JP5930136B1 - 溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

溶融亜鉛に対する濡れ性が良く不めっきを発生させることのない、溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼材を提供することを目的とする。被めっき鋼材表面に、塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスを2.8g/m2以上付着させるフラックス処理を行った後、乾燥処理を行い、次いで、τ≦1.75×f…(1)、を満たすように溶融亜鉛めっき浴浸漬処理を行う溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。ただし、上記式(1)において、f:塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスの鋼材表面に対する付着量(g/m2)、τ:被めっき鋼材が溶融亜鉛めっき浴に触れてから溶融亜鉛めっき浴中に完全に没するまでの時間(秒)とする。

Description

本発明は、溶融亜鉛めっき鋼材(hot dip galvanized steel)の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼材に関するものである。特に、PbやCdを含有しない溶融亜鉛めっき浴にフラックス処理した鋼材を浸漬した際に、鋼材の溶融亜鉛に対する濡れ性(wettability)が優れることで、品質の良いめっき層が形成される溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼材に関するものである。
近年、欧州連合により、電機・電子機器に対し、特定有害物質の使用を制限するRoHS指令(RoHS directive, Restriction of Hazardous Substances Directive)が施行された。このRoHS指令は、対象製品中のPbの含有率を0.10mass%以下、Cdの含有率を0.01mass%以下に制限するものである。RoHS指令は日本国外の規定ではあるものの、国際的な規制に対応し、環境負荷物質の含有を抑えた環境により良い製品を供給できるようにしていくことが必要になってきており、PbやCdを多量に含有する製品は、将来的に避けられる傾向にあると考えられる。
しかしながら、未だ多くの溶融亜鉛めっき製品における亜鉛めっき層は、RoHS指令で規制する値を超えてPbおよびCdを含有する。このPbおよびCdは、めっき原料となる溶融亜鉛めっき浴中の不純物に由来する。一方で、この溶融亜鉛めっき浴中のPbは、めっきしようとする鋼材表面(被めっき鋼材表面)の溶融亜鉛に対する濡れ性を向上する効果を生じさせる。これにより、例えば、被めっき材である鋼材表面が清浄ではない場合や、酸化皮膜(oxide layer)がある場合でも、亜鉛めっき層(galvanizing layer)が形成され易くなる。
そのため、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用して溶融亜鉛めっきを行うと、亜鉛めっき層が形成されない部分が生じる場合がある。これは、俗に、不めっき(unplating)と言われる現象であり、溶融亜鉛めっき浴中のPb濃度が低下すると顕著に発生する好ましくない現象である。
鋼管や鋼製構造物等の鋼材に対して行われる、いわゆる「どぶ漬けめっき」(batch-type hot dip galvanizing)は、薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理とは異なる。薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、鋼板表面の有機物を除去し還元雰囲気中で溶融亜鉛めっき浴に連続浸漬する。すなわち、非常に清浄化されかつ活性の高い状態の鋼板の表面に溶融亜鉛が接することにより、鋼板表面に薄く亜鉛めっき層を形成させる。還元雰囲気中のため、当然、溶融亜鉛めっき浴上に酸化亜鉛などもほとんど浮遊しておらず、鋼板表面に酸化亜鉛などのめっきを阻害する物質が付着しにくい状態で鋼板が処理される。さらに、加熱して合金相(alloy phase)の成長を制御する場合もある。これに対して、鋼管、鋼材および鋼構造物に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、通常、大気開放下で行う。このため、鋼材の表面の酸化を防ぐとともに、鋼材の表面の汚れに対して除去効果を得るために、被めっき鋼材にフラックス処理を施した後、めっき浴への浸漬を行なっている。また、フラックス処理の前に、鋼材の表面の油などの汚れを除去するための酸洗処理、場合によっては酸洗処理の前に脱脂処理をも行なう。しかし、例えば鋼管は鋼板と異なり形状が複雑なため、その効果が非常に不十分なものとなっているのが現状である。さらにまた、溶融亜鉛めっき浴浸漬中に合金相を形成させ、溶融亜鉛めっき浴から引き上げた後にワイピングによって溶融亜鉛めっき層の厚さを制御し、その後に空冷または温水冷する。このため、亜鉛めっき層の厚さも数10μmから数100μm以上となり、鋼板の亜鉛めっき層に比べて厚みが大きいことを特徴とする。
