JP5644059B2 - 合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 - Google Patents

合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法 Download PDF

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本発明は、合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。より具体的には、主として、家電、建材、及び、自動車等の分野で用いられる、合金化溶融亜鉛めっき鋼板及びその製造方法に関する。
近年、家電、建材、及び、自動車等の分野において溶融亜鉛めっき鋼板が大量に使用されており、とりわけ、経済性、防錆機能、塗装後の性能等の点で優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板が、広く用いられている。
この合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、通常、次のようにして製造される。鋼板を溶融めっき前に予熱炉において加熱し、露点を−20℃〜−40℃に調整したH+Nの還元雰囲気中で焼鈍し、次いでめっき浴温前後に冷却した後、溶融亜鉛めっきを施す。そして、この溶融亜鉛めっきを施した鋼板を、熱処理炉において鋼板温度が480℃〜600℃となる条件で30秒間に亘って加熱することにより、Fe−Zn合金めっき層を形成する。
合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下において、単に「鋼板」ということがある。)をプレス加工する場合、めっき表層に、Fe含有量が比較的低い軟質な合金層(ζ相)が備えられると、めっき表層と金型表面との凝着現象等により、めっき剥離(以下において、「フレーキング」という。)や鋼板のプレス割れ等が生じることがある。これに対し、めっき層中のFe含有量が高い場合には、鋼板とめっき層との界面近傍に硬質なΓ、Γ1、δ1c相が形成されるため、鋼板をプレス加工する場合にめっき層の粉化(以下において、「パウダリング」という。)が発生しやすくなる。パウダリングが発生すると、金型に剥離片が付着して押し込み疵が生じることになる。
一方、非特許文献1には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を自動車車体に適用する際の問題点として、合金化溶融亜鉛めっき鋼板は他のめっき鋼板と比較して耐チッピング性に劣ることが挙げられている。これは、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層と母材との界面に、硬質なFe−Znの金属間化合物層が厚く形成されるため、他のめっき種に比べ、めっき層−母材界面の界面密着強度が低いことによると考えられる。
このような問題点を解決するため、これまで、合金化溶融亜鉛めっき鋼板に関して様々な提案がなされてきている。例えば、特許文献1には、目付量45〜90g/mのめっき層を少なくとも片面に有する耐パウダリング性及び耐フレーキング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。特許文献1で開示されている鋼板では、めっき層中のFe含有量を8〜12%、同Al含有量を0.05〜0.25%に管理して、めっき層表面にη相及びζ相を存在させず、母材とめっき層との界面のΓ相を1.0μm以下にしている。
また、特許文献2には、皮膜中のFe含有量が8〜12%となるように合金化処理を行う合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法において、亜鉛めっき浴中のAl量を0.13%以上に管理するとともに、母材となる鋼板の侵入材温と浴中Al量とを制御してめっきを行い、めっき後に高周波誘導加熱炉出側の板温を適正範囲に管理して所定時間保持後に冷却する、プレス成形性及び耐パウダリング性に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。
さらに、特許文献3には、母材の化学組成が質量%でC:0.01%以下、Si:0.03〜0.3%、Mn:0.05〜2%、P:0.017〜0.15%、Al:0.005〜0.1%、Ti:0.005〜0.1%、Nb:0.1%以下、B:0.005%以下、残部はFe及び不可避的不純物からなり、めっき層が接している母材表面の平均結晶粒径が12μm以下であることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法が提案されている。
また、特許文献4には、母材となる鋼板の化学組成が、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.02〜0.70%、Mn:0.50〜3.0%、P:0.005〜0.10%、S:0.1%以下、sol.Al:0.10〜2.0%、N:0.01%以下で、且つ、Si(%)+Al(%)≧0.5を満足すると共に残部がFeおよび不純物から成り、母材がオーステナイト相を体積%で1%以上含有し、さらに、めっき皮膜は、Fe濃度が8質量%以上15質量%以下であり、且つ、めっき皮膜におけるΓ相平均厚み:2μm以下、厚み方向の最大Γ1相長さ:1.5μm以下であって、最大Γ1相長さ/Γ相厚み≦1.0の関係を満足する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。さらに、特許文献4では、当該鋼板に、750〜870℃で還元焼鈍を行い、次いで350〜550℃の温度に20s以上滞留させ、その後、溶融亜鉛めっきを行ってから、特定の合金化温度及び滞留時間で合金化処理を行う合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が開示されている。特許文献4にかかる発明では、母材となる鋼板中にオーステナイト(γ)相を1体積%以上残存させることによって、当該鋼板に優れた局部延性及び高強度を付与している。そして、皮膜中のFe量を8〜15質量%に規定するとともに、めっき層におけるΓ相平均厚みを2μm以下、厚み方向の最大Γ1相長さを1.5μm以下、そして、最大Γ1相長さとΓ相厚みとの比を1.0以下に規定することによって、耐パウダリング性を改善している。
