JP5812319B2 - 焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置 - Google Patents

焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、汚泥焼却灰等の焼却灰からリン酸カルシウムを製造する方法および装置に関し、特には、Alを含む焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置に関するものである。
従来、下水処理場で発生する下水汚泥などの汚泥を焼却して減量化した際に生じる汚泥焼却灰や、畜糞を焼却した際に生じる畜糞焼却灰等の焼却灰は、大部分が廃棄物として埋立処分されてきた。
しかし、下水汚泥焼却灰などの焼却灰には多量のリンが含まれているため、近年では、廃棄物である焼却灰からリンを回収し、世界的に枯渇が危惧されている資源の一つであるリン資源として再利用する手法が注目されている。
具体的には、図4に示すような、下水汚泥焼却灰に含まれているリンをアルカリ性反応液中に抽出して得たリン抽出液に対し、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物をカルシウム源として添加してリン抽出液中に含まれているリンをリン酸カルシウムとして析出させることで、下水汚泥焼却灰中のリンをリン酸カルシウムとして回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
そして、上記方法で回収されたリン酸カルシウムは、例えば、ク溶性リン酸濃度が高い緩効性肥料としてそのまま使用され、或いは、水溶性リン酸濃度が高い即効性肥料である過リン酸石灰の原料などとして使用されている。なお、過リン酸石灰とは、リン酸カルシウムを硫酸で処理した際に下記反応式(1)に従い生成する、第一リン酸カルシウム(Ca(HPO)・HO)と硫酸カルシウム(石膏、CaSO)との混合物である。
Ca(PO)+2HSO+2H
→ Ca(HPO)+2CaSO・2HO ・・・(1)
特開2007−246361号公報
しかし、上記従来のリン回収方法で得たリン酸カルシウムを原料として用いて過リン酸石灰を製造した場合、リン鉱石を原料として用いて過リン酸石灰を製造する場合と比較して過リン酸石灰の製造に必要な硫酸の量が増加し、コストが増大することがあった。また、得られる過リン酸石灰の性状が安定しないことがあった。
なお、このような硫酸使用量増加および過リン酸石灰の性状不安定化の傾向は、図4に示すように、リン抽出液からリン酸カルシウムを析出させた後に回収した反応液(回収反応液)を循環させてアルカリ性反応液として再利用している場合に特に顕著であった。
そのため、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得るリン酸カルシウムを焼却灰から製造する方法および装置を開発することが求められていた。
そこで、本発明者らは、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得るリン酸カルシウムを製造することを目的として鋭意研究を行った。その結果、本発明者らは、従来のリン回収方法では焼却灰に含まれているアルミニウムがリンの抽出時にアルカリ性反応液中にリンと共に抽出されており、リン抽出液から析出させたリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなっているため、硫酸使用量の増加および過リン酸石灰の性状不安定化が起きていることを見出した。また、特に、リン抽出液からリン酸カルシウムを析出させた後に回収した回収反応液を循環させてアルカリ性反応液として再利用している場合に、リン抽出液中のアルミニウム濃度が増加してリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなり易いことも見出した。そして、本発明者らは、リン酸カルシウムを析出させる前にリン抽出液からアルミニウムを除去して所望のリン酸カルシウムを製造するために更に鋭意検討を重ねた結果、リン抽出液に対してケイ素含有溶液を添加することでリン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩(xMO・yAl・zSiO・nHO;式中、x,y,z>0であり、Mはアルカリ金属元素またはアルカリ土類金属元素である)として選択的かつ容易に除去できることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は上記課題を有利に解決するものであり、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、アルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出工程と、前記リン抽出工程で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離工程と、前記第1の固液分離工程で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、ケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得るアルミノケイ酸塩析出工程と、前記アルミノケイ酸塩析出工程で得たアルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を固液分離する第2の固液分離工程と、前記第2の固液分離工程で分離したリン含有液と、カルシウム化合物とを混合して、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出工程とを含むことを特徴とする。このように、アルミノケイ酸塩析出工程でアルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、第2の固液分離工程でアルミノケイ酸塩を分離除去してからリン酸カルシウム析出工程でリン酸カルシウムを析出させれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得る、低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。
ここで、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記ケイ素含有溶液が、リンおよびケイ素を含有する焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記リンおよびケイ素を含有する焼却灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出して得たケイ素含有リン抽出液を少なくとも含むことが好ましい。ケイ素含有リン抽出液をケイ素含有溶液の少なくとも一部に用いれば、リン含有液中のリンの量を高めてリン酸カルシウム析出工程でリン酸カルシウムを効率的に析出させることができると共に、ケイ酸溶液などの市販のケイ素含有溶液を使用する場合と比較して低コストでアルミノケイ酸塩を析出させることができるからである。なお、本発明において、「リンおよびケイ素を含有する焼却灰」には、アルカリ性反応液を用いてリンを抽出した後に残る焼却灰(アルカリ処理灰等)も含まれる。
また、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記ケイ素含有溶液が、ケイ砂に対して水酸化ナトリウム水溶液を加えて得たケイ素回収溶液を少なくとも含むことが好ましい。ケイ素回収溶液をケイ素含有溶液の少なくとも一部に用いれば、ケイ酸溶液などの市販のケイ素含有溶液を使用する場合と比較して低コストでアルミノケイ酸塩を析出させることができるからである。
更に、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、前記アルミノケイ酸塩析出工程で、アルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有溶液とを、アルミニウム1molに対するケイ素の量が1.2〜2.0molとなるように混合することが好ましい。アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム1molに対するケイ素の量を1.2mol以上とすれば、効率的にアルミノケイ酸塩を析出させることができ、また、2.0mol以下とすれば、過剰に添加したケイ素がリン酸カルシウム析出工程でカルシウムと反応し、リン酸カルシウムの析出を阻害するのを防止することができるからである。
また、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法は、アルカリ性反応液を用いてリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出して得たリン抽出液に対しカルシウム化合物を添加してリン酸カルシウムを析出させると共に、該リン酸カルシウムを回収した後に残る回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用してリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウムを製造するリン酸カルシウムの製造方法であって、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、アルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出工程と、前記リン抽出工程で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離工程と、前記第1の固液分離工程で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、カルシウム化合物とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を得るリン酸カルシウム析出工程と、前記リン酸カルシウム析出工程で得たリン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を固液分離する最終固液分離工程と、前記最終固液分離工程で分離したアルミニウム含有反応液と、ケイ素含有溶液とを混合して、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る循環用アルミノケイ酸塩析出工程と、前記循環用アルミノケイ酸塩析出工程で得たアルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を固液分離する循環用固液分離工程とを含むことを特徴とする。通常、焼却灰中のアルミニウム含有量が多くなく、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム濃度が高くない場合には、アルミニウム含有リン抽出液からリン酸カルシウムを析出させても、リン酸カルシウム中のアルミニウム濃度は高くならない。しかし、そのようなアルミニウム含有量の少ない焼却灰からリン酸カルシウムを製造する場合であっても、リン酸カルシウムを析出させた後に回収した回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用した場合、循環させている回収反応液中のアルミニウム濃度が次第に高くなって、循環を繰り返すに従いリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなることがある。そこで、このように、循環用アルミノケイ酸塩析出工程でアルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、循環用固液分離工程でアルミノケイ酸塩を分離除去してから回収反応液を循環利用すれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得る、低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。
