ところで、ステアリング装置では、操舵輪の操舵可能な角度範囲とステアリングの操作可能な角度範囲とが一致していないことが一般的である。具体的には、操舵輪の操舵可能な角度範囲が1回転未満(360度未満)であるのに対し、ステアリングの操作可能な角度範囲は1回転以上(360度以上;例えば360度×7(7回転))である。
また、ステアリングには、取っ手などの目印となるものが取り付けられているため、産業車両の運転者は、この目印の位置関係により、操舵輪の操舵角およびその操舵角に応じた産業車両の進行方向を推測することが多い。
しかし、ステアリング装置は、上述したように、操舵輪の操舵に際してステアリングが1回転以上操作(回転)可能であるため、取っ手の位置関係が運転者から見て同じ位置だったとしても、必ずしも操舵輪の舵角が同じとは限らない。
このため、運転者が推測する産業車両の進行方向と、実際に産業車両が進む進行方向とが異なる場合があり、この場合には、運転者が意図しない方向に発進してしまうという問題が生じる。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、産業車両の発進時に運転者が意図しない方向に進んでしまうのを防止することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた第1の構成(請求項1)は、産業車両に搭載されるステアリング装置であって、運転者の操作を受付けるステアリングと、前記ステアリングの操作量に応じて、前記産業車両の進行方向を決めるべく操舵輪を操舵する操舵機構と、前記産業車両における運転者の挙動に起因して検出結果が変化する検出パラメータに基づいて、前記産業車両が運転されているまたは運転されうる運転準備状態になっているか否かを判定する状態判定手段と、前記状態判定手段により運転準備状態になっていると判定されていない場合に、操舵輪舵角が所定の基準角となるように前記操舵機構を制御する復帰制御手段と、前記産業車両を起動するためのキースイッチをオフとした以降、前記ステアリングに対して前記復帰制御手段による前記操舵機構の制御を解除するためのものとして定められた解除操作が行われたことを検知する解除検知手段と、を備えており、前記解除検知手段により解除操作が行われたことが検知された場合、前記復帰制御手段による前記操舵機構の制御を実施しないように構成されている。
このように構成されたステアリング装置では、産業車両が運転準備状態になっていない場合に、操舵輪の舵角を基準角まで戻す復帰制御が実施される。
そのため、運転準備状態になっていない場合に復帰制御が実施される、ということを把握している運転者にとっては、産業車両の進行方向が復帰制御を経て基準角に対応する方向になっていることを認識したうえで、産業車両の運転を開始することができるため、運転者の意図しない方向へと産業車両を発進させてしまうことがなくなる。
なお、この構成における「運転準備状態」とは、産業車両が運転されうる状態だけではなく、現に運転されている状態も含む概念である。
また、この構成における復帰制御では、操舵輪の舵角が基準角となるような制御を行えばよく、例えば、外部からの指令を受けて操舵輪の舵角を基準角で維持するように付勢する付勢手段を設け、この付勢手段による付勢を復帰制御として実施するようにすることが考えられる。
また、実際の操舵輪の舵角を検出し、その検出値が基準角となるようなフィードバック制御を行うようにすることも考えられ、この場合には、上記構成を以下に示す第2の構成(請求項2)のようにすることが考えられる。
第2の構成は、前記操舵輪の舵角を検出する舵角検出手段と、前記復帰制御手段による前記操舵機構の制御が開始された以降の経過時間を計測する計測手段と、を備えている。そして、前記復帰制御手段は、前記状態判定手段により運転準備状態になっていると判定されていない場合に、前記舵角検出手段に検出される舵角が所定の基準角となるように前記操舵機構の制御を開始し、それ以降、前記計測手段による計測時間が所定の強制終了時間を経過したら前記操舵機構の制御を強制終了させる。
この構成であれば、実際の操舵輪の舵角を検出し、その検出値が基準角となるようなフィードバック制御を復帰制御として実施することができる。
また、上記各構成における検出パラメータとしては、運転者の挙動に起因して検出結果が変化するものであればよく、例えば、運転者が搭乗したことを検知する手段からの検出パラメータを採用することが考えられる。このための具体的な構成としては、上記構成を以下に示す第3の構成(請求項3)のようにするとよい。
第3の構成は、前記産業車両に運転者が搭乗していることを検知する搭乗検知手段、を備えており、前記状態判定手段は、前記搭乗検知手段により運転者の搭乗が検知されていることをもって、前記運転準備状態になっていると判定する。
この構成であれば、運転者が搭乗している場合に、復帰制御が行われてしまうことを防止することができる。
また、上述した検出パラメータとしては、運転者によるステアリングの操作を検知する手段からの検出パラメータを採用することが考えられる。このための具体的な構成としては、上記構成を以下に示す第4の構成(請求項4)のようにするとよい。
第4の構成は、当該ステアリング装置または前記産業車両に対して特定の操作が行われたか否かを検知する操作検知手段、を備えており、前記状態判定手段は、前記操作検知手段により特定の操作が検知されたことをもって、前記運転準備状態になっていると判定する。
これによれば、運転者によって産業車両に対して特定の操作が行われた場合には、復帰制御手段による操舵機構の制御が行わないこととなるため、運転者のニーズに応じたステアリング装置を提供することができる。
なお、この「特定の操作」は、ある操作対象の操作として規定されたものであってもよいし、1以上の操作対象に対する一連の操作手順として規定されたものであってもよい。
この構成における「特定の操作」としては、運転準備状態であることを示す操作であればよく、例えば、ステアリングに対する操作や、スロットルレバー(またはアクセル)などにより産業車両を走行させるための操作とすることが考えられる。
このためには、上記構成を以下に示す第5の構成(請求項5)のようにするとよい。
第5の構成において、前記操作検知手段は、前記産業車両を走行させるための走行操作が行われたことを検知可能であり、前記状態判定手段は、前記操作検知手段により、前記走行操作が検知されたことをもって、前記運転準備状態になっていると判定する。
これにより、産業車両を走行させるための操作が行われている状態で、復帰制御が行われてしまうことを防止することができる。
ところで、上記各構成では、任意に操舵機構の制御による復帰制御を実施させられるようにしてもよく、このためには、上記各構成を以下に示す第6の構成(請求項6)のようにするとよい。
第6の構成は、前記復帰制御手段による前記操舵機構の制御を開始するための操作として規定された制御開始操作を受け付ける操作受付手段、を備えており、前記状態判定手段は、前記制御開始操作が受付けられたことをもって、前記運転準備状態でないと判定する。
