JP2903732B2 - 合金化溶融Znめっき鋼板 - Google Patents

合金化溶融Znめっき鋼板

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JP2903732B2
JP2903732B2 JP2744991A JP2744991A JP2903732B2 JP 2903732 B2 JP2903732 B2 JP 2903732B2 JP 2744991 A JP2744991 A JP 2744991A JP 2744991 A JP2744991 A JP 2744991A JP 2903732 B2 JP2903732 B2 JP 2903732B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、家電用塗装鋼板、自
動車用塗装鋼板等に用いられる合金化溶融Znめっき鋼板
に係わるもので、特にめっき層の密着性に極めて優れた
合金化溶融Znめっき鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】合金化溶融Znめっき鋼板とは、鋼板に溶
融Znめっきを施した後、加熱してめっき層表面のZn相と
基材である鋼板との間に相互拡散を行わせ、めっき層全
体をFe−Zn合金としたものである。この合金化溶融Znめ
っき鋼板は塗装性、耐食性、溶接性、経済性等に優れて
おり、近年、家電、自動車および建材の産業分野におい
て広く用いられている。
【0003】通常、合金化処理は連続的に溶融Znめっき
を施した鋼板を、合金化用熱処理炉で 500〜600 ℃の材
料温度になるまで 3〜30秒間加熱することにより行われ
る。
【0004】また、溶融Znめっきを施す前の鋼板は予熱
され、H2+N2の還元雰囲気中でかつ材料に応じた温度条
件下で還元焼鈍され、溶融Znめっきを施されるまで大気
に触れることなくめっき浴の浴温前後まで冷却される。
【0005】合金化溶融Znめっき鋼板のめっき層はFe−
Znの金属間化合物からなり、そのFe濃度は通常、 8〜12
重量%である。また、めっきの付着量は通常、片面当た
り25〜70g/m2である。通常の手段によって付着量を25g/
m2以下にすることは困難であり、また付着量を70g/m2
上にするとめっき層の耐パウダリング性が悪化する。
【0006】めっき層は通常、0.12〜0.2 重量%のAlを
含有する。この理由は二つある。その一つは、合金化溶
融Znめっき鋼板と通常の溶融Znめっき鋼板の製造設備が
同一の場合が多いので、通常の溶融Znめっき鋼板を製造
するときにZn浴中に添加したAlが、合金化溶融Znめっき
鋼板を製造するときに不可避的に混入するからである。
通常の溶融Znめっき鋼板の製造においてAlを添加する目
的は、めっき層と基材鋼板との界面(以下、単に「界
面」という)に形成される合金相の加工性が悪いから、
この合金相の形成を抑制し、めっき層の加工性を確保す
るためである。
【0007】もう一つの理由は、合金化溶融Znめっき鋼
板のめっき層の耐パウダリング性を確保し、かつ合金化
溶融Znめっき鋼板にドロス欠陥(これは、溶融Zn浴中の
Fe−Zn合金が鋼板の表面に砂粒状に付着し、シンクロー
ルにより押しつけられたものである。)が発生するのを
防止するために、合金化溶融Znめっき鋼板を製造すると
きにも0.08〜0.11重量%のAlをZn浴中に添加して溶融Zn
めっきを施すからである。Alはめっき層中で富化する傾
向があり、Al濃度が0.08〜0.11重量%のZn浴中で溶融Zn
めっきを施せば、めっき層中のAl濃度は0.12〜0.2 重量
%となる。
【0008】合金化溶融Znめっき鋼板の基材として従
来、低炭素Alキルド鋼が用いられることが多かったが、
近年、合金化溶融Znめっき鋼板の用途が拡大するにつれ
て、その深絞り性が要求されており、IF鋼(Interstit
ial Free鋼)と呼ばれる極低炭素鋼の使用が増加してい
る。IF鋼はN、C等の不可避的な侵入型固溶元素をT
i、若しくはNb等の合金元素で固定した極低炭素の合金
鋼であり、非時効性でかつ加工性の高い材料である。I
F鋼を基材とする場合、C< 0.003%、Si< 0.04%、M
n:0.12〜0.30%、P:0.01〜0.02%、S: 0.008〜0.0
