[第1の実施の形態]
図1には、本発明の第1の実施の形態に係るウェビング移動機構10が適用された車両12の主要部が車両左方から見た側面図にて示されている。なお、図面では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両右方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示している。
図1に示す如く、本実施の形態における車両12では、シート14(例えば運転席)が車室16内に設置されており、シート14の前方、後方、右方及び左方は、それぞれ車両12の前方、後方、右方及び左方に向けられている。
シート14の下側部分には、シートクッション14Aが設けられており、シートクッション14Aは、略水平に配置されている。シート14の上側部分には、シートバック14Bが設けられており、シートバック14Bは、シートクッション14Aの後端から上側に起立されている。シート14には、車両12の乗員18(例えば運転手)が着座可能にされている。
シート14内には、乗員検知手段としての着座センサ20が設けられており、着座センサ20は、シート14に乗員18が着座したことを検知可能にされている。
シート14には、ウェビング移動機構10(シートベルト装置)が装備されている。
ウェビング移動機構10には、格納手段としての第1巻取装置22(ショルダリトラクタ)が設けられており、第1巻取装置22は、シート14の後部の車幅方向外側かつ下側において、車体(シート14でもよい)に固定されている。第1巻取装置22には、第1スプール(図示省略)が設けられており、第1スプールには、ベルトとしての長尺帯状のウェビング24(シートベルト)が基端側から巻取られている。このため、第1スプールが巻取方向へ回転されることで第1スプールにウェビング24が巻取られると共に、第1スプールからウェビング24が引出されることで第1スプールが引出方向(巻取方向とは反対方向)へ回転される。
第1巻取装置22は、第1スプールに巻取方向への付勢力を作用させており、これにより、ウェビング24に第1スプールへの巻取方向への付勢力が付与されている。車両12の衝突時(緊急時)には、第1巻取装置22が、車両の急減速及びウェビング24の第1スプールからの急引出しの少なくとも一方を検知して、第1スプールからのウェビング24の引出しをロックする。
ウェビング24は、第1巻取装置22より先端側において、アンカ(上支持部)としてのショルダアンカ26(スリップジョイント)に移動可能に挿通されており、ショルダアンカ26は、シート14の後部の車幅方向外側かつ上側において、車体(シート14でもよい)に回動可能に取付けられている。これにより、ウェビング24が、第1巻取装置22より先端側において、ショルダアンカ26に支持されている。
ウェビング移動機構10には、格納手段(外支持部)としての第2巻取装置28(ラップリトラクタ)が設けられており、第2巻取装置28は、シート14の後部の車幅方向外側かつ下側において、車体(シート14でもよい)に固定されている。第2巻取装置28には、第2スプール(図示省略)が設けられており、第2スプールにウェビング24が先端側から巻取られることで、ウェビング24の先端側が第2巻取装置28に支持されている。このため、第2スプールが巻取方向へ回転されることで第2スプールにウェビング24が巻取られると共に、第2スプールからウェビング24が引出されることで第2スプールが引出方向(巻取方向とは反対方向)へ回転される。
第2巻取装置28は、第2スプールに巻取方向への付勢力を作用させており、これにより、ウェビング24に第2スプールへの巻取方向への付勢力が付与されている。車両12の衝突時(緊急時)には、第2巻取装置28が、車両の急減速及びウェビング24の第2スプールからの急引出しの少なくとも一方を検知して、第2スプールからのウェビング24の引出しをロックする。
上述の如く、ウェビング24には、第1巻取装置22が第1スプールへの巻取方向への付勢力を付与すると共に、第2巻取装置28が第2スプールへの巻取方向への付勢力を付与している。このため、ウェビング24には、第1巻取装置22及び第2巻取装置28によって張力を作用されており、ウェビング24は、シート14の後部の車幅方向外側において、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間で略上下方向に延伸されると共に、車幅方向に垂直に配置されている。
ウェビング24には、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間において、タング30が任意の位置に固定されている。
ウェビング移動機構10には、タング30を支持する部材としてのバックル32(インナアンカ)が設けられており、バックル32は、シート14の車幅方向内側かつ下側において、車体(シート14でもよい)に支持されている。バックル32には、タング30が係合及び係合解除可能にされており、タング30がバックル32に係合されることで、ウェビング24が、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間において、タング30を介してバックル32に支持される。これにより、ウェビング24が乗員18に装着されて、ウェビング24のショルダアンカ26とタング30との間の部分(ショルダベルト部)が乗員18の胸部に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング24のタング30と第2巻取装置28との間の部分(ラップベルト部)が乗員18の腰部に横方向に掛渡される。
