JP4720618B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、詳細に説明する。以下、「%」は、特に断りがない限り、「質量%」を意味する。また、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を単に「鋼板」と表記し、表面にめっき層が備えられる鋼板母材を「母材」と表記する。
(1)C:0.25%以下
本発明の鋼板は、成形性を重視する用途を対象とするため、Cは、本発明においては不純物であり、その含有量は少ないほど良い。母材に多量のCを含有させると、鋼板の加工性を低下させる。したがって、Cの含有量は0.25%以下とする。好ましくは、0.010%以下である。
Siは、合金化処理工程において、めっき層と母材との界面密着強度を増加させる重要な元素である。母材にSiが含有されることによる界面密着強度の増加メカニズムとして、「鉄と鋼、Vol.89、No.1(2003)、第46頁及至第53頁」には、Si含有により、合金化時にめっき層中のZnが母材の粒界へ拡散するのを助長し、母材とめっき層との界面の凹凸を増加させるとともに、剥離流路が迂回されてエネルギーが吸収されるためであることが提案されている。
Siの含有量が少ないと界面密着強度の向上効果が十分に得られない。そのため、Siの含有量は0.030%以上とする。好ましくは、0.040%以上である。一方、Siの含有量が多すぎると、鋼板の成形性に悪影響を及ぼす。また、合金化速度が著しく低下するため、合金化処理時間が長時間化し、生産性の低下や設備の長大化を招く。そのため、Siの含有量は0.15%以下とする。好ましくは、0.10%以下である。
Mnの含有量が多すぎると、鋼板が脆化する。そのため、Mnの含有量は3.0%以下とする。好ましくは、2.5%以下である。さらに、伸びの過度の低下や、TiCの析出を低減して降伏点が必要以上に上昇することを防止する観点から、より好ましくは1.5%以下である。一方、Mn含有量が少なすぎると母材が脆化することがある。そのため、Mnの含有量は0.030%以上とする。
Pは、本発明においては不純物であり、その含有量は少ないほど良い。Pの含有量が多すぎると、Siと同様に、伸びが小さくなる等、鋼板の成形性に悪影響を及ぼす。また、合金化速度も低下するため、合金化処理時間を長時間化し、生産性の低下や設備の長大化を招く。したがって、Pの含有量は0.050%以下とする。好ましくは、0.030%以下である。
Sは、本発明においては不純物であり、その含有量は少ないほど良い。Sの含有量が多すぎると、MnSの析出が顕著になり、鋼板の延性を低下させる。そのため、Sの含有量は0.010%以下とする。好ましくは、0.0050%以下である。
Alは、Siと同様に、めっき層と母材との界面密着強度を増加させる重要な元素である。その効果を発現させるため、Alは固溶状態で0.10%以上含有させる。好ましくは、0.20%以上である。一方、Alを固溶状態で多量に含有させても、その効果は飽和する上、めっきライン通板時に鋼帯同士を溶接する場合の溶接性が低下するため、その上限を0.80%とする。sol.Alの好ましい含有量は、0.20%以上0.60%以下である。
Nは、鋼板の成形性を低下させる。そのため、少ないほど良く、本発明では、Nの含有量を0.0060%以下とする。
これらの元素は、任意添加元素である。Ti及び/又はNbを0.0040%以上0.50%以下添加することにより、C、Nを炭化物、窒化物として固定し、鋼板の成形性を向上させることが可能になる。ただし、Cの含有量が少なく、Ti及び/又はNbを添加した鋼板を成形した成形品は、低温で加工変形応力とは異なる方向の衝撃応力を加えられると、簡単に割れてしまうことがある。そこで、かかる割れを防止するため、Bを微量(0.0050%以下)添加することが好ましい。
(1)Fe:8.0%以上15%以下、η相
めっき層表層部にη相が局所的に残存すると、プレス成形時に金型との焼きつきが生じやすくなるほか、鋼板表面に配設される接着剤とめっき層との界面における接着強度が低下し、当該界面で剥離が生じやすくなる。そのため、めっき層にη相が残存しない程度に、めっき層を十分に合金化させる必要がある。合金化度の目安として、めっき層のFeの含有量は、8.0%以上とする。好ましくは、9.0%以上である。一方、Feの含有量が多すぎると、耐パウダリング性が低下する。また、合金化に時間を要すため生産性の点でも不利である。そのため、Feの含有量は15%以下とする。好ましくは、14%以下、より好ましくは10%未満である。