この構成であれば、復帰制御を任意に実施させることができる。
また、上記各構成においては、運転準備状態になっていない場合だけでなく、所定の条件が満たされていることを前提として、復帰制御が実施されるようにしてもよい。
復帰制御を実施するための条件としては、例えば、産業車両の車速が所定速度未満になっていること、が考えられ、この場合には、上記各構成を以下に示す第7の構成(請求項7)のようにするとよい。
第7の構成において、前記産業車両の車速を検出する車速検出手段、が備えられ、前記復帰制御手段は、前記車速検出手段により検出された車速が所定速度未満となっていることを条件として、前記操舵機構を制御する。
この構成であれば、産業車両の車速が所定速度未満となっている間は、復帰制御が行われないため、例えば、所定速度として産業車両が走行していない場合における速度を設定しておくことにより、産業車両の走行中に復帰制御が行われてしまうことを防止することができる。
また、復帰制御を実施するための条件としては、操舵輪の舵角が基準角から一定以上離れていること、を考えることもでき、この場合には、上記各構成を以下に示す第8の構成(請求項8)のようにするとよい。
第8の構成において、前記復帰制御手段は、前記舵角検出手段により検出される舵角が前記基準角を中心とした所定の許容範囲外にあることを条件として、前記操舵機構の制御を開始する。
これによれば、操舵輪の舵角が許容範囲内にある場合には復帰制御手段による操舵機構の制御を行わないため、この許容範囲を基準角に応じた方向として運転者の意図から外れない程度の範囲に設定しておくことにより、産業車両の発進時に運転者が意図しない方向に進んでしまうのを防止しつつ、復帰制御にかかる制御負荷を軽減することができる。
例えば、ステアリングの操作角度が±180度未満の範囲内にある状態では、ステアリングに取り付けられている目印(例えば、取っ手)の位置関係によって、運転者が推測する産業車両の進行方向と、実際に産業車両が進む方向とが一致する可能性が高いため、この状態で復帰制御が行われないよう上記許容範囲を設定しておくことにより、復帰制御にかかる制御負荷を効率良く軽減できる。
そして、例えば、産業車両が直進可能となる状態における操舵輪の舵角が基準角として定められていた場合、産業車両の発進時における進行方向がほぼ直進方向であれば、産業車両の左右近傍に壁が設けられていたとしても、復帰制御手段による操舵機構の制御を行わずして、産業車両発進時にその壁に接触しにくくすることが期待できる。
また、復帰制御を実施するか否かに応じてステアリング装置の動作モードを切替可能とした場合には、復帰制御を実施するための条件として、その動作モードが復帰制御を行うモードに切り替えられていることを採用することもでき、このためには、上記各構成を以下に示す第9の構成(請求項9)のようにするとよい。
第9の構成は、外部からの指令を受けて、当該ステアリング装置の動作モードを、前記復帰制御手段による前記操舵機構の制御が実行される復帰モード、および、該制御が実行されない非復帰モード、のいずれかに切り替えるモード切替手段、を備えており、前記復帰制御手段は、当該ステアリング装置の動作モードが前記復帰モードに切り替えられていることを条件として、前記操舵機構を制御する。
この構成であれば、ステアリング装置の動作モードが非復帰モードに切り替えられている間は復帰制御が行われないため、操舵角を基準角に戻すことを希望しないようなシーンにおいて、動作モードを非復帰モードへと切り替えておくことにより、意図しない復帰制御が行われて操舵角が基準角に戻ってしまうことを防止することができる。
ところで、上記各構成においては、復帰制御が開始された以降、運転準備状態へと移行することも考えられるため、その場合に、復帰制御が停止されるようにすることが望ましい。このように、運転準備状態へと移行する具体的な例としては、例えば、運転者がステアリングの操作を開始したような場合が想定され、この場合に復帰制御を停止させるためには、上記各構成を以下に示す第10の構成(請求項10)のようにするとよい。
第10の構成は、運転者によるステアリングの操作を検出するステアリング操作検出手段、を備えており、前記復帰制御手段は、前記操舵機構の制御中、前記ステアリング操作検出手段によりステアリングの操作が検出された場合に、その制御を停止させる。
これによれば、ステアリング操作が行われた場合には復帰制御手段による操舵機構の制御が停止されるため、運転者によるステアリング操作を優先できる。
また、ステアリング装置において、ステアリングの操作を直接的に操舵輪へと伝達させているような場合には、復帰制御にて操舵角を基準角とすべく操舵機構を制御しているときに、操舵輪の操舵にステアリングが追従しきれなくなることも想定され、この場合、ステアリングが操舵方向と反対に操作されたものとして検出されてしまう。
この操作を検出して復帰制御を停止させることは、実際にステアリングが操作されたことによるものではない誤ったものであるため、このような誤った停止がなされないようにすることが望ましい。そのためには、上記構成を以下に示す第11の構成(請求項11)のようにすることが考えられる。
第11の構成において、前記ステアリング操作検出手段は、運転者によるステアリングの操作量を検出しており、前記復帰制御手段は、前記操舵機構の制御中、前記ステアリング操作検出手段により検出された操作量が所定の操作量以上となった場合に、その制御を停止させる。
この構成であれば、ステアリングに対する所定の操作量が検出されるまで操舵機構の制御が継続されるため、この操作量として、誤りとして発生し得る操作量を設定しておくことにより、復帰制御が誤って停止されてしまうことを防止することができる。
ところで、操舵輪の操舵を開始すると、操舵輪と路面との摩擦によって操舵輪にねじれが発生する。そして、この状態で操舵輪の操舵を停止すると、ねじれた操舵輪が元に戻ろうとして、それまでの操舵方向とは逆方向に変位するため、操舵輪を所望の位置(舵角≒基準角となる位置)で停止させることはできない。
そこで、第12の構成(請求項12)のように、前記復帰制御手段は、前記操舵機構の制御を開始した以降、前記舵角検出手段により検出される舵角が前記基準角よりも所定角度だけ大きくなるまで制御を継続した後で、該制御を停止させる、ようにするとよい。
これによれば、基準角を所定角度通過してから操舵機構の制御を停止することで、その逆方向への変位を相殺することができる。つまり、上記構成では、基準角を通過する角度として、ねじれの影響で操舵輪が変位する変位量に対応する角度を設定しておくことにより、操舵輪を所望の位置で停止させ易くなる。
