JP3020022B2 - 微細セル構造ポリウレタンエラストマー及びその製造方法 - Google Patents

微細セル構造ポリウレタンエラストマー及びその製造方法

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JP3020022B2
JP3020022B2 JP7273610A JP27361095A JP3020022B2 JP 3020022 B2 JP3020022 B2 JP 3020022B2 JP 7273610 A JP7273610 A JP 7273610A JP 27361095 A JP27361095 A JP 27361095A JP 3020022 B2 JP3020022 B2 JP 3020022B2
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徹 長嶋
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ビーエーエスエフ イノアック ポリウレタン株式会社
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、微細セルにより構
成された、比較的低発泡のポリウレタンエラストマー及
びその製造方法に関する。本発明の微細セル構造ポリウ
レタンエラストマー(以下、エラストマーということも
ある。)は、機械的強度が大きく、且つ、大荷重を繰り
返し受けた時の動的特性、特に疲労破壊やヘタリ等にお
ける耐久性に優れるため、自動車などの補助スプリング
の緩衝材等として利用される。
【0002】
【従来の技術】微細セル構造を有し、MDI等をイソシ
アネート成分とするポリウレタンエラストマーは、従来
より防振材、衝撃吸収材等に用いられている。そのよう
なエラストマーは、従来、例えば、エチレングリコー
ル、プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコー
ル、グリセリン及びトリメチロールプロパン等に、エチ
レンオキサイド、プロピレンオキサイド或いは1,4−
ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加さ
せたもの1種又は2種以上と、マロン酸、マレイン酸、
アジピン酸及びテレフタル酸等の有機酸類の1種又は2
種以上とを縮重合させて得られる数平均分子量が100
0〜3000のポリエステルポリオールと、2,4−ト
リレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシア
ネート並びにそれらの混合物、ジフェニルメタン−4,
4’−ジイソシアネート(MDI)及びナフタレン−
1,5−ジイソシアネート(NDI)などのポリイソシ
アネートと、を反応させて得られるイソシアネート末端
プレポリマー(以下、NCO末端プレポリマーとい
う。)に、水、触媒及び整泡剤などからなる発泡成分を
加え、攪拌、混合して反応させることにより得られてい
る。
【0003】上記各種のポリイソシアネートの中では、
特に、MDIが安価で、取り扱い易く、また、得られる
エラストマーが適度な機械的強度及び耐久性を有するた
め、自動車向けの防振材、衝撃吸収材、或いは家具向け
のクッション材等として多用されている。しかし、その
耐久性は、プレポリマーの調製に使用するポリエステル
ポリオールに対するMDIの配合量により変化すること
が知られており、MDIの量比が低い場合は、比較的容
易に耐久性に優れるエラストマーを得ることができる。
一方、この量比が高い場合は、プレポリマーの粘度が低
くなり、発泡成分等との攪拌、混合が均一になされ、セ
ル径の揃った硬度のバラツキの小さいエラストマーが得
られるものの、耐久性は低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題点を
解決するものであり、MDIの量比が高いNCO末端プ
レポリマーを使用しながら、この量比が低いプレポリマ
ーを使用した場合と同等以上の機械的強度及び耐久性を
有するエラストマー、及びその製造方法を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1発明の微細セル構造
ポリウレタンエラストマーは、イソシアネート末端プレ
ポリマー、水酸基末端プレポリマー、ポリオール及び発
泡成分を混合、攪拌し、発泡硬化させて得られるエラス
トマーにおいて、上記イソシアネート末端プレポリマー
は、数平均分子量が800〜3000のポリエステルポ
リオール(a)と、ジフェニルメタン−4,4’−ジイ
ソシアネートとを、1:0.6〜3.0の重量比で反応
させ、その反応生成物100重量部に対して、更に0.
