以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して、同じ要素には同じ番号を付している。
本実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマー等の組成物が挙げられる。
これら熱可塑性エラストマー組成物は、要求される耐熱性に応じて、適宜選択することができる。柔軟性の観点から、好ましくは、JIS A硬度が70以上であるポリウレタン系エラストマー単独または該ポリウレタン系エラストマーを主成分とする組成物である。
本実施形態において、主成分とは、熱可塑性エラストマー組成物中に占めるポリウレタン系エラストマーの重量比率が、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上であることをいう。
また、本実施形態において、ポリウレタン系エラストマーとは、ポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分の反応により得られる熱可塑性ポリウレタン系エラストマーである。
ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシレン−1,4−ジイソシアネート、キシレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類、シクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族ジイソシアネート類、上記イソシアネートのビウレット体、ダイマー体、トリマー体、ダイマー・トリマー体、カルボジイミド体、ウレトンイミン体、2官能以上のポリオール等と上記イソシアネートとの反応で得られるアダクト体等を挙げることができる。また、メタノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール、アセト酢酸エチル、ε−カプロラクタム、メチルエチルケトンオキシム、フェノール、クレゾールなどの活性水素を分子内に1個有するブロック剤でイソシアネート基の一部を安定化したポリイソシアネートも挙げることができる。これらは単独又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリオールは、数平均分子量が500〜10000の高分子ポリオールであり、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリオレフィンポリオール等が挙げられる。これらの高分子ポリオールは、単独又は2種類以上を混合して使用できる。
ポリエステルポリオール及びポリエステルアミドポリオールとしては、ポリカルボン酸とポリオールとから、場合により、ジアミン又はアミノアルコールを併用して、縮合反応により得られるものが挙げられる。
ポリカルボン酸としては、例えば、琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、フタル酸、フタル酸アルキルエステル類、トリメリット酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等が挙げられる。また、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトンなどの環状エステル類の開環重合によって得られるものも挙げられる。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−n−ヘキサデカン−1,2−エチレングリコール、2−n−エイコサン−1,2−エチレングリコール、2−n−オクタコサン−1,2−エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド付加物、水素添加ビスフェノールA、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル−3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピオネート、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類、あるいは、開始剤として低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを用い、ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル(ラクトン)モノマーの開環重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオールが挙げられる。
ジアミン又はアミノアルコールとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、キシリレンジアミン、イソホロンジアミン等の低分子ポリアミン類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の低分子アミノアルコール類が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、上記のポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオールと、ジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等との脱アルコール反応、脱フェノール反応等で得られるものが挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、上記のポリエステルポリオールに用いられる低分子ポリオール、低分子ポリアミン、低分子アミノアルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等を開環重合させたポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等、及びこれらを共重合したポリエーテルポリオール、さらに、上記のポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールを開始剤としたポリエステルエーテルポリオールが挙げられる。
ポリエーテルエステルポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールを得る際の縮合反応に使用するポリオールの一部あるいは全部にポリエーテルを用いるほかはポリエステルポリオールと同じようにして得られるものが挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、水酸基含有ポリブタジエン、水素添加した水酸基含有ポリブタジエン、水酸基含有ポリイソプレン、水素添加した水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有塩素化ポリプロピレン、水酸基含有塩素化ポリエチレン等が挙げられる。
鎖延長剤は、数平均分子量が500未満の活性水素含有化合物であり、例えば、上記した低分子ポリオール類、低分子ポリアミン類、低分子アミノアルコール類等が挙げられる。
また、本実施形態における熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、他の熱可塑性エラストマーを混合することができる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、フッ素系エラストマー、ポリ塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマー等が挙げられる。
本実施形態におけるポリウレタン系エラストマーのJIS A硬度は、JIS K7311の試験法により測定され、70以上である。このJIS A硬度は、好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。JIS A硬度が70未満では、ゴム性が強くなるため、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送時に、離型用フィルムが伸びて搬送が安定しない不具合がある。また、JIS A硬度が100以上の場合、D硬度を適用し、D硬度の80以下を上限とするのが好ましい。他方、D硬度で80を超える場合、押出成形時に原料のポリイソシアネート、ポリオール及び鎖延長剤の3成分に由来するゲルが発生する不具合がある。
また、本実施形態におけるポリウレタン系エラストマーのビカット軟化温度は、JIS K7206の試験法により測定され、100〜180℃の範囲である。このビカット軟化温度は、好ましくは110〜180℃、より好ましくは120〜180℃、さらに好ましくは130〜180℃の範囲である。ビカット軟化温度が100℃未満では、使用時に溶融してしまう不具合がある。すなわち、耐熱性が得られない。他方、ビカット軟化温度の上限は180℃であるが、180℃を超えるビカット軟化温度を有するポリウレタン系エラストマーは、現時点では知られていない。
本実施形態において、フッ素含有アルコール系化合物とフッ素含有ジオール化合物からなる群から選択される1つ又は複数の化合物(以下、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物と称する。)を、熱可塑組成エラストマー組成物に混合することが好ましい。これらのフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物の混合により、ベースフィルム表面に滑性が付与されるので、モールド成形装置内における離型用フィルムの搬送が滑らかになる効果や、金型に接触する際に離型用フィルムの皺を防止する効果が得られる。
本実施形態におけるフッ素含有アルコール系化合物とは、一般式(A)としてRf1(CH2)mOH(式中Rf1は炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルエーテル基を表し、mは1〜5である。)で表される化合物である。その具体例としては、C6F13CH2OH、C7F15CH2OH、C8F17CH2OH、C8F17CH2CH2OH、C9F19CH2CH2OH、C10F21CH2CH2OH、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2OH、CF3CF2O(CF2CF2O)1〜5CF2CH2OH、CF3CF2CF2O(CFCF3CF2O)1〜3CFCF3CH2OH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC6F13CH2OH、C7F15CH2OH、C8F17CH2OH、C8F17CH2CH2OH、C9F19CH2CH2OH、C10F21CH2CH2OHが好ましい。
本実施形態におけるフッ素含有ジオール化合物とは、一般式(B)としてRf2(CH2)nOCH2CH(OH)CH2OH(式中Rf2は炭素数3〜20の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基を表し、nは1又は2の整数である。)で表される化合物である。その具体例としては、C6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C7F15CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C8F17CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C9F19CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C10F21CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、(CF3)2CF(CF2)8CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH等が挙げられ、これらの中では、直鎖状パーフルオロアルキル基を含有するC6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C7F15CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C8F17CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C9F19CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、C10F21CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OHが好ましい。
フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物の混合量は、熱可塑性エラストマー組成物100質量部に対して、0.05〜5.0質量部の範囲とすることが好ましい。混合量が0.05質量部未満では、混合した効果の発現が軽微となる。他方、5.0質量部を超えて混合しても、その効果が増大せず、さらに、これらフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物が未反応のまま残って、離型フィルム表面にブリードアウトして、金型の表面を汚染する不具合が生じる恐れがある。
さらに、本実施形態における熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で、例えば、アマイド系ワックス等の滑剤、シリカ等のブロッキング防止剤、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等を混合することができる。
本実施形態における離型層は、熱可塑性エラストマー組成物からなるベースフィルムの少なくとも一方の面に形成され、該離型層の60°鏡面光沢度が、80%以上とするものである。
本実施形態における離型層の60°鏡面光沢度は、JIS Z8741の試験法により測定され、80%以上、好ましくは85〜150%である。60°鏡面光沢度が該範囲であれば、表面平滑性に優れる成形品、例えば、表面平滑性に優れるLEDレンズをモールド成形する場合に好適となる。60°鏡面光沢度が80%未満では、LEDレンズ表面の平滑性が損なわれ、光錯乱による曇りが生じてしまう。他方、60°鏡面光沢度が180%を超えると、LEDレンズ表面の平滑性が過剰となり、離型用フィルムの巻き取り時に皺が入るため、好ましくない。
本実施形態における離型層は、成形品の剥離性、例えば、シリコーンゴムモールド成形品の剥離性が良好になることから、架橋型フッ素樹脂が好ましい。架橋型フッ素樹脂としては、放射線照射によりフッ素樹脂分子間を架橋させたもの、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)や、架橋性官能基を有するフッ素樹脂と架橋剤を反応させたもの等が挙げられる
。これらの架橋型フッ素樹脂は、単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これら架橋型フッ素樹脂の中では、反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂(以下、「樹脂α」と称する。)がより好ましく、さらには、離型層の延伸性及び剥離性の向上の観点から、フッ素原子を有する単量体と架橋性官能基を有する単量体と反応性シリコーンとの共重合体が好ましい(以下、「共重合単位」とは、共重合体に用いられる単量体を示す。)。
反応性シリコーンとしては、下記の式(1)または式(2)で示される。
R1−[Si(CH3)2−O]n−Si(CH3)2−R2 ・・・(1)
(式(1)中、R1は炭素数1〜6のアルキル基、−(CH2)r−OOC(CH3)C=CH2または−CH=CH2であり、R2は−(CH2)r−OOC(CH3)C=CH2または−CH=CH2である。nは1〜420であり、rは1〜6である。)
R2−Si[OSi(CH3)3]3 ・・・(2)
(式(2)中のR2は上記の定義の通り。)
また、一般式(1)あるいは(2)で示される反応性シリコーンは、片末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン、片末端がアクリル変性されたポリジメチルシロキサン、両末端がメタクリル変性されたポリジメチルシロキサン等が好適である。これらの反応性シリコーンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せてもよい。
さらに、上記の反応性シリコーンは、次式(3)、(4)、(5)、(6)で示されるものであってもよい。
CH2=C(CH3)−COO−C3H6−[Si(CH3)2−O]m−Si(CH3)2−R3 ・・・(3)
(ここでR3は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。mは1〜250の整数を示す。)
CH2=CH−COO−C3H6−[Si(CH3)2−O]p−Si(CH3)2−R4 ・・・(4)
(ここでR4は、炭素数1〜6のアルキル基を示す。pは1〜250の整数を示す。)
R5−C3H6−[Si(CH3)2−O]q−C3H6−R5 ・・・(5)
(ここでR5は、−OCOC(CH3)=CH2を示す。qは1〜250の整数を示す。)
CH2=C(CH3)COO−C3H6Si[OSi(CH3)3]3 ・・・(6)
フッ素原子を有する単量体としては、フッ素樹脂原料として通常用いられている含フッ素単量体が特に制限なく挙げられる。具体的には、テトラフルオロエチレン(TFE)、ビニリデンフルオライド(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フルオロアルキル基と重合性不飽和基とがエーテル結合またはエステル結合で連結された単量体等が挙げられる。これらの中でも、TFE、VdF、HFP、CTFE、VFが好ましく、TFE、CTEFが特に好ましい。これら含フッ素単量体は、単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基などを有する単量体等が挙げられ、なかでも、硬化性が良好になることから、水酸基、シアノ基、シリル基を有する単量体が好ましく、さらに、水酸基を有する単量体が好ましい。
水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類や、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、上記以外の単量体(以下、「その他の単量体」と称する。)と組み合わせて、共重合体としてもよい。
その他の単量体としては、例えば、アルキルビニルエーテル類、アルキルアリルエーテル類、メタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル類、カルボン酸ビニルエステル類、オレフィン類等が挙げられる。これらのその他の単量体は、単独又は2種類以上を併用して用いることができる。