バックル32内には、係合検知手段としてのバックルスイッチ34が設けられており、バックルスイッチ34は、バックル32にタング30が係合されたことを検知可能にされている。
図1及び図3(A)に示す如く、ウェビング移動機構10には、移動手段としてのリーチャ36(イージーアクセスアウタ)が設けられており、リーチャ36は、シート14の車幅方向外側かつ下側において、車体(シート14でもよい)に支持されている。
リーチャ36には、移動部(伸縮部)としてのアーム部38が設けられており、アーム部38は、車両前斜め上方へ延出されている。アーム部38には、円筒状の筒体40が同軸上に複数設けられており、複数の筒体40の径は、互いに異なっている。複数の筒体40では、大径側の筒体40に小径側の筒体40が相対回転不能に順次嵌入されており、複数の筒体40は、径方向において互いに重合されている。さらに、小径側の筒体40の基端は、大径側の筒体40の先端に係合可能にされている。
リーチャ36が正駆動された際には、設置部としての最小径の筒体40(以下「先端筒42」という)がアーム部38先端方向へ移動される。このため、小径側の筒体40から大径側の筒体40の順番で小径側の筒体40の基端が大径側の筒体40の先端に順次係合されて、複数の筒体40がアーム部38先端方向へ移動されることで、アーム部38が車両前斜め上方へ伸長される。一方、リーチャ36が逆駆動された際には、先端筒42がアーム部38基端方向へ移動される。このため、複数の筒体40がアーム部38基端方向へ移動されて、大径側の筒体40から小径側の筒体40の順番で大径側の筒体40先端への小径側の筒体40基端の係合が順次解除されることで、アーム部38が車両後斜め下方へ収縮される。
図2に詳細に示す如く、先端筒42の先端には、湾曲板状のストッパ42Aが一体に設けられており、ストッパ42Aは、先端筒42の周壁から先端筒42先端方向へ延出されている。
先端筒42の先端には、制限手段(引掛部材)としてのヘッド44が設置されている。ヘッド44の基端側部分には、円柱状の設置軸46が設けられており、設置軸46が先端筒42に回転可能に嵌入されることで、ヘッド44が先端筒42に回動可能に設置されている。設置軸46の先端部には、湾曲板状の回転部46Aが一体に設けられており、回転部46Aは、設置軸46の周面から径方向外側へ突出されている。
ヘッド44の先端側部分には、引掛部としての断面U字形枠状のフック48が設けられており、フック48が自重により先端筒42のストッパ42Aに当接されることで、ヘッド44の先端筒42側への移動が係止されている。図3(B)に詳細に示す如く、フック48は、車両前方へ開放されており、フック48は、車両前方におけるショルダアンカ26と第2巻取装置28との間のウェビング24に対向されている。フック48は、車両後側かつ車幅方向内側の部分において設置軸46と一体にされて、設置軸46を中心軸として設置軸46と一体に回動(変位)可能にされており、ヘッド44(設置軸46及びフック48)の回動中心軸線(設置軸46の中心軸線)は、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間のウェビング24の車両後側かつ車幅方向内側に配置されている。フック48の車幅方向内側部分は、矩形板状の制限部48Aにされており、制限部48Aは、車両前方へ延出されると共に、車幅方向に垂直に配置されている。
先端筒42は、付勢手段としてのトーションスプリング50(コイルスプリング)内に挿入されており、トーションスプリング50は、先端筒42とヘッド44との間に掛渡されて、ヘッド44をフック48が車幅方向外側へ回動される方向へ付勢している。ヘッド44の回転部46Aは、トーションスプリング50の付勢力によって先端筒42のストッパ42Aに当接されており、これにより、トーションスプリング50の付勢力によるヘッド44の回動が係止(制限)されている。このため、ヘッド44が制限位置(初期位置)に配置されており、トーションスプリング50の付勢力に抗してヘッド44がフック48を車幅方向内側へ回動される方向へ回動されることで、ヘッド44が許容位置に配置される(図5(B)参照)。
上記着座センサ20、バックルスイッチ34及びリーチャ36は、制御手段としての制御装置52に電気的に接続されている。
次に、本実施の形態の作用を説明する。