1〜5.0重量部の低分子量ポリオール(a)を添加
し、反応させて得られるものであり、上記水酸基末端プ
レポリマーは、数平均分子量500〜3000のポリエ
ステルポリオール(b)及び/又はポリエーテルポリオ
ール(a)とポリイソシアネートとを、1:0.05〜
0.5のモル比で反応させて得られるものであり、上記
ポリオールは、数平均分子量が250〜8000のポリ
エステルポリオール(c)及び/又はポリエーテルポリ
オール(b)から選ばれる少なくとも1種であって、上
記発泡成分は、少なくとも水及び低分子量ポリオール
(b)を含むものであることを特徴とする。
【0006】上記「ポリエステルポリオール(a)」と
しては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、
プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、
グリセリン及びトリメチロールプロパン等に、エチレン
オキサイド、ジエチレンオキサイド、プロピレンオキサ
イド或いは1,4−ブチレンオキサイド等のアルキレン
オキサイドを付加させたもの1種又は2種以上と、マロ
ン酸、マレイン酸、アジピン酸及びテレフタル酸等の有
機酸類の1種又は2種以上とを縮重合させて得られるも
のを使用することができる。
【0007】上記ポリエステルポリオール(a)として
は、特にポリカプロラクトンポリエステルポリオール、
ポリカーボネートポリエステルポリオール等の非縮合系
のポリエステルポリオールが好ましい。上記の各種ポリ
エステルポリオールは1種のみを用いてもよいし、2種
以上を併用してもよい。ポリエステルポリオール(a)
の「数平均分子量」は「800〜3000」の範囲であ
り、この分子量が1000〜2500の範囲であれば、
ポリイソシアネートとの反応が容易に進行し、且つ繰り
返しの機械疲労に耐えるのに適した分子鎖長であってよ
り好ましい。
【0008】上記「ジフェニルメタン−4.4’−ジイ
ソシアネート」は純MDIである。純MDIは官能基数
が2であり、上記ポリエステルポリオールとの反応で生
成するNCO末端プレポリマーが鎖構造となり、得られ
るエラストマーが優れた耐久性を有するものとなる。純
MDI以外の、例えば粗MDI、カルボジイミド変性M
DIは平均官能基数が2〜3であり、NCO末端プレポ
リマーに乱れた網状構造が形成される。そのため、得ら
れるエラストマーは伸びが小さく、特に大荷重が繰り返
し加わった場合の疲労破壊等の耐久性に劣ったものとな
る。
【0009】上記「NCO末端プレポリマー」は、ポリ
エステルポリオール(a)と純MDI(以下、MDIと
いう。)を「1:0.6〜3.0の重量比」で反応さ
せ、その反応生成物に更に低分子量ポリオール(a)を
添加し、反応させて得られる。MDIの量比が0.6未
満では、プレポリマー中のフリーのMDI含有量が少な
くなり、プレポリマー調製時の液の粘度が上昇して作業
性が低下する。また、この量比が3.0を越える場合
は、フリーのMDI含有量が多く、発泡剤との反応が速
くなるため、セル径及びその形状等が不均一となり、更
にエラストマーの機械的強度及び耐久性等も低下する。
上記量比は1.0〜2.8の範囲が好ましく、この範囲
であればプレポリマー調製時の作業性、及びエラストマ
ーの耐久性等がより向上する。
【0010】上記「低分子量ポリオール(a)」として
は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,
4−ブチレングリコール、1,5−ペンタメチレングリ
コール、1,6−ヘキサメチレングリコール及びトリメ
チロールプロパン等の、末端に2乃至3個の活性水素基
を有する短鎖長の低分子量アルキレンポリオールなどを
使用することができる。低分子量ポリオール(a)は、
上記のポリエステルポリオール(a)とMDIとの反応
生成物100重量部〔少量のポリエステルポリオール
(a)とMDIが未反応のまま残ることもあり得るが、
ここでは使用するポリオールとMDIとの合計量を10
0重量部とする。〕に対して、「0.1〜5.0重量
部」添加される。
【0011】上記添加量が0.1重量部未満では、NC
O末端プレポリマーに実質的に架橋構造が形成されな
い。また、5.0重量部を越える場合は、プレポリマー
中のハードセグメントが増加するため、成型品の柔軟性
が低下し、耐久性に劣ったものとなり、同時にプレポリ
マーの粘度が高くなり、作業性も低下する。低分子量ポ
リオール(a)の添加量は1.0〜4.0重量部の範囲
が好ましく、この範囲であればプレポリマー中に適度な
架橋構造が形成され、より優れた耐久性等を有するエラ
ストマーが得られる。
【0012】上記「水酸基末端プレポリマー」(以下、
