JP2014028989A - 溶融亜鉛めっき鋼管 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を提供する。
【解決手段】少なくとも亜鉛めっき層の成分組成が、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有し、被めっき鋼管の成分組成が、C:0.010mass%〜0.250mass%、Si:0.01mass%〜1.00mass%、Cu:0.50mass%以下、Mn:0.10mass%〜1.50mass%、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%〜0.100mass%、sol.Al:0.005mass%〜0.100mass%およびN:0.0010mass%〜0.0080mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相の平均厚さが1.0μm以下である溶融亜鉛めっき鋼管。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができる溶融亜鉛めっき鋼管に関するものであって、特に、RoHS指令で規制された範囲内である、Pb含有量を0.10mass%以下、Cd含有量を0.01mass%以下とする亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼管に関するものである。
近年、欧州連合により、電機・電子機器に対し、特定有害物質の使用を制限するRoHS指令が施行された。このRoHS指令は、対象製品中のPbの含有率を0.10mass%以下、Cdの含有率を0.01mass%以下に制限するものである。RoHS指令は日本国外の規定ではあるが、これに対応し、環境負荷物質の含有を抑えた環境により良い製品を供給できるようにしていくことが必要になってきている。したがって、PbやCdを多量に含有する製品は、将来的に使用されなくなると考えられる。
しかしながら、未だ多くの溶融亜鉛めっき製品における亜鉛めっき層は、RoHS指令で規制する値を超えるPbおよびCdを含有する。これらの亜鉛めっき層におけるPbおよびCdは、めっき原料となる溶融亜鉛めっき浴中の不純物に由来する。一方で、このPbは、溶融亜鉛めっきの濡れ性を向上する効果を生じさせる。これにより、例えば、被めっき材である鋼管表面が清浄でなかったり、酸化物があったりしても、亜鉛めっき層が形成され易くなる。そのため、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用して溶融亜鉛めっきを行うと、亜鉛めっき層が形成されない部分が生じる場合がある。これは、俗に、不めっきと言われる現象であり、溶融亜鉛めっき浴中のPb濃度が低下すると顕著に発生する好ましくない現象である。
なお、本発明における溶融亜鉛めっき処理とは、鋼管、鋼材あるいは構造物に対して行われる、いわゆる「どぶ漬けめっき」と呼ばれるものであり、薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理とは異なる。薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、鋼板表面の有機物を除去し還元雰囲気中でめっき浴に連続浸漬する。すなわち、非常に清浄化されかつ活性の高い状態の鋼の表面に溶融亜鉛が接することにより、鋼板表面に薄く亜鉛めっき層を形成させる。還元雰囲気中のため、当然、溶融亜鉛めっき浴上に酸化亜鉛などもほとんど浮遊していない。したがって、鋼板が溶融亜鉛めっき浴に投入される際には、鋼板表面に酸化亜鉛などの亜鉛めっき層形成を阻害する物質が付着しにくい状態で処理される。さらに、加熱により合金相の成長を制御する場合もある。これに対して、本発明の対象とする鋼管に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、大気開放下で行う。このため鋼管表面の酸化を防ぐとともに溶融亜鉛めっき浴中で高温になった時に鋼管表面の汚れに対して除去効果が得られるフラックス処理をめっき前に施すものである。また、フラックス処理の前に、鋼管表面の油などの汚れを除去するための酸洗処理、場合によっては酸洗処理の前に脱脂処理を行うが、薄鋼板と異なり形状が複雑なため、その効果が非常に不十分なものとなっているのが現状である。さらにまた、溶融亜鉛めっき浴浸漬中に合金相を形成させるとともに、めっき後にワイピングによってめっき厚さを制御した後に空冷または温水冷する。このため、亜鉛めっき層の厚さも数10μmから100μm以上となり、薄鋼板の亜鉛めっき層に比べて非常に厚みがあることを特徴とする。
このように、鋼板の連続式めっきと鋼管のバッチ式めっきとでは、プロセスおよび出来上がった亜鉛めっき層の構造が大きく異なる。すなわち、鋼管のバッチ式めっきは、本質的にめっき不良の発生しやすいプロセスなっており、その課題も異なったものとなっている。例えば、前述した不めっきに関しては、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用した場合でも、鋼板の連続式めっきでは問題が生じないのに対して、鋼管のバッチ式めっきでは不めっきが発生し易くなる傾向がある。