また、特許文献5には、質量%で、C:0.05〜0.20%、Si:0.01〜1.50%、Mn:0.5〜3.0%、P:0.05%以下、S:0.01%以下、Al:0.01〜2.0%、N:0.01%以下、且つ、Si(%)+Al(%)≧0.5を満足し、残部不純物およびFeから成る化学組成を有する、オーステナイト相を体積%で1%以上含有し、引っ張り強度Ts(MPa)×伸びEl(%)≧20000を満たす鋼板を母材とし、上記鋼板を、あらかじめ、780〜870℃で焼鈍した後、さらに、700℃から550℃までの温度範囲を平均30℃/s以上の冷却速度で冷却し、次いで、350〜550℃の温度範囲に20s以上滞留させ、そして常温まで冷却し、得られた母材に、Ni、Fe、Cu及びCoのうち1種または2種以上を付着させ、再び、780〜870℃で5〜500s滞留させて還元焼鈍を行い、そのときの到達温度からめっき浴温度近傍まで冷却してから、めっきを行い、520℃以下で合金化処理を行い、7〜15%のFe濃度の皮膜を形成させることを特徴とする合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法が提案されている。特許文献5にかかる発明では、母材となる鋼板中にオーステナイト(γ)相を体積%で1%以上含有させることによって、母材となる鋼板に引張り強度Ts(MPa)×伸びEl(%)≧20000を満足する高強度と高延性とを付与している。そして、皮膜中のAl量を0.20〜0.40%、同Fe量を8〜15%に規定して、1回目の焼鈍後のNi、Cu、Co量を増加させ、合金化を促進させることで、耐パウダリング性及び耐フレーキング性を改善している。
また、特許文献6には、加工性及びめっき密着性等に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板として、質量%で、C:0.0001〜0.004%、Si:0.001〜0.1%、Mn:0.01〜0.5%、P:0.001〜0.015%、S:0.015%以下、Al:0.1〜0.5%、Ti:0.002〜0.1%、N:0.0005〜0.004%を含有し、必要に応じて、さらに、質量%で、Nb:0.002〜0.1%を含有し、さらに、B:0.0002〜0.003%を含有させた合金化溶融亜鉛めっき鋼板を開示しており、さらに、Al:0.05〜0.5%、Fe:7〜15%、残部がZn及び不可避的不純物からなる合金化溶融亜鉛めっき層を形成させることが提案されている。
また、特許文献7には、鋼板表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、鋼板が、質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.02〜0.20%、Mn:0.5〜3.0%、S:0.01%以下、P:0.035%以下、及び、sol.Al:0.01〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有し、且つ、合金化亜鉛めっき層が、質量%で、Fe:10〜15%、及び、Al:0.20〜0.45%を含有し、残部がZn及び不純物からなる化学組成を有するとともに、鋼板と合金化亜鉛めっき層との界面密着強度が20MPa以上である高張力合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
また、特許文献8には、鋼板母材の表面に合金化溶融亜鉛めっき層を備え、鋼板母材が、質量%で、C:0.25%以下、Si:0.030〜0.15%、Mn:0.030〜3.0%、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10〜0.80%、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有し、合金化溶融亜鉛めっき層に、質量%で、Fe:8.0〜15%、及び、Al:0.080〜0.50%が含有されるとともに、η相が存在せず、合金化溶融亜鉛めっき層と鋼板母材との界面剥離部における、鋼板母材側の粒径剥離面積率が5.0%以上である、合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
特開昭64−68456号公報 特開平4−276053号公報 特開平10−81948号公報 特開2002−30403号公報 特開2002−47535号公報 特開2003−96540号公報 特開2006−97102号公報 特開2007−314858号公報 日本接着協会誌、Vol.25、No.8、p.306(1989)