OH末端プレポリマーという。)を形成するための上記
「ポリエステルポリオール(b)及び/又はポリエーテ
ルポリオール(a)」は、その「数平均分子量」が「5
00〜3000」のポリオールである。ポリエステルポ
リオール(b)或いはポリエーテルポリオール(a)と
しては、その分子量が上記範囲内のものであれば、エラ
ストマー生成に通常使用されるものを、特に制限される
ことなく使用することができる。
【0013】また、ポリエステルポリオール(b)とし
て、ポリエステルポリオール(a)と同一のものを使用
してもよいし、分子量が上記範囲内の他のポリエステル
ポリオールを使用してもよい。ポリエステルポリオール
(b)或いはポリエーテルポリオール(a)の数平均分
子量は、特に1000〜2500の範囲が好ましい。こ
の分子量範囲であれば、得られるOH末端プレポリマー
とポリオール及び発泡成分との分散性が良好であり、且
つ優れた耐久性等を有するエラストマーを得ることがで
きる。
【0014】尚、上記ポリエーテルポリオール(a)と
しては、具体的には、エチレングリコール、プロピレン
グリコール、トリメチロールプロパン、トリエタノール
アミン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン等の
多価アルコールを、エチレンオキサイド、プロピレンオ
キサイド等のアルキレンオキサイドによって鎖延長した
一般的なポリエーテルポリオールの他、ポリマーポリオ
ール、アミン変性ポリオール等の変性ポリオールなどが
挙げられる。
【0015】上記ポリエステルポリオール(b)或いは
ポリエーテルポリオール(a)は、それぞれ1種のみを
使用してもよいし、2種以上を併用してもよく、また、
両者の1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0016】また、OH末端プレポリマーを形成するた
めの上記「ポリイソシアネート」としては、2,4−ト
リレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシア
ネート及びそれらの混合物、MDI、NDI等、何ら制
限されることなく使用することができる。特に第2発明
に例示したポリイソシアネート、中でも3,3’−ジメ
チル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート(TO
DI)、NDI及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジ
フェニルメタンジイソシアネートが好適であり、これら
のポリイソシアネートを使用すればより優れた耐久性を
有するエラストマーが得られる。
【0017】OH末端プレポリマーは、ポリエステルポ
リオール(b)及び/又はポリエーテルポリオール
(a)1モルに対して、ポリイソシアネートを「0.0
5〜0.5モル」反応させて得られる。ポリイソシアネ
ートが0.05モル未満と少ない場合は、エラストマー
の耐熱性、機械的強度及び耐久性等が低下する。また、
0.5モルを越える場合は、OH末端プレポリマーの粘
度上昇、水との親和性不足及び層分離等を生じ、NCO
末端プレポリマーとの反応が不均一となり、得られるエ
ラストマーの耐久性等が低下する。上記ポリイソシアネ
ートのモル数は0.1〜0.4モルの範囲が好ましく、
この範囲であればより優れた耐熱性等を有するエラスト
マーを得ることができる。
【0018】更に、OH末端プレポリマーは、第3発明
のように、ポリエステルポリオール(a)を100重量
部とした場合に、「10〜40重量部」使用することが
好ましい。この使用量が10重量部未満では、エラスト
マー原料全体に対するTODI等のポリイソシアネート
の割合が低くなり、エラストマーの耐熱性及び耐久性が
低下する傾向にある。
【0019】また、40重量部を越える場合は、OH末
端プレポリマーの割合が高くなり、ポリオール及び発泡
成分中の水に対する分散性の低下等で、均一な反応が阻
害されることがある。そのため得られるエラストマーの
耐熱性及び耐久性が低下し、更にTODI等のポリイソ
シアネートからなる構成部分が増加するため、エラスト
マーが硬くなることもある。尚、上記使用量が15〜3
5重量部の範囲であれば、OH末端プレポリマーのポリ
オール及び水に対する分散性がより良好となり、優れた
性能のエラストマーが得られ、より好ましい。
【0020】上記「ポリオール」は、NCO末端プレポ
リマー或いはフリーのMDIと反応するものであり、数
平均分子量が250〜8000のものを使用することが
できる。分子量がこの範囲であれば、優れた耐久性等を
有するエラストマーが得られる。ポリエステルポリオー
ル(c)としては、ポリエステルポリオール(a)又は
