JP2014043641A - 溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、優れた耐剥離性を有する溶融亜鉛めっき鋼管を提供する。
【解決手段】少なくともSi:0.05〜1.00mass%および/またはCu:0.03〜0.50mass%を含有する被めっき鋼管に、70℃での比重を1.10以上1.30以下とし、かつ温度を55℃以上95℃以下とするフラックス処理液を用いてフラックス処理を行い、次いで前記フラックス処理後の被めっき鋼管の最高温度を105℃以上180℃以下で乾燥処理を行った後、成分組成として、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴に、前記乾燥後の被めっき鋼管を浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行う溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができる溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法に関するものであって、特に、RoHS指令で規制された範囲内である、Pb含有量を0.10mass%以下、Cd含有量を0.01mass%以下とした亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法に関するものである。
近年、欧州連合により、電機・電子機器に対し、特定有害物質の使用を制限するRoHS指令が施行された。このRoHS指令は、対象製品中のPbの含有率を0.10mass%以下、Cdの含有率を0.01mass%以下に制限するものである。RoHS指令は日本国外の規定ではあるが、これに対応し、環境負荷物質の含有を抑えた環境により良い製品を供給できるようにしていくことが必要になってきている。したがって、PbやCdを多量に含有する製品は、将来的に使用されなくなると考えられる。
しかしながら、未だ多くの溶融亜鉛めっき製品における亜鉛めっき層は、RoHS指令で規制する値を超えるPbおよびCdを含有する。これらの亜鉛めっき層におけるPbおよびCdは、めっき原料となる溶融亜鉛めっき浴中の不純物に由来する。一方で、このPbは、溶融亜鉛めっきの濡れ性を向上する効果を生じさせる。これにより、例えば、被めっき材である鋼材表面が清浄でなかったり、酸化物があったりしても、亜鉛めっき層が形成され易くなる。そのため、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用して溶融亜鉛めっきを行うと、亜鉛めっき層が形成されない部分が生じる場合がある。これは、俗に、不めっきと言われる現象であり、溶融亜鉛めっき浴中のPb濃度が低下すると顕著に発生する好ましくない現象である。
なお、本発明における溶融亜鉛めっき処理とは、鋼管、鋼材あるいは構造物に対して行われる、いわゆる「どぶ漬けめっき」と呼ばれるものであり、薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理とは異なる。薄鋼板に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、鋼板表面の有機物を除去し還元雰囲気中で溶融亜鉛めっき浴に連続浸漬する。すなわち、非常に清浄化されかつ活性の高い状態の鋼の表面に溶融亜鉛が接することにより、鋼板表面に薄く亜鉛めっき層を形成させる。還元雰囲気中のため、当然、溶融亜鉛めっき浴上に酸化亜鉛などもほとんど浮遊しておらず、鋼板表面に酸化亜鉛などのめっきを阻害する物質が付着しにくい状態で鋼板が処理される。さらに、加熱して合金相の成長を制御する場合もある。これに対して、本願の対象とする鋼管に対して行う溶融亜鉛めっき処理は、大気開放下で行う。このため、鋼管表面の酸化を防ぐとともに、フラックス処理をめっき前に施すことにより、溶融亜鉛めっき浴中で高温になった時に鋼管表面の汚れに対して除去効果が得られる。また、フラックス処理の前に、鋼管表面の油などの汚れを除去するための酸洗処理、場合によっては酸洗処理の前に脱脂処理をも行なうが、鋼板と異なり形状が複雑なため、その効果が非常に不十分なものとなっているのが現状である。さらにまた、溶融亜鉛めっき浴浸漬中に合金相を形成させるとともに、めっき後にワイピングによってめっき厚さを制御した後に空冷または温水冷する。このため、亜鉛めっき層の厚さも数10μmから100μm以上となり、鋼板の亜鉛めっき層に比べて厚みがあることを特徴とする。
このように、鋼板の連続式めっきと鋼管のバッチ式めっきとでは、プロセスおよび出来上がった亜鉛めっき層の構造が大きく異なる。すなわち、鋼管のバッチ式めっきは、本質的にめっき不良の発生しやすいプロセスなっており、その課題も異なったものとなっている。例えば、前述した不めっきに関しては、Pb濃度の極めて低い溶融亜鉛めっき浴を使用した場合でも、鋼板の連続式めっきでは問題が生じないのに対して、鋼管のバッチ式めっきでは不めっきが発生し易くなる傾向がある。
このような溶融亜鉛めっき鋼管は、鋼管同士を接続するために、管端に転造ねじ加工、フレア加工、グルービング加工等を行う場合がある。Pb濃度の低い条件で溶融亜鉛めっき処理を行った溶融亜鉛めっき鋼管では、鋼管の変形を伴う加工を施した場合、亜鉛めっき層の剥離が生じる場合がある。以上のような、不めっきや亜鉛めっき層の剥離は、溶融亜鉛めっき鋼管の耐食性を劣化させるため、製造効率や配管作業効率を低下させる大きな問題である。