めっき層のAlの含有量が少なすぎると、めっき付着量の制御が困難になる。そのため、Alの含有量は0.080%以上とする。一方、Alの含有量が多すぎると、合金化速度が低下し、鋼板の生産性が低下する虞がある。そのため、Alの含有量は0.50%以下とする。めっき層に含有されるAlは、後述するめっき浴中のAl濃度でほぼ決定されるが、めっき付着量や母材のAlによっても若干変動する。本発明では、Alを多く含有する母材をめっき基材として用いるので、Al含有量の少ない母材を基材に用いた場合と比較して、Alの含有量が多くなる傾向がある。本発明において、めっき層のAlの含有量は、めっき付着量が片面あたり40g/m2〜60g/m2程度の場合、0.25%以上0.50%以下とするのが好ましい。
本発明の鋼板を、めっき層−母材界面で強制的に剥離させると、剥離後の母材側に、ほぼ結晶粒単位の大きさで剥離した箇所が観察される。
図1は、後述の条件で強制的にめっき層−母材界面で剥離させた時の、母材側剥離面のSEM像である。写真中に矢印で示した箇所が、ほぼ結晶粒単位の大きさで剥離した箇所であり、それぞれの視野における粒径剥離面積率は、(a)が1.0%以下、(b)が約7.0%である。
(1)熱間圧延工程、巻き取り工程
本発明の製造方法では、上記母材と同じ化学組成を有するスラブを、例えば、加熱炉で加熱し、粗圧延機及び仕上圧延機にて熱間圧延する熱間圧延工程により、帯状の鋼板(ストリップ)とする。かかる熱間圧延工程で圧延された鋼板は、その後、巻取機でコイルに巻き取られる(巻き取り工程)。コイルに巻き取る際のコイル巻き取り温度は、界面密着強度の低下を防止する観点から、550℃以下とする。一方、コイル巻き取り温度が480℃未満になると熱延後段の圧延荷重が高くなり、設備能力を超えてしまう虞がある。そのため、コイル巻き取り温度は480℃以上が好ましい。
本発明の製造方法では、後述する合金化処理工程において、母材のSiやAlの効果により、母材の結晶粒界へZnの侵入を助長し、めっき層と母材との界面密着強度を向上させる。そのため、母材に含まれるSi及びAlは、固溶状態で存在することが好ましい。本発明の製造方法では、コイル巻き取り温度を低めに設定することで、母材内部でのSi、Alの酸化が抑制されると考えられる。
上記巻き取り工程で巻き取られた鋼板(鋼帯)は、表面にスケールが形成されている。それゆえ、このスケールを除去するため、鋼板を酸洗する。酸洗工程で使用する酸は、塩酸と硫酸が主流である。また、過酸洗を防止するため、ごく少量の抑制剤(例えば、酸腐食抑制剤(朝日化学工業株式会社製のイビット710N)等)を添加することができる。
酸洗工程によりスケールを除去された鋼板は、引き続き、熱延鋼板から所定の板厚の冷延母材を得るために、冷間圧延が施される。モーターパワー・各スタンドの速度範囲・形状・板厚変動・作業性等の観点から、冷間圧延工程における圧縮率は40%以上95%以下とすることが好ましい。
冷延母材には、圧延油や鉄粉が付着している。それゆえ、めっき外観を向上させる等の観点から、冷間圧延工程後の鋼板をアルカリ脱脂槽へ入れてアルカリ脱脂することにより、洗浄しても良い。その後、水素を含有する還元雰囲気下で、鋼板を必要な温度(例えば、820℃)まで上昇させることにより、還元焼鈍を行う。
還元焼鈍工程を経た鋼板は、その後、めっき浴温近傍(例えば、470℃程度)まで冷却され、めっき浴に浸漬される(浸漬工程)。めっき浴中のAl濃度が低すぎると、めっき付着量の制御が難しい。そのため、めっき浴中のAl濃度は0.080%以上とする。好ましくは、0.090%以上である。一方、めっき浴中のAl濃度が高すぎると、めっき層−母材界面にFe−Al合金層が厚く形成され、後述する合金化処理工程において、所定の合金化度を得るために必要とされる処理時間が長くなり、生産性が低下する。そのため、めっき浴中のAl濃度は、0.14%以下とする。好ましくは、0.13%以下である。
めっき浴への浸漬時間は、1秒以上であれば、性能、操業性を阻害しない。その他のめっき条件は、一般的に採用されているものを用いることができる。めっき浴温は450℃以上470℃以下、侵入材温(還元焼鈍工程後に冷却された後の温度)は450℃以上480℃以下とすることができる。めっき浴中のAl以外の成分として、不可避不純物であるFe、Pb、Cd、Cr、Ni、W、Ti、Mg、Siのそれぞれが、0.10%以下含有されていても、鋼板の性能はほとんど変わらない。
上記浸漬工程後に、一般に製品として用いられる25g/m2以上70g/m2以下となるように、めっき層の付着量を制御する。
合金化処理温度を高くすると、母材の結晶粒内へのZnの拡散速度が大きくなり、Znが粒界よりも粒内へ拡散しやすくなる。その結果、めっき層と母材との界面密着強度が低下する。そのため、合金化処理温度は530℃以下とする。好ましくは、520℃以下である。
一方、合金化処理温度が低いと、Znの拡散速度が小さくなり、合金化処理時間が長くなる。かかる場合であっても、η層が存在しない程度にまで合金化処理を行えば、界面密着強度の鋼板が得られる。しかし、生産性の低下を防止する観点から、合金化処理温度は470℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、480℃以上である。
