JP6710595B2 - 熱可塑性ポリウレタン樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物、熱可塑性ポリウレタン樹脂製の透湿性樹脂成形物及び熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
透湿性の樹脂成形物用の原料として有用な本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、イソシアネート成分と、特有の2種類のポリオールを含むポリオール成分とが反応して得られる反応物である。具体的には、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、上記ポリオール成分として、少なくとも、ポリエチレングリコールと、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体とを併用したことを特徴とする。また、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂のより好ましい形態として、上記ポリオール成分として、上記の2種類の特有のポリオール成分に加え、更に、連鎖伸長剤として機能する、例えば、1,4−ブタンジオール等の短鎖ジオールを用いることが挙げられる。
本発明を構成するポリエチレングリコールとしては、種々の分子量のものが市販されており、特に限定されないが、本発明では、その分子量が200〜20000程度のもの、より好ましくは300〜4000程度のものを用いることが好ましい。先に述べたように、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂は、その形成成分であるポリオールとしてポリエチレングリコールを用いているため、得られる樹脂成形物は、高い透湿性を示すものになる。ポリエチレングリコールは、分子量の異なるものが種々市販されており、その中から所望の分子量のものを選択して使用すればよい。本発明者らの検討によれば、市販されている分子量2000程度のポリエチレングリコールは、高分子量で親水性のため、透湿の効果があり、本発明で用いるポリエチレングリコールとして最適である。
本発明に用いるテトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体は、ポリエーテルグリコールであり、広い温度範囲にわたり液状であるという特徴があり、ポリマーの有用なジオール原料として提供されている。市販されているものとしては、例えば、旭化成せんい社製の平均分子量が1800程度のものが挙げられるが、勿論、これに限定されるものではない。本発明で用いるテトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体における共重合の態様は、特に限定されず任意である。本発明者らの検討によれば、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体がランダム共重合体である場合に、より顕著な効果が得られる。本発明者らの検討によれば、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体は、分岐構造を持つため、結晶性を抑制する効果がある。先に述べたように、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体は、ポリエチレングリコールと併用し、これらのポリオール成分とイソシアネート成分との反応物である熱可塑性ポリウレタン樹脂を得た場合、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体の立体障害により配向性を落とすことで、ポリエチレングリコールの凝集を抑制することができ、この結果、本発明が課題としている「ブツ」の発生を抑制できるという顕著な効果が得られる。
ポリウレタンは、一般的に、イソシアネート成分とポリオール成分と連鎖伸長剤を反応させて得ることができる。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂も、これを得る場合に、上記した本発明で規定する2種類のポリオール成分に加えて、更に連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールを用いることが好ましい。このようにすることで、より特性に優れた熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることが可能になる。本発明の好ましい実施形態に用いる連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールとしては、分子量400未満の下記に挙げるものがある。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキノンビス(b−ヒドロキシエチルエーテル)等が挙げられる。これらの短鎖ジオールとしては、上記に挙げたような市販のジオールを適宜に選択して使用することができる。本発明者らの検討によれば、上記に挙げた中でも特に1,4−ブタンジオールは有用である。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得る際に、上記に挙げたような脂肪族低分子量ジオール(短鎖ジオール)を用いることで、得られるポリウレタン樹脂の分子量を増大させることができ、高分子量の熱可塑性ポリウレタン樹脂を得ることができる。本発明では、本発明の透湿性の樹脂成形物として、機械強度に優れ、耐熱性・耐油性・反発弾性の高いものを得るために、その原料となる熱可塑性ウレタンエラストマーを得る目的で、上記した短鎖ジオールを用いるとよい。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を構成するイソシアネート成分としては、従来、熱可塑性ポリウレタン樹脂を得るために使用されているものをいずれも用いることが可能である。本発明者らの検討によれば、それらの中でも、例えば、4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、パラフェニレンイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等、その構造中に芳香環を有するものを使用することが好ましい。更に、これらの中でも特に、4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネートを用いることが好ましい。これは芳香族イソシアネートであり、ポリメリックメチレンジアニリン(ポリメリックMDA)を製造するためのアニリンとホルマリンの縮合反応工程、ポリメリックMDI混合物を製造するためのポリメリックMDAのホスゲン化反応工程、ポリメリックMDI混合物から蒸留乃至は晶析により、モノメリックMDIを分離する工程より得られるものである。本発明を構成する上記したようなイソシアネートは、先に述べた2種類のポリオール成分と、必要に応じて使用する、先に挙げたような連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールと反応して、反応物として、先に述べた本発明の顕著な効果を実現できる高分子量の熱可塑性ポリウレタンを形成する。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法は、ポリオール成分として、少なくとも、ポリエチレングリコールと、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体とを用い、更に、必要に応じて連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールを用い、これらのポリオール成分とイソシアネート成分とを反応させる工程を有することを特徴とする。上記の各成分を反応させる際の反応方法は、特に限定されず、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂が得られれば任意であるが、全ての反応成分を入れて反応を行うワンショット法で行うことが好ましい。より具体的には、ワンショット法は、イソシアネート、ポリオール、必要な連鎖伸長剤を同時に重合させる方法である。しかし、本発明の製造方法は、ワンショット法に限定されるものでなく、プレポリマー法で反応を行ってもよい。ワンショット法では、3液を同時に合成することができ、プレポリマーを製造する工程が不要であるため、作業工程がプレポリマー法と比べて少ないといった利点がある。なお、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法において用いる特有の2種類のポリオール成分は、反応系にそれぞれを単独で添加してもよいし、予め混合して反応系に添加するようにしてもよい。
