JP2024048450A - 積層フィルムの製造方法および積層フィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】従来通りの積層フィルムとしての離型性を維持し、環境負荷が低減される積層フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】積層フィルムを製造する方法であって、リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程、前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程、重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程、前記ポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製造する工程、未延伸フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成し、延伸する工程、を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ケミカルリサイクルで得られたポリエステル樹脂を含む積層フィルムの製造方法に関する。
ポリエステル樹脂の代表例であるポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略することがある)は、高融点で耐薬品性があり、また比較的低コストであるため、積層フィルムの基材として用いられることが多い。積層フィルムの中でも特に、医療分野、工業分野における離型フィルムとして広く使用されている。例えば、医療分野においては、医療用テープやハップ剤の保護フィルムとして、また工業分野においては、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板などを製造するための工程フィルムや、粘着材料、液晶ディスプレイ用部品などの保護フィルムや、イオン交換膜、セラミックグリーンシートなどのシート状構造体の成形フィルムとして使用されている。これら離型フィルムは、保護フィルム、工程フィルムや成形フィルムとして用いた後は離型面に被着体の異なる樹脂成分等が移行し付着している場合があり、再利用が困難であり処分されている。
ところが、これらを焼却炉で焼却処分しようとする場合には高熱が発生するため、焼却炉の傷みが大きくなり、その寿命が短くなるほか、大気汚染、CO ガス発生等の環境負荷も大きい。一方、焼却しない場合には、腐敗分解しないため半永久的に残ることになる。
国際公開第2009/025063号
特許文献1には、製造が容易で、被着体への樹脂層の移行が少ない離型用シートの提案がなされている。このように、被着体と接する樹脂層に関して、これまでも多く検討されているが、離型用シートの大部分を占める基材層についてはあまり検討されていなかった。基材層の環境負荷低減を検討することで、廃棄時の環境負荷をより少なくできる余地があった。
本発明の目的は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、環境負荷が低減される積層フィルムの製造方法を提供することにある。
すなわち、本発明の課題は、以下の手段により達成される。
(1)積層フィルムを製造する方法であって、リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程、前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程、重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程、前記ポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製造する工程、未延伸フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成し、延伸する工程、を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
(2)積層フィルムを製造する方法であって、リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程、前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程、重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程、前記ポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製造し、延伸する工程、延伸フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成する工程、を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
(3)フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層形成用塗工液を塗布、乾燥し、樹脂層を形成することを特徴とする(1)または(2)に記載の積層フィルムの製造方法。
(4)樹脂層を形成したフィルムをさらに延伸する工程を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の積層フィルムの製造方法。
(5)樹脂層が離型性を有することを特徴とする(1)~(4)のいずれかに記載の積層フィルムの製造方法。
(6)ケミカルリサイクルによって得られたポリエステル樹脂を含有する基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に樹脂層が形成された積層フィルム。
(7)樹脂層が離型性を有することを特徴とする(6)に記載の積層フィルム。
本発明の製造方法で得られた積層フィルムは、フィルムの連続操業性に優れており、基材フィルムの原料にリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含有するため、廃棄時の環境負荷が少ない。また、離型性を有する樹脂層を形成することで、環境負荷が低減され、離型性が良好な離型フィルムとして好適に用いることができる。
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の製造方法で得られる積層フィルムは、ケミカルリサイクルによって得られたポリエステル樹脂を含有する基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に樹脂層が形成されたものである。
本発明において、基材層に含有するポリエステル樹脂は、一部又は全てがリサイクルポリエステル原料から由来する成分を含むポリエステル樹脂(以下、「ケミカルリサイクルポリエステル樹脂」と称す。)である。
ポリエステル樹脂を構成する酸成分としては、例えばイソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ドデカン二酸等、ダイマー酸、更には無水トリメリット酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、セバシン酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上であってもよい。また、ポリエステル樹脂を構成するグリコール成分としては、例えばネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-プロピレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,3-プロパンジオール、1,6-ヘキサメチレンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、ブチルエチルプロパジオール、2-メチル1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA又はビスフェノールSのエチレンオキシド付加体等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上であってもよい。なかでも、エチレングリコールとテレフタル酸の重縮合物であるポリエチレンテレフタレート(PET)が汎用性、機械的強度や寸法安定性を有する点で好ましい。
PETは、用いる原料によっては、上記2成分以外の成分が含まれる場合がある。この場合には、PET以外のポリエステル樹脂が重縮合反応により生成することもあり、このような態様も本発明に包含される。すなわち、本発明において、用いるポリエステル樹脂がPET以外のポリエステル樹脂を含む場合、酸成分又はグリコール成分として以下に示すような成分が共重合されているポリエステル樹脂が含まれていてもよい。また、PET以外のポリエステル樹脂を含む場合、1種又は2種以上のポリエステル樹脂が含まれていてもよい。
基材フィルムを構成するポリエステル樹脂の固有粘度(以下、「極限粘度」と称す場合がある。)は、0.55~0.80dl/gであることが好ましく、0.60~0.75dl/gであることがより好ましい。固有粘度が前記範囲を満たすことで、フィルム製膜時の切断を抑制でき安定的に生産できる。さらに、得られたフィルムの強度も高く、厚み制御も可能となる。
本発明において、ポリエステル樹脂の融点は、240~256℃の範囲であることが好ましく、243~256℃であることがより好ましく、246~256℃であることが最も好ましい。融点が前記範囲のポリエステル樹脂を用いることで、積層フィルム使用時に熱をかけた場合であっても、白化や白斑の発生を抑制することができる。
本発明において、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、以下の3つの工程を有する。
(解重合工程)
リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程。
(濾過工程)
前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程。
(重縮合工程)
重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮 合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程。
(解重合工程)
解重合工程では、リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る。
本発明において、リサイクルポリエステル原料とは、例えば使用済みポリエステル製品や、ポリエステル製品を製造する工程で発生するポリエステル片等が挙げられる。使用済みポリエステル製品としては、例えば一度市場に出回り、使用後に回収されたポリエステル成形品(繊維、フィルムを含む。)等が挙げられる。その代表例としては、PETボトル等のような容器又は包装材料が挙げられる。
また、ポリエステル製品を製造する工程で発生するポリエステル片(以下、「未採用ポリエステル樹脂」と称す場合がある。)は、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料(フィルム端部)、成形時に切断された断片、成形時、加工時等に発生した屑(ポリエステル屑)、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物、試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