本発明において、合金化処理温度までの昇温速度、合金化処理温度での保持時間及び保持後の冷却速度等は、特に制限されない。合金化処理における加熱手段は、めっき層の集合組織及び合金化度が上記構成となれば、輻射加熱、高周波誘導加熱、通電加熱等、何れの手段によっても良い。
上記工程を経て製造された鋼板の表面には、必要に応じて、防錆処理(例えば、クロメート処理やクロムフリー処理等)、リン酸塩処理、樹脂皮膜塗布等の後処理を施すことができ、防錆油を塗布することも可能である。
1.供試材の作製
表1に、今回使用した供試材の化学組成をあわせて示す。本発明の技術的範囲に含まれる供試材を「実施例」、本発明の技術的範囲に含まれない供試材を「比較例」とした。
これらの成分を実験室にて溶製、鋳造し、板厚30mmのスラブを作製した。当該スラブを大気中(1150℃)で1時間に亘って保持し、粗圧延及び仕上圧延に供した。仕上圧延は950℃で行い、大気中にて巻き取り温度を適宜変更して巻き取った。熱延仕上げ厚みは、4.5mmとした。かかる厚みに調整後の鋼板を酸洗後、板厚が1.6mmとなるまで冷間圧延を行った。縦型溶融亜鉛めっき装置を用い、冷間圧延後の鋼板に対して、以下の条件でめっきを施した。
まず、板厚1.6mmの鋼板を75℃のNaOH溶液で脱脂洗浄し、雰囲気ガスがN2+20%H2(露点−40℃)、雰囲気温度820℃の還元雰囲気中で、1分間に亘って焼鈍した。焼鈍後、めっき浴温近傍(470℃)まで鋼板を冷却し、浴中Al濃度0.070%〜0.16%、浴温460℃の溶融亜鉛めっき浴に1.5秒間浸漬した後、ワイピング方式により、めっき付着量を調整した。その後、赤外線加熱装置を用いて合金化処理温度を適宜変更しながら、鋼板に合金化処理を施した。合金化処理後の片面あたりのめっき付着量は、50g/m2であった。そして、合金化処理後に、圧延線荷重1.2MN/mで調質圧延を施した。
上記手順により得られた供試材に対し、以下に示す方法で分析・評価を行った。その結果を、巻き取り温度、浴中Al濃度、及び、合金化温度の値とともに、表2に示す。なお、表2の鋼種欄の数字は、表1の鋼種欄の数字と対応している。すなわち、表2の鋼種欄に「1」と記載されている場合には、表1の鋼種欄に「1」と記載されている供試材を用いて、以下の分析・評価を行ったことを意味している。
上記手順により得られた供試材に対し、以下に示す方法で分析・評価を行った。その結果を表2にあわせて示す。
2.1.合金化処理性評価
表2に示す合金化処理温度で30秒間に亘って保持する合金化処理(保持後はエア吹き付けで空冷)を行った後、目視で「明らかにη相が残存(表面外観の金属光沢が高い)」と判断した供試材を「合金化遅延」と評価した。合金化遅延と評価された供試材には表2で「×」と表記するとともに、合金化遅延と評価されなかった供試材には表2で「○」と表記し、「合金化遅延」と判断した供試材に対しては、後述する分析、評価を行わなかった。なお、表2のNo.25は、合金化処理時間を短くし、あえてη相が残存するサンプルを作成したものであるため、合金化処理性については評価せず、「−」と記載した。
合金化処理後の供試材から、25mmφの試料片を採取し、0.50体積%インヒビター(商品名「イビット710N」、朝日化学工業株式会社製)を含有した10%HCl水溶液でめっき層を溶解し、これを、誘導結合プラズマ(ICP)法で分析することにより、めっき層の組成を分析した。分析結果(「Fe濃度(%)」及び「Al濃度(%)」)を表2に示す。
合金化処理後の供試材を、長手方向が圧延方向となるように、20mm×100mmに裁断し、一液加熱硬化型接着剤(商品名「EW2020」、住友スリーエム株式会社製)を接着剤として用い、重ね代:12.5mm、接着剤膜厚:200μm、焼付条件:170℃×30分間、引張速度:5.0mm/min、室温下の条件で、長手方向に引張試験を実施した。
この引張試験で、めっき層と母材との界面で剥離に至ったものについて、鋼板側の剥離面を200倍で、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した。母材側粒径剥離面積率は、剥離面のうち、ほぼ結晶粒単位での剥離が観察される部分の面積の視野全体に対する面積比率で表した。一の供試材について、SEM観察を3箇所で行い、3箇所の粒径剥離面積率の平均値を代表値とした。各供試材の代表値を、表2に示す。