本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、上記で説明した本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有してなることを特徴とする。本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物は、その他に、例えば、酸化防止剤、加水分解防止剤、光安定剤等の各種添加物を含んでもよい。
本発明は、上記した構成の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなり、且つ、フィルム状又はシート状であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂製の透湿性樹脂成形物を提供する。なお、勿論、本発明の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物によって、フィルム状又はシート状以外の形態の樹脂成形物を得ることも可能であるが、高い透湿性を実現した製品とするためには、フィルム状又はシート状であることが好ましい。
反応容器に、ポリオール成分として、分子量2000のポリエチレングリコール(日油社製)を337.5gと、分子量1800のテトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体(旭化成社製)を112.5gとを入れ、更に、連鎖伸長剤として1,4−ブタンジオールを73.75g入れて、110℃に加温した。その後、イソシアネート成分として、60℃に加温しておいた4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネートを262.6g加えて12秒間撹拌し、反応させた。次に、反応物をトレーに移し、100℃で3時間熟成した後、得られた塊状物を粉砕し、更に粉砕物を押出機にてストランド状に押し出したものをカッティングすることによりペレット化し、熱可塑性ポリウレタン樹脂のペレット(A)を作製した。
実施例1で使用したポリオール成分を分子量2000のポリエチレングリコール450gのみとし、連鎖伸長剤である1,4−ブタンジオールの量を80gとし、実施例1で使用したイソシアネート成分である4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネートの量を278.5gとした以外は、実施例1と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂製のペレット(B)及びフィルム(b)をそれぞれ作製した。
実施例1で使用したポリオール成分を、ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコール450gのみとし、連鎖伸長剤である1,4−ブタンジオールの量を53gとし、イソシアネート成分である4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネートの量を209.5gとした以外は、実施例1の場合と同様にして、熱可塑性ポリウレタン樹脂製のペレット(C)及びフィルム(c)を得た。
Claims (9)
- 透湿性の樹脂成形物用の原料である、ポリエチレングリコールと、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体と、連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールと、を含むポリオール成分と、その構造中に芳香環を有する、4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、パラフェニレンイソシアネート及びナフタレンジイソシアネートからなる群から選ばれるいずれかのイソシアネートを含むイソシアネート成分との反応物であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂。
- 前記短鎖ジオールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びヒドロキノンビス(b−ヒドロキシエチルエーテル)からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項1に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
- 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が、200〜20000である請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
- 前記ポリエチレングリコールの平均分子量が、300〜4000である請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂を含有してなることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物。
- 請求項5に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物からなり、且つ、フィルム状又はシート状であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂製の透湿性樹脂成形物。
- ポリオール成分として、少なくとも、ポリエチレングリコールと、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体と、連鎖伸長剤として機能する短鎖ジオールと、を用い、これらのポリオール成分と、その構造中に芳香環を有する、4,4’−メチレンビスフェニルイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、パラフェニレンイソシアネート及びナフタレンジイソシアネートからなる群から選ばれるいずれかのイソシアネートを含むイソシアネート成分とを反応させる工程を有することを特徴とする熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
- 前記短鎖ジオールが、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びヒドロキノンビス(b−ヒドロキシエチルエーテル)からなる群から選ばれる少なくともいずれかである請求項7に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
- 前記反応を、ワンショット法で行う請求項7又は8に記載の熱可塑性ポリウレタン樹脂の製造方法。
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