JP5434787B2 - 溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents
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Description
しかしながら、上述したようなSiやMnを多量に含有させることにより強度を高めた高強度鋼板は、凝固偏析に起因する局所的な化学組成の変動が生じ易い。そして、この局所的な化学組成の変動は組織の不均一化を招く。その結果、曲げ加工時における変形が不均一化しやすくなり、曲げ加工部の表面に視認可能な程の顕著な凹凸を出現させる場合がある。この凹凸は、変形の不均一化をさらに助長して割れを誘発し、単に外観を劣化させるのみならず曲げ性という機械特性そのものを劣化させる場合がある。また、割れに至らない場合であっても、曲げ加工部に顕著な凹凸が存在すると、部品としての衝突特性が劣化する場合がある。
ところで、高強度溶融亜鉛めっき鋼板の伸びフランジ性の改善に関しては、従来から幾つかの方法が提案されている。
例えば、特許文献2には、鋼材を1250℃以上の高温に10時間以上の長時間保持する均質化処理が開示されている。
例えば、特許文献3には、酸化処理後再結晶焼鈍を行い、その後還元して、不めっきの原因となるSi、Mn、Crの表面酸化膜の生成を抑える技術が開示されている。
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、良好な曲げ性を有するとともに不めっきのない良好な表面性状を有する高強度の溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを目的とする。
鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板は、質量%で、C:0.03%以上0.30%以下、SiおよびMnの含有量の合計:1.0%以上5.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Alの含有量:0.0009%以下、Bi:0.0001%以上0.05%以下、N:0.02%以下、残部Fe及び不可避的不純物である化学組成を有することを特徴とする引張強度が1180MPa以上である溶融亜鉛めっき鋼板。
1.化学組成
本発明の鋼板の化学組成を上述のように規定した理由について説明する。なお、本明細書において鋼板の化学組成を規定する「%」は質量%を意味する。
SiおよびMnは鋼板の強度を高める作用を有する。上記作用による効果を得るために、SiおよびMnの合計含有量は1.0%以上とする。Siはフェライトを強化して複合組織鋼板における組織の硬度を均一化することにより加工性を向上させる作用を有する。したがって、Si含有量は0.02%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.15%以上である。また、Mnは変態強化を促進する作用を有する。したがって、Mn含有量は0.9%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは1.5%以上である。
sol.Al含有量は本発明において重要である。Alは、通常、鋼中酸素量を低減するために製鋼工程において添加される。しかしながら、Alは酸化しやすい元素であるため、焼鈍時にSiやMnと複合酸化膜を生成し、不めっきの原因となる。本発明においては、sol.Al含有量を通常のAlキルド鋼におけるものよりも著しく低減させ、0.010%未満とすることにより、不めっきを抑制して良好な表面性状を確保する。sol.Al含有量は0.005%以下とすることが好ましい。
Biは本発明において重要な元素である。Biは凝固界面に濃化してデンドライト間隔を狭めて凝固偏析を低減する作用を有する。上記作用による効果を確実に得るため、Bi含有量は0.0001%以上とする。好ましくは0.0003%以上である。一方、Bi含有量が0.05%超では、表面性状の劣化が生じる場合がある。したがって、Bi含有量は0.05%以下とする。好ましくは0.01%以下、さらに好ましくは0.0050%以下である。
その他の元素は目的とする特性に応じて適宜定めればよいが、以下に好適な範囲を記述する。
Cは鋼板の強度を高める作用を有するので、高強度化に有効な成分である。上記作用による効果を安定的に得るためには、C含有量を0.03%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.06%以上である。一方、C含有量が0.30%超では、靱性や溶接性の劣化が顕在化することが懸念される。したがって、C含有量は0.30%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.20%以下である。
Pは靱性を劣化させる作用を有する。したがって、P含有量は0.1%以下とすることが好ましい。
SはMnSを形成して曲げ性を劣化させる作用を有する。したがって、Sの含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
Nは連続鋳造中に窒化物を形成してスラブのひび割れの原因となる。したがって、N含有量は0.02%以下とすることが好ましい。
Ti,NbおよびVはいずれも再結晶を遅延させて結晶粒を微細化する作用を有する。したがって、必要に応じて1種または2種以上を含有させてもよい。含有させる場合には、Ti含有量は0.003%以上とすることが好ましく、Nb含有量は0.003%以上とすることが好ましく、V含有量は0.003%以上とすることが好ましい。一方、Ti含有量を0.3%超、Nb含有量を0.3%超、V含有量を0.3%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Ti含有量は0.3%以下とすることが好ましく、Nb含有量は0.3%以下とすることが好ましく、V含有量は0.3%以下とすることが好ましい。
CrおよびMoはMnと同様にオ−ステナイトを安定化することで変態強化を促進する作用を有するので、鋼板の高強度化に有効な元素である。したがって、必要に応じて1種または2種を含有させてもよい。含有させる場合には、Cr含有量は0.001%以上とすることが好ましく、Mo含有量は0.001%以上とすることが好ましい。一方、Cr含有量が2%を超えたり、Mo含有量が2%を超えたりすると加工性の低下が顕在化することが懸念される。したがって、Cr含有量は2%以下とすることが好ましく、Mo含有量は2%以下とすることが好ましい。
