JP5092858B2 - 溶融亜鉛めっき用鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板 - Google Patents

溶融亜鉛めっき用鋼板及び合金化溶融亜鉛めっき鋼板 Download PDF

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Description

本発明は溶融亜鉛めっき用鋼板に係り、さらに詳しくは引張り強度が390〜690MPa程度での高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関し、特に降伏点が低く成形性に優れると共に、加工後の外観に優れ、種種の用途、例えば自動車用外板として適用できる鋼板に関するものである。
溶融亜鉛めっき鋼板は、塗装密着性、塗装耐食性、溶接性などの点に優れることから、自動車用をはじめとして、家電、建材等に非常に多用されている。その中でも合金化溶融亜鉛めっき鋼板は鋼板表面に溶融亜鉛をめっきした後、直ちに亜鉛の融点以上の温度に加熱保持して、鋼板中からFeを亜鉛中に拡散させることで、Zn−Fe合金を形成させるものであるが、鋼板の組成や組織によって合金化速度が大きく異なるため、その制御はかなり高度な技術を要する。一方、複雑な形状にプレスされる自動車用鋼板には、非常に高い成形性が要求されるとともに、近年では自動車の防錆性能への要求が高まったことによって、合金化溶融亜鉛めっきが適用されるケースが増加している。
また、近年、自動車分野においては衝突時に乗員を保護するような機能の確保と共に燃費向上を目的とした軽量化を両立させるために、めっき鋼板の高強度化が必要とされてきている。
加工性を悪化させずに鋼板を高強度化する方法の1つとして、鋼板の組織を複合組織とする方法が知られている。鋼板の組織を複合組織とするためには、MnやCr、Moといった元素を添加することが有効であり、こうした元素を添加することによって作製された複合組織を有する高強度めっき鋼板の発明も多数開示されている。
例えば、特許文献1においては、C:0.005〜0.15%、Mn:0.3〜2.0%、Cr:0.03〜0.8%を含有する鋼板にめっきを行い合金化する高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献2においては、C:0.04〜0.15%、Mn:1.0〜2.5%、Cr:0.1〜2.0%を含有する鋼板にめっきを行い合金化する高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。
また、特許文献3においては、C:0.02〜0.06%、Mn:1.5〜2.5%、Cr:0.03〜0.5%、Mo:0〜0.5%を含有する鋼板にめっきを行い合金化する高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。
特開昭55−122821号公報 特開平6−73497号公報 特開2001−303184号公報
連続溶融亜鉛めっきラインでは、その製造工程の制約からMnやCr、Moといった元素の添加量が少ないと、目的とした複合組織を得ることができないため、こうした元素を多量に添加する必要がある。ただし、Mnは鋼板中に筋状に偏析し易いため、Mnを多量に添加するとMnの濃淡に沿って材質の異なる組織ができ易くなる。このため、歪量が数%〜十%となるプレス加工を行うと、材質の違いによる変形量の差から鋼板表面に凹凸が発生し、加工後の外観が低下する。従って、Mnを多量に添加した鋼板では、加工後に自動車用外板として使用可能な外観を確保することが非常に困難である。
一方、CrやMoは、固溶強化能がMnほど高くないため、Mnの変わりに添加し強度を確保するためには、さらに多量の添加が必要となり、生産コストを上昇させる問題を生じる。
また、固溶強化による鋼板の高強度化には、Siを添加することも有効であるが、SiはFeよりも酸化し易いことから、Siを含有した鋼板を通常の溶融亜鉛めっき条件でめっきすると、焼鈍過程で鋼中のSiが表面に濃化し、不めっき欠陥やめっき密着性低下の原因となる。
このため、上記特許文献1乃至3及びその他これまで開示されためっき鋼板では、自動車用外板として使用可能な加工後の外観と強度が両立できていなかった。
本発明は上記の現状に鑑みて、高強度複合組織溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加工後の外観を改善する目的でMnやCr、Mo、Siの添加量を最適化し、自動車用外板として使用可能な高強度複合組織溶融亜鉛めっき鋼板、高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板およびその被めっき用鋼板を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、複合組織とした高強度鋼板について鋭意研究を重ねた結果、Mn、Cr、Siの添加量を最適化することによって、高強度溶融亜鉛めっき鋼板及び高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板の加工性と加工後の外観を両立できることを見出して本発明に至った。
すなわち、本発明の趣旨とするところは、以下のとおりである。
(1) 質量%で、
C:0.02〜0.3%、
Si:0.1〜2.0%、
Mn:1.0%未満、
Cr:1.0超〜3.0%、
P:0.02%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.014%以下、
N:0.001〜0.008%、
を含有し、且つ、2.5≦1.5Mn%+Cr%、4.1−2.3Mn%−1.2Cr%≦Si%を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき用鋼板。
(2) さらに、質量%で、
Co:0.01〜1%、
Mo:0.01〜1.5%、
