JP2015199995A - 自動車部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本実施形態による自動車部材の製造方法は、鋼板を準備する工程と、鋼板に対して、質量%で0.10〜0.15%のAl濃度を有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、溶融亜鉛めっき処理された鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、金型を用いて鋼板をプレスしながら焼入れしてホットスタンプ鋼材を成形する工程と、ホットスタンプ鋼材に対して、ジルコニウム及び/又はチタニウムイオンとフッ素とを含有し、100〜1000ppmの遊離フッ素イオンを含有する水溶液を用いて化成処理を実施する工程とを備える。
【選択図】なし
Description
本実施形態による自動車部材の製造方法は、準備工程と、溶融亜鉛めっき処理工程と、ホットスタンプ工程と、化成処理工程とを備える。以下、各工程について詳述する。
初めに、鋼板素材を準備する。鋼板素材は、次の化学組成を有する。以下、元素に関する「%」は、質量%を意味する。
炭素(C)は、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、ホットスタンプ後の強度は高くなるが、鋼板の靭性が低下する。すなわち所望の強度と靱性が得られるようC量は調整されればよい。その際に好ましいC含有量は、0.05〜0.4%である。C含有量の好ましい下限は0.10%である。C含有量の好ましい上限は0.35%である。
シリコン(Si)は一般的に鋼の脱酸目的で使用されることが多く、その場合不可避的に含有される。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、ホットスタンプにおける加熱中に鋼中のSiが拡散し、鋼板表面に酸化物を形成する。酸化物はりん酸塩処理性を低下し得る。Siはさらに、鋼板のAc3点を上昇させる働きがあり、Ac3点が上昇するとホットスタンプ時の加熱温度が、Znめっきの蒸発温度を超えてしまう。したがって、Si含有量は0.5%以下である。好ましいSi含有量の上限は0.3%である。Si含有量の好ましい下限は、求められる脱酸レベルによるが、0.05%である。
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高め、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、その効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Mn含有量は0.5〜2.5%である。Mn含有量の好ましい下限は0.6%である。Mn含有量の好ましい上限は2.4%である。
りん(P)は鋼中に含まれる不純物である。Pは粒界に偏析して鋼の靭性を低下し、耐遅れ破壊性を低下する。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.03%以下である。
硫黄(S)は鋼中に含まれる不純物である。Sは硫化物を形成して鋼の靭性を低下し、耐遅れ破壊性を低下する。したがって、S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量は0.01%以下である。
アルミニウム(Al)は一般的に鋼の脱酸目的で使用されることが多く、その場合不可避的に含有される。一方、Al含有量が高すぎれば、脱酸は十分となるが、鋼板のAc3点が上昇して、ホットスタンプ時の必要な加熱温度がZnめっきの蒸発温度を超える。したがって、Al含有量は0.1%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.05%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%である。本明細書におけるAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
窒素(N)は鋼中に不可避的に含まれる不純物である。Nは窒化物を形成して鋼の靭性を低下する。Nはさらに、Bが含有される場合、Bと結合して固溶B量を減らす。その結果、焼入れ性が低下する。したがって、N含有量はなるべく低い方が好ましい。N含有量は0.01%以下である。
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bは鋼の焼入れ性を高め、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。しかしながら、B含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、B含有量は、0〜0.005%である。B含有量の好ましい下限は0.0001%である。