2%、N<0.04%、Al:0.02〜0.05%、Ti:0.02〜0.06
%、Nb< 0.015%の組成からなる材料が広く採用されて
いる。尚、Nbは添加されない場合もある。
【0009】強度が要求される合金化溶融Znめっき鋼板
の基材としては、高張力鋼板が使用される。同時に高度
の成形性を必要とする場合、C< 0.003%、Si< 0.04
%、Mn: 0.3〜1.0 %、P: 0.025〜0.08%、S: 0.0
08〜0.02%、N<0.04%、Al:0.02〜0.05%、Ti:0.02
〜0.06%、Nb< 0.015%の組成からなる材料が通常、採
用されている。
【0010】前記の製造方法で製造され、かつ上記の基
材とめっき層からなる合金化溶融Znめっき鋼板において
は、そのめっき層が金属間化合物であるから、界面にお
けるめっき層の密着性が低いという欠点がある。即ち、
めっき層が変形能に欠ける金属間化合物であるから、め
っき層に剪断力が作用すると、界面で剥離が生じ易い。
特に、塗装後の合金化溶融Znめっき鋼板に衝撃的な変形
加工または剪断加工を与えると界面で剥離し易い。ま
た、接着剤により合金化溶融Znめっき鋼板を接合して、
剥離試験を行うと、接着剤とめっき層との界面ではなく
めっき層と基材鋼板との界面(この明細書では後者の界
面を単に「界面」と称している)で剥離することが多
い。
【0011】Ni−Zn、Fe−Zn等の電気めっき鋼板の場合
にも、そのめっき層が金属間化合物であるから界面にお
けるめっき層の密着性は低いが、合金電気めっきに先立
って例えば、Ni、Fe等の下地めっき(ストライク)を行
うことによってこの問題を解決できることが知られてい
る。しかし、合金化溶融Znめっき鋼板においては、適切
な解決手段がないのが実状である。
【0012】界面でのめっき層の剥離の要因として、異
相界面の整合性、界面エネルギー等に支配される真の界
面密着強度の他に、界面の幾何学的な形状、めっき層と
基材の機械的な性質および物理定数(例えば、弾性率)
等が考えられる。従って、密着性および深絞り性に優れ
た合金化溶融Znめっき鋼板を得るためには、めっき層の
改質、界面の幾何学的形状の適正化、基材の適正化等の
観点から対策を検討する必要がある。
【0013】本願発明者らは、合金化溶融Znめっき鋼板
の密着性を改善するために、Znめっき層中のZn濃度に対
するAl濃度を増加し、0.30〜0.50%とする合金化溶融Zn
めっき鋼板を発明し、先に特許出願(特願平3−908
号)した。この合金化溶融Znめっき鋼板の密着性はかな
り改善されたが、深絞り加工等衝撃的な変形加工または
剪断加工を伴う場合には実用的に不十分である。
【0014】特開昭64−68456 号公報には、めっき層の
目付量が45〜90g/m3であり、かつFe濃度が高く脆い界面
のΓ相が1.0 μm 以下の厚さで、Fe濃度が低く比較的柔
らかいη相およびζ相がめっき層表面に存在しないよう
なめっき層を有する合金化溶融Znめっき鋼板が開示され
ている。しかし、この合金化溶融Znめっき鋼板の場合に
も、苛酷な条件下での密着性は実用的に不十分である。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、合金化
溶融Znめっき鋼板においては、そのめっき層が金属間化
合物であるから、界面におけるめっき層の密着性が低い
という欠点がある。一方、合金化溶融Znめっき鋼板は塗
装性、耐食性、溶接性、経済性等に優れているから、家
電、自動車および建材の産業分野においてその需要が高
まっており、同時に衝撃的な変形加工または剪断加工が
伴う用途、または接着剤による接合が伴う用途等、従来
よりも苛酷な条件下での用途が拡大しつつある。従っ
て、合金化溶融Znめっき鋼板のめっき層の密着性が益々
要求されている。即ち、界面での密着性を改善するとい
う問題が急務とされている。
【0016】本発明の目的は、めっき層の密着性、即ち
界面での密着性に極めて優れた合金化溶融Znめっき鋼板
を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本願発明は下記の合金化
溶融Znめっき鋼板を要旨とする。
【0018】 基材とする鋼板の組成が、重量%で、 C:0.008%以下、 Si:0.05%を超え〜0.