の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)に記載の合金化溶融亜鉛めっき用鋼板。
(3) 前記(1)乃至(2)のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.1〜10質量%、Fe:0.01〜0.5質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を形成させた溶融亜鉛めっき鋼板。
(4) 前記(1)乃至(2)のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.05〜0.5質量%、Fe:7〜15質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(5) 前記(3)に記載の合金化溶融亜鉛めっき用鋼板のめっきのd=1.26、d=1.222のX線回折強度Iζ、IΓとSi標準板のd=3.13のX線回折強度ISiとの比Iζ/ISi、IΓ/ISiが、Iζ/ISi≦0.004、IΓ/ISi≦0.004であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(6) 引張強度が390MPa以上であり、降伏比が0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
L≧57.5−0.0467×F
であることを特徴とする前記(3)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
(7) 引張強度が390MPa以上であり、降伏比が0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
L≧57.5−0.0467×F
であることを特徴とする前記(4)または(5)に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。

フェライト粒径が5〜40μmであることを特徴とする前記(3)または(6)に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
(9) フェライト粒径が5〜40μmであることを特徴とする前記(4)、(5)、(7)のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
(10) 主相であるフェライト組織の分率が面積率で70%以上であり、面積率で1%以上15%以下のマルテンサイト組織を含有し、前記マルテンサイトを含む第2相の分率の合計が面積率で30%以下であることを特徴とする前記(3)、(6)、(8)のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
(11) 主相であるフェライト組織の分率が面積率で70%以上であり、面積率で1%以上15%以下のマルテンサイト組織を含有し、前記マルテンサイトを含む第2相の分率の合計が面積率で30%以下であることを特徴とする前記(4)、(5)、(7)、(9)のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
本発明は、高強度で加工性と加工後の外観のいずれにも優れる高強度複合組織溶融亜鉛めっき鋼板と高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造できる被めっき鋼板、及び、自動車用外板として使用可能な高強度複合組織溶融亜鉛めっき鋼板、高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板を提供することを可能としたものであり、産業の発展に貢献するところが極めて大である。
以下に本発明を詳細に説明する。まず、本発明において各成分の範囲を限定した理由を述べる。なお、本発明において%は、特に明記しない限り、質量%を意味する。
C:Cはマルテンサイト量を適正な範囲に制御し、強度を確保すると共に降伏強度を低下させるため、主相(面積率最大の相)および第2相の分率を制御する目的で添加する元素である。素地の微細均一化についても影響を与える。強度および各第2相の面積率を確保するために0.02%以上を必要とする。0.3%を越えると、溶接性が著しく劣化するのでこれを上限とする。0.025〜0.18%がより好ましい範囲である。
Si:Siは鋼板の加工性、特に伸びを大きく損なうことなく強度を増す元素として0.1〜2.0%添加する。Siの含有量を0.1%以上とする理由は、Siが0.1%未満では必要とする引張強さの確保が困難であるためであり、Siの含有量を2.0%以下とする理由は、Siが2.0%を超えると強度を増す効果が飽和すると共に延性の低下が起こるためである。十分な強度を確保するためには、後述するように4.1−2.3Mn%−1.2Cr%≦Si%添加することが望ましい。
Mn:Mnは、オーステナイト安定化元素であり、変態生成物を作り、鋼板の機械的強度を高めるのに有効な元素である。ただし、Mnの添加は、加工後の外観の低下の原因となるため、Mnの上限を1.0%未満とする.Mnが少ないほど加工後の外観は良好であるが、0.01%以下とするためには精練コストが多大となるので下限含有量は0.01%とすることが好ましい。
Cr:Crは、適正な量のマルテンサイトを生成させて、引張強度の向上と、降伏強度の低下を両立させるために添加される。またCrは常温非時効性を向上させるために欠かせない元素である。Mn含有量1%未満の鋼板において、Cr含有量が1.0%以下であるとこれらの効果が不十分であり、一方3.0%を超えると引張強度が高くなりすぎて、成形性を損なう。そのためCr含有量を1.0%超、3.0%以下の範囲とした。
P:Pは一般に不可避的不純物として鋼に含まれるが、その量が0.02%を超えるとスポット溶接性の劣化が著しいうえ、本発明におけるような引張強さが490MPaを超すような高強度鋼板では靭性とともに冷間圧延性も著しく劣化するため、その含有量は0.02%以下とする。