また、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、アルカリ性反応液供給手段を有し、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段で供給したアルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出槽と、前記アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離手段と、ケイ素含有溶液供給手段を有し、前記第1の固液分離手段で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、前記ケイ素含有溶液供給手段で供給したケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得るアルミノケイ酸塩析出槽と、前記アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を固液分離する第2の固液分離手段と、カルシウム化合物供給手段を有し、前記第2の固液分離手段で分離したリン含有液と、前記カルシウム化合物供給手段で供給したカルシウム化合物とを混合して、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽とを備えることを特徴とする。このように、アルミノケイ酸塩析出槽を設けてアルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、第2の固液分離手段でアルミノケイ酸塩を分離除去してからリン酸カルシウム析出槽でリン酸カルシウムを析出させれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得る、低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。
ここで、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、前記ケイ素含有溶液供給手段が、リンおよびケイ素を含有する焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記リンおよびケイ素を含有する焼却灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出してケイ素含有リン抽出液を調製するケイ素含有リン抽出液調製部を備え、前記ケイ素含有リン抽出液を少なくとも含むケイ素含有溶液を供給することが好ましい。ケイ素含有リン抽出液調製部で調製したケイ素含有リン抽出液をケイ素含有溶液の少なくとも一部に用いれば、リン含有液中のリンの量を高めてリン酸カルシウム析出槽でリン酸カルシウムを効率的に析出させることができると共に、ケイ酸溶液などの市販のケイ素含有溶液を使用する場合と比較して低コストでアルミノケイ酸塩を析出させることができるからである。なお、本発明において、「リンおよびケイ素を含有する焼却灰」には、アルカリ性反応液を用いてリンを抽出した後に残る焼却灰(アルカリ処理灰等)も含まれる。
また、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、前記ケイ素含有溶液供給手段が、ケイ砂に対して水酸化ナトリウム水溶液を加えてケイ素回収溶液を調製するケイ素回収溶液調製部を備え、前記ケイ素回収溶液を少なくとも含むケイ素含有溶液を供給することが好ましい。ケイ素回収溶液調製部で調製したケイ素回収溶液をケイ素含有溶液の少なくとも一部に用いれば、ケイ酸溶液などの市販のケイ素含有溶液を使用する場合と比較して低コストでアルミノケイ酸塩を析出させることができるからである。
更に、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置は、アルカリ性反応液を用いてリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出して得たリン抽出液に対しカルシウム化合物を添加してリン酸カルシウムを析出させると共に、該リン酸カルシウムを回収した後に残る回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用してリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウムを製造するリン酸カルシウムの製造装置であって、アルカリ性反応液供給手段を有し、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段で供給したアルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出槽と、前記アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離手段と、カルシウム化合物供給手段を有し、前記第1の固液分離手段で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、前記カルシウム化合物供給手段で供給したカルシウム化合物とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を得るリン酸カルシウム析出槽と、前記リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を固液分離する最終固液分離手段と、ケイ素含有溶液供給手段を有し、前記最終固液分離手段で分離したアルミニウム含有反応液と、前記ケイ素含有溶液供給手段で供給したケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る循環用アルミノケイ酸塩析出槽と、前記アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を固液分離する循環用固液分離手段とを備えることを特徴とする。通常、焼却灰中のアルミニウム含有量が多くなく、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム濃度が高くない場合には、アルミニウム含有リン抽出液からリン酸カルシウムを析出させても、リン酸カルシウム中のアルミニウム濃度は高くならない。しかし、そのようなアルミニウム含有量の少ない焼却灰からリン酸カルシウムを製造する場合であっても、リン酸カルシウムを析出させた後に回収した回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用した場合、循環させている回収反応液中のアルミニウム濃度が次第に高くなって、循環を繰り返すに従いリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなることがある。そこで、このように、循環用アルミノケイ酸塩析出槽を設けてアルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、循環用固液分離手段でアルミノケイ酸塩を分離除去してから回収反応液を循環利用すれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得る、低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。
本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置によれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得るリン酸カルシウムを製造することができる。
本発明に従う代表的なリン酸カルシウム製造方法を用いて焼却灰からリン酸カルシウムを製造する際の操作フローである。 本発明に従う他のリン酸カルシウム製造方法を用いて焼却灰からリン酸カルシウムを製造する際の操作フローである。 本発明に従う代表的なリン酸カルシウム製造装置の構成を示す説明図である。 回収反応液を循環させてアルカリ性反応液として再利用する従来のリン回収方法の一例の操作フローである。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明に係る焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置は、少なくともリン(P)およびアルミニウム(Al)を含有する焼却灰からリン酸カルシウムを製造する際に用いることができる。なお、本発明のリン酸カルシウムの製造方法および製造装置を用いてリン酸カルシウムを製造する際に用いる焼却灰としては、特に限定されることなく、下水処理場で発生する余剰汚泥等の下水汚泥を焼却した際に生じる下水汚泥焼却灰やし尿汚泥焼却灰等の汚泥焼却灰の他、畜糞焼却灰などを挙げることができる。
本発明に係る焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法の一例では、図1に実線で操作フローチャートを示すように、まず、下水汚泥焼却灰などのリン(P)、アルミニウム(Al)およびケイ素(Si)等を含有する汚泥焼却灰に対し、第1のリン抽出工程(S1)および第1の固液分離工程(S2)を順次実施して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰とを得る。次に、アルミニウム含有リン抽出液と、ケイ素含有溶液調製工程(S4)で調製したケイ素含有溶液とを用いてアルミノケイ酸塩析出工程(S3)を実施して、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得る。その後、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を第2の固液分離工程(S5)で固液分離する。そして最後に、リン含有液と、カルシウム化合物とを用いてリン酸カルシウム析出工程(S6)を実施し、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、最終固液分離工程(S7)でリン酸カルシウムと回収反応液とに分離する。
