方の面に、反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂からなる離型層が形成されている離型用フィルムは、金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備えることができることを究明した。
本発明におけるポリウレタン系エラストマーは、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分の反応により得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーである。
上述のポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族ジイソシアネート類、上記イソシアネートのビウレット体、ダイマー体、トリマー体、ダイマー・トリマー体、カルボジイミド体、ウレトンイミン体、2官能以上のポリオール等と上記イソシアネートとの反応で得られるアダクト体等を挙げることができる。また、メタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール、クレゾールなどの活性水素を分子内に1個有するブロック剤でイソシアネート基の一部を安定化したポリイソシアネートも挙げることができる。これらは1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
上述のポリオールは数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオールであり、これらにはポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等がある。これらの高分子ポリオールは1種類又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリオールとから、場合によりジアミン又はアミノアルコールを併用して、縮合反応により得られるものが挙げられる。
このポリカルボン酸としては、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、フタル酸、フタル酸アルキルエステル類、トリメリット酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等がある。また、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステル類の開環重合によって得られるものも挙げられる。
このポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、あるいはビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類が挙げられる。ジアミン又はアミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類が挙げられる。また、低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合で得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、上述のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、さらに、上述のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールを得る際の縮合反応に使用するポリオールの一部あるいは全部にポリエーテルを用いるほかはポリエステルポリオールと同じようにして得られるものが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
上述の鎖延長剤は、数平均分子量が500未満の活性水素含有化合物であり、例えば、上記低分子ポリオール類、上記低分子ポリアミン類、上記低分子アミノアルコール類等が挙げられる。
ポリウレタン系エラストマーの製造には、公知の製造方法、例えば、ワンショット法、プレポリマー法、バッチ反応法、連続反応法、ニーダーによる方法、押出機による方法などの方法が採用できる。
本発明に用いるポリウレタン系エラストマーの硬度は、JIS K 7311の試験法により測定するJIS A 硬度が70以上である。さらに、JIS A 硬度で100以上の場合、D 硬度を適用し、D 硬度の80以下を上限とするのが好ましい。このJIS A 硬度は、好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。JIS A 硬度が60未満では、ゴム性が強くなるため、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送時に、離型用フィルムが伸びて搬送が安定しない不具合がある。他方、D 硬度で80を超える場合、押出成形時に原料のポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分に由来するゲルが発生する不具合がある。
本発明に用いるポリウレタン系エラストマーのビカット軟化温度は、JIS K7206の試験法により測定され、100〜180℃の範囲である。このビカット軟化温度は、好ましくは110〜180℃、より好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜180℃の範囲である。ビカット軟化温度が100℃未満では、使用時に溶融してしまう不具合がある。すなわち、耐熱性が得られない。他方、ビカット軟化温度の上限は180℃であるが、180℃を超えるビカット軟化温度を有するポリウレタン系エラストマーは得られていない。