ところで、最近は、自動車車体を製造する際の鋼材の接合技術として、溶接ではなく接着剤による接合(以下において、「接着」という。)が適用される部位が増加してきている。しかしながら、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を接着構造部材に適用した場合、他のめっき鋼板に比べ、接着強度が低い。具体的には、他のめっき鋼板では接着剤自身の凝集破壊が生じるのに対し、合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、めっき層−鋼板母材界面での剥離が生じやすい。この理由は、前述したように、合金化溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層−鋼板母材界面の界面密着強度(以下において、単に「界面密着強度」という場合は、めっき層−鋼板母材界面の密着強度を意味する。)が低いため、当該界面で剥離が生じることによる。耐チッピング性や、耐パウダリング性の改善においても、界面密着強度を高くすることが有効であり、接着構造材料として適合する場合はより高い界面密着強度が求められる。
ここで、特許文献1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板や、特許文献2に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法によって得られる合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板に関して、めっき層中の合金相を規定している。ところが、めっき層中の合金相は、耐フレーキング性や耐パウダリング性には影響するものの、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の界面密着強度向上にはほとんど影響しない。したがって、特許文献1や特許文献2に記載の技術では、高い界面密着強度を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られ難いという問題があった。
また、特許文献3には、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の耐チッピング性を改善する手段として、鋼板母材にSiを0.03〜0.3%添加することが記載されている。鋼板母材にSiを含有させることは、界面密着強度の改善に有効であるが、鋼板母材のSi含有量を多くすると、合金化速度が遅くなり、生産性が低下する虞がある。また、Siは、一般に、鋼板の強度を高める一方で、伸びを低下させ、成形性を低下させる元素である。したがって、鋼板に成形性が要求される場合等には、そもそも鋼板母材にSiを多量に含有させることができず、特許文献3に記載の技術によっても、高い界面密着強度を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られ難いという問題があった。
また、特許文献4や特許文献5で提案された合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、鋼板母材のSi含有量及びP含有量が比較的多い鋼種である上に、その製造のために複雑な還元焼鈍ヒートパターンで熱処理を行う必要がある。さらに、特許文献4や特許文献5で提案された合金化溶融亜鉛めっき鋼板を得るためには、長い合金化処理時間が必要とされる。したがって、特許文献4や特許文献5に記載の技術では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の生産性が低下しやすいという問題があった。
また、特許文献6では、鋼板母材のAl含有量を多くすることにより、鋼板の強度をほとんど上昇させずに合金化速度を遅くし、鋼板の加工性とめっき密着性とを満足することができる、としている。しかしながら、特許文献6における密着性とは、その従来技術欄の記載や実施例の評価方法(鋼板のV字曲げ)等から見て、耐パウダリング性を意味するものであり、特許文献6では、界面密着強度の向上について言及していない。特許文献6に記載の技術では、高い界面密着強度を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板が得られ難いという問題があった。
また、特許文献7では、鋼中Si濃度と被膜形状を規定することにより被膜の密着強度の向上を図っているが、製造工程中の酸化工程が考慮されておらず、界面密着強度にバラツキが生じるという問題があった。
また、特許文献8では、固溶Si及びAlを確保するために熱延時の巻取温度を600℃以下に管理することが記載されているが、このような温度で巻き取ると熱延荷重が高くなり操業性を阻害する虞がある。また、特許文献8では、次工程以降の酸化抑制も考慮されていないため安定した皮膜密着性が得られない虞があるという問題があった。
そこで、本発明は、成形性を備えながら界面密着強度を向上させることが可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板、及び、生産性を向上させることが可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、成形性を備えながら界面密着強度を向上させるには、めっき直前の工程まで鋼板表面に固溶Siを含有させることが重要であることを知見し、溶融めっきラインの雰囲気制御に着目した。また、鋼板表層部の脱炭層は内部酸化の指標となりめっき密着性とも十分に相関があることを知見し、鋼板表層部の脱炭層を適正範囲に管理することにより、界面密着強度を確保できることも知見した。本発明は、このような新たな知見に基いてなされたものである。
以下、本発明について説明する。