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、TiはNと結合して窒化物を形成する。そのため、BとNとの結合が抑制され、BN形成による焼入れ性の低下を抑制できる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、さらに、Ti窒化物が過剰に析出して鋼の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.1%である。Tiはそのピン止め効果により、ホットスタンプ加熱時のオーステナイト粒径を微細化し、それにより鋼材の靱性等を高める。Ti含有量の好ましい下限は0.01%である。
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Crは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、Cr含有量が高すぎれば、Cr炭化物が形成され、ホットスタンプの加熱時に炭化物が溶解しにくくなる。そのためオーステナイト化が進行しにくくなり、焼き入れ性が低下する。したがって、Cr含有量は0〜0.5%である。Cr含有量の好ましい下限は0.1%である。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、Mo含有量は0〜0.5%である。Mo含有量の好ましい下限は0.05%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbは炭化物を形成して、ホットスタンプ時に結晶粒を微細化する。細粒化により、鋼の靭性が高まる。しかしながらNb含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。Nb含有量が高すぎればさらに、焼入れ性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.1%である。Nb含有量の好ましい下限は0.02%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは鋼の靭性を高める。Niはさらに、ホットスタンプでの加熱時に、溶融Znに起因した脆化を抑制する。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、Ni含有量は0〜1.0%である。Ni含有量の好ましい下限は0.1%である。
上記鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理を実施する。具体的には、鋼板をめっき浴(溶融亜鉛めっき浴)に浸漬して鋼板表面にめっきを付着させる。めっきが付着した鋼板をめっき浴から引きあげる。好ましくは、鋼板表面のめっき付着量を調整して20〜100g/m2にする。鋼板の引き上げ速度や、ワイピングのガスの流量を調整することにより、めっき付着量を調整できる。めっき付着量のさらに好ましい下限は25g/m2である。めっき付着量のさらに好ましい上限は80g/m2である。
鋼板に対して、ホットスタンプを実施する。ホットスタンプには、緩加熱によるホットスタンプと、急速加熱によるホットスタンプとがある。
ホットスタンプ後の鋼材(ホットスタンプ鋼材)に対して化成処理工程を実施する前に、ホットスタンプ鋼材に対してアルカリ脱脂を実施してもよい。アルカリ脱脂により、鋼材表面が洗浄され、鋼材表面のダストや酸化粉が除去される。
溶融亜鉛めっき鋼板の表面には、Al酸化皮膜及びZn酸化皮膜が形成されている。ホットスタンプ時の加熱により、鋼材表層に既に形成されているAl酸化皮膜及びZn酸化皮膜が成長する。
自動車部材に対して、周知のカチオン電着塗装を実施する。カチオン電着塗装を行った後その上層に、中塗り、上塗りといった意匠性及び耐食性を目的としたスプレー塗装を実施してもよい。またカチオン電着塗装の替わりに、上述のスプレー塗装をそのまま施してもよい。カチオン電着塗装の場合、現在、15μm程度のカチオン電着塗装膜の厚みが標準的に使用される。使用されるカチオン電着塗装厚膜の厚みに応じて、化成処理条件(浸漬時間)を設定することが好ましい。
上述の製造方法では、溶融亜鉛めっき鋼板(GI:Galvanized Iron)を用いてホットスタンプ鋼材を製造した。しかしながら、本実施形態の自動車部材の製造方法では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA:Galvannealed Iron)を用いてホットスタンプを実施してもよい。
合金化処理工程では、溶融亜鉛めっき層が形成された鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板)をたとえば、470〜600℃で加熱する。加熱後、たとえば30秒以内で均熱し、その後、冷却する。上記加熱温度まで加熱した直後に冷却してもよい。加熱温度及び均熱時間は上述の加熱温度及び均熱時間に限定されない。めっき層中の所望のFe濃度に応じて、加熱温度及び均熱時間は適宜設定される。
上述の製造方法はさらに、ホットスタンプ工程の前に、防錆油膜形成工程を含んでもよい。