このように、鋼板の連続式めっきと鋼材のバッチ式めっきとでは、プロセスおよび出来上がった亜鉛めっき層の構造が大きく異なる。すなわち、鋼材のバッチ式めっきは、本質的にめっき不良の発生しやすいプロセスとなっており、その課題も鋼板の連続式めっきとは異なったものとなっている。例えば、前述した不めっきに関しては、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用した場合でも、鋼板の連続式めっきでは問題が生じないのに対して、鋼材のバッチ式めっきでは不めっきが発生し易くなる傾向がある。
溶融亜鉛に対する濡れ性を向上させる技術として、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1では、Pbを含まない亜鉛浴にNi:0.01〜0.05重量%、Al:0.001〜0.01重量%、さらにBi:0.01〜0.08重量%およびIn:0.05〜0.1重量%のうちの1種以上を含有することによって、亜鉛浴の流動性を高めることが示されている。また、特許文献2〜6では、Pb含有量を0.1質量%以下に抑制した溶融亜鉛めっき浴であっても、溶融亜鉛めっき浴にSn、Bi、Sb等を微量含有することによって、不めっき発生の少ない溶融亜鉛めっき材を製造できることが示されている。
特開2006−307316号公報 特開2009−221601号公報 特開2009−221604号公報 特開2009−197328号公報 特開2011−26630号公報 特開2009−221605号公報
しかしながら、本発明者らが特許文献1を検証したところ、Bi:0.3重量%以上の含有でなければ、Pb含有時と同等の濡れ性を得ることができなかった。また、特許文献2〜6についても、微量含有元素の量は少なくとも0.1質量%としており、さらにより効果を得るためには、微量含有元素単独では0.1質量%より多い含有、もしくは複合含有が必要である。したがって、このような元素を含有させることにより、製品コストの上昇を招くという問題がある。
本発明は上記課題を解決するためのものであり、溶融亜鉛めっき浴に含まれるPbおよびCd濃度が極めて低い場合か、もしくはPbおよびCdが含まれない場合においても、不めっきを発生させることのない、溶融亜鉛に対する濡れ性が良い溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼材を提供することを目的とする。
本発明者等は、前記課題を達成するため、溶融亜鉛めっき処理におけるフラックス処理工程、乾燥処理工程および溶融亜鉛めっき浴浸漬処理工程に着目した。フラックス処理は、溶融亜鉛めっき処理において、酸洗によって清浄化した鋼材表面を再酸化から保護するとともに、残留した酸化物や汚れをめっき時に除去するための重要な工程である。フラックス乾燥工程は、鋼材表面に付着させたフラックス液を乾燥させ、鋼材表面にフラックスを固定する工程、めっき工程は、鋼材を溶融亜鉛めっき浴に浸漬して、鋼材表面をめっきする工程である。なお、本発明における溶融亜鉛めっき処理とは、鋼管や鋼製構造物等の鋼材に対して行われる、いわゆる「どぶ漬けめっき」と呼ばれるものであり、薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理とは異なる。
フラックス処理において、従来から用いられているフラックスは、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの複塩(double salt)あるいは混合物である。Pbを含む蒸留亜鉛(distilled zinc)めっき浴において、従来の2種類の塩化物からなるフラックスを用いると、溶融亜鉛に対する濡れ性は十分向上する。しかしながら、Pbを含まない電解亜鉛(electrolytic zinc)めっき浴では、極端に濡れ性が悪くなる。そこで、本発明では、濡れ性を向上させるため、実際の鋼材の溶融亜鉛めっき状況を詳細に調査・研究した。
なお、ここでいう蒸留亜鉛とはJIS H2107(1999)に規定の蒸留亜鉛地金1種(JIS class 1 distilled zinc ingot)であり、通常Pbが0.3〜1.3質量%、Cdが0.1〜0.4質量%含まれているものであり、電解亜鉛とは、JIS H2107(1999)に規定の最純亜鉛地金(special high grade zinc ingot)であり、通常Pbが0.003質量%以下、Cdが0.002質量%以下のものをいう。また、それぞれのめっき浴は、JIS H8641(2007)に示されるように、めっき作業中の亜鉛の純度が97.5質量%以上を維持するように管理した。