なお、上述した操舵輪には、操舵輪と路面との摩擦係数、操舵輪と路面との間に生じる摩擦力、操舵輪の操舵時における角速度などのパラメータに応じた大きさで"ねじれ"が発生するため、これらパラメータのうち何れかを利用することで、"ねじれ"の影響による操舵輪の変位量を推定することができる。具体的な例として、例えば、摩擦力や角速度に関係するパラメータとして、操舵機構の制御量が考えられ、このパラメータにより推定される変位量を加味して、操舵角が基準角に到達した以降、操舵機構の制御を所定角度だけ継続させられるようにすることが望ましい。
このための構成としては、上記構成を以下に示す第13の構成(請求項13)のようにすることが考えられる。
第13の構成は、前記復帰制御手段により前記操舵機構の制御が開始された以降の制御量に基づいて、前記基準角よりも所定角度だけ大きい制御舵角を決定する制御決定手段、を備えており、前記復帰制御手段は、前記舵角検出手段により検出される舵角が前記制御舵角に到達するまで、前記操舵機構の制御を継続させる。
この構成であれば、"ねじれ"の影響による操舵輪の変位量が加味された操舵角である制御角となるまで、操舵機構の制御を継続させることができるため、操舵輪をより確実に所望の位置で停止させ易くなる。
また、上記課題を解決するためには、第1から第13のいずれかの構成に係るステアリング装置を搭載してなることを特徴とする産業車両(請求項14)としてもよい。
これによれば、上記各構成と同様の作用、効果を得ることができる。
また、上記課題を解決するためには、コンピュータを第1から第13のいずれかの構成に係る状態判定手段および復帰制御手段として機能させるためのプログラム(請求項15)としてもよい。
このプログラムを、産業車両または産業車両のステアリング装置に適用すれば、上記各構成と同様の作用、効果を得ることができる。
なお、上述したプログラムは、コンピュータシステムによる処理に適した命令の順番付けられた列からなるものであって、各種記録媒体や通信回線を介してステアリング装置,産業車両や、これを利用するユーザ等に提供されるものである。
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
1.全体構成
フォークリフト1は、荷役作業に用いられる産業車両であり、図1に示すように、本体2の前方に荷役機構3が設けられ、本体2の後方に運転席4およびステアリング装置5が設けられている。
ステアリング装置5は、本体2の後方側において運転席4と隣接する位置に搭載されたものであり、図2に示すように、運転者の操作を受けるステアリング51、フォークリフト1の進行方向を決めるべく操舵される操舵輪53、ステアリング51の操作量に応じて操舵輪53を操舵する操舵機構54、操舵輪53を回転駆動させるための駆動モータ59、ステアリング51の操作トルクを検出するトルクセンサ71、操舵輪53の舵角を検出する舵角センサ73、フォークリフト1の運転者の存在を検出する運転者検出センサ77、フォークリフト1の車速を検出する車速センサ79、フォークリフト1全体を起動するためのキースイッチの切替状態を検出するキーセンサ81、フォークリフト1周囲に報知を行う報知部83、ステアリング装置5全体の動作を制御するコントローラ75、などを備えている。
なお、本実施形態の運転者検出センサ77とは、運転席4の荷重(体重)の変化により運転者の存在を検出する荷重センサ、赤外線センサ、画像センサなど通常のフォークリフト1の操作入力端としては搭載されていないセンサであり、運転者が運転席4に存在することを検知するセンサである。
ステアリング51は、運転者の操作により操舵輪53を操舵可能に構成されており、運転者がステアリング操作を行う際に利用可能な取っ手52が取り付けられている。
操舵輪53は、フォークリフト1走行用の駆動力を路面に与える駆動輪でもある。なお、本実施形態では、操舵輪53の操舵可能な角度範囲が1回転未満(360度未満)であるのに対し、ステアリング51の操作可能な角度範囲は1回転以上(360度以上;本実施形態では360度×7の7回転)である。また、本実施形態では、フォークリフト1が直進可能となる状態における操舵輪53の舵角(例えば「0度」)が基準となる基準角として定められている。
操舵機構54は、操舵輪53を支持する操舵輪支持部55、ステアリング51の操作トルクを操舵輪53に伝達させて操舵輪53を操舵する操舵伝達機構61、ステアリング51による操舵輪53の操舵をアシストするアシストモータ63、アシストモータ63を動作させる動作回路65、などを備えている。
これらのうち、操舵輪支持部55は、操舵輪53が操舵される方向に沿って回転可能な状態で本体2に固定されており、その回転方向に操舵輪支持部55を取り囲む操舵ギヤ57が形成されている。
また、アシストモータ63は、周知の電動パワーステアリング(EPS)モータである。そして、このアシストモータ63は、操舵伝達機構61により伝達されるステアリング51のトルクに応じた操舵トルクにて、操舵輪支持部55の操舵ギヤ57と噛み合わされたギヤ(図示されない)を回転させることにより、この操舵ギヤ57を介して、操舵輪支持部55および操舵輪支持部55に支持された操舵輪53を操舵する。
また、操舵伝達機構61は、ステアリング51から操舵輪支持部55に向けて延びるロッド状の部材であり、操舵輪53側の端部(下端)に、操舵輪支持部55の操舵ギヤ57と噛み合わされた伝達ギヤ67が設けられており、ステアリング51の操作トルクが、この伝達ギヤ67および操舵ギヤ57を介して、操舵輪支持部55および操舵輪支持部55
に支持された操舵輪53に伝達される。
報知部83は、フォークリフト1周囲(例えば運転者)に対して注意を促したり、フォークリフト1の動作状態を周囲に報知したりするためのものであり、報知音を発生するブザー、および、ブザーを駆動する駆動回路などにて構成されている。そして、駆動回路は、コントローラ75からの指令に従い、ブザーに対し複数種類の報知音を発生可能に構成されている。
コントローラ75は、内蔵メモリに格納されたプログラムに従って、運転者のステアリング操作(ステアリング51の操作トルク)に応じた大きさで操舵トルクを発生する周知の操舵処理、操舵輪53の舵角を基準となる基準角に戻す操舵輪復帰処理(図3、図5〜図7参照)、および、キースイッチがオン状態からオフ状態に切り替わった以降に電源オフ操作を行う電源オフ処理(図4参照)などを実行する。
なお、コントローラ75は、キースイッチがオフ状態の場合、フォークリフト1の走行制御、荷役機構3の荷役制御および操舵処理を無効とするようにしている。
また、このコントローラ75は、運転席4の前方に配置された操作部6と通信可能に接続されており、この操作部6への運転者の操作内容を検出できるように構成されている。
2.コントローラ75の特徴的作動
本実施形態におけるステアリング装置5は、コントローラ75に実施される処理内容に応じてその実施形態が異なるため、処理内容に応じた実施形態について順に説明する。
2−1.第1実施形態
(1)操舵輪復帰処理
本実施形態において、操舵輪復帰処理は、フォークリフト1の電源が投入されたときにコントローラ75にて実行される。