合金化処理後の供試材を、長手方向が圧延方向となるように、30mm×100mmに裁断したサンプルに、防錆油(商品名「550HN」、日本パーカライジング株式会社製)を刷毛塗りし、ブランクホルダー圧フリー(ダイスとポンチとの間に板厚以上のスペースを確保)のハット成形試験を室温で行った。ハット成形試験の模式図を図4に示す。ここで、「ハット成形試験」とは、図4(a)に試験装置の一部を拡大して示すように、所定の間隔を開けて備えられるダイ41、41の上に、成形前の供試材42を載せ、当該供試材42の上方からポンチ43を下方へ移動させることにより、成形された供試材44(図4(b)参照)とする試験を意味する。このようにして供試材44へ成形した後、供試材44の縦壁部45にテープ(JIS Z−1522に準ずる、ニチバン株式会社製のセロテープ。「セロテープ」はニチバン株式会社の登録商標。)を貼り、その後、当該テープを剥離して、テープ剥離後の成形品の質量を測定した。そして、テープ剥離後の成形品の質量と、成形前の供試材41の質量とを比較することにより、1サンプルあたりのめっき層の剥離量を算出した。その他の条件は、ポンチ平行部:28mm、ダイス平行部:30mm、ポンチ肩R:3.0mm、ダイス肩R:5.0mm、成形速度:60mm/minとした。めっき層の剥離量の結果を、表2に示す。
母材側粒径剥離面積率を測定する際の引張試験では、No.25を除き、めっき層−母材界面での剥離が認められた。一方、No.25では、めっき層と接着剤とが剥離した。
これに対し、本発明の技術的範囲に含まれるスラブ(鋼種No.2〜5、7〜8、12〜15)を用いた供試材(No.2〜5、7〜8、12〜15)は、母材側の剥離面の粒径剥離面積率が5.0%以上であり、めっき層の剥離量は概ね20mg程度、又は、20mg以下と良好な結果が得られた。なお、sol.Al含有量が0.80%であるスラブ(鋼種No.15)を用いた供試材(No.15)は、性能上の悪影響、又は、製造面での悪影響は認められないものの、sol.Al含有量を増加させることにより得られる効果(界面密着強度向上効果)が飽和する傾向が認められた。
2 めっき層(合金化亜鉛めっき層)
10 合金化溶融亜鉛めっき鋼板
Claims (6)
- 鋼板母材の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板母材が、質量%で、C:0.25%以下、Si:0.030%以上0.15%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有し、
前記合金化溶融亜鉛めっき層に、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下、が含有されるとともに、η相が存在せず、
前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面剥離部における、前記鋼板母材側の粒径剥離面積率が10.0%以上であり、
前記粒径剥離面積率は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の長手方向が圧延方向となるように、20mm×100mmに裁断し、30MPa以上の接着せん断強さを有する一液加熱硬化型接着剤を接着剤として用い、裁断された2枚の前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の重ね代が12.5mm、重ねられた2枚の前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の間に配設される前記接着剤の膜厚が200μm、焼付条件が170℃で30分間、引張速度が毎分5.0mm、及び、室温下の条件で長手方向に引張試験を実施して前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面でこれらを強制的に剥離させた後、前記界面剥離部における前記鋼板母材側の剥離面を観察倍率200倍で走査型電子顕微鏡により観察したときに、ほぼ結晶粒単位の大きさで剥離した部分が前記走査型電子顕微鏡の観察視野全体に占める割合である、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 鋼板母材の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板母材が、質量%で、C:0.010%以下、Si:0.030%以上0.15%以下、Mn:0.030%以上1.5%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有し、
前記合金化溶融亜鉛めっき層に、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下、が含有されるとともに、η相が存在せず、
前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面剥離部における、前記鋼板母材側の粒径剥離面積率が10.0%以上であり、