その結果、溶融亜鉛に対する鋼材の濡れ性は、鋼材表面へのフラックス付着量(coating weight)に大きく影響されることを見出した。そして、鋼材表面へのフラックス付着量を厳格に管理すれば、Pbを含まない電解亜鉛めっき浴でも濡れ性を劣化させることなく、めっきできることを見出した。さらに、フラックス処理工程からめっき工程までの間に、付着させたフラックスを劣化させずにめっき浴に浸漬させることが好ましいことを見出した。このフラックス劣化の主要因は、フラックス液中への鋼材すなわち鉄分の溶出と熱によるフラックスの分解消失である。
以上の研究により、Pbを含有しない溶融亜鉛めっき浴において、不めっき発生のない優れた表面品質の溶融亜鉛めっき鋼材を得ることができる製造方法を確立した。
本発明は、前記知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。その要旨は以下の通りである。
[1]被めっき鋼材表面に、塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスを2.8g/m以上付着させるフラックス処理を行った後、乾燥処理を行い、次いで、
τ≦1.75×f…(1)
を満たすように溶融亜鉛めっき浴浸漬処理を行う溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
ただし、上記式(1)において、
f:塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスの鋼材表面に対する付着量(g/m
τ:被めっき鋼材が溶融亜鉛めっき浴に触れてから溶融亜鉛めっき浴中に完全に没するまでの時間(秒)とする。
[2]前記フラックス処理後に乾燥処理を行うに際し、下記式(2)を満たす[1]に記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
FE=9.6×exp(−2500/T)×RH×t0.5≦0.85…(2)
上記式(2)において、
T:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまで滞留する雰囲気における環境温度(K)
RH:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまで滞留する雰囲気における環境相対湿度(%)
t:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの滞留時間(分)である。
[3]前記溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は、1:1〜1:4である[1]または[2]に記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
[4]前記フラックス処理において、被めっき鋼材表面における前記塩化亜鉛の付着量を12g/m以下とする[1]〜[3]のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
[5][1]〜[4]のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法によって製造される溶融亜鉛めっき鋼材。
本発明によれば、溶融亜鉛めっき浴に含まれるPb濃度が極めて低い場合においても、不めっきを発生させることのない、溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法および溶融亜鉛めっき鋼材を提供することができる。
図1は、フラックスの付着量と接触角との関係を示す図である。 図2は、フラックスの付着量と全没時間τとの関係を示す図である。 図3は、塩化アンモニウムのモル分率と接触角との関係を示す図である。
通常、鋼材に対して行う溶融亜鉛による「どぶ漬けめっき」処理は、酸洗処理、フラックス処理、乾燥処理、溶融亜鉛めっき浴浸漬の順で行う。酸洗処理の前に脱脂処理を行う場合もある。また、脱脂処理、酸洗処理の後には、必要に応じて水洗工程を行う場合もある。ここで、フラックス処理とは、酸洗後の鋼材表面をフラックスで覆い、酸化を抑制するとともに、溶融亜鉛めっき浴浸漬時にフラックスが分解することで、鋼材表面を清浄化し、亜鉛めっき層の形成を促進するためのものである。フラックスを鋼材表面に付着させるためには、フラックスを水に溶解させた水溶液であるフラックス液を作り、フラックス液中に鋼材を浸漬させたり、フラックス液を鋼材表面に直接かけたりする。本発明の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法も、原則としてこの処理内容と順番に従っている。そして、本発明の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法には、以下に説明する技術上の特徴がさらに追加されている。