特許文献1では、亜鉛めっき層中の鉛濃度が0.1mass%以下、カドミウム濃度が0.01mass%以下であって、めっき後の冷却を60〜85℃の温水に浸漬することにより行なうことを特徴とする、環境負荷物質の含有量が少なく、フレア加工時にも亜鉛めっき層が剥離しにくい溶融亜鉛めっき鋼管およびその製造方法が開示されている。
特開2011−89175号公報
しかしながら、冷却水温を60〜85℃に規定するという特許文献1に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法では、めっきする鋼管の径や肉厚が異なれば亜鉛めっき層の冷却速度が変わってしまい、冷却後の亜鉛めっき層の物理的特性も変わってしまう。このため、すべての径および肉厚の溶融亜鉛めっき鋼管で、必ずしも十分な耐剥離性(以下、亜鉛めっき層が剥離しにくいことを単に耐剥離性と称することもある。)を発揮するとは言い難い。また、不めっきについては、溶融亜鉛が鋼管表面ではじかれて鋼管表面が溶融亜鉛で濡れないために起こる現象であり、特許文献1に記載のようにめっき浴から被めっき鋼管を引き上げた後の冷却水温を規定しても不めっきを抑制することはできない。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができる鋼管であり、環境負荷低減のために亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない、加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、まず、被めっき鋼管の成分組成に着目し、耐剥離性に影響をおよぼす元素を抽出した。さらに、めっき前処理工程にも着目し、耐剥離性に優れた亜鉛めっき層を形成するフラックス処理条件を抽出した。それらの因子を組み合せてめっき試験を行い、耐剥離性に優れる亜鉛めっき層を得るための知見を得た。
すなわち、被めっき鋼管の成分組成では、Si、Cuの含有量を適正化することそしてフラックス処理条件を適正化することにより、耐剥離性に優れる亜鉛めっき層を形成できることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成として、C:0.010mass%以上0.250mass%以下、Si:0.05mass%以上1.00mass%以下、Mn:0.10mass%以上1.50mass%以下、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%以上0.100mass%以下、sol.Al:0.005mass%以上0.100mass%以下およびN:0.0010mass%以上0.0080mass%以下を含有する被めっき鋼管に、
70℃での比重が1.10以上1.30以下であり、かつ温度を55℃以上95℃以下とするフラックス処理液を用いてフラックス処理を行い、
次いで前記フラックス処理後の被めっき鋼管の最高温度を105℃以上180℃以下として乾燥処理を行い、
成分組成として、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴に、前記乾燥後の被めっき鋼管を浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[2]成分組成として、C:0.010mass%以上0.250mass%以下、Si:0.01mass%以上0.05mass%未満、Cu:0.03mass%以上0.50mass%以下、Mn:0.10mass%以上1.50mass%以下、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%以上0.100mass%以下、sol.Al:0.005mass%以上0.100mass%以下およびN:0.0010mass%以上0.0080mass%以下を含有する被めっき鋼管に、
70℃での比重が1.10以上1.30以下であり、かつ温度を55℃以上95℃以下とするフラックス処理液を用いてフラックス処理を行い、
次いで前記フラックス処理後の被めっき鋼管の最高温度を105℃以上180℃以下として乾燥処理を行い、
成分組成として、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴に、前記乾燥後の被めっき鋼管を浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[3]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Cu:0.03mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする[1]に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[4]前記めっき浴の成分組成において、さらに、Sb:0.01mass%以上1.00mass%以下、Bi:0.01mass%以上1.00mass%以下、Sn:0.01mass%以上2.00mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[5]前記めっき浴の成分組成において、さらに、Ni:0.001mass%以上0.50mass%以下、Ti:0.001mass%以上0.50mass%以下、Al:0.001mass%以上0.50mass%以下、Cu:0.001mass%以上0.50mass%以下、Si:0.001mass%以上0.010mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[6]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Ni:0.01mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[7]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Mo:0.005mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