上述の製造方法はさらに、防錆油膜形成工程の後であって、ホットスタンプ工程の前に、ブランキング加工工程を実施してもよい。
表2の各試験番号において、100mm×300mmの鋼板を準備した。加熱には大気雰囲気の遠赤外線加熱炉を使用した。炉温設定を900℃とした。鋼板を加熱炉に挿入後、880℃までおよそ120秒で昇温し、その後鋼板挿入後240秒となるまで加熱した。
その後、加熱炉から鋼板を取り出し、そのまま水冷ジャケットを備えた平板金型まで移送し、平板金型に鋼板を挟み込んでホットスタンプ鋼材(鋼板)を製造した。平板金型に鋼板を挟み込んだときの鋼板温度は約800℃であった。このときマルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるようにホットスタンプ条件を調整し焼入れした。
表3の各試験番号において、70mm×420mmの鋼板を準備した。鋼板の両端を電極金属(Cu)にて挟み込み、その後約870℃まで加熱した。この時の加熱速度はおよそ85℃/秒であった。その後通電を終了し、鋼板温度が650℃になるまで冷却した。冷却後、輻射加熱時と同様に、水冷ジャケットを備えた平板金型を利用して、鋼板を挟み込んでホットスタンプ鋼材(鋼板)を製造した。ホットスタンプ時冷却速度が遅い部分でも、マルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるように焼入れした。
上記製造工程により製造されたホットスタンプ用鋼板及びホットスタンプ鋼材に対して、次の評価試験を実施した。
ホットスタンプ用鋼板については製造された溶融亜鉛めっき鋼板(GI)及び合金化された溶融亜鉛めっき鋼板(GA)からめっき層を含むサンプルを採取した。JIS H0401に準拠してサンプルのめっき層を塩酸で溶解した。溶解前のサンプル重量と、溶解後のサンプル重量と、めっき層が形成されていた面積とに基づいて、めっき付着量(g/m2)を求めた。
各試験番号の板状のホットスタンプ鋼材から70mm×150mmの試験片を採取した。試験片に対して、以下の方法で化成処理を実施した。化成処理された試験片に対して、カチオン電着塗装を実施した。カチオン電着塗装された試験片に対して、塗装密着性試験を実施した。
日本ペイント株式会社製のアルカリ脱脂剤EC90(商品名)を用いて、45℃で2分間、浸漬脱脂を実施した。脱脂後の試験片を水道水で洗浄後、さらに、イオン交換水で洗浄した。洗浄及び乾燥後、試験片に対して次の化成処理液を用いて化成処理を実施した。
試験番号16及び28の試験片に対して、日本ペイント株式会社サーフダイン5000(商品名)を使用し、40℃で2分間でりん酸亜鉛処理を行い、水道水で 洗浄後、イオン交換水で洗浄した。
試験番号1〜15、及び、試験番号17〜27の試験片に対して、次のFF化成処理液を準備した。表2及び表3に示すとおり、ヘキサフルオロジルコン酸(Zrの場合)、又は、ヘキサフルオロチタン酸(Tiの場合)を所定の金属濃度となるよう容器に入れ、イオン交換水で希釈した。その後、フッ酸および水酸化ナトリウム水溶液を容器に入れ、溶液中のフッ素濃度及び遊離フッ素濃度が所定値となるよう調整した。遊離フッ素濃度の測定は市販の測定機を用いて行った。調整後、容器をイオン交換水で定容し、FF化成処理液とした。
上述の化成処理を実施した後、各試験片に対して、日本ペイント株式会社製のカチオン型電着塗料を電圧160Vのスロープ通電で電着塗装を実施し、さらに、焼き付け温度170℃で20分間焼き付け塗装した。電着塗装後の塗料の膜厚の平均は、いずれの試験番号も13μmであった。
塗膜剥離率=A1/A10×100 (3)
表2及び表3を参照して、試験番号1〜4、7〜15及び17〜27では、FF化成処理液を用いて化成処理を実施し、FF化成処理液中の遊離フッ素濃度が100〜1000ppmであった。そのため、化成処理層は均一に形成され、塗膜剥離率は5%以下であった。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、
前記鋼板に対して、質量%で0.10〜0.15%のAl濃度を有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、
前記溶融亜鉛めっき処理された前記鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、金型を用いて前記鋼板をプレスしながら焼入れしてホットスタンプ鋼材を成形する工程と、
前記ホットスタンプ鋼材に対して、Zrイオン及び/又はTiイオンとフッ素とを含有し、100〜1000ppmの遊離フッ素イオンを含有する水溶液を用いて化成処理を実施する工程とを備える、自動車部材の製造方法。 - 請求項1に記載の自動車部材の製造方法であって、
前記溶融亜鉛めっき処理を実施する工程は、前記溶融亜鉛めっき処理された前記鋼板を加熱して合金化処理を実施する工程を含む、自動車部材の製造方法。
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