25% Mn:0.08%を超え〜0.7 %、 P:0.075 %以下、 S:0.02%以下、 N:0.005 %以下、 Al:0.005 %を超え〜0.05% であり、さらに Ti:0.04%を超え〜0.2 %、 または Ti:0.04%を超え〜0.2 %とNb:0.02%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、かつ Ti(%)>P(%) を満たし、さらに基材の上に形成するめっき層の組成
が、重量%で、 Fe:8〜15% を含有し、残部はZn、Alおよび不可避不純物からなり、
かつ Al(%)=〔(0.20〜0.50)/100 〕×Zn(%) を満たすことを特徴とする密着性に優れた合金化溶融Zn
めっき鋼板。
【0019】 基材とする鋼板が、上記の組成に加
えて更に、Bを 20ppm以下含有する上記の密着性に優
れた合金化溶融Znめっき鋼板。
【0020】本願発明の方法は、鋼板を焼鈍した後外気
に触れさせることなく、かつAlを含む溶融Zn浴中で溶融
Znめっき処理を施し、その後合金化処理を施すことを前
提とする。
【0021】
【作用】合金化溶融Znめっき鋼板の界面での密着性を改
善するためには、フェライト結晶粒内でのFe−Zn反応を
抑制し、相対的にフェライト結晶粒界でのFe−Zn反応を
促進することが有効である。
【0022】フェライト結晶粒界でのFe−Zn反応を促進
するための具体的な手段として、 (1) 酸化による易酸化性元素(Si、Mn等)の表面濃化を
不めっきが生じない範囲内で可及的に促進する。
【0023】(2) めっき層中のAl濃度を増加する。
【0024】ということが考えられる。
【0025】易酸化性元素(Si、Mn等)の表面濃化を促
進する場合、特に酸化による基材鋼板中のSiの表面濃化
が有効である。殊に、焼鈍温度の高いTi添加鋼を基材と
する場合、めっき性を阻害しない範囲内で積極的にSiを
含有するTi添加鋼を用いることが有効である。
【0026】以下、本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板
において、基材鋼板の組成およびめっき層の組成を前記
のとおりに限定した理由を説明する。
【0027】(1)基材鋼板の組成 1)C: 0.008%以下 Cは深絞り性に悪影響をおよぼす元素であるから、C含
有量は少ない方が望ましい。Cのフェライト結晶粒界へ
の析出を抑え、かつフェライト結晶粒界の清浄度を高め
て良好な深絞り性を確保するためにC含有量を 0.008%
以下とする。C含有量が 0.008%を超えるとCを固定す
るために多量のTiの添加が必要となる。
【0028】2)Si:0.05%を超え、0.25%以下 Siは従来から薄板の溶融Znめっきにおいて、不めっきの
原因となる元素であると考えられている。しかし、焼鈍
雰囲気中の露点を−35℃以下とし、Zn浴中のAl濃度を0.
12%以上とすれば大きな弊害は生じない。本願発明の合
金化溶融Znめっき鋼板はSiを積極的に含有するものであ
る。Siは焼鈍の工程で鋼板の表面に酸化物として濃化す
る。特に、焼鈍温度が通常 800℃以上であるTi添加鋼の
場合にはSiの濃化が著しい。Si含有量が0.05%以下では
鋼板の表面へのSiの濃化が不十分となる。Siの濃化が不
十分であるとフェライト結晶粒内でのFe−Zn反応が十分
に抑制されないばかりかフェライト結晶粒界でのFe−Zn
反応が促進されない。即ち、界面での密着性が不十分と
なる。従って、Si含有量は0.05%を超える量とする。一
方、Si含有量が0.25%を超えると溶融Znめっきにおいて
不めっきの原因となる。従って、Si含有量を0.25%以下
とする。
【0029】3)Mn:0.08%を超え、 0.7%以下 Mnは鋼中に不純物として含有されているSをMnSとして
固定し、鋼板の成形性(r値)を向上させる作用があ
る。しかし、Mn含有量が0.08%以下では前記の作用効果
が十分に得られない。従って、Mn含有量は0.08%を超え
る量とする。一方、Mn含有量が 0.7%を超えると鋼板の
成形性が著しく低下するから、Mn含有量を0.7%以下と
する。尚、MnもSiと同様に、焼鈍の工程で鋼板の表面に
酸化物として濃化するから、界面での密着性を高めるた
めにはMn含有量は上記の範囲内で多い方が望ましい。し
かし、その効果はSiに比べると小さい。
【0030】4)P: 0.075%以下 Pは鋼板の強度を向上する上で効果があり、高強度用の
合金化溶融Znめっき鋼板の基材の場合には不可欠の元素
である。しかし、Pはフェライト結晶粒界でのFe−Zn反
応を抑制するという悪影響があるので、P含有量がTi含
有量より多い場合には界面での密着性が低下する。従っ
て、Ti含有量(%)>P含有量(%)となるようにす
る。また、P含有量が 0.075%を超えると合金化反応が
著しく抑制されるから、P含有量を 0.075%以下とす