[8]前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Nb:0.001mass%以上0.100mass%以下、V:0.002mass%以上0.100mass%以下、Ti:0.001mass%以上0.100mass%以下、B:0.010mass%以下、Ca:0.0002mass%以上0.0050mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする[1]〜[7]のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
なお、以下、mass%は、単に%と記すこともある。
本発明によれば、ガス管、水用配管、空調配管などに使用される鋼管に用いることができるめっき鋼管であり、亜鉛めっき層に含まれるPbおよびCdを、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下にするとともに、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を得ることができる。
転造ねじ加工にて剥離のない本発明例(a)と、剥離のある比較例(b)のそれぞれの外観を示した写真である。
次に、本発明の実施形態について説明する。
本発明は、フラックス処理を施した被めっき鋼管を、大気開放下で加熱溶融した溶融亜鉛めっき浴に所定時間浸漬し、引上げ後、冷却することにより、前記被めっき鋼管の表面に亜鉛めっき皮膜を形成してなる溶融亜鉛めっき鋼管を製造する方法に関するものである。
まず、本発明の被めっき鋼管のSi、Cu以外の成分組成限定理由について説明する。なお、Si、Cu以外の成分組成は、本発明のめっき鋼管が適用されるガス管、水用配管、空調配管などの用途を考えた際に鋼管としての強度や機械的特性など必要性能を発現させるための従来周知のものである。したがって、Si、Cu以外の成分組成は、本発明の目的とするめっきの密着性と直接関係しない。
[C:C:0.010mass%以上0.250mass%以下]
Cは、鋼材の強度を増加させる元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.010mass%以上とする。一方、0.250mass%を超えると、溶接性および溶接熱影響部の靭性を劣化させる。このため、CはC:0.010mass%以上0.250mass%以下とする。なお、強度、靭性の観点から、好ましくは0.010〜0.160mass%である。
[Mn:0.10mass%以上1.50mass%以下]
Mnは、鋼材の強度を増加させる元素であり、本発明では所望の強度を得るために、0.10mass%以上とする。一方、1.50mass%を超えると、鋼の靭性および溶接性を低下させる。このため、Mnは0.10mass%以上1.50mass%以下とする。なお、強度の維持および耐食性を劣化させる介在物形成の抑制の観点から、好ましくは0.10〜0.80mass%である。
[P:0.050mass%以下]
Pは、粒界に偏析して鋼の靭性を低下させる有害な元素であり、できるだけ低減するのが望ましく、0.050mass%を超えると靭性が顕著に低下する。このため、Pは0.050mass%以下とする。なお、0.005mass%未満では製造コストの増大を招くので、好ましくは0.005〜0.050mass%である。
[S:0.010mass%以下]
Sは、非金属介在物のMnSを形成して腐食の起点になって耐全面腐食性を低下させる有害な元素であり、できるだけ低減するのが望ましく、0.010mass%を超えると、耐全面腐食性の顕著な低下を招く。このため、Sは0.010mass%以下とする。なお、0.002mass%未満では製造コストの増大を招くので、好ましくは0.002〜0.010mass%である。
[Cr:0.005mass%以上0.100mass%以下]
Crは、強度向上に添加する元素であるが、0.005mass%未満では、顕著な効果は見られない。また、0.100mass%を超えると効果が飽和するとともに、コストの上昇および溶接性の劣化を招く。このため、Crは0.005mass%以上0.100mass%以下とする。
[sol.Al:0.005mass%以上0.100mass%以下]
sol.Alは、脱酸剤として作用する元素であり、本発明では0.005mass%以上とする。一方、0.100mass%を超えると、鋼の靭性が低下する。このため、sol.Alは0.005mass%以上0.100mass%以下とする。なお、0.010〜0.080mass%である。
[N:0.0010mass%以上0.0080mass%以下]