以上の構成のウェビング移動機構10では、シート14に乗員18が着座したことを着座センサ20が検知した際に、制御装置52の制御によりリーチャ36が正駆動されて、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長されることで、アーム部38先端側のヘッド44がトーションスプリング50の付勢力によって制限位置に配置された状態で車両前斜め上方へ移動される。このため、図4の(A)及び(B)に示す如く、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間かつタング30の下側におけるウェビング24が、確実に、ヘッド44のフック48内に挿入されて、フック48に引掛けられることで、ウェビング24及びタング30が、車両前斜め上方へ移動されて、乗員18の車幅方向外側における前側に配置される。
その後、図5の(A)及び(B)に示す如く、乗員18が、ウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持して、ウェビング24によってフック48の制限部48Aを車幅方向内側(乗員18側)へ押圧することで、ヘッド44がトーションスプリング50の付勢力に抗して制限位置から許容位置へ回動されて、フック48がウェビング24の車幅方向内側への移動を許容する。このため、乗員18が、フック48からウェビング24を取外して、ウェビング24及びタング30を車幅方向内側へ移動させることで、乗員18がタング30をバックル32に係合させて、乗員18にウェビング24が装着される。
また、乗員18がフック48からウェビング24を取外すことで、ヘッド44がトーションスプリング50の付勢力によって許容位置から制限位置へ回動される。さらに、タング30がバックル32に係合されたことをバックルスイッチ34が検知した際には、制御装置52の制御によりリーチャ36が逆駆動されて、アーム部38が車両後斜め下方へ収縮されることで、ヘッド44が車両後斜め下方へ移動される。
このように、リーチャ36によってウェビング24及びタング30が乗員18の車幅方向外側における前側に移動されるため、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を容易に把持できる。さらに、ヘッド44が制限位置から許容位置へ回動されることで、乗員18がウェビング24を一旦車両前側へ移動させなくてもフック48から取外すことができる。これにより、乗員18がウェビング24を容易に装着できる。
ここで、ヘッド44(設置軸46及びフック48)の回動中心軸線が、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間におけるウェビング24の車幅方向内側に配置されている。このため、ウェビング24がフック48に引掛けられた際には、ヘッド44の回動中心軸線より車幅方向外側においてウェビング24にフック48が接触して、ヘッド44が、ウェビング24の張力(第1巻取装置22及び第2巻取装置28からの付勢力による張力)によって許容位置(図5(B)の位置)から制限位置(図3(B)及び図4(B)の位置)への回動力を作用される。これにより、ヘッド44の許容位置から制限位置への回動力が増加されて、フック48の制限部48Aの車幅方向外側への回動力が増加されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が増加される。
したがって、リーチャ36がウェビング24及びタング30を車両前斜め上方へ移動させる際に、フック48(制限部48A)がウェビング24及びタング30の車幅方向内側への移動を効果的に制限でき、フック48がウェビング24及びタング30を脱落させずに車両前斜め上方へ移動させることができる。
また、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持した際には、ウェビング24の張力のヘッド44への作用が解除されて、ヘッド44の許容位置から制限位置への回動力が低下される。このため、フック48の制限部48Aの車幅方向外側への回動力が低下されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が低下される。
これにより、乗員18がウェビング24によって制限部48Aを車幅方向内側へ押圧する際には、ヘッド44を制限位置から許容位置へ容易に回動させることができて、制限部48Aを車幅方向内側へ容易に回動させることができ、ウェビング24をフック48から容易に取外すことができる。
さらに、乗員18がフック48からウェビング24を取外すことで、ヘッド44が、トーションスプリング50の付勢力によって許容位置から制限位置へ回動されて、格納される。このため、再度のリーチャ36の正駆動時には、確実にウェビング24をフック48に引掛けることができる。
[第2の実施の形態]
図6には、本発明の第2の実施の形態に係るウェビング移動機構60の主要部が車両上斜め前方から見た斜視図にて示されている。
本実施の形態に係るウェビング移動機構60は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図6に示す如く、本実施の形態に係るウェビング移動機構60では、リーチャ36に上記第1の実施の形態におけるトーションスプリング50が設けられていない。
リーチャ36のヘッド44では、フック48が車両後側かつ車幅方向中央の部分において設置軸46と一体にされており、ヘッド44(設置軸46及びフック48)の回動中心軸線(設置軸46の中心軸線)は、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間のウェビング24の車両後方に配置されている。