この処理が開始されると、図3に示すように、まずS105では、トルクセンサ71およびキーセンサ81による検出結果に基づいて、操舵輪復帰処理の解除操作が運転者によって行われたか否かが判定される。ここでは、キースイッチがオフされてから所定時間以内に、特定の規則性をもった操作トルクがトルクセンサ71により検出された(例えば、ステアリング51を左右に複数回す操作が運転者により行われた)ことをもって、操舵輪復帰処理の解除操作が運転者によって行われたと判定される。
そして、S105にて操舵輪復帰処理の解除操作が行われたと判定された場合には(S105:YES)、処理がS107に移行し、車速センサ79による検出結果に基づいて、フォークリフト1が停止している(車速がゼロであるか)か否かが判定される。
そして、S107では、フォークリフト1が停止していると判定されている間は(S107:YES)、このS107の処理が繰り返し実行され、フォークリフト1が停止していないと判定されると(S107:NO)、処理がS105に戻る。
また、S105にて操舵輪復帰処理の解除操作が行われていないと判定された場合には(S105:NO)、処理がS110に移行し、車速センサ79による検出結果に基づいて、フォークリフト1が停止している(車速がゼロであるか)か否かが判定される。
そして、S110にてフォークリフト1が停止していないと判定された場合には(S110:NO)、処理がS105に戻る一方、S110にてフォークリフト1が停止していると判定されると(S110:YES)、処理がS120に移行する。
S120では、運転者検出センサ77による検出結果に基づいて、フォークリフト1に運転者が存在するか否かが判定される。そして、S120にてフォークリフト1に運転者が存在すると判定された場合には(S120:YES)、処理がS110に移行する一方、S120にてフォークリフト1に運転者が存在しないと判定された場合には(S120:NO)、処理がS130に移行する。
S130では、トルクセンサ71による検出結果に基づいて、運転者によりステアリング操作が行われているか否かが判定される。ここでは、トルクセンサ71により、運転者がステアリング51を操作している場合における操作トルクが検出されたことをもって、運転者によるステアリング操作が行われていると判定される。
そして、S130にて運転者によりステアリング操作が行われていると判定された場合には(S130:YES)、処理がS110に移行し、逆にS130にて運転者によりステアリング操作が行われていないと判定された場合には(S130:NO)、処理がS140に移行する。
S140では、舵角センサ73により検出される操舵輪53の舵角が基準角を中心とした所定の許容範囲外にあるか否かが判定される。S140の処理で用いられる「許容範囲」とは、基準角に応じた方向として運転者の意図から外れない程度の範囲に設定された値であり、コントローラ75の内蔵メモリに格納されている。なお、本実施形態では、「許容範囲」として基準角を中心とする±20度(=40度)が設定されている。
そして、S140にて舵角が基準角を中心とした所定の許容範囲内にあると判定された場合には(S140:NO)、処理がS110に移行する。一方、S140にて舵角が基準角を中心とした所定の許容範囲外にあると判定された場合には(S140:YES)、処理がS150に移行する。
S150では、舵角センサ73により検出される操舵輪53の舵角が基準角まで戻るように、操舵機構54(具体的にはアシストモータ63)を制御する操舵輪53の復帰制御が開始される。ここで、操舵輪53の復帰制御では、動作回路65にアシストモータ63を動作させることにより、操舵輪53、延いては操舵ギヤ57、伝達ギヤ67、操舵伝達機構61およびステアリング51を操舵させて、舵角センサ73により検出される舵角を基準角に戻すようにしている。具体的に説明すると、コントローラ75は、舵角センサ73の検出結果に基づいて検出される操舵輪53の操舵速度が一定(例えば、18°/s)となるように、アシストモータ63駆動時のデューティ比を可変させることにより、操舵輪53の舵角を基準角に戻すようにしている。
続くS160では、復帰制御が開始された旨を報知させるべく、報知部83に対して報知指令が出力される。これにより、報知部83は、報知音を発生することで、フォークリフト1の周囲にその旨を報知する。なお、報知部83は、復帰制御の開始から終了までの間、例えば「ピーピーピー」(短音)といった報知音を継続して発生する。
そして、S170では、コントローラ75に内蔵されたタイマを用いて、そのカウント値をリセットした後、復帰制御に要している時間の計測が開始される。
続いて、S180では、上記タイマのカウント値に基づいて、S170の処理でタイマによる計測の開始から所定時間(例えば1分間)が経過したか否かが判定される。この「所定時間」は、例えば、操舵輪53の操作が異物に妨げられたり、アシストモータ63が故障したりするなどによって正常に復帰制御が行われない場合に復帰制御を強制終了するために定められた時間である。
そして、S180にて、タイマによる計測の開始から所定時間が経過したと判定された場合には(S180:YES)、復帰制御の終了処理が行われる(S220)。
ここで、S220では、動作回路65に対してアシストモータ63の動作を停止させる、すなわちアシストモータ63の通電制御を停止するといった処理が行われる。
そして、今回復帰制御を終了することとなった起因がタイマによるものであるため、続
くS230では、復帰制御を強制終了した旨を報知させるべく、報知部83に対して報知指令が出力された後、処理がS105に戻る。なお、このとき報知部83(ブザー)は、例えば「ピー」(短音)といったエラー音を1回発生する。
一方、S180にて、タイマによる計測の開始から所定時間が経過していないと判定された場合には(S180:NO)、運転者検出センサ77による検出結果に基づいて、フォークリフト1に運転者が存在するか否かが判定される(S182)。
そして、S182にてフォークリフト1に運転者が存在すると判定された場合には(S182:YES)、上述したS220と同様の復帰制御の終了処理が行われ(S184)、処理がS105に戻る。
一方、S182にてフォークリフト1に運転者が存在しないと判定された場合には(S182:NO)、処理がS190に移行する。S190では、トルクセンサ71による検出結果に基づいて、運転者によりステアリング操作が行われているか否かが判定される。
そして、S190にて、運転者によりステアリング操作が行われていないと判定された場合には(S190:NO)、舵角センサ73により検出される舵角が基準角に到達したか否かが判定される(S200)。
そして、S200にて、舵角が基準角に到達していないと判定された場合には(S200:NO)、処理がS180に移行し、逆にS200にて舵角が基準角に到達したと判定された場合には(S200:YES)、処理がS205に移行する。
S205では、復帰制御の期間中(アシストモータ63の通電制御中)にアシストモータ63に流れる電流の平均値に基づいて、復帰制御を終了すべき舵角が決定される。