る。
【0031】5)S:0.02%以下 SはTiと結合してTiSを形成し、Cを固定する固溶Tiを
消費する。S含有量が0.02%を超えると合金化溶融Znめ
っき鋼板の非時効性および加工性が劣化するから、S含
有量を0.02%以下とする。
【0032】6)N: 0.005%以下 NはSと同様に、Tiと結合してTiNを形成し、Cを固定
する固溶Tiを消費する。N含有量が 0.005%を超えると
合金化溶融Znめっき鋼板の非時効性および加工性が劣化
するから、N含有量を 0.005%以下とする。
【0033】7)Al: 0.005%を超え、0.05%以下 Alは鋼の脱酸に有効であり、不可欠のものである。Al含
有量が 0.005%以下では脱酸不足となるから、Al含有量
は 0.005%を超える量とする。一方、Al含有量が0.05%
を超えると鋼板の製造コストが上昇するから、Al含有量
を0.05%以下とする。
【0034】8)Ti:0.04%を超え、 0.2%以下 Tiは鋼中に微量に混入しているC、SおよびNを固定
し、フェライト結晶粒界の清浄性を改善してr値を高
め、鋼板の成形性を向上させる。また、フェライト結晶
粒界の清浄性の改善はフェライト結晶粒界でのFe−Zn反
応を促進するという効果がある。さらに、Tiは再結晶温
度を上昇させ、焼鈍工程における易酸化性元素の鋼板の
表面への濃化を促進する。即ち、界面での密着性が向上
する。Ti含有量が0.04%以下では前記の作用が十分では
ないから、Ti含有量は0.04%を超える量とする。一方、
Ti含有量が 0.2%を超えると鋼板の製造コストが上昇す
るから、Ti含有量を 0.2%以下とする。
【0035】本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板の基材
のひとつは、上記の合金元素の外、残部はFeおよび不可
避不純物からなるものである。
【0036】本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板の他の
一つの基材は、上記の合金成分の外にさらにNbを含有す
るものである。 9)Nb:0.02%以下 Nbは鋼板の成形性(r値)の異方性を改善する効果があ
るので、必要に応じて添加してもよい。しかし、Nb含有
量が0.02%を超えるとフェライト結晶粒界の清浄度が低
下するのみならず、鋼板の製造コストが上昇する。従っ
て、Nbを添加する場合には、その含有量を0.02%以下と
する。
【0037】本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板のさら
に他の一つの基材は、上記の合金成分の外にさらにBを
含有するものである。 10) B:20 ppm以下 Bは、極微量の添加により鋼の焼入性を向上させ、強度
を上昇させる効果を有する。しかし、B含有量が20 ppm
を超えると加工性、溶接性を損なうので、Bを添加する
場合には、その含有量を20 ppm以下とする。
【0038】(2)めっき層の組成 1)Fe:8%以上、15%以下 めっき層中のFeは溶融Znめっき後の合金化処理により基
材鋼板から流入するFeである。めっき層中のFe含有量が
多い程、界面での密着性はよくなる。Fe含有量が8%よ
り少ないとη相(未合金化の純Zn相)の残存量が増加し
て溶接性および塗装性が低下する。従って、Fe含有量を
8%以上とする。一方、Fe含有量が15%を超えるとめっ
き層の耐パウダリング性が大きく低下する。従って、Fe
含有量を15%以下とする。尚、めっき層中のAl含有量が
高い本願発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板では、Fe含有
量が8%でも界面での密着性がかなり高い。
【0039】 2)Al(%)=〔(0.20〜0.50)/100 〕×Zn(%) Alはめっき層と基材鋼板との界面の幾何学的形状を改善
し、界面での密着性を高める効果がある。これは、Alが
Fe−Zn反応をフェライト結晶粒界で促進することによる
ものと考えられる。また、Alは合金相の機械的特性をも
改善する効果がある。しかし、AlがZnの0.20%より少な
いと基材鋼板として前記組成の鋼板を使用しても、Alが
Fe−Zn反応をフェライト結晶粒界で促進する効果が十分
ではなく、界面での密着性が低下する。特に、塗装後の
合金化溶融Znめっき鋼板に、衝撃的な変形を与えた場合
や接着剤による接合を施した場合に、界面で剥離が生じ
やすい。従って、AlはZnの0.20%以上とする。一方、Al
濃度が多い程、界面での密着性は向上するが、AlがZnの
0.50%より多くなると合金化処理速度がばらつく原因と
なる。合金化処理速度のばらつきは合金化溶融Znめっき
鋼板の表面にマクロ的なむらを発生させ、表面の外観品
質を劣化させて商品価値を著しく低下させる。特に、基
材鋼板が極低炭素鋼のIF鋼の場合には、この傾向が著