Nは、靭性の向上および溶接継手部の機械的特性向上のために、0.0010mass%以上とする。しかし、0.0080mass%を超えると、固溶Nの増加をもたらし、溶接条件によっては、継手部靭性を著しく劣化させる。このため、Nは0.0010mass%以上0.0080mass%以下とする。
さらに、本発明の課題とするめっき密着性向上のために、Si、Cuを含有する必要がある。本発明者らが鋭意検討した結果、本発明において、Si量が多いと耐剥離性が向上し、さらにCuを含有することにより、より耐剥離性が向上することがわかった。また、Si量が少ない場合でも、Cuを含有することにより耐剥離性が向上することがわかった。以下、Si、Cuの限定理由を説明する。
[Si:0.05mass%以上1.00mass%以下]
Siは、一般には脱酸剤として作用するとともに、強度を増加させる元素である。これらの目的のためには、0.01mass%以上含有する必要である。さらに、本発明では、Siは、鋼材表面でのΓ相の形成を抑制するとともに合金相の中でδ相およびζ相の成長を促進させ、耐剥離性の向上に寄与する。この耐剥離性の観点から、0.05mass%以上とする。一方、1.00mass%を超えると、鋼の靭性を劣化させる。このため、Siは0.05mass%以上1.00mass%以下とする。好ましくは、0.16〜0.40mass%である。
本発明において、Siが0.05mass%以上1.00mass%以下含有する場合、さらに、Cuを0.03mass%以上0.50mass%以下を含有することが好ましい。Cuを含有することにより、より耐剥離性が向上する。Cuが0.03mass%未満ではCu添加による耐剥離性の向上が少ない。Cuが0.50mass%を超えると効果が飽和するとともに熱間加工性の劣化を招く。
[Si:0.01mass%以上0.05mass%未満、Cu:0.03mass%以上0.50mass%以下]
Siは、一般には鋼製造の際に脱酸剤として作用するとともに、鋼管の強度を増加させる元素であるため、0.01mass%以上とする。一方、0.05mass%を超えると、前述のようにCuの添加がなくとも、耐剥離性の向上効果を発揮する。このため、Siは0.01mass%以上0.05mass%未満とする。好ましくは、0.02mass%以上0.05mass%未満である。
Cuは、めっき前処理時の鋼材の溶解を抑制し、フラックスの清浄化作用を維持する。すなわち、Siが0.01mass%以上0.05mass%未満の場合にCuを含有することにより、めっき浴に浸漬した際の被めっき鋼管表面の活性度が高くなりδ相の合金化が促進され、鋼表面の合金化反応が活性化される結果、強固な結合が生成する。つまり、本発明において、Cuは0.03mass%以上0.50mass%以下とすることにより、上記Siが充分量なくとも亜鉛めっき層の密着性向上が達成される。Cuが0.03mass%よりも少ないと効果がない。また、0.50mass%を超えると効果が飽和するとともに熱間加工性の劣化を招く。このため、Cuは0.03mass%以上0.50mass%とする。好ましくは、0.10〜0.50%である。
本発明において、亜鉛めっき層の密着性向上には直接関係はないが、めっき鋼管の機械的特性を更に向上させる従来公知の方法として、Ni、Mo、Nb、V、Ti、B、Caの1種または2種以上を添加することができる。
[Ni:0.01mass%以上0.50mass%以下]
Niは、Cuと複合添加することにより、熱間加工性の劣化を抑制する働きがある。しかし、0.01mass%未満では効果がなく、0.50mass%を超えるとコストの上昇を招く。このため、添加する場合は、0.01mass%以上0.50mass%以下が好ましい。
[Mo:0.005mass%以上0.500mass%以下]
Moは、強度向上を目的に添加する元素であり、0.005%未満の添加では効果がなく、0.500%を超えるとコストの上昇を招くため、0.005mass%以上0.500%以下が好ましい。
[Nb:0.001mass%以上0.100mass%以下]
Nbは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.001mass%未満では強度向上への効果がなく、0.100mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.001mass%以上0.100mass%以下が好ましい。
[V:0.002mass%以上0.100mass%以下]
Vは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.002mass%未満では強度向上への効果がなく、0.100mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.002mass%以上0.100mass%以下が好ましい。
[Ti:0.001mass%以上0.100mass%以下]
Tiは、強度および靭性の向上を目的に添加する元素であるが、0.001mass%未満では効果がなく、0.100mass%を超えると効果が飽和する。このため、添加する場合は、0.001mass%以上0.100mass%以下が好ましい。
[B:0.010mass%以下]
Bは、強度向上を目的に添加する元素であるが、0.010mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.010mass%以下が好ましい。
[Ca:0.0002mass%以上0.0050mass%以下]