リサイクルポリエステル原料の形態としては、限定的ではなく、前記使用済みポリエステル製品又は前記未採用ポリエステル樹脂の当初の形態のままでもよいし、さらに裁断、粉砕等の加工を施して得られる裁断片、粉砕物(粉末)等の形態のほか、これらを成形してなる成形体(ペレット等)等の固体の形態が挙げられる。より具体的には、a)ポリエステル屑の溶融物を冷却した後に切断して得られるペレット、b)PETボトルのようなポリエステル成形品を細かく裁断した裁断片等が例示される。その他にも、上記のような裁断片、粉砕物(粉末)等を溶媒に分散又は溶解させて得られる液体(分散液又は溶液)の形態であってもよい。これらの原料を用いて本発明フィルムを製造する際には、必要に応じてこれらをその融点以上の温度で溶融させて融液として缶内へ投入することもできる。
解重合工程では、リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供するが、これにより、その原料を構成しているオリゴマー等を得ることができる。
解重合反応に際しては、リサイクルポリエステル原料単独で解重合反応に供することもできるが、本発明ではエチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの存在下でサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することが望ましい。リサイクルポリエステル原料を利用した従来法においては、リサイクルポリエステル原料のみを用いて解重合を行っているのに対し、本発明においてはエチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの存在下でリサイクルポリエステル原料の解重合反応を行い、好ましくはエチレンテレフタレートオリゴマー、エチレングリコール及びリサイクルポリエステル原料の全ての成分における「全グリコール成分/全酸成分」のモル比が特定の範囲内になるようにリサイクルポリエステル原料を投入し、解重合反応を行うことが望ましい。このようにすることにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、後述の濾過工程において、これらの異物を効果的に取り除くことができる。そして、後述の重縮合工程において、ジエチレングリコールの含有量及びカルボキシル末端基濃度が特定範囲のものであり、かつ、異物の混入量が比較的少ないケミカルリサイクルポリエステル樹脂を得ることが可能となる。
なお、本発明の製造方法においては、上記の解重合反応により、リサイクルポリエステル原料をモノマーにまで分解されずに、繰り返し単位が5~20程度のオリゴマーまで分解されることが望ましい。このように制御することにより、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われる結果、より多くの異物を取り除くことが可能となる。
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの使用量は、限定的ではないが、上記の観点から特にエチレンテレフタレートオリゴマー、エチレングリコール及びリサイクルポリエステル原料の全ての成分における「全グリコール成分/全酸成分」のモル比が1.08~1.35となるように設定することが好ましい。
エチレンテレフタレートオリゴマーの使用量は、上記モル比に設定できる限りは特に限定されないが、後述する重縮合工程で得られるポリエステル樹脂(以下「ケミカルリサイクルポリエステル樹脂」ともいう。)100質量%中0.20~0.80質量%程度とすることが好ましく、特に0.30~0.70質量%とすることがより好ましい。エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記範囲より少ない場合、リサイクルポリエステル原料を投入した際に、リサイクルポリエステル原料どうしがブロッキングを起こしやすくなり、攪拌機に過大な負荷がかかるおそれがある。一方、エチレンテレフタレートオリゴマーの量が上記範囲より多い場合は解重合反応に特に問題は起きないが、最終的に得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂のリサイクル比率が低くなることがある。
エチレングリコールの添加量は、上記モル比に設定できる限りは特に限定されないが、解重合反応を十分に進行させるという見地より、エチレンテレフタレートオリゴマー100質量部に対して、5~15質量部とすることが好ましく、その中でも5~10質量部とすることがより好ましい。エチレングリコールの添加量が多すぎるとケミカルリサイクルポリエステル樹脂中のカルボキシル末端基濃度が低くなり、少なすぎるとカルボキシル末端基濃度が高くなる。15質量部を超えると、反応器内でエチレンテレフタレートオリゴマーが固化しやすくなり以後の反応が継続できなくなる場合がある。
エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールは、いずれも公知又は市販のものを使用することができる。また、公知の製造方法によって製造することもできる。特に、エチレンテレフタレートオリゴマーとしては、例えばエチレングリコールとテレフタル酸とのエステル化反応物を好適に用いることができる。また、エチレンテレフタレートオリゴマーの数平均重合度は、限定的ではないが、例えば2~20程度とすることができる。
解重合工程でエチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールを用いる場合、その混合方法(添加順序)は、限定的ではないが、特にエチレンテレフタレートオリゴマーとエチレングリコールとを含む混合物にリサイクルポリエステル原料を添加する方法が好ましい。これにより解重合反応の進行のむらを少なくすることができる。
また、エチレンテレフタレートオリゴマー及びエチレングリコールの混合に際しては、例えばエチレンテレフタレートオリゴマー中にエチレングリコールを添加することが好ましい。また、添加する際は、オリゴマーの固化を防ぐ目的等で、攪拌機を回しながら内容物の温度を均一にし、添加することが好ましい。
リサイクルポリエステル原料を上記混合物に投入する際には、常圧下で撹拌しながら行うことが好ましく、少量の不活性ガス(一般的には窒素ガスを使用)でパージした状態で投入することがより好ましい。これによって、酸素の混入を妨げることができ、色調の悪化をより確実に防ぐことができる。
リサイクルポリエステル原料は、全グリコール成分/全酸成分のモル比が1.08~1.35であることが好ましく、特に1.10~1.33であることがより好ましく、その中でも1.12~1.30であることが最も好ましい。全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、本発明で規定するカルボキシル末端基濃度及びジエチレングリコールの含有量の少なくとも一方を満足しないものとなり、平均昇圧速度も高くなる場合がある。すなわち、解重合反応を行う際の全グリコール成分/全酸成分のモル比が上記範囲外である場合、各種の無機物及び非ポリエステル樹脂由来の異物が効率的に析出されないため、濾過工程でこれらの異物を効果的に濾過することができず、重縮合工程後に異物が析出しやすくなる結果、平均昇圧速度が高いケミカルリサイクルポリエステル樹脂となるおそれがある。
解重合工程において、解重合時の反応温度(特に反応器の内温)は、限定的ではないが、特に245~280℃の範囲に設定して行うことが好ましく、その中でも255~275℃の範囲に設定して行うことがより好ましい。解重合時の反応温度が245℃未満になる場合には、反応物が固化し、操業性が悪化するとともに、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂が得られたとしても、ジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎる傾向となる。前記反応温度が280℃を超える場合は、得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂のジエチレングリコールの含有量又はカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎるおそれがある。
また、解重合反応の時間(リサイクルポリエステル原料の投入終了後からの反応時間)は、解重合反応が完了するのに十分な時間とすればよく、特に限定されないが、通常は4時間以内とすることが好ましい。特に、ジエチレングリコールの副生量を抑えること、ポリエステルの色調悪化を抑えること等の観点から2時間以内とすることがより好ましい。前記反応時間の下限値は、限定的ではなく、例えば1時間程度とすることもできる。
反応装置は、特に限定されず、公知又は市販の装置も使用することができる。特に、反応器においても、その容量、攪拌翼形状等は一般的に使用されているエステル化反応器で特に問題ないが、解重合反応を効率的に進めるため、エチレングリコールを系外に溜出させない蒸留塔を有する反応器であることが好ましい。
(濾過工程)
濾過工程では、前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する。前記の解重合工程で得られる反応生成物は、主としてリサイクルポリエステル原料の解重合体(特に再生されたオリゴマー)を含む液状体である。濾過工程では、その反応生成物(液状体)をフィルターに通過させて異物を濾過するとともに、濾液を回収する。
前記の解重合工程では、各種の無機物のみならず、非ポリエステル樹脂由来の異物の析出が効率よく行われるため、フィルター(好ましくは濾過粒度10~25μm程度のフィルター)を通過させることにより、析出した異物を濾過し、異物の混入量の少ない解重合体を得ることができる。濾過粒度が25μmより大きいフィルターを使用すると、ポリマー中の異物を十分に除去できず、得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂中の異物が多くなる。このため、このような樹脂を用いて延伸フィルムを製膜すると、Tダイ表面(リップ面)の汚染が生じ、延伸時にフィルムが破断する場合がある。一方、濾過粒度が10μmよりも小さいフィルターを使用すると、異物による目詰まりが生じやすく、フィルターライフが短くなることにより、コスト的に不利となるほか、操業性も低下するおそれがある。
濾過工程で使用できるフィルターとしては、一般的なフィルターを使用できるが、特に金属製フィルターが好ましい。材質としては、特に限定されず、例えばステンレス鋼等が挙げられる。フィルター形式も、特に限定されず、例えばスクリーンチェンジャー式フィルター、リーフディスクフィルター、キャンドル型焼結フィルター等が挙げられる。これらは、公知又は市販のものを使用することもできる。
(重縮合工程)
重縮合工程では、重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂(ケミカルリサイクルポリエステル樹脂)を得る。