なお、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、任意に、第1の固液分離工程(S2)で得たアルカリ処理灰に対し、第2のリン抽出工程(S8)および第3の固液分離工程(S9)を順次実施して、ケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰とを得ることができる。そして、第3の固液分離工程(S9)で得たケイ素含有リン抽出液は、リン酸カルシウム析出工程(S6)を実施する前のリン含有液に添加することができ、アルカリ2回処理灰は、適当な無害化処理を施した後に、道路舗装材や下層路盤材などとして有効利用することができる。また、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、最終固液分離工程(S7)で得たリン酸カルシウムは、過リン酸石灰等を製造する際のリン鉱石代替原料等として利用することができ、回収反応液は、循環させてアルカリ性反応液として再利用することができる(図1では、回収反応液を第1のリン抽出工程(S1)のアルカリ性反応液として再利用する場合のフローを示す)。更に、第2の固液分離工程(S5)で得たアルミノケイ酸塩は、吸着材や土壌改良剤等として利用することができる。
ここで、第1のリン抽出工程(S1)は、汚泥焼却灰と、アルカリ性反応液とを例えばリン抽出槽内で撹拌混合し、汚泥焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムをアルカリ性反応液中に抽出することで、抽出されたリンおよびアルミニウムを含有するアルカリ性反応液からなるアルミニウム含有リン抽出液と、含有するリンおよびアルミニウムの一部が抽出された汚泥焼却灰からなるアルカリ処理灰との混合物を得る工程である。
なお、下水汚泥焼却灰などの汚泥焼却灰中には、通常、リン、アルミニウム、ケイ素、鉄などが酸化物の形態で存在しており、該酸化物の汚泥焼却灰中の存在比は例えばP:20〜30質量%、Al:20〜30質量%、SiO:20〜30質量%、Fe:10質量%程度である。そして、原理的には明らかではないが、リン、アルミニウムおよびケイ素を含有する汚泥焼却灰とアルカリ性反応液とを混合してリンを抽出した場合、1回目の抽出操作では主にリンとアルミニウムがアルカリ性反応液中に抽出され、ケイ素は殆ど抽出されない。従って、第1のリン抽出工程(S1)で得られるリン抽出液は、主にリンおよびアルミニウムを含むアルミニウム含有リン抽出液となる。また、アルカリ処理灰中には、第1のリン抽出工程(S1)で抽出されなかったリンおよびアルミニウム以外に、比較的大量のケイ素が残存することとなる。因みに、汚泥焼却灰に含まれているリンのアルカリ性反応液中への抽出は、汚泥焼却灰にPなどの形態で含まれているリンが、例えば下記反応式(2)に示すような反応によりアルカリ性反応液中へ溶出することで起きると推察されている。
+6OH → 2PO 3−+3HO ・・・(2)
ここで、この第1のリン抽出工程(S1)で使用するアルカリ性反応液としては、水酸化ナトリウム水溶液や、水酸化カリウム水溶液などを用いることができるが、コスト低減の観点からは水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましく、リンの抽出率を向上する観点からは濃度3質量%以上の水酸化ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。また、第1のリン抽出工程(S1)におけるアルカリ性反応液と汚泥焼却灰との混合条件(温度、時間など)は、汚泥焼却灰中のリンが十分に抽出される範囲で適宜変更することができ、アルカリ性反応液と汚泥焼却灰とは、例えば温度60℃で30分間混合することができる。
第1の固液分離工程(S2)は、第1のリン抽出工程(S1)で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰とに分離する工程である。
アルミノケイ酸塩析出工程(S3)は、第1の固液分離工程(S2)で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、ケイ素含有溶液とを例えばアルミノケイ酸塩析出槽内で撹拌混合し、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させる工程である。そして、このアルミノケイ酸塩析出工程(S3)では、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムとケイ素含有溶液中のケイ素とが反応して生成したアルミノケイ酸塩(ゼオライト等)と、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムがアルミノケイ酸塩として析出した後に残る溶液(リン含有液)との混合物が得られる。
なお、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)で使用するケイ素含有溶液としては、例えばケイ酸溶液など、ケイ素を含有する溶液であれば任意の溶液を用いることができるが、コストを低減する観点からは、後に詳細に説明するケイ素含有溶液調製工程(S4)においてケイ砂と水酸化ナトリウム水溶液とを用いて調製したケイ素回収溶液からなるケイ素含有溶液を用いることが好ましい。
そして、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)におけるアルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有溶液との混合条件(温度、時間など)は、アルミノケイ酸塩が十分に析出する範囲で適宜変更することができ、アルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有溶液とは、例えば温度20℃で60分間混合することができる。また、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)では、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム1molに対するケイ素の量が1.2〜2.0molとなるようにアルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有溶液とを混合することが好ましい。アルミニウム1molに対するケイ素の添加量を1.2mol以上とすれば、効率的にアルミノケイ酸塩を析出させることができ、また、2.0mol以下とすれば、過剰に添加したケイ素が後段のリン酸カルシウム析出工程(S6)においてカルシウム化合物と反応してリン酸カルシウムの析出を阻害するのを防止することができるからである。なお、液中のアルミニウム濃度およびケイ素濃度は、例えばICP発光分光光度計により測定することができる。
ケイ素含有溶液調製工程(S4)は、ケイ砂と水酸化ナトリウム水溶液とを例えばケイ素含有溶液調製槽内で撹拌混合して、ケイ素含有溶液としてのケイ素回収溶液を調製する工程である。そして、このケイ素含有溶液調製工程(S4)では、例えば所定の条件下でケイ砂と水酸化ナトリウム水溶液とを混合することにより、ケイ砂中に含まれているケイ素を水酸化ナトリウム水溶液中に抽出してなるケイ素回収溶液を調製することができる。なお、更にコストを低減する観点からは、ケイ砂として、下水汚泥等の汚泥を焼却する際に用いられる流動床式焼却炉から生じる廃流動砂(使用済みの流動砂)を用いることが好ましい。廃棄物を利用してケイ素回収溶液を調製し、該ケイ素回収溶液をケイ素含有溶液として使用すれば、より一層コストを低減することができるからである。
第2の固液分離工程(S5)は、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)で得たアルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてリン含有液とアルミノケイ酸塩とに分離する工程である。なお、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)で析出したアルミノケイ酸塩は、沈降性が非常に良好であり、分離し易い。
リン酸カルシウム析出工程(S6)は、第2の固液分離工程(S5)で得たリン含有液と、カルシウム源としてのカルシウム化合物とを、例えばリン酸カルシウム析出槽中において撹拌混合し、リン含有液中のリン(リン酸態リン)とカルシウム化合物由来のカルシウムとを反応させてリン酸カルシウムを析出させる工程である。そして、このリン酸カルシウム析出工程(S6)では、リン含有液中のリンとカルシウム化合物由来のカルシウムとが反応して生成したリン酸カルシウムと、リン含有液中のリンがリン酸カルシウムとして析出した後に残る溶液(回収反応液)との混合物が得られる。なお、リン含有液とカルシウム化合物との反応条件は、リン酸カルシウムが十分に析出し得る範囲で適宜変更することができ、例えばカルシウム化合物の添加量はリン含有液中のリンとの反応当量の1.3倍とすることができる。
このリン酸カルシウム析出工程(S6)で使用するカルシウム化合物としては、特に限定されることなく、水酸化カルシウム(Ca(OH))や、塩化カルシウム(CaCl)等を挙げることができる。そして、これらのカルシウム化合物は、固体状態、スラリー状態、溶液状態の何れの状態でリン含有液と混合しても良い。
なお、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、前述した通り、第1の固液分離工程(S2)で得たアルカリ処理灰中に残存しているリンも抽出してリン酸カルシウムの製造に用いる場合には、図1に実線で示すように、アルカリ処理灰からリンを抽出して得たリン抽出液(ケイ素含有リン抽出液)をリン含有液に混合してからリン酸カルシウム析出工程(S6)を実施しても良い。具体的には、アルカリ処理灰に対して第2のリン抽出工程(S8)および第3の固液分離工程(S9)を実施して得たケイ素含有リン抽出液を混合したリン含有液に対してリン酸カルシウム析出工程(S6)を実施しても良い。因みに、本発明のリン酸カルシウムの製造方法では、アルカリ処理灰からのリンの抽出を複数回行った場合には、それらの抽出液もリン含有液と混合することができる。