S:Sは鋼の熱間加工性、耐食性を低下させる元素であるから少ないほど好ましく、上限含有量は0.02%とする。但し、S量を低減するためにはコストがかかるうえ、Sを過度に低減すると筋模様等の表面欠陥が発生し易くなるため、熱間加工性、耐食性等から必要なレベルにまでSを低減すれば良い。下限は限定しないが、通常は0.001%以上を含有する。鋼中に微細な硫化物を存在させ、結晶粒径を制御するには、Sを0.002%以上含有させることが好ましい.また、0.012%超のSを含有させると、鋼の結晶粒径が微細になりすぎて降伏強度が上昇し成形性が低下するため、特に高い成形性を必要とする場合には、上限を0.012%以下とすることが好ましい。
Al:Alは一般に鋼の脱酸元素として添加されるが、Al含有量を減らすとAl系析出物の生成が抑制されてフェライトが成長しやすくなるため、Alの含有量は0.014%以下とする。Al含有量が低いほど降伏比が小さくなり、延性が向上するため、さらに加工性を向上させるためにはAl量の上限を0.008%にすることが好ましい.さらに好ましくは0.005%以下である.下限は限定しないが、通常は0.0005%以上を含有する。
N:Nは機械的強度を高めたり、BH性(焼付き硬化性)を付与したりするための重要な添加元素である。Nの添加量が0.001%未満であると耐デント性の効果が十分には得られず、一方0.008%を超えると降伏比が増加し、加工性が劣化すると共に、常温非時効性を確保することが困難になる。したがって、N含有量の範囲を0.001〜0.008%に限定する.より高い加工性を確保する観点から、N量の好ましい上限は0.006%以下である。
本発明において、MnとCrの添加量は、2.5≦1.5Mn%+Cr%とする。Mn、Crは、焼き入れ性を向上させる元素であり、マルテンサイト相を生成させるために最適な添加量に制御することが重要である。1.5Mn%+Cr%が2.5未満では、焼き入れ性が不十分であるため、複合組織を得ることが困難となるため、目的とする強度と加工性を得るためには、1.5Mn%+Cr%を2.5以上とする。Mn、Crの添加量は多いほど焼き入れ性が向上し、複合組織が得られ易くなるため、望ましくは2.8≦1.5Mn%+Cr%である。また、過剰の添加は製造コストの増大に繋がるため、Mn、Crの添加量は1.5Mn%+Cr%≦4が望ましい。
ただし、Mn、Crの添加量が少ないと複合組織を得ることができても強度が十分でない場合がある。このため、Mn、Crの添加量を低く抑える場合には、伸びを大きく損なうことなく強度を増す元素としてSiを添加することが望ましい。特に1.5Mn%+Cr%≦3において、引張強度を390MPa以上確保するためには、4.1−2.3Mn%−1.2Cr%≦Si%の範囲で添加することが望ましい。
Siの添加量を4.1−2.3Mn%−1.2Cr%以上とする理由は、Mn、Crの添加量が2.5≦1.5Mn%+Cr%≦3では、複合組織を得ることができても強度が十分でないため、Siの添加量が4.1−2.3Mn%−1.2Cr%未満では、目的とする強度と加工性が得られないためである。従って、Mn、Crの添加量が1.5Mn%+Cr%≦3では、強度を増す元素として4.1−2.3Mn%−1.2Cr%以上のSiを添加することが望ましい。
一方、Mn、Crの添加量が3<1.5Mn%+Cr%では、4.1−2.3Mn%−1.2Cr%<0.1となる。即ち、Si添加量が0.1%未満でも目的とする強度は確保可能となるが、さらに強度を増す目的でSiを添加しても構わない。
さらに、本発明が対象とする鋼は、加工性のさらなる向上を目的として、Co、Moの1種または2種以上を含有できる。
Co:Coは、ベイナイト変態制御による強度−穴拡げ性の良好なバランスのため、0.01質量%以上の添加とした。一方、添加の上限は特に設けないが、高価な元素であり、多量添加は経済性を損なうことから、1質量%以下にすることが望ましい。
Mo:Moも強化および炭化物生成の抑制とベイナイトおよびベイニティックフェライト生成の目的から添加する元素で、0.01%以上にてその効果が得られる。しかしながら、1.5%を越えるとコストの上昇が問題となるため、上限は、1.5%とする。Moは、その他に、溶接時の熱影響部において軟化を防止する効果も有する。
本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、前記成分の溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.1〜10質量%、Fe:0.01〜0.5質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を形成させた溶融亜鉛めっき鋼板である。
本発明において溶融亜鉛めっき層のAl組成を0.1〜10質量%に限定した理由は、0.1質量%未満のAl量で通常の溶融めっき処理を行うと、めっき処理時においてZn―Fe合金化反応が起こり、地鉄界面に脆い合金層が発達し、めっき密着性が劣化するためであり、Alの含有量が10質量%を超えると、めっき処理時においてFe−Al合金化反応が起こり、地鉄界面に脆い合金層が発達し、めっき密着性の低下が見られるためである。
また、Fe組成を0.01〜0.5質量%に限定した理由は、連続溶融亜鉛めっき設備では、鋼板から浴中へのFeの溶解が避けられずめっき浴中のFe濃度を0.01質量%未満とすることが困難であるためであり、合金化処理を行わずにFeの組成が0.5質量%を超えた溶融亜鉛めっきは、地鉄界面に脆いZn―Fe合金層が発達し、めっき密着性が劣化した状態であるためである。
また、本発明の高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、前記成分の溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.05〜0.5質量%、Fe:7〜15質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