アルキルビニルエーテル類の具体例としては、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、グリシジルオキシメチルビニルエーテル、グリシジルオキシエチルビニルエーテル、グリシジルオキシブチルビニルエーテル、グリシジルオキシペンチルビニルエーテル、グリシジルオキシシクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。
アルキルアリルエーテル類の具体例としては、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、シクロヘキシルアリルエーテル、イソブチルアリルエーテル、n−プロピルアリルエーテル、アリルグリシジルエーテル、3−アリルオキシ−1,2プロパンジオール、グリセロールモノアリルエーテル等が挙げられる。
アクリル酸エステル類の具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシブチル等が挙げられる。
メタクリル酸エステル類の具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル等が挙げられる。
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等が挙げられる。
オレフィン類としては、炭素原子数2〜20のオレフィンであり、具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン及び1−エイコセン等が挙げられる。
反応性シリコーンを含まない架橋型フッ素含有樹脂の具体例としては、TFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、CTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/その他の単量体の共重合体等が挙げられる。
反応性シリコーンを含まない架橋型フッ素含有樹脂の市販品としては、TFEを共重合単位として含むダイキン工業社製のゼッフルGKシリーズや、CTFEを共重合単位として含む旭硝子社製のルミフロンシリーズ、DIC社製のフルオネートシリーズ、東亜合成社製のザフロンシリーズ、セントラル硝子社製のセフラルコートシリーズが挙げられる。また、樹脂αの市販品としては、関東電化工業社製のエフクリアシリーズが挙げられる。そして、樹脂αと反応性シリコーンを含まない架橋型フッ素含有樹脂は、単独又は2種類以上を併用して使用することができる。
水酸基を有する単量体を共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂の水酸基価は、5〜200mgKOH/gであることが好ましく、30〜180mgKOH/gであることがより好ましい。水酸基価が5mgKOH/gよりも小さい場合、架橋反応性に劣り、200mgKOH/gを超える場合、溶媒への溶解性が劣る。
本実施形態における架橋剤は、架橋性を有する官能基に応じて選択される。例えば、水酸基を有する樹脂αに対しては、多価イソシアネート化合物、メラミン架橋剤、尿素樹脂架橋剤、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物、多基塩基酸架橋剤等が挙げられ、これらの中でも、多価イソシアネート化合物を架橋剤として用いるのが、離型層に延伸性や柔軟性を付与できる点、また、離型層とベースフィルムとの密着性を向上できる点で好ましい。
多価イソシアネート化合物としては、上記の芳香族、脂肪族、脂環族ジイソシアネート類などのポリイソシアネートが挙げられ、また、これらのポリイソシアネートの単独又は混合物から誘導されるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、ビュレット型イソシアネート、及びこれらのジイソシアネートとエチレングリコール、ポリエーテルポリオール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等)、カプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオールやイソシアネート基と反応する官能基を有する低分子量のポリエステル樹脂(油変性タイプを含む)やアクリル系共重合体などとのランダム型付加物、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネート等モル付加物、イソシアネートエチル(メタ)クリレートなどのイソシアネート基と共重合性不飽和基を有するビニル系モノマーを必須成分として得られたイソシアネート基を有する共重合体等が挙げられる。さらには、これらのポリイソシアネートを、上記のブロック剤でイソシアネート基を安定化したブロックドポリイソシアネートも挙げることができる。離型層の延伸性や柔軟性の観点から、多価イソシアネート化合物の1分子中に少なくとも2個以上のイソシアネート基かつ/又はブロックドイソシアネート基を有することが好ましく、2〜3個がより好ましく、具体的には、2官能以上のポリオール等と前記ポリイソシアネートとの反応で得られるアダクト体、イソシアヌレート等のジイソシアネート誘導体、前記イソシアネートのビウレット体、アロファネート、及びウレチジンジオンが好ましい。多価イソシアネート化合物の市販品としては、旭化成ケミカルズ社製のデュラネートシリーズ、住化バイエルウレタン社製のスミジュールシリーズやディスモジュールシリーズが挙げられる。これらの多価イソシアネート化合物は、単独又は2種類以上を適宜選択して使用される。
多価イソシアネート化合物の添加量は、多価イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数と、樹脂αが有する水酸基のモル数に対する比率(NCO/OH)が、0.5〜2.0になるように調整することが好ましく、0.7〜1.3であることがより好ましい。0.5未満であると、架橋性やベースフィルムとの密着性が劣り、2.0を超えると、離型層における多価イソシアネート化合物の割合が過剰に増すことになり、モールド成形品の剥離性が損なわれる。