ここで、第2のリン抽出工程(S8)は、アルカリ処理灰と、アルカリ性反応液とを例えばリン抽出槽内で撹拌混合し、アルカリ処理灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出することで、抽出されたリンおよびケイ素を含有するアルカリ性反応液からなるケイ素含有リン抽出液と、含有するリンおよびケイ素の一部が抽出されたアルカリ処理灰からなるアルカリ2回処理灰との混合物を得る工程である。なお、第2のリン抽出工程(S8)では、特に限定されることなく、第1のリン抽出工程(S1)と同様の条件およびアルカリ性反応液を用いてリンの抽出を行うことができる。
なお、前述した通り、第1のリン抽出工程(S1)では汚泥焼却灰からケイ素は殆ど抽出されていないので、アルカリ処理灰中には比較的多量のケイ素が残存している。そして、原理的には明らかではないが、リンおよびケイ素を含有するアルカリ処理灰とアルカリ性反応液とを混合してリンを抽出した場合、1回目の抽出操作では抽出されなかったケイ素とリンとがアルカリ性反応液中に抽出される一方で、アルミニウムは殆ど抽出されない。即ち、第2のリン抽出工程(S8)で得られるリン抽出液は、主にリンおよびケイ素を含むケイ素含有リン抽出液となる。
また、第3の固液分離工程(S9)は、第2のリン抽出工程(S8)で得たケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰とに分離する工程である。
リン酸カルシウム析出工程(S6)の後に実施する最終固液分離工程(S7)は、リン酸カルシウム析出工程(S6)で得たリン酸カルシウムと回収反応液との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてリン酸カルシウムと回収反応液とに分離する工程である。
そして、この一例のリン酸カルシウムの製造方法によれば、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)でアルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、第2の固液分離工程(S5)でアルミノケイ酸塩を分離除去してからリン酸カルシウム析出工程(S6)でリン酸カルシウムを析出させているので、Alを含有する汚泥焼却灰から低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。従って、過リン酸石灰を製造する際にリン酸カルシウム中に含まれているアルミニウムと硫酸とが反応して硫酸が消費されるのを防止することができるので、硫酸使用量の増加を抑制することができる。また、リン酸カルシウム中の高いアルミニウム濃度に起因して、過リン酸石灰中の水溶性リン酸の濃度が経時的に漸減したりする(即ち、過リン酸石灰の性状が不安定化する)のを抑制することができる。なお、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)ではアルミノケイ酸塩が選択的に析出するので、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)でアルミニウム含有リン抽出液中のリンが析出してリン酸カルシウム析出工程(S6)でのリン酸カルシウムの析出量が減少することはない。
ここで、一般に、リン鉱石は過リン酸石灰以外の各種リン肥料の製造にも用いられている。そして、リン鉱石から各種リン肥料を製造する場合には、リン鉱石を硫酸で溶解した後に精製してから各種リン肥料を調製するが、その精製時には有用な副生成物として石膏が生じることが知られている。また、石膏は、アルミニウムが大量に存在している条件下では析出し難くなることも知られている。ここで、この一例のリン酸カルシウムの製造方法で製造したリン酸カルシウムは、上述した通りAl濃度が低い。従って、この製造方法で製造したリン酸カルシウムは、各種リン肥料の原料として用いた際に副生成物である石膏の析出を阻害し難い。よって、この製造方法で製造したリン酸カルシウムは、過リン酸石灰の原料として適しているだけでなく、他の各種リン肥料の原料としても適している。
また、この一例のリン酸カルシウムの製造方法では、アルカリ処理灰に対して第2のリン抽出工程(S8)を実施しているので、単位質量当たりの汚泥焼却灰から製造できるリン酸カルシウムの量を増加させることができる。更に、第2のリン抽出工程(S8)および第3の固液分離工程(S9)で得られるケイ素含有リン抽出液中のリン濃度は比較的低いが、リン含有液とケイ素含有リン抽出液とを混合してからリン酸カルシウムを析出させているので、リン含有液のリン含有量を高めると共に、リン含有液とケイ素含有リン抽出液とのリン濃度を平準化して効率的にリン酸カルシウムを析出させることができる。なお、ケイ素含有リン抽出液中のアルミニウム濃度はアルミニウム含有リン抽出液よりも低いが、この一例では、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)の後でリン含有液とケイ素含有リン抽出液とを混合しているので、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)では、アルミニウム濃度の高いアルミニウム含有リン抽出液から効率的にアルミノケイ酸塩を析出させることができる。更に、リンの抽出時に汚泥焼却灰およびアルカリ処理灰からヒ素等の有害物質もリンと一緒に抽出されるので、土壌改良材として利用できる程度の清浄な処理灰を得ることができる。
次に、上記一例の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法の変形例の操作フローチャートを図1に破線を用いて示す。この変形例のリン酸カルシウムの製造方法は、第3の固液分離工程(S9)で得たケイ素含有リン抽出液をケイ素含有溶液の一部として利用しており(図1の破線参照)、ケイ素含有リン抽出液とリン含有液とを直接混合していない点で先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と異なっており、他の点では先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と同様に構成されている。なお、この変形例のリン酸カルシウムの製造方法では、第1のリン抽出工程〜第3の固液分離工程の各工程は、先の一例の各工程と同様にして実施することができる。
ここで、ケイ素含有リン抽出液中には、アルカリ処理灰から抽出されたケイ素がケイ酸などの形態で存在していると推察される。従って、ケイ素含有溶液調製工程(S4)で得たケイ素回収溶液と、第3の固液分離工程(S9)で分離したケイ素含有リン抽出液との混合物をケイ素含有溶液として用いているこの変形例のリン酸カルシウムの製造方法では、ケイ素含有リン抽出液中のケイ素もアルミノケイ酸塩析出工程(S3)におけるアルミノケイ酸塩の生成反応に使用することができる。そのため、この変形例のリン酸カルシウムの製造方法では、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)で使用するケイ素回収溶液の量を先の一例よりも低減して、低コストでアルミニウムを除去することができる。なお、本発明のリン酸カルシウムの製造方法では、ケイ素含有リン抽出液中のケイ素濃度が十分に高ければ、ケイ素回収溶液を使用することなく、ケイ素含有リン抽出液のみをケイ素含有溶液として使用しても良い。また、ケイ素含有リン抽出液は、アルカリ処理灰からの抽出液に限定されることはなく、アルカリ性反応液を用いてケイ素およびリンを含有する汚泥焼却灰から得られる、ケイ素を含有するリン抽出液であれば任意の抽出液を用いることができる。
更に、この変形例のリン酸カルシウムの製造方法では、ケイ素含有リン抽出液中のケイ素をアルミノケイ酸塩の析出反応に使用しているので、ケイ素含有リン抽出液とリン含有液とを直接混合している先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と比較して、リン酸カルシウム析出工程(S6)におけるリン含有液中のケイ素量は少ない。従って、リン酸カルシウムの析出が液中のケイ素によって阻害され難い。
そして、この変形例のリン酸カルシウムの製造方法では、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と同様に、Alを含有する汚泥焼却灰から低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。従って、製造したリン酸カルシウムを用いて過リン酸石灰を製造する際の硫酸使用量の増加を抑制することができると共に、安定した性状の過リン酸石灰を製造することができる。また、この製造方法で製造したリン酸カルシウムは、過リン酸石灰の原料として適しているだけでなく、他の各種リン肥料の原料としても適している。更に、単位質量当たりの汚泥焼却灰から製造できるリン酸カルシウムの量を増加させることができると共に、リン酸カルシウムを析出させる際の溶液中のリン濃度を平準化して効率的にリン酸カルシウムを析出させることができる。また、ヒ素等の有害物質もリンと一緒に抽出して、清浄な処理灰を得ることができる。
なお、本発明の汚泥焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法では、汚泥焼却灰中のアルミニウム濃度が低い場合には、上記一例および変形例のように毎回アルミニウムを除去しなくても良く、例えば、回収反応液の循環により液中のアルミニウム濃度が高くなり、析出したリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなった場合にアルミニウムを除去するようにしても良い。
次に、本発明に係る焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法の他の例の操作フローチャートを図2に示す。この他の例のリン酸カルシウムの製造方法は、アルミニウム含有量が少ない焼却灰からリン酸を製造する際に好適に用いることができ、リン酸カルシウムを析出させた後に回収した回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用する場合に、循環させている回収反応液中のアルミニウム濃度が次第に高くなって、循環を繰り返すに従いリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなるのを防止し得るものである。そして、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、アルカリ性反応液を用いてリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出して得たリン抽出液に対しカルシウム化合物を添加してリン酸カルシウムを析出させると共に、該リン酸カルシウムを回収した後に残る回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用してリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウムを製造する。
