JP5817754B2 - 非水系二次電池用負極とその製造方法及び非水系二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、非水系二次電池に用いられる負極とその製造方法、及びその負極を用いた非水系二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入および脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有する。そして、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。
リチウムイオン二次電池には、正極の活物質として主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。リチウムイオン二次電池の性能は、二次電池を構成する正極、負極および電解質の材料に左右される。なかでも活物質を形成する活物質材料の研究開発が活発に行われている。例えば負極活物質材料として炭素よりも高容量なケイ素またはケイ素酸化物が検討されている。
ケイ素を負極活物質として用いることにより、炭素材料を用いるよりも高容量の電池とすることができる。しかしながらケイ素は、充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化が大きい。そのためケイ素が微粉化して集電体から脱落または剥離し、電池の充放電サイクル寿命が短いという問題点がある。そこでケイ素酸化物を負極活物質として用いることにより、ケイ素よりも充放電時のLiの吸蔵・放出に伴う体積変化を抑制することができる。
例えば、負極活物質として、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6程度)の使用が検討されている。SiOxは熱処理されると、SiとSiO2とに分解することが知られている。これは不均化反応といい、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。また、Si相を覆うSiO2相が電解液の分解を抑制する働きをもつ。したがって、SiとSiO2とに分解したSiOxからなる負極活物質を用いた二次電池は、サイクル特性に優れる。
ところが上記の酸化ケイ素を負極活物質に用いたリチウムイオン二次電池においても、充放電時に負極の膨張・収縮が生じるのが避けられず、負極の疲労破壊が生じるという問題がある。またリチウムイオン二次電池の負極においては、充放電時に電解質や電解液の還元分解が生じ、分解による析出物が堆積して被膜を形成する場合がある。このような被膜が形成されると、抵抗が増大して負荷特性が低下するという問題が生じる。
そこで特開2004-185810号公報には、粒子表面にポリマーをコートした活物質粒子を用いて負極を形成することで、疲労破壊を防止できることが記載されている。また特開2009-176703号公報には、酸化ケイ素を含む負極活物質層の表面にポリマーをコートすることで、プレスに起因する活物質粒子の脱落を防止することが記載されている。そしてこのようにポリマーコート層を形成すれば、負極活物質と電解液との直接接触が防止されるので電解質や電解液の分解が防止されることも期待される。
しかしポリマーコート層の膜厚が薄すぎると上記効果の発現が困難となり、厚くなると抵抗が増大するという問題がある。上記した従来技術においては、ポリマーのコート法として混練法やスピンコーティング法が例示されているが、このような方法ではコート厚の制御が難しく、電解質や電解液の還元分解の抑制と抵抗増大の抑制という背反事象を満足させることは困難であった。
特開2004-185810号公報 特開2009-176703号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、電解質や電解液の還元分解の抑制と抵抗増大の抑制とが両立した非水系二次電池用の負極を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明の非水系二次電池用負極の特徴は、集電体と集電体に結着された負極活物質層とを含み、負極活物質層は酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む負極活物質粒子と、負極活物質粒子同士を結着するとともに負極活物質粒子と集電体とを結着する結着部と、少なくとも負極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆するポリマーコート層とを含み、ポリマーコート層は中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを含むことにある。
そして本発明の非水系二次電池用負極の製造方法の特徴は、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む負極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して負極活物質層を形成する工程と、中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を負極活物質層に塗布し乾燥してポリマーコート層を形成する工程と、を行うことにある。
本発明の非水系二次電池用負極は、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む負極活物質粒子の少なくとも一部表面にポリマーコート層を形成している。このポリマーコート層は負極活物質粒子を被覆するため、負極活物質粒子と電解液との直接接触を抑制することができる。
そしてポリマーコート層は、中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを含む。酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)のゼータ電位は、エタノール中で-43.4と負であるので、負極活物質粒子とカチオン性材料層とはクーロン力によって強固に接合される。またカチオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層ともクーロン力によって強固に接合される。したがってカチオン性ポリマー層とアニオン性ポリマー層を共に薄膜に形成することができ、ポリマーコート層の総厚をnmオーダーとすることができるので、薄くかつ均一なポリマーコート層を形成することができる。
こうして形成されたポリマーコート層は負極活物質粒子との接合強度が高いため、高電圧駆動時においても負極活物質粒子と電解液との直接接触を抑制することができる。またポリマーコート層の総厚がnmオーダーであれば、リチウムイオン伝導性の抵抗となることも抑制できる。したがって電解液の分解を抑制することができ、高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できる非水系二次電池を提供することができる。
またポリマーコート層の厚さがnmオーダー〜サブミクロンオーダーであれば、リチウムイオン伝導性の抵抗とならない。したがって高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できる非水系二次電池を提供することができる。