本発明におけるフッ素含有アルコール系化合物とは、一般式(A)としてRf1(CH2)mOH(式中Rf1は炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し、mは1〜5である。)で表される化合物である。その具体例としては、C6F13CH2OH、C7F15CH2OH、C8F17CH2OH、C8F17CH2CH2OH、C9F19CH2CH2OH、C10F21CH2CH2OH、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2OH、CF3CF2O(CF2CF2O)1〜5CF2CH2OH、CF3CF2CF2O(CFCF3CF2O)1〜3CFCF3CH2OH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC6F13CH2OH、C7F15CH2OH、C8F17CH2OH、C8F17CH2CH2OH、C9F19CH2CH2OH、C10F21CH2CH2OHが好ましい。
本発明におけるフッ素含有ジオール化合物とは、一般式(B)としてRf2(CH2)nOCH2CH(OH)CH2OH(式中Rf2は炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、nは1又は2の整数である。)で表される化合物である。その具体例としては、C6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C7F15CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C8F17CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C9F19CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C10F21CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C7F15CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C8F17CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C9F19CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C10F21CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OHが好ましい。
フッ素含有アルコール系化合物及びフッ素含有ジオール化合物(以下、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物と省略する)は、離型用フィルムに滑性を付与する目的でポリウレタン系エラストマーに混合する。これらのフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物の混合により、フィルム表面に滑性が付与されるので、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送が滑らかになる効果、金型に接触する際に離型用フィルムの皺を防止する効果が得られる。
フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物の混合量は、ポリウレタン系エラストマー100質量部に対して0.05〜5.0質量部の範囲とする。混合量が0.05質量部未満では、混合した効果が発現しない。他方、5.0質量部を超えて混合しても効果が増大せず、また、これらフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物が未反応として残り、フィルム表面にブリードアウトして金型の表面を汚染する不具合がある。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーを混合することができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、例えば、アマイド系ワックス等の滑剤、シリカ等のブロッキング防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を混合することができる。
本発明の反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂からなる離型層を上述の熱可塑性エラストマー組成物からなるベースフィルムの少なくとも一方の面に形成することで、シリコーンゴムモールド成形品の剥離性が良好になる。
本発明の反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂(以下、「樹脂α」と称する。)は、フッ素原子を有する単量体と架橋性官能基を有する単量体と反応性シリコーンとの共重合体であり、離型層の延伸性および剥離性の向上に寄与する。以下、共重合体に用いられた単量体のことを「共重合単位」と称する場合もある。
フッ素原子を有する単量体としては、フッ素樹脂原料として通常用いられている含フッ素単量体が特に制限なく挙げられる。具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合で連結された単量体等が挙げられる。これらの中でも、TFE、VdF、HFP、CTFE、VFが好ましく、TFE、CTEFが特に好ましい。これらは1種を単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基などを有する単量体が挙げられ、なかでも、硬化性が良好な点から水酸基、シアノ基、シリル基を有する単量体が好ましく、特に水酸基を有する単量体が好ましい。
水酸基を有する単量体としては、例えば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類や、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などがあげられる。
反応性シリコーンオイルとしては、下記の式(1)または式(2)で示される。
R1−[Si(CH3)2−O]n−Si(CH3)2−R2 ・・・(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、−(CH2)r−OOC(CH3)C=CH2または−CH=CH2であり、R2は−(CH2)r−OOC(CH3)C=CH2または−CH=CH2である。nは1〜420であり、rは1〜6である。)
