JP5800637B2 - ウレタン系熱可塑性エラストマー組成物および外装部品 - Google Patents
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ポリエステル系熱可塑性エラストマーについて、防振性と緩衝性の観点から見てみると、材料自体が備える硬さに応じた緩衝性は備えるものの、防振性が低いという欠点があった。
ポリエステル系熱可塑性エラストマー以外の材質には、スチレン系熱可塑性エラストマーがあるが、従来から防振材料として用いられてはいるものの、耐摩耗性が低く、外装部品として耐久性が不十分であるという欠点があった。
また、ウレタン系熱可塑性エラストマーについては、粘着性や変形性に優れる粘着部材として知られており、例えば特開2003−86961号公報(特許文献1)の記載があるものの、防振性、緩衝性、成形性に優れたウレタン系熱可塑性エラストマーは知られていなかった。
すなわち、損失正接(以下「tanδ」ともいう)のピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含み、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
一方、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は、防振性にやや難があるものの成形性や緩衝性を改良しうる。
そして、こうしたウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)の両者を含むウレタン系熱可塑性エラストマー組成物では、防振性、緩衝性、成形性に優れており、また、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるため、耐久性にも優れるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さが、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さよりも硬いため、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)との間で、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のソフトセグメントの割合を相対的に多くし、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のハードセグメントの割合を相対的に多くすることができ、防振性、緩衝性、成形性のバランスのとれた組成物とすることができる。
損失正接のピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上であり、実質的に1.0以下であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物としたため、耐久性、防振性、緩衝性、成形性に優れたウレタン系熱可塑性エラストマー組成物である。
ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)を互いに相溶するウレタン系熱可塑性エラストマーとしたため、それぞれのウレタン系熱可塑性エラストマー単独の場合のtanδのピーク温度、ピーク値からはシフトした新たなピーク温度、ピーク値を得ることができる。
ウレタン系熱可塑性エラストマーは、tanδのピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含む熱可塑性エラストマー組成物である。以下これらの成分について説明する。
また、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は、tanδのピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であって、tanδのピーク温度が低く分子内のソフトセグメントは柔軟な分子構造を持っている。また、tanδのピーク値が1.0未満であることから分子内のソフトセグメントの割合が少ない。換言すれば、ハードセグメントの量が多く成形性に優れている。こうしたウレタン系熱可塑性エラストマー(B)には、アジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーや、ポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。
そして、ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さは、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のその硬さよりも硬いことが好ましい。
ポリエーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマーは、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)として有用なポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーと相容しないためである。ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と(B)とが相容しない場合には、tanδのピーク温度を低温側にシフトさせることが困難である。したがって、二成分の混合によってtanδのピーク温度を調整し難く、またtanδのピーク温度を低温側にシフトさせることで緩衝性を高めることがし難いためである。
試料1〜試料12について、こうして測定したtanδに関し、23℃、28Hzの際のtanδの値、tanδのピーク値、ピーク値となるときの温度をそれぞれ図1に示した。
テーバー摩耗試験は、試験片φ130mm、厚み2mmtの試験片について、テーバー摩耗試験機(テスター産業株式会社製、AB−101)を用いて、H−22摩耗輪、荷重1kgf、回転速度60rpmの条件において、500回転させたときの摩耗量(g)を測定した。
また、crawing試験は、2mmtの試験片にポリカーボネート製の人工爪を試験片に対して垂直に500gfの荷重で押し当て、試験片上を2cm擦ったときの傷の有無を目視で観察した。傷がつかなかったものを“○”とし、傷がついてしまったものを“×”とした。
加振試験は、各試料の熱可塑性エラストマー組成物を直方体形状に成形して支持脚を製造して行った。被支持体を四つの支持脚で支持するように組まれた振動試験装置に、各試料からなる支持脚を取り付け、この振動試験装置を加振テーブルに固定した。そして、一定加速度2.94m/s2(0.3G)、周波数7Hz〜200Hzの範囲で上下方向(Z方向)に振動させて共振周波数f0(Hz)を求めた。伝達倍率Q(dB)は、共振周波数f0(Hz)において筐体の加速度a1に対し、被支持体の加速度a2を測定し、20Log(a2/a1)の関係式で換算して求めた。伝達倍率Qの結果も図1に示す。
最大加速度2100未満を“◎”、2100以上2500未満を“○”、2500以上3000未満を“△”、3000以上を“×”と評価した。
衝撃緩衝性試験の結果から、最大加速度が2100未満であった試料3,4,7について緩衝性が特に優れており、最大加速度が2500未満であった試料1,2,5、8,9について緩衝性が優れていることがわかった。
成形性の評価は、射出成形の条件として、30℃の金型内に、各試料の組成物を射出し、30秒の固化時間の後に金型を開いて成形体を取り出したとき、組成物が固化しているかどうか、固化している場合には成形体の表面を観察してヒケがあるかどうかを評価した。固化していなかった場合に“×”、固化していたがヒケがあった場合に“△”、ヒケがなかった場合に“○”とした。また、前記条件において、固化時間を15秒に短縮してもヒケがみられなかったものを“◎”とした。
エーテル系ウレタン系熱可塑性エラストマーを用いた試料10〜試料12は、ポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーと相溶せず、緩衝性も悪かった。
12 アルミニウム板
13 試験片
14 ヒンジ
Claims (5)
- 損失正接(tanδ)のピーク温度が10℃以上50℃以下であり、そのピーク値が1.0以上であるポリカーボネート系ウレタン系熱可塑性エラストマーであるウレタン系熱可塑性エラストマー(A)と、損失正接のピーク温度が−40℃以上10℃未満であり、そのピーク値が1.0未満であるアジペートエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーおよびポリカプロラクトンエステル系ウレタン系熱可塑性エラストマーの双方または何れか一方であるウレタン系熱可塑性エラストマー(B)と、を含み、JIS K6253規定のデュロメータ硬さがA70°以上であるウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
- ウレタン系熱可塑性エラストマー(B)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さが、ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)のJIS K6253規定のデュロメータ硬さよりも硬い請求項1記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
- 損失正接のピーク温度が−20℃〜30℃であり、そのピーク値が0.45以上である請求項1または請求項2記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
- ウレタン系熱可塑性エラストマー(A)とウレタン系熱可塑性エラストマー(B)は互いに相溶するウレタン系熱可塑性エラストマーである請求項1〜請求項3何れか1項記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物。
- 請求項1〜請求項4何れか1項記載のウレタン系熱可塑性エラストマー組成物からなる外装部品。
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