リーチャ36の先端筒42先端では、ストッパ42Aが正面視逆三角形の凹状にされており、ストッパ42A内は、先端筒42の径方向両側及び先端側に開放されている。
ヘッド44では、設置軸46の回転部46Aが、正面視逆三角形状にされており、ヘッド44の自重により回転部46Aが先端筒42のストッパ42Aに嵌合(係合)されることで、ヘッド44の先端筒42側への移動が係止されると共に、ヘッド44の回動(変位)が係止(制限)されている。このため、ヘッド44が制限位置(初期位置)に配置されており(図7の(A)及び(B)参照)、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長される際には、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間かつタング30の下側におけるウェビング24が、確実に、ヘッド44のフック48内に挿入されて、フック48に引掛けられる。
また、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長された後に、乗員18が、ウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持して、ウェビング24によってフック48の制限部48Aを車幅方向内側(乗員18側)へ押圧する際には、ヘッド44の自重に抗して回転部46Aのストッパ42Aへの嵌合が解除されて、ヘッド44が、先端筒42とは反対側へ移動されると共に、フック48を車幅方向内側へ回動される方向へ回動されることで、ヘッド44が許容位置に配置される(図8の(A)及び(B)参照)。
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
特に、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長されて、ウェビング24がヘッド44のフック48に引掛けられた際には、ヘッド44の回動中心軸線の車両前方においてウェビング24にフック48が接触して、ヘッド44がウェビング24の張力(第1巻取装置22及び第2巻取装置28からの付勢力による張力)によって先端筒42側への移動力を作用されることで、設置軸46の回転部46Aと先端筒42のストッパ42Aとの嵌合力が増加されて、ヘッド44の制限位置からの回動の制限力が増加される。これにより、フック48の制限部48Aの車幅方向内側への回動の制限力が増加されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が増加される。
したがって、リーチャ36がウェビング24及びタング30を車両前斜め上方へ移動させる際に、フック48(制限部48A)がウェビング24及びタング30の車幅方向内側への移動を効果的に制限でき、フック48がウェビング24及びタング30を脱落させずに車両前斜め上方へ移動させることができる。
また、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持した際には、ウェビング24の張力のヘッド44への作用が解除されることで、設置軸46の回転部46Aと先端筒42のストッパ42Aとの嵌合力が低下されて、ヘッド44の制限位置からの回動の制限力が低下される。このため、フック48の制限部48Aの車幅方向内側への回動の制限力が低下されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が低下される。
これにより、乗員18がウェビング24によって制限部48Aを車幅方向内側へ押圧する際には、設置軸46の回転部46Aと先端筒42のストッパ42Aとの嵌合を容易に解除でき、ヘッド44を制限位置から許容位置へ容易に回動させることができて、制限部48Aを車幅方向内側へ容易に回動させることができる。これにより、ウェビング24をフック48から容易に取外すことができる。
さらに、乗員18がフック48からウェビング24を取外すことで、ヘッド44の自重によって、設置軸46の回転部46Aが先端筒42のストッパ42Aに案内されつつ、ヘッド44が許容位置から制限位置へ回動されて、回転部46Aがストッパ42Aに自動的に嵌合される。このため、簡単な構成でヘッド44を許容位置から制限位置へ復帰させることができる。
なお、本実施の形態では、先端筒42にストッパ42Aを設けると共に、ヘッド44に回転部46Aを設けた。しかしながら、先端筒42に回転部46Aを設けると共に、ヘッド44にストッパ42Aを設けてもよい。
また、本実施の形態において、ヘッド44を回転部46Aとストッパ42Aとが嵌合される回動位置に付勢する付勢手段を設けてもよい。
[第3の実施の形態]
図9(A)には、本発明の第3の実施の形態に係るウェビング移動機構70の主要部が上側から見た平面図にて示されている。
