JP5825295B2 - 溶融亜鉛めっき鋼管及び溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法 - Google Patents

溶融亜鉛めっき鋼管及び溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法 Download PDF

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本発明は、溶融亜鉛めっき鋼管及び溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法に関する。
溶融亜鉛めっきは、鋼材の耐食性を向上させる技術として、広く用いられている。
特開2009−221601号公報(特許文献1)、特開2009−221604号公報(特許文献2)、特開2009−197328号公報(特許文献3)、特開2011−26630号公報(特許文献4)、及び特開2009−221605号公報(特許文献5)、には、RoHS指令に従い、Pb含有量を0.1質量%以下、Cd含有量を0.01質量%以下に抑制した溶融亜鉛浴を用いた場合であっても、不めっき発生の少ない溶融亜鉛めっき材の製造方法が記載されている。これらの文献に記載された溶融亜鉛めっき材の製造方法は、溶融亜鉛浴にSn、Sb、Bi、又はIn等の金属を微量に添加する。
特開2006−307316号公報(特許文献6)には、浸漬法によって鋼材の表面に亜鉛めっき皮膜を形成するための溶融亜鉛めっき浴組成物が記載されている。この溶融亜鉛めっき浴組成物は、Niが0.01〜0.05重量%、Alが0.001〜0.01重量%、Biが0.01〜0.08重量%、残部Zn及び不可避不純物であり、Pbを含有しない。
特開2011−26632号公報(特許文献7)には、めっき層の組成がPb:0.010質量%以下、Sb:0.04〜0.50質量%を含有する溶融亜鉛めっき鋼材が記載されている。
特開平10−140316号公報(特許文献8)には、Alを0.1〜0.3重量%含有し、不純物としてのPb、Sn、Cd、Sbが合計で0.01重量%以下である溶融亜鉛めっき浴を用いてめっきした鋼板に、ロールと接する鋼板の幅1m当たり50〜500トンの圧延加重で圧延加工を施す溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が記載されている。
特開2011−89175号公報(特許文献9)には、溶融亜鉛めっき皮膜中の鉛濃度が0.1質量%以下、カドミウム濃度が0.01質量%以下であり、かつ溶融亜鉛めっき皮膜のうち合金層部のビッカース硬さが110Hv以下である溶融亜鉛めっき鋼管が記載されている。
特開2009−221601号公報 特開2009−221604号公報 特開2009−197328号公報 特開2011−26630号公報 特開2009−221605号公報 特開2006−307316号公報 特開2011−26632号公報 特開平10−140316号公報 特開2011−89175号公報
近年、フレア加工の普及に伴って、溶融亜鉛めっき鋼管の加工性の向上が求められている。フレア加工とは、鋼管の端部の開口部を外側に向かって広げ、環状のフレア(鍔)を形成する加工である。
溶融亜鉛めっき鋼管をフレア加工すると、めっき層の剥離が生じやすい。めっき層の剥離を抑制する方法として、めっき層を薄くすることが知られている。めっき層を薄くすれば、加工時にめっき層に加わる歪が小さくなる。しかし、めっき層を薄くすると、所定の耐食性が得られない場合がある。
特許文献1〜7には、加工時のめっき層の剥離の生じやすさについては、記載されていない。
特許文献8に記載された溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法は、溶融亜鉛めっき浴にAlを多量に添加している。溶融亜鉛めっき浴にAlを多量に添加すると、Alの酸化物による不めっきが発生しやすくなるため、鋼材の表面及び溶融亜鉛めっき浴表面に酸化物が生成しないように、工程全体にわたって雰囲気を制御する必要がある。しかし、溶融亜鉛めっき鋼管の製造工程において、このような制御をおこなうことは困難である。
特許文献9に記載された溶融亜鉛めっき鋼管は、溶融亜鉛めっき皮膜の合金層及び凝固亜鉛層の硬さを下げるために、特殊な処理をする必要がある。
本発明の目的は、加工してもめっき層の剥離が生じにくい溶融亜鉛めっき鋼管、及びその溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法を提供することである。
