JP5799311B2 - 釣針の製造方法 - Google Patents
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例えば、延縄漁法に使用される釣針は、通常、1回の使用毎に使い捨てられるため、鉛による環境への影響が懸念され、また、この有害なめっきが施された釣針を飲み込んだ魚を食することについて、食の安全という観点からも不安材料となる。
しかし、有害な鉛を含む合金めっきが施された上記釣針について、環境に影響を与えないように、また、食の安全に影響を与えないように、廃棄処理しようとすれば多大な経費がかかる。
そこで、めっきを施す釣針において、早急に鉛フリー化を実現することが求められている。
より望ましくは、製造時に煙の発生なども比較的少ない作業性の優れた釣針を、低コストにて製造できるようにしたものである。
特に、本願の請求項3の発明では、釣針素材に対するめっき合金のぬれ性を向上させることができ、均一な厚みのめっき層を形成し得たものである。
先ず、本願発明に係る釣針の製造の主要な工程について説明する。
この釣針は、炭素鋼を用い周知の方法にて、釣針の形状に形成された母材に対して、順に、(1)バレル研磨・酸洗工程、(2)水洗い工程、(3)フラックス処理工程、(4)ハンダめっき工程、(5)水冷工程、(6)脱水・乾燥工程の各工程を施すものである。
釣針の母材は、炭素0.1〜0.8mass%含んだ鋼を採用するのが好ましい。
以下、各工程について順に説明する。
このバレル研磨・酸洗工程において、釣針の形状に形成された、炭素0.1〜0.8mass%含んだ鋼の母材を複数、0.2vol%の硫酸と共に、周知のバレル研磨機に入れ、50rpmの速度で、研磨材を用いない通常研磨を行う。
バレル研磨工程中、釣針母材は、上記の0.2vol%の硫酸に浸漬されて、研磨と共に酸洗にて母材表面の錆を除去される。
母材は、形状に形成される際の熱処理即ち焼入れ後、表面に錆が発生するが、錆が残っていると良いめっきはできないので、上記の通り酸洗により錆を除去する。
水洗い工程において、バレル研磨・酸洗工程にて付着した硫酸を水にて洗い流す。
フラックス処理工程において、フラックス液として、10mass%の塩化亜鉛に、水洗い工程後の釣針母材を浸漬する。
上記フラックス液を用いたフラックス処理により、後述するめっき工程において、めっき合金の母材表面に対する濡れ性を向上し、はんだを母材へ付き易いものとすることができ、均一なめっき層を形成することができる。
ハンダめっき工程は、ハンダめっき素材としてスズに銀を配合し、スズに対し2.0〜4.0mass%銀を含有した合金にて、周知のハンダめっきの手法により釣針の母材表面にめっき層を形成する工程である。
具体的には、この工程において、摂氏500〜600度に加熱させた釜にて、スズ及び銀を溶解し、この釜内に釣針を投入する。釜を15rpmの速度で回転させる。但し、このような回転速度に限定するものではない。この工程によって、釣針母材の表面に、計算上即ち理論上、3〜6ミクロンの厚さのめっき層を形成する。
ハンダめっき工程後、この水冷工程によって、釜内から取り出した釣針を水に漬けて、冷却する。
(6)脱水・乾燥工程
水冷工程により、水にて冷却した釣針を、水から取り出し、温風のブローにより脱水・乾燥させる。
この工程の完了により、釣針は完成する。
また、ハンダめっき工程において、上記の銀に代え銅を用い、スズに対し0.7〜4.0mass%銅を含有した合金を計算上3〜6ミクロンの厚さ、母材表面にめっき層として形成するものとしても実施できる。
更に、ハンダめっき工程において、銀及び銅の双方を用い、スズに対して、3.0mass%銀と0.5mass%銅を含有した合金を3〜6ミクロンの厚さ、母材表面にめっき層として形成するものとしても実施できる。銀に代え銅を用いる場合も、銀と共に銅を用いる場合も、特に明示しない事項については、スズに対して銀を用いる上記の実施の形態と同様である。
めっき素材としてスズに対し銀と銅の何れを用いる場合も、めっき層の厚みが上記の3ミクロンを下回ると塩水に対する耐食性が著しく低下し、めっき層の厚みが上記の6ミクロンを超えるとハンダめっき工程において釣針同士が付着してしまう。
従って、本願発明において、耐食性の確保と製造中の釣針同士の付着防止の点で、めっき層を3〜6ミクロンとするのである。
Sn、Sn−(5,57)%Bi
Sn−(1〜9)%Zn
Sn−(2,9)%Zn−(2,3.5)%Ag
Sn−0.01%P、Sn−0.1%P
Sn−(0.7,3.5)%Cu
Sn−(1.0〜3.5)%Ag