(b)と同一のもの又はそれらを混合したものを使用し
てもよいし、分子量が上記範囲内の他のポリエステルポ
リオールを使用してもよい。また、ポリエーテルポリオ
ール(b)としては、ポリエーテルポリオール(a)と
同一のものを使用してもよいし、分子量が上記範囲内の
他のポリエーテルポリオールを使用してもよい。
【0021】ポリエステルポリオール(c)或いはポリ
エーテルポリオール(a)は、それぞれ1種のみを使用
しても良いし、2種以上を併用してもよい。また、両者
の1種又は2種以上を混合して用いてもよい。また、上
記両ポリオールの分子量は、特に500〜4000の範
囲が好ましく、この分子量範囲であれば、OH末端プレ
ポリマー及び発泡成分との分散性が良好であり、優れた
耐久性等を有するエラストマーが得られる。尚、両ポリ
オールは、OH末端プレポリマー及び発泡成分との混合
温度において液状であるものが好ましく、そのようなポ
リオールであれば、均一な分散が容易であり、混合時の
作業性にも優れる。
【0022】更に、上記のポリオールは、第4発明のよ
うに、ポリエステルポリオール(a)を100重量部と
した場合に、「100〜400重量部」使用することが
好ましい。この使用量が100重量部未満では、エラス
トマー原料全体に対する水の量比が相対的に高くなり、
発泡、硬化反応が速くなって、セル径が不均一となる。
【0023】また、上記の使用量が400重量部を越え
る場合は、エラストマー原料全体に対する水の量比が低
くなって、発泡、硬化反応が遅れ、脱型時にワレが発生
し易くなる。加えて、原料混合物の粘度が上昇し、水の
分散性が低下して、均一な反応が阻害されることがあ
り、エラストマーの耐熱性及び耐久性等が低下する。
尚、上記使用量が200〜350重量部の範囲であれ
ば、ポリオールに対する水の分散性が良好となり、優れ
た性能のエラストマーが得られる。
【0024】上記「発泡成分」は、主発泡剤である水の
他に、低分子量ポリオール(b)、触媒及び整泡剤等を
混合、分散させたものである。発泡成分中の水と低分子
量ポリオール(b)とのモル比を1:5〜15、特に
1:7〜13程度にすれば、適度なセル径であって、且
つ適度な弾性を有するエラストマーが得られ、耐久性が
より向上するため好ましい。
【0025】また、水と低分子量ポリオール(a)との
モル比が1:0.3〜3、特に0.5〜1.5程度とな
る量の発泡成分を使用すれば、得られるエラストマーは
分子配列が整った網状構造となり、機械的強度及び特に
大荷重を繰り返し受けた時の疲労破壊やヘタリ等の耐久
性に優れたものとなり好ましい。尚、低分子量ポリオー
ル(b)としては、同(a)と同様のものを用いること
ができるが、相対的に炭素数の多い(分子量の大きい)
ものが好ましい。
【0026】第7発明の微細セル構造ポリウレタンエラ
ストマーの製造方法は、数平均分子量が800〜300
0のポリエステルポリオール(a)と、ジフェニルメタ
ン−4,4’−ジイソシアネートとを、1:0.6〜
3.0の重量比で反応させ、その後、反応生成物100
重量部に対して、0.1〜5.0重量部の低分子量ポリ
オール(a)を添加し、反応させて、部分的に架橋され
たイソシアネート末端プレポリマーを得、次いで、該イ
ソシアネート末端プレポリマー、数平均分子量が500
〜3000のポリエステルポリオール(b)及び/又は
ポリエーテルポリオール(a)とポリイソシアネートと
を、1:0.05〜0.5のモル比で反応させて得られ
る水酸基末端プレポリマー、数平均分子量が250〜8
000のポリエステルポリオール(c)及び/又は、ポ
リエーテルポリオール(b)から選ばれる少なくとも1
種のポリオール、及び少なくとも水及び低分子量ポリオ
ール(b)を含む発泡成分、を混合、攪拌し、反応させ
ることを特徴とする。
【0027】上記の製造方法においては、ポリエステル
ポリオール(a)と比較的多量のMDIとを反応させた
後、その反応生成物に、OH末端プレポリマー、ポリオ
ール及び発泡成分を添加する前に(発泡剤が存在しない
状態で)、低分子量ポリオール(a)を添加して反応さ
せることを特徴とする。それによってその一部が架橋さ
れたNCO末端プレポリマーを調製することができ、こ
のNCO末端プレポリマーに、OH末端プレポリマー、
ポリオール及び発泡成分を組み合わせて使用し、エラス
トマーを製造する。
【0028】尚、NCO末端プレポリマー、OH末端プ
レポリマー、ポリオール及び発泡成分は、NCO末端プ
レポリマーのイソシアネート当量と、OH末端プレポリ
マー、ポリオール及び発泡成分の合計水酸基当量とが
0.7〜1.3の範囲となるように混合され、使用され
る。また、必要に応じてその他の助剤を使用することも
できる。そのような助剤としては、エラストマー原料の
粘度を低下させ、攪拌、混合を容易にするための各種の