本発明において合金化溶融亜鉛めっき層のAl組成を0.05〜0.5質量%に限定した理由は、0.05質量%未満では合金化処理時においてZn―Fe合金化が進みすぎ、地鉄界面に脆い合金層が発達しすぎてめっき密着性が劣化するためであり、0.5質量%を超えるとFe-Al-Zn系バリア層が厚く形成され過ぎ合金化処理時において合金化が進まないため目的とする鉄含有量のめっきが得られないためである.望ましくは0.1〜0.3質量%である。
また、Fe組成を7〜15質量%に限定した理由は、7質量%未満だとめっき表面に柔らかいZn−Fe合金が形成されプレス成形性を劣化させるためであり、15質量%を超えると地鉄界面に脆い合金層が発達し過ぎてめっき密着性が劣化するためである。望ましくは9〜12質量%である。
次に、合金化溶融亜鉛めっき層について述べる.本発明において、合金化溶融亜鉛めっき層とは、合金化反応によってZnめっき中に鋼中のFeが拡散し、できたFe−Zn合金を主体としためっき層のことである。このめっき層はFeの含有率の違いにより、ζ相、δ相、Γ相と呼ばれる合金層が形成される。この内、ζ相はめっきが軟らかくプレス金型と凝着しやすいため摩擦係数が高く、厳しいプレスを行った時に板破断を起こす原因となりやすい.また、Γ相は硬くて脆いため、加工時にパウダリングと呼ばれるめっき剥離を起こしやすい。従って、ζ相、Γ相を限りなく少なくし、めっき層をδ相とすることにより、プレス加工性とめっき密着性を向上させることができる。ここで、めっき層中にはΓ相と呼ばれる硬くて脆い相も存在することが知られているが、X線回折強度からはΓ相とΓ相を区別することができないため、Γ相とΓ相を合わせてΓ相として取り扱う。
具体的には、ζ相、Γ相を示すd=1.26、d=1.222のX線回折強度Iζ、IΓとSi標準板のd=3.13のX線回折強度ISiとの比Iζ/ISi、IΓ/ISiを、Iζ/ISi≦0.004、IΓ/ISi≦0.004とする。なお、X線回折強度はJCPDSデータを用いた。
Iζ/ISiを0.004以下に限定した理由は、Iζ/ISiが0.004以下ではζ相は極微量であり、プレス加工性の低下が見られないためである。
また、IΓ/ISiを0.004以下に限定した理由は、IΓ/ISiが0.004以下ではΓ相は極微量であり、めっき密着性の低下が見られないためである。
本発明の鋼板には上記の成分の他に、鋼板自体の耐食性や熱間加工性を一段と改善する目的で、あるいはスクラップ等副原料からの不可避不純物として、他の合金元素を含有することも可能であり、他の合金元素を含有したとしても本発明の範囲を逸脱するものではない。かかる合金元素として、Ti、Nb、B、Cu、Ni、W、Ca、Y、V、Zr、Ta、Hf、Pb、Sn、Zn、Mg、As、Sb、Biが挙げられる。
また、本発明鋼板は、溶融亜鉛めっき浴中あるいは亜鉛めっき中にPb、Sb、Si、Sn、Mg、Mn、Mo、W、Ni、Cr、Co、Ca、Cu、Li、Ti、Be、Bi、希土類元素の1種または2種以上を含有、あるいは混入してあっても本発明の効果を損なわず、その量によっては耐食性が改善される等好ましい場合もある。合金化溶融亜鉛めっきの付着量については特に制約は設けないが、耐食性の観点から20g/m以上、経済性の観点から150g/m以下で有ることが望ましい。特に、パウダリング現象はめっき付着量が多いほど発生し易く、付着量が30g/mを超えると問題になり易い。
また、本発明において鋼板の板厚は本発明に何ら制約をもたらすものではなく、通常用いられている板厚であれば本発明を適用することが可能である。
また、本発明鋼板は、通常の溶融亜鉛めっき鋼板製造ラインに適用して、外観と成形性の優れた高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。
製造方法については特に限定しないが、高強度と加工性が良いことを両立するためには、適切な焼鈍条件を選択し、引張強度を390MPa以上、降伏比を0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
L≧57.5−0.0467×F
とすることが望ましい。
伸びLを57.5−0.0467×F以上とする理由は、57.5−0.0467×F未満では、厳しいプレス加工時に割れやネッキングが発生し、目的とする良好な加工性が得られないためである。
また、Siを含有した鋼板を通常の溶融亜鉛めっき条件でめっきすると、焼鈍過程で鋼中のSiが表面に濃化し、不めっき欠陥の原因となるため、これを避ける目的で、還元帯の雰囲気としてHを1〜60体積%含有し、残部N、HO、O、CO、COの1種又は2種以上および不可避的不純物からなり、その雰囲気中の酸素分圧の対数logPO
−0.000034T+0.105T−0.2〔Si%〕+2.1〔Si%〕−98.8≦logPO≦−0.000038T+0.107T−90.4・・・(1)
923≦T≦1173・・・(2)
T:鋼板の最高到達板温(K)
〔Si%〕:鋼板中のSi含有量(mass%)
に制御した雰囲気で還元を行うことが望ましい。
を1〜60体積%にする理由は、1%未満では鋼板表面に生成した酸化膜を十分還元できず、めっき濡れ性が確保できないためであり、60%を超えると、還元作用の向上が見られず、コストが増加するためである。
logPOを−0.000038T+0.107T−90.4以下にする理由は、還元帯において鉄の酸化物を還元するためである。logPOが−0.000038T+0.107T−90.4を超えると鉄の酸化領域にはいるため、鋼板表面に鉄の酸化膜が生成し、ブルーイングとなって不めっきの原因となる。
logPOを−0.000034T+0.105T−0.2〔Si%〕+2.1〔Si%〕−98.8以上にする理由は、logPOが−0.000034T+0.105T−0.2〔Si%〕+2.1〔Si%〕−98.8未満ではSiの酸化物SiOが表面に露出し、めっき密着性を低下させるためである。