またディッピング法を用いてポリマーコート層を形成できるので、ロールトゥロールプロセスが可能となり生産性が向上する。
サイクル試験後の容量維持率を示す棒グラフである。
本発明にいうゼータ電位は、顕微鏡電気泳動法、回転回折格子法、レーザー・ドップラー電気泳動法、超音波振動電位(UVP)法、動電音響(ESA)法にて測定されるものである。特に好ましくはレーザー・ドップラー電気泳動法によって測定されたものである。(具体的な測定条件を以下に説明するが、この限りではない。先ず、エタノール、アセトン、水を溶媒とし、固形分濃度0.1wt%の溶液(懸濁液)を調製した。測定は温度25℃で各々3回の測定を行い、その平均値を算出して求めた。またpHについては中性条件とした。中性条件とは例えばpH7程度である。)
本発明の非水系二次電池用負極は、集電体と集電体に結着された負極活物質層とを含む。集電体としては、リチウムイオン二次電池などに一般に用いられるものを使用すれば良い。例えば、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等が例示される。
負極活物質層は、負極活物質からなる無数の負極活物質粒子と、負極活物質粒子同士を結着するとともに負極活物質粒子と集電体とを結着する結着部と、少なくとも負極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆するポリマーコート層とを含む。負極活物質は、酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む。
この酸化ケイ素の各粒子は、不均化反応によって微細なSiと、Siを覆うSiO2とに分解したSiOxからなる。xが下限値未満であると、Si比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下する。またxが上限値を超えると、Si比率が低下してエネルギー密度が低下するようになる。0.5≦x≦1.5の範囲が好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲がさらに望ましい。
一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化ケイ素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO2相および結晶性のSi相の二相を含む酸化ケイ素粉末が得られる。
また酸化ケイ素として、SiOxに対し炭素材料を1〜50質量%で複合化したものを用いることもできる。炭素材料を複合化することで、サイクル特性が向上する。炭素材料の複合量が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiOxの割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。炭素材料の複合量は、SiOxに対して5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。
酸化ケイ素粉末は平均粒径が1μm〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が10μmより大きいと非水系二次電池の充放電特性が低下し、平均粒径が1μmより小さいと凝集して粗大な粒子となるため同様に非水系二次電池の充放電特性が低下する場合がある。
結着部はバインダーが乾燥することで形成された部位であり、負極活物質粒子同士を、或いは負極活物質粒子と集電体とを結着している。このバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。負極用バインダーとしての特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合してもよい。
ポリマーコート層は、負極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆すればよいが、電解液との直接接触を確実に防ぐためには、負極活物質粒子のほぼ全面を被覆することが好ましい。またポリマーコート層は結着部の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで結着部が保護されて結着強度がより高まるため、高温高電圧という厳しいサイクル試験後にも負極活物質層のクラックや剥離を防止することができる。またポリマーコート層は導電助剤の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで導電助剤を保護することができる。
ポリマーコート層は、中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを含む。ゼータ電位が正のカチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアニリン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが例示される。カチオン性ポリマーのみからなるポリマーコート層としてもよいが、カチオン性ポリマーと中性条件でのゼータ電位が負のアニオン性ポリマーとが交互に積層されてなるポリマーコート層とすることが望ましい。このようにすれば、より緻密なポリマーコート層を形成することができる。またカチオン性ポリマーからなるポリマーコート層の電荷が中和されるため、負の電荷をもつ電解液中にカチオン性ポリマーからなるポリマーコート層が溶出するのを防止することができる。
アニオン性ポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリエチレングリコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリルなどが例示される。
ポリマーコート層を形成するには、CVD法、PVD法などを用いることも可能であるが、コストの面から好ましいとはいえない。そこで本発明の製造方法では、ポリマーが溶媒に溶解したポリマー溶液を負極活物質層に塗布し乾燥してポリマーコート層を形成している。
ポリマー溶液の溶媒としては、有機溶剤又は水を用いることができる。有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、DMF、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)などを用いることができる。ポリマーコート層から容易に除去できる沸点が低いものが望ましい。
ポリマー溶液の塗布にあたっては、スプレー、ローラー、刷毛などで塗布してもよいが、負極活物質の表面を均一に塗布するにはディッピング法にて塗布する事が望ましい。ディッピング法にて塗布すれば、負極活物質粒子同士の間隙にポリマー溶液が含浸されるので、負極活物質粒子のほぼ表面全体にポリマーコート層を形成することができる。したがって、負極活物質と電解液との直接接触を確実に防止することができる。
ディッピング法で塗布する方法として二つの方法がある。先ず、少なくとも負極活物質とバインダーとを含むスラリーを集電体に結着させて負極を形成し、その負極をポリマー溶液に浸漬し、引き上げて乾燥させる。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さのポリマーコート層を形成する。