R2−Si[OSi(CH3)3]3 ・・・(2)
(式(2)中のR2は上述の定義の通り。)
また、一般式(1)あるいは(2)で示される反応性シリコーンオイルは、片末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン、片末端がアクリル変性されたポリジメチルシロキサン、両末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン等が好適である。これらの反応性シリコーンオイルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
さらに、上述の反応性シリコーンオイルは、次式(3)、(4)、(5)、(6)で示されるものであってもよい。
CH2=C(CH3)−COO−C3H6−[Si(CH3)2−O]m−Si(CH3)2−R3 ・・・(3)
(ここでR3は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。mは1〜250の整数を示す。)
CH2=CH−COO−C3H6−[Si(CH3)2−O]p−Si(CH3)2−R4 ・・・(4)
(ここでR4は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。pは1〜250の整数を示す。)
R5−C3H6−[Si(CH3)2−O]q−C3H6−R5 ・・・(5)
(ここでR5は、−OCOC(CH3)=CH2を示す。qは1〜250の整数を示す。)
CH2=C(CH3)COO−C3H6Si[OSi(CH3)3]3 ・・・(6)
さらに必要に応じて、上述以外の単量体(以下、「その他の単量体」)と組み合わせて共重合していてもよい。
その他の単量体としては、アルキルビニルエーテル類、アルキルアリルエーテル類、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル類、カルボン酸ビニルエステル類、オレフィン類などが挙げられる。これらのその他の単量体は単独で、あるいは2種以上を併用して用いることができる。
アルキルビニルエーテル類の具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
アルキルアリルエーテル類の具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2プロパンジオール、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。
アクリル酸エステル類の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
オレフィン類としては、炭素原子数2〜20のオレフィンであり、具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセンおよび1−エイコセンなど等が挙げられる。
樹脂αの市販品として、関東電化工業社製のエフクリアシリーズがあげられる。また、反応性シリコーンを用いない架橋型フッ素含有樹脂の例として、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体などが挙げられる。市販品としては、TFEを共重合単位として含むダイキン工業社製のゼッフルGKシリーズや、CTFEを共重合単位として含む旭硝子社製のルミフロンシリーズ、DIC社製のフルオネートシリーズ、東亜合成社製のザフロンシリーズ、セントラル硝子社製のセフラルコートシリーズが挙げられ、これらのうち1種以上を、樹脂αと併用して使用できる。
上述の樹脂αは、有機溶媒等に溶解させて、溶液として使用するのが好ましい。溶媒の具体例としては、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン及びイソオクタン等の脂肪族飽和炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びジメチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶媒、トリクロロエチレン、クロロホルム及びm−キシレンヘキサクロリド等の塩素系溶媒、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルパーフルオロブチルエーテル及びエチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素系溶媒、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン及びヘプタメチルトリシロキサン等のシリコーン系溶媒等が挙げられる。なかでも、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンイソプロピルアルコールが、反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂の溶解性の観点から、1種以上が好ましく用いることができる。
水酸基を有する樹脂αの水酸基価は、5〜200mgKOH/gであることが好ましく、30〜180mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が5mgKOH/gよりも小さい場合、架橋反応性に劣り、200mgKOH/gを超える場合、溶媒への溶解性に劣る。
架橋剤は、樹脂αの官能基に応じて選択される。例えば水酸基を有する樹脂αに対しては、多価イソシアネート化合物、メラミン架橋剤、尿素樹脂架橋剤、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物、多基塩基酸架橋剤などが挙げられ、なかでも多価イソシアネート化合物を架橋剤として用いるのが、離型層に延伸性や柔軟性を付与できる点、また離型層とベースフィルムとの密着性を向上できる点で好ましい。