本実施の形態に係るウェビング移動機構70は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図9(A)に示す如く、本実施の形態に係るウェビング移動機構70では、リーチャ36に上記第1の実施の形態におけるトーションスプリング50が設けられていない。
リーチャ36では、ヘッド44のフック48が車両後側かつ車幅方向中央の部分においてヘッド44の設置軸46と一体にされると共に、先端筒42に設置軸46が固定されており、先端筒42及びヘッド44には、それぞれ上記第1の実施の形態におけるストッパ42A及び回転部46Aが設けられていない。
ヘッド44のフック48では、制限部48Aと制限部48A以外の部分とが別体にされると共に、制限部48Aが制限部48A以外の部分に対し所定範囲で車幅方向に回動(変位)可能に支持されており、制限部48Aは、車幅方向外側へ付勢されて、付勢手段として機能している。制限部48Aは、車幅方向外側への回動を係止されており、制限部48Aは、車両前方へ延出されると共に、車幅方向に垂直に配置されて、制限位置(初期位置)に配置されている。
リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長される際には、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間かつタング30の下側におけるウェビング24が、確実に、ヘッド44のフック48内に挿入されて、フック48に引掛けられる。
また、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長された後に、乗員18が、ウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持して、ウェビング24によってフック48の制限部48Aを車幅方向内側(乗員18側)へ押圧する際には、制限部48Aが付勢力に抗して車幅方向内側へ回動されることで、制限部48Aが許容位置に配置される(図9(B)参照)。
ここで、本実施の形態でも、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持した際にウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が低下される作用及び効果を除き、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
特に、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長されて、ウェビング24がヘッド44のフック48に引掛けられた際に、フック48の制限部48Aがウェビング24の張力(第1巻取装置22及び第2巻取装置28からの付勢力による張力)によって車幅方向内側への回動力を作用されても、制限部48Aが車幅方向内側へ回動されることで、制限部48Aへの付勢力が増加されて、制限部48Aの許容位置から制限位置への回動力が増加される。これにより、制限部48Aの車幅方向外側への回動力が増加されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が増加される。
したがって、リーチャ36がウェビング24及びタング30を車両前斜め上方へ移動させる際に、フック48(制限部48A)がウェビング24及びタング30の車幅方向内側への移動を効果的に制限でき、フック48がウェビング24及びタング30を脱落させずに車両前斜め上方へ移動させることができる。
なお、本実施の形態では、フック48の制限部48Aをフック48の制限部48A以外の部分に対し別体にした。しかしながら、図10に示す如く、フック48の制限部48Aをフック48の制限部48A以外の部分と一体にしてもよい。この場合、制限部48Aの一部又は全体が弾性を有することで、制限部48Aが制限部48A以外の部分に対し弾性力(付勢力)に抗して所定範囲で車幅方向に回動(変位)可能にされる。
[第4の実施の形態]
図11には、本発明の第4の実施の形態に係るウェビング移動機構80が適用された車両12の主要部が車両左方から見た側面図にて示されており、図13(A)には、ウェビング移動機構80の主要部が車両左斜め前方から見た斜視図にて示されている。
本実施の形態に係るウェビング移動機構80は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図11及び図13(A)に示す如く、本実施の形態に係るウェビング移動機構80では、リーチャ36に上記第1の実施の形態におけるトーションスプリング50が設けられていない。さらに、リーチャ36では、先端筒42とヘッド44とに、それぞれ上記第1の実施の形態におけるストッパ42Aと設置軸46及び回転部46Aとが設けられていない。
先端筒42の先端には、ヘッド44がフック48の基端(車両後側端)の車幅方向中央において回動(変位)可能に支持されており、ヘッド44は、先端筒42に対し所定範囲で上下方向へ回動可能にされている。ヘッド44は、下側へ付勢されて、付勢手段として機能しており、ヘッド44は、下側への回動を係止されて、許容位置(初期位置)に配置されることで、フック48の先端(車両前側端)が車両前斜め下方へ向けられている。