本発明の第1の態様は、質量%で、C:0.030%以上0.25%以下、Si:0.030%以上0.20%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、且つ、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼板母材の表面に、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.15%以上0.50%以下を含有する合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、合金化溶融亜鉛めっき層と鋼板母材との界面から5μm以内の鋼板母材中の炭素濃度を質量%でC1%、合金化溶融亜鉛めっき層と鋼板母材との界面から200μm以上内部の鋼板母材中の炭素濃度を質量%でC2%とするとき、C1及びC2がC1≧C2−0.030を満たすことを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板である。
ここに、「sol.Al:0.10%以上0.80%以下」とは、鋼板母材に、固溶状態のAlが、0.10%以上0.80%以下含まれることをいう。
また、上記本発明の第1の態様において、鋼板母材中には、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び、Nb:0.0040%以上0.50%以下の何れか一方又は両方が含有され、さらに、B:0.0050%以下が含有されることが好ましい。
本発明の第2の態様は、質量%で、C:0.030%以上0.25%以下、Si:0.030%以上0.20%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、且つ、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼スラブを熱間圧延して鋼板とする熱間圧延工程と、該熱間圧延工程で熱間圧延された鋼板を650℃以下の温度で巻き取る巻き取り工程と、該巻き取り工程後に鋼板を酸洗する酸洗工程と、該酸洗工程後に鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、該冷間圧延工程後に冷間圧延された鋼板を還元雰囲気且つ露点−40℃未満の雰囲気で焼鈍する還元焼鈍工程と、該還元焼鈍工程で焼鈍された鋼板を質量%で0.080%以上0.15%以下のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する浸漬工程と、該浸漬工程後に、鋼板の表面の亜鉛付着量を制御する付着量制御工程と、該付着量制御工程後に、鋼板を、530℃以下の温度で合金化処理する合金化処理工程と、を備え、該合金化処理工程において、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下を含有する合金化溶融亜鉛めっき層が形成されることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
また、上記本発明の第2の態様において、鋼スラブには、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び、Nb:0.0040%以上0.50%以下の何れか一方又は両方が含有され、さらに、B:0.0050%以下、が含有されることが好ましい。
本発明によれば、成形性を備え、且つ、めっき層と鋼板母材との界面密着強度を向上させることが可能な、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、及び、生産性を向上させることが可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することができる。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法流れを示すフローチャートである。 ハット成形試験の模式図である。図2(a)はハット成形試験装置の一部を拡大して示す模式図である。図2(b)は成形後の供試材を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
1.合金化溶融亜鉛めっき鋼板
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板について、詳細に説明する。以下、「%」は、特に断りがない限り、「質量%」を意味する。また、以下において、「質量%でX%以上Y%以下」を「X〜Y%」、「質量%でZ%以下」を「≦Z%」と表記することがある。また、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板を単に「鋼板」と表記し、表面にめっき層が備えられる(形成される)鋼板母材を「母材」と表記する。
1.1.母材
(1)C:0.030〜0.25%
本発明の鋼板は、例えば、440MPa以上のハイテン母材を対象としたものであり、Cは低コストで強度向上に有効な元素である。強度向上の効果を十分に得られるようにするため、C含有量は0.030%以上とする。好ましくは、0.050%以上である。一方、切断や打ち抜き部の亀裂進展が大きくならないようにするため、C含有量は0.25%以下とする。好ましくは、0.20%以下である。
(2)Si:0.030〜0.20%
Siは、合金化処理工程において、めっき層と母材との界面密着強度を増加させる重要な元素である。母材にSiが含有されることによる界面密着強度の増加メカニズムとして、「鉄と鋼、Vol.89、No.1(2003)、第46頁〜第53頁」には、Si含有により、合金化時にめっき層中のZnが母材の粒界へ拡散するのを助長し、母材とめっき層との界面の凹凸を増加させるとともに、剥離径路が迂回されてエネルギーが吸収されるためであることが提案されている。
界面密着強度の向上効果を十分に得られるようにするため、Si含有量は0.030%以上とする。好ましくは、0.050%以上である。一方、鋼板の成形性に悪影響を及ぼさないようにする、また、合金化速度の著しい低下による合金化処理時間の長時間化を抑制して、生産性の低下及び設備の長大化を防ぐ観点から、Si含有量は0.20%以下とする。好ましくは、0.15%以下である。