多価イソシアネート化合物としては、上述の芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネート類などのポリイソシアネートが挙げられ、また、これらのポリイソシアネートの単独又は混合物から誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型イソシアネート、及びこれらのジイソシアネートとエチレングリコール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールやイソシアネート基と反応する官能基を有する低分子量のポリエステル樹脂(油変性タイプを含む)やアクリル系共重合体などとのランダム型付加物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート等モル付加物、イソシアネートエチル(メタ)クリレートなどのイソシアネート基と共重合性不飽和基を有するビニル系モノマーを必須成分として得られたイソシアネート基を有する共重合体等が挙げられる。更には、これらのポリイソシアネートを、上述のブロック剤でイソシアネート基を安定化したブロックドポリイソシアネートも挙げることができる。離型層の延伸性や柔軟性の観点から、多価イソシアネート化合物の1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基かつ/又はブロックドイソシアネート基を有することが好ましく、2〜3個がより好ましく、具体的には2官能以上のポリオール等と前記ポリイソシアネートとの反応で得られるアダクト体、イソシアヌレート等のジイソシアネート誘導体、前記イソシアネートのビウレット体、アロファネート、及びウレチジンジオンが好ましい。市販品としては、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートシリーズ、住化バイエルウレタン社製のスミジュールシリーズやディスモジュールシリーズが挙げられる。これらの多価イソシアネート化合物は1種又は2種以上が適宜選択して使用される。
多価イソシアネート化合物の添加量は、多価イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数と樹脂αが有する水酸基のモル数に対する比率(NCO/OH)が0.5〜2.0になるように調整することが好ましく、0.7〜1.3であることがより好ましい。0.5未満であると架橋性やベースフィルムとの密着性が劣り、2.0を超えると離型層における多価イソシアネート化合物の割合が増すことになり、モールド成形品の剥離性が損なわれる。
架橋促進剤としては、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアミンであるテトラメチルエチレンジアミン、トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン、金属触媒としては酢酸カリウム、2−エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリンなどが使用でき、単独または2種類以上を使用していてもよい。
架橋促進剤の添加量は樹脂αの100質量部に対して0.0001〜0.01質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0002〜0.005質量部の範囲である。
本発明の離型用フィルムは、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下であり、0.1〜50MPaが好ましく、0.5〜45MPaがより好ましい。140℃における貯蔵弾性率が高すぎると、離型用フィルムが真空で吸引されても伸びないことがあり、伸びても金型に密着せず、所望の寸法が得られなかったり、金型のエッジで破れるといった不具合を生じる。特に、成形倍率(成形前のフィルム面積に対する成形後のフィルム面積の比)が2倍以上の場合において、このような不具合が発生しやすいため好ましくない。他方、140℃における貯蔵弾性率が小さすぎる場合は、モールド成形時に離型用フィルムに皺が入ったり、溶断してしまう懸念がある。
本発明におけるポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、(イ)エラストマーの融点未満の温度でポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを攪拌混合させた後、ポリウレタン系エラストマーの融点以上の温度で溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法と、(ロ)ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを分散混合することなしに、ポリウレタン系エラストマーを融点以上の温度で溶融させた中にフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法とがあり、適宜選択して用いればよい。
以下、(イ)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物との攪拌混合は、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーあるいは万能攪拌ミキサー等の公知の混合機を使用して行うことができる。
ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、上記方法で作製した攪拌混合物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して溶融混練することにより行う。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
以下、(ロ)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーを単軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機で溶融させた後、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物を作製する。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