もう一つの方法として、負極活物質の粉末を先ずポリマー溶液に混合し、それをフリーズドライ法などによって乾燥させる。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さのポリマーコート層を形成する。その後、ポリマーコート層が形成された負極活物質を用いて負極を形成する。
ポリマー溶液中のポリマー濃度は、0.001質量%以上かつ2.0質量%未満とすることが好ましく、0.1質量%〜0.5質量%の範囲が望ましい。濃度が低すぎると負極活物質との接触確率が低くコートに長時間要するようになり、濃度が高すぎるとポリマーコート層が厚くなり過ぎて抵抗上昇が生じる場合がある。
ポリマーコート層の厚さは、0.1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜10nmの範囲であることがさらに好ましく0.1nm〜5nmの範囲であることが特に望ましい。ポリマーコート層の厚さが薄すぎると、負極活物質が電解液と直接接触する場合がある。またポリマーコート層の厚さがμmオーダー以上となると、二次電池とした場合に抵抗が大きくなってイオン伝導性が低下する。このように薄いポリマーコート層を形成するには、上記したディッピング溶液(ポリマー溶液)中のポリマー濃度を低くしておき、繰り返し塗布することで、薄くかつ均一なポリマーコート層を形成することができる。
負極活物質層には、導電助剤を含むことも好ましい。導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質100質量部に対して、2〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が2質量部未満では効率のよい導電パスを形成できず、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなる。
本発明の負極に用いられる酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)は、電解質を入れていない状態の水もしくは有機溶媒に分散させた場合、ゼータ電位を測定すると負になることがわかっている。この現象から、例えばポリエチレンイミンなどのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを用いる。こうすることで、負極活物質とポリマーとがクーロン力によって強固に結合する。そしてポリアクリル酸などのゼータ電位が負のアニオン性ポリマーを用いてカチオン性ポリマーからなる第一のポリマーコート層の上に第二のポリマーコート層を形成するのが好ましい。
こうして形成されたポリマーコート層は負極活物質との接合強度が高いため、負極活物質と電解液との直接接触を抑制することができる。またポリマーコート層の総厚がnmオーダーであれば、イオン伝導性の抵抗となることも抑制できる。したがって高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できる非水系二次電池を提供することができる。
ポリマーコート層を構成するポリマーは、結着部に対する被覆性も良好であるものが望ましい。したがってバインダーにはアニオン性のポリマーを用いることが好ましい。例えばバインダーにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いれば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)のゼータ電位は負であるので、ポリエチレンイミン(PEI)などカチオン性ポリマーの被覆性が向上する。
またバインダーとカチオン性ポリマーとの電位差は大きいほど好ましい。したがってバインダーにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合には、カチオン性ポリマーにカチオン化し易いポリエチレンイミン(PEI)を用いてゼータ電位が+20mV以上となるように溶媒を選ぶことが好ましい。
本発明の非水系二次電池は、本発明の負極を備え、正極及び電解液は、公知のものを用いることができる。正極は、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。正極は、集電体と、集電体上に結着された正極活物質層とを有する。正極活物質層は、正極活物質と、バインダーとを含み、さらには導電助剤を含んでも良い。正極活物質、導電助材およびバインダーは、特に限定はなく、非水系二次電池で使用可能なものであればよい。
非水系二次電池がリチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、金属リチウム、LiCoO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3O2、Li2MnO3、硫黄などが挙げられる。集電体は、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼など、リチウムイオン二次電池の正極に一般的に使用されるものであればよい。導電助剤およびバインダーは上記の負極で記載したものと同様のものが使用できる。
上記した正極及び負極を用いる本発明の非水系二次電池は、特に限定されない公知の電解液、セパレータを用いることができる。非水系二次電池がリチウムイオン二次電池の場合電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。電解液は、特に限定されない。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。また、溶解させる電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等のリチウム金属塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。また充放電時の膨張・収縮の繰り返しによる負極活物質層のクラックの補修用などに、電解液に添加剤を添加することもできる。このような添加剤のうち、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、フルオロベンゼン(FB)、ビニレンカーボネート(VC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、リチウム・ビスオキサレートボレート(LiBOB)、リチウム・ジフルオロオキサレートボレート(LiBF2(C2O4))から選ばれる少なくとも一種の添加剤が望ましい。これらの添加剤は、ポリマーコート層の存在によってその効果が発現しなくなるような不具合がない。すなわちポリマーコート層をもつ負極を用いるとともにこのような添加剤を電解液中に含むことで、電解液が分解しにくくなる効果がさらに補強されるため、繰り返し充放電後もさらに高い電池特性を維持することができる。
セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。また、これらの微多孔膜は無機物を主とする耐熱層が設けられていてもよく、用いられる無機物としては酸化アルミニウムや酸化チタンが好ましい。
本発明の非水系二次電池は、形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させて電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態を更に詳しく説明する。