(3)Mn:0.030〜3.0%
鋼板の脆化を抑制するため、Mn含有量は3.0%以下とする。好ましくは、2.5%以下である。さらに、伸びの過度の低下や、TiCの析出を低減して降伏点が必要以上に上昇することを防止する観点から、1.5%以下とすることがより好ましい。一方、母材の脆化を抑制するため、Mn含有量は0.030%以上とする。
(4)P:≦0.050%
Pは、本発明においては不純物であり、その含有量は少ないほど良い。伸びが小さくなる等、鋼板の成形性に悪影響を及ぼさないようにする、また、合金化速度の著しい低下による合金化処理時間の長時間化を抑制して、生産性の低下及び設備の長大化を防ぐ観点から、P含有量は0.050%以下とする。好ましくは、0.030%以下である。
(5)S:≦0.010%
Sは、本発明においては不純物であり、その含有量は少ないほど良い。MnSの多量の析出に起因する鋼板の延性低下を抑制するため、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは、0.0050%以下である。
(6)sol.Al:0.10〜0.80%
Alは、Siと同様に、めっき層と母材との界面密着強度を増加させる重要な元素である。その効果を発現させるため、Alは固溶状態で0.10%以上含有させる。好ましくは、0.20%以上である。一方、Alを固溶状態で多量に含有させても、その効果は飽和する。また、めっきライン通板時に鋼帯同士を溶接する場合の溶接性の低下を抑制する観点から、固溶状態のAl含有量は0.80%以下とする。sol.Alの好ましい含有量は、0.20〜0.60%である。
(7)N:≦0.0060%
Nは、鋼板の成形性を低下させるため、少ないほど良い。N含有量は0.0060%以下とする。
(8)Ti:0.0040〜0.50%、Nb:0.0040〜0.50%、B:≦0.0050%
これらの元素は、任意添加元素である。Ti及び/又はNbを0.0040%以上0.50%以下添加することにより、Cを炭化物、Nを窒化物として固定し、鋼板の成形性を向上させることが可能になる。ただし、Cの含有量が少なく、Ti及び/又はNbを添加した鋼板を成形した成形品は、低温で加工変形応力とは異なる方向の衝撃応力を加えられると、簡単に割れてしまうことがある。そこで、かかる割れを防止するため、Ti及び/又はNbとともに、Bを微量(0.0050%以下)添加することが好ましい。
本発明において、鋼板母材の、上記元素を除く化学組成は、Fe及び不可避的不純物である。ただし、上記元素のほか、本発明の鋼板には、Mo、Cr、Cu、Ni、Cu、V等を少量含有させることも可能である。また、本発明において、鋼板の集合組織は特に限定されない。強度よりも成形性を重視する場合、母材はフェライト組織とし、再結晶が十分に進行しているものが好ましい。
(9)C1≧C2−0.030
鋼板表層部の脱炭は、鋼板表面から酸素が拡散浸透した結果である。十分な界面密着強度を確保するため、めっき層と母材との界面から5μm以内の母材中の炭素濃度C1(%)は、めっき層と母材との界面から200μm以上内部の母材中の炭素濃度C2(%)よりも0.030%以上低下しないようにする。より好ましくは、C1≧C2−0.020である。
1.2.めっき層
(1)Fe:8.0〜15%
合金化度の目安として、めっき層のFe含有量は、8.0%以上とする。好ましくは、9.0%以上である。合金化が不足すると、めっき層表層部にη相が局所的に残存し、プレス成形時に金型との焼きつきが生じやすくなるほか、鋼板表面に配設される接着剤とめっき層との界面における接着強度が低下し、当該界面で剥離が生じやすくなる。一方、耐パウダリング性の低下を抑制する、また、合金化の所要時間を低減して生産性を向上させやすくする観点から、めっき層のFe含有量は15%以下とする。好ましくは、14%以下、より好ましくは10%未満である。
(2)Al:0.15〜0.50%
めっき付着量の制御を容易にするため、めっき層のAl含有量は0.15%以上とする。一方、合金化速度の低下を抑制して鋼板の生産性低下を抑制する観点から、めっき層のAl含有量は0.50%以下とする。めっき層に含有されるAlは、後述するめっき浴中のAl濃度でほぼ決定されるが、めっき付着量や母材のAlによっても若干変動する。本発明では、Alを多く含有する母材をめっき基材として用いるので、Al含有量の少ない母材を基材に用いた場合と比較して、Alの含有量が多くなる傾向がある。本発明において、めっき層のAl含有量は、めっき付着量が片面あたり40g/m〜60g/m程度の場合、0.20%以上0.40%以下とするのが好ましい。
2.合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法
図1は、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法(以下において、「本発明の製造方法」という。)の流れを示すフローチャートである。図1に示すように、本発明の製造方法は、熱間圧延工程(工程S1)と、巻き取り工程(工程S2)と、酸洗工程(工程S3)と、冷間圧延工程(工程S4)と、還元焼鈍工程(工程S5)と、浸漬工程(工程S6)と、付着量制御工程(工程S7)と、合金化処理工程(工程S8)とを有し、工程S1〜工程S8を経て、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板が製造される。以下、工程毎に説明する。
(1)工程S1
工程S1は、C:0.030〜0.25%、Si:0.030〜0.20%、Mn:0.030〜3.0%、P:≦0.050%、S:≦0.010%、N:≦0.0060%、及び、sol.Al:0.10〜0.80%、且つ、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼スラブ(以下において、単に「鋼スラブ」という。)を熱間圧延して鋼板とする工程である。工程S1は、例えば、鋼スラブを加熱炉で加熱し、粗圧延機及び仕上圧延機にて熱間圧延する過程を経て、鋼スラブを帯状の鋼板(ストリップ)にする形態、とすることができる。