重合触媒としては、限定的ではないが、例えばゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、コバルト化合物等の少なくとも1種を用いることができる。その中でも、特にゲルマニウム化合物及びアンチモン化合物の少なくとも1種を使用することが好ましい。特に、得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂の透明性を重視する場合においては、ゲルマニウム化合物を使用することが好ましい。上記の各化合物としては、ゲルマニウム、アンチモン、チタン、コバルト等の酸化物、無機酸塩、有機酸塩、ハロゲン化物、硫化物等の少なくとも1種が例示される。
重合触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば生成するポリエステル樹脂の酸成分1モルに対して5×10 -5モル/unit以上とすることが好ましく、その中でも6×10 -5モル/unit以上とすることがより好ましい。上記使用量の上限は、例えば1×10 -3モル/unit程度とすることができるが、これに限定されない。
なお、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒も、重縮合反応時に触媒として作用する場合もあるため、重縮合工程で重合触媒を添加する際には、リサイクルポリエステル原料中に含まれる重合触媒の種類及びその含有量を考慮することが好ましい。
重縮合反応時には、必要に応じて、上記の重合触媒と併せて、例えばa)溶融粘度を調整することができる脂肪酸エステル、b)ヒンダードフェノール系抗酸化剤、c)樹脂の熱分解を抑制することができるリン化合物等を必要に応じて添加することもできる。
脂肪酸エステルとしては、例えば蜜ロウ(ミリシルパルミテートを主成分とする混合物)、ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル、ベヘン酸ステアリル、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等が挙げられる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレートが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
ヒンダードフェノール系抗酸化剤としては、例えば2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’-ブチリデンビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9-ビス{2-〔3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕-1,1’-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン等が用いられるが、効果とコストの点で、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンが好ましい。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
リン化合物としては、例えば亜リン酸、リン酸、トリメチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリデシルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリデシルフォスフェート、トリフェニルフォスフォート等のリン化合物を用いることができる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
重縮合反応においては、温度260℃以上及び1.0hPa以下の減圧下で重縮合反応を行う。重縮合反応温度が260℃未満であったり、あるいは重縮合反応時の圧力が1.0hPaを超えると、重縮合反応時間が長くなるため、生産性に劣り、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂中のカルボキシル末端基濃度が低すぎるものとなる。
重縮合反応温度は、特に270℃以上とすることが好ましい。一方、重縮合反応温度が高過ぎると、熱分解によりポリマーが着色し、色調が悪化すること、同じく熱分解によりケミカルリサイクルポリエステル樹脂中のカルボキシル末端基濃度が高くなりすぎるため、本発明においては、重縮合反応温度の上限は、通常は285℃以下とすることが好ましい。
圧力は、特に0.8hPa以下とすることが好ましい。下限値は、例えば0.1hPa程度とすることができるが、これに限定されない。
このようにして、重縮合反応を実施することによってケミカルリサイクルポリエステル樹脂を得ることができる。得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂の構成又は特性は、特に限定されないが、以下のように設定されていることが好ましい。
本発明において、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、その種類は限定されないが、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を主体とするものであることが好ましい。ケミカルリサイクルポリエステル樹脂中におけるPETの含有量は70質量%以上であることが好ましく、特に80質量%以上であることがより好ましく、その中でも90~100質量%であることが最も好ましい
本発明において、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、全グリコール成分の合計量を100モル%とするとき、ジエチレングリコールの含有量は0.5~4モル%程度であることが好ましく、特に1~3.5モル%であることがより好ましく、その中でも1.2~3モル%であることが最も好ましい。特に、本発明の製造方法により得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂においては、エチレングリコールを原料の一つとして用いると、その際の副生成物としてジエチレングリコールが生じ得る。本発明におけるケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、その副生するジエチレングリコールの量が少ないものであり、ジエチレングリコールの含有量が4モル%以下とすることにより、より熱安定性に優れた性能を得ることができる。このため、未延伸シートないしは延伸フィルムを製膜する際に、Tダイの表面(リップ面)汚染を抑制でき、高い生産性を得ることが可能となる。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、カルボキシル末端基濃度が40当量/t以下であることが好ましく、特に30当量/t以下であることがより好ましく、25当量/t以下であることがさらに好ましく、その中でも20当量/t以下であることが最も好ましい。カルボキシル末端基濃度を40当量/t以下とすることにより、耐熱性に優れた性能を有しており、各種の成形方法により耐熱性に優れた成形品を得ることが可能となる。なお、カルボキシル末端基濃度の下限値は、フィルム製膜時の引張伸度等の機械強度向上の観点から10当量/t以上であることが好ましい。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、次の方法により測定される平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であり、特に0.5MPa/h以下であることが好ましく、その中でも0.4MPa/h以下であることがより好ましい。本発明における平均昇圧速度は、各種無機物に由来する異物、非ポリエステル樹脂に由来する異物等の混入量の多さの指標となるものであり、平均昇圧速度が小さいほど異物の混入量が少ないことを示す。平均昇圧速度が0.6MPa/h以下であることにより、例えば延伸倍率が10倍以上の高倍率の延伸フィルムを製造することも可能となる。なお、平均昇圧速度の下限値は、例えば0.01MPa/h程度とすることができるが、これに限定されない。
上記の平均昇圧速度の測定方法は、エクストルーダー及び圧力センサを含む昇圧試験機を用い、エクストルーダーの先端に前記フィルターをセットし、ポリエステル樹脂をエクストルーダーにて300℃で溶融し、前記フィルターからの吐出量29.0g/分で当該溶融物を押し出した時の前記フィルターにかかる圧力値として、押し出し開始時の圧力値を「初期圧力値(MPa)」とし、その後連続して12時間押し出しをした時点の圧力値を「最終圧力値(MPa)」とした場合、それらの圧力値に基づいて下記計算式Aにより平均昇圧速度を算出する:
平均昇圧速度(MPa/h)=(最終圧力値-初期圧力値)/12)・・・A
前記の測定で用いるエクストルーダー、フィルター等は、本発明の規定を満たす限りは、制限されず、公知又は市販のものを適宜使用することもできる。
本発明において、フィルム製造時の工程通過性をよくするため、シリカ、アルミナ、カオリン等の無機滑剤を少量添加して製膜し、フィルム表面にスリップ性を付与することが望ましい。フィルムへの無機滑剤の添加量は0.001~0.5質量%、好ましくは0.05~0.3質量%である。また、滑剤の機能と併用して、隠蔽性の目的から二酸化チタンを20質量%程度まで添加することも出来る。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の極限粘度は、特に限定されないが、通常は0.44~0.80dl/g程度であることが好ましく、特に0.55~0.70dl/gであることがより好ましい。また、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、固相重合工程を経て高重合度化することも可能である。この場合、得られるケミカルリサイクルポリエステル樹脂の極限粘度は、通常0.80~1.25dl/gとすることが好ましい。
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂の降温結晶化温度(Tc)は、下限値が160℃以上であることが好ましく、さらに163℃以上であることがより好ましく、165℃以上であることがさらに好ましく、その中でも170℃以上であることが最も好ましい。
本発明の積層フィルムの製造方法は、前述の方法で得られたケミカルリサイクルポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて、以下の3つの工程で得ることができる。
(未延伸フィルム製膜工程)
ケミカルリサイクルポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製膜する工程。
(樹脂層形成工程)
基材層の少なくとも一方の面に樹脂層を形成する工程。
(延伸工程)
未延伸フィルムを延伸する工程。
(未延伸フィルム製膜工程)
未延伸フィルム製膜工程は、上述したケミカルリサイクルポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製膜する工程である。
出発材料中におけるリサイクルポリエステル原料の含有量は、限定的ではなく、通常は20質量%以上(特に24質量%以上)程度であればよいが、エコマーク認証等の環境的な観点から、25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましく、特に50質量%以上であることが最も好ましい。前記含有量が低すぎると、それに伴ってリサイクル比率が低下する。前記含有量の上限については、通常は80質量%程度に設定できるが、これに限定されない。