また、多価イソシアネート化合物を架橋剤として用いる場合、架橋促進剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、ジアミンであるテトラメチルエチレンジアミン、トリアミン、環状アミン、ジメチルエタノールアミンのようなアルコールアミン、エーテルアミン、金属触媒として酢酸カリウム、2−エチルへキサン酸カリウム、酢酸カルシウム、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸錫、ビスマスネオデカノエート、ビスマスオキシカーボネート、ビスマス2−エチルヘキサノエート、オクチル酸亜鉛、亜鉛ネオデカノエート、ホスフィン、ホスホリン等が挙げられ、単独又は2種類以上を混合して使用できる。
架橋促進剤の添加量は、樹脂αの100質量部に対して0.0001〜0.01質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0002〜0.005質量部の範囲である。
本実施形態における離型層を形成する架橋型フッ素樹脂含有樹脂等の組成物は、有機溶媒等に溶解させて、溶液として使用するのが好ましい。溶媒の具体例としては、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル系溶媒、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、エタノール及びイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族系溶媒、ヘキサン、イソヘキサン、ヘプタン、オクタン及びイソオクタン等の脂肪族飽和炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン及びジメチルシクロヘキサン等の脂肪族系溶媒、トリクロロエチレン、クロロホルム及びm−キシレンヘキサクロリド等の塩素系溶媒、アセトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル及びテトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、メチルパーフルオロブチルエーテル及びエチルパーフルオロブチルエーテル等のフッ素系溶媒、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン及びヘプタメチルトリシロキサン等のシリコーン系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、例えば、反応性シリコーンを共重合単位として含む架橋型フッ素含有樹脂の溶解性の観点から、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレンイソプロピルアルコールが、単独又は2種類以上を混合して、好ましく用いることができる。
次に、本実施形態における離型用フィルムの製造方法について、詳細に説明する。
本実施形態におけるポリウレタン系エラストマーは、公知の製造方法、例えば、ワンショット法、プレポリマー法、バッチ反応法、連続反応法、ニーダーによる方法、押出機による方法等の製造方法を採用することができる。
また、本実施形態におけるポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、(イ)エラストマーの融点未満の温度でポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを攪拌混合させた後、ポリウレタン系エラストマーの融点以上の温度で溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法と、(ロ)ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とを分散混合することなしに、ポリウレタン系エラストマーを融点以上の温度で溶融させた中にフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練し、熱可塑性エラストマー組成物を作製する方法等があり、適宜選択して用いればよい。
以下、(イ)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物との攪拌混合は、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダーあるいは万能攪拌ミキサー等の公知の混合機を使用して行うことができる。
ポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物の作製は、上記方法で作製した攪拌混合物を単軸押出機、二軸押出機等の押出機を使用して溶融混練することにより行う。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
以下、(ロ)の方法を説明する。ポリウレタン系エラストマーを単軸押出機、二軸押出機等の溶融混練機で溶融させた後、フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物を添加して溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物を作製する。この熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合の押出機の温度は、ポリウレタン系エラストマーの融点以上240℃以下である。
単軸押出機あるいは二軸押出機などの押出機を使用してポリウレタン系エラストマーとフッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物とからなる熱可塑性エラストマー組成物を作製する場合は、後述のフィルムを成形する場合と同様に、押出機内及び組成物間の空隙に存在する空気を不活性ガスで置換した不活性ガス雰囲気下で溶融混練してもよい。
通常、熱可塑性エラストマー組成物は、粉砕機あるいは裁断機で粉状、顆粒状あるいはペレット状に加工して使用される。
本実施形態における離形用フィルムのベースフィルムは、熱可塑性エラストマー組成物を、例えば、溶融押出法、溶融キャスト法、カレンダー法等、従来公知の方法により成形することができ、これらの中でも、溶融押出法による方法が、生産性が高く好ましい。溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。以下、Tダイスを用いた溶融押出法によりベースフィルムを成形する方法を説明する。