(2)工程S2
工程S2は、上記工程S1で熱間圧延された鋼板を、巻取機を用いてコイルに巻き取る工程である。コイルに巻き取る際のコイル巻き取り温度は、内部酸化を防止する意味で操業に支障を与えない程度に低温とするのが好ましい。このため、工程S2では、コイル巻き取り温度を650℃以下とする。一方、操業性を阻害しないようにする等の観点から、コイル巻き取り温度は600℃以上とすることが好ましい。
(3)工程S3
工程S3は、上記工程S2の終了後に、鋼板を酸洗する工程である。上記工程S2で巻き取られた鋼板(鋼帯)は、表面にスケールが形成されている。それゆえ、このスケールを除去するため、鋼板を酸洗する。工程S3で使用する酸は、塩酸と硫酸が主流である。また、過酸洗を防止するため、ごく少量の抑制剤(例えば、酸腐食抑制剤(朝日化学工業株式会社製のイビット710N等)等)を添加することができる。
(4)工程S4
工程S4は、上記工程S3で酸洗された鋼板を、冷間圧延する工程である。上記工程S3でスケールを除去された鋼板は、引き続き、熱延鋼板から所定の板厚の冷延母材を得るために、冷間圧延が施される。モーターパワー、各スタンドの速度範囲、形状、板厚変動、及び、作業性等の観点から、工程S4における総圧下率は40%以上95%以下とすることが好ましい。
(5)工程S5
工程S5は、上記工程S4で冷間圧延された鋼板を、還元雰囲気且つ露点−40℃未満の雰囲気で焼鈍する工程である。上記工程S4を経た母材には、圧延油や鉄粉が付着している。それゆえ、めっき外観を向上させる等の観点から、冷間圧延工程後の鋼板を焼鈍する前に、アルカリ脱脂槽へ入れてアルカリ脱脂することにより、洗浄しても良い。本発明の製造方法では、上記工程S4の後、又は、上記工程S4及びアルカリ脱脂の後に、水素を5.0〜20%含有する窒素還元雰囲気下で、鋼板を必要な温度(例えば、820℃)まで上昇させることにより、還元焼鈍を行う。この場合、Feに対して還元雰囲気であるが、易酸化元素については酸化雰囲気であり、雰囲気中の露点が高くなった場合には、これら元素は内部酸化に移行し固溶Siが消費されてしまうことになる。
本発明の製造方法では、後述する合金化処理工程において、母材のSiやAlの効果により、母材の結晶粒界へZnの侵入を助長し、めっき層と母材との界面密着強度を向上させる。そのため、母材に含まれるSi及びAlは、固溶状態で存在することが好ましい。本発明の製造方法では、工程S5において雰囲気中の露点を低めに設定することで、母材内部でのSi、Alの酸化が抑制されると考えられる。
工程S5において、めっき密着性に十分な固溶Siを確保するため、雰囲気の露点は−40℃未満とする。より好ましくは、−45℃未満である。雰囲気の露点の下限は特に限定されるものではないが、大量の還元ガスを導入する必要があるため、−60℃以上とすることが好ましい。
(6)工程S6
工程S6は、上記工程S5で還元焼鈍された鋼板を、0.080〜0.15%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する工程である。工程S6は、例えば、上記工程S5を経た鋼板を、めっき浴温近傍(例えば、470℃程度)まで冷却した後、めっき浴へ浸漬する形態とすることができる。めっき付着量の制御を行いやすくするため、めっき浴中のAl濃度は0.080%以上とする。好ましくは、0.090%以上である。一方、めっき層−母材界面へのFe−Al合金層の形成を抑制することにより、後述する工程S8で所定の合金化度を得るために必要とされる処理時間を低減し、生産性の低下を抑制するため、めっき浴中のAl濃度は、0.15%以下とする。好ましくは、0.14%以下である。
めっき浴への浸漬時間は、1秒以上であれば、性能、操業性を阻害しない。その他のめっき条件は、一般的に採用されているものを用いることができる。例えば、めっき浴温は450℃以上470℃以下、侵入材温(還元焼鈍工程後に冷却された後の温度)は450℃以上480℃以下とすることができる。また、めっき浴中のAl以外の成分として、不可避的不純物であるFe、Pb、Cd、Cr、Ni、W、Ti、Mg、Si、Mn、Sn、Asのそれぞれが、0.10%以下含有されていても良い。不可避的不純物のそれぞれが0.10%以下含有されていても、鋼板の性能はほとんど変わらない。
(7)工程S7
工程S7は、上記工程S6の終了後に、鋼板の表面の亜鉛付着量を制御する工程である。工程S7は、例えば、鋼板の表面の亜鉛付着量が、一般に製品として用いられる25g/m以上70g/m以下となるように、めっき層の付着量を制御する工程とすることができる。
(8)工程S8
工程S8は、上記工程S7を経た鋼板を、530℃以下の温度で合金化処理することにより、Fe:8.0〜15%、及び、Al:0.080〜0.50%を含有する合金化溶融亜鉛めっき層を形成する工程である。工程S8において、合金化処理温度を高くすると、母材の結晶粒内へのZnの拡散速度が大きくなり、Znが粒界よりも粒内へ拡散しやすくなる。その結果、めっき層と母材との界面密着強度が低下する。そのため、めっき層と母材との界面密着強度の低下を抑制する観点から、合金化処理温度は530℃以下とする。好ましくは、520℃以下である。一方、合金化処理温度が低いと、Znの拡散速度が小さくなり、合金化処理時間が長くなる。かかる場合であっても、η相が存在しない程度にまで合金化処理を行えば、優れた界面密着強度を有する鋼板が得られる。しかし、生産性の低下を防止する観点から、合金化処理温度は470℃以上とすることが好ましい。より好ましくは、480℃以上である。