CuおよびNiは腐食抑制効果があり、また、表面に濃化して水素の侵入を抑えて遅れ破壊を抑制する作用を有する。したがって、必要に応じて1種または2種を含有させてもよい。含有させる場合には、Cu含有量は0.01%以上とすることが好ましく、Ni含有量は0.01%以上とすることが好ましい。一方、Cu含有量を2%超、Ni含有量を2%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Cu含有量は2%以下とすることが好ましく、Ni含有量は2%以下とすることが好ましい。
Caは硫化物を球状化させることにより局部延性を向上させる作用を有する。したがって、必要に応じて含有させてもよい。含有させる場合には、Ca含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。一方、Cu含有量を0.01%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Ca含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
Bは粒界からの核生成を抑えて焼き入れ性を高めることにより変態強化を促進する作用を有するので、鋼板の高強度化に有効な元素である。したがって、必要に応じて含有させてもよい。含有させる場合には、B含有量を0.0002%以上とすることが好ましい。一方、B含有量を0.01%超としても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、B含有量は0.01%以下とすることが好ましい。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の溶融亜鉛めっき層は亜鉛系めっきであればよく、格別にそのめっき層の種類が問われるものではない。例えば、溶融亜鉛めっき層、溶融亜鉛合金めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層等の何れであっても構わない。また、めっき層は基材鋼板の両面に施されていても良いし、片面に施されていても良い。
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板の好適な製造方法について説明する。
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、この鋼板は、sol.Alの含有量が0.010質量%未満、Biの含有量が0.0001質量%以上0.05質量%以下、SiおよびMnの含有量の合計が1.0質量%以上5.0質量%以下である化学組成を有し、引張強度が1180MPa以上であるものであればよく、その製造方法は限定されないが、以下に好適な製造条件を述べる。
なお、熱間圧延工程が粗熱間圧延工程と仕上熱間圧延工程とからなる場合には、熱間圧延完了温度の制御を容易にするために、粗熱間圧延によって得られる粗バーに加熱処理あるいは温度保定処理を施したのちに仕上熱間圧延に供することが好ましい。また、粗バ−を接合することにより仕上熱間圧延を連続圧延としてもよい。
なお、溶融亜鉛めっき処理後あるいは合金化処理を施す場合には合金化処理後に続く冷却完了後において、平坦矯正のため伸び率4%以下のスキンパス圧延を施しても構わない。また、溶融亜鉛めっき層の上に潤滑作用のある被膜を施しても構わない。
表1に示す化学組成を有する鋼を実験炉で溶製し、厚みが40mmのスラブを作製した。
△:割れはないが凹凸はある(不良)
×:割れも凹凸もある(特に不良)
めっき性の評価は、外観を目視にて観察し、めっきがはじかれて不めっきとなっている部分があるかどうかで確認した。これらの結果を表4に示す。
これに対し、Biを含有しない供試材No.15〜20は、曲げ後の表面に凹凸や割れが発生し、曲げ性に劣った。またAl含有量が本発明範囲を超えた供試材No.21〜23は不めっきが発生し、めっき性に劣った。
Claims (6)
- 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、前記鋼板は、質量%で、C:0.03%以上0.30%以下、SiおよびMnの含有量の合計:1.0%以上5.0%以下、P:0.1%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.0009%以下、Bi:0.0001%以上0.05%以下、N:0.02%以下、残部Fe及び不可避的不純物である化学組成を有することを特徴とする引張強度が1180MPa以上である溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成は、質量%で、Ti:0.003%以上0.3%以下、Nb:0.003%以上0.3%以下、及びV:0.003%以上0.3%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を有する請求項1に記載された溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成は、質量%で、Cr:0.001%以上2%以下、及びMo:0.001%以上2%以下からなる群から選ばれた1種または2種を有する請求項1又は請求項2に記載された溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成は、質量%で、Cu:0.01%以上2%以下、及びNi:0.01%以上2%以下からなる群から選ばれた1種または2種を有する請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成は、質量%で、Ca:0.0001%以上0.01%以下を有する請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成は、質量%で、B:0.0002%以上0.01%以下を有する請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された溶融亜鉛めっき鋼板。
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