単軸押出機あるいは二軸押出機などの押出機を使用してポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合は、後述のフィルムを成形する場合と同様に、押出機内および組成物間の空隙に存在する空気を不活性ガスで置換した不活性ガス雰囲気下で溶融混練してもよい。
通常、熱可塑性エラストマー組成物は、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状あるいはペレット状に加工して使用される。
本発明の離型用フィルムのベースフィルムは、例えば、溶融押出法、溶融キャスト法、カレンダー法等、従来公知の方法によって成形することができ、このうち溶融押出法による方法が、生産性が高く好ましい。溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。以下の例では、Tダイスを用いた溶融押出法によりベースフィルムを成形する方法を挙げる。
このような方法で得られるベースフィルムは、熱可塑性エラストマー組成物を単軸押出機あるいは二軸押出機等の押出機を使用し、熱可塑性エラストマー組成物の特性に応じて押出機内及び成形材料間の間隙に存在する空気を窒素ガスで置換した雰囲気下において、溶融混練し、押出機先端に配置されたTダイス先端のリップ部から溶融押し出されたベースフィルムを引取機内の圧着ロールと冷却ロールとの間に直接挟んで冷却し、あるいは、圧着ロール側と冷却ロール側の両方もしくは片方からセパレータを挿入して挟んで冷却し、次いで巻取機で巻取管に順次巻取ることにより得られる。
図3は、上述の方法でベースフィルムを製造するフィルム製造装置の概略を示した構成図である。また、図4は、図3に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺の断面図である。図3において、フィルム製造装置は、大略、材料投入ホッパー2、押出機1、Tダイス7、引取機11、巻取機15を備えて構成される。材料投入ホッパー2は、成形材料を投入するようになっており、図4に示すように、材料投入ホッパー2の押出機1に接続される途中において、窒素ガス供給用パイプ3がスペーサー3aを介して挿入されている。また、窒素ガス供給用パイプ3は、材料投入口1cのほぼ中心軸に沿うように屈曲され、その先端は押出機1内の押出スクリュー1aの外周近傍まで延設されている。材料投入ホッパー2から投入される成形材料中あるいは押出機1内に含まれる酸素は、押出機1の押出スクリュー1aで成形材料が混合、撹拌される際に、窒素ガス供給用パイプ3に供給される窒素ガスで置換されるようになる。
押出機1は、成形材料を押出スクリュー1aによって混合、撹拌しながら矢印B方向に搬送させ、押出機1のシリンダー1b内に組み込まれた電熱手段によって、成形材料を加熱、溶融する。このように溶融されて搬送される成形材料は、図3に示す接続管4を介してフィルター手段5に送給される。そして、フィルター手段5によって、未溶融の成形材料を分離し、溶融された成形材料をギヤポンプ6へ送給する。ギヤポンプ6では、溶融された成形材料の圧力を高めながらTダイス7に溶融成形材料を押し出す。Tダイス7では、所定圧力で溶融成形材料を押し出し、Tダイス7のリップ部7aから所定厚み、所定幅のフィルム8を成形する。このようにして成形されたフィルム8は、引取機11の冷却ロール10の外周面上に引き取られながら圧着ロール9で所定厚みに調整され、さらに、冷却、固化され、搬送ロール対12、13で巻取機15に搬送される。
巻取機15では、フィルム8は、案内ロール15a、15b、15cで案内されて巻取管16によって巻き取られる。なお、搬送ロール対12、13と案内ロール15aとの間には、厚さ測定器14が配設されており、所望の厚さとなるように、厚さ測定器14で測定された厚さに基づいて、冷却ロール10の周速度を調整、制御するようになっている。これにより上記ベースフィルムが形成される。
ベースフィルムの少なくとも一方の面に離型層を形成する方法として、樹脂α/架橋剤/溶媒からなる塗料組成物を調整して、従来公知の塗布方式を用いて塗布し、所望の膜厚になるように塗布する方法が好ましい。塗布方式として、例えば、バーコータ、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、ダイコータ、エアードクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ等から適宜選択して用いることができる。前記塗布液が乾燥して形成される離型層の膜厚は、0.05μm〜10μmの範囲、好ましくは0.1μm〜5μmの範囲で、付加型液状シリコーンゴムのモールド成形時での延伸性や剥離性、後述する離型用フィルムの表面粗さの観点から調整される。塗布液の乾燥プロセスにおける温度は、架橋反応の促進及び前記ベースフィルムの熱変形を低減する観点から、50〜130℃程度の範囲であることが好ましい。更に、ベースフィルムの物性安定化や架橋反応の促進を図るために、50〜130℃程度の範囲でエージングすることも好ましい。
離型用フィルムは、モールド成形品が必要とする表面形状に応じて、フィルムの表面形状を形成すればよい。例えば、LED等でその表面が鏡面となる場合、離型用フィルムの表面を鏡面にした離型用フィルムを用いる。また、ICやLSI等はその表面に微細な凹凸を形成させるので、離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成した離型用フィルムを用いる。
離型用フィルムの表面形状を形成する方法としては、表面を鏡面にする場合は、前述したベースフィルム製造における金属製冷却ロールの表面を鏡面にしておき、該冷却ロールに溶融状態にあるベースフィルムを圧着ロールで圧着し、ベースフィルムの表面を鏡面に整面する方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして鏡面仕上げのPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合は、前述した金属製の冷却ロールの外周面に微細な凹凸を形成しておき、該冷却ロールに溶融状態にあるベースフィルムを圧着ロールで圧着する際、冷却ロールの外周面に形成された微細な凹凸をベースフィルム表面に転写させる方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして表面をマット加工したPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