本発明による溶融亜鉛めっき鋼管は、鋼管と、鋼管の表面に形成されためっき層とを備える。そして、めっき層の全深さにわたって、下式で定義されるfnが99.9以上である。
fn=Fe+Al+Zn
ここで、上式の元素記号には、めっき層中の各元素の含有量(質量%)が代入される。
本発明による溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法は、素管を溶融亜鉛めっき浴に浸漬する工程を備え、溶融亜鉛めっき浴は、Alを0.002〜0.01質量%含有し、残部はZn及び不純物からなり、前記不純物のうち、Pb、Sn、Cd,Sb、Bi、Cu、Ni、及びInの含有量の合計が0.1質量%以下である。
上記の溶融亜鉛めっき鋼管、及び溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法により製造される溶融亜鉛めっき鋼管は、加工してもめっき層の剥離が生じにくい。
図1は、2つの条件の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管それぞれの、めっき層を拡大して示した走査型電子顕微鏡像である。 図2は、本発明の一実施形態による溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法の工程図である。 図3は、4つの条件の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管それぞれの、めっき層の元素分布を示すグラフである。 図4は、2つの条件の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管それぞれの、フレア加工部の縦断面の光学顕微鏡像である。
[溶融亜鉛めっき鋼管]
本発明者らは、溶融亜鉛めっき鋼管の加工性について検討し、次の知見を得た。めっき層は、母材との界面に形成されるZn−Fe合金層と、表面に形成されるZn層(η層)とを含んでいる。このうち、Zn−Fe合金層は、延性が低い。そのため、Zn−Fe合金層は、フレア加工のような曲げ加工によって、亀裂が生じやすい。Zn−Fe合金層で生じた亀裂が、表面のZn層まで進展すると、めっき層の剥離が生じる。
Zn層内に異種金属が混入していると、亀裂がさらに進展しやすくなる。したがって、Zn層内に異種金属が混入していると、めっき層の剥離が生じやすくなる。換言すれば、Zn層の純度を高めれば、めっき層の剥離を抑制でき、溶融亜鉛めっき鋼管の加工性を向上させることができる。
図1は、(a)純度の低いZn層を含むめっき層、及び(b)純度の高いZn層を含むめっき層の走査型電子顕微鏡像である。図1に示すように、純度の低いZn層を含むめっき層では、Fe−Zn合金層で生じた亀裂が、表面のZn層まで進展している。一方、純度の高いZn層を含むめっき層では、Fe−Zn合金層で生じた亀裂が、表面のZn層で止まっている。
本発明者らは、めっき層の全深さにわたって、式(1)で定義されるfnが99.9以上であれば、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層の剥離が生じにくいことを見出した。
fn=Fe+Al+Zn (1)
ここで、式(1)の記号には、めっき層中の各元素の含有量(質量%)が代入される。
ここで、fnは次の方法で測定される。溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層の任意の領域(放電面積は4mmφ、以下、特定領域という)において、マーカス型高周波グロー放電発光分析装置(堀場製作所製、GD−Profiler2)を用いて、深さ方向の元素分析を実施する。このときの測定条件は表1の通りとする。これにより、特定領域の全深さの元素分布が得られる。得られた元素分布に基づいて、各深さのfn値(fn分布)を求める。
本発明においては、得られたfn分布において、fn値はいずれも99.9以上になる。
fnには鉄(Fe)が含まれる。Feは亜鉛と合金化してZn−Fe合金層を形成する。そのため、Feは、めっき層中に多く含有される。しかし、Zn−Fe合金層はZn層と分離して存在する。そのため、FeはZn層内に混入しない。したがって、めっき層が鉄を含有しても、溶融亜鉛めっき鋼管の加工性は低下しない。