本発明において、合金化処理温度に達するまでの昇温速度、合金化処理温度での保持時間、及び、保持後の冷却速度等は、特に制限されない。合金化処理における加熱手段は、上記形態のめっき層を形成可能であれば、輻射加熱、高周波誘導加熱、通電加熱等、何れの手段によっても良い。
(9)後処理工程
上記工程S1〜工程S8を経て製造された鋼板の表面には、必要に応じて、防錆処理(例えば、クロメート処理やクロムフリー処理等)、リン酸塩処理、樹脂皮膜塗布等の後処理を施すことができ、防錆油を塗布することも可能である。
少なくとも上記工程S1〜工程S8を備える本発明の製造方法では、母材(スラブ)の化学組成を限定し、めっき浴のAl濃度を特定し、さらに、合金化処理温度を限定することで、生産性の低下を防止している。本発明の製造方法によって製造した鋼板は、優れた界面密着強度を有し、成形性が要求される用途にも用いることができる。
以下、実施例を示しつつ、本発明についてさらに具体的に説明する。
1)供試材の作製
表1に、今回使用した供試材の化学組成をあわせて示す。表1において、添加しなかった元素の欄には「−」と記載した。また、本発明の技術的範囲に含まれる供試材を「本発明例」、本発明の技術的範囲に含まれない供試材を「比較例」とした。
Figure 0005644059
表1に示した化学組成を実験室にて溶製、鋳造し、板厚30mmのスラブを作製した。当該スラブを大気中(1150℃)で1時間に亘って保持し、粗圧延及び仕上圧延に供した。仕上圧延は950℃で行い、大気中にて巻き取り温度630℃で巻き取った。熱延仕上げ厚みは、4.5mmとした。かかる厚さに調整した鋼板を酸洗後、板厚が1.6mmとなるまで冷間圧延を行った。縦型溶融亜鉛めっき装置を用い、冷間圧延後の鋼板に対して、以下の条件でめっきを施した。まず、板厚1.6mmの鋼板を75℃のNaOH溶液で脱脂洗浄し、雰囲気ガスがN+10%H(露点は−60〜−30℃を採用)、雰囲気温度830℃の還元雰囲気中で、1分間に亘って焼鈍した。焼鈍後、めっき浴温近傍(470℃)まで鋼板を冷却し、浴中Al濃度0.070〜0.15%、浴温460℃の溶融亜鉛めっき浴に3秒間浸漬した後、ワイピング方式により、めっき付着量を調整した。その後、赤外線加熱装置を用いて合金化処理温度を適宜変更しながら、鋼板に合金化処理を施した。合金化処理後の片面あたりのめっき付着量は、後述する表2の供試材20を除き、50g/mであった(供試材20は、付着量を約60g/mより少なくするのが困難であった。そのため、後述の性能評価を行わなかった。)。また、表2の供試材22は、合金化処理時間を短くして、めっき皮膜中にη層を残した。
上記手順により得られた供試材に対し、以下に示す方法で分析・評価を行った。その結果を、焼鈍露点、浴中Al濃度、及び、合金化温度等の値とともに、表2に併せて示す。なお、表2の鋼種欄の数字は、表1の鋼種欄の数字と対応している。すなわち、表2の鋼種欄に「1」と記載されている場合には、表1の鋼種欄に「1」と記載されている供試材を用いて、以下の分析・評価を行ったことを意味している。
2)分析、評価
2−1)めっき層の組成分析
合金化処理後の供試材から、25mmφの試料片を採取し、0.50体積%インヒビター(商品名「イビット710N」、朝日化学工業株式会社製)を含有した10%HCl水溶液でめっき層を溶解し、これを、誘導結合プラズマ(ICP)法で分析することにより、めっき層の組成を分析した。分析結果(「Fe濃度(%)」及び「Al濃度(%)」)を表2に示す。
2−2)母材表層部のC濃度分布の分析(GDS)
鋼板界面からの深さ方向の距離を明確にするため、上記皮膜溶解後の母材を水洗後、十分に乾燥してGDS分析供試材とした。深さ方向の炭素の分析条件については、装置はマーカス型高周波グロー放電発光分析装置(JY−5000RF)を使用し、放電面積は4mmφ、RF出力は35W、アルゴン圧は600Paとした。また、めっき層と母材との界面から深さ200μmまでの分析も実施し、めっき層と母材との界面から5μm以内の母材中の炭素濃度C1と、めっき層と母材との界面から200μm以上内部の母材中の炭素濃度C2との差を導出した。結果を表2に示す。
2−3)剪断引張強度
合金化処理後の供試材を、長手方向が圧延方向となるように、20mm×100mmに裁断し、サンスター社製の一液加熱硬化型エポキシ接着剤を用い、重ね代:12.5mm、接着剤膜厚:200μm、焼付条件:170℃×30分間、引張速度:5.0mm/min、及び、温度:−30℃の条件で、長手方向に引張試験を実施した。引張試験で測定した界面密着強度の結果を、表2に示す。
2−4)プレス成形試験
合金化処理後の供試材を、長手方向が圧延方向となるように、30mm×100mmに裁断したサンプルに、防錆油(商品名「550HN」、日本パーカライジング株式会社製)を刷毛塗りし、ブランクホルダー圧フリー(ダイスとポンチとの間に板厚以上のスペースを確保)のハット成形試験を室温で行った。ハット成形試験の模式図を図2に示す。ここで、「ハット成形試験」とは、図2(a)に試験装置の一部を拡大して示すように、所定の間隔を開けて備えられるダイ31の上に、成形前の供試材32を載せ、当該供試材32の上方からポンチ33を下方へと移動させることにより、成形された供試材34(図2(b)参照)とする試験を意味する。このようにして供試材34へと成形した後、供試材34の縦壁部35にテープ(JIS Z−1522に準ずる、ニチバン株式会社製のセロテープ。「セロテープ」はニチバン株式会社の登録商標。)を貼り、その後、当該テープを剥離して、テープ剥離後の成形品の質量を測定した。そして、テープ剥離後の成形品の質量と、成形前の供試材31の質量とを比較することにより、1サンプルあたりのめっき層の剥離量を算出した。その他の条件は、ポンチ平行部:28mm、ダイス平行部:30mm、ポンチ肩R:3.0mm、ダイス肩R:5.0mm、成形速度:60mm/minとした。剥離量の結果を、表2に示す。