離型用フィルムの表面を鏡面とする場合、その表面粗さが、JIS B0601−2001に準拠し、速度0.6mm/秒、カットオフ値0.8mm、評価長さ8.0mmで測定される算術平均粗さRaが0.10以下、最大高さ粗さRzが1.00以下になるように、表面を適宜形成すればよい。算術平均粗さRaが0.10以下及び最大高さ粗さRzが1.00以下であれば、離型用フィルムの表面が転写されるモールド成形品の表面は平滑となる。
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合、その表面粗さが、上記と同様に測定される算術平均粗さRaが0.5以上、最大高さ粗さRzが5.00以上となるように、表面を適宜形成すればよい。
本発明の離型用フィルムは、厚さが5μm〜500μmの範囲であり、好ましくは10μm〜400μmの範囲であって、使用する金型の形状に応じて適宜選択すればよい。離型用フィルムの厚さを5μm未満とした場合、使用時に金型に追従した際、離型用フィルムが伸ばされて薄くなって裂けたり、封止材の圧力で破れたりする不具合があるので好ましくない。また、500μmを超える場合、離型用フィルムの厚さが障害になり、微細な構造を有する金型に追従できなくなることや、金型の複雑な形状が成形品に転写されなくなる不具合があるので好ましくない。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
表1および2に示す、実施例1〜5、比較例3で用いたベースフィルムの材料(a)〜(d)および比較例1および2で用いたETFEフィルムは下記の通りである。
[熱可塑性ポリウレタン系エラストマー]
(a)パンデックスT8166DN:商品名、ディーアイシーバイエルポリマー社製、JIS D 硬度67
(b)ミラクトランE598PNAT:商品名、日本ポリウレタン工業社製、JIS
A 硬度98、ビカット軟化温度141℃
[フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物]
(c)エフトップMF−100:商品名、三菱マテリアル社製、3−(2−ペルフルオロヘキシルエトキシ)−1,2−ジヒドロキシプロパン(C6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH)
(d)エフトップPDFOH:商品名、三菱マテリアル社製、ペンタデカフルオロオクタノール(C7F15CH2OH)
[ETFEフィルム]
(e)アフレックス25N−1250NT:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
(f)アフレックス100KN−500NT−10:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
表1に示す、実施例1〜5で用いた離型層の材料(g)〜(j)は下記の通りである。
[樹脂α]
(g)エフクリア:商品名、関東電化工業社製、反応性シリコーンを共重合単位として含むフッ素含有共重合体、酢酸エチル溶液、固形分濃度20質量%、水酸基価67mgKOH/g
(h)エフクリア:商品名、関東電化工業社製、反応性シリコーンを共重合単位として含むフッ素含有共重合体、酢酸ブチル溶液、固形分濃度30質量%、水酸基価111mgKOH/g
[架橋剤]
(i)デュラネートAE700−100:商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系アダクト型、固形分濃度100質量%、NCO含量=12.0質量%)
(j)デュラネートTSE−100:商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型、固形分濃度100質量%、NCO含量=12.0質量%)
[溶媒]
上記の離型層材料の希釈溶剤として酢酸エチルを用いた。
以下、表1および2に基づき、離型用フィルムの作製、貯蔵弾性率の測定、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性及び実使用性について詳述する。なお、比較例においても同様に適用される内容となっている。
(ベースフィルムの作製)
熱可塑性エラストマー組成物をφ30mm、L/D=32の単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製)に供給し、圧縮比3.0のフルフライト押出スクリューを使用してシリンダー温度200℃〜230℃の条件下で溶融混練し、幅500mmのTダイスからダイス温度210℃〜230℃の条件下で連続的に押し出した。この押し出ししたベースフィルムを、引取機内で、圧着ロール側からマット加工PETフィルムをセパレータとし、冷却ロール側から鏡面加工PETフィルムをセパレータとして供給し、それらを圧着ロール冷却ロールとの間に挟んで冷却し、巻取機において両端部をスリット刃で裁断し、離型用フィルムを巻取管に巻き取ることにより、表1に記載の厚さで、幅300mm、長さ200mのベースフィルムを製造した。これらのベースフィルムを、80℃の雰囲気下に24時間放置後、次いで40℃の雰囲気下で168時間放置してエージングを行った。エージング終了後、セパレータの鏡面加工PETフィルムを剥がしながら、ベースフィルムを巻き直して、塗布用のベースフィルムを得た。
(塗料組成物の作製)
離型層用の塗料組成物を表1に示す混合割合で調整した。尚、架橋剤のイソシアネート基のモル数と樹脂αの水酸基のモル数との比(NCO/OH)は1.0である。
(塗料組成物の塗布と乾燥)