fnにはアルミニウム(Al)が含まれる。Alは、溶融亜鉛めっき浴の流動性を向上させる。Alが溶融亜鉛めっき浴に含有されていれば、Alは、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層中にも含有される。しかし、Alは、めっき表面から1ミクロン程度の深さに濃縮して存在する。したがって、めっき層がAlを含有しても、溶融亜鉛めっき鋼管の加工性は低下しない。
以上のとおり、めっき層の全深さにわたってfnが99.9以上であれば、フレア加工等の加工を実施しても、めっき層は剥離しにくい。
上述の溶融亜鉛めっき鋼管は、Alを0.002〜0.01質量%含有し、残部はZn及び不純物からなり、不純物のうち、Pb、Sn、Cd,Sb、Bi、Cu、Ni、及びInの含有量の合計が0.1質量%以下の溶融亜鉛めっき浴に素管を浸漬することにより製造することができる。
以下、本発明の一実施形態による溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法を詳述する。
図2は、本発明の一実施形態による溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法の工程図である。溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法は、素管を脱脂する工程(ステップS1)と、脱脂された素管を酸洗する工程(ステップS2)と、酸洗された素管をフラックス処理する工程(ステップS3)と、フラックス処理された素管をめっきする工程(ステップS4)と、めっきされた鋼管を冷却する工程(ステップS5)とを備える。
まず、めっきを実施する素管を準備する。素管は、任意の鋼管を使用できる。素管は、例えばJIS G3452に規定されるSGP鋼管、又はJIS G3454に規定されるSTPG鋼管である。SGP鋼管及びSTPG鋼管は、それぞれ、電気抵抗溶接管、鍛接管、及び継目無管のいずれでも良い。
次に、素管を脱脂液に浸漬して脱脂する(ステップS1)。脱脂は例えば、アルカリ脱脂又は溶剤脱脂である。これにより、素管の表面に付着している油類が除去される。その後、素管を水洗し、付着している脱脂液を除去する。
次に、脱脂された素管を酸洗液に浸漬して酸洗する(ステップS2)。酸洗液は、5〜20質量%の硫酸である。硫酸を65℃以上に加温して用いることが好ましい。
素管の過酸洗及び粒界腐食を抑制するために、酸洗液に、酸腐食抑制剤(インヒビター)を適量含有させても良い。酸洗時間は、例えば、10〜60分である。これにより、素管の表面のスケールが除去される。その後、素管を水洗し、付着している酸洗液を除去する。
次に、酸洗された素管をフラックス液によりフラックス処理する(ステップS3)。フラックス処理では、素管をフラックス液に浸漬する。フラックス液は、塩化亜鉛及び塩化アンモニウムの水溶液を用い、塩化亜鉛と塩化アンモニウムとの分量比(モル比)は、好ましくは、1:1〜1:5であり、より好ましくは、1:2〜1:4である。
フラックス液は、70〜90℃に加温して用いる。フラックス液としては、500g/L以上の高濃度のフラックス液を用いることが好ましい。フラックス液の濃度は、より好ましくは600g/L以上であり、飽和するまでの範囲である。なお、フラックス濃度(g/L)は、水1リットル(L)に対して含有される塩化亜鉛及び塩化アンモニウムの合計の質量(g)を表す。
フラックス処理により、素管にフラックス膜が形成される。フラックス膜は、素管の表面を保護し、めっきの際に酸化亜鉛を巻き込んで不めっきが発生するのを防止する。
その後、素管を乾燥する。素管に水分が残っていると、水分が溶融亜鉛めっき浴に接触した際に気化し、溶融亜鉛を飛散させて不めっきの原因となる。フラックス液の液切れを良くするために、フラックス液に界面活性剤を含有させておくことが好ましい。また、界面活性剤を含有させることにより、フラックス膜が均一になりやすくなる。界面活性剤は、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドである。
界面活性剤の含有量が低すぎれば、上記の効果が得られない。したがって、フラックス液中の界面活性剤の濃度の下限は、0.05質量%である。界面活性剤の濃度は、より好ましくは、0.05質量%より高い。界面活性剤の濃度の下限は、さらに好ましくは、0.10質量%である。一方、界面活性剤の含有量が高すぎると、効果が飽和し、不純物として却って不めっきを増加させる。したがって界面活性剤の濃度は、好ましくは、0.3質量%未満である。より好ましくは0.2質量%未満である。