以下に、本発明の各処理条件の技術上の特徴となる限定理由について説明する。
本発明は、被めっき鋼材表面に、塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスを2.8g/m以上付着させるフラックス処理を行った後、乾燥処理を行い、次いで、τ≦1.75×f…(1)を満たすように溶融亜鉛めっき浴浸漬処理を行うことを特徴とする。ただし、上記式(1)において、f:塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスの鋼材表面に対する付着量(g/m)、τ:被めっき鋼材が溶融亜鉛めっき浴に触れてから溶融亜鉛めっき浴中に完全に没するまでの時間(秒)とする。
フラックスは、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの複塩あるいは混合物を主成分としている。塩化亜鉛は、フラックス処理工程後から溶融亜鉛めっき浴浸漬処理工程までの間、鋼材表面を酸化から保護する役割を担っている。フラックスは高温になると溶融し、その溶融塩が鋼材表面を溶解して、鋼材表面を清浄化する役割を持つ。また、塩化亜鉛は分解しないため、溶融亜鉛めっき浴浸漬時の急激な温度上昇によるフラックスの分解消失(特に塩化アンモニウムの分解消失)を緩和し、フラックスの有効時間を延ばす働きがある。もう一方のフラックス成分である塩化アンモニウムは、338℃で分解を始める。そのときに発生する塩化水素等が鋼材表面の汚れと結びつき、鋼材表面の清浄化を進める役割を果たす。
本発明者らは、フラックスが付着した鋼材の溶融亜鉛めっき浴に対する濡れ性を調査した。具体的には、ハンダの濡れ性評価にも用いられるWilhelmy法(プレート法)の実験装置を組み立て、後述する方法で実験を行った。Wilhelmy法は、液体に板状のサンプルを一定深さ浸漬したときの質量(重量)を測定することにより、液体の密度や表面張力が既知の場合に、その接触角を求めることができる方法の一つである。実験は、溶融亜鉛に対する濡れ性を評価するためのサンプルとして、電縫管(electric resistance welded tube)原板から、表面が平滑で厚さ0.5mmの薄鋼板(50×20mm。以下、濡れ性調査の説明においてサンプルとも称する。)を加工し、脱脂、酸洗、水洗を行った後に、濃度を変化させた塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなるフラックス液に浸漬して引き上げ、乾燥させた。その後、サンプルを電子天秤に吊り下げた状態で、溶融亜鉛浴中へ、サンプル下端から10mmを20sec間浸漬し、その間の質量を記録した。サンプルを一定量浸漬している20sec間にも質量は変動する(浴面上のサンプル表面が酸化されて酸化鉄が形成されるため、だんだん濡れにくくなっていく)ため、最大濡れを示す最大質量値から、最小接触角を算出した。一般に、接触角が90度以下になると濡れている状態であり、濡れ性が良いとされる。また、フラックス付着量は、サンプルの一定面積に付着したフラックスを塩酸で溶解採取し、その溶液中のZn量をICP発光分析(inductively-coupled plasma emission spectrometry)によって求めた。なお、蒸留亜鉛と電解亜鉛については、それぞれ表1に示す蒸留亜鉛と電解亜鉛Aの成分組成を用いた。
図1に、フラックス付着量と最小接触角(濡れ性)との関係を示す。図1から、フラックス付着量が2.8g/m以上では、最小接触角が90度以下となり、フラックス付着量が増加すると最小接触角はさらに減少した。また、この挙動は電解亜鉛と蒸留亜鉛でほぼ同じであった。一方、フラックス付着量2.8g/m未満では、電解亜鉛と蒸留亜鉛でその挙動が異なり、電解亜鉛では最小接触角が増加して急激に濡れ性が悪化するのに対し、蒸留亜鉛では最小接触角が徐々に増加するに留まった。この違いが、実際の製造における電解亜鉛と蒸留亜鉛とで不めっき発生に差が生じていると示唆される。
次に、本発明者らは、実際の鋼管を用いて、種々のフラックス付着量でめっき実験を行い、フラックス付着量と不めっきの関係を調べた。具体的には、鋼管表面に密着できる塩ビ製のセルを用いて、鋼管表面の一定範囲(50×60mm)の付着フラックスを塩酸溶液で溶解採取して分析し、使用したフラックス液の種々の濃度に対する付着フラックス量を求めるとともに、ハンディタイプの蛍光X線分析装置により、φ8mmの範囲の付着フラックス量(実際にはZn量を測定して、フラックス量に換算した)とその分布を求めた。めっき実験は、実操業に対応させて、鋼管サンプルの浸漬速度を変化させた(即ち、鋼管サンプルの全没時間を調整した)。その結果、実際の鋼管ではフラックス付着量が2.8g/m以上で、ほぼ良好なめっきが得られた。一方で、鋼管外径が大きくなり、鋼管全体が溶融亜鉛めっき浴に没するまでの時間が長くなると、不めっきのない良好なめっきを得るために必要なフラックス付着量が増加することが明らかとなった。これは、溶融亜鉛めっき浴からの熱伝達により、鋼材表面のフラックスが溶融亜鉛めっき浴に没する前に分解してしまうためと推察される。