また、溶融亜鉛めっき鋼管は、鋼管同士を接続するために、管端に転造ねじ加工、フレア加工、グルービング加工等を行う場合がある。Pb濃度の低い条件で溶融亜鉛めっき処理を行った溶融亜鉛めっき鋼管では、鋼管の変形を伴う加工を施すと、亜鉛めっき層の剥離が生じる場合がある。以上のような、不めっきや亜鉛めっき層の剥離は、溶融亜鉛めっき鋼管の耐食性を劣化させるため、製造効率や配管作業効率を低下させる大きな問題である。
特許文献1では、溶融亜鉛めっき層中の鉛濃度が0.1mass%以下、カドミウム濃度が0.01mass%以下であって、60〜85℃の温水に浸漬することによりめっき後の冷却を行なうことを特徴とする、亜鉛めっき合金相部のビッカース硬さを110Hv以下であり、環境負荷物質の含有量が少なく、フレア加工時にも亜鉛めっき層が剥離しにくい溶融亜鉛めっき鋼管およびその製造方法が開示されている。
特開2011−89175号公報
しかしながら、冷却水温を60〜85℃に規定するという特許文献1に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法では、めっきする鋼管の径や肉厚が異なれば亜鉛めっき層の冷却速度が変わってしまい、冷却後の亜鉛めっき層の物理的特性も変わってしまう。このため、すべての径および肉厚の溶融亜鉛めっき鋼管で、必ずしも十分な耐剥離性(以下、亜鉛めっき層が剥離しにくいことを単に耐剥離性と称することもある。)を発揮するとは言い難い。また、不めっきについては、溶融亜鉛が鋼表面ではじかれて鋼表面が溶融亜鉛で濡れないために起こる現象であり、特許文献1に記載のようにめっき浴から被めっき鋼管を引き上げた後の冷却水温を規定しても不めっきを抑制することはできない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができる鋼管であり、環境負荷低減のために亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を達成するため、まず、亜鉛めっき層の構造を解析した。亜鉛めっき層は鋼管界面側から順に、Γ相、δ相、ζ相(以上3相が亜鉛および鉄を主体とする合金相)、η相(亜鉛を主体とする相)の4相構造となっている。合金相の内で最も厚いのはζ相であるが、Fe含有量の高いΓ相およびδ相はζ相よりも硬さが大きく、Γ相およびδ相の存在が亜鉛めっき層の剥離に大きな影響をおよぼしているという知見を得た。その中でも特にΓ相の厚さやΓ相が連続して存在することが亜鉛めっき層の剥離に大きな影響をおよぼしていること、また、δ相の中にもFe含有率が高い部分が存在すると亜鉛めっき層の剥離が生じるという知見を得た。そして、Γ相が一定以下の厚みを持つ時に剥離が生じにくくなること、また、Γ相の面積率が特定値以下で、かつδ相が特定値以上の厚さを持つとさらに剥離が生じにくくなることを、本発明者らは明らかにした。なお、ここでいうδ相は、δ相およびδ1相を含み、Γ相は、Γ相およびΓ1相を合わせたものである。
被めっき鋼管の組成やめっき条件などを組み合せて種々の試験を行った結果、本発明者らは、亜鉛めっき層中の成分組成においてPb、Cdの含有量を低減した場合でも、Feの含有量が所定の範囲内であれば合金相の成長を制御できることを明らかにした。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]亜鉛めっき層の成分組成が、Fe:1.0mass%〜6.0mass%、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、被めっき鋼管の成分組成が、C:0.010mass%〜0.250mass%、Si:0.01mass%〜1.00mass%、Cu:0.50mass%以下、Mn:0.10mass%〜1.50mass%、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%〜0.100mass%、sol.Al:0.005mass%〜0.100mass%およびN:0.0010mass%〜0.0080mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相の平均厚さが1.0μm以下であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管。
[2]前記亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相を面積率で10%以下含み、かつ、δ相の平均厚さが25μm以上であることを特徴とする[1]に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
[3]前記亜鉛めっき層の成分組成において、さらに、Ni:0.001mass%〜0.050mass%、Ti:0.001mass%〜0.050mass%、Al:0.001mass%〜0.050mass%、Cu:0.001mass%〜0.050mass%またはSi:0.001mass%〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]または[2]に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
[4]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Ni:0.01mass%〜0.50mass%を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
