JP4940813B2 - TS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
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例えば、780MPa級高張力鋼板に関して、CAL材に比べCGL(1回法)材で延性(El)が劣化(CAL材≧30%、CGL材25%程度)する問題はオーステンパー処理を施すことにより解決する(オーステンパー処理を施すことで延性が向上する)。
一方で、従来から、めっき処理はZn−0.1〜0.2%Al(融点419℃)の溶融Zn浴を用いて浴温460℃程度で実施されている。そのため、めっき浴中でオーステンパー処理しようとすると、浴温を現行の460℃から420〜440℃に低下させなければならない。しかし、融点が419℃であるため420〜440℃での低温操業は安定姓に欠ける。
そこで、浴温を現行460℃から420〜440℃に低下させた場合でも安定操業が可能となる方法を鋭意研究した。浴中成分三元共晶組成での融点低下に着目したところ、Mgをめっき浴に適量含有させることで、めっき浴の融点が低くなり、めっき浴の温度を低下させても安定操業が可能となることを見出した。
[1]鋼板にめっき処理を施し溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、浴温が400〜450℃、浴中Al濃度が1.0〜10mass%、浴中Mg濃度が0.10〜10mass%の亜鉛めっき浴を用いて、鋼板に溶融亜鉛めっき処理と加熱処理を同時に行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[2]鋼板にめっき処理を施し溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、400〜450℃まで鋼板を冷却した後に、浴温が400〜450℃、浴中Al濃度が1.0〜10mass%、浴中Mg濃度が0.10〜10mass%の亜鉛めっき浴を用いて、鋼板に溶融亜鉛めっき処理および加熱処理を行い、次いで、400〜450℃にて鋼板を保持し、さらに、冷却時の温度が400〜450℃に到達した時点から保持終了時点までのトータルの処理時間が50s以上600s以下とすることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[3]前記[1]または[2]において、前記鋼板が、mass%で、C:0.05〜0.20%を含有し、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.01〜3.0%の中から1種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[4]前記[3]において、さらに、mass%で、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、B:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[5]前記[3]または[4]において、さらに、mass%で、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
[6]前記[3]〜[5]のいずれかにおいて、さらに、mass%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、W:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべてmass%である。
まず、本発明に使用される鋼板について説明する。本発明の鋼板の成分組成は以下の通りである。なお、本発明は以下に示す成分組成に必ずしも限定されないが、高張力溶融亜鉛めっき鋼板を製造する場合は以下に示す成分組成とすることが好ましい。
Cは、鋼板の高強度化に有効な元素であり、さらに残留オーステナイトや低温変態相の生成に効果があり、オーステンパー処理によるTS×Elの向上を確保するために有効な元素である。しかし、C含有量が0.05%未満ではオーステンパー処理による所望の効果を得がたい。一方、0.20%を超えると、溶接性の劣化を招く。以上より、Cは0.05%以上0.20%以下の範囲が好ましい。
さらに、本発明では、オーステンパー処理による強度−伸びバランスの向上を有効に発現させるために、下記の元素のうちの1種または2種以上を含有させることが好ましい。
Mnは、固溶強化により鋼を強化するとともに、鋼の焼入性を向上し、さらに残留オーステナイトや低温変態相の生成を促進する作用を有し、オーステンパー処理による効果を発現させるために有効な元素である。このような作用は、Mn含有量が0.5%以上で認められる。一方、3.0%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなりコストの上昇を招く。以上より、Mnは0.5%以上3.0%以下の範囲が好ましい。