具体的に説明すると、コントローラ75の内蔵メモリには、アシストモータ63に流れる電流の電流値と、ねじれの影響で操舵輪53が変位する変位量に対応する角度とが関連づけられたテーブルが格納されており、操舵輪復帰処理では、復帰制御を開始してから(S170)、舵角が基準角に到達する(S200:YES)までの間、アシストモータ63に流れる電流の電流値を定期的に取得し、その取得した電流値の平均値を算出する。
そして、S205では、上記テーブルを利用することにより、この平均値に対応する角度が抽出され、この抽出された角度が復帰制御を終了すべき舵角として決定される。つまり、本実施形態では、アシストモータ63に流れる電流の平均値から、ねじれの影響で操舵輪53が変位する変位量を推定することにより、復帰制御を終了すべき舵角を決定している。
続くS220では、操舵輪53の舵角がS205にて決定された舵角に到達したタイミングで操舵輪53の操舵を停止させることとなるため、最終的な操舵輪53の操舵が停止されるのは、舵角が基準角を所定角度(S205にて決定された舵角だけ)過ぎてからとなる。
そして、今回は、舵角が基準角に到達したことが起因となり復帰制御を終了することとなったため、続くS230では、復帰制御が正常終了した旨を報知させるべく、報知部83に対して報知指令が出力され、処理がS105に戻る。なお、このとき報知部83(ブザー)は例えば「ピー」(長音)といった報知音を1回発生する。
一方、S190にて、運転者によりステアリング操作が行われていると判定された場合には(S190:YES)、上述したS220と同様の復帰制御の終了処理が行われた後
(S210)、コントローラ75に内蔵されたタイマを用いて、そのカウント値をリセットした後、復帰制御に要している時間の計測が開始される(S212)。
続いて、S214では、上記タイマのカウント値に基づいて、S212の処理でタイマによる計測の開始から所定時間(本実施形態では3秒間)が経過したか否かが判定される。
そして、S214では、タイマによる計測の開始から所定時間が経過していないと判定されている間は(S214:NO)、このS214の処理が繰り返し実行され、タイマによる計測の開始から所定時間が経過したと判定されると(S214:YES)、処理がS105に戻る。
(2)電源オフ処理
電源オフ処理は、キースイッチがオン状態からオフ状態に切り替わったときにコントローラ75にて実行される。
この処理が開始されると、図4に示すように、まずS310では、コントローラ75に内蔵されたタイマを用いて、キースイッチがオフ状態に切り替わった以降の時間計測が開始される。なお、本実施形態では、電源オフ処理用のタイマと上記操舵輪復帰処理用のタイマとが同一のものであってもよいし、操舵輪復帰処理用のタイマとは別にタイマを設け、そのタイマを電源オフ処理用として利用してもよい。
続いて、S320では、上記タイマのカウント値に基づいて、S310の処理でタイマによる計測が開始されてから所定時間(例えば1分間)が経過したか否かが判定される。この「所定時間」は、フォークリフト1の電子機器(コントローラ75など)が動作終了時に要する時間を確保するために定められた時間である。
そして、このS320の処理は、タイマによる計測が開始されてから所定時間が経過したと判定されるまでの間繰り返し実行され、タイマによる計測が開始されてから所定時間が経過したと判定されると(S320:YES)、キーセンサ81による検出結果に基づいて、キースイッチがオフ状態であるか否かが判定される(S330)。
そして、S330にて、キースイッチがオン状態であると判定された場合には(S330:NO)、電源オフ処理が終了し、逆にキースイッチがオフ状態であると判定された場合には(S330:YES)、フォークリフト1の電源をオフし(S340)、電源オフ処理が終了する。
つまり、電源オフ処理では、キースイッチがオン状態からオフ状態に切り替わってから所定時間の間、フォークリフト1の電源をオンした状態を維持し続ける。その後、キースイッチがオン状態に切り替わらない場合には、運転者の存在の有無に関係なくフォークリフト1の電源をオフするようにしている一方、キースイッチがオン状態に切り替わった場合には、フォークリフト1の電源をオフしない。
2−2.第2実施形態
(1)操舵輪復帰処理
本実施形態における操舵輪復帰処理の処理手順を図5に基づいて説明する。
この操舵輪復帰処理では、まず、復帰開始条件が充足されているか否かがチェックされる(S400)。本実施形態では、コントローラ75が起動した以降、以下に示す条件判定処理を一定期間毎に繰り返し実行するように構成されており、この条件判定処理において、復帰開始の条件が充足または未充足である旨が設定されるため、その設定内容に基づいて、復帰開始条件が充足されているか否かがチェックされることになる。
ここで、条件判定処理について図6に基づいて説明すると、この条件判定処理では、まず、操作部6に設けられた動作モード切替スイッチにより、コントローラ75によるステアリング装置5の動作モードが、操舵輪復帰処理による制御を許可する旨の「復帰モード」に切り替えられているか、操舵輪復帰処理による制御を許可しない旨の「非復帰モード」に切り替えられているか、がチェックされる(S410)。
このS410で「非復帰モード」に切り替えられていると判定された場合には(S410:NO)、復帰開始条件“未”充足である旨が設定される(S420)。本実施形態では、条件充足フラグに“0”をセットすることにより、条件未充足である旨が設定される。
一方、上記S410で「復帰モード」に切り替えられていると判定された場合には(S410:YES)、車速センサ79による検出結果に基づいて、フォークリフト1の車速が所定速度未満であるか否かがチェックされる(S430)。本実施形態では、フォークリフト1が停止していると推定される車速未満となっているか否かがチェックされる。
このS430で、フォークリフト1の車速が所定速度未満ではない、つまり一定以上の車速でフォークリフト1が走行していると推定される場合には(S430:NO)、プロセスがS420へと移行する。
一方、上記S430で、フォークリフト1の車速が所定速度未満であると推定される場合には(S430:YES)、上記第1実施形態におけるS140と同様に、操舵輪53の舵角が基準角を中心とした所定範囲外にあるか否かがチェックされる(S440)。
このS440で、操舵輪53の舵角が基準角を中心とした所定範囲以内にあると判定された場合には(S440:NO)、プロセスがS420へと移行する一方、操舵輪53の舵角が基準角を中心とした所定範囲外にあると判定された場合には(S440:YES)、復帰開始条件充足である旨が設定される(s450)。本実施形態では、上述した条件充足フラグに“1”をセットすることにより、条件充足である旨が設定される。
こうして、上記S420またはS450にて条件充足または条件未充足である旨が設定された後、本条件判定処理が終了する。