[5]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Nb:0.001mass%〜0.100mass%、V:0.002mass%〜0.100mass%、Ti:0.001mass%〜0.100mass%、B:0.010mass%以下、Ca:0.0002mass%〜0.0050mass%またはREM:0.0005mass%〜0.0150mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
なお、以下、mass%は、単に%と記すこともある。
本発明によれば、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができる鋼管であり、亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を得ることができる。
Γ相の観察結果を示す一例である。 δ相の観察結果を示す一例である。 転造ねじ加工にて剥離のない本発明例(a)と、剥離のある比較例(b)のそれぞれの外観を示した写真である。
次に、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、フラックス処理を施した被めっき鋼管を、加熱溶融した溶融亜鉛めっき浴中に所定時間浸漬し、引上げ後に冷却することにより、被めっき鋼管の表面に亜鉛めっき層を形成してなる溶融亜鉛めっき鋼管に関する。本発明において、亜鉛めっき層の成分組成が、Fe:1.0〜6.0mass%、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
亜鉛と鉄の合金相に関しては、亜鉛めっき層と地鉄の界面に存在するΓ相の平均厚さが1.0μm以下であることを特徴とし、更に好ましくは、亜鉛めっき層と地鉄の界面に存在するΓ相を面積率で10%以下含み、かつ、δ相の平均厚さが25μm以上であることを特徴とする。なお、本発明における地鉄とは、鋼管の表層であって、亜鉛めっき層と接する層のことをいう。
被めっき鋼管の成分組成は、C:0.010mass%〜0.250mass%、Si:0.01mass%〜1.00mass%、Cu:0.50mass%以下、Mn:0.10mass%〜1.50mass%、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%〜0.100mass%、sol.Al:0.005mass%〜0.100mass%およびN:0.0010mass%〜0.0080mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とする。
以下に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管における亜鉛めっき層の化学組成限定理由について説明する。亜鉛めっき層は局所的に見れば、場所により合金相部分であったり亜鉛が冷却固化してできた非合金化部分であったり様々であり、化学組成も局所的に見た場合に異なったものになるが、本発明でいうところの化学組成は、亜鉛めっき層の平均的な組成であり、亜鉛めっき層全体を溶解、例えば、めっき鋼管表面の一定面積、例えば10cm四方の亜鉛めっき層のみをインヒビター入りの酸などにより溶解して、その溶液を分析することによって得られるものである。
[Fe:1.0〜6.0mass%]
Feは亜鉛めっき層の合金化度を示す指標ともなる元素であり、1.0mass%よりも少ないと十分に合金相が成長していないことを示しており、十分な密着性とめっき厚さを確保できない。一方、6.0mass%を超えるとΓ相等の鉄−亜鉛合金相が多くなりすぎており密着力が低下する。また、6.0mass%を超えることは、最外層に純亜鉛層であるη相がほとんどないことを示し、外観を著しく劣化させる。このため、Feは1.0〜6.0mass%とする。
[Pb:0.10mass%以下]
PbはRoHS指令で規制された環境負荷物質であり、0.10mass%以下とする。
[Cd:0.01mass%以下]
CdはRoHS指令で規制された環境負荷物質であり、0.01mass%以下とする。
また、本発明の亜鉛めっき層において、更に特性を向上させる場合、Ni、Ti、Al、CuまたはSiの1種または2種以上を含有することができる。
[Ni:0.001〜0.050mass%]
Niは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、亜鉛めっき層が剥離しにくく耐剥離性が向上する。この効果を得るためには亜鉛めっき層中に0.001mass%以上含有することが必要であり、一方で、0.050mass%を超えると効果が飽和する。このため、Niは0.001〜0.050mass%を含有することができる。なお、より効果を得るためには、好ましくは0.010〜0.050mass%である。
[Ti:0.001〜0.050mass%]
Tiは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためには亜鉛めっき層中に0.001mass%以上含有することが必要であり、一方で、0.050mass%を超えると効果が飽和する。このため、Tiは0.001〜0.050mass%を含有することができる。なお、より効果を得るためには、好ましくは0.010〜0.050mass%である。
[Al:0.001〜0.050mass%]