本実施形態におけるベースフィルムは、熱可塑性エラストマー組成物を単軸押出機あるいは二軸押出機等の押出機を使用し、熱可塑性エラストマー組成物の特性に応じて、押出機内及び成形材料間の間隙に存在する空気を窒素ガスで置換した雰囲気下において、溶融混練し、押出機先端に配置されたTダイス先端のリップ部から溶融押し出されたベースフィルムを、引取機内の圧着ロールと冷却ロールとの間に直接挟んで冷却し、あるいは、圧着ロール側と冷却ロール側の両方もしくは片方からセパレータを挿入して挟んで冷却し、次いで巻取機で巻取管に順次巻取ることにより得られる。
図1は、上記の方法でベースフィルムを製造するフィルム製造装置の概略を示した構成図である。また、図2は、図1に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺の断面図である。図1において、フィルム製造装置は、大略、材料投入ホッパー2、押出機1、Tダイス7、引取機11、巻取機15を備えて構成される。材料投入ホッパー2は、成形材料を投入するようになっており、図2に示すように、材料投入ホッパー2の押出機1に接続される途中において、窒素ガス供給用パイプ3がスペーサー3aを介して挿入されている。また、窒素ガス供給用パイプ3は、材料投入口1cのほぼ中心軸に沿うように屈曲され、その先端は押出機1内の押出スクリュー1aの外周近傍まで延設されている。材料投入ホッパー2から投入される成形材料中あるいは押出機1内に含まれる酸素は、押出機1の押出スクリュー1aで成形材料が混合、撹拌される際に、窒素ガス供給用パイプ3に供給される窒素ガスで置換されるようになる。
押出機1は、成形材料を押出スクリュー1aによって混合、撹拌しながら矢印B方向に搬送させ、押出機1のシリンダー1b内に組み込まれた電熱手段によって、成形材料を加熱、溶融する。このように溶融されて搬送される成形材料は、図1に示す接続管4を介してフィルター手段5に送給される。そして、フィルター手段5によって、未溶融の成形材料を分離し、溶融された成形材料をギヤポンプ6へ送給する。ギヤポンプ6では、溶融された成形材料の圧力を高めながらTダイス7に溶融成形材料を押し出す。Tダイス7では、所定圧力で溶融成形材料を押し出し、Tダイス7のリップ部7aから所定厚み、所定幅のフィルム8を成形する。このようにして成形されたフィルム8は、引取機11の冷却ロール10の外周面上に引き取られながら圧着ロール9で所定厚みに調整され、さらに、冷却、固化され、搬送ロール対12、13で巻取機15に搬送される。
巻取機15では、フィルム8は、案内ロール15a、15b、15cで案内されて巻取管16によって巻き取られる。なお、搬送ロール対12、13と案内ロール15aとの間には、厚さ測定器14が配設されており、所望の厚さとなるように、厚さ測定器14で測定された厚さに基づいて、冷却ロール10の周速度を調整、制御するようになっている。これにより上記ベースフィルムが形成される。
ベースフィルムの少なくとも一方の面に離型層を形成する方法として、樹脂α/架橋剤/溶媒からなる塗料組成物を調整して、従来公知の塗布方式を用いて塗布し、所望の膜厚になるように塗布する方法が好ましい。塗布方式として、例えば、バーコータ、リバースロールコータ、正回転ロールコータ、グラビアコータ、キスコータ、キャストコータ、スプレイコータ、カーテンコータ、ダイコータ、エアードクターコータ、ブレードコータ、ロッドコータ、ナイフコータ、スクイズコータ、含浸コータ等から適宜選択して用いることができる。前記塗布液が乾燥して形成される離型層の膜厚は、0.05μm〜10μmの範囲、好ましくは0.1μm〜5μmの範囲で、付加型液状シリコーンゴムのモールド成形時での延伸性や剥離性、後述する離型用フィルムの表面粗さの観点から調整される。塗布液の乾燥プロセスにおける温度は、架橋反応の促進及び前記ベースフィルムの熱変形が低減することから、50〜130℃程度の範囲であることが好ましい。乾燥直後の塗膜は、架橋が不完全な場合があるため、ブロッキングしたり擦り傷や凹凸が付いたりし易い。そのため、乾燥直後に保護フィルムや剥離紙を塗工面に貼り合わせておくことが好ましい。保護フィルムとしては、ポリエチレン(PE)フィルム、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム、ポリオレフィン系マスキングフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどが挙げられる。ベースフィルムの物性安定化や架橋反応の促進を図るために、30〜130℃程度の範囲でエージングすることも好ましい。
本実施形態における離型用フィルムは、モールド成形品が必要とする表面形状に応じて、フィルムの表面形状を形成することが好ましい。例えば、LED等でその表面が鏡面となる場合、離型用フィルムの表面である離型層を鏡面にした離型用フィルムを用いる。また、ICやLSI等は、その表面に微細な凹凸を形成させるので、離型用フィルムの表面である離型層に微細な凹凸を形成した離型用フィルムを用いる。
離型用フィルムの表面形状を形成する方法としては、表面を鏡面にする場合は、前述したベースフィルム製造における金属製冷却ロールの表面を鏡面にしておき、該冷却ロールに溶融状態にあるベースフィルムを圧着ロールで圧着し、ベースフィルムの表面を鏡面に整面する方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして鏡面仕上げのPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を離形用フィルムに転写させる方法がある。さらに、離型層を形成する際に使用する保護フィルムとして、鏡面仕上げのPEフィルム、OPPフィルム、PETフィルムを使用し、その表面を離形用フィルムに転写させる方法もある。
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合は、前述した金属製の冷却ロールの外周面に微細な凹凸を形成しておき、該冷却ロールに溶融状態にあるベースフィルムを圧着ロールで圧着する際、冷却ロールの外周面に形成された微細な凹凸をベースフィルム表面に転写させる方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして表面をマット加工したPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