本実施形態における操舵輪復帰処理では、上述したS400において、このように条件判定処理により繰り返しなされる設定内容に基づき、復帰開始条件が充足されているか否かを判定することとなる。
そして、このS400で復帰開始条件が充足していると判定されるまで待機状態となった後(S400:NO)、復帰開始条件が充足していると判定されたら(S400:YES)、フォークリフト1が運転者による運転がなされているまたはなされうる“運転準備状態”となっているか否かがチェックされる(S500)。
本実施形態では、このS500において以下に示す状態判定処理を起動するように構成されており、この状態判定処理において、運転準備状態となっているか否かが設定されるため、その設定内容に基づいて、運転準備状態となっているか否かがチェックされる。
ここで、状態判定処理について図7に基づいて説明すると、この状態判定処理では、まず、制御開始操作が実施されているか否かがチェックされる(S510)。本実施形態においては、操作部6に設けられた復帰処理開始スイッチをオン側に切り替える操作が、制御開始操作として設定されている。なお、この復帰処理開始スイッチは、いわゆるモーメンタリ型のスイッチであり、操作が受付けられている間のみオン側への切り替えが実現されるように構成されている。
このS510で制御開始操作が実施されていると判定された場合(S510:YES)、運転準備状態でない旨が設定される(S570)。本実施形態では、状態判定フラグに“1”をセットすることにより、運転準備状態でない旨が設定される。
一方、上記S510で制御開始操作が実施されていないと判定された場合には(S510:NO)、運転者検出センサ77による検出結果に基づいて、フォークリフト1に運転者が搭乗しているか否かがチェックされる(S530)。
このS530で運転者が搭乗していると判定された場合(S530:YES)、運転準備状態である旨が設定される(S520)。本実施形態では、上述した状態判定フラグに“0”をセットすることにより、運転準備状態である旨が設定される。
一方、上記S530で運転者が搭乗していないと判定された場合(S530:NO)、トルクセンサ71の検出結果に基づいて、運転者によるステアリング操作が行われているか否かがチェックされる(S540)。
このS540で、ステアリング操作が行われていると判定された場合(S540:YES)、プロセスがS520へと移行する一方、ステアリング操作が行われていないと判定された場合(S540:NO)、フォークリフト1を走行させるための操作(走行操作)が実施されているか否かがチェックされる(S550)。本実施形態では、走行操作として、操作部6に設けられたスロットルレバーが操作されているか否かをチェックする。
このS550で、走行操作が実施されていると判定された場合(S550:YES)、プロセスがS520へと移行する一方、走行操作が実施されていないと判定された場合(S550:NO)、荷役操作が実施されているか否かがチェックされる(S560)。本実施形態では、荷役操作として、荷役機構3への動作指令を行うべく操作部6に設けられた動作レバーの操作(および荷役動作中に操作を中断している状態を含む)が行われているか否かをチェックするように構成されている。
このS560で、荷役操作が実施されていると判定された場合には(S560:YES)、プロセスがS520へと移行する一方、荷役操作が実施されていないと判定された場合には(S560:NO)、プロセスがS570へと移行する。
こうして、上記S520またはS570にて運転準備状態ではない旨または運転準備状態である旨が設定された後、状態判定処理が終了し、その設定内容を戻り値として、プロセスが操舵輪復帰処理へと戻る。
本実施形態における操舵輪復帰処理では、S500において状態判定処理の戻り値に基づき、運転準備状態であるか否かを判定することとなる。
そして、このS500で運転準備状態であると判定されると(S500:YES)、プロセスがS400へと戻り、ここまでの処理手順が繰り返される。
その後、上記S500で運転準備状態でないと判定されると(S500:NO)、上記S400にて復帰開始条件が充足され、上記S500で運転準備状態でないと判定されて以降、この状況のままで所定の持続時間が経過したか否かがチェックされる(S610)。
このS610で上記状況のままで持続時間が経過していないと判定される場合には(S610:NO)、条件充足・運転準備状態でないと判定された状況が維持されている間(S620:NO)、このS610〜S620が繰り返される。
この繰り返しの中で状況が変化した場合には(S620:YES)、プロセスがS400へと戻るが、状況が変化することなく(S620:NO)、持続時間が経過すると(S610:YES)、第1実施形態におけるS150と同様、操舵機構54(におけるアシストモータ63)に基づく復帰制御が開始される(S150)。
なお、本実施形態において、この復帰制御の開始直後は、アシストモータ63の駆動信号におけるデューティ比を時間経過に沿って上昇させていくことにより、操舵輪53の操舵速度を徐々に上昇させる制御がなされる(図8参照)。
この後、第1実施形態におけるS160〜180と同様に、報知処理が開始され(S160)、復帰制御に要する時間の計測が開始された後(S170)、その計測値が所定時間に到達したか否かがチェックされる(S180)。
このS180で、計測値が所定時間に到達していなければ(S180:NO)、上記S400,S500と同様に、復帰開始条件が充足しているか否かのチェック(S630)、運転準備状態であるか否かのチェックが行われる(S640)。
ただ、このS640では、単にステアリング51が操作されていることを検出するのではなく、ステアリング51に対する所定の操作量までの操作が行われたことを検出することになる。なぜなら、本実施形態のように、ステアリング51の操作を直接的に操舵輪53へと伝達させる構成では、復帰制御中、操舵輪53の操舵にステアリング51が追従しきれなくなることも想定され、この場合、ステアリング51が操舵方向と反対に操作されたものとして誤って検出されてしまう恐れがあるからである。そこで、本実施形態では、「所定の操作量」として、誤りとして発生し得る操作量が設定されており、これにより、復帰制御が誤って停止されないようにしている。
このS630,S640において、復帰開始条件が充足しなくなった場合(S630:NO)、および、復帰開始条件が充足しているものの(S630:YES)、上記S640で運転準備状態になった場合(S640:YES)には、第1実施形態におけるS210と同様、復帰制御の終了処理が行われてから(S650)、プロセスがS400へと戻り、以降の処理手順が繰り返される。
なお、この終了処理では、アシストモータ63の駆動信号におけるデューティ比を時間経過と共に減少させていくことにより、操舵輪53の操舵速度を徐々に低下させる制御がなされる(図8参照)。