Siは、固溶強化により鋼を強化するとともに、炭化物の生成を抑制し、オーステナイトを安定化し、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有し、オーステンパー処理による効果を発現させるために有効な元素である。このような作用は、Si含有量が0.01%以上で認められる。一方、3.0%を超えて含有すると、めっき性が顕著に劣化する。以上より、Siは0.01%以上3.0%以下の範囲が好ましい。
Alは、Siと同様に炭化物の生成を抑制し、残留オーステナイト相の生成を促進する作用を有し、オーステンパー処理による効果を発現させるために有効な元素である。このような作用は、0.01%以上の含有で認められる。一方、3.0%を超える含有は、鋼中の介在物量を増加させ、延性を低下させる。以上より、Alは0.01%以上3.0%以下の範囲が好ましい。
鋼の焼入性を向上し、低温変態相の生成を促進する作用を有する元素である。このような作用は、Cr:0.01%以上、Mo:0.01%以上、B:0.001%以上含有して認められる。一方、Cr:2.0%、Mo:1.0%、B:0.01%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できず、経済的に不利となる。以上より、含有する場合、Crは0.01%以上2.0%以下、Moは0.01%以上1.0%以下、Bは0.001%以上0.01%以下が好ましい。
炭窒化物を形成し、鋼を析出効果により高強度化する作用を有する元素であり、必要に応じて添加できる。このような作用は、V、Nb、Tiいずれも0.001%以上含有して認められる。一方、V、Nb、Tiいずれも0.1%を超えて含有する場合、過度に高強度化し、延性が劣化してしまう。以上より、含有する場合、Vは0.001%以上0.1%以下、Nbは0.001%以上0.1%以下、Tiは0.001%以上0.1%以下が好ましい。
Si、Mnと複合添加する事により、Γ相の生成を抑制し、めっき密着性を向上させる効果がある。このような作用はCu:0.01%以上、Ni:0.01%以上、W:0.001%以上含有して認められる。一方、Cu: 2.0%、Ni:2.0%、W:0.1%を超えて含有しても効果が飽和し、含有量に見合う効果を期待できず、経済的に不利となる。以上より、含有する場合、Cuは0.01%以上2.0%以下、Niは0.01%以上2.0%以下、Wは0.001%以上0.1%以下が好ましい。
上記した組成を有する溶鋼を溶製し、通常の公知の方法で鋳造し、通常の公知の方法で熱間圧延、あるいはさらに冷間圧延して、鋼板とする。また、必要に応じて、酸洗あるいは焼鈍等の工程を加えることができる。
次いで、上記により得られた鋼板に溶融亜鉛めっきを施す。なお、この時、本発明においては、浴温が400〜450℃、浴中Al濃度が1.0〜10%、浴中Mg濃度が0.10〜10%の亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理と同時にオーステンパー処理を行うこととする。これは本発明において、重要な要件であり、このようなめっき条件とすることにより、めっき浴を用いて、めっき処理と同時に、オーステンパー処理を行うことが可能となる。そして、このように、オーステンパー処理を行うことで、延性に優れた溶融亜鉛めっき鋼板が得られることになる。以下に詳細に説明する。
そこで、発明者らは、めっき浴の温度を下げても安定操業が可能とするために、浴中成分三元共晶組成での融点低下について検討し、Zn浴中にAl、Mgを適量添加することで浴の融点を下げることを発想した。Zn中にMg、Alが存在する場合には、3mass%Mg−4mass%Alである場合に三元共晶により融点は最も低くなり343℃となる。したがって、Mgを3mass%、Alをmass4%近傍とすることで、亜鉛浴の温度は低温化することが可能となる。Mgは、めっき鋼板が腐食環境下に暴露されたとき、めっき表面に安定錆を形成させる作用を有し、めっき鋼板の耐食性を向上させる。この効果を得るためには、Mg:0.10〜10%とする。0.10%未満では、上記効果が得られず、10%を超えると、めっき浴の粘度が増大し、めっき付着量制御が困難となる。
上記思想を基に、Mg、Al量を種々の値とし、浴温度を420〜430℃に制御した溶融亜鉛浴を準備して、溶融亜鉛めっき鋼鈑を製造し、浴中の凝固物発生による欠陥発生有無、および、得られた溶融亜鉛めっき鋼板の耐食性を調査した。なお、上記欠陥とは、浴中に凝固物が発生しこれを巻き込んで疵となったり、付着した場合である。