Caは、介在物の形態制御によって延性および靭性を向上させる作用がある。しかし、0.0002mass%未満では効果がなく、0.0050mass%を超えると靭性が劣化する。このため、添加する場合は、0.0002mass%以上0.0050mass%以下が好ましい。なお、耐食性向上の観点からは、0.001〜0.0050mass%がより好ましい。
本発明における被めっき鋼管の成分組成のうち、上記の成分組成以外の残部はFeおよび不可避的不純物からなる。
次に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法について説明する。
まず、上記の化学成分の鋼を用いて被めっき鋼管を製造する。被めっき鋼管の製造方法としては特に制限はなく、通常の鋼管と同様の方法で製造することができる。例えば、鋼の溶製では、転炉等で主要5元素(C、Si、Mn、P、S)を発明の範囲に調節するとともに、必要に応じてその他の合金元素を添加する。溶製後、例えば、連続鋳造法、熱間圧延法により、熱間圧延板を得ることができる。この熱間圧延板より鋼管を製造する。鋼管は、例えば、連続鋳造等により得られた鋳片やビレットからの継目無し管の製造、あるいは熱延板からの鍛接管、電縫管の製造等により製造することができる。なお、本発明における被めっき鋼管のサイズについては、パイプスペースや流送物の流量確保の観点から、外径が10〜700mmであることが好ましい。以上により、被めっき鋼管を得ることができる。
次に、得られた被めっき鋼管に溶融亜鉛めっき処理を施す。溶融亜鉛めっき処理としては、通常と同様の、1)酸洗処理、2)フラックス処理、3)乾燥、4)溶融亜鉛めっき浴浸漬の順で行う方法を用いることができるが、以下に、本発明における好適な条件を述べる。尚、各工程においては、適宜、脱脂や水洗を組み合わせることができる。
1)酸洗処理
酸洗処理としては、鋼管の酸洗処理として用いられている既知の定法を用いることができ、例えば、インヒビターを添加した塩酸水溶液に目視で鋼管表面のスケールが落ちるまで浸漬するなどの方法を用いることができる。
2)フラックス処理
フラックス処理とは、酸洗後の鋼管表面をフラックス液で覆い、酸化を抑制するとともに、めっき浴浸漬時にフラックス液が分解することで、鋼管表面を清浄化し、めっき皮膜の形成を促進するためのものである。フラックス液は、塩化アンモニウムおよび塩化亜鉛を主成分とするフラックスを主成分とした水溶液である。通常、フラックス液に鋼管を浸漬後に引き上げ、さらに後述の乾燥を行う必要がある。
本発明において、フラックス液は、比重が1.10以上1.30以下となるように水にフラックスを溶解させたものを使用する。フラックス液の比重は、40℃の水を1とした時の70℃のフラックス液の比重である。フラックス液の比重が1.10よりも小さいと、溶融亜鉛めっき処理時に鋼管表面に十分なフラックス付着量が確保できず、表面の酸化や清浄化が不十分な箇所ができて不めっきが発生しやすくなり、また不めっきが発生せずとも、亜鉛めっき層の耐剥離性が低いものとなる。また、フラックス液の比重が1.30を超えると、フラックス付着量が多くなり過ぎ、めっき浴でのフラックス分解時に多量のガスやドロスが生成して不めっきの要因となる。なお、フラックス付着量が多いと清浄化作用が安定することから、亜鉛めっき層の均一形成と密着性向上のために、フラックス液の比重は、70℃の比重で1.20以上1.30以下がより望ましい。
また、フラックス処理では、フラックスを鋼管表面に均一に塗布するために水溶液を用いるが、余分な水分が鋼管表面に長時間残ると鋼管表面の溶解が起こり、清浄化作用を得られない。そのため、フラックス液の乾燥を促進するためにフラックス液の温度は55℃以上にすることが必要である。これにより、亜鉛めっき層の均一形成が促進される。本発明において、温度保持の安定性と加熱コストの観点を踏まえて、フラックス液の温度は55℃以上95℃以下とする。さらに、高温保持の観点からは65℃以上95℃以下が好ましい。
3)乾燥
本発明における乾燥は、フラックス液中の水分を蒸発させ、鋼管表面に安定したフラックス皮膜を均一に形成させる重要な工程である。乾燥は、例えば乾燥炉内で行えばよい。本発明において、乾燥時の被めっき鋼管の最高温度は105℃以上180℃以下とすることを特徴とする。乾燥時の被めっき鋼管の最高温度が180℃を超えると、フラックスの分解が始まり、分解した部分で不めっきが生じやすくなる。また、105℃未満では、不めっきが発生しやすくなり、また不めっきが発生せずとも、亜鉛めっき層の耐剥離性が低いものとなる。この原因に関しては、明瞭にはわかっていないが、フラックス中に結晶水が残るとともに、フラックスの吸湿が生じ、十分に乾燥しないため、被めっき鋼管表面が溶解し、それに伴いフラックスの清浄化作用を得ることができなくなるためと推察される。なお、上記と同様の理由で、乾燥時の被めっき鋼管の最高温度は120℃以上180以下が好ましい。
4)溶融亜鉛めっき浴浸漬
本発明では、フラックス処理された被めっき鋼管を浸漬する溶融亜鉛めっき浴の成分組成としては、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴であることを特徴とする。さらに必要に応じて、めっき浴に、Sb:0.01mass%以上1.00mass%以下、Bi:0.01mass%以上1.00mass%以下、Sn:0.01mass%以上2.00mass%以下、Ni:0.001mass%以上0.50mass%以下、Ti:0.001mass%以上0.50mass%以下、Al:0.001mass%以上0.50mass%以下、Cu:0.001mass%以上0.50mass%以下、Si:0.001mass%以上0.010mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有してもよい。