出発材料であるケミカルリサイクルポリエステル樹脂は、1種類のケミカルリサイクルポリエステル樹脂のみからなるものでもよく、2種類以上のケミカルリサイクルポリエステル樹脂を混合したものでもよく、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂以外の樹脂を混合したものでもよいが、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂を含有していればよい。出発材料中のケミカルリサイクルポリエステル樹脂の含有量は、通常30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。なお、上限は、例えば95質量%以下、さらには98質量%以下、特に100質量%とすることもできるが、これに限定されない。
出発材料中には、本発明の効果を損なわない範囲で、リサイクル比率を高くするために未採用ポリエステル樹脂、使用済みポリエステル製品等も含まれていてもよい。
未採用ポリエステル樹脂は、製品化に至っていない材料である。例えば、前記したようにフィルム製造時に発生した未延伸屑、耳部トリミング屑、スリット屑、不良品等が挙げられる。これらは、粉砕物(フレーク等)のほか、これらを再溶融して作製されたペレット等の形態で添加することができる。
使用済みポリエステル製品は、製品化された後、使用後に廃棄される予定の製品である。これは、適切な洗浄工程の後、その粉砕物あるいはこれを再溶融して作製されたペレットの形態で添加することができる。
出発材料中における未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品の含有量は、通常75質量%以下であることが好ましく、特に65質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下が特に好ましく、その中でも35質量%以下であることが最も好ましい。未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品の含有量が75質量%を超えると、異物又は熱劣化物が増え、フィルム製膜の際に切断等のトラブルが生じる傾向にある。また、引張伸度等のようなフィルムの機械物性が低下する傾向にある。
未採用ポリエステル樹脂として用いるフィルム屑又は不良品は、例えば、シリカ等の滑剤のほか、酸化防止剤等の各種添加剤の濃度が屑となる銘柄ごとに異なる。そのため、出発材料中の未採用ポリエステル樹脂の含有量が多くなるほど、前記添加剤濃度のバラツキが生じ、得られたフィルムのヘイズ、フィルム表面の濡れ張力、印刷適性等に悪影響を及ぼす場合がある。前記は、使用済ポリエステル製品についても同様である。
本発明において、基材層は、単層であっても2種以上の層を積層してなる多層フィルムであってもよい。
多層フィルムの層構成は特に限定されないが、例えば異なる樹脂を押し出した二種三層(A/B/A)、三種三層(A/B/C)、二種二層(A/B)等が挙げられる。なかでも二種二層の複層フィルムは、スリップ剤を含む層と含まない層を積層することができ、巻き取り性と平滑性を兼ね備えることができるため好ましい。
多層フィルムの場合、表層の未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品の含有量は、50質量%以下とすることが好ましく、特に40質量%以下とすることがより好ましく、その中でも35質量%以下とすることが最も好ましい。一方、中間層においては、未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品の含有量が多くても濡れ張力、印刷適性等のフィルム表面特性には影響を与えないため、リサイクル比率を高くする観点から、未採用ポリエステル樹脂含有量を多くすることができる。中間層の未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品の含有量は100質量%としてもよい。
また、本発明における積層フィルムのリサイクル比率は高い方が好ましい。より具体的には、通常はリサイクル率が25質量%以上であることが好ましく、35質量%以上であることがより好ましく、特に40質量%以上であることがさらに好ましく、50質量%以上であることが特に好ましく、その中でも65%以上であることが最も好ましい。上限値は、例えば80質量%程度とすることができるが、これに限定されない。従って、上記のようなリサイクル率となるように、出発材料の組成を調整することが望ましい。なお、本発明において、リサイクル率Rとは、下記式で示される重量割合をいう。
R(質量%)=A×B+C
(但し、Aは、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂に占めるリサイクルポリエステル原料の重量割合(質量%)を示す。Bは、ケミカルリサイクルポリエステル樹脂がフィルム中に占める重量割合(質量%)を示す。Cは、未採用ポリエステル樹脂や使用済ポリエステル製品がフィルム中に占める重量割合(質量%)を示す。)
未延伸フィルムの製膜方法は、限定的でなく、公知のフィルム製膜法によって成形することができる。例えば、前記出発材料の溶融物をTダイから押出した後、キャスティングロールで冷却することによって得ることができる。この場合、未延伸フィルムの結晶化度を均一にする観点で、このキャスティングロール表面の実温度を精度よく管理することが必要である。
(樹脂層形成工程)
樹脂層形成工程は、基材層の少なくとも一方の面に樹脂層を形成する工程であり、樹脂層を塗布する基材層は、未延伸フィルムであっても延伸フィルムであってもよい。
延伸フィルムは、一軸延伸フィルムであっても二軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムの延伸方法としては、逐次二軸延伸法であっても同時二軸延伸法であってもよい。
樹脂層形成方法は、特に限定されず公知の方法が用いられる。例えば、樹脂層形成用塗工液を基材層に塗布する方法が挙げられる。樹脂層形成用塗工液(「塗工液」と略す場合がある)を基材層に塗布する方法としは、公知の方法、例えば、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リップコーティング、エアナイフコーティング、カーテンフローコーティング、スプレーコーティング、浸漬コーティング、はけ塗り法等が挙げられる。
樹脂層形成用塗工液を基材層に塗布する方法としては、樹脂層形成用塗工液を製造工程中の基材層(未延伸フィルムや一軸延伸フィルム)に塗布する方法(インラインコート法)や、樹脂層形成用塗工液を製造工程が完了し、配向延伸された基材層に塗布する方法(ポストコート法)が挙げられる。インラインコート法では、塗工液が塗布されたフィルムは、乾燥、配向延伸および熱固定処理がなされる。また、ポストコート法では、塗工液が塗布されたフィルムは、乾燥処理がなされる。
インラインコート法は、ポストコート法と比較して、基材層表面の配向結晶化の程度が小さい状態で樹脂層を形成することができるため、基材層と樹脂層との密着力が向上する。また、フィルムが緊張した状態で、より高温で樹脂層を熱処理できるので、積層フィルムの品位を低下させることなく、安定した離型性を有する樹脂層を形成することができる。インラインコート法においては、逐次二軸延伸法を採用して、一軸方向に延伸された基材層に前記樹脂層形成用塗工液を塗布し、塗工液が塗布されたフィルムを乾燥し、前記方向と直交する方向にさらに延伸し、熱処理することが、簡便さや操業上の理由から好ましい。
本発明において、基材層の少なくとも一方の面に形成する樹脂層は、特に限定されるものではなく、機能性を有する樹脂層が好ましい。樹脂層としては、例えば、離型性を有するもの(離型層)、バリア性を有するもの(バリア層)、易接着性を有するもの(易接着層)、帯電防止性を有するもの(帯電防止層)、親水性を有するもの(親水層)、撥水性を有するもの(撥水層)、耐候性を有するもの(耐候性層)、防汚性を有するもの(防汚性層)、溶剤に対して耐性を有するもの(耐溶剤性層)、自己修復性を有するもの(自己修復性層)、ハードコート層や超透明層などが挙げられる。
離型層として用いる離型剤(離型性を付与するための添加剤)は、シリコーン系化合物や、フッ素系、長鎖アルキル系、アクリル樹脂、オレフィン系などの非シリコーン系化合物などをそれぞれ用いることができる。環境への負荷を考えた時、燃焼時に有毒なガスを発生しないオレフィン系がより好ましい。
シリコーン系化合物は、硬化型シリコーン樹脂として、熱付加型シリコーン、熱縮合型シリコーン、紫外線硬化型シリコーン、電子線硬化型シリコーンが挙げられる。
熱付加型としては、分子両末端あるいは両末端および側鎖にビニル基を有するメチルビニルポリシロキサンと、メチルハイドロジェンポリシロキサンとを白金系触媒の存在下で反応させたものが挙げられる。
熱縮合型としては、両末端シラノール官能性ジメチルポリシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはメチルメトキシシロキサンとを有機錫系触媒の存在下で反応させたものが挙げられる。
紫外線硬化型としては、アルケニル基とメルカプト基を含有するポリオルガノシロキサンに光重合剤を加えたもの、(メタ)アクリル基を含有するポリオルガノシロキサンに光重合剤を加えたもの、エポキシ基を含有するポリオルガノシロキサンにオニウム塩光開始剤を添加したものなどが例示される。
電子線硬化型としては、ラジカル重合性基含有ポリオルガノシロキサンが挙げられる。
硬化型シリコーン樹脂として熱付加型シリコーンを用いる場合、樹脂層形成用塗工液は、硬化触媒を含有することが好ましい。塗工液をインラインで塗布した際、基材フィルムの延伸前もしくは延伸中に、樹脂層の硬化反応が開始すると、硬化した樹脂層は、延伸により亀裂が生じ、剥離性が低下する場合がある。そのため、硬化触媒により、工程後の熱固定処理において付加重合反応が開始するように制御することが好ましい。
硬化触媒の具体例は、白金系化合物触媒であり、例えば、白金微粉末、白金黒、塩化白金酸、四塩化白金、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とメチルビニルシロキサンとの錯体、ロジウム化合物、パラジウム化合物が挙げられる。これらの白金系化合物触媒の添加量は、通常、硬化型シリコーン樹脂1万質量部に対して、白金系金属として0.1~500質量部の範囲であることが好ましい。
樹脂層を構成するフッ素系化合物としての含フッ素共重合体は、フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする。
フルオロオレフィンは、分子中に少なくとも2個のフッ素原子を有するオレフィン(CF=CXY、ただし、XはFまたはH、YはCl、F、CF)であって、例えば、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン等が好適である。これらのフルオロオレフィンは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル(CH=C(R)COOC11、ただし、RはHまたはCH)は、具体例として、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等を挙げられ、シクロヘキシルメタクリレートが好ましい。