そこで、次に、フラックス付着量と、鋼管全体が溶融亜鉛めっき浴に没するまでの時間(全没時間)との関係について調べた。その結果、図2のように、フラックス付着量をf、全没時間をτとしたとき、τ≦1.75×fという関係を満たすことにより、不めっきが発生しないことがわかった。
以上より、本発明では、被めっき鋼材表面に、塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスを2.8g/m以上付着させるフラックス処理を行った後、乾燥処理を行い、次いで、
τ≦1.75×f…(1)
を満たすように溶融亜鉛めっき浴浸漬処理を行うことを特徴とする。
ただし、上記式(1)において、
f:塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスの鋼材表面に対する付着量(g/m
τ:被めっき鋼材が溶融亜鉛めっき浴に触れてから溶融亜鉛めっき浴中に完全に没するまでの時間(秒)とする。
本発明のフラックスは、少なくとも上記の塩化亜鉛および塩化アンモニウムを含有する。また、単体の塩化亜鉛および単体の塩化アンモニウムに代えて、これらの複塩を用いても良い。また、塩化亜鉛および塩化アンモニウムの合計が主成分となる。
さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、他の塩化物、塩、水溶性化合物および界面活性剤等の添加剤を含んでもよい。特に、界面活性剤を含有させることは、フラックス液の鋼材への付着量を均一化するため、フラックスを節約する効果が期待できるので好ましい。本発明における界面活性剤の例としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤および非イオン界面活性剤等、が挙げられる。これら添加剤を0質量%として、上記の塩化亜鉛、塩化アンモニウムおよび残部を不可避的不純物として100質量%とすることが、フラックスの成分として好ましい。
本発明におけるフラックス付着量とは、フラックスに含まれている塩化亜鉛と塩化アンモニウムの合計値であり、その他の添加剤の質量は含まないものとする。
本発明では、フラックス処理後に乾燥処理を行うに際し、下記式(2)を満たすことが好ましい。
FE=9.6×exp(−2500/T)×RH×t0.5≦0.85…(2)
上記式(2)において、
T:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの間に滞留する雰囲気における環境温度(K)
RH:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの間に滞留する雰囲気における環境相対湿度(%)
t:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの間の滞留時間(分)である。
フラックスは、鋼材表面を酸化から保護するためのものである。しかしながら、フラックス液は、塩化アンモニウムを含んでいるため、液性は弱酸性を示し、鋼材すなわち鉄分の溶出を助長する。フラックス中に溶出した鉄分の除去にもフラックスは使用されるため、フラックス処理から乾燥処理までの環境状態によっては、鉄分の溶出によるフラックスの劣化が進行する。したがって、フラックス処理後、迅速に乾燥させることが好ましい。
上記式(2)で定義されるFE値は、このフラックスの劣化具合を示す指標であり、本発明において、FE値が0.85以下であれば、フラックスの劣化は最小限に抑制され、良好なめっき鋼材を得ることができる。
なお、フラックス液の乾燥を助けるため、フラックス槽中のフラックス液を加温することも有効な方法である。フラックス液を加温する場合は、温度保持の安定性と加熱コストの観点を踏まえて、フラックス液の温度を40℃以上85℃以下とすることが望ましい。
また、本発明では、溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は、1:1〜1:4であることが好ましい。溶融亜鉛めっき用フラックスは、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの複塩あるいは混合物である。塩化アンモニウムは、鋼材表面の清浄化にもっとも有効な物質であるが、熱により分解しやすい。一方、塩化亜鉛は、実操業において熱による塩化アンモニウムの分解消失を緩和して、フラックスの有効時間を延長する。そのため、どちらか一方の物質が極端に少ないと、鋼材表面の清浄化作用が著しく損なわれるおそれがある。