ベースフィルムの鏡面側に、塗料組成物をグラビアコータで、乾燥温度70〜100℃、乾燥時間1〜2分の条件で、表1に示す膜厚になるように塗布および乾燥して巻き取った。これらを80℃の雰囲気下に48時間放置してエージングを行った。エージング終了後、セパレータのマット加工PETフィルムを剥がしながら、離型用フィルムを巻きなおして、評価用の離型用フィルムを得た。
尚、乾燥後の膜厚は以下に基づいて測定された値である。二軸延伸PETフィルムS10(商品名、東レ社製、厚さ50μm、両方鏡面)の片面に各塗料組成物を上記と同じ条件で塗布し、乾燥直後のフィルムを10cm角に切り取り、電子天秤で質量を測定し、塗布膜を酢酸エチルで溶かしながら全て拭き取り、乾かした後の質量を測定した。この拭き取り前後の質量差から、比重1として膜厚を算定した。
(貯蔵弾性率の測定)
離型用フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)それぞれについて、レオメトリックス社製SOLIDS ANALYZER RSAII〔商品名〕を使用し、引張モード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、歪み0.1%の条件下で温度140℃における貯蔵弾性率を測定した。結果を表1および2に示した。
(評価の方法)
図1は、リード線21a、21bを備えた砲弾型LEDレンズ20の側面図である。評価は、図1に示すレンズ形状を具備する、図2(a)、(b)に示す金型を使用し、金型30の表面に複数のレンズ成形凹部31に沿って離型用フィルムを吸着させた後、シリコーンゴム組成物を滴下して熱プレス成形し、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性をそれぞれ評価した。
具体的には、140℃に加熱した金型に対して離型用フィルムのマット面が金型側、鏡面がエアー側になるよう離型用フィルムを張設し、真空で吸引して離型用フィルムを金型に吸着させた。次いで、離型用フィルム上にシリコーンゴム組成物LPS−3412(信越化学工業社製商品名、メチル系シリコーン)を滴下し、これらに表面がハードクロムメッキされた平板金型を押し当て、二つの金型で挟持させて熱プレス成形した。成形した積層品の、離型用フィルムと硬化したシリコーンゴムとの剥離性、離型用フィルムの耐熱性、硬化したシリコーンゴムについて型寸法転写性と表面平滑性を評価した。熱プレス成形は、温度140℃、圧力10kg/cm2、5分間の条件で実施した。図2の砲弾型レンズ成形部1箇所における成形倍率は計算上で約2.67倍である。
(剥離性)
剥離性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物が離型用フィルム上に残ることなく剥離できた場合は「○」、シリコーンゴム組成物が部分的に破断して離型用フィルム上に残存した場合は「×」として示した。
(耐熱性)
耐熱性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物を剥離した離型用フィルムを目視で観察し、溶融、溶断がなくフィルム形状を保持していた場合は「○」、離型用フィルムに溶融、溶断があった場合を「×」として示した。
(型寸法転写性)
型寸法転写性は、硬化したシリコーンゴム組成物の寸法を測定し評価した。レンズ高さの評価基準を、穴深さ4mmについて離型用フィルムの厚さを減じた寸法からさらに−0.1mm以内の範囲、すなわち、((4−離型用フィルムの厚さ)−0.1)mm以上とした。25個のレンズについてすべて基準以内だった場合は「○」、1個でも基準を満たさない形状があった場合を「×」として示した。
(表面平滑性)
表面平滑性は、硬化したシリコーンゴム組成物の表面状態を目視で評価した。シリコーンゴムの表面に凹凸や皺の発生がなかった場合を「○」、凹凸や皺の発生があった場合を「×」として示した。
(実使用性)
実使用性については、モールド成形装置で樹脂モールド成形することにより確認・評価した。具体的には、モールディング装置として、アピックヤマダ社製のモールド成形装置G-LINE manual press(商品名)において、シリコーンゴム組成物としてLPS−3412(信越化学工業社製商品名、メチル系シリコーン)を用い、実使用性を目視により確認した。
実使用性の評価は、下記の項目全て満足した場合を「○」、どれかに不具合があった場合を「×」とした。
(い)モールド成形装置内で離型用フィルムが搬送される際にフィルムが弛むことなく供給された。
(ろ)吸着時にフィルムに皺の発生がなかった。
(は)熱プレス成形後、離型用フィルムとシリコーンゴム組成物との剥離性が良好であった。
(に)硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形され、表面に凹凸や皺がなく平滑であった。
(ほ)離型用フィルムに破れや溶断、シリコーンゴム組成物の残りがなく、金型に汚れがなかった。
このような結果から、比較例1の厚さ25μmのETFEフィルムは、金型内で吸着される際にフィルムが破れたため実使用性が得られなかった。比較例2の厚さ100μmのETFEフィルムは、型寸法転写性が劣り、硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形されなかったため実使用性が得られなかった。比較例3のポリウレタン系エラストマー単独のフィルムは、シリコーンゴム組成物との剥離性が劣るため、シリコーンゴム成形品の表面が凹凸になり、所望の形状に成形されなかったため実使用性が得られなかった。
これに対し、本発明による各実施例の離型用フィルムは、剥離性が得られていることに加え耐熱性を有し、型寸法転写性と表面平滑性に優れ、さらに、実使用性が付与されていることが明らかとなる。このことから、本発明によれば、封止材を成形加工して得られる成形品との剥離性に優れ、しかも、形状と表面性に優れる成形品を得られる離型用フィルムを得ることができる。
本発明の実施例の離型用フィルムは、上記のように、シリコーン樹脂組成物からなるLEDレンズの成形モールドについて評価したが、本発明の離型用フィルムは光半導体素子や半導体素子を樹脂モールド成形する際にも有用であることは言うまでもない。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。