Alは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためには亜鉛めっき層中に0.001mass%以上含有することが必要であり、0.050mass%を超えると効果が飽和する。このため、Alは0.001〜0.050mass%を含有することができる。なお、より効果を得るためには、好ましくは0.010〜0.050mass%である。
[Cu:0.001〜0.050mass%]
Cuは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためには亜鉛めっき層中に0.001mass%以上含有することが必要であり、0.050mass%を超えると効果が飽和する。このため、Cuは0.001〜0.050mass%を含有することができる。なお、より効果を得るためには、好ましくは0.010〜0.050mass%である。
[Si:0.001〜0.010mass%]
Siは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためには亜鉛めっき層中に0.001mass%以上含有することが必要であり、0.010mass%を超えると効果が飽和する。このため、Siは0.001〜0.010mass%を含有することができる。
本発明の亜鉛めっき層の残部はZnおよび不可避的不純物とする。
なお、亜鉛めっき層をこのような組成にするためには、被めっき鋼管を浸漬する溶融亜鉛めっき浴の成分を調整することによって可能となる。
次に、本発明の被めっき鋼管の化学組成限定理由について説明する。なお、Si以外の元素に関しては、本発明のめっき鋼管が適用されるガス管、水用配管、空調配管などの用途を考慮し、鋼管としての強度や機械的性能な必要性能を発現させるためのものであり、本発明の目的とする亜鉛めっき層の密着性とは直接の関係はない。
[C:0.010〜0.250mass%]
Cは、鋼管の強度を増加させる元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.010mass%以上とする。一方、0.250mass%を超えると、溶接性および溶接熱影響部の靭性を劣化させる。このため、Cは0.010〜0.250mass%とする。なお、強度、靭性の観点から、好ましくは0.010〜0.160mass%である。
[Si:0.005〜1.000mass%]
Siは、一般には脱酸剤として作用するとともに、強度を増加させる元素であり、鋼管の機械的特性のために必要なものである。本発明において、特にSiは、鋼管表面でのΓ相の形成を抑制するとともに合金相の中でδ相およびζ相の成長を促進させ、耐剥離性の向上に寄与する。このため、0.005%未満では十分な合金相が生成せず、密着力の弱いものになってしまう。一方、1.000mass%を超えると、鋼の靭性を劣化させる。このため、Siは0.005〜1.000mass%とする。
[Cu:0.50mass%以下]
Cuは、一般に、耐溝状腐食鋼管など耐食性のある鋼管に含まれており、本発明においてはそのような鋼管を被めっき鋼管として用いても良い。その際のCuの組成は所望する耐食効果に合わせて適宜選択することができるが、Cuが0.50mass%を超えると熱間加工性の劣化を招く。このため、Cuは0.50mass%以下とする。さらに、Cuは、めっき前処理時の鋼管の溶解を抑制し、フラックスの清浄化作用を維持するため、めっき浴に浸漬した際の被めっき鋼管表面の活性度が高くなりδ相の合金化が促進される。その結果、本発明で規定している合金相を形成しやすくする作用を持ち、亜鉛めっき層の密着性向上に寄与する効果もある。
[Mn:0.10〜1.50mass%]
Mnは、鋼管の強度を増加させる元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.10mass%以上とする。一方、1.50mass%を超えると、鋼の靭性および溶接性を低下させる。このため、Mnは0.10〜1.50mass%とする。なお、強度の維持および耐食性を劣化させる介在物形成の抑制の観点から、好ましくは0.10〜0.80mass%とする。
[P:0.050mass%以下]
Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させる有害な元素であり、できるだけ低減するのが望ましく、0.050mass%を超えると靭性が顕著に低下する。このため、Pは0.050mass%以下とする。なお、0.005mass%未満では製造コストの増大を招くので、好ましくは0.005〜0.050mass%とする。
[S:0.010mass%以下]
Sは、非金属介在物のMnS等を形成し、延性や溶接部の靭性を低下させる有害な元素であり、できるだけ低減するのが望ましく、0.010mass%を超えると、特に前述の機械的特性の顕著な低下を招く。このため、Sは0.010mass%以下とする。なお、0.002mass%未満では製造コストの増大を招くので、好ましくは0.002〜0.010mass%とする。
[Cr:0.005〜0.100mass%]
Crは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.005mass%未満では、顕著な効果を得られない。また、0.100mass%を超えると効果が飽和するとともに、コストの上昇および溶接性の劣化を招く。このため、Crは0.005〜0.100mass%とする。