具体的には、まず、下水汚泥焼却灰などのリン(P)、アルミニウム(Al)およびケイ素(Si)等を含有する汚泥焼却灰に対し、第1のリン抽出工程(S11)および第1の固液分離工程(S12)を順次実施して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰とを得る。次に、アルミニウム含有リン抽出液と、カルシウム化合物とを用いてリン酸カルシウム析出工程(S13)を実施し、アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を得る。その後、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を最終固液分離工程(S14)で固液分離し、得られたアルミニウム含有反応液と、ケイ素含有溶液調製工程(S15)で調製したケイ素含有溶液とを用いて循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)を実施して、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る。そして、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を循環用固液分離工程(S17)で固液分離し、得られた回収反応液をアルカリ性反応液として用いて新しい汚泥焼却灰からリンを抽出し、再びリン酸カルシウムを製造する。即ち、回収反応液をアルカリ性反応液として用いて第1のリン抽出工程(S11)〜循環用固液分離工程(S17)を繰り返し実施する。
なお、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、任意に、第1の固液分離工程(S12)で得たアルカリ処理灰に対し、第2のリン抽出工程(S18)および第3の固液分離工程(S19)を順次実施して、ケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰とを得ることができる。そして、第3の固液分離工程(S19)で得たケイ素含有リン抽出液は、リン酸カルシウム析出工程(S13)を実施する前のアルミニウム含有リン抽出液に添加することができ、アルカリ2回処理灰は、適当な無害化処理を施した後に、道路舗装材や下層路盤材などとして有効利用することができる。また、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、最終固液分離工程(S14)で得たリン酸カルシウムは、過リン酸石灰を製造する際のリン鉱石代替原料等として利用することができる。更に、循環用固液分離工程(S17)で得たアルミノケイ酸塩は、吸着材や土壌改良剤等として利用することができる。因みに、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム濃度が低いので、リン酸カルシウム析出工程(S13)を実施する前にアルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有リン抽出液とを混合してもアルミノケイ酸塩の析出は殆ど起こらない。
ここで、第1のリン抽出工程(S11)は、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と同様に、汚泥焼却灰と、アルカリ性反応液とを例えばリン抽出槽内で撹拌混合し、汚泥焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムをアルカリ性反応液中に抽出することで、抽出されたリンおよびアルミニウムを含有するアルカリ性反応液からなるアルミニウム含有リン抽出液と、含有するリンおよびアルミニウムの一部が抽出された汚泥焼却灰からなるアルカリ処理灰との混合物を得る工程である。そして、この第1のリン抽出工程(S11)は、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法のリン抽出工程(S1)と同様にして実施することができる。
第1の固液分離工程(S12)は、第1のリン抽出工程(S11)で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰とに分離する工程である。
リン酸カルシウム析出工程(S13)は、第1の固液分離工程(S12)で得たアルミニウム含有リン抽出液と、カルシウム源としてのカルシウム化合物とを、例えばリン酸カルシウム析出槽中において撹拌混合し、リン含有液中のリン(リン酸態リン)とカルシウム化合物由来のカルシウムとを反応させてリン酸カルシウムを析出させる工程である。そして、このリン酸カルシウム析出工程(S13)では、アルミニウム含有リン抽出液中のリンとカルシウム化合物由来のカルシウムとが反応して生成したリン酸カルシウムと、アルミニウム含有リン抽出液中のリンがリン酸カルシウムとして析出した後に残る溶液(アルミニウム含有反応液)との混合物が得られる。なお、アルミニウム含有リン抽出液とカルシウム化合物との反応条件は、リン酸カルシウムが十分に析出し得る範囲で適宜変更することができ、例えばカルシウム化合物の添加量はアルミニウム含有リン抽出液中のリンとの反応当量の1.3倍とすることができる。また、カルシウム化合物としては、特に限定されることなく、水酸化カルシウムや、塩化カルシウム等を、固体状態、スラリー状態または溶液状態の何れかの状態で用いることができる。
なお、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、前述した通り、第1の固液分離工程(S12)で得たアルカリ処理灰中に残存しているリンも抽出してリン酸カルシウムの製造に用いる場合には、図2に示すように、アルカリ処理灰からリンを抽出して得たリン抽出液(ケイ素含有リン抽出液)をアルミニウム含有リン抽出液に混合してからリン酸カルシウム析出工程(S13)を実施しても良い。具体的には、アルカリ処理灰に対して第2のリン抽出工程(S18)および第3の固液分離工程(S19)を実施して得たケイ素含有リン抽出液を混合した混合液に対してリン酸カルシウム析出工程(S13)を実施しても良い。因みに、本発明のリン酸カルシウムの製造方法では、アルカリ処理灰からのリンの抽出を複数回行った場合には、それらの抽出液もアルミニウム含有リン抽出液と混合することができる。
なお、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、汚泥焼却灰中のアルミニウム濃度が低く、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウム濃度も低いので、このリン酸カルシウム析出工程(S13)で析出させたリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度は低くなる。従って、このリン酸カルシウム析出工程で析出したリン酸カルシウムは、過リン酸石灰の原料等として好適に用いることができる。
ここで、第2のリン抽出工程(S18)は、アルカリ処理灰と、アルカリ性反応液とを例えばリン抽出槽内で撹拌混合し、アルカリ処理灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出することで、抽出されたリンおよびケイ素を含有するアルカリ性反応液からなるケイ素含有リン抽出液と、含有するリンおよびケイ素の一部が抽出されたアルカリ処理灰からなるアルカリ2回処理灰との混合物を得る工程である。なお、第2のリン抽出工程(S18)では、特に限定されることなく、第1のリン抽出工程(S11)と同様の条件およびアルカリ性反応液を用いてリンの抽出を行うことができる。
なお、第2のリン抽出工程(S18)で得られるリン抽出液は、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と同様に、主にリンおよびケイ素を含むケイ素含有リン抽出液となる。
また、第3の固液分離工程(S19)は、第2のリン抽出工程(S18)で得たケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰とに分離する工程である。
最終固液分離工程(S14)は、リン酸カルシウム析出工程(S13)で得たアルミニウム含有反応液とリン酸カルシウムとの混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いてアルミニウム含有反応液とリン酸カルシウムとに分離する工程である。
循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)は、最終固液分離工程(S14)で分離したアルミニウム含有反応液と、ケイ素含有溶液とを例えば循環用アルミノケイ酸塩析出槽内で撹拌混合し、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させる工程である。そして、この循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)では、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムとケイ素含有溶液中のケイ素とが反応して生成したアルミノケイ酸塩(ゼオライト等)と、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムがアルミノケイ酸塩として析出した後に残る溶液(回収反応液)との混合物が得られる。
なお、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)で使用するケイ素含有溶液としては、例えばケイ酸溶液など、ケイ素を含有する溶液であれば任意の溶液を用いることができるが、コストを低減する観点からは、ケイ素含有溶液調製工程(S15)においてケイ砂と水酸化ナトリウム水溶液とを用いて調製したケイ素回収溶液からなるケイ素含有溶液を用いることが好ましい。なお、ケイ素含有溶液調製工程(S15)におけるケイ素含有溶液の調製は、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法のケイ素含有溶液調製工程(S4)と同様にして行うことができる。
循環用固液分離工程(S17)は、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)で得たアルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を、例えば沈降分離やろ過などの既知の固液分離手段を用いて回収反応液とアルミノケイ酸塩とに分離する工程である。なお、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)で析出したアルミノケイ酸塩は、沈降性が非常に良好であり、分離し易い。