本発明者らは、フラックス中の塩化亜鉛と塩化アンモニウムの割合と濡れ性との関係について調べた。具体的には、図1の実験と同様に、Wilhelmy法(プレート法)を用いて、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの合計のモル濃度を一定にして、塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比を変化させたフラックス液の最小接触角を求めた。その結果、図3に示すように、溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比(図3中に記載の比率)が、塩化亜鉛:塩化アンモニウム=1:1〜1:4の範囲において、最小接触角がより小さくなり、濡れ性に優れていることがわかる。例えば、図3において、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの比が1:1から1:4の範囲で、最小接触角が約55°以下と、特に小さくなっており(点線部分)、この範囲が特に好ましいことがわかる。したがって、溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は、1:1〜1:4が好ましい。
また、本発明では、溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛の付着量が12g/m以下となるようにフラックスを鋼材表面に付着させることが好ましい。フラックス付着量は、濡れ性の観点からは多い方が好ましい。塩化亜鉛は実操業において、熱による塩化アンモニウムの分解消失を緩和してフラックスの有効時間を延長する物質である。しかし、塩化亜鉛は、溶融亜鉛浴程度の熱による分解はしないため、最終的には酸化亜鉛となって、溶融亜鉛めっき浴の表面に浮くトップドロス(top dross)となる。このトップドロスは、鋼材の溶融亜鉛めっき浴浸漬時および引き上げ時に鋼材表面に付着して、めっき鋼材の表面品質を劣化させる。また、トップドロスの定期的な除去もコストアップ要因となる。そのため、鋼材表面に付着させた溶融亜鉛めっき用フラックスにおける、塩化亜鉛の付着量は12g/m以下が好ましい。12g/m以下にすることにより、トップドロスの発生を低く保つことができる。なお、塩化亜鉛の付着量は、フラックス液の濃度により適宜制御することができる。
次に、溶融亜鉛めっき処理工程(酸洗処理、フラックス処理、乾燥処理、溶融亜鉛めっき処理)における、上記以外の各条件について、説明する。
酸洗処理としては、鋼材の酸洗処理として用いられている既知の方法を用いることができる。例えば、インヒビターを含有した塩酸水溶液に目視で鋼材表面のスケールが落ちるまで浸漬するなどの方法を用いることができる。酸洗処理の前工程として、必要に応じ、脱脂工程および水洗工程を行なっても良い。
次に、本発明のフラックス処理について説明する。鋼材表面へのフラックスの塗布は、水溶液状態で噴霧や塗布を行うか、あるいは、フラックス浴への浸漬を行った後に、自然乾燥あるいは強制乾燥させる。本発明において、上述したフラックスを水に溶解させた水溶液を、溶融亜鉛めっき用フラックス液として用いることができる。溶媒となる水は、一般的にフラックス処理で使用されているものを使用できる。浸漬塗布する場合、フラックス浴の濃度は、低すぎると十分な付着量が得られない、また、濃度が高すぎるとフラックス浴の粘性が高くなり、付着不良や乾燥不良を生じさせる。このため、本発明の溶融亜鉛めっき用フラックス浴の濃度は、上記の問題を回避する範囲で適宜設定することが可能である。
乾燥処理は、フラックス処理後にフラックス液中の水分を蒸発させ、鋼材表面に安定したフラックス皮膜(flux layer)を均一に形成させる工程である。乾燥は、例えば乾燥炉内で行えばよい。仮に乾燥させない状態で鋼材を長時間放置すると、フラックス液中に鋼材表面が溶け出してフラックスを劣化させ、フラックス作用を阻害する。乾燥炉に燃焼排ガスや一般大気を導入している例もあり、乾燥炉内の露点を制御して結露を防ぐことが好ましい。また、フラックス液の温度が上昇し過ぎたり、滞炉時間が長過ぎたりすると、鋼材の溶出が進行し、さらに温度が高くなるとフラックスの分解が始まる。そこで、フラックス処理後の乾燥処理における乾燥炉内雰囲気の温度は180℃以下が望ましい。これは、フラックスの溶融と鋼材の溶出を抑制するためである。また、乾燥炉内雰囲気の露点温度は、(乾燥炉に進入してくる鋼材の表面温度−10)℃以下であることが望ましい。これは、フラックスの乾燥の遅滞を防ぎ、効率的に乾燥させるためである。また、乾燥時の鋼材表面の最高到達温度は80℃以上140℃以下、かつ鋼材の乾燥炉内滞留時間は600秒以下が望ましい。これは、十分に乾燥させつつ、鋼材の溶出量を抑制するためである。80℃未満では、十分な乾燥ができず、不めっきが発生しやすくなる。この原因に関しては、明瞭にはわかっていないものの、フラックス中に結晶水が残るとともに、温度低下とともにフラックスの吸湿が生じ、十分に乾燥状態が保持できないため、鋼材表面が溶解し、それに伴いフラックスの清浄化作用を得ることができなくなるためと推察される。加熱コストの観点からは、乾燥時の鋼材の最高温度は120℃以下がより望ましい。