水酸基含有ビニルエーテル(CH=C(H)OROH、ただし、Rは炭素数2~5のアルキレン基またはシクロへキシレン基)は、具体例として、ヒドロキシメチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられ、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテルが好ましい。これらの水酸基含有ビニルエーテルは、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
含フッ素共重合体は、前記フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、および水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とするものであるが、さらにこれらの成分に加えて、使用目的などに応じて20モル%を超えない範囲で他の共重合可能な成分を含むこともできる。共重合可能な成分としては、例えば、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、エチレン、プロピレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、酢酸ビニル、n-酪酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。
長鎖アルキル系化合物とは、炭素数が通常6以上、好ましくは8以上、さらに好ましくは12以上の直鎖または分岐のアルキル基を有する化合物のことである。アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、オクタデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。アルキル基を有する化合物とは、例えば、各種の長鎖アルキル基含有高分子化合物、長鎖アルキル基含有アミン化合物、長鎖アルキル基含有エーテル化合物、長鎖アルキル基含有四級アンモニウム塩等が挙げられる。耐熱性、汚染性を考慮すると高分子化合物であることが好ましい。また、効果的に離型性を得られるという観点から、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物であることがより好ましい。
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、反応性基を有する高分子化合物と、この反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物とを反応させて得ることができる。
高分子化合物が有する反応性基としては、例えば、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、酸無水物等が挙げられる。これらの反応性基を有する高分子化合物としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリエチレンアミン、反応性基含有ポリエステル樹脂、反応性基含有ポリ(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮するとポリビニルアルコールであることが好ましい。
前記高分子化合物が有する反応性基と反応可能な長鎖アルキル基を有する化合物としては、例えば、ヘキシルイソシアネート、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、ベヘニルイソシアネート等の長鎖アルキル基含有イソシアネート、ヘキシルクロライド、オクチルクロライド、デシルクロライド、ラウリルクロライド、オクタデシルクロライド、ベヘニルクロライド等の長鎖アルキル基含有クロライド、長鎖アルキル基含有アミン、長鎖アルキル基含有アルコール等が挙げられる。これらの中でも離型性や取り扱い易さを考慮すると、長鎖アルキル基含有イソシアネートが好ましく、オクタデシルイソシアネートが特に好ましい。
また、長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物は、長鎖アルキル(メタ)アクリレートの重合や、長鎖アルキル(メタ)アクリレートと他のビニル基含有モノマーとの共重合によって得ることもできる。長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
樹脂層を構成する成分としてのアクリル樹脂は、アクリル系、メタアクリル系のモノマーに代表されるような、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体のいずれでもよい。
上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
アクリル樹脂は、上記炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーからなる単独重合体あるいは共重合体の他、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれ、例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、ポリウレタン溶液、またはポリウレタン分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様に、他のポリマー溶液、または他のポリマー分散液中で、炭素-炭素二重結合を持つ重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。
また、アクリル樹脂は、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能であり、樹脂層の透明性の低下を抑える観点から、ヒドロキシル基を含有していることが好ましい。アクリル樹脂がヒドロキシル基を含有する場合、アクリル樹脂の水酸基価は、2~100mgKOH/gであることが好ましく、5~50mgKOH/gであることがより好ましい。アクリル樹脂の水酸基価が上記範囲であると、樹脂層は、外観や透明性が良好なものとなる
オレフィン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、オレフィン成分を主成分とし、酸変性成分により変性された樹脂である 酸変性ポリオレフィン樹脂が好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成するオレフィン成分は、特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2-ブテン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン等の炭素数2~6のアルケンが好ましい。これらの混合物であってもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1-ブテン等の炭素数2~4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレン、1-ブテンがさらに好ましい。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する酸変性成分としては、不飽和カルボン酸成分が挙げられ、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でも、後述する樹脂の水性分散化において、樹脂を安定的に分散するために、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が特に好ましい。これらの酸変性成分は酸変性ポリオレフィン樹脂中に2種類以上含まれていてもよい。
酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性成分の割合は、基材フィルムとの密着性向上や被着体との離型性向上、剥離後の被着体汚染の抑制の観点で、1~10質量%であることが好ましく、2~9質量%であることがより好ましい。
基材フィルムとの密着性をさらに向上させる理由から、酸変性ポリオレフィン樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有することが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸と炭素数1~30のアルコールとのエステル化物が挙げられ、中でも入手のし易さの点から、(メタ)アクリル酸と炭素数1~20のアルコールとのエステル化物が好ましい。そのような化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらの混合物を用いてもよい。この中で、基材フィルムとの接着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチルがより好ましく、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸エチルが特に好ましい。「(メタ)アクリル酸~」とは、「アクリル酸~またはメタクリル酸~」を意味する。
酸変性ポリオレフィン樹脂には、その他のモノマーが、少量、共重合されていてもよい。その他のモノマーとして、例えば、ジエン類、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル類、ハロゲン化ビリニデン類、一酸化炭素、二酸化硫黄等が挙げられる。
酸変性ポリオレフィン樹脂を構成する各成分は、酸変性ポリオレフィン樹脂中に共重合されていればよく、その形態は限定されない。共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。
樹脂層は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂とともに、さらに、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドンなどの親水性高分子、架橋剤を含有することが好ましい。
ポリビニルアルコールの平均重合度は、特に限定されるものではなく、例えば、300~5000であるものを使用することができるが、樹脂層を形成するための塗工液の安定性向上の観点からは、300~2000であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコールの含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1000質量部以下であることが好ましい。1000質量部を超えると、樹脂層を形成するための塗工液の粘度が高くなり塗工ムラを生じやすくなるとともに、ゲルが生じることがあり、樹脂層の表面粗さが劣る傾向にある。ポリビニルアルコールの含有量は、500質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。
樹脂層の被着体への移行抑制や離型性向上の観点から、架橋剤の含有量は、酸変性ポリオレフィン樹脂100質量部に対して1~20質量部であることが好ましく、2~15質量部であることがより好ましく、2~10質量部であることがさらに好ましい。