logPOを−0.000034T+0.105T−0.2〔Si%〕2+2.1〔Si%〕−98.8以上とすることで鋼板表面または表面側にFeSiO、FeSiO、MnSiO、MnSiOから選ばれた1種以上のSi酸化物が存在し、鋼板内面側にSiOが存在する酸化状態が得られるようになり、不めっき欠陥の発生を抑制することが可能となる。
また、雰囲気中の酸素分圧の対数logPOを規定する鋼板の最高到達板温Tは、923K以上、1173K以下とする。
Tを923K以上にする理由は、Tが923K未満ではSiが外部酸化する酸素ポテンシャルが小さく、工業的に操業できる範囲の酸素ポテンシャルでは鉄の酸化域となるため、鋼板表面にSiOが生成し密着性を劣化させることがないためである。一方、Tを1173K以下に限定する理由は、1173Kを超える温度で焼鈍するのは多大のエネルギーを要して不経済であるためである。鋼板の機械特性を得る目的であれば、後に記すように最高到達板温は1153K(880℃)以下で十分である。
また、炉内の雰囲気温度は高いほど鋼板の板温を上げ易くなるため有利であるが、雰囲気温度が高すぎると炉内の耐火物の寿命が短くなり、コストがかかるため1273K以下が望ましい。
その他の製造プロセスに対する制約は特に無く、コスト、生産性を考慮して、適宜プロセスを選択すれば良い。
例えば、熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造スラブや薄スラブキャスター等で製造したものが使用でき、特に限定するものではない。また、鋳造後直ちに熱間圧延を行う連続鋳造−直送圧延(CC−DR)のようなプロセスにも適合する。
熱間圧延の仕上温度は鋼板のプレス成形性と外観を確保するという観点からAr3変態点以上とすることが好ましい。熱延後の冷却条件や巻取温度は特に限定しないが、巻取温度はコイル両端部での材質ばらつきが大ききなることを避け、またスケール厚の増加による酸洗性の劣化を避けるためには750℃以下とし、また部分的にベイナイトやマルテンサイトが生成すると冷間圧延時に耳割れを生じやすく、極端な場合には板破断することもあるため550℃以上とすることが望ましい。冷間圧延は通常の条件でよく、フェライトが加工硬化しやすいように硬質第2相を微細に分散させ、加工性の向上を最大限に得る目的からその圧延率は50%以上とする。一方、90%を超す圧延率で冷間圧延を行うことは多大の冷延負荷が必要となるため現実的ではない。
連続溶融亜鉛めっき設備を使用し、引張強度を390MPa以上、降伏比を0.55以下確保するためには、750℃以上880℃以下のフェライト、オーステナイトの二相共存温度域で焼鈍し、その最高到達温度から650℃までを平均冷却速度0.5〜10℃/秒で、引き続いて650℃からめっき浴までを平均冷却速度3℃/秒以上で冷却した後、溶融亜鉛めっき処理を行うことによって、前記冷延鋼板の表面上に溶融亜鉛めっき層を形成し、次いで、前記溶融亜鉛めっき層が形成された前記鋼板に対し合金化処理を施すことによって、前記鋼板の表面上に合金化溶融亜鉛めっき層を形成することが望ましい。
焼鈍温度が750℃未満では再結晶が不十分であり、鋼板に必要なプレス加工性を具備できない。880℃を超すような温度で焼鈍することは生産コストが上昇すると共に設備の劣化が早くなるため好ましくない。
焼鈍後、650℃までを平均0.5〜10℃/秒とするのは加工性を改善するためにフェライトの体積率を増すと同時に、オーステナイトのC濃度を増すことにより、その生成自由エネルギーを下げ、マルテンサイト変態の開始する温度をめっき浴温度以下とすることを目的とする。650℃までの平均冷却速度を0.5℃/秒未満とするためには連続溶融亜鉛めっき設備のライン長を長くする必要がありコスト高となるため、650℃までの平均冷却速度は0.5℃/秒以上とする。
650℃までの平均冷却速度を0.5℃/秒未満とするためには、最高到達温度を下げ、オーステナイトの体積率が小さい温度で焼鈍することも考えられるが、その場合には実際の操業で許容すべき温度範囲に比べて適切な温度範囲が狭く、僅かでも焼鈍温度が低いとオーステナイトが形成されず目的を達しない。
一方、650℃までの平均冷却速度を10℃/秒を超えるようにすると、フェライトの体積率の増加が十分でないばかりか、オーステナイト中C濃度の増加も少ないため、鋼帯がめっき浴に浸漬される前にその一部がマルテンサイト変態し、その後めっき合金化処理のための加熱でマルテンサイトが焼き戻されてセメンタイトとして析出するため高強度と加工性の良いことの両立が困難となる。
650℃からめっき浴までの平均冷却速度を3℃/秒以上とするのは、その冷却途上でオーステナイトがパーライトに変態するのを避けるためであり、その冷却速度が3℃/秒未満では本発明で規定する温度で焼鈍し、また650℃まで冷却したとしてもパーライトの生成を避けられない。平均冷却速度の上限は特に規定しないが、平均冷却速度50℃/秒を超えるように鋼帯を冷却することはドライな雰囲気では困難である。
めっき合金化処理条件については特に定めないが、処理温度460〜550℃、処理時間10〜40秒の範囲が実際の操業上適切である。合金化処理を行った後の冷却中はマルテンサイト変態が起こるため、降伏比を下げて加工性及び耐面歪み性を安定的に確保する観点から、溶融亜鉛めっき後又は合金化処理後の冷却は、少なくとも200℃までの温度を、5℃/s以上の冷却速度で行うことが好ましい。優れた耐面ひずみ性と強度−延性バランスを得るための、より好ましい冷却速度は10℃/s以上である。
調質圧延は、形状矯正と表面性状確保のために行い、伸び率2%以下の範囲で行うことが好ましい。これは、伸び率が2%を超えると、BH量が低下することがあるためである。
このようにして作製した本発明鋼板は、フェライトと硬質第2相からなる複合組織となる。
引張強度を390MPa以上、降伏比を0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
L≧57.5−0.0467×F
