JP6225654B2 - ホットスタンプ鋼材の製造方法、ホットスタンプ用鋼板の製造方法及びホットスタンプ用鋼板 - Google Patents

ホットスタンプ鋼材の製造方法、ホットスタンプ用鋼板の製造方法及びホットスタンプ用鋼板 Download PDF

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Description

本発明は、鋼材の製造方法に関し、さらに詳しくは、ホットスタンプを利用したホットスタンプ鋼材の製造方法に関する。
自動車等に用いられる構造部材を高強度にするために、ホットスタンプにより構造部材を製造する場合がある。ホットスタンプでは、Ac3点以上に加熱された鋼板を、金型でプレスしつつ、金型で鋼板を急冷する。つまり、ホットスタンプでは、プレスと焼入れとを同時に行う。ホットスタンプにより、形状精度が高く、高強度の構造部材を製造できる。
鋼板に対してホットスタンプを実施した場合、鋼板表面に鉄酸化物が形成される。鉄酸化物は鋼板の塗装密着性を低下する。つまり、鉄酸化物が形成された場合、鋼板表面を塗装しても、塗膜が剥離しやすい。
特開2003−73774号公報(特許文献1)及び特開2003−129209号公報(特許文献2)及び特開2003−126921号公報(特許文献3)は、塗装密着性を改善する技術を提案する。
特許文献1〜特許文献3では、ホットスタンプ用鋼板として、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を利用する。溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプに利用することにより、鉄酸化物が表面に形成されることなく、構造部材を成形できる。
特開2003−73774号公報 特開2003−129209号公報 特開2003−126921号公報
しかしながら、溶融亜鉛めっき鋼板又は合金化溶融亜鉛めっき鋼板をホットスタンプに利用した場合、りん酸塩処理により形成されるりん酸塩皮膜が付着しにくい(つまり、りん酸塩処理性が低い)場合がある。特に、ホットスタンプ工程において、通電加熱又は誘導加熱により鋼板をAc3点以上に急速に加熱した後、速やかにプレス成形を行う場合、りん酸塩処理性が低下する。この場合、塗装密着性も低下する。
本発明の目的は、塗装密着性を高めるホットスタンプ鋼材の製造方法を提供することである。
本実施形態によるホットスタンプ鋼材の製造方法は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、溶融亜鉛めっき処理された鋼板の表面にジルコニウム化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を鋼板の表面に形成する工程と、皮膜が形成された前記鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、金型を用いて鋼板をプレスしながら焼入れしてホットスタンプ鋼材を成形する工程とを備える。
本実施形態によるホットスタンプ鋼材の製造方法により製造されたホットスタンプ鋼材では、塗装密着性が高まる。
図1は、皮膜が形成されていないホットスタンプ鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像(BSE)である。 図2は、100mg/m2のZrを含有する皮膜を有するホットスタンプ用鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像である。 図3は、500mg/m2のZrを含有する皮膜を有するホットスタンプ用鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像である。 図4は、皮膜が形成されていないホットスタンプ用鋼板を用いてホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量との関係を示す図である。 図5は、図4のホットスタンプ用鋼板に40mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した後、ホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。 図6は、図4のホットスタンプ用鋼板に100mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した後、ホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。 図7は、図4のホットスタンプ用鋼板に230mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した後、ホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。 図8は、図4のホットスタンプ用鋼板に500mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した後、ホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
本発明者らは、ホットスタンプ鋼材の塗装密着性に関して調査及び検討を行った。その結果、本発明者らは次の知見を得た。
溶融亜鉛めっき処理に利用される溶融亜鉛めっき浴(以下、単にめっき浴という)には、Alが含有される。めっき浴の温度は440〜480℃程度であり、高温である。このような高温下でFeとZnとが接触すると、FeとZnとが継続的に合金化して、ドロスが発生する。めっき浴にAlが含有されれば、FeとZnとが反応する前に、FeとAlとが反応するため、ドロスの発生が抑制される。そのため、通常、溶融亜鉛めっき浴にはAlが含有される。
溶融亜鉛めっき浴にAlが含有されるため、溶融亜鉛めっき鋼板のめっき層にもAlが含有される。めっき層中のAlは拡散してめっき層の表層に移動して、Al酸化膜を形成する。Al酸化膜はリン酸に溶解しないため、リン酸塩(リン酸亜鉛等)との反応が阻害される。そのため、Al酸化膜が形成された領域では、りん酸塩皮膜が形成されにくい。つまり、Al酸化膜が形成された領域は、りん酸塩処理性が低い。
ジルコニウム化合物を含有するアルカリ水溶液を鋼板のめっき層表面に塗布して、めっき層表面に20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を形成すれば、ホットスタンプ後の鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。
図1は、皮膜が形成されていないホットスタンプ鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像(BSE)である(倍率1000倍)。図2は、100mg/m2のZrを含有する皮膜を有するホットスタンプ用鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像であり、図3は、500mg/m2のZrを含有する皮膜を有するホットスタンプ用鋼材に対してりん酸塩処理を実施した後の、ホットスタンプ鋼材の表面の反射電子