離型用フィルムの表面を鏡面とする場合、ベースフィルムの鏡面側の表面粗さが、JIS B0601−2001の試験法により測定され、速度0.6mm/秒、カットオフ値0.8mm、評価長さ8.0mmの条件で、算術平均粗さRaが0.10μm以下、最大高さ粗さRzが1.00μm以下であれば、離形層の60°鏡面光沢度が80%以上となり、離形用フィルムの表面が転写されるモールド成形品の表面は平滑となる。
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合、ベースフィルムの表面粗さを、上記のJIS B0601−2001の測定条件において、算術平均粗さRaが0.50μm以上、最大高さ粗さRzが5.00μm以上となるように、表面を適宜形成すればよい。
本実施形態における離型用フィルムは、厚さが5μm〜500μmの範囲であり、好ましくは10μm〜400μmの範囲であって、使用する金型の形状に応じて適宜選択すればよい。離型用フィルムの厚さを5μm未満とした場合、使用時に金型に追従した際、離型用フィルムが伸ばされて薄くなって裂けたり、封止材の圧力で破れたりする不具合があるので好ましくない。また、500μmを超える場合、離型用フィルムの厚さが障害になり、微細な構造を有する金型に追従できなくなることや、金型の複雑な形状が成形品に転写されなくなる不具合があるので好ましくない。
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
表1及び2に示す、実施例2、参考例1及び3〜5、比較例3及び4で用いたベースフィルムの材料(a−1)〜(b−2)及び比較例1及び2で用いたETFEフィルムは、下記のとおりである。
[熱可塑性ポリウレタン系エラストマー]
(a−1)パンデックスT8166DN:商品名、ディーアイシーバイエルポリマー社製、JIS D 硬度67
(a−2)ミラクトランE598PNAT:商品名、日本ポリウレタン工業社製、JIS A 硬度98、ビカット軟化温度141℃
[フッ素含有アルコール系化合物・ジオール化合物]
(b−1)エフトップMF−100:商品名、三菱マテリアル社製、3−(2−ペルフルオロヘキシルエトキシ)−1,2−ジヒドロキシプロパン(C6F13CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH)
(b−2)エフトップPDFOH:商品名、三菱マテリアル社製、ペンタデカフルオロオクタノール(C7F15CH2OH)
[ETFEフィルム]
(c−1)アフレックス25N−1250NT:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
(c−2)アフレックス100KN−500NT−10:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
表1に示す、実施例2、参考例1及び3〜5、比較例4で用いた離型層の材料(d−1)〜(e−2)は下記の通りである。
[樹脂α]
(d−1)エフクリアKD3100:商品名、関東電化工業社製、反応性シリコーンを共重合単位として含むフッ素含有共重合体、酢酸エチル溶液、固形分濃度20質量%、水酸基価67mgKOH/g
(d−2)エフクリアKD270:商品名、関東電化工業社製、反応性シリコーンを共重合単位として含むフッ素含有共重合体、酢酸ブチル溶液、固形分濃度30質量%、水酸基価111mgKOH/g
[架橋剤]
(e−1)デュラネートAE700−100:商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系アダクト型、固形分濃度100質量%、NCO含量12.0質量%
(e−2)デュラネートTSE−100:商品名、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート系イソシアヌレート型、固形分濃度100質量%、NCO含量12.0質量%
[溶媒]
上記の離型層材料の希釈溶剤として、酢酸エチルを用いた。
以下、表1及び2に基づき、離型用フィルムの作製、貯蔵弾性率の測定、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性及び実使用性について詳述する。なお、比較例においても同様に適用される内容となっている。
(ベースフィルムの作製)
熱可塑性エラストマー組成物をφ30mm、L/D=32の単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製)に供給し、圧縮比3.0のフルフライト押出スクリューを使用してシリンダー温度200℃〜230℃の条件下で溶融混練し、幅500mmのTダイスからダイス温度210℃〜230℃の条件下で連続的に押し出した。この押し出ししたベースフィルムを、引取機内で、圧着ロール側からマット加工PETフィルム(算術平均粗さRa0.15μm、最大高さ粗さRz1.3μm)をセパレータとし、冷却ロール側から鏡面加工PETフィルム(算術平均粗さRa0.06μm、最大高さ粗さRz0.7μm)をセパレータとして供給し、それらを圧着ロール冷却ロールとの間に挟んで冷却し、巻取機において両端部をスリット刃で裁断し、離型用フィルムを巻取管に巻き取ることにより、表1に記載の厚さで、幅300mm、長さ200mのベースフィルムを製造した。これらのベースフィルムを、80℃の雰囲気下に24時間放置後、次いで40℃の雰囲気下で168時間放置してエージングを行った。エージング終了後、セパレータの鏡面加工PETフィルムを剥がしながら、ベースフィルムを巻き直して、塗布用のベースフィルムを得た。なお、実施例1〜5、比較例3及び4で作成したベースフィルムの鏡面側の表面粗さは、JIS B0601−2001の試験法により測定され、速度0.6mm/秒、カットオフ値0.8mm、評価長さ8.0mmの条件で、いずれも算術平均粗さRaは0.10μm以下、最大高さ粗さRzは1.00μm以下であった。
(離形層用の塗料組成物の作製)
離型層用の塗料組成物を、表1に示す混合割合で調整した。なお、架橋剤のイソシアネート基のモル数と樹脂αの水酸基のモル数との比(NCO/OH)は、1.0とした。
(塗料組成物の塗布と乾燥)
ベースフィルムの鏡面側に、離形層用の塗料組成物をグラビアコータで、乾燥温度70〜130℃、乾燥時間1〜2分の条件で表1に示す膜厚となるよう塗布した。乾燥直後に保護フィルムを塗布面に張り合わせて巻き取り、40℃の雰囲気下に48時間放置後、保護フィルムとセパレータのマット加工PETフィルムを剥がしながら、離形用フィルムを巻き直し、評価用の離形用フィルムを得た。