図1から、Zn中のAl濃度が1.0〜10%、Mg濃度が0.10〜10%を満足する場合に、浴温度を420〜430℃程度にまで低温化した場合であっても、凝固物による欠陥発生が問題ないレベルであることがわかる。
なお、本発明においては、めっき浴中を通過する時間を有効にオーステンパー処理に使うことを基本思想としているため、オーステンパー処理はめっき処理と同時に行うことを前提とする。しかし、めっき処理時間が短く、めっき処理時間内にオーステンパー処理が完了せず時間が不足する場合は、めっき処理前後において鋼板をめっき浴温(オーステンパー処理温度)で保持することにより不足時間を補うことができる。すなわち、本発明では、オーステンパー処理時間とは、めっき処理前後でのオーステンパー処理温度(400〜450℃)での保持時間とめっき処理時間を合わせてのトータルの処理時間とする。トータルで50秒以上保持できれば、特性(TS×El)は満足できるため、オーステンパー処理時間としては、めっき処理時間のみでも、めっき処理時間とめっき処理前後の保持時間のトータルであってもよい。
めっき付着量は特に定めないが、耐食性及びめっき付着量制御上10g/m2以上が好ましく、加工性の観点から120g/m2以下が好ましい。
表1に示す成分組成を有する冷延鋼鈑(板厚1.0mm×幅1000mm)について、800℃×30秒の焼鈍を行った後、めっき浴温と同一となる温度まで冷却した。次いで、表2〜表4に示すAl濃度、Mg濃度、浴温の溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっきおよびオーステンパー処理を施した。さらにめっき浴通過後にめっき浴温と同一温度で保持を行った。鋼鈑温度がめっき浴温となった時点から保持終了までの時間をオーステンパー処理時間として表2〜表4に示す。なお、各条件につき1コイル(10t)について行い、めっき付着量は30〜60g/m2とした。
JIS5号引張試験片を採取し引張試験を行って引張強さTS(MPa)及び伸びEl(%)を測定した。TS×Elの値が21000MPa・%以上で機械特性○、21000MPa・%未満では×とした。
それぞれ1コイルについて欠陥の有無を目視判定し、欠陥数が1個/m2以上を不良(×)、1個/m2未満を良好(○)とした。
JIS Z2371に基づく塩水噴霧試験を3日間行い、腐食生成物をクロム酸を用いて洗浄除去し、試験前後のめっき腐食減量(g/m2・日)を重量法にて測定し、下記基準で評価した。
○(良好):20 g/m2・日未満
×(不良):20 g/m2・日以上
Claims (5)
- 鋼板にめっき処理を施し溶融亜鉛めっき鋼板を製造するにあたり、
400〜450℃まで鋼板を冷却した後に、
浴温が400〜450℃、浴中Al濃度が1.0〜10mass%、浴中Mg濃度が0.10〜10mass%の亜鉛めっき浴を用いて、鋼板に溶融亜鉛めっき処理および加熱処理を行い、
次いで、400〜450℃にて鋼板を保持し、
さらに、冷却時の温度が400〜450℃に到達した時点から保持終了時点までのトータルの処理時間が50s以上600s以下とすることを特徴とするTS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記鋼板が、mass%で、C:0.05〜0.20%を含有し、Si:0.01〜3.0%、Mn:0.5〜3.0%、Al:0.01〜3.0%の中から1種以上を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1に記載のTS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- さらに、mass%で、Cr:0.01〜2.0%、Mo:0.01〜1.0%、B:0.001〜0.01%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2に記載のTS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- さらに、mass%で、V:0.001〜0.1%、Nb:0.001〜0.1%、Ti:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2または3に記載のTS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
- さらに、mass%で、Cu:0.01〜2.0%、Ni:0.01〜2.0%、W:0.001〜0.1%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のTS×Elの値が21000MPa・%以上である溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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