一方、復帰開始条件が充足しており(S630:YES)、かつ、運転準備状態ではない場合には(S640:NO)、制御終了条件が充足されたか否かがチェックされる(S660)。本実施形態においては、舵角センサ73により検出される舵角が基準角に到達したことをもって、制御終了条件が充足されていると判定される。
このS660で制御終了条件が充足されていなければ(S660:NO)、プロセスが上記S180へと戻る一方、制御終了条件が充足されていれば(S660:YES)、第1実施形態におけるS205と同様に、上記S150にて開始した復帰制御を終了させるべき制御舵角が決定される(S670)。
こうして制御舵角が決定されたら、舵角センサ73により検出される舵角が制御舵角に到達するまで復帰制御が継続された後(S680:NO)、第1実施形態におけるS220〜S230と同様、復帰制御の終了処理が行われ(S690)、報知処理が行われてから(S230)、プロセスがS400へと戻り、以降の処理手順が繰り返される。
なお、このS690による終了処理においても、操舵輪53の操舵速度を徐々に低下させる制御がなされる(図8参照)。
3.作用、効果
以上説明したように、本実施形態では、フォークリフト1の停止や、フォークリフト1が運転準備状態になっていないなどといった諸条件に基づいて(S105〜S230、S400、S500)、操舵輪53の舵角が基準角まで戻る復帰制御が行われる(S150〜S230)。
これにより、上記条件の成立により復帰制御が行われることを知る運転者にとっては、フォークリフト1の進行方向が復帰制御により基準角に応じた方向になっていることを認識できるため、フォークリフト1の発進時に運転者が意図しない方向に進んでしまうようなことがなくなる。
また、上記実施形態では、運転者が搭乗していることをもって(S120、S182、S530)、運転準備状態であると判定されるため、運転者の搭乗中に復帰制御が行われてしまうことを防止することができる。
また、本実施形態では、ステアリング操作が行われた場合には復帰制御による操舵機構54の制御が停止されるため、運転者によるステアリング操作を優先できる。
また、本実施形態では、操舵輪53の舵角が許容範囲内にある場合には操舵輪復帰処理による操舵機構54の制御を行わないため、フォークリフト1の発進時に運転者が意図しない方向に進んでしまうのを防止しつつ、コントローラ75にかかる制御負荷を軽減することができる。
また、本実施形態では、ステアリング51の操作角度が±180度未満の範囲内にある状態で復帰制御が行われないようにS140における上記許容範囲を設定しているため、復帰制御にかかる制御負荷を効率良く軽減できる。そして、フォークリフト1の発進時における進行方向がほぼ直進方向であれば、フォークリフト1の左右近傍に壁が設けられていたとしても、復帰制御を行わずしてフォークリフト1発進時にその壁に接触しにくくすることが期待できる。
ところで、操舵輪53の操舵を停止するに際しては、上述したようにねじれの影響で操舵輪53がそれまでの操舵方向と逆方向に変位することから、本実施形態のように、基準角を所定角度通過してから操舵機構54の制御を停止することで、その逆方向への変位を相殺することができる。つまり、本実施形態では、基準角を通過する角度として、ねじれの影響で操舵輪53が変位する変位量に対応する角度を設定しているので、操舵輪53を所望の位置で停止させ易くなる。
また、本実施形態では、復帰制御における操舵機構の制御量(本実施形態ではアシストモータ63の平均電流)に基づいて、復帰制御を終了すべき舵角を決定しているため(S205)、操舵輪53をより確実に所望の位置で停止させ易くなる。
また、本実施形態によれば、運転者によってフォークリフト1に対して特定の操作が行われた場合に(S105:YES)、復帰制御が行われないため、運転者のニーズに応じたステアリング装置5を提供することができる。
また、本実施形態によれば、フォークリフト1が停止していないと判定されている間(S110:NO)は、復帰制御が行われないため、フォークリフト1の走行中に復帰制御が行われるのを確実に防止することができる。
また、本実施形態によれば、フォークリフト1を走行させるための走行操作が行われている状態で、復帰制御が行われてしまうことを防止することができる(S550)。
また、本実施形態では、まず、制御開始操作が実施されていれば(S510)、運転準備状態になっていないと判定されるため(S570)、他の条件により運転準備状態になるか否かを問わず、復帰制御を任意に実施させることができる。
また、本実施形態では、フォークリフト1の車速が走行している場合における速度となっている間、復帰制御が行われないため(S430→S450)、フォークリフト1の走行中に復帰制御が行われてしまうことを防止することができる。
また、本実施形態では、ステアリング装置5の動作モードが非復帰モードに切り替えられている間は復帰制御が行われないため(S410)、操舵角を基準角に戻すことを希望しないようなシーンにおいて、動作モードを非復帰モードに切り替えておくことにより、意図しない復帰制御が行われて操舵角が基準角に戻ってしまうことを防止することができる。
また、本実施形態では、復帰制御が開始された以降、ステアリング51に対する所定の操作量が検出されるまで操舵機構54の制御が継続され(S540→S570)、これにより、復帰制御が誤って停止されてしまうことを防止することができる。
4.その他の実施形態
本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態においては、本願発明の構成をフォークリフト1に適用した構成を例示したが、フォークリフト1以外の産業車両にも適用できることはいうまでもない。
上記実施形態では、キースイッチの切替状態をステアリング装置5側で判定していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、外部(例えば、フォークリフト1全体を統括制御する制御部)で判定されたキースイッチの切替状態を、ステアリング装置5が取得するようにしてもよい。
また、上記実施形態の運転者検出センサ77は、通常フォークリフト1を操作するための入力端とは別に設けられるようにされていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、ステアリング51、アクセル、ブレーキなどの運転者が通常フォークリフト1を操作
するための入力端として操作可能なものを利用して運転者の存在の有無を検出してもよい。
この場合、例えば、所定時間以上の間、ステアリング51、アクセル、ブレーキなどの操作がないことが検出された場合に、運転者の存在がないものと検出するとよい。
また、上記実施形態では、キースイッチがオフされてから所定時間の間に、運転者による特定のステアリング操作があった場合に、復帰制御を行わないようにしていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、スイッチボタンをフォークリフトのディスプレイ装置に設け、そのスイッチボタンが押された場合には復帰制御を行わないようにしてもよい。