以下に、本発明のめっき浴の化学組成限定理由について説明する。この化学組成は、めっき浴の平均的な組成を示すものとする。なお、以下、mass%は、単に%と記すこともある。
[Zn:97.5mass%以上]
Znはめっき浴の主成分であり、亜鉛めっき層の主成分となる元素でもある。本発明においては、JIS H8641(2007)に記載されているように、めっき浴中のZn組成は97.5mass%以上とする。これよりも少ない領域では、JISに規定されるめっき浴の範囲外となり、更に、防食性についても低下する。
[Fe:1.5mass%以下]
Feは、通常積極的に添加するものではないが、めっき作業においては、常に、鋼管より溶出し浴中に混入したり、めっき槽の材料が鉄系材料の場合は、そこから浴中への溶出も起こる結果、常に、浴中に存在するものであり、通常の浴中Fe濃度である上記範囲に規定した。なお、1.5%を超える状態は、FeとZnの化合物であるドロスがめっき浴中に浮遊している状態であり、めっき品質が著しく劣化する。
[Pb:0.10mass%以下]
PbはRoHS指令でも規制される環境負荷物質であるため、0.10%以下とする。通常、亜鉛めっき層中の鉄−亜鉛合金相の中にはPbが取り込まれないため、亜鉛めっき層中のPbの濃度はめっき浴中の濃度よりも低くなるのが常である。したがって、めっき浴組成のPb濃度を規定することにより、亜鉛めっき層中のPb濃度も0.10%以下にすることができる。
[Cd:0.01mass%以下]
CdはRoHS指令でも規制される環境負荷物質であり、0.01%以下に制限する。通常、亜鉛めっき層中の鉄−亜鉛合金相の中にはCdが取り込まれないため、亜鉛めっき層中のCdの濃度はめっき浴中の濃度よりも低くなるのが常である。したがって、めっき浴組成のCd濃度を規定することにより、亜鉛めっき層中のCd濃度も0.01%以下にすることができる。
本発明において、さらに、必要に応じて、Sb、Bi、Sn、Ni、Ti、Al、CuまたはSiの1種または2種以上を添加することができる。
[Sb:0.01mass%以上1.00mass%以下]
Sbは溶融亜鉛の表面張力を下げ、めっき浴中での鋼管表面の濡れ性を上げて、所期のめっき性を向上させる。その効果を得るためにはめっき浴中に0.01%以上含まれていることが必要であり、1.00%を超えて含まれても効果は飽和する。以上より、Sbは0.01mass%以上1.00mass%以下が好ましい。
[Bi:0.01mass%以上1.00mass%以下]
Biは溶融亜鉛の表面張力を下げ、めっき浴中での鋼管表面の濡れ性を上げて、所期のめっき性を向上させる。その効果を得るためにはめっき浴中に0.01%以上含まれていることが必要であり、1.00%を超えて含まれても効果は飽和する。以上より、Biは0.01mass%以上1.00%が好ましい。
[Sn:0.01mass%以上2.00mass%以下]
Snは溶融亜鉛の表面張力を下げ、めっき浴中での鋼管表面の濡れ性を上げて、所期のめっき性を向上させる。その効果を得るためにはめっき浴中に0.01%以上含まれていることが必要であり、2.00%を超えて含まれても効果は飽和する。以上より、Snは0.01mass%以上2.00mass%以下が好ましい。
[Ni:0.001mass%以上0.50mass%以下]
Niは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、亜鉛めっき層が剥離しにくく耐剥離性が向上する。その効果を得るためにはめっき浴中に0.001%以上含まれていることが必要であり、0.50%を超えて含まれても効果が飽和する。以上より、Niは0.001mass%以上0.50mass%以下が好ましい。なお、より効果を得るためには、Niは0.01〜0.50%がより好ましい。
[Ti:0.001mass%以上0.50mass%以下]
Tiは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためにはめっき浴中に0.001%以上含まれていることが必要であり、0.50%を超えて含まれても効果が飽和する。このため、Tiは0.001mass%以上0.50mass%以下が好ましい。なお、より効果を得るためには、Tiは0.01〜0.50%がより好ましい。
[Al:0.001mass%以上0.50mass%以下]
Alは、鉄−亜鉛合金相の成長を抑制するが、その中でも特に硬いΓ相の成長を抑制する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためにはめっき浴中に0.001%以上含まれていることが必要であり、0.50%を超えて含まれても効果が飽和する。以上より、Alは0.001mass%以上0.50mass%以下が好ましい。なお、より効果を得るためには、Alは0.01〜0.50%がより好ましい。
[Cu:0.001mass%以上0.50mass%以下]
Cuは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためにはめっき浴中に0.001%以上含まれていることが必要であり、0.50%を超えて含まれても効果が飽和する。以上より、0.001mass%以上0.50mass%以下が好ましい。なお、より効果を得るためには、Cuは0.01〜0.50%がより好ましい。