前記粒径剥離面積率は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の長手方向が圧延方向となるように、20mm×100mmに裁断し、30MPa以上の接着せん断強さを有する一液加熱硬化型接着剤を接着剤として用い、裁断された2枚の前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の重ね代が12.5mm、重ねられた2枚の前記合金化溶融亜鉛めっき鋼板の間に配設される前記接着剤の膜厚が200μm、焼付条件が170℃で30分間、引張速度が毎分5.0mm、及び、室温下の条件で長手方向に引張試験を実施して前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面でこれらを強制的に剥離させた後、前記界面剥離部における前記鋼板母材側の剥離面を観察倍率200倍で走査型電子顕微鏡により観察したときに、ほぼ結晶粒単位の大きさで剥離した部分が前記走査型電子顕微鏡の観察視野全体に占める割合である、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。 - 前記鋼板母材に含有される前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び/又は、Nb:0.0040%以上0.50%以下、並びに、B:0.0050%以下、の添加元素が含有されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
- 質量%で、C:0.25%以下、Si:0.030%以上0.15%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有するスラブを、熱間圧延して鋼板とする、熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に、前記鋼板を550℃以下の温度で巻き取る、巻き取り工程と、
前記巻き取り工程後に、鋼板を酸洗する、酸洗工程と、
前記酸洗工程後に、鋼板を冷間圧延する、冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後に、鋼板を還元雰囲気中で焼鈍する、還元焼鈍工程と、
前記還元焼鈍工程後に、鋼板を、質量%で、0.080%以上0.14%以下のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する、浸漬工程と、
前記浸漬工程後に、鋼板表面の亜鉛付着量を制御する、付着量制御工程と、
前記付着量制御工程後に、鋼板を、530℃以下の温度で合金化処理する、合金化処理工程と、を備え、
前記合金化処理工程において、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下、を含有するとともに、η相が残存しない合金化溶融亜鉛めっき層、が形成されることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 質量%で、C:0.010%以下、Si:0.030%以上0.15%以下、Mn:0.030%以上1.5%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有するスラブを、熱間圧延して鋼板とする、熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後に、前記鋼板を550℃以下の温度で巻き取る、巻き取り工程と、
前記巻き取り工程後に、鋼板を酸洗する、酸洗工程と、
前記酸洗工程後に、鋼板を冷間圧延する、冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後に、鋼板を還元雰囲気中で焼鈍する、還元焼鈍工程と、
前記還元焼鈍工程後に、鋼板を、質量%で、0.080%以上0.14%以下のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する、浸漬工程と、
前記浸漬工程後に、鋼板表面の亜鉛付着量を制御する、付着量制御工程と、
前記付着量制御工程後に、鋼板を、530℃以下の温度で合金化処理する、合金化処理工程と、を備え、
前記合金化処理工程において、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下、を含有するとともに、η相が残存しない合金化溶融亜鉛めっき層、が形成されることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。 - 前記スラブに含有される前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び/又は、Nb:0.0040%以上0.50%以下、並びに、B:0.0050%以下、の添加元素が含有されることを特徴とする、請求項4又は5に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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