また、上記実施形態の復帰制御では、操舵輪53の操舵速度が一定となるようにアシストモータ63を制御していたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、アシストモータ63駆動時のデューティ比が一定となるように、アシストモータ63を制御してもよい。
また、復帰制御では、操舵輪53の操舵速度を徐々に減速させてから操舵輪53を停止させるようにしてもよい。
すなわち、復帰制御は、少なくとも舵角センサ73により検出される舵角と基準角との差が所定の閾値以下となった場合に、操舵輪の操舵速度が所定速度以下となるように操舵機構54を制御してもよい。
そして、この場合、操舵輪復帰処理(図3)のS200以降の処理は、下記のようにするとよい。なお、以下の説明では、本実施形態に対して変更した処理についてのみ説明する。
すなわち、S200では、舵角センサ73により検出される舵角と基準角との差が所定の閾値(例えば0)以下か否かが判定される。なお、この閾値は、復帰制御の終了処理において減速し始めるべき値として予め定められたものである。つまり、この変形例におけるS200の処理では、舵角が復帰制御を減速し始めるべき角度に到達したか否かを判定していることになる。
そして、S200にて、舵角と基準角との差が閾値以下ではないと判定された場合には(S200:NO)、処理がS180に移行し、逆にS200にて舵角と基準角との差が閾値以下であると判定された場合には(S200:YES)、処理がS220に移行する。
S220では、舵角と基準角との差が閾値以下となったタイミングで、操舵輪53の操舵速度を徐々に減速させてから操舵輪53の操舵を停止させる。なお、この変形例では、アシストモータ63駆動時のデューティ比を通常よりも下げる(例えば通常の30%から20%に下げる)ことにより操舵輪53の操舵速度を所定速度以下に減速した後、デューティ比を0%まで漸減させていく。
以上説明した変形例にすれば、操舵輪53の操舵速度に応じて角速度を小さくすることで、操舵輪53に発生するねじれを小さくすることができるため、操舵輪53の操舵停止後に、ねじれた操舵輪53が元に戻ろうとする変位量を小さくすることができ、その結果、操舵輪53を所望の位置で停止させ易くなる。
また、上記実施形態の操舵輪復帰処理では、フォークリフト1が停止していること(S110:YES)を、復帰制御を行うための条件の1つとしていたが、本発明はこれに限
定されるものではなく、この条件が満たされていなくても復帰制御を行うようにしてもよい。
以下、この変形例について図9を用いて説明する。なお、図9において、図3の操舵輪復帰処理と同様の処理については同一のステップ番号を付している。また、以下の説明において、上記実施形態と同様の処理については説明を省略する。
図5に示す操舵輪復帰処理が開始され、S105にて操舵輪復帰処理の解除操作が行われたと判定されている間は(S105:YES)、S105の処理が繰り返し実行される。
そして、S105にて操舵輪復帰処理の解除操作が行われていないと判定されると(S105:NO)、処理がS120に移行し、運転者検出センサ77による検出結果に基づいて、フォークリフト1に運転者が存在するか否かが判定される。
以上説明した変形例では、上記実施形態と比較すると、フォークリフト1が停止していること(図3のS110:YES)が、復帰制御を行うための条件から外されているが、この変形例についても、フォークリフト1の運転者の存在などという条件の成立により復帰制御が行われることを知る運転者にとっては、フォークリフト1の進行方向が復帰制御により基準角に応じた方向になっていることを認識できる。このため、フォークリフト1の発進時に運転者が意図しない方向に進んでしまうようなことがなくなる。
また、上記実施形態では、復帰開始条件が充足しているか否か、運転準備状態になっているか否か、の判定に際して参照されるパラメータが、運転者の挙動に起因して検出結果が変化する検出パラメータとして採用されている。しかし、この検出パラメータとしては、運転者の挙動に起因して検出結果が変化するものであればよく、上記以外のパラメータを採用することができることはいうまでもない。
具体的な例としては、例えば、ステアリング装置5と無線通信可能な通信端末を運転者に所持させ、ステアリング装置5側の通信圏内にその通信端末が入ってきたことが検出されたことをもって、運転準備状態になったと判定するようにすることが考えられる。
また、上記第2実施形態では、制御開始操作が行われたことをもって、運転準備状態ではないと判定するように構成されているが(S510→S520)、このように判定するための「特定の操作」は、1以上の操作対象に対する一連の手順に従った操作が行われたことをもって、運転準備状態ではないと判定するように構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、動作モード切替スイッチが「復帰モード」に切り替えられていることをもって、動作モードが「復帰モード」であるか「非復帰モード」であるかが判定されるように構成されているが(S410)、このように判定するための操作は、1以上の操作対象に対する一連の手順に従った操作が行われたこととしてもよい。
また、上記実施形態では、電源オフ処理を経てフォークリフト1の電源がオフにされるように構成されたものを例示したが、この電源オフ処理を行うことなく、キースイッチがオフ状態に切り替えられたことをもって、フォークリフト1の電源がオフにされるように構成してもよい。
また、上記実施形態では、舵角センサ73により検出される舵角が基準角に到達したか否かが、復帰制御を終了する判断基準となっている構成を例示した(S200,S660,S680)。しかし、舵角が基準角に到達したときにオン状態となるリミットスイッチを用意しておき、このリミットスイッチがオン状態に到達した否かを、復帰制御を終了する判断基準としてもよい。
5.発明特定事項と実施形態との対応関係
以上説明した実施形態において、舵角センサ73が本発明における舵角検出手段に相当し、運転者検出センサ77,S120,S182,S530の処理が本発明における搭乗検知手段に相当し、車速センサ79,S107,S110,S430の処理が本発明における車速検出手段に相当し、トルクセンサ71,S130,S190,S540の処理が本発明におけるステアリング操作検出手段に相当する。また、S150〜S230の処理が本発明における復帰制御手段に相当する。また、S205,S670の処理が本発明における制御決定手段に相当し、トルクセンサ71およびキーセンサ81,S105,S550,S560の処理が本発明における操作検出手段に相当する。
また、S500が本発明における状態判定手段に相当し、また、S510の処理が本発明における制御開始操作を受け付ける操作受付手段に相当し、操作部6への運転者の操作内容を検出するコントローラ75が本発明におけるモード切替手段に相当する。