そして、循環用固液分離工程(S17)で得た回収反応液は、アルカリ性反応液として循環利用され、汚泥焼却灰からのリンの抽出に用いられる。ここで、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)および循環用固液分離工程(S17)の実施により回収反応液中のアルミニウム濃度は低くなっているので、該回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用した際にアルミニウムが回収反応液中に蓄積されていくことはなく、回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用した際のリン抽出液中のアルミニウム濃度は低くなる。従って、該リン抽出液から析出させたリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度も低くなる。
よって、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法によれば、回収反応液を循環利用した場合であっても、循環を繰り返すことでリン酸カルシウム中のアルミニウム濃度が高くなるのを防止し、低Al濃度のリン酸カルシウムを製造することができる。従って、過リン酸石灰を製造する際にリン酸カルシウム中に含まれているアルミニウムと硫酸とが反応して硫酸が消費されるのを防止することができるので、硫酸使用量の増加を抑制することができる。また、リン酸カルシウム中の高いアルミニウム濃度に起因して、過リン酸石灰中の水溶性リン酸の濃度が経時的に漸減したりする(即ち、過リン酸石灰の性状が不安定化する)のを抑制することができる。なお、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法で製造したリン酸カルシウムは、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法で製造したリン酸カルシウムと同様に、過リン酸石灰の原料として適しているだけでなく、他の各種リン肥料の原料としても適している。
また、この他の例のリン酸カルシウムの製造方法では、先の一例のリン酸カルシウムの製造方法と同様に、アルカリ処理灰に対して第2のリン抽出工程(S18)を実施しているので、単位質量当たりの汚泥焼却灰から製造できるリン酸カルシウムの量を増加させることができる。更に、第2のリン抽出工程(S18)および第3の固液分離工程(S19)で得られるケイ素含有リン抽出液中のリン濃度は比較的低いが、アルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有リン抽出液とを混合してからリン酸カルシウムを析出させているので、アルミニウム含有リン抽出液のリン含有量を高めると共に、アルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有リン抽出液とのリン濃度を平準化して効率的にリン酸カルシウムを析出させることができる。また、リンの抽出時に汚泥焼却灰およびアルカリ処理灰からヒ素等の有害物質もリンと一緒に抽出されるので、土壌改良材として利用できる程度の清浄な処理灰を得ることができる。
そして、上記一例、変形例および他の例のリン酸カルシウムの製造方法は、特に限定されることなく、例えば図3に示すようなリン酸カルシウム製造装置1を用いて実施することができる。
ここで、このリン酸カルシウム製造装置1は、第1のリン抽出工程(S1,S11)、第1の固液分離工程(S2,S12)、第2のリン抽出工程(S8,S18)および第3の固液分離工程(S9,S19)を実施するリン抽出部10と、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)、第2の固液分離工程(S5)、リン酸カルシウム析出工程(S6)および最終固液分離工程(S7)、或いは、リン酸カルシウム析出工程(S13)、最終固液分離工程(S14)、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)および循環用固液分離工程(S17)を実施する析出反応部20とで構成されている。
リン抽出部10は、下部に沈降部12が形成されたリン抽出槽11と、リン抽出槽11の内部から液体を吸引する吸引ポンプ15と、リン抽出槽11内を撹拌する撹拌機13と、リン抽出槽11内にアルカリ性反応液を供給するアルカリ性反応液供給ポンプ14と、下部抜き出しバルブ16とを備えている。
ここで、このリン抽出部10では、アルカリ性反応液供給ポンプ14から供給したアルカリ性反応液と、リン、ケイ素およびアルミニウムを含有する汚泥焼却灰とをリン抽出槽11内で混合することにより、汚泥焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムをアルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得ることができる(第1のリン抽出工程)。そして、次に、沈降部12にアルカリ処理灰を沈降させた後、吸引ポンプ15で槽内のアルミニウム含有リン抽出液を抜き出すと共に、下部抜き出しバルブ16を開いて沈降したアルカリ処理灰を抜き出すことにより、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離することができる(第1の固液分離工程)。なお、リン抽出部10で第1のリン抽出工程および第1の固液分離工程を実施する際には、アルカリ性反応液供給ポンプ14が、アルカリ性反応液を供給するアルカリ性反応液供給手段として機能し、沈降部12、吸引ポンプ15および下部抜き出しバルブ16が、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離手段として機能する。
なお、このリン抽出部10では、アルカリ性反応液供給ポンプ14から供給したアルカリ性反応液と、アルカリ処理灰とをリン抽出槽11内で混合することにより、アルカリ処理灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出して、ケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰との混合物を得ることもできる(第2のリン抽出工程)。そして更に、沈降部12にアルカリ2回処理灰を沈降させた後、吸引ポンプ15で槽内のケイ素含有リン抽出液を抜き出すと共に、下部抜き出しバルブ16を開いて沈降したアルカリ2回処理灰を抜き出すことにより、ケイ素含有リン抽出液とアルカリ2回処理灰との混合物を固液分離することもできる(第3の固液分離工程)。そして、上記変形例のリン酸カルシウムの製造方法のように第2のリン抽出工程および第3の固液分離工程を実施して得たケイ素含有リン抽出液をケイ素含有溶液の一部としてアルミノケイ酸塩析出工程に用いる際には(図1の破線参照)、リン抽出部10は、リンおよびケイ素を含有する汚泥焼却灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出してケイ素含有リン抽出液を調製するケイ素含有リン抽出液調製部として機能することとなる。
また、析出反応部20は、下部に沈降部22が形成された析出反応槽21と、析出反応槽21の内部から液体を吸引する吸引ポンプ26と、析出反応槽21内を撹拌する撹拌機23と、析出反応槽21内にケイ素含有溶液を供給するケイ素含有溶液供給ポンプ24と、析出反応槽21内にカルシウム化合物を供給するホッパー25と、下部抜き出しバルブ27とを備えている。なお、ケイ素含有溶液供給ポンプ24へは、図示しないケイ素回収溶液調製部からケイ素回収溶液が供給され、このケイ素回収溶液調製部では、ケイ砂に対して水酸化ナトリウム水溶液を加えることでケイ素回収溶液が調製されている。
ここで、この析出反応部20では、アルミノケイ酸塩析出工程(S3)、第2の固液分離工程(S5)、リン酸カルシウム析出工程(S6)および最終固液分離工程(S7)を実施する場合、まず、ケイ素含有溶液供給ポンプ24から供給したケイ素含有溶液(ケイ素回収溶液)と、第1の固液分離工程においてリン抽出槽11から吸引ポンプ15で抜き出したアルミニウム含有リン抽出液と、任意に第3の固液分離工程においてリン抽出槽11から吸引ポンプ15で抜き出したケイ素含有リン抽出液とを析出反応槽21内で混合することにより、アルミニウム含有リン抽出液中に含まれているアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させる(アルミノケイ酸塩析出工程)。そして、次に、析出したアルミノケイ酸塩を沈降部22に沈降させた後、下部抜き出しバルブ27を開いて沈降したアルミノケイ酸塩を抜き出すことにより、リン含有液とアルミノケイ酸塩との混合物を固液分離することができる(第2の固液分離工程)。なお、アルミノケイ酸塩析出工程および第2の固液分離工程を実施する際には、析出反応槽21が、アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得るアルミノケイ酸塩析出槽として機能し、ケイ素含有溶液供給ポンプ24が、ケイ素含有溶液を供給するケイ素含有溶液供給手段として機能し、沈降部22および下部抜き出しバルブ27が、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を固液分離する第2の固液分離手段として機能する。
更に、この析出反応部20では、下部抜き出しバルブ27を開いてアルミノケイ酸塩を抜き出した後に残るリン含有液に対し、ホッパー25からカルシウム化合物を供給してリン含有液とカルシウム化合物とを混合することにより、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させることができる(リン酸カルシウム析出工程)。そして、次に、析出したリン酸カルシウムを沈降部22に沈降させた後、吸引ポンプ26で槽内の反応液を抜き出すと共に、下部抜き出しバルブ27を開いて沈降したリン酸カルシウムを抜き出すことにより、反応液とリン酸カルシウムとの混合物を固液分離することができる(最終固液分離工程)。なお、リン酸カルシウム析出工程および最終固液分離工程を実施する際には、析出反応槽21が、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽として機能し、ホッパー25が、カルシウム化合物を供給するカルシウム化合物供給手段として機能する。因みに、吸引ポンプ26で抜き出した反応液(回収反応液)は、アルカリ性反応液としてリン抽出部10でのリン抽出に再利用することができる。