とするためには、フェライトを主相とし、フェライト面積率を組織全体に対する面積率で70%以上とする必要がある。さらにより高い伸びフランジ性が要求される場合には、85%以上のフェライト面積率が望ましい。ここで云うフェライトとは、加工による歪を含まないいわゆるポリゴナルフェライト組織をさす。
また、マルテンサイトは、本発明が目標とする、強度と延性および降伏比の優れたバランスを得るのに極めて重要な組織である。マルテンサイトの分率が、組織全体に対する面積率で1%未満では、十分な延性改善効果が得られず、引張強度も低い。しかし、分率が面積率で15%を上回ると、強度が大きく増加するものの、伸びフランジ性が顕著に低下し望ましくない。さらにより高い伸びフランジ性が要求される場合には、10%以下の面積率が望ましい。
また、前記マルテンサイトを含む硬質第2相は、マルテンサイト以外に、ベイナイト、残留オーステナイトなどが可能となる。さらに、炭化物の析出を含まないベイニテイックフェライト、アシキュラーフェライトも、本願でいう硬質第2相の範疇に含むものとする。
硬質第2相の面積率は、30%以下の範囲とすることによって、強度、降伏強度、降伏比、強度−延性バランスの全てを良好な範囲とすることが可能となる。さらにより高い伸びフランジ性が要求される場合には、15%以下の面積率が望ましい。
これらの組織の分率の測定は、光学顕微鏡、SEMにより鋼板の断面組織を観察することで面積率として評価することができる。
ここで、フェライト粒径は、5μm未満であると、降伏比が増加して耐面歪み性が悪化し、一方、40μmを超えると成形後の表面外観が劣化するため、外板パネル用としては好ましくない。そのため、フェライト粒径は5〜40μmの範囲とすることが好ましい。
当然のことながら、本発明鋼板を使用して得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に、塗装性、溶接性を改善する目的で、各種の上層めっき、特に電気めっき、を施すことも勿論可能であり、本発明を逸脱するものではない。また、本発明の方法で得られた合金化溶融亜鉛めっき鋼板上に、各種の処理を付加して施すことも勿論可能であり、例えば、クロメート処理、りん酸塩処理、りん酸塩処理性を向上させるための処理、潤滑性向上処理、溶接性向上処理、樹脂塗布処理、等を施したとしても、本発明の範囲を逸脱するものではなく、付加して必要とする特性に応じて、各種の処理を施すことができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する.
表1に示す成分の鋼を溶製し、次いでスラブを1150℃に加熱し、仕上温度910〜930℃で4mmの熱間圧延鋼帯とし、580〜680℃で巻き取った。酸洗後、冷間圧延を施して0.7mmの冷間圧延鋼帯とした後、ライン内焼鈍方式の連続溶融亜鉛めっき設備を用いて溶融亜鉛めっき鋼板と合金化溶融亜鉛めっき鋼板、溶融Zn−5%Alめっき鋼板を製造した。表1には、供試材すなわちめっき前鋼板の化学成分値を示した。
連続溶融亜鉛めっき設備の還元帯の雰囲気は、H2を10体積%含むN2ガスにH2Oを導入し、酸素分圧の対数logPOを−20に制御した.連続溶融亜鉛めっき設備での焼鈍は、800℃で行い、その最高到達温度から650℃までを平均冷却速度5℃/秒で、引き続いて650℃からめっき浴までを平均冷却速度10℃/秒で冷却し、溶融亜鉛めっき処理を行った。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造時の溶融亜鉛浴は、Alを0.12%含有する溶融亜鉛とし、ガスワイパーで亜鉛の目付量を50g/m2に調整した。また、合金化の加熱は誘導加熱方式の加熱設備を使用し、温度530℃で行い、合金化後は平均冷却速度10℃/秒で冷却した。
溶融亜鉛めっき鋼板製造時の溶融亜鉛浴は、Alを0.3%含有する溶融亜鉛とし、ガスワイパーで亜鉛の目付量を80g/m2に調整した。めっき後は平均冷却速度10℃/秒で冷却した。
溶融Zn−5%Alめっき鋼板製造時の溶融Zn−Al浴は、Alを5%含有する溶融Zn−Al浴とし、ガスワイパーで亜鉛の目付量を80g/m2に調整した。めっき後は平均冷却速度10℃/秒で冷却した。
めっき後、0.3%の圧下率の調質圧延を行い、JIS5号引張試験片を採取し引張試験を行った。引張試験結果を表1に示す。高強度と加工性が良いことを両立する鋼板として、引張強度390MPa以上、降伏比0.55以下を示す鋼板を合格とした。
鋼板のフェライト粒径は、JIS G 0551に準拠し、光学顕微鏡によって撮影した組織写真を画像解析して求めた。
また、鋼板組織の面積率は、試験片をナイタール腐食し、2000倍で板厚中央部を連続的に縦100μm×横200μmの視野をSEM観察し、フェライト相分率及びマルテンサイト相分率を測定した.硬質第2相分率は100からフェライト相分率を引いた値を使用した。
めっき中のFe%、Al%は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、ICPにより測定して求めた。
成形後の外観は、圧延方向100mm、幅方向500mmの試験片を切り出し、幅方向に5%の平面歪みを付与した後、砥石掛けを行い、観察されるゴーストラインを評価した。ゴーストラインとは、圧延方向に沿った凹凸状の線状欠陥を指し、評価は、幅2mm以上、長さ50mm以上の凸部の高さを測定し、以下の分類で○を合格とした。
○:凸部の高さが0.5μm未満のもの
△:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm未満のもの
×:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm以上のもの
評価結果は表1に示す通りである。番号30は1.5Mn%+Cr%が本発明の範囲外であるため目的とする複合組織が得られず、引張強度と降伏比が不合格であった。番号31、32は1.5Mn%+Cr%が本発明の範囲外であるため目的とする複合組織が得られず、降伏比が不合格であった。番号33、35、36はMn含有量が本発明の範囲外であるため成型後の外観が不合格であった。番号34はSi含有量が本発明の範囲外であるため、引張強度が不合格であった。番号37はAl含有量が本発明の範囲外であるため、降伏比が不合格であった。