[sol.Al:0.005〜0.100mass%]
sol.Alは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.005mass%以上とする。一方、0.100mass%を超えると、鋼の靭性が低下する。このため、sol.Alは0.005〜0.100mass%とする。なお、好ましくは、0.010〜0.080mass%とする。
[N:0.0010〜0.0080mass%]
Nは、靭性の向上および溶接継手部の機械的特性向上のために、0.0010mass%以上とする。しかし、0.0080mass%を超えると、固溶Nの増加をもたらし、溶接条件によっては、継手部靭性を著しく劣化させる。このため、Nは0.0010〜0.0080mass%とする。
また、本発明の被めっき鋼管において、更に特性を向上させる場合、Niを含有することができる。
[Ni:0.01〜0.50mass%]
Niは、Cuと複合添加することにより、熱間加工性の劣化を抑制する働きがある。しかし、0.01mass%未満では効果がなく、0.50mass%を超えるとコストの上昇を招く。このため、添加する場合は、0.01〜0.50mass%が好ましい。
さらに、本発明の被めっき鋼管において、更に特性を向上させる場合、Nb、V、Ti、B、CaまたはREMのうちから選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
[Nb:0.001〜0.100mass%]
Nbは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.001mass%未満では強度向上への効果がなく、0.100mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.001〜0.100mass%が好ましい。
[V:0.002〜0.100mass%]
Vは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.002mass%未満では強度向上への効果がなく、0.100mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.002〜0.100mass%が好ましい。
[Ti:0.001〜0.100mass%]
Tiは、強度および靭性の向上を目的に添加する元素であるが、0.001mass%未満では効果がなく、0.100mass%を超えると効果が飽和する。このため、添加する場合は、0.001〜0.100mass%が好ましい。
[B:0.010mass%以下]
Bは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.010mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.010mass%以下が好ましい。
[Ca:0.0002〜0.0050mass%]
Caは、介在物の形態制御によって延性および靭性を向上させる作用がある。しかし、0.0002mass%未満では効果がなく、0.0050mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.0002〜0.0050mass%が好ましい。なお、耐食性向上の観点からは、0.0010〜0.0050mass%がより好ましい。
[REM:0.0005〜0.0150mass%]
本発明において、REMは、レアアース成分の組成比率が、Ce:50%±5%以内、La:25%±5%以内、Nd:15%±5%以内、Pr:10%±5%以内であるものを指し、介在物の形態制御によって延性および靭性を向上させる作用を有する。0.0005mass%未満では効果がなく、0.0150mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.0005〜0.0150mass%が好ましい。耐食性向上の観点からは、0.0050〜0.0150mass%がより好ましい。
本発明における被めっき鋼管の成分組成において、上記の成分組成以外の残部はFeおよび不可避的不純物とする。すなわち、本発明の作用効果を無くさない限り、不可避的不純物をはじめ、他の微量元素を含有するものが本発明の範囲に含まれ得ることを意味し、不可避的不純物の例として、O(酸素):0.008%以下を許容する。
次に、本発明の亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相の平均厚さの限定理由について説明する。
[Γ相の平均厚さ:1.0μm以下]
亜鉛めっき層と地鉄の界面に存在するΓ相は、鉄−亜鉛合金相の中で最も硬く脆い相である。めっき鋼管の剥離は、このΓ相内あるいはΓ相と地鉄の界面で生じており、このΓ相の平均厚さが1.0μmを超えると剥離発生が急増するという知見を得た。このため、本発明では、Γ相の平均厚さは1.0μm以下とする。本発明において、Γ相の平均厚さが0.3μm以下になると剥離の起点となる微細な割れが激減するため、さらに好ましい。なお、ここでいうΓ相は、Γ相およびΓ1相を合わせたものである。
Γ相の測定方法としては、無作為に撮影したSEM写真からΓ相厚さを測定し平均する無作為抽出平均法、画像処理によって求めたΓ相面積から厚さを算出する画像処理法などが挙げられる。本発明において、被めっき鋼管の組成および亜鉛めっき浴の成分調整およびめっき条件を制御することにより、Γ相の平均厚さを1.0μm以下とすることができる。