また、この析出反応部20では、リン酸カルシウム析出工程(S13)、最終固液分離工程(S14)、循環用アルミノケイ酸塩析出工程(S16)および循環用固液分離工程(S17)を実施する場合、まず、第1の固液分離工程においてリン抽出槽11から吸引ポンプ15で抜き出したアルミニウム含有リン抽出液と、ホッパー25から供給したカルシウム化合物と、任意に第3の固液分離工程においてリン抽出槽11から吸引ポンプ15で抜き出したケイ素含有リン抽出液とを混合することにより、アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させる(リン酸カルシウム析出工程)。そして、次に、析出したリン酸カルシウムを沈降部22に沈降させた後、下部抜き出しバルブ27を開いて沈降したリン酸カルシウムを抜き出すことにより、アルミニウム含有反応液とリン酸カルシウムとの混合物を固液分離することができる(最終固液分離工程)。なお、リン酸カルシウム析出工程および最終固液分離工程を実施する際には、析出反応槽21が、アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽として機能し、ホッパー25が、カルシウム化合物を供給するカルシウム化合物供給手段として機能し、沈降部22および下部抜き出しバルブ27が、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を固液分離する最終固液分離手段として機能する。
更に、この析出反応部20では、下部抜き出しバルブ27を開いてリン酸カルシウムを抜き出した後に残るアルミニウム含有反応液に対し、ケイ素含有溶液をケイ素含有溶液供給ポンプ24から供給し、析出反応槽21内でアルミニウム含有反応液とケイ素含有溶液とを混合することにより、アルミニウム含有反応液中に含まれているアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させる(循環用アルミノケイ酸塩析出工程)。そして、次に、析出したアルミノケイ酸塩を沈降部22に沈降させた後、下部抜き出しバルブ27を開いて沈降したアルミノケイ酸塩を抜き出すことにより、回収反応液とアルミノケイ酸塩との混合物を固液分離することができる(循環用固液分離工程)。そして、得られた回収反応液は、図示しないポンプ等の循環手段でリン抽出部10のリン抽出槽11へと循環させ、アルカリ性反応液として利用する。なお、循環用アルミノケイ酸塩析出工程および循環用固液分離工程を実施する際には、析出反応槽21が、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る循環用アルミノケイ酸塩析出槽として機能し、ケイ素含有溶液供給ポンプ24が、ケイ素含有溶液を供給するケイ素含有溶液供給手段として機能し、沈降部22および下部抜き出しバルブ27が、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を固液分離する循環用固液分離手段として機能する。
なお、このリン酸カルシウム製造装置1では、リン抽出部10はケイ素含有リン抽出液調製部として機能させなくても良く、ケイ素含有リン抽出液は、上記一例のリン酸カルシウムの製造方法のようにリン酸カルシウム析出工程(S6)の直前に析出反応槽21に供給しても良い。
なお、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法およびリン酸カルシウムの製造装置は、上記した例に限定されることなく、本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置には、適宜変更を加えることができる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
図1に破線で示す操作フローに従い、汚泥焼却灰からリン酸カルシウムを製造した。
なお、汚泥焼却灰としては、表1に示す組成の下水汚泥焼却灰Aを用いた。また、第1のリン抽出工程および第2のリン抽出工程では、下水汚泥焼却灰25g当たり250mLの水酸化ナトリウム水溶液(濃度:1mol/L)をアルカリ性反応液として添加し、温度60℃で30分間混合してリンを抽出した。更に、ケイ素含有溶液調製工程では、ケイ砂からケイ素含有溶液を調製する代わりに市販のコロイダルシリカ溶液からケイ素含有溶液(ケイ素(Si)濃度:5.0g/L)を調製した。また、アルミノケイ酸塩析出工程では、アルミニウム含有リン抽出液(Al濃度:4.0g/L、P濃度:7.7g/L、Si濃度:0.06g/L)250mLに対して、ケイ素含有溶液250mL、ケイ素含有リン抽出液(Al濃度:0.4g/L、P濃度:3.8g/L、Si濃度:0.88g/L)175mLを添加し、温度20℃で60分間混合してアルミノケイ酸塩を析出させた。更に、リン酸カルシウム析出工程では、リン含有液(P濃度:3.4g/L)に対し、反応当量の1.3倍の水酸化カルシウム(固体)を添加し、温度20℃で6時間混合してリン酸カルシウムを析出させた。なお、第1〜第3の固液分離工程および最終固液分離工程では吸引ろ過を用いて固液分離を行った。
そして、得られたリン酸カルシウム7.6gのうちの5.0gに対し、表2に示す添加量で硫酸(濃度:70質量%)を添加し、温度100℃で21日間反応させて過リン酸石灰を製造した。
アルミニウム除去率、リン酸カルシウム中の酸化アルミニウム(Al)量、リン酸カルシウム析出率、得られた過リン酸石灰の量および過リン酸石灰中の水溶性リン酸濃度の経時変化を下記の評価方法に従い評価した。結果を表2に示す。また、硫酸添加量1mLあたりの得られた過リン酸石灰の量および水溶性リン酸濃度を算出した結果を表2に示す。
Figure 0005812319
<アルミニウム除去率>
アルミニウム含有リン抽出液およびリン含有液のアルミニウム濃度をICP発光分光光度計で測定し、以下の式(3)を用いてアルミニウム除去率を算出した。
アルミニウム除去率={(アルミニウム含有リン抽出液のAl濃度−リン含有液のAl濃度)/アルミニウム含有リン抽出液のAl濃度}×100 ・・・(3)
<酸化アルミニウム量>
まず、得られたリン酸カルシウムを所定量の王水で分解し、液体試料を調製した。次に、調製した液体試料のAl濃度をICP発光分光光度計で測定した。そして、リン酸カルシウム中のAlは全て酸化アルミニウムの形態で存在していると仮定し、測定した液体試料のAl濃度からリン酸カルシウム1kg中に含まれている酸化アルミニウムの量を算出した。
<リン酸カルシウム析出率>
リン含有液および回収反応液のリン濃度をICP発光分光光度計で測定し、以下の式(4)を用いてリン酸カルシウム析出率を算出した。
リン酸カルシウム析出率={1−(回収反応液のリン濃度/リン含有液のリン濃度)}×100 ・・・(4)
<過リン酸石灰の量>
リン酸カルシウム5.0gから製造された過リン酸石灰の重量を測定した。
<過リン酸石灰中の水溶性リン酸濃度>
得られた過リン酸石灰について、硫酸添加後1日、3日、7日、14日、21日の水溶性リン酸(W−P)濃度をICP発光分光光度計を用いて測定した。具体的には、まず、過リン酸石灰と蒸留水とを過リン酸石灰(質量):蒸留水(体積)=1:20となるように容器内に封入し、常温で30分間振とうした(平行振とう、振とう幅:4cm)。次に、振とう後の過リン酸石灰と蒸留水との混合物をメンブランフィルター(孔径:0.45μm)でろ過した。そして、得られたろ液中のリン濃度をICP発光分光光度計で測定し、P濃度に換算して水溶性リン酸濃度とした。
(実施例2)
ケイ素含有溶液調製工程で調製したケイ素含有溶液のケイ素濃度を7.5g/Lとした以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムを製造した。また、硫酸添加量を表2に示す量とした以外は実施例1と同様にして、製造したリン酸カルシウムから過リン酸石灰を製造した。
そして、アルミニウム除去率、リン酸カルシウム中の酸化アルミニウム(Al)量、リン酸カルシウム析出率、得られた過リン酸石灰の量および過リン酸石灰中の水溶性リン酸濃度の経時変化を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。また、硫酸添加量1mLあたりの得られた過リン酸石灰の量および水溶性リン酸濃度を算出した結果を表2に示す。
(比較例1)
ケイ素含有溶液をアルミニウム含有リン抽出液に添加せず、アルミノケイ酸塩析出工程を実施しなかった以外は実施例1と同様にしてリン酸カルシウムを製造した。また、硫酸添加量を表2に示す量とした以外は実施例1と同様にして、製造したリン酸カルシウムから過リン酸石灰を製造した。
そして、アルミニウム除去率、リン酸カルシウム中の酸化アルミニウム(Al)量、リン酸カルシウム析出率、得られた過リン酸石灰の量および過リン酸石灰中の水溶性リン酸濃度の経時変化を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。また、硫酸添加量1mLあたりの得られた過リン酸石灰の量および水溶性リン酸濃度を算出した結果を表2に示す。
(参考例1)
市販のリン鉱石(リン酸カルシウム)中の酸化アルミニウム(Al)量を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。
また、市販のリン鉱石5.0gに対し、表2に示す添加量で硫酸(濃度:70質量%)を添加し、温度100℃で21日間反応させて過リン酸石灰を製造した。そして、リン鉱石中の酸化アルミニウム(Al)量、得られた過リン酸石灰の量および過リン酸石灰中の水溶性リン酸濃度の経時変化を実施例1と同様にして評価した。結果を表2に示す。また、硫酸添加量1mLあたりの得られた過リン酸石灰の量および水溶性リン酸濃度を算出した結果を表2に示す。
Figure 0005812319
表2の実施例1,2、比較例1および参考例1より、本発明のリン酸カルシウムの製造方法を用いて製造した実施例1,2のリン酸カルシウムを使用すれば、製造した過リン酸石灰の性状が安定することが分かる。一方、比較例1のリン酸カルシウムを使用して製造した過リン酸石灰は、水溶性リン酸濃度が経時的に減少し、性状が不安定であることが分かる。また、実施例1,2のリン酸カルシウムを用いれば、比較例1のリン酸カルシウムよりも少ない硫酸添加量で過リン酸石灰を製造し得ることが分かる。更に、実施例1,2のリン酸カルシウムを用いれば、参考例1のリン鉱石および比較例1のリン酸カルシウムを用いた場合に比べ、高い水溶性リン酸濃度を有する過リン酸石灰を少ない硫酸添加量で製造し得ることが分かる。
(実施例3〜8)
アルミニウム含有リン抽出液のAl濃度を3.8g/Lとし、ケイ素含有溶液調製工程で調製したケイ素含有溶液のケイ素濃度を表3に示す濃度とし、ケイ素含有リン抽出液を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてリン酸カルシウムを製造した。また、実施例1と同様にして製造したリン酸カルシウムから過リン酸石灰を製造した。