次に、フラックス処理された素管を溶融亜鉛めっき浴に浸漬してめっきする(ステップS4)。本実施形態において用いる溶融亜鉛めっき浴は、Alを0.002〜0.01質量%含有し、残部はZn及び不純物からなり、不純物のうち、Pb、Sn、Cd,Sb、Bi、Cu、Ni、及びInの含有量の合計が0.1質量%以下である。
アルミニウム(Al)は、溶融亜鉛めっき浴の流動性を向上させる。溶融亜鉛めっき浴のAl含有量が低すぎると、めっき表面の光沢が低下する。したがって、Al含有量の下限は、0.002質量%である。Al含有量は、より好ましくは、0.002質量%より高い。Al含有量の下限は、さらに好ましくは、0.005質量%である。一方、溶融亜鉛めっき浴のAl含有量が高すぎると、フラックス処理の効果が減衰され、不めっきが発生する。したがって、Al含有量の上限は、好ましくは、0.01質量%である。
溶融亜鉛めっき浴の不純物のうち、鉛(Pb)、錫(Sn)、カドミウム(Cd),アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、及びインジウム(In)は、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層のZn層内に混入し、めっき層の剥離を生じやすくさせる。したがって、これらの元素の含有量の合計は、好ましくは、0.1質量%以下である。
溶融亜鉛めっき浴の温度は、例えば、450〜480℃である。素管を溶融亜鉛めっき浴に浸漬する時間は、例えば、30〜300秒である。溶融亜鉛めっき浴の温度及び素管を溶融亜鉛めっき浴に浸漬する時間は、めっき層の厚さに応じて調整される。
所定の時間だけ浸漬した後、素管を溶融亜鉛めっき浴から引き上げる。素管に付着した過剰な溶融亜鉛が流れ落ちるように、素管を溶融亜鉛めっき浴の上方で一定時間保持する。この際、圧縮空気又はスチームを吹き付けて過剰な溶融亜鉛を取り除いても良い。
最後に、めっきされた鋼管を冷却する(ステップ5)。冷却は、空冷、水冷、及び油冷のいずれでも良い。水冷の場合、例えば40〜80℃の温水が用いられる。
以上の工程で、溶融亜鉛めっき鋼管が製造される。
上述の溶融亜鉛めっき浴を用いて製造された溶融亜鉛めっき鋼管は、めっき層の全深さにわたって、式(1)で定義されるfnが99.9以上になる。そのため、溶融亜鉛めっき鋼管をフレア加工しても、めっき層の剥離が生じにくい。
本実施形態による溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法は、より好ましくは、(A)酸洗工程(ステップS2)において65℃以上の硫酸によって素管を酸洗し、かつ、(B)フラックス工程(ステップS3)において、塩化亜鉛及び/又は塩化アンモニウムを合計で600g/L以上、界面活性剤を0.05〜0.3質量%含有するフラックス液によってフラックス処理する。
本実施形態による溶融亜鉛めっき浴は、Pb、Sn、Cd,Sb、Bi、Cu、Ni、及びInの含有量の合計が0.1質量%以下である。これらの元素は、溶融亜鉛めっき浴の流動性を向上させる。そのため、本実施形態による溶融亜鉛めっき浴によってめっきを行うと、不めっきが発生しやすい。
そこで、(A)かつ(B)の条件を満たした前処理を行うことで、素管の表面の反応性を改善する。これにより、本実施形態のように不純物の少ない溶融亜鉛めっき浴を用いてめっきを行っても、不めっきの発生を抑制することができる。
この効果は、次の作用に基づくと考えられる。まず、高温硫酸による酸洗により、素管表面のスマットの生成が抑制され、かつ、適度な表面粗さが得られる。なお、スマットとは、酸に不溶性の鉄塩であって、酸洗後の管表面に黒色に付着するものである。これにより、多量のフラックスを素管の表面に均一に分散させることができる。多量のフラックスを均一に分散させることによって、不純物の少ない溶融亜鉛めっき浴を用いてめっきを行っても、不めっきの発生を抑制することができる。塩酸については、スマット抑制の効果はあるものの、高温硫酸に比べて反応性に乏しいため、一部の金属酸化物は酸洗前のまま反応せず表面に残存して不めっきの原因になるものと考えられる。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。なお、この実施例は本発明を限定するものではない。
[めっき層の組成分析試験]
複数の溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき鋼管を製造した。そして、それぞれの溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層の組成分析を行った。