しい。従って、AlはZnの0.50%以下とする。
【0040】本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板のめっ
き層は、上記の合金元素の外、残部はZnおよび不可避不
純物からなるものである。
【0041】本願発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、
例えば下記の方法で製造することができる。
【0042】上記組成の鋼板を無酸化炉若しくは直火還
元炉、または還元雰囲気中で予熱する。予熱において、
鋼板表面に酸化鉄が生成すると、界面での密着強度が低
下する原因となるので、酸化鉄の生成をできるだけ抑制
するのが望ましい。次いで、露点が−35℃以下の還元雰
囲気中で 810〜880 ℃の鋼板温度範囲に焼鈍し、大気に
触れさせることなく、 470〜580 ℃の鋼板温度に冷却し
た状態でAl濃度が0.13〜0.21%、浴温が 475〜 495℃の
溶融Zn浴中に導いて溶融Znめっきを施す。Alの富化現象
によりめっき層中のAl濃度はZnの0.20〜0.50%の範囲と
なる。溶融Znめっきを施した後、熱処理炉で溶融Znめっ
き鋼板を加熱し、めっき層中のFe含有量が 8〜15重量%
となるように合金化処理を行う。この合金化処理は、 3
00℃以上で行うが、合金化処理温度が低い場合には連続
的な処理が困難であるから 480〜530℃の温度で処理す
ることが望ましい。熱処理時間は長い方がより望ましい
製品特性(界面での密着性)を与える。この理由は明確
ではないが、熱処理時間が長くなる程界面付近の合金化
層の機械的特性が改善されると共に、フェライト結晶粒
界でのFe−Zn反応が増加して投錨効果も増すからと考え
られる。以上の製造方法により得られる本願発明の合金
化溶融Znめっき鋼板は、界面での剪断剥離強度が極めて
大きいものとなる。
【0043】現在、合金化溶融Znめっき鋼板の摩擦特
性、電着塗装性を改善するために、Znめっき層の上層に
Fe系またはZn−Ni等のめっきを施すことが広く行われて
おり、本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板にもその上層
めっきを適用できる。
【0044】上記の製造方法は、用途的に非常に高い界
面の剪断剥離強度が要求される場合に有効である。しか
し、本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板は上記以外の方
法で製造してもよい。
【0045】
【実施例】表1−1、表1−2、表1−3に掲げた組成
からなる極低炭素鋼を素材とする冷延鋼板(板厚0.8mm)
の未焼鈍材を、合金化溶融Znめっき鋼板の基材とするた
めに 250× 100mmの寸法に裁断して供試材とした。
【0046】これらの供試材を75℃のNaOH溶液で脱脂洗
浄し、次いで露点が−40℃、雰囲気ガスがN2+26%H2
雰囲気中(雰囲気温度は 850℃)で60秒間焼鈍した。焼
鈍後、鋼板を 480℃まで外気に触れさせることなく冷却
し、さらに外気に触れさせることなく表1−1〜表1−
3に掲げた全Al濃度と全Fe濃度の溶融Zn浴中(浴温 460
℃)に1秒間浸漬して溶融Znめっきを施した。溶融Znめ
っきには竪型溶融Znめっき装置を用いた。溶融Znめっき
後、ガスワイパーによりめっき付着量をおよそ50g/m
2(片面当り)に調整し、次いで 500℃の塩浴中に表1
−1〜表1−3に掲げた合金化処理時間の間浸漬して合
金化処理を施した。
【0047】合金化処理を施した供試材からJISK685
0 に準拠した引張り剪断試験片を製作した。この試験片
に(株)コニシ製の接着剤CYBONDを約3mmの厚みで塗布
し、次いでJISK6850 に準拠した引張り剪断試験を行
った。その後、界面での剥離面積を試験片の全面積で除
し、めっき剥離面積比率(%)を算出して合金化溶融Zn
めっき鋼板の密着度を評価した。めっき剥離面積比率が
大きいと界面での密着性が低いことを、めっき剥離面積
比率が小さいと界面での密着性が高いことを意味する。
この結果をめっき層の組成と共に表1−1〜表1−3に
併記する。
【0048】試験No.1〜14は本発明例である。めっき剥
離面積比率が20%以下であり、後述の比較例に比べると
界面での密着性は格段に高い。
【0049】試験No. 15〜16は比較例である。本願発明
で積極的に添加するSiを全く含有しなかった場合であ
る。めっき剥離面積比率が40〜45%であった。
【0050】試験No. 17は比較例である。本願発明で積
極的に添加するSiの含有量を0.05%以下と低くし、かつ
P(%)とTi(%)との関係をTi(%)<P(%)と逆
転させた場合である。めっき剥離面積比率が55%であっ
た。
【0051】試験No. 18〜19は比較例である。本願発明
で積極的に添加するSiを全く含有せず、かつAlがZnの0.