液状難燃剤、希釈剤或いは酸化防止剤、紫外線吸収剤、
着色剤等が挙げられる。それらの使用量は得られるエラ
ストマーの性能を著しく損ねない限り特に限定はされな
い。
【0029】これまでの技術では、ポリエステルポリオ
ールに対するMDIの量比が比較的高い、例えば1:
0.6程度以上のNCO末端プレポリマーを使用して得
られるエラストマーでは、特に大荷重を繰り返し受ける
ような場合の耐久性が必ずしも十分ではない。しかし、
本発明においては、特にポリカーボネートポリエステル
ポリオール等を使用し、これとMDIとの反応生成物
に、発泡剤及び架橋剤として作用する水等を接触させる
前に、少量の低分子量ポリオールを作用させて得られる
NCO末端プレポリマーを使用する。
【0030】上記NCO末端プレポリマーでは、その構
成分子の一部が架橋反応により結合され、内部構造が強
化されている。本発明では、このNCO末端プレポリマ
ーに、特に耐熱性の高いTODI等のポリイソシアネー
トを使用して得られるOH末端プレポリマー、及びポリ
オール、特にポリカーボネートポリエステルポリオール
等を併用し、更に発泡成分中に主発泡剤である水の10
倍量程度の低分子量ポリオールを配合している。
【0031】上記の原料組成とすることにより、前記の
MDIの量比が1:0.6〜3.0と高いNCO末端プ
レポリマーを用いたにもかかわらず、MDIの量比が低
いプレポリマーを使用した場合と同等以上の優れた耐久
性等を有するエラストマーを得ることができる。また、
このMDIの量比が高いNCO末端プレポリマーは、第
6発明のように粘度が低く、発泡成分等との攪拌、混合
が容易であり、セル径が均一で、硬度のバラツキの小さ
いエラストマーが得られる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、実施例、比較例によって本
発明を詳しく説明する。 (1) 使用原料 (a)純MDI:日本ポリウレタン工業株式会社製、商品
名「ミリオネートMT」
【0033】(b)ポリエステルポリオール ポリエチレンアジペートポリエステルポリオール:大
日本インキ化学工業株式会社製、商品名「ODX−28
6」(数平均分子量;1000、水酸基価;112) ポリカプロラクトンポリエステルポリオール:ダイセ
ル化学工業株式会社製、商品名「PLACCEL L2
12AL」(数平均分子量;1250、水酸基価;9
0)
【0034】ポリカーボネートポリエステルポリオー
ル:ダイセル化学工業株式会社製、商品名「PLACC
EL CD−210HL」(数平均分子量;1000、
水酸基価;112) ポリ(エチレン/ブチレン)アジペートポリエステル
ポリオール:大日本インキ化学工業株式会社製、商品名
「ODX−105」(数平均分子量;2000、水酸基
価;56) ポリ(3−メチル1,5−ペンタンジオール)アジペ
ートポリエステルポリオール:大日本インキ化学工業株
式会社製、商品名「ODX−2420」(数平均分子
量;2000、水酸基価;56)
【0035】(c)低分子量ポリオール (a) エチレングリコール:日曹油化工業株式会社製(分子
量;62、水酸基価;1808) 1,4−ブチレングリコール:BASF社製(分子
量;90、水酸基価;1245) (d)低分子量ポリオール (b) 上記(c) のと同じもの
【0036】(e)OH末端プレポリマー 上記ポリエステルポリオール1モルに対してTOD
Iを0.3モル反応させて得られたプレポリマー 上記ポリエステルポリオール1モルに対してTOD
Iを0.3モル反応させて得られたプレポリマー 尚、TODIとしては、いずれも日本曹達株式会社製、
商品名「TODI」を使用した。
【0037】(f)水 イオン交換水 (g)触媒 トリエチレンジアミン(主成分):三共エアプロダクツ
社製、商品名「DABCO 33LV」 (h)整泡剤 シリコーン系:東レ・ダウコーニング・シリコーン社
製、商品名「SF−2962」
【0038】(2) 各物性の測定方法 実施例及び比較例で得られた微細セル構造ポリウレタン
エラストマーについて、以下の方法により性能試験を行
った。 (a)密度:試片(寸法;120×100×3mm)の重
量を、その体積で除した。 (b)引張強度及び破断時伸び:JIS K 6301に
準拠、3号試験片を使用、引張速度;500mm/分 (c)引裂強度:JIS K 6301に準拠、B型試験
片を使用、引張速度;500mm/分
【0039】(d)耐久性:試片に5kNの負荷を2Hz
の周期で繰り返し加え、破壊に至るまでの回数を記録す
る。尚、30万回負荷を加えても破壊しないことを目標
とする。 (e)ヘタリ:上記耐久性試験前の試片の高さから試験後
の試片の高さを減じた値を、試験前の試片の高さで除し
て100倍(%)して表す。 (f)NCO末端プレポリマーの粘度:粘度計;B型(ト