[Γ相の面積率:10%以下]
亜鉛めっき層と地鉄の界面に存在するΓ相は、鉄−亜鉛合金相の中で最も硬く脆い相である。めっき鋼管の剥離は、このΓ相内あるいはΓ相と地鉄の界面で生じており、このΓ相の存在が界面での面積率10%を超えると剥離発生が急増するという知見を得た。本発明において、亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相は面積率10%以下含むことが好ましい。なお、Γ相の面積率の算出は、亜鉛めっき層の断面をSEMを用いて5000倍から10000倍の組織観察を行い、亜鉛めっき層−鋼管界面での長さ当たりのΓ相の存在率を求め、それを二乗することにより、面積率とする。その際に観察する長さとしては、通常50μm〜1mmの長さに渡って評価を行なえばよい。例えば、100μmの長さに渡って撮影した亜鉛めっき層の断面のSEM写真より、「界面の全長」と「Γ相が存在している界面の長さ」を測定し、(「Γ相が存在している界面の長さ」/「界面の全長」)×100(%)として算出すればよい。たとえば、界面長さ当たり10%の領域にΓ相が存在する場合、面積率は1%(=10%×10%)となる。なお、ここでいうΓ相は、Γ相およびΓ1相を合わせたものである。
[δ相の平均厚さ:25μm以上]
亜鉛めっき層下層に存在するδ相は、鉄−亜鉛合金相の中ではΓ相に次いで硬く脆い相である。本発明者らの検討により、Γ相の形成を抑制すると、めっき鋼管の剥離は、このδ相内あるいはδ相と地鉄の界面で生じており、そのときのδ相は、Fe含有率が12%以上と高くなっているという知見が得られた。これは、δ相の成長が抑制されると亜鉛めっき層中のFeの拡散が不均一となり、部分的にFe含有量の高いδ相が形成されるためと考えられる。このときのδ相の平均厚さは25μm未満であり、剥離発生が急増することがわかった。δ相の平均厚さが25μm未満の場合、δ相中にFe濃度が高い部分が存在しており、Fe濃度の高いδ相は強度が高く割れやすい。そのため、剥離発生が急増すると考えられる。したがって、本発明において、耐剥離性向上の点から、δ相の平均厚さは25μm以上とすることが好ましい。なお、ここでいうδ相は、δ相およびδ1相を合わせたものである。
δ相の測定方法としては、例えば、光学顕微鏡あるいはSEMによる組織観察(500倍から1000倍程度の倍率)が挙げられる。
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法について説明する。
まず、上記の化学成分の鋼を用いて被めっき鋼管を製造する。被めっき鋼管の製造方法としては特に制限はなく、通常の鋼管と同様に製造することができる。例えば、鋼の溶製では、転炉等で主要5元素(C,Si,Mn,P,S)を発明の範囲に調整するとともに、必要に応じてその他の合金元素を添加する。溶製後、例えば、連続鋳造法、熱間圧延法により、熱間圧延板を得ることができる。この熱間圧延板より鋼管を製造する。鋼管の製造方法としては、常法であればよく、例えば、連続鋳造等により得られた鋳片やビレットからの継目無し管の製造、あるいは熱延板からの鍛接管、電縫管の製造等が挙げられる。なお、本発明における被めっき鋼管のサイズについては、パイプスペースや流送物の流量確保の観点から、外径が10〜700mmであることが好ましい。以上より、被めっき鋼管を得ることができる。
次に、得られた被めっき鋼管に溶融亜鉛めっき処理を施す。溶融亜鉛めっき処理としては、通常と同様の、1)酸洗処理、2)フラックス処理、3)乾燥、4)溶融亜鉛めっき浴浸漬の順で行う方法を用いることができる。以下に本発明達成のために好適な条件を述べる。なお、各工程においては、適宜、脱脂や水洗を適宜組み合せることができる。
1)酸洗処理
酸洗処理としては、常法であればよく、鋼管の酸洗処理として用いられている既知の方法を用いることができ、例えば、インヒビターを添加した塩酸水溶液に目視で鋼管表面のスケールが落ちるまで浸漬するなどの方法を用いることができる。
2)フラックス処理
フラックス処理については、通常と同様の方法、すなわち、塩化アンモニウムおよび塩化亜鉛を主成分とするフラックス処理液に鋼管を浸漬後に引き上げ、必要により後述の乾燥を行えばよい。フラックス液の濃度は、工業的には比重で管理されており、例えば、比重が1.10以上1.30以下となるように水にフラックスを溶解させたものが推奨される。フラックス液の比重は、40℃の水を1とした時の70℃のフラックス液の比重である。フラックス液の温度は、例えば、常温から95℃が推奨される。フラックス液温は、乾燥性の面からは高い方が良く、コスト面からは低い方が良い。それらを考えると、65℃以上90℃以下が望ましい。
3)乾燥
乾燥工程は、フラックス液中の水分を蒸発させ、鋼管表面に安定したフラックス皮膜を均一に形成させる重要な工程である。乾燥は、例えば乾燥炉内で行えばよい。本発明において、乾燥時の被めっき鋼管の最高温度は180℃以下とすることができる。乾燥時の被めっき鋼管の最高温度が180℃を超えると、フラックスの分解が始まり、分解した部分で不めっきが生じやすくなる。なお、フラックス温度が十分に高い場合には、被めっき鋼管をフラックス槽から引き上げた後、短時間で自然に乾燥するため、乾燥工程を省略することもできる。
4)溶融亜鉛めっき浴浸漬