溶融亜鉛めっき浴浸漬処理は、既知の方法で行うことができる。本発明では、フラックス処理された被めっき鋼材を浸漬する溶融亜鉛めっき浴の成分組成としては、PbとCdがRoHS指令制限範囲内である、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴であることが好ましい。もちろん、Pb:0.003mass%以下、Cd:0.002mass%以下の最純亜鉛地金を用いても、めっき可能である。本発明では、上記組成のめっき浴であれば、他の元素を含有せずとも不めっきのない良好な溶融亜鉛めっき鋼材を得ることができる。なお、濡れ性を確保する以外の特性のために、必要に応じて、Sb、Bi、Sn、Ni、Ti、Al、Cu、Si、V、Mg等のうちから選ばれる1種または2種以上を含有しても構わない。
めっき浴の温度は、安定製造と品質の観点から、440〜470℃が望ましい。440℃未満では、温度変動によるめっき浴の凝固の可能性が高まる。また、470℃を超えると、鉄−亜鉛合金相の成長が早くなり、めっき層が脆くなるとともに、めっき厚の制御が難しくなるためである。
また、めっき浴浸漬後は、被めっき鋼材をめっき浴から引上げる際、もしくは引上げた後、被めっき鋼材に空気もしくはスチームなどを吹き付け、めっき付着量を調整してもよい。その後は、温水冷あるいは空冷によって冷却すればよい。
本発明の鋼材(被めっき鋼材)については、鋼管や鋼製構造物に対して行われる、いわゆる「どぶ漬けめっき」と呼ばれる溶融亜鉛めっき処理を行う鋼材であれば、特に制限されない。ただし、本発明の溶融亜鉛めっき処理は、薄鋼板(特に鋼帯)に対して行う上述の連続式溶融亜鉛めっき処理とは異なるため、薄鋼板は対象としない。
以下に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼材について、鋼管の実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
溶融亜鉛めっき鋼管の製造は、以下の工程で行った。脱脂後の被めっき鋼管(125A、5.5m長さ、1条件につき各11本)を酸洗し、表面の黒皮(熱延時に形成される鋼管表面の酸化皮膜)を除去した。酸洗液は、インヒビターを含有した12質量%塩酸水溶液、液温は30℃、浸漬時間は60分とした。酸洗後、水洗し、フラックス処理、乾燥処理および溶融亜鉛めっき浴浸漬を行った。
フラックス液は、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液であり、塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は表2に示すとおりとした。また、フラックス液の濃度を変化させることにより、フラックス付着量を変化させた。一部ではフラックス液に界面活性剤(非イオン性、SIGMA−ALDRICH社製 MERPOL HCS surfactant)を0.2質量%含有させた条件でも試験を行った。フラックス処理としては、フラックス液の温度は55℃とし、鋼管を30秒間浸漬した後に引き上げた。ここで、フラックス付着量および塩化亜鉛付着量については、フラックス処理後のサンプル表面のZn量を、ハンディタイプの蛍光X線分析装置で測定し、フラックス液中の塩化亜鉛と塩化アンモニウムの比率から、フラックス量に換算することにより、フラックス付着量および塩化亜鉛付着量を求めた。測定に供したサンプル鋼管は、経時変化によってフラックスが劣化し、正常なめっきおよび評価ができないため、1条件につき1本の鋼管を代表させることとし、全長方向に30mmピッチで測定し、さらに円周方向に4ライン測定した。測定した732点から、フラックス付着量および塩化亜鉛付着量の平均値を求めた。
また、鋼管がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの時間を計測し、乾燥炉手前の温度と相対湿度の測定結果と合わせ、上記(2)式によりFE値を算出した。
乾燥処理については、乾燥炉内の雰囲気温度は160℃に設定した。また、乾燥炉内の露点は10℃であり、乾燥炉に進入する鋼管表面温度の40℃より十分に低い温度であることを確認した。鋼管の乾燥炉内の通過時間は300秒、最高表面温度は120℃であった。