キメック社製)、ロータ回転数;30rpm、ロータN
o;No3、測定温度;40℃
【0040】本発明のエラストマーの成型及び脱型は下
記の広範囲の条件下に実施することができる。 成型時のNCO末端プレポリマーの温度;20〜60
℃(40℃) 成型時の発泡成分の温度;20〜60℃(30℃) 成形型の温度;30〜100℃(50℃) 反応硬化温度;30〜120℃(50℃) 脱型に要する時間;25〜40分(30分) 尚、各実施例及び比較例1〜9においては、上記括弧内
の条件で成型と脱型を行った。比較例10〜11につい
ては、90℃、55℃、90℃、50℃、3
0分の各条件で行った。
【0041】(3) 実施例、比較例のエラストマー原料の
組成 実施例1〜4〔NCO末端プレポリマーを調製するため
のポリエステルポリオールとして、〜の縮合系或い
は非縮合系のものを使用した例〕、実施例5〜7〔ポリ
エステルポリオールを使用し、ポリオールの種類を変
えた例〕、実施例8〔低分子量ポリオール(a)の種類
と量を変えた以外は、実施例3と同様の組成〕、実施例
9〔OH末端プレポリマーの種類を変えた以外は、実施
例3と同じ組成〕及び比較例1〜11のエラストマー原
料の組成を、表1、表2及び表3に示す。
【0042】尚、上記各表中の各成分の割合は全てポリ
エステルポリオール〜を100重量部とした場合の
重量部で表されている。また、低分子量ポリオール
(a)の欄の括弧内の数値は、ポリエステルポリオール
〜とMDIの合計量を100重量部として換算した
低分子量ポリオール(a)の量比を示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】実施例1〜9及び比較例1〜11 表1、表2及び表3のプレポリマーの項に示すポリエス
テルポリオール〜とMDIとを、反応器中へ投入し
て反応させ、その後、得られた反応生成物に低分子量ポ
リオール(a)を添加し(各実施例と比較例4、5、
8、9の場合)、攪拌、混合して反応させ、NCO末端
プレポリマーを調製した。一方、前記(1)使用原料、(e)
OH末端プレポリマーの項に記載のポリオールとポリ
イソシアネートを使用し、上記と同様にしてOH末端プ
レポリマー(各実施例と比較例6〜9の場合)を調製し
た。また、発泡剤(水)、低分子量ポリオール(b)、
触媒及び整泡剤を混合し、均一に攪拌して発泡成分とし
た。
【0047】上記NCO末端プレポリマーと、OH末端
プレポリマー、それにポリオール及び発泡成分を、それ
ぞれ所定の温度に調温し、NCO末端プレポリマーのイ
ソシアネート当量と、OH末端プレポリマー、ポリオー
ル及び発泡成分の合計水酸基当量の比が1.1となる量
比(比較例10、11を除く)で攪拌、混合した後、金
型中へ注型し、比較的低発泡のポリウレタンエラストマ
ーを得た。得られたエラストマーの物性等を上記方法に
従って測定、評価した。実施例1〜9及び比較例1〜1
1の結果を、それぞれ表4、表5に示す。
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】表4の結果によれば、本発明において特定
するNCO末端プレポリマー、OH末端プレポリマー、
ポリオール及び発泡成分を使用した実施例1〜9では、
得られたエラストマーは、使用した各成分の種類或いは
使用量等にかかわらず、優れた引張強度、引裂強度等を
有していることが分かる。また、耐久性試験の結果で
も、いずれも30万回の繰り返し荷重の負荷の後も疲労
破壊を生ずることがなく、且つヘタリ量も3〜6%と小
さく、非常に優れた耐久性を有することが分かる。更
に、NCO末端プレポリマーはいずれも液状であり、粘
度は740〜1000cpsと低く、作業性も良好であ
った。
【0051】一方、表5の結果によれば、OH末端プレ
ポリマーと低分子量ポリオール(a)を使用しなかった
以外は、実施例1〜3と同様にしてエラストマーを製造
した比較例1〜3では、引張強度、引裂強度及びNCO
末端プレポリマーの粘度は、各実施例とほとんど同等の
性能を有しているものの、耐久性試験においては3〜5
万回の繰り返し負荷で疲労破壊を起こし、従ってヘタリ
量の測定はできず、耐久性に劣るエラストマーであるこ
とが分かる。
【0052】また、OH末端プレポリマーを使用しなか
った以外は、実施例2〜3と同様にしてエラストマーを
製造した比較例4〜5では、引張強度、引裂強度及びN
CO末端プレポリマーの粘度は、各実施例とほとんど同
等の性能を有しているものの、13〜15万回の繰り返
し負荷で疲労破壊を起こし、耐久性に劣る結果となっ
た。尚、NCO末端プレポリマー調製時に、低分子量ポ
リオールを添加しなかった比較例6〜7の結果は、比較
例4〜5とほぼ同様であった。