[Si:0.001mass%以上0.010mass%以下]
Siは硬いΓ相の成長を抑制し、δ相およびζ相の形成を促進する。そのため、耐剥離性が向上する。その効果を得るためにはめっき浴中に0.001%以上含まれていることが必要であり、0.010%を超えて含まれても効果が飽和する。以上より、Siは0.001mass%以上0.010mass%以下が好ましい。
なお、本発明におけるめっき浴は、上記成分組成の他に、複数の被めっき鋼管を処理していく間に、被めっき鋼管に付着している油分や被めっき鋼管からの溶出物等で汚れていくが、それら不純物を含んだものである。
溶融亜鉛めっき浴の温度および浸漬時間は、通常の溶融亜鉛めっきにおける条件を用いることができ、例えば、浴温は435℃以上495℃以下が推奨される。浴温は、凝固しない限り低温なほど経済性が良いが、めっき付着量の観点からは低温なほど不利になる。本発明によれば、上記の通常の溶融亜鉛めっきで用いられる浴温を使用することができるため、浴温度・浸漬時間は所望のめっき付着量・合金相生成量にあわせて調整することができる。本発明において、溶融亜鉛めっき浴の温度は、450℃以上470℃以下であるのがより望ましい。
上記めっき浴に被めっき鋼管を浸漬することにより、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管を得ることができる。なお、被めっき鋼管をめっき浴から引き上げる際、もしくは引き上げた後、被めっき鋼管の外面と内面に空気もしくはスチームを吹き付け、めっき付着量を調整してもよい。
上述したところは、この発明の実施形態の一例を示したに過ぎず、請求の範囲を超えない限りにおいて、種々の変更を加えることができる。また、本発明は、上述した方法により製造される溶融亜鉛めっき鋼管を提供することができる。
以下に、本発明の溶融亜鉛めっき鋼管について、実施例に基づいて説明するが、本発明は、以下の実施例のみに限定されるものではない。
表1、2に示す化学成分を有する溶鋼1〜19を転炉で溶製し、連続鋳造法、熱間圧延法により、熱間圧延板とした。この熱間圧延板より電縫鋼管(長さ5.5m)を製造し、20Aおよび100Aサイズの被めっき鋼管とした。
溶融亜鉛めっき鋼管の製造は、以下の工程で行った。上記の被めっき鋼管を、脱脂後、水洗し、その後、酸洗し、表面の黒皮(熱延時に形成される鋼管表面の酸化皮膜)を除去した。酸洗液は、インヒビターを添加した12%塩酸水溶液、液温は30℃、浸漬時間は40分とした。酸洗後、水洗し、フラックス処理を行った。フラックス液は、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液であり、塩化亜鉛と塩化アンモニウムのモル比は1:1、フラックス液の比重は、70℃で測定した時に1.08、1.14、1.22あるいは1.34になるように、フラックスを水に溶解したものを用い、フラックス処理する際のフラックス液の温度は90℃、65℃あるいは30℃とした。
フラックス液から引上げた後、乾燥炉に入れて乾燥させ、その後溶融亜鉛めっき浴に浸漬した。乾燥炉内における鋼管の最高温度は、200℃、180℃、160℃、120℃、105℃、100℃とした。溶融亜鉛めっき浴の温度は450℃、浸漬時間は90秒とした。溶融亜鉛めっき浴の組成は表3、4に示した。溶融亜鉛めっき浴から引上げた後、ワイピングにより余分な亜鉛を除去し、水冷により冷却した。
上記条件により製造された溶融亜鉛めっき鋼管について、20Aサイズの溶融亜鉛めっき鋼管は転造ねじ加工を、100Aサイズの溶融亜鉛めっき鋼管はフレア加工を、それぞれ管中央部に対して施して、内面あるいは外面の亜鉛めっき層の剥離を評価した。なお、めっき後に不めっきが生じたものに関しては、そもそも製品とならないため、加工試験は行わず、不合格として除外した。除外したサンプルについては、各加工評価欄に「−」と記載した。また、管中央部で加工による影響を受けなかった部分のめっき付着量をJIS H0401(2007)に準じて測定した。
加工による耐剥離性の評価については、転造ねじ加工あるいはフレア加工を施したもので判断した。すなわち、上記条件で製造された溶融亜鉛めっき鋼管を5本加工し、加工部を5倍のルーペで観察して、5段階で評価した。すなわち、亜鉛めっき層が健全で全く剥離および亀裂がなかった場合を「5」、剥離はなかったものの一部の管の亜鉛めっき層に亀裂が見られたものを「4」、剥離はなかったもののすべての管の亜鉛めっき層に亀裂が見られたものを「3」、一部の管に剥離が発生した場合を「2」、5本すべての管に剥離が生じた場合を「1」とした。個別評価では3以上を合格とし、2および1は不合格とした。また、総合判定は、両方が3以上を合格とし、一方に2または1がある場合は不合格とした。
転造ねじ加工は、加工速度=10mm/秒で行った。フレア加工は、拡管率:(つば径/鋼管径)=135%、拡管速度:(拡管量90度/加工時間)=3.6度/秒で行った。
表3、4にめっき条件および試験結果および判定結果を記す。表3、4中の「フラックス比重」は70℃でのフラックス液の比重である。また、図1に転造ねじ加工によって剥離のない本発明例(a)と剥離のある比較例(b)の外観を示す。
本発明の製造方法により得られる溶融亜鉛めっき鋼管サンプル(サンプルNo.17、20、25〜40、43〜56、63〜70、72〜77、79〜85、86〜88)は、転造ねじ加工性およびフレア加工性が良好で、総合判定は合格である。一方、比較とした溶融亜鉛めっき鋼管サンプル(サンプルNo.1〜16、18、19、21〜24、41、42、57、71、78)の総合判定は不合格で、加工性が劣っていることがわかる。