素管として、SGP鋼管(C:0.05質量%、Si:0.19質量%、Mn:0.34質量%、電気抵抗溶接管、外径139.8mm)を用いた。図2に示すように、素管の脱脂、酸洗、及びフラックス処理を行った。酸洗処理の条件は、後述する実施例2の酸洗条件2とし、フラックス処理の条件は、後述する実施例2のフラックス条件2とした。フラックス処理された素管を、4種類の溶融亜鉛めっき浴に浸漬してめっきを行った。表2に、各溶融亜鉛めっき浴(条件1〜4)の、Fe、Al、Pb、Sn、Cd,Sb、Bi、Cu、Ni、及びIn含有量(単位は質量%)を示す。組成の残部はZn及び不純物であった。表2の「不純物量」欄には、Pb、Sn、Cd、Sb、Bi、Cu、Ni、及びIn含有量の合計値を記載した。
溶融亜鉛めっき浴の温度は465℃であった。素管を溶融亜鉛めっき浴に60秒間浸漬した。溶融亜鉛めっき鋼管のめっき付着量は、約500g/mであった。
それぞれの溶融亜鉛めっき浴で製造された溶融亜鉛めっき鋼管に対し、めっき層の組成分析を行った。めっき層の組成分析は上述したとおり、マーカス型高周波グロー放電発光分析装置(堀場製作所製、GD−Profiler2)を用いて、表1に記載された条件で測定した。
結果を図3に示す。図3は、(a)条件1、(b)条件2、(c)条件3、及び(d)条件4の各溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管の、めっき層の深さ方向の元素分布を示すグラフである。図3の各グラフの横軸は、めっき層の表面から深さ方向の距離(μm)を示している。図3の各グラフの縦軸は、横軸で表された深さにおけるめっき層の組成の、Zn含有量(重量%)、Fe含有量(重量%)、ならびにZn、Fe、及びAl含有量の合計値(Zn+Fe+Al=fn、重量%)を示している。
図3に示すように、溶融亜鉛めっき浴の不純物量が減少すると、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層の全深さにわたって、fnが増加した。図3(c)及び図3(d)に示すように、条件3及び4では、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層のどの深さにおいても、fnが99.9以上であった。一方、図3(a)及び図3(b)に示すように、条件1及び2では、溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層の深さによっては、fnが99.9未満であった。
[フレア加工試験]
条件1〜4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管をフレア加工した。さらに、フレア加工された溶融亜鉛めっき鋼管を軸方向と平行にスライスし、フレア部の縦断面を観察した。
条件1及び条件2の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管では、フレア加工によってめっき層の浮き上がり及び剥離が多数発生した。一方、条件3及び条件4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管では、フレア加工をしても、めっき層の剥離は発生しなかった。
図4は、(a)条件1及び(b)条件4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管の、フレア加工部の縦断面の光学顕微鏡像である。図1は、(a)条件1及び(b)条件4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管の、めっき層を拡大して示した走査型電子顕微鏡像である。
図4(a)に示すように、条件1の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管では、フレア加工によって、めっき層の浮き上がり及び剥離が多数発生していた。一方、図4(b)に示すように、条件4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管では、フレア加工をしても、めっき層の剥離は発生していなかった。
図1(a)に示すように、条件1の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層では、Fe−Zn合金層に発生した亀裂が、表面のZn層まで進展していた。一方、図1(b)に示すように、条件4の溶融亜鉛めっき浴によって製造された溶融亜鉛めっき鋼管のめっき層では、Fe−Zn合金層に発生した亀裂が、表面のZn層で止まっていた。