そして、実施例4〜6についてはアルミニウム除去率およびリン酸カルシウム析出率を実施例1と同様にして評価し、実施例3、7、8についてはアルミニウム除去率を実施例1と同様にして評価した。結果を表3に示す。
Figure 0005812319
表3の実施例3〜8より、アルミニウム1molに対するケイ素の添加量を1.28molとした実施例4および1.92molとした実施例5では、アルミニウム除去率とリン酸カルシウム析出率との双方を効果的に向上させ得ることが分かる。
本発明の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法および製造装置によれば、リン鉱石を原料として過リン酸石灰を製造する場合と同程度の硫酸使用量で安定した性状の過リン酸石灰を製造し得るリン酸カルシウムを製造することができる。
1 リン酸カルシウム製造装置
10 リン抽出部
11 リン抽出槽
12 沈降部
13 撹拌機
14 アルカリ性反応液供給ポンプ
15 吸引ポンプ
16 下部抜き出しバルブ
20 析出反応部
21 析出反応槽
22 沈降部
23 撹拌機
24 ケイ素含有溶液供給ポンプ
25 ホッパー
26 吸引ポンプ
27 下部抜き出しバルブ

Claims (9)

  1. 少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、アルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出工程と、
    前記リン抽出工程で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離工程と、
    前記第1の固液分離工程で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、ケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得るアルミノケイ酸塩析出工程と、
    前記アルミノケイ酸塩析出工程で得たアルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を固液分離する第2の固液分離工程と、
    前記第2の固液分離工程で分離したリン含有液と、カルシウム化合物とを混合して、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出工程と、
    を含むことを特徴とする、焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
  2. 前記ケイ素含有溶液が、リンおよびケイ素を含有する焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記リンおよびケイ素を含有する焼却灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出して得たケイ素含有リン抽出液を少なくとも含むことを特徴とする、請求項1に記載の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
  3. 前記ケイ素含有溶液が、ケイ砂に対して水酸化ナトリウム水溶液を加えて得たケイ素回収溶液を少なくとも含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
  4. 前記アルミノケイ酸塩析出工程で、アルミニウム含有リン抽出液とケイ素含有溶液とを、アルミニウム1molに対するケイ素の量が1.2〜2.0molとなるように混合することを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
  5. アルカリ性反応液を用いてリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出して得たリン抽出液に対しカルシウム化合物を添加してリン酸カルシウムを析出させると共に、該リン酸カルシウムを回収した後に残る回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用してリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウムを製造するリン酸カルシウムの製造方法であって、
    少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、アルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出工程と、
    前記リン抽出工程で得たアルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離工程と、
    前記第1の固液分離工程で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、カルシウム化合物とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を得るリン酸カルシウム析出工程と、
    前記リン酸カルシウム析出工程で得たリン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を固液分離する最終固液分離工程と、
    前記最終固液分離工程で分離したアルミニウム含有反応液と、ケイ素含有溶液とを混合して、アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る循環用アルミノケイ酸塩析出工程と、
    前記循環用アルミノケイ酸塩析出工程で得たアルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を固液分離する循環用固液分離工程と、
    を含むことを特徴とする、焼却灰からのリン酸カルシウムの製造方法。
  6. アルカリ性反応液供給手段を有し、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段で供給したアルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出槽と、
    前記アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離手段と、
    ケイ素含有溶液供給手段を有し、前記第1の固液分離手段で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、前記ケイ素含有溶液供給手段で供給したケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を得るアルミノケイ酸塩析出槽と、
    前記アルミノケイ酸塩とリン含有液との混合物を固液分離する第2の固液分離手段と、
    カルシウム化合物供給手段を有し、前記第2の固液分離手段で分離したリン含有液と、前記カルシウム化合物供給手段で供給したカルシウム化合物とを混合して、リン含有液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させるリン酸カルシウム析出槽と、
    を備えることを特徴とする、焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置。
  7. 前記ケイ素含有溶液供給手段が、
    リンおよびケイ素を含有する焼却灰とアルカリ性反応液とを混合し、前記リンおよびケイ素を含有する焼却灰に含まれているリンおよびケイ素をアルカリ性反応液中に抽出してケイ素含有リン抽出液を調製するケイ素含有リン抽出液調製部を備え、
    前記ケイ素含有リン抽出液を少なくとも含むケイ素含有溶液を供給することを特徴とする、請求項6に記載の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置。
  8. 前記ケイ素含有溶液供給手段が、
    ケイ砂に対して水酸化ナトリウム水溶液を加えてケイ素回収溶液を調製するケイ素回収溶液調製部を備え、
    前記ケイ素回収溶液を少なくとも含むケイ素含有溶液を供給することを特徴とする、請求項6または7に記載の焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置。
  9. アルカリ性反応液を用いてリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出して得たリン抽出液に対しカルシウム化合物を添加してリン酸カルシウムを析出させると共に、該リン酸カルシウムを回収した後に残る回収反応液をアルカリ性反応液として循環利用してリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰からリンを抽出し、リン酸カルシウムを製造するリン酸カルシウムの製造装置であって、
    アルカリ性反応液供給手段を有し、少なくともリンおよびアルミニウムを含有する焼却灰と、前記アルカリ性反応液供給手段で供給したアルカリ性反応液とを混合し、前記焼却灰に含まれているリンおよびアルミニウムを前記アルカリ性反応液中に抽出して、アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を得るリン抽出槽と、
    前記アルミニウム含有リン抽出液とアルカリ処理灰との混合物を固液分離する第1の固液分離手段と、
    カルシウム化合物供給手段を有し、前記第1の固液分離手段で分離したアルミニウム含有リン抽出液と、前記カルシウム化合物供給手段で供給したカルシウム化合物とを混合して、前記アルミニウム含有リン抽出液中のリンをリン酸カルシウムとして析出させ、リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を得るリン酸カルシウム析出槽と、
    前記リン酸カルシウムとアルミニウム含有反応液との混合物を固液分離する最終固液分離手段と、
    ケイ素含有溶液供給手段を有し、前記最終固液分離手段で分離したアルミニウム含有反応液と、前記ケイ素含有溶液供給手段で供給したケイ素含有溶液とを混合して、前記アルミニウム含有反応液中のアルミニウムをアルミノケイ酸塩として析出させ、アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を得る循環用アルミノケイ酸塩析出槽と、
    前記アルミノケイ酸塩と回収反応液との混合物を固液分離する循環用固液分離手段と、
    を備えることを特徴とする、焼却灰からのリン酸カルシウムの製造装置。
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