フック48の基端には、略直方体状の押圧部82が一体に設けられており、押圧部82は、フック48の基端から車両前斜め上方に突出されている。押圧部82の先端面には、凹部82Aが形成されており、押圧部82は、凹部82Aによって、車幅方向両端部から車幅方向中央部へ向かうに従いフック48基端からの突出量が徐々に減少されている。
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
特に、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長される際には、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間かつタング30の下側におけるウェビング24にヘッド44の押圧部82が接触して、ヘッド44がウェビング24の張力(第1巻取装置22及び第2巻取装置28からの付勢力による張力)によって押圧部82を車両後側へ押圧されることで、ヘッド44が、付勢力に抗して上側へ回動されて、許容位置から制限位置に配置される(図12及び図13(B)参照)。このため、ヘッド44のフック48先端が車両前斜め上方へ向けられることで、ウェビング24が、フック48内に挿入されて、フック48に引掛けられる。これにより、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が増加される。
したがって、リーチャ36がウェビング24及びタング30を車両前斜め上方へ移動させる際に、フック48(制限部48A)がウェビング24及びタング30の車幅方向内側への移動を効果的に制限でき、フック48がウェビング24及びタング30を脱落させずに車両前斜め上方へ移動させることができる。
また、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長された後に、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持する際には、ウェビング24の張力のヘッド44への作用が解除されることで、ヘッド44が、付勢力によって下側へ回動されて、制限位置から許容位置に配置される(図11及び図13(A)参照)。このため、ヘッド44のフック48先端が車両前斜め下方へ向けられることで、ウェビング24が、フック48内から離脱されて、フック48への引掛けを解除される。これにより、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が低下される(ゼロにされる)。
これにより、乗員18がウェビング24及びタング30を車幅方向内側へ移動させる際には、ウェビング24が制限部48Aに引掛かることを抑制でき、ウェビング24をヘッド44から容易に取外すことができる。
なお、本実施の形態において、ヘッド44を下側へ付勢手段しなくてもよい。この場合、ヘッド44が自重により許容位置(初期位置)に配置される。
さらに、本実施の形態において、ヘッド44を上側へ付勢手段してもよい。この場合、フック48の先端を上側へ向けると共に、フック48の基端から押圧部82を車両前斜め下方へ突出させる。
[第5の実施の形態]
図14には、本発明の第5の実施の形態に係るウェビング移動機構90の主要部が車両左斜め前方から見た斜視図にて示されており、図15(A)には、ウェビング移動機構90の主要部が上方から見た断面図にて示されている。
本実施の形態に係るウェビング移動機構90は、上記第1の実施の形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
図14及び図15(A)に示す如く、本実施の形態に係るウェビング移動機構90では、リーチャ36に上記第1の実施の形態におけるトーションスプリング50が設けられていない。さらに、リーチャ36では、先端筒42とヘッド44とに、それぞれ上記第1の実施の形態におけるストッパ42Aと回転部46Aとが設けられていない。
リーチャ36のヘッド44では、フック48が車両後側かつ車幅方向中央の部分において設置軸46と一体にされており、フック48の長手方向(制限部48Aの延出方向)は、設置軸46と平行に配置されている。
リーチャ36の先端筒42の先端側部分は、四角錐台形筒状の嵌合部92にされて、先端側へ向かうに従い断面積が大きくされており、嵌合部92の上壁及び下壁は、平面視略V字状(平面視略U字状でもよい)にされている。先端筒42の軸方向中間部分は、矩形筒状の挿入部94にされており、挿入部94内は、基端側端において閉じられている。
ヘッド44の設置軸46と先端筒42の挿入部94内の基端側端との間には、付勢手段としての設置スプリング96(コイルスプリング)が掛渡されており、ヘッド44は、設置スプリング96を介して先端筒42に支持されている。このため、ヘッド44が規制位置(初期位置)に配置されており、ヘッド44のフック48は、先端筒42の嵌合部92内から車両前側に離脱されると共に、ヘッド44の設置軸46は、先端筒42の嵌合部92内に配置されて、先端筒42の挿入部94内から車両前側に離脱されている。
リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長される際には、ショルダアンカ26と第2巻取装置28との間かつタング30の下側におけるウェビング24が、確実に、ヘッド44のフック48内に挿入されて、フック48に引掛けられる。
また、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長された後に、乗員18が、ウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持して、ウェビング24によってフック48の制限部48Aを車幅方向内側(乗員18側)へ押圧する際には、設置スプリング96の付勢力に抗してヘッド44がフック48を車幅方向内側へ回動される方向へ回動(変位)されることで、ヘッド44が許容位置に配置される(図15(C)参照)。
ここで、本実施の形態でも、上記第1の実施の形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
特に、リーチャ36のアーム部38が車両前斜め上方へ伸長されて、ウェビング24がヘッド44のフック48に引掛けられた際には、ウェビング24にフック48が接触して、ヘッド44がウェビング24の張力(第1巻取装置22及び第2巻取装置28からの付勢力による張力)によって先端筒42側への移動力を作用されることで、ヘッド44が設置スプリング96の付勢力に抗して先端筒42側に移動されて、設置軸46が先端筒42の挿入部94内に挿入されると共に、フック48が先端筒42の嵌合部92内に嵌合される(図15(B)参照)。これにより、ヘッド44の制限位置からの回動の制限力が増加されて(ヘッド44の制限位置からの回動が先端筒42によって制限されて)、フック48の制限部48Aの車幅方向内側への回動の制限力が増加されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が増加される。
したがって、リーチャ36がウェビング24及びタング30を車両前斜め上方へ移動させる際に、フック48(制限部48A)がウェビング24及びタング30の車幅方向内側への移動を効果的に制限でき、フック48がウェビング24及びタング30を脱落させずに車両前斜め上方へ移動させることができる。
また、乗員18がウェビング24及びタング30の少なくとも一方を把持した際には、ウェビング24の張力のヘッド44への作用が解除されることで、ヘッド44が設置スプリング96の付勢力によって先端筒42とは反対側に移動されて、設置軸46が先端筒42の挿入部94内から車両前側に離脱されると共に、フック48が先端筒42の嵌合部92内から車両前側に離脱される。このため、ヘッド44の規制位置からの回動の制限力が低下されて、フック48の制限部48Aの車幅方向内側への回動の制限力が低下されることで、ウェビング24の車幅方向内側への移動の制限部48Aによる制限力が低下される。
これにより、乗員18がウェビング24によって制限部48Aを車幅方向内側へ押圧する際には、ヘッド44を制限位置から許容位置へ容易に回動させることができて、制限部48Aを車幅方向内側へ容易に回動させることができる。これにより、ウェビング24をフック48から容易に取外すことができる。
さらに、乗員18がフック48からウェビング24を取外すことで、設置スプリング96の付勢力によって、ヘッド44が許容位置から制限位置へ自動的に回動される。このため、ヘッド44を許容位置から制限位置へ復帰させることができる。
なお、上記第1の実施の形態〜第5の実施の形態において、乗員18がヘッド44のフック48からウェビング24を取外した際に、バックル32の存在を報知手段が報知してもよい(例えばバックル32のランプを点灯又は点滅させてもよい)。この場合、ヘッド44のフック48からウェビング24が取外されたこと(例えばヘッド44の回動やフック48へのウェビング24の接触解除)を検知するセンサを設けて、フック48からウェビング24が取外されたことをセンサが検知した際に、制御装置52の制御により報知手段がバックル32の存在を報知してもよい。これにより、乗員18がフック48からウェビング24を取外した後にタング30をバックル32に係合させる手順を認識できると共に、乗員18が報知手段によりバックル32の位置を認識でき、乗員18がウェビング24の装着手順を容易に認識できる。
さらに、上記第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、ウェビング24がヘッド44のフック48内に挿入されてフック48に引掛けられる。しかしながら、ウェビング24及びタング30の少なくとも一方がヘッド44のフック48内に挿入されてフック48に引掛けられればよい。
また、上記第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、第1巻取装置22及び第2巻取装置28を設けた。しかしながら、ウェビング24をタング30に対し移動可能に挿通し、かつタング30が自重で下側へ移動しないようウェビング24の任意の位置にタングストッパを設けることで、第1巻取装置22のみを設けてもよい。
さらに、上記第1の実施の形態〜第5の実施の形態では、シート14を運転席にしたが、シート14を助手席や後席にしてもよい。