溶融亜鉛めっき浴の温度および浸漬時間は、通常の溶融亜鉛めっきにおける条件を用いることができ、例えば、浴温は435℃以上495℃以下が推奨される。浴温は、凝固しない限り低温なほど経済性が良いが、めっき付着量の観点からは低温なほど不利になる。本発明において、溶融亜鉛めっき浴の温度は、450℃以上480℃以下であることがより好ましい。
溶融亜鉛めっき浴の組成としては、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するものであればよく、例えば、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下の組成が挙げられる。さらに、Ni、Ti、Al、Cu、Siのうちから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。また、本発明におけるめっき浴は、複数の被めっき鋼管を処理していく間に、鋼管に付着した油分や鋼管からの溶出物、さらに浴槽の材料からの溶出物等で汚れていくが、それら不純物を含んだものである。
上記めっき浴に被めっき鋼管を浸漬することにより、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管を得ることができる。
また、被めっき鋼管をめっき浴から引上げる際、もしくは引上げた後、被めっき鋼管の外面と内面に空気もしくはスチームなどを吹き付け、めっき付着量を調整してもよい。
以下に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管について、実施例に基づいて説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有する溶鋼1〜28(本発明例:No.1〜26、比較例:No.27、28)を転炉で溶製し、連続鋳造法、熱間圧延法により、熱間圧延板とした。この熱間圧延板より電縫鋼管を製造し、20Aおよび100Aサイズの被めっき鋼管とした。
溶融亜鉛めっき鋼管の製造は、以下の工程で行った。脱脂後の被めっき鋼管を酸洗し、表面の黒皮(熱延時に形成される鋼管表面の酸化皮膜)を除去した。酸洗液は、インヒビターを添加した12%塩酸水溶液、液温は30℃、浸漬時間は40分とした。酸洗後、水洗し、フラックス処理および溶融亜鉛めっき浴浸漬を行った。フラックス処理および溶融亜鉛めっき条件は、次の2条件で行い、比較した。なお、用いたフラックス液は、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液であり、塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は1:1とした。
条件1では、フラックス液の70℃での比重は1.24、温度は70℃とした。条件2では、フラックス液の70℃での比重は1.12、温度は30℃とした。フラックス液から引上げた後、乾燥炉にて乾燥させ、溶融亜鉛めっき浴に浸漬した。条件1では、溶融亜鉛めっき浴の温度は465℃、浸漬時間は120秒とした。条件2では、溶融亜鉛めっき浴の温度は450℃、浸漬時間は160秒とした。溶融亜鉛めっき浴から引上げた後、ワイピングにより余分な亜鉛を除去し、水冷により冷却した。
また、溶融亜鉛めっき浴としては、サンプルNo.1〜54では、JIS H2107(1999)に規定の最純亜鉛地金(Zn:99.995%以上、Pb:0.003%以下、Cd:0.002%以下、Fe:0.002%以下、Sn:0.001%以下)を用いた。参考例(サンプルNo.55〜59)では、従来から鋼管の溶融亜鉛めっきに使用されているJIS H2107(1999)に規定の蒸留亜鉛地金1種(Zn:98.5%以上、Pb:1.3%以下、Cd:0.4%以下、Fe:0.025%以下)を用いた。
製造しためっき管は、目視で不めっきの有無を確認した後、20Aサイズめっき管については転造ねじ加工、100Aサイズめっき管についてはフレア加工を施して、内面あるいは外面の亜鉛めっき層の剥離を評価するとともに、亜鉛めっき層の化学組成の分析および亜鉛めっき層の相構造解析を行なった。
転造ねじ加工あるいはフレア加工は、各条件のめっき鋼管をN=5本加工し、加工部を×5倍のルーペで観察して、5段階で評価した。すなわち、亜鉛めっき層が健全で全く剥離および亀裂がなかった場合を「5」、剥離はなかったものの一部の管の亜鉛めっき層に亀裂が見られたものを「4」、剥離はなかったもののすべての管の亜鉛めっき層に亀裂が見られたものを「3」、一部の管に剥離が発生した場合を「2」、5本すべての管に剥離が生じた場合を「1」とした。個別評価では3以上を合格とし、2および1は不合格とした。また、総合判定は、両方が3以上を合格とし、一方に2または1がある場合は不合格とした。
転造ねじ加工は、加工速度=10mm/秒で行った。フレア加工は、拡管率:(つば径/鋼管径)=135%、拡管速度:(拡管量90度/加工時間)=3.6度/秒で行った。
亜鉛めっき層の化学分析は、60mm長さに切り出しためっき鋼管の亜鉛めっき層をインヒビターを添加した塩酸で完全に溶解し、ICP発光分光分析法にて分析を行った。
亜鉛めっき層の相構造解析は、平均的な情報を得るために、以下の方法で行った。5500mm長さのめっき鋼管のトップから500mm位置、中央部、ボトムから500mm位置の3ヶ所それぞれの位置から、電縫部を基準に円周方向に4ヶ所(電縫部から45°、135°、225°、315°の位置)、合計12個のサンプルを採取し、亜鉛めっき層断面の観察用サンプルを作製した。観察用サンプルは、鏡面研磨した後に0.25%ナイタール液に3秒浸漬してエッチングし、エタノールで洗浄、乾燥後、走査型電子顕微鏡および光学顕微鏡で観察した。