これら以外の本発明品は、優れた加工性と高いめっき密着性が両立し、自動車用外板として使用可能な高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板であった。
Figure 0005092858
表1の8に示す成分の鋼を溶製し、次いでスラブを1150℃に加熱し、仕上温度910〜930℃で4mmの熱間圧延鋼帯とし、580〜680℃で巻き取った。酸洗後、冷間圧延を施して0.7mmの冷間圧延鋼帯とした後、CGLの熱サイクル及び雰囲気のシミュレートが可能な縦型溶融めっき装置を用いて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。めっきに際しては、焼鈍雰囲気は5%水素+95%窒素混合ガスにH2Oを導入し、酸素分圧の対数logPOを−22に制御した。また、焼鈍は、800℃で90秒行い、その最高到達温度から650℃までを平均冷却速度5℃/秒で、引き続いて650℃からめっき浴までを平均冷却速度10℃/秒で冷却し、溶融亜鉛めっき処理を行った。
溶融亜鉛浴はAlを含有する溶融亜鉛とし、ガスワイピングにより亜鉛の目付量を50g/m2に調整した。合金化の加熱は誘導加熱方式の加熱設備を使用し、合金化溶融亜鉛めっき中のFe含有量が表2に示す値となるように行った。めっき浴中のAl濃度は、合金化溶融亜鉛めっき中のAl含有量が表2に示す値となるように調整した。また、溶融めっき後は平均冷却速度10℃/秒で冷却した。
めっき処理後、0.3%の圧下率の調質圧延を行い、JIS5号引張試験片を採取し引張試験を行った結果、何れのサンプルもYS≦225MPa、TS440〜450MPa、EL38〜39%であった。また、鋼板のフェライト粒径は、何れのサンプルも8〜9μmであった。
めっきのFe含有量、Al含有量は、被膜をインヒビター入りの塩酸で溶解し、ICPにより測定した。
X線回折は、ζ相、Γ相を示すd=1.26、d=1.222のX線回折強度Iζ、IΓとSi標準板のd=3.13のX線回折強度ISiとの比Iζ/ISi、IΓ/ISiを測定した。
得られためっき鋼板はプレス成形性とめっき密着性を調査した。
プレス成形性は、プレス加工におけるめっきの摺動性を調べるため、ビード引き抜き試験を行った。試験条件を以下に示す。
・サンプル引き抜き巾:30mm
・金型:片側が肩R1mmRの角ビード(凸部は4×4mm)凸型、反対側が肩R1mmRの凹型
・押しつけ荷重:800、1000kg
・引き抜き速度:200mm/min
・塗油:防錆油塗布
プレス成形性の評価は以下の分類で評価し、×を不合格とした。
◎:押しつけ荷重1000kgfで引き抜けたもの
○:押しつけ荷重900kgfで引き抜けたが、荷重1000kgfでは破断したもの
△:押しつけ荷重800kgfで引き抜けたが、荷重900kgfでは破断したもの
×:押しつけ荷重800kgfで破断したもの
めっき密着性は、以下の条件の角筒絞り試験を行い、試験前後の質量差から剥離しためっきの質量を測定し評価した。
角筒絞り試験条件
ブランクサイズ:150×110mm
ポンチ寸法:80×40mm
ポンチ肩r:5mm
ダイス肩r:5mm
成形深さ:25mm
密着性は、以下の分類で評価し、×を不合格とした。
◎:めっき層の剥離量が50mg以下のもの
○:めっき層の剥離量が50mgを超え、150mg以下のもの
△:めっき層の剥離量が150mgを超え、300mg以下のもの
×:めっき層の剥離量が300mgを超えるもの
成形後の外観は、圧延方向100mm、幅方向500mmの試験片を切り出し、幅方向に5%の平面歪みを付与した後、砥石掛けを行い、観察されるゴーストラインを評価した.ゴーストラインとは、圧延方向に沿った凹凸状の線状欠陥を指し、評価は、幅2mm以上、長さ50mm以上の凸部の高さを測定し、以下の分類で○を合格とした。
○:凸部の高さが0.5μm未満のもの
△:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm未満のもの
×:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm以上のもの
評価結果は表2に示す通りである。番号11はめっき中のFe%が本発明の範囲外であるため、プレス成形性が不合格となった。番号12はめっき中のFe%が本発明の範囲外であるため、めっき密着性が不合格となった。番号13はめっき中のAl%が0.05未満であるため、めっき密着性が不合格となった。
これら以外の本発明品は、優れた加工性と高いめっき密着性が両立し、自動車用外板として使用可能な高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板であった。
Figure 0005092858
表3に示す成分の鋼を溶製し、次いでスラブを1150℃に加熱し、仕上温度910〜930℃で4mmの熱間圧延鋼帯とし、580〜680℃で巻き取った。酸洗後、冷間圧延を施して0.7mmの冷間圧延鋼帯とした後、CGLの熱サイクル及び雰囲気のシミュレートが可能な縦型溶融めっき装置を用いて、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造した。めっきに際しては、焼鈍雰囲気は5%水素+95%窒素混合ガスにH2Oを導入し、酸素分圧の対数logPOを−20に制御した。また、焼鈍及び冷却は表3に示すような条件で行った。合金化溶融亜鉛めっき鋼板製造時の溶融亜鉛浴は、Alを0.12%含有する溶融亜鉛とし、ガスワイパーで亜鉛の目付量を50g/m2に調整した。また、合金化の加熱は誘導加熱方式の加熱設備を使用し、温度530℃で行った。