Figure 0005644059
3)結果
表2に示すように、本発明例の供試材は、界面密着強度が25MPaを超え、合金化が遅延しなかった。一方、供試材1、供試材6、供試材7、供試材16、及び、供試材26は、本発明例の供試材と比較して界面密着強度が低く、剥離量が多かった。また、供試材5、及び、供試材21は、合金化が遅延した。また、めっき層のFe含有量(皮膜Fe濃度)が15%を超えた供試材24、及び、供試材26では、剥離量が40mgを超えた。また、供試材20は、前述したように目的のめっき付着量に制御することが困難であったため、性能を評価しなかった。また、供試材22は、今回の実験では表2に示す性能は比較的良好であったが、めっき皮膜中にη相が残存しているため、金型との焼き付きやめっき面における接着剤の剥離が生じやすいことが懸念される(実際、別の機会の同様の実験では、プレス成形時の型カジリやめっき−接着剤界面での剥離が生じた。)。
以上より、本発明によれば、成形性を備え、且つ、めっき層と鋼板母材との界面密着強度を向上させることが可能な、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、及び、生産性を向上させることが可能な合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法を提供することができた。
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、家電や自動車等の分野で用いることができる。
S1…熱間圧延工程
S2…巻き取り工程
S3…酸洗工程
S4…冷間圧延工程
S5…還元焼鈍工程
S6…浸漬工程
S7…付着量制御工程
S8…合金化処理工程
31…ダイ
32…成形前の供試材
33…ポンチ
34…成形後の供試材
35…縦壁部

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.030%以上0.25%以下、Si:0.030%以上0.20%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、且つ、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼板母材の表面に、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.15%以上0.50%以下を含有する合金化溶融亜鉛めっき層を備える合金化溶融亜鉛めっき鋼板であって、
    前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面から5μm以内の前記鋼板母材中の炭素濃度を質量%でC1%、前記合金化溶融亜鉛めっき層と前記鋼板母材との界面から200μm以上内部の前記鋼板母材中の炭素濃度を質量%でC2%とするとき、C1及びC2がC1≧C2−0.030を満たすことを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記鋼板母材中には、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び、Nb:0.0040%以上0.50%以下の何れか一方又は両方が含有され、さらに、B:0.0050%以下が含有されることを特徴とする、請求項1に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 質量%で、C:0.030%以上0.25%以下、Si:0.030%以上0.20%以下、Mn:0.030%以上3.0%以下、P:0.050%以下、S:0.010%以下、N:0.0060%以下、及び、sol.Al:0.10%以上0.80%以下、且つ、残部がFe及び不可避的不純物からなる化学組成を有する鋼スラブを熱間圧延して鋼板とする熱間圧延工程と、
    前記熱間圧延工程で熱間圧延された前記鋼板を650℃以下の温度で巻き取る巻き取り工程と、
    前記巻き取り工程後に前記鋼板を酸洗する酸洗工程と、
    前記酸洗工程後に前記鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程と、
    前記冷間圧延工程後に冷間圧延された前記鋼板を還元雰囲気且つ露点−40℃未満の雰囲気で焼鈍する還元焼鈍工程と、
    前記還元焼鈍工程で焼鈍された前記鋼板を質量%で0.080%以上0.15%以下のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴へ浸漬する浸漬工程と、
    前記浸漬工程後に、前記鋼板の表面の亜鉛付着量を制御する付着量制御工程と、
    前記付着量制御工程後に、前記鋼板を、530℃以下の温度で合金化処理する合金化処理工程と、を備え、
    前記合金化処理工程において、質量%で、Fe:8.0%以上15%以下、及び、Al:0.080%以上0.50%以下を含有する合金化溶融亜鉛めっき層が形成されることを特徴とする、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  4. 前記鋼スラブには、質量%で、Ti:0.0040%以上0.50%以下、及び、Nb:0.0040%以上0.50%以下の何れか一方又は両方が含有され、さらに、B:0.0050%以下、が含有されることを特徴とする、請求項3に記載の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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