(乾燥後膜厚の測定)
乾燥後の膜厚は、以下に基づいて測定した。二軸延伸PETフィルムS10(商品名、東レ社製、厚さ50μm、両方鏡面)の片面に、各塗料組成物を上記と同じ条件で塗布し、乾燥直後のフィルムを10cm角に切り取り、電子天秤で質量を測定し、塗布膜を酢酸エチルで溶かしながら全て拭き取り、乾かした後の質量を測定した。この拭き取り前後の質量差から、比重1として膜厚を算定した。
表1に示す、実施例1〜5及び比較例4で用いた保護フィルム(f−1)〜(f−3)は、下記の通りである。
(f−1)IVY1800:商品名、大協技研工業製、PE系マスキングフィルム、厚み60μm、塗布面と貼り合わせる面の60°鏡面光沢度85%
(f−2)E201F#25:商品名、王子エフテックス製、OPPフィルム、厚み25μm、塗布面と貼り合わせる面の60°鏡面光沢度148%
(f−3)AJ−1:商品名、タマポリ製、PEフィルム、厚み50μm、塗布面と貼り合わせる面の60°鏡面光沢度80%
(光沢度の測定)
表1に示す、実施例1〜5及び比較例4の離型用フィルムの離形層の60°鏡面光沢度は、スガ試験機製の変角光沢計を使用し、JIS Z8741に従い、入射角60°、反射角60°として測定した。
(評価の方法)
図3は、リード線21a、21bを備えた砲弾型LEDレンズ20の側面図である。評価は、図3に示すレンズ形状を具備する、図4(a)、(b)に示す金型を使用し、金型30の表面に複数のレンズ成形凹部31に沿って離型用フィルムを吸着させた後、シリコーンゴム組成物を滴下して熱プレス成形し、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性をそれぞれ評価した。
具体的には、140℃に加熱した金型に対して離型用フィルムのマット面が金型側、鏡面がエアー側になるよう離型用フィルムを張設し、真空で吸引して離型用フィルムを金型に吸着させた。次いで、離型用フィルム上に、メチル系シリコーンのシリコーンゴム組成物(商品名:LPS−3412、信越化学工業社製)を滴下し、これらに表面がハードクロムメッキされた平板金型を押し当て、二つの金型で挟持させて熱プレス成形した。成形した積層品の、離型用フィルムと硬化したシリコーンゴムとの剥離性、離型用フィルムの耐熱性、硬化したシリコーンゴムについて型寸法転写性と表面平滑性を評価した。熱プレス成形は、温度140℃、圧力10kg/cm2、5分間の条件で実施した。図4の砲弾型レンズ成形部1箇所における成形倍率は計算上で約2.67倍である。
(剥離性)
剥離性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物が離型用フィルム上に残ることなく剥離できた場合は「○」、シリコーンゴム組成物が部分的に破断して離型用フィルム上に残存した場合は「×」として示した。
(耐熱性)
耐熱性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物を剥離した離型用フィルムを目視で観察し、溶融、溶断がなくフィルム形状を保持していた場合は「○」、離型用フィルムに溶融、溶断があった場合を「×」として示した。
(型寸法転写性)
型寸法転写性は、硬化したシリコーンゴム組成物の寸法を測定し評価した。レンズ高さの評価基準を、穴深さ4mmについて離型用フィルムの厚さを減じた寸法からさらに−0.1mm以内の範囲、すなわち、((4−離型用フィルムの厚さ)−0.1)mm以上とした。25個のレンズについてすべて基準以内だった場合は「○」、1個でも基準を満たさない形状があった場合を「×」として示した。
(表面平滑性)
表面平滑性は、硬化したシリコーンゴム組成物の表面状態を目視で評価した。シリコーンゴムの表面に曇りや凹凸及び皺の発生がなかった場合を「○」、曇りや凹凸及び皺の発生があった場合を「×」として示した。
(実使用性)
実使用性については、モールド成形装置で樹脂モールド成形することにより確認・評価した。具体的には、モールディング装置として、アピックヤマダ社製のモールド成形装置G-LINE manual press(商品名)において、シリコーンゴム組成物としてLPS−3412(信越化学工業社製商品名、メチル系シリコーン)を用い、実使用性を目視により確認した。
実使用性の評価は、下記の項目全て満足した場合を「○」、どれかに不具合があった場合を「×」とした。
(い)モールド成形装置内で離型用フィルムが搬送される際にフィルムが弛むことなく供給された。
(ろ)吸着時にフィルムに皺の発生がなかった。
(は)熱プレス成形後、離型用フィルムとシリコーンゴム組成物との剥離性が良好であった。
(に)硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形され、表面に曇りや凹凸及び皺がなく平滑であった。
(ほ)離型用フィルムに破れや溶断、シリコーンゴム組成物の残りがなく、金型に汚れがなかった。
このような結果から、比較例1の厚さ25μmのETFEフィルムは、金型内で吸着される際にフィルムが破れたため、実使用性が得られなかった。比較例2の厚さ100μmのETFEフィルムは、型寸法転写性が劣り、硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形されなかったため、実使用性が得られなかった。比較例3のポリウレタン系エラストマー単独のフィルムは、シリコーンゴム組成物との剥離性が劣るため、シリコーンゴム成形品の表面が凹凸になり、所望の形状に成形されなかったため、実使用性が得られなかった。比較例4の離型層の60°鏡面光沢度が大きいフィルムは、シリコーンゴム成形品の表面が曇ったため、表面平滑性が得られなかった。
これに対し、各実施例の離型用フィルムは、剥離性が得られていることに加え耐熱性を有し、型寸法転写性と表面平滑性に優れ、さらに、実使用性が付与されていることが明らかとなる。このことから、本発明によれば、封止材を成形加工して得られる成形品との剥離性に優れ、しかも、形状と表面性に優れる成形品を得られる離型用フィルムを得ることができる。
本発明の実施例の離型用フィルムは、上記のように、シリコーン樹脂組成物からなるLEDレンズの成形モールドについて評価したが、本実施形態における離型用フィルムは、光半導体素子や半導体素子を樹脂モールド成形する際にも有用であることは言うまでもない。
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。