【0053】更に、ポリオールを使用しなかった以外
は、実施例3と同様にしてエラストマーを製造した比較
例8では、発泡が速く、セルが不均一となり、物性が低
下し、耐久試験でも2万回の繰り返し負荷で疲労破壊
し、極めて性能の劣るエラストマーであることが分か
る。一方、ポリオールを上限値を越えて使用した以外
は、実施例3と同様にしてエラストマーを製造した比較
例9では、ポリオール由来のソフトセグメントが増加し
たため、各物性及び耐久性ともに、比較例8と同様に大
きく低下していることが分かる。
【0054】また、MDIの量比を0.35と下限未満
にして、調製したNCO末端プレポリマーを使用した比
較例10〜11では、引張強度、引裂強度は、各実施例
と同等の性能を有するものの、耐久性試験では15万回
の繰り返し負荷で疲労破壊し、耐久性に劣るものであっ
た。尚、比較例10〜11のNCO末端プレポリマーは
40℃では固体であるため、プレポリマーの温度を90
℃にまで高くしてエラストマーを製造する必要があっ
た。
【0055】
【発明の効果】第1発明の微細セル構造ポリウレタンエ
ラストマーでは、ポリエステルポリオールに対するMD
Iの量比が比較的高いNCO末端プレポリマーを使用し
ている。そのためポリイソシアネートの量比が低いプレ
ポリマーに比べ、より低い温度においてもなお粘度が低
く、そのため攪拌効率がよく、作業性に優れる。
【0056】また、上記のNCO末端プレポリマーに、
OH末端プレポリマーとともに更にポリオールを配合す
ることにより、疲労破壊或いはヘタリを改良し、MDI
の量比の低いNCO末端プレポリマーを使用した場合と
同等以上の耐久性等を有するエラストマーが得られる。
尚、第2発明に特定するポリイソシアネートを使用して
OH末端プレポリマーを調製し、或いは第3〜4発明の
OH末端プレポリマー又はポリオールの配合量とすれ
ば、より優れた耐久性等を有するエラストマーを得るこ
とができる。
【0057】更に、第5発明では、耐久回数が30万回
以上、ヘタリ量が5%以下である優れた耐久性を有する
エラストマーが得られ、第6発明では、NCO末端プレ
ポリマーの粘度が40℃で800〜1000cpsであ
り、作業性に優れたエラストマー原料となっている。ま
た、第7〜10発明では、低分子量ポリオールによって
一部架橋された特定のNCO末端プレポリマー、OH末
端プレポリマー、ポリオール、及び主発泡剤である水と
低分子量ポリオールとを含む発泡成分を使用し、更に各
プレポリマーを構成する成分等を特定することにより、
上記第1〜6発明の優れた特性を有するエラストマーを
製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】耐久性試験に用いるエラストマーを製造するた
めの金型及び成型品の断面図である。
【図2】金型の上型を取り外し、下型を3分割した状態
を示す断面図である。
【符号の説明】
1a;上型、1b;下型、A;脱型方向に逆テーパーと
なった型の先端部、2;成型品、L;左サイド、R;右
サイド、C;金型中心部。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C08G 101:00)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イソシアネート末端プレポリマー、水酸
    基末端プレポリマー、ポリオール及び発泡成分を混合、
    攪拌し、発泡、硬化させて得られる微細セル構造ポリウ
    レタンエラストマーにおいて、 上記イソシアネート末端プレポリマーは、数平均分子量
    が800〜3000のポリエステルポリオール(a)
    と、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートと
    を、1:0.6〜3.0の重量比で反応させ、その反応
    生成物100重量部に対して、更に0.1〜5.0重量
    部の低分子量ポリオール(a)を添加し、反応させて得
    られるものであり、上記水酸基末端プレポリマーは、数
    平均分子量が500〜3000のポリエステルポリオー
    ル(b)及び/又はポリエーテルポリオール(a)とポ
    リイソシアネートとを、1:0.05〜0.5のモル比
    で反応させて得られるものであり、上記ポリオールは、
    数平均分子量が250〜8000のポリエステルポリオ
    ール(c)及び/又はポリエーテルポリオール(b)か
    ら選ばれる少なくとも1種であって、上記発泡成分は、
    少なくとも水及び低分子量ポリオール(b)を含むもの
    であることを特徴とする微細セル構造ポリウレタンエラ
    ストマー。
  2. 【請求項2】 上記ポリイソシアネートが、3,3’−
    ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、
    2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレン
    ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネ
    ート及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメ
    タンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種であ
    る請求項1記載の微細セル構造ポリウレタンエラストマ
    ー。
  3. 【請求項3】 上記水酸基末端プレポリマーは、上記ポ
    リエステルポリオール(a)を100重量部とした場合
    に、10〜40重量部である請求項1記載の微細セル構
    造ポリウレタンエラストマー。
  4. 【請求項4】 上記ポリオールは、上記ポリエステルポ
    リオール(a)を100重量部とした場合に、100〜
    400重量部である請求項1記載の微細セル構造ポリウ
    レタンエラストマー。
  5. 【請求項5】 下記の耐久性試験における上記エラスト
    マーの耐久回数が30万回以上、ヘタリ量が5%以下で
    ある請求項1記載の微細セル構造ポリウレタンエラスト
    マー。 耐久回数:試片に5kNの負荷を2Hzの周期で繰り返
    し加えた場合の破壊に至るまでの回数。 ヘタリ量:上記耐久回数測定前の試片の高さから測定後
    の試片の高さを減じた値を、測定前の試片の高さで除し
    て100倍した値。
  6. 【請求項6】 下記の測定方法による上記イソシアネー
    ト末端プレポリマーの粘度が1000センチポイズ以下
    である請求項1記載の微細セル構造ポリウレタンエラス
    トマー。 粘度の測定方法:B型粘度計、ローター回転数;30r
    pm、ローターNo;3、測定温度;40℃。
  7. 【請求項7】 数平均分子量が800〜3000のポリ
    エステルポリオール(a)と、ジフェニルメタン−4,
    4’−ジイソシアネートとを、1:0.6〜3.0の重
    量比で反応させ、その後、反応生成物100重量部に対
    して、0.1〜5.0重量部の低分子量ポリオール
    (a)を添加し、反応させて、部分的に架橋されたイソ
    シアネート末端プレポリマーを得、次いで、該イソシア
    ネート末端プレポリマー、数平均分子量が500〜30
    00のポリエステルポリオール(b)及び/又はポリエ
    ーテルポリオール(a)とポリイソシアネートとを、
    1:0.05〜0.5のモル比で反応させて得られる水
    酸基末端プレポリマー、数平均分子量が250〜800
    0のポリエステルポリオール(c)及び/又は、ポリエ
    ーテルポリオール(b)から選ばれる少なくとも1種の
    ポリオール、及び少なくとも水及び低分子量ポリオール
    (b)を含む発泡成分、を混合、攪拌し、反応させるこ
    とを特徴とする微細セル構造ポリウレタンエラストマー
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記ポリイソシアネートが、3,3’−
    ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、
    2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレン
    ジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネ
    ート及び3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメ
    タンジイソシアネートから選ばれる少なくとも1種であ
    る請求項7記載の微細セル構造ポリウレタンエラストマ
    ーの製造方法。
  9. 【請求項9】 上記水酸基末端プレポリマーは、上記ポ
    リエステルポリオール(a)を100重量部とした場合
    に、10〜40重量部である請求項7記載の微細セル構
    造ポリウレタンエラストマーの製造方法。
  10. 【請求項10】 上記ポリオールは、上記ポリエステル
    ポリオール(a)を100重量部とした場合に、100
    〜400重量部である請求項7記載の微細セル構造ポリ
    ウレタンエラストマーの製造方法。
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