Γ相については、前述の各観察用サンプルの中央部分における亜鉛めっき層−地鉄界面を10000倍で視野幅10μmの範囲を撮影し、視野幅を五等分したそれぞれの領域の中央5箇所でΓ相の厚みを測定しその平均を求め、Γ相厚さとした。このΓ相厚さを前述の合計12個のサンプルで測定し、それらを平均し、その溶融亜鉛めっき鋼管のΓ相の平均厚さとした。図1に、Γ相の観察結果の一例を示す。また、表2に各サンプルのΓ相の平均厚さを示す。
また、Γ相の面積率については、前述の各観察用サンプルの中央部分における亜鉛めっき層−地鉄界面を10000倍で視野幅10μmの範囲を撮影し、その画面上で目視で確認できる界面の長さS、およびその界面上にあるΓ相の長さLを求め、(L/S)×(L/S)×100よりΓ相の面積率(%)を求めた。このΓ相の面積率を前述の合計12個のサンプルで平均し、そのめっき鋼管のΓ相平均面積率とした。また、表2に各サンプルのΓ相の平均面積率を示す。
同様に、δ相については、前述の各観察用サンプルの中央部分における亜鉛めっき層−地鉄界面を500倍で視野幅200μmの範囲を撮影し、視野幅を五等分したそれぞれの領域の中央5箇所でδ相の厚みを測定しその平均を求め、δ相厚さとした。このδ相厚さを前述の合計12個のサンプルで測定し、それらを平均し、その溶融亜鉛めっき鋼管のδ相の平均厚さとした。図2に、δ相の観察結果の一例を示す。また、表2に各サンプルのδ相の平均厚さを示す。
表2に有無、転造ねじ加工の試験結果、フレア加工の試験結果および評価結果を示す。また、図3に転造ねじ加工にて剥離のない本発明例(a)と、剥離が生じた比較例(b)の外観を示す。
また、各サンプルのめっき付着量をJIS H0401(2007)に準じて測定した所、すべて310〜450g/mであった。
本発明の範囲内である溶融亜鉛めっき鋼管のサンプルは、いずれも転造ねじ加工性およびフレア加工性がともに良好で、総合判定は合格である。一方、本発明範囲外の比較例である溶融亜鉛めっき鋼管のサンプルは、不めっき、転造ねじ加工評価、フレア加工評価の少なくとも一項目以上で不合格となり、加工性が劣っていることがわかる。
本発明によれば、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を広く安価に利用することができる。

Claims (5)

  1. 亜鉛めっき層の成分組成が、Fe:1.0mass%〜6.0mass%、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有し、残部がZnおよび不可避的不純物からなり、被めっき鋼管の成分組成が、C:0.010mass%〜0.250mass%、Si:0.01mass%〜1.00mass%、Cu:0.50mass%以下、Mn:0.10mass%〜1.50mass%、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%〜0.100mass%、sol.Al:0.005mass%〜0.100mass%およびN:0.0010mass%〜0.0080mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、前記亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相の平均厚さが1.0μm以下であることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管。
  2. 前記亜鉛めっき層と地鉄との界面に存在するΓ相を面積率で10%以下含み、かつ、δ相の平均厚さが25μm以上であることを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  3. 前記亜鉛めっき層の成分組成において、さらに、Ni:0.001mass%〜0.050mass%、Ti:0.001mass%〜0.050mass%、Al:0.001mass%〜0.050mass%、Cu:0.001mass%〜0.050mass%またはSi:0.001mass%〜0.010mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  4. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Ni:0.01mass%〜0.50mass%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
  5. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Nb:0.001mass%〜0.100mass%、V:0.002mass%〜0.100mass%、Ti:0.001mass%〜0.100mass%、B:0.010mass%以下、Ca:0.0002mass%〜0.0050mass%またはREM:0.0005mass%〜0.0150mass%のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管。
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