溶融亜鉛めっき浴浸漬処理について、めっき浴は、PbとCdを含まない電解亜鉛A、B、Cの3種のほかに、従来例として蒸留亜鉛を用いた。化学組成を表1に示す。めっき浴温度は、450℃とし、浸漬時間は100秒とした。溶融亜鉛めっき浴から引上げた後、ワイピングにより余分な溶融亜鉛を除去し、水冷により冷却した。また、めっき条件については、表2に示す条件で行った。なお、表2の計算限界時間とは、本発明の式(1)の右辺の値である。
上記条件により製造された溶融亜鉛めっき鋼管について、めっき層表面を詳細に観察し、不めっきの有無、不めっきの平均発生個数、トップドロスの付着によるめっき層の表面性状について評価した。具体的には、上記条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼管10本に対し、不めっきが1個以上確認された溶融亜鉛めっき鋼管を不良として不良率を算出し、不良率10%超えを不合格とした。不めっきの一本あたりの平均発生個数については、0個を−、1〜2個を△、3〜5個を□、6個以上を×とし、×を不合格とした。また、めっき層の表面性状については、良好を◎、トップドロスの付着がφ10mm未満で1ヶ所だけの軽度の荒れ(roughness)を○、トップドロスの付着がφ10mm以上のものが1ヶ所以上あるいはφ10mm未満のものが2ヶ所以上に認められた中度の荒れを△とし、トップドロスの付着がφ10mm以上であり、かつ10ヶ所以上に認められた重度の荒れを×とした。◎、○、△を合格とした。なお、上記不良率が10%超え(不合格)の場合はめっき層の表面性状について試験しなかった。
Figure 0005930136
Figure 0005930136
発明例の溶融亜鉛めっき鋼管サンプル(No.8、10、11、13〜17、19〜33)は、不めっきの発生が10%以下で、表面性状も良好であり、蒸留亜鉛を用いた従来例(No.3、5)と同様に合格である。一方、比較例の溶融亜鉛めっき鋼管サンプル(No.1、2、4、6、7、9、12、18)は、いずれも不合格であった。また、従来例である蒸留亜鉛は、不めっきは生じていないため、比較例で不めっきが生じたのは、めっき浴のPb濃度が低下したことが原因であり、本発明により、Pb濃度が低い場合でも不めっきの発生を抑制できることを示すものである。

本発明例は、不めっきの発生がないか極くわずかで、すべて合格であった。一方、比較例は不合格で、不めっきに関して劣っていることが分かる。
以上のように、本発明によれば、溶融亜鉛めっき浴に含まれるPb濃度が極めて低い場合においても、溶融亜鉛に対する濡れ性が十分に良い製造方法にて溶融亜鉛めっき鋼材を製造することができる。

Claims (4)

  1. 被めっき鋼材表面に、塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスを2.8g/m以上付着させるフラックス処理を行った後、乾燥処理を行い、次いで、
    τ≦1.75×f…(1)
    を満たすように溶融亜鉛めっき浴浸漬処理を行う溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
    ただし、上記式(1)において、
    f:塩化亜鉛および塩化アンモニウムからなる溶融亜鉛めっき用フラックスの鋼材表面に対する付着量(g/m
    τ:被めっき鋼材が溶融亜鉛めっき浴に触れてから溶融亜鉛めっき浴中に完全に没するまでの時間(秒)とする。
  2. 前記フラックス処理後に乾燥処理を行うに際し、下記式(2)を満たす請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
    FE=9.6×exp(−2500/T)×RH×t0.5≦0.85…(2)
    上記式(2)において、
    T:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまで滞留する雰囲気における環境温度(K)
    RH:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまで滞留する雰囲気における環境相対湿度(%)
    t:フラックス処理後の被めっき鋼材がフラックス槽を出てから乾燥炉に入るまでの滞留時間(分)である。
  3. 前記溶融亜鉛めっき用フラックスの塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は、1:1〜1:4である請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
  4. 前記フラックス処理において、被めっき鋼材表面における前記塩化亜鉛の付着量を12g/m以下とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼材の製造方法。
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