めっき後、0.3%の圧下率の調質圧延を行い、JIS5号引張試験片を採取し引張試験を行った。引張試験結果を表3に示す。高強度と加工性が良いことを両立する鋼板として、引張強度390MPa以上、降伏比0.55以下を示す鋼板を合格とした。
鋼板のフェライト粒径は、JIS G 0551に準拠し、光学顕微鏡によって撮影した組織写真を画像解析して求めた。
また、鋼板組織の面積率は、試験片をナイタール腐食し、2000倍で板厚中央部を連続的に縦100μm×横200μmの視野をSEM観察し、フェライト相分率及びマルテンサイト相分率を測定した.硬質第2相分率は100からフェライト相分率を引いた値を使用した。
めっき中のFe%、Al%は、めっきをインヒビター入りの塩酸で溶解し、ICPにより測定して求めた。
成形後の外観は、圧延方向100mm、幅方向500mmの試験片を切り出し、幅方向に5%の平面歪みを付与した後、砥石掛けを行い、観察されるゴーストラインを評価した。ゴーストラインとは、圧延方向に沿った凹凸状の線状欠陥を指し、評価は、幅2mm以上、長さ50mm以上の凸部の高さを測定し、以下の分類で○を合格とした。
○:凸部の高さが0.5μm未満のもの
△:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm未満のもの
×:凸部の高さが0.5μm以上、1.5μm以上のもの
評価結果は表3に示す通りである。番号3、8、13、18、23は焼鈍温度から650℃までの平均冷速が本発明の範囲外であるため目的とする複合組織が得られず、降伏比が不合格であった。番号4、9、14、19、24は650℃からめっき浴までの平均冷速が本発明の範囲外であるため目的とする複合組織が得られず、降伏比が不合格であった。番号5、10、15、20、25は合金化処理後の平均冷速が本発明の範囲外であるため目的とする複合組織が得られず、降伏比が不合格であった。
これら以外の本発明品は、優れた加工性と高いめっき密着性が両立し、自動車用外板として使用可能な高強度複合組織合金化溶融亜鉛めっき鋼板であった。
Figure 0005092858

Claims (11)

  1. 質量%で、
    C:0.02〜0.3%、
    Si:0.1〜2.0%、
    Mn:1.0%未満、
    Cr:1.0超〜3.0%、
    P:0.02%以下、
    S:0.02%以下、
    Al:0.014%以下、
    N:0.001〜0.008%、
    を含有し、且つ、2.5≦1.5Mn%+Cr%、4.1−2.3Mn%−1.2Cr%≦Si%を満足し、残部Feおよび不可避不純物からなることを特徴とする溶融亜鉛めっき用鋼板
  2. さらに、質量%で、
    Co:0.01〜1%、
    Mo:0.01〜1.5%、
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき用鋼板。
  3. 請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.1〜10質量%、Fe:0.01〜0.5質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる溶融亜鉛めっき層を形成させた溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 請求項1または2に記載の溶融亜鉛めっき用鋼板にAl:0.05〜0.5質量%、Fe:7〜15質量%、残部がZnおよび不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 請求項4に記載の合金化溶融亜鉛めっき用鋼板のめっきのd=1.26、d=1.222のX線回折強度Iζ、IΓとSi標準板のd=3.13のX線回折強度ISiとの比Iζ/ISi、IΓ/ISiが、Iζ/ISi≦0.004、IΓ/ISi≦0.004であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 引張強度が390MPa以上であり、降伏比が0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
    L≧57.5−0.0467×F
    であることを特徴とする請求項3に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  7. 引張強度が390MPa以上であり、降伏比が0.55以下、引張強度F(MPa)と伸びL(%)の関係が
    L≧57.5−0.0467×F
    であることを特徴とする請求項4または5に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  8. フェライト粒径が5〜40μmであることを特徴とする請求項3または6に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  9. フェライト粒径が5〜40μmであることを特徴とする請求項4、5、7のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  10. 主相であるフェライト組織の分率が面積率で70%以上であり、面積率で1%以上15%以下のマルテンサイト組織を含有し、前記マルテンサイトを含む第2相の分率の合計が面積率で30%以下であることを特徴とする請求項3、6、8のいずれかに記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
  11. 主相であるフェライト組織の分率が面積率で70%以上であり、面積率で1%以上15%以下のマルテンサイト組織を含有し、前記マルテンサイトを含む第2相の分率の合計が面積率で30%以下であることを特徴とする請求項4、5、7、9のいずれかに記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
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