また、参考例(サンプルNo.58〜62)に示すように、従来から鋼管の溶融亜鉛めっきに使用されているJIS H2107(1999)に規定の蒸留亜鉛地金1種(Zn:98.5%以上、Pb:1.3%以下、Cd:0.4%以下、Fe:0.025%以下)を使用して製造したものは、めっき浴成分以外の条件が本発明の範囲外であるにもかかわらず、加工性に優れたものとなっている。ここで、めっき浴成分のFe含有量が蒸留亜鉛地金1種より高くなっているのは、めっき実施時に被めっき鋼管や浴を構成する材料からFeの溶出があるためである。
本発明によれば、不めっき欠陥がなく、亜鉛めっき層の剥離が生じない加工性に優れた溶融亜鉛めっき鋼管を広く安価に利用することができる。

Claims (8)

  1. 成分組成として、C:0.010mass%以上0.250mass%以下、Si:0.05mass%以上1.00mass%以下、Mn:0.10mass%以上1.50mass%以下、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%以上0.100mass%以下、sol.Al:0.005mass%以上0.100mass%以下およびN:0.0010mass%以上0.0080mass%以下を含有する被めっき鋼管に、
    70℃での比重が1.10以上1.30以下であり、かつ温度を55℃以上95℃以下とするフラックス処理液を用いてフラックス処理を行い、
    次いで前記フラックス処理後の被めっき鋼管の最高温度を105℃以上180℃以下として乾燥処理を行い、
    成分組成として、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴に、前記乾燥後の被めっき鋼管を浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  2. 成分組成として、C:0.010mass%以上0.250mass%以下、Si:0.01mass%以上0.05mass%未満、Cu:0.03mass%以上0.50mass%以下、Mn:0.10mass%以上1.50mass%以下、P:0.050mass%以下、S:0.010mass%以下、Cr:0.005mass%以上0.100mass%以下、sol.Al:0.005mass%以上0.100mass%以下およびN:0.0010mass%以上0.0080mass%以下を含有する被めっき鋼管に、
    70℃での比重が1.10以上1.30以下であり、かつ温度を55℃以上95℃以下とするフラックス処理液を用いてフラックス処理を行い、
    次いで前記フラックス処理後の被めっき鋼管の最高温度を105℃以上180℃以下として乾燥処理を行い、
    成分組成として、Zn:97.5mass%以上、Fe:1.5mass%以下、Pb:0.10mass%以下、Cd:0.01mass%以下を含有するめっき浴に、前記乾燥後の被めっき鋼管を浸漬して溶融亜鉛めっき処理を行うことを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  3. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Cu:0.03mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  4. 前記めっき浴の成分組成において、さらに、Sb:0.01mass%以上1.00mass%以下、Bi:0.01mass%以上1.00mass%以下、Sn:0.01mass%以上2.00mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  5. 前記めっき浴の成分組成において、さらに、Ni:0.001mass%以上0.50mass%以下、Ti:0.001mass%以上0.50mass%以下、Al:0.001mass%以上0.50mass%以下、Cu:0.001mass%以上0.50mass%以下、Si:0.001mass%以上0.010mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  6. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Ni:0.01mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  7. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Mo:0.005mass%以上0.50mass%以下を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
  8. 前記被めっき鋼管の成分組成において、さらに、Nb:0.001mass%以上0.100mass%以下、V:0.002mass%以上0.100mass%以下、Ti:0.001mass%以上0.100mass%以下、B:0.010mass%以下、Ca:0.0002mass%以上0.0050mass%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼管の製造方法。
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