Sn−3.0%Ag−0.5%Cu
Sn−3.0%Ag−2.0%Bi
Sn−3.5%Ag−(3〜10)%Bi
図1に示すグラフの縦軸は、従来品であるSn−30%Pbに対するぬれ広がり率を示している。
1)Sn−30%Pb(従来品)
2)Sn
3)Sn1%Ag(%は、mass%。以下同じ。)
4)Sn2%Ag
5)Sn3.5%Ag
6)Sn3.0%Ag0.5%Cu
7)Sn0.01%P
8)Sn0.1%P
9)Sn0.7%Cu
10)Sn3.5%Cu
11)Sn1%Zn
12)Sn2%Zn
13)Sn4.5%Zn
14)Sn9%Zn
15)Sn2%Zn2%Ag
16)Sn9%Zn3.5%Ag
17)Sn5%Bi
18)Sn57%Bi
19)Sn3.0%Ag2%Bi
20)Sn3.5%Ag3%Bi
21)Sn3.5%Ag5%Bi
22)Sn3.5%Ag7.5%Bi
22)Sn3.5%Ag10%Bi
を示している。
URは、内橋エステック株式会社製のフラックス(商品名ネスパーR)である。また、NFとはニホンハンダ株式会社製のフラックス(商品名AD2FF023406)である。
また、フラックス液についてNFを用いたものは、前述のハンダめっき工程において、釜から多量のガスが発生し、作業性が悪いので、使用は好ましくない。
一方、ZnClのフラックス液は、安価なZnClにてコストを押えることができ、また、ハンダめっき工程において多量のガスが発生するということもなく、扱い易い。
17)Sn5%Bi
18)Sn57%Bi
19)Sn3.0%Ag2%Bi
20)Sn3.5%Ag3%Bi
21)Sn3.5%Ag5%Bi
22)Sn3.5%Ag7.5%Bi
22)Sn3.5%Ag10%Bi
については、耐食性が悪く、その採用は適切ではない。
4)Sn2%Ag
5)Sn3.5%Ag
10)Sn3.5%Cu
が、本願発明の釣針のめっき工程において、使用に適するハンダめっき材料であることが分かる。
また比較例1はめっき素材をSn−2%Agとし、比較例2はめっき素材をSn−3.5%Cuとし、比較例3はめっき素材をSn−3.5%Agとした。比較例1〜3については、めっき温度を摂氏530度とし、めっき時間を2分30秒とし、針に対するハンダ配合重量比を針7kgに対してハンダ80gとしたものであり、計算上の即ち理論めっき厚さは2.8ミクロンとなる。
実施例4は、実施例3の実施例の結果の再現性を確認したものであり、比較例4はビスマスを含む合金に関するものである。
対照区は、鉛を含むSn−30%Pb合金(従来品)を用いたものである。
まず、環内不良率は、検体数100本中、図2において濃色で示す、釣針1のチモト即ち環状部2の内側20のめっきの状況を調べたもので、均一な厚みのめっき層が形成されていない検体数である。以下、環内というのは、この環状部2の内側20の部分を指す。
表2の環内不良率を見ると、本願の実施例はいずれも不良率20本未満である。これに対して比較例はいずれも不良率50本をはるかに越えるものである。従って、比較例に比して、本願の実施例はいずれも、不良率が極めて低く、従来品である対照区Sn−30%Pbに近い、良好な結果を、各実施例が得ていることが確認できる。
この図3へ示す釣針は、釣針本体(鋼)5kgに対してハンダを100gとしたものであり、計算結果としてのめっき層の厚みは、5.5ミクロンである。
この図3へ示す通り、実施例2の実施例の4つの検体の断面において、母材xを、めっき層yが均一な厚みで被覆しており、メッキが良好に施されていることが分かる。
この図4へ示す釣針は、釣針本体(鋼)7kgに対してハンダを80gとしたものであり、計算結果としてのめっき層の厚みは、2.8ミクロンである。
この図4(A)に示す検体では、めっき層y'の厚みに他より厚みが大きい部分が見られ、厚みのムラが確認できる。また、図4(B)へ示す検体では、めっき層y'が薄く、めっき層が付いていない、母材x'を十分に被覆できていない部分があることが分かる。
2 環状部
3 シャンク
20 環状部内側
Claims (1)
- 母材を炭素0.1〜0.8mass%含んだ鋼とし且つチモトを環状部とする釣針本体に対し、塩化亜鉛を含有するフラックス液にてフラックス処理した後、
摂氏500〜600度に加熱させ且つ回転させた釜にて溶解することによりスズに対し2.0〜4.0mass%銀を含有させたSn−Ag合金にて、複数の前記釣針本体を前記釜へ投入することにより複数の前記釣針本体に3〜6ミクロンの厚さめっきを施すことを特徴とする釣針の製造方法。
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