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2が94質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)が3質量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)が3質量部と、を含む混合スラリーをアルミニウム箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させて約40μmの厚さの正極活物質層を形成した。その後120℃で12時間真空乾燥して正極を得た。
<負極の作製>
先ずSiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiOx粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
このSiOx粉末32質量部と、天然黒鉛50質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)8質量部と、結着剤としてのポリアミドイミド(PAI)10質量部とを混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層をもつ負極前駆体を作製した。
エチルアルコールにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1.0質量%となるように溶解させて、カチオン性ポリマー溶液を調製した。このカチオン性ポリマー溶液に上記負極前駆体を25℃で10分間浸漬させ、取り出して風乾させ下ポリマーコート層を形成した。次いで、エチルアルコールにポリアクリル酸が0.2質量%溶解したアニオン性ポリマー溶液に25℃で10分間浸漬させ、取り出して風乾させ上ポリマーコート層を形成した。この一連の操作を二回繰り返し、120℃で12時間真空乾燥してポリマーコート層をもつ負極を得た。
<リチウムイオン二次電池の作製>
非水電解液には、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とジメチルカーボネート(DMC)を3:3:4(体積%)で混合した有機溶媒に、LiPF6を1モルの濃度で溶解したものを用いた。
そして上記の正極および負極の間に、セパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルムを挟装して電極体とした。この電極体をポリプロピレン製ラミネートフィルムで包み込み、周囲を熱融着させてフィルム外装電池を作製した。最後の一辺を熱融着封止する前に上記の非水電解液を注入し、電極体に含浸させて、本実施例のリチウムイオン二次電池を作製した。
さらにフルオロエチレンカーボネート(FEC)を4.0質量%添加した非水電解液を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例1]
ポリマーコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の負極を用い、他は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
<試験例>
実施例1,2、比較例1のリチウムイオン二次電池を用い、それぞれ温度60℃、1CのCC充電の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、1CのCC放電で2.5Vにて放電するサイクルを200サイクル繰り返すサイクル試験を行った。
サイクル試験後の各リチウムイオン二次電池を用い、放電容量維持率をそれぞれ測定し、結果を図1に示す。放電容量維持率は、200サイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((200サイクル目の放電容量)/(初回の放電容量)×100)で求められる値である。
実施例1のリチウムイオン二次電池は、比較例1に比べて放電容量維持率が高い。これはポリマーコート層を形成した効果であることが明らかである。そして実施例2が実施例1より高い放電容量維持率を示していることもわかり、電解液中にフルオロエチレンカーボネート(FEC)を添加するのが好ましいことも明らかである。
本発明の非水系二次電池用負極は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用される非水系二次電池用正極として有用であり、その非水系二次電池は特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 集電体と該集電体に結着された負極活物質層とを含み、
    該負極活物質層は酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む負極活物質粒子と、該負極活物質粒子同士を結着するとともに該負極活物質粒子と該集電体とを結着する結着部と、少なくとも該負極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆するポリマーコート層とを含み、
    該ポリマーコート層は中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーを含み、
    前記ポリマーコート層は前記カチオン性ポリマーと中性条件でのゼータ電位が負のアニオン性ポリマーとが交互に積層されてなり、前記カチオン性ポリマーが前記負極活物質層側にコートされていることを特徴とする非水系二次電池用負極。
  2. 前記ポリマーコート層の厚さは10nm以下である請求項1に記載の非水系二次電池用負極。
  3. 前記カチオン性ポリマーのゼータ電位は+20mV以上である請求項1〜2のいずれかに記載の非水系二次電池用負極。
  4. 前記アニオン性ポリマーのゼータ電位は-10mV以下である請求項1〜3のいずれかに記載の非水系二次電池用負極。
  5. 酸化ケイ素(SiOx:xは0.5≦x≦1.6)を含む負極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して負極活物質層を形成する工程と、
    中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーが溶媒に溶解したカチオン性ポリマー溶液を該負極活物質層に塗布し乾燥して下ポリマーコート層を形成する工程と、
    次いで中性条件でのゼータ電位が負のアニオン性ポリマーが溶媒に溶解したアニオン性ポリマー溶液を塗布し乾燥して上ポリマーコート層を形成する工程と、を行うことを特徴とする非水系二次電池用負極の製造方法。
  6. 前記ポリマー溶液を塗布する工程はディッピング法にて行う請求項5に記載の非水系二次電池用負極の製造方法。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の前記負極を含むことを特徴とする非水系二次電池。
  8. 電解液にはフルオロエチレンカーボネートを含む電解液を有する請求項7に記載の非水系二次電池。
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