架橋剤としては、例えば、メラミン化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物等が挙げられ、特に、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物が効果的である。これらの架橋剤は2種以上を併用してもよい。
樹脂層の厚みは、0.01~1μmであることが好ましく、0.03~0.7μmであることがより好ましく、0.05~0.5μmであることがさらに好ましい。樹脂層の厚みが0.01μm未満であると、十分な離型性が得られない場合があり、1μmを超えると、離型性は飽和して改善しないばかりか、凝集力を低下させ、被着体に移行しやすくなる場合がある。
樹脂層には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、密着向上剤や、帯電防止剤や、発泡剤などの添加剤などを含有してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、樹脂層を設ける前に基材層表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
樹脂層に含まれる樹脂は1種類または複数の組み合わせでもよく、前述した樹脂以外に、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン-ポリ塩化ビニル共重合体、フッ素樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビリニデン、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、ブタジエン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、UV硬化型樹脂などを混合して用いることができる。
(延伸工程)
延伸工程は、前述したケミカルリサイクルポリエステル樹脂を含む出発材料から製膜された未延伸フィルムを延伸する工程、または、基材層の少なくとも一方の面に樹脂層が形成されたフィルムを延伸する工程である。
本発明において、フィルムの延伸は、一軸または二軸で行われ、MD及びTD方向に優れた引張伸度が得られる観点で二軸延伸が好ましい。二軸延伸法は、限定的でなく、例えば同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法が挙げられる。引張強度、引張弾性率のいずれの物性もMD及びTD方向の差を小さくするという機械物性の面バランスの観点で、同時二軸延伸法が好ましく、乾熱収縮率のMD及びTD方向の差を小さくするという熱特性の面バランスの観点及び突刺強力、衝撃強度向上の観点で逐次二軸延伸法が好ましく、これらは求めるフィルム物性、用途において適宜選択できる。
本発明において、未延伸フィルムに樹脂層を形成した後、延伸してもよく、また、未延伸フィルムを延伸した後、延伸フィルムに樹脂層を形成してもよく、さらに、未延伸フィルムを延伸した後、樹脂層を形成し、その後、延伸してもよい。
延伸倍率は、例えばフィルムの用途、所望の物性等に応じて適宜設定することができ、2~16倍程度が好ましい。
一軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、MD方向もしくはTD方向に、2~6倍程度の延伸倍率となるよう延伸する。
同時二軸延伸法では、未延伸フィルムを、樹脂のTg~Tgより50℃高い温度の範囲で、MD方向およびTD方向にそれぞれ2~4倍程度の延伸倍率となるよう二軸延伸する。同時二軸延伸機に導く前に、未延伸フィルムに1.2倍程度までの予備縦延伸を施しておいてもよい。
また、逐次二軸延伸法では、未延伸フィルムを、加熱ロールや赤外線等で加熱し、MD方向に延伸して縦延伸フィルムを得る。縦延伸は2個以上のロールの周速差を利用し、ポリエステルのTg~Tgより40℃高い温度の範囲で、延伸倍率2.5~4.0倍とするのが好ましい。縦延伸フィルムを、続いて連続的に、TD方向に横延伸、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して、二軸配向フィルムとする。TD延伸は樹脂のTg~Tgより40℃高い温度で開始し、最高温度は樹脂の融点(Tm)より(100~40)℃低い温度であることが好ましい。TD延伸の倍率は最終的なフィルムの要求物性に依存し調整されるが、3.5倍以上、さらには3.8倍以上とするのが好ましく、4.0倍以上とするのがより好ましい。MD方向とTD方向に延伸後、さらに、MD方向および/またはTD方向に再延伸することにより、フィルムの弾性率を高めたり寸法安定性を高めたりすることもできる。
得られた二軸延伸フィルムは、寸法安定性向上、熱水収縮率を抑制するために、必要に応じて、樹脂のTmより(50~10)℃低い温度で数秒間の熱固定処理と、熱固定処理と同時にフィルムTD方向に1~10%の弛緩することが好ましい。熱固定処理後、フィルムをTg以下に冷却して二軸延伸フィルムを得る。
本発明において、離型性を有するとは、被着体に対して剥離することができることであり、目安としてポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)に対する剥離強度が4.0N/cm以下であることをいう。離型性を有する樹脂層を基材層の少なくとも一方の面に形成することで、例えば、積層フィルムの樹脂層と被着体としての粘着材料とを加熱圧着した後の、樹脂層と粘着材料との間の剥離強度を4.0N/cm以下、好ましくは3.5N/cm以下とすることができる。剥離強度が4.0N/cmを超えると、離型フィルムとして使用することが難しい。
本発明の製造方法で得られた積層フィルムの樹脂層表面の表面粗さは特に限定されないが、算術平均高さSaが0.001~0.100μmであることが好ましく、樹脂層表面の平坦性が要求される用途ではSaが0.001~0.050μmであることがより好ましく、0.001~0.020μmであることがさらに好ましい。樹脂層の表面粗さが上記範囲であることにより、積層フィルムを剥離した後の被着体表面に、凹凸形状を転写させることが少ない。
本発明の製造方法で得られた積層フィルムを離型用途で用いる場合は、例えば、医療分野においては、医療用テープやハップ剤の保護フィルムとして、また、工業分野においては、プリント配線板、フレキシブルプリント配線板、多層プリント配線板などを製造するための工程フィルムや、粘着材料、液晶ディスプレイ用部品、ガラス、太陽光パネルなどの保護フィルムや、イオン交換膜、セラミックグリーンシートなどのシート状構造体の成形フィルムとして用いることができる。さらに、本発明の製造方法で得られた積層フィルムは、基材層にそれぞれの機能を有する樹脂層を形成することで、離型用途以外の用途でも用いることができる。例えば、帯電防止フィルム、易接着フィルム、バリアフィルム、撥水フィルム、親水フィルム、耐候性フィルム、防汚性フィルム、耐溶剤性フィルム、自己修復性フィルム、ハードコートフィルム、光学フィルムといった、様々な用途で用いることができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
ポリエステル樹脂
<ポリエステルP-1:バージンポリエステル樹脂>
日本エステル社製ポリエチレンテレフタレート樹脂UT-CBR(PET、重合触媒:三酸化アンチモン、極限粘度:0.62dl/g、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)
<ポリエステルP-2:バージンポリエステル樹脂>
バージンポリエステル樹脂に平均粒径2.3μmの無定形シリカ粒子を1.5質量%含有する日本エステル社製のGS-BR-MGをバージンポリエステル樹脂である日本エステル社製UT-CBRにブレンドして0.08質量%のシリカ粒子を含有するように調整したポリエチレンテレフタレート樹脂(重合触媒:三酸化アンチモン、極限粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)
<ポリエステルP-3:ケミカルリサイクルポリエステル樹脂>
エステル化反応器に、テレフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)のスラリー(TPA/EGモル比=1/1.6)を供給し、温度250℃及び圧力50hPaの条件で反応させ、エステル化反応率95%のエチレンテレフタレートオリゴマー(数平均重合度:5)を得た。エチレンテレフタレートオリゴマー45.0質量部をエステル化反応器に仕込み、続いてエステル化反応器の撹拌機を回した状態でエチレングリコールを7.0質量部投入した。エステル化反応器(以後「ES缶」と表記する。)の内温降下が止まったところより、55.0質量部のリサイクルポリエステル原料(ポリエステル樹脂を製造する工程で発生するポリエステル屑のペレット状のもの)をロータリーバルブを介して約2時間かけて定量投入した。このとき、全グリコール成分/全酸成分のモル比(以下「G/A」と表記する。)は1.16であった。その後、270℃の熱処理条件下で1時間解重合反応を行った。次に、得られた解重合体を、ES缶と重縮合反応器との間に目開き20μmのキャンドルフィルターをセットして重縮合反応器(以後PC缶と表記)へ圧送した後、重合触媒として三酸化アンチモンを1.0×10-4mol/unit、二酸化チタンのEGスラリーを0.20質量%となるよう加え、PC缶を減圧にして60分後に最終圧力0.5hPa及び温度275℃で4時間、溶融重合反応を行い、ポリエステルP-3(極限粘度:0 .65dl/g、カルボキシル末端基濃度27当量/t、降温結晶化温度170℃)を得た。
<ポリエステルP-4:未採用ポリエステル原料>
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム製造時に発生したフィルム屑を粉砕後、25 0~290℃で再溶融し、ペレット化した。その後、乾燥し、ポリエステル樹脂フィルムに用いる未採用ポリエステル樹脂(ポリエステルP-4)(降温結晶化温度181℃)とした。
用いたポリエステル樹脂の物性について測定は下記記載の方法で行った。なお、各測定に際しては、温度23℃及び湿度50%RHの環境下で測定した。
(1)極限粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒として、温度20℃で測定する。
(2)カルボキシル末端基濃度
ポリエステル樹脂0.1gをベンジルアルコール10mlに溶解し、この溶液にクロロホルム10mlを加えた後、1/10規定の水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で 滴定して求めた。
(3)ポリエステル樹脂の降温結晶化温度(再結晶化温度)
日本産業規格JISK7121に準じて、パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(入力補償型DSC8000)を用い、ポリエステル樹脂を10mg量り、サンプルとして測定した。測定条件は、昇温速度20℃/分にて25℃から300℃まで昇温し、300℃で10分間保持した後、降温速度40℃/分にて100℃まで冷却し、降温時に結晶化するピークトップ温度を降温結晶化温度とした。
(4)融点(Tm)
パーキンエルマー社製、示差走査熱量計(入力補償型DSC8000)を用い、実施例で得られたサンプルを測定した。測定条件は、20℃/分で昇温時の融点を測定した測定サンプルは延伸フィルムを溶融後、100℃/分以上の速度で急冷して非晶状態としたものを用いた。