20%未満と低くした場合である。めっき剥離面積比率が
65%であった。
【0052】試験No. 20〜21は比較例である。本願発明
で積極的に添加するSiの含有量を0.05%以下と低くし、
かつP(%)とTi(%)との関係をTi(%)<P(%)
と逆転させ、さらにかつAlがZnの0.20%未満と低くした
場合である。めっき剥離面積比率が65〜70%であった。
【0053】試験No. 22は比較例である。P(%)とTi
(%)との関係をTi(%)<P(%)と逆転させ、かつ
AlがZnの0.20%未満と低くした場合である。めっき剥離
面積比率が70%であった。
【0054】試験No. 23〜26は比較例である。P(%)
とTi(%)との関係をTi(%)<P(%)と逆転させた
場合である。めっき剥離面積比率が45〜65%であった。
【0055】試験No. 27〜32は比較例である。AlがZnの
0.20%未満と低くした場合である。
【0056】めっき剥離面積比率が65〜75%であった。
【0057】試験No. 33〜35は比較例である。Tiの含有
量を0.04%以下と低くした場合である。めっき剥離面積
比率が55〜70%であった。
【0058】試験No. 36〜38は比較例である。本願発明
で積極的に添加するSiの含有量を0.25%超と高くした場
合である。溶融Znめっき工程において、不めっきが発生
したので合金化処理以降を中止した。
【0059】上記の本発明例と比較例との比較で明らか
なように、基材鋼板の組成とめっき層の組成を本願発明
の合金化溶融Znめっき鋼板の範囲内とすれば、界面での
密着性に優れた合金化溶融Znめっき鋼板が得られること
がわかる。
【0060】
【表1−1】
【0061】
【表1−2】
【0062】
【表1−3】
【0063】
【発明の効果】本願発明の合金化溶融Znめっき鋼板は密
着性に優れている。従って、衝撃的な変形加工または剪
断加工を伴う用途、高度の深絞り性を要求される用途ま
たは接着剤による接合を伴う用途等、従来よりも苛酷な
条件下での用途に適用できる。
【0064】

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材とする鋼板の組成が、重量%で、 C:0.008%以下、 Si:0.05%を超え〜0.
    25% Mn:0.08%を超え〜0.7 %、 P:0.075 %以下、 S:0.02%以下、 N:0.005 %以下、 Al:0.005 %を超え〜0.05% であり、さらに Ti:0.04%を超え〜0.2 %、 または Ti:0.04%を超え〜0.2 %とNb:0.02%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避不純物からなり、かつ Ti(%)>P(%) を満たし、さらに基材の上に形成するめっき層の組成
    が、重量%で、 Fe:8〜15% を含有し、残部はZn、Alおよび不可避不純物からなり、
    かつ Al(%)=〔(0.20〜0.50)/100 〕×Zn(%) を満たすことを特徴とする密着性に優れた合金化溶融Zn
    めっき鋼板。
  2. 【請求項2】 基材とする鋼板が、請求項1の組成に加
    えて更に、Bを 20ppm以下含有する請求項1の密着性に
    優れた合金化溶融Znめっき鋼板。
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