[酸洗条件及びフラックス処理条件の調査]
酸洗条件及びフラックス処理条件を変えてめっきを行い、不めっき発生の有無を調査した。めっき条件は、めっき層の組成分析試験において溶融亜鉛めっき鋼管を製造した条件と同様とした。溶融亜鉛めっき浴は、表2の条件4の溶融亜鉛めっき浴を使用した。
素管として、SGP鋼管(C:0.05質量%、Si:0.19質量%、Mn:0.34質量%、電気抵抗溶接管、外径139.8mm)を用いた。素管の、脱脂、酸洗、及びフラックス処理を行った。まず、フラックス処理条件を固定し、酸洗条件を変えて調査を行った。
表3に、酸洗条件(酸洗条件1〜4)、ならびに各酸洗条件における酸洗中発泡、酸洗後外観、フラックス処理後(フラックス乾燥後)外観、及びめっき後外観を示す。なお、フラックス処理条件は、次の通りであった。フラックス液は、塩化亜鉛及び塩化アンモニウムの1:3混合物を625g/L、界面活性剤を0.2質量%含有する水溶液を使用した。酸洗後の素管を、75℃に加温したフラックス液に浸漬した。フラックス液に浸漬した素管を、180℃雰囲気で5分間乾燥した。なお、酸洗によりスマットが発生した素管については、スマットを除去してからフラックス処理を行った。めっき後、めっきされた素管を空冷し、溶融亜鉛めっき鋼管を製造した。
表3に示すように、酸洗条件1で酸洗された素管には、不めっきが発生した。これは、酸洗温度が低かったことが原因と考えられる。
酸洗条件2で酸洗された素管には、不めっきが発生しなかった。
酸洗条件3および酸洗条件4で酸洗された素管には、不めっきが発生した。これは、塩酸を用いて酸洗を行ったことが原因と考えられる。
次に、酸洗条件を表3の酸洗条件2に固定して、フラックス処理条件を変えて調査を行った。
表4に、フラックス処理条件(フラックス条件1〜4)、ならびに薬剤溶け残りの有無、フラックス乾燥後外観、及びめっき後外観を示す。なお、フラックス液は、塩化亜鉛及び塩化アンモニウムの1:3混合物の水溶液を使用した。表4中の「薬剤溶け残り」には、この混合物の溶け残りの有無を示した。酸洗後の素管を、75℃に加温したフラックス液に浸漬した。フラックス液に浸漬した素管を、180℃雰囲気で5分間乾燥した。
表4に示すように、フラックス条件1でフラックス処理された素管は、不めっきが発生した。これは、フラックス濃度が低かったことが原因と考えられる。
フラックス条件2およびフラックス条件3でフラックス処理された素管は、不めっきが発生しなかった。
フラックス条件4でフラックス処理された素管は、不めっきが発生した。これは、界面活性剤を含有させなかったことが原因と考えられる。
本発明は、めっき層の剥離が生じにくい溶融亜鉛めっき鋼管及び溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法として、産業上利用可能である。

Claims (2)

  1. 素管を65℃以上で濃度5〜20質量%の硫酸によって10〜60分酸洗する工程と、
    酸洗された前記素管をフラックス液によって処理する工程と、
    フラックス液によって処理された前記素管を溶融亜鉛めっき浴に浸漬する工程とを備え、
    前記フラックス液は、塩化亜鉛及び/又は塩化アンモニウムを合計で600g/L以上、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤を0.05〜0.3質量%含有し、
    前記溶融亜鉛めっき浴は、Alを0.002〜0.01質量%含有し、残部はZn及び不純物からなり、前記不純物のうち、Pb、Sn、CdSb、Bi、Cu、Ni、及びInの含有量の合計が0.1質量%以下である、溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  2. 請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法であって、
    前記第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、及びステアリルトリメチルアンモニウムクロライドからなる群から選択される、溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
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