実施例、参考例で得られた積層フィルムの物性について、下記記載の方法で行った。
(5)アクリル系粘着剤に対する離型性評価
得られた積層フィルムの樹脂層側に巾50mm、長さ150mmのポリエステル粘着テープ(日東電工社製No.31B/アクリル系粘着剤)をゴムロールで圧着して試料とした。試料を、金属板/ゴム板/試料/ゴム板/金属板の形で挟み、2kPa荷重、70℃の雰囲気で20時間放置し、その後30分以上冷却して常温に戻して剥離力測定用試料を得た。剥離力測定用試料の、粘着テープと積層フィルムとの剥離力を、23℃の恒温室で引張試験機(島津製作所社製オートグラフAGS-100B)にて測定し、剥離力を以下のように評価した。なお、剥離角度は180度、剥離速度は300mm/分である。
〇:剥離力が4.0N/cm以下
×:剥離力が4.0N/cmを超える
酸変性ポリオレフィン樹脂およびその水性分散体は、以下の方法により製造した。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体の製造>
プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))280gを、4つ口フラスコ中、窒素雰囲気下で加熱溶融させた後、系内温度を170℃に保って攪拌下、不飽和カルボン酸として無水マレイン酸32.0gとラジカル発生剤としてジクミルパーオキサイド6.0gをそれぞれ1時間かけて加え、その後1時間反応させた。反応終了後、得られた反応生成物を多量のアセトン中に投入し、樹脂を析出させた。この樹脂をさらにアセトンで数回洗浄し、未反応の無水マレイン酸を除去した後、減圧乾燥機中で減圧乾燥して、酸変性ポリオレフィン樹脂A-1を得た。
ヒーター付きの密閉できる耐圧1リットル容ガラス容器を備えた撹拌機を用いて、上記方法で製造した60.0gの酸変性ポリオレフィン樹脂A-1と、45.0gのエチレングリコール-n-ブチルエーテル(沸点171℃)と、6.9gのN,N-ジメチルエタノールアミン(沸点134℃、樹脂中の無水マレイン酸単位のカルボキシル基に対して1.0倍当量)と、188.1gの蒸留水とを、上記のガラス容器内に仕込み、撹拌翼の回転速度を300rpmとして撹拌した。そうしたところ、容器底部には樹脂の沈澱は認められず、浮遊状態となっていることが確認された。そこでこの状態を保ちつつ、10分後にヒーターの電源を入れ加熱した。そして系内温度を140℃に保ってさらに60分間撹拌した。その後、空冷にて、回転速度300rpmのまま撹拌しつつ室温(約25℃)まで冷却した。さらに、300メッシュのステンレス製フィルター(線径0.035mm、平織)で加圧濾過(空気圧0.2MPa)することで、均一な酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。なお、フィルター上には残存樹脂はほとんどなかった。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-2の水性分散体の製造>
上記酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の製造において、プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))を、プロピレン-エチレン共重合体(プロピレン/エチレン=99/1(質量比))に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A-2を得た。
用いる酸変性ポリオレフィン樹脂をA-2に変更する以外は、前述した方法と同様の方法で、酸変性ポリオレフィン樹脂A-2の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。
<酸変性ポリオレフィン樹脂A-3の水性分散体の製造>
上記酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の製造において、プロピレン-ブテン-エチレン三元共重合体(プロピレン/ブテン/エチレン=68.0/16.0/16.0(質量比))を、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(エチレン/アクリル酸エチル=93/7(質量比)に変更する以外は、同様にして、酸変性ポリオレフィン樹脂A-3を得た。
用いる酸変性ポリオレフィン樹脂をA-3に変更する以外は、前述した方法と同様の方法で、酸変性ポリオレフィン樹脂A-3の水性分散体(固形分濃度25質量%)を得た。
<長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物液R-1の製造>
4つ口フラスコに、キシレン200質量部、オクタデシルイソシアネート600質量部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、ポリビニルアルコール(平均重合度500、ケン化度88モル%)の100質量部を、少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えた。析出した白色沈殿は、濾別し、キシレン140質量部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕後、水を用いて長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物液R-1を得た。
<アクリル樹脂水性分散体S-1の製造>
エチルアクリレート/n-ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N-メチロールアクリルアミド/アクリル酸を、65/21/10/2/2(質量%)の組成で乳化重合(乳化剤:アニオン系界面活性剤)し、アクリル樹脂(水酸基価11mgKOH/g)の水性分散体S-1を得た。
実施例において、以下の架橋剤、ポリビニルアルコールを用いた。
<架橋剤>
WS-700:日本触媒社製エポクロスWS-700、オキサゾリン化合物、固形分濃度25質量%
SV-02:日清紡社製カルボジライトSV-02、カルボジイミド化合物、固形分濃度25質量%
ヘキサメチレンジイソシアネート
ヘキサメトキシメチロールメラミン
<ポリビニルアルコール>
VC-10:日本酢ビ・ポバール社製VC-10、ケン化率99.4%、重合度1,000、固形分濃度8質量%
JT-05:日本酢ビ・ポバール社製JT-05、ケン化率94.5%、重合度500、固形分濃度8質量%
<樹脂層形成用塗工液U-1の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製VC-10、ケン化率99.4%、平均重合度:1,000、固形分濃度:8質量%)と、オキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製エポクロスWS-700、固形分濃度:25質量%)とを、各成分の固形分質量比率(酸変性ポリオレフィン樹脂:ポリビニルアルコール:オキサゾリン化合物)が100:100:5になるように混合し、その後、水で希釈して固形分濃度6質量%の樹脂層形成用塗工液U-1を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-2の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-2の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製JT-05、ケン化率94.5%、重合度500、固形分濃度8質量%)と、オキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製エポクロスWS-700、固形分濃度:25質量%)とを、各成分の固形分質量比率(酸変性ポリオレフィン樹脂:ポリビニルアルコール:オキサゾリン化合物)が100:300:5になるように混合し、その後、水で希釈して固形分濃度6質量%の樹脂層形成用塗工液U-2を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-3の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-3の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製VC-10、平均重合度:1,000、固形分濃度:10質量%)と、オキサゾリン化合物の水性溶液(日本触媒社製エポクロスWS-700、固形分濃度:25質量%)とを、各成分の固形分質量比率(酸変性ポリオレフィン樹脂:ポリビニルアルコール:オキサゾリン化合物)が100:30:5になるように混合し、その後、水で希釈して固形分濃度7質量%の樹脂層形成用塗工液U-3を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-4の製造>
酸変性ポリオレフィン樹脂A-1の水性分散体と、ポリビニルアルコール水溶液(日本酢ビ・ポバール社製VC-10、ケン化率99.4%、平均重合度:1,000、固形分濃度:8質量%)と、カルボジイミド化合物の水性溶液(日清紡社製カルボジライトSV-02、カルボジイミド化合物、固形分濃度25質量%)とを、各成分の固形分質量比率(酸変性ポリオレフィン樹脂:ポリビニルアルコール:カルボジイミド化合物)が100:100:5になるように混合し、その後、水で希釈して固形分濃度6質量%の樹脂層形成用塗工液U-4を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-5の製造>
硬化型シリコーン樹脂の水系エマルジョンKM(信越シリコーン社製、KM3951)と、白金触媒と、炭酸水素ナトリウムを、各成分の固形分質量比が100/1/50となるように混合し、水とイソプロピルアルコールの混合液(水:イソプロピルアルコール=8:2(質量比))を加えて固形分濃度が6質量%である樹脂層形成用塗工液U-5を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-6の製造>
フルオロオレフィン、シクロヘキシル基含有アクリル酸エステル、水酸基含有ビニルエーテルを構成成分とする含フッ素共重合体(関東電化工業社製、KD200)の30質量%酢酸エチル溶液KDに、含フッ素共重合体の固形分100質量部に対し、24質量部の架橋剤(ヘキサメチレンジイソシアネート)とを溶解し、シクロヘキサノン45質量部と酢酸ブチル30質量部を加えて樹脂層形成用塗工液U-6を得た。
<樹脂層形成用塗工液U-7の製造>
長鎖アルキル基を側鎖に持つ高分子化合物液R-1と、アクリル樹脂の水性分散体S-1と、架橋剤(ヘキサメトキシメチロールメラミン)を各成分の固形分質量比が30/40/30となるように混合し、最終的に固形分濃度が3.0質量%となるように水で調整して、樹脂層形成用塗工液U-7を得た。
<未延伸フィルムM-1、M-2の製造>
乾燥したポリエステルP-1をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥した平均粒径2.3μmの無定形シリカ粒子を0.08質量%含有するポリエステルP-2(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-1を得た。総厚みだけが異なり、総厚みが380μmのM-2を得た。
<未延伸フィルムM-3、M-4の製造>
乾燥したポリエステルP-3をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥した平均粒径2.3μmの無定形シリカ粒子を0.08質量%含有するポリエステルP-2(重合触媒:三酸化アンチモン、固有粘度:0.62、ガラス転移温度:78℃、融点:255℃)をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-3を得た。総厚みだけが異なり、総厚みが380μmのM-4を得た。
<未延伸フィルムM-5の製造>
乾燥したポリエステルP-1と乾燥したポリエステルP-3が50/50の質量比になるようにスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-5を得た。
<未延伸フィルムM-6の製造>
乾燥した、ポリエステルP-1とポリエステルP-3とポリエステルP-4とが40/50/10の質量比になるようにスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-6を得た。
<未延伸フィルムM-7の製造>
乾燥したポリエステルP-1と乾燥したポリエステルP-3が10/90の質量比になるように混ぜてからスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-4と乾燥したポリエステルP-2を20/80の質量比で混ぜたものをスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-7を得た。
<未延伸フィルムM-8の製造>
乾燥した、ポリエステルP-1とポリエステルP-3とポリエステルP-4が10/80/10の質量比になるように混ぜてからスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2のみをスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-8を得た。
<未延伸フィルムM-9の製造>
乾燥したポリエステルP-1と乾燥したポリエステルP-3が10/90の質量比になるように混ぜてからスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-9を得た。
<未延伸フィルムM-10の製造>
乾燥した、ポリエステルP-1とポリエステルP-3とポリエステルP-4を10/80/10の質量比になるように混ぜてから、スクリュー径90mmの押出機に投入して、280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-9を得た。
<未延伸フィルムM-11の製造>
乾燥したポリエステルP-3と乾燥したポリエステルP-4を80/20の質量比になるように混ぜてからスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-3をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、3層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層/A層=2.5/33/2.5となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-11を得た。
<未延伸フィルムM-12の製造>
乾燥した、ポリエステルP-1とポリエステルP-3とポリエステルP-4を80/10/10の質量比になるように混ぜてから、スクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-3をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、3層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層/A層=2.5/33/2.5となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムM-12を得た。
<延伸フィルムF-1の製造>
乾燥したポリエステルP-1をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。その後、未延伸ロールを連続してロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸し、その後、連続的にシート端部をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、200~210℃で2秒間以上熱処理した後で、230℃で3秒間の熱処理を施して、延伸フィルムF-1を得た。
<延伸フィルムF-2の製造>
乾燥したポリエステルP-3をスクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。その後、未延伸ロールを連続してロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸し、その後、連続的にシート端部をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、200~210℃で2秒間以上熱処理した後で、230℃で3秒間の熱処理を施して、延伸フィルムF-2を得た。
<延伸フィルムF-3の製造>
乾燥したポリエステルP-3と乾燥したポリエステルP-4を80/20の質量比になるように混ぜてから、スクリュー径90mmの押出機に投入して280℃で溶融したA層と、乾燥したポリエステルP-2をスクリュー径65mmの押出機に投入して280℃で溶融したB層とを、2層フィードブロック内で合流させ、総厚みが580μm、厚みの比がA層/B層=30/8となるよう調整してTダイ出口より押出し、急冷固化して未延伸フィルムを得た。その後、未延伸ロールを連続してロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸し、その後、連続的にシート端部をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、200~210℃で2秒間以上熱処理した後で、230℃で3秒間の熱処理を施して、延伸フィルムF-3を得た。
<積層フィルムの製造>
参考例1
未延伸フィルムM-1をロール式縦延伸機で85℃の条件下、3.5倍に延伸し、その後、樹脂層形成用塗工液U-1を、グラビアロールで6.0g/mとなるように、A層表面に塗布した。
その後、連続的にシート端部をフラット式延伸機のクリップに把持させ、100℃の条件下、横4.5倍に延伸を施し、その後、横方向の弛緩率を3%として、200~210℃で2秒間以上熱処理した後で、230℃で3秒間の熱処理を施して、厚さ38μm(樹脂層厚さ0.1μm)の積層フィルムを得た。
参考例2
未延伸フィルムM-2に樹脂層形成用塗工液U-1を、グラビアロールで6.0g/mとなるように、A層表面に塗布後、連続的に同時二軸延伸機に導き、90℃で予熱した後、延伸温度95℃、MD延伸倍率3.0倍、TD延伸倍率3.3倍の条件で同時二軸延伸を施し200~210℃で2秒間以上熱処理を施して厚さ38μm(樹脂層厚さ0.05μm)の積層フィルムを得た。
実施例1、3、4、5、6、7、8、9、10
実施例1、3、4、5、6、7、8、9、10については、それぞれ基材層をM-3、M-5、M-6、M-7、M-8、M-9、M-10、M-11、M-12に変更した以外は参考例1と同様の方法で作製した。尚、実施例9、10の基材については両面とも同じA層であるが、片面をA1面、もう一面をA2面としてA1面に樹脂層形成用塗工液を塗布した。
実施例2
実施例2については、基材層をM-4に変更した以外は参考例2と同様の方法で作製した。
参考例3
得られた二軸延伸フィルムF-1に、樹脂層形成用塗工液U-1をマイヤーバーで塗工した後、120℃で20秒間乾燥して、樹脂層を形成した。樹脂層の厚さは、約0.08μmである積層フィルムを得た。
実施例11、12
実施例11、12については、基材フィルムをF-2、F-3に変更した以外は参考例3と同様の方法で作製した。
実施例14、16、18、19、20
実施例14、16、18、19、20については、樹脂層形成用塗工液をU-2、U-3、U-5、U-6、U-7に変更した以外は実施例11と同様の方法で作製した。
実施例13、15、17
実施例13、15、17は、樹脂層形成用塗工液をそれぞれU-2、U-3、U-4に変更した以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
実施例1~20、参考例1~3で得られた積層フィルムについて、離型性の評価結果を表1に示す。
実施例の積層フィルムは、基材層にケミカルリサイクルポリエステル原料や未採取原料を含有しており、環境負荷が低減されたフィルムであり、粘着テープとの剥離力が4.0N/cm以下と良好な離型性を示すものであった。

Claims (7)

  1. 積層フィルムを製造する方法であって、
    リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程、
    前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程、
    重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程、
    前記ポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製造する工程、
    未延伸フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成し、延伸する工程、
    を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  2. 積層フィルムを製造する方法であって、
    リサイクルポリエステル原料を解重合反応に供することにより反応生成物を得る工程、
    前記反応生成物を濾過し、濾液を回収する工程、
    重合触媒の存在下で温度260℃以上及び圧力1.0hPa以下で前記濾液を重縮合反応に供することによりポリエステル樹脂を得る工程、
    前記ポリエステル樹脂を含む出発材料を用いて未延伸フィルムを製造し、延伸する工程、
    延伸フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層を形成する工程、
    を含むことを特徴とする積層フィルムの製造方法。
  3. フィルムの少なくとも一方の面に樹脂層形成用塗工液を塗布、乾燥し、樹脂層を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
  4. 樹脂層を形成したフィルムをさらに延伸する工程を含むことを特徴とする請求項2に記載の積層フィルムの製造方法。
  5. 樹脂層が離型性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
  6. ケミカルリサイクルによって得られたポリエステル樹脂を含有する基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に樹脂層が形成された積層フィルム。
  7. 樹脂層が離型性を有することを特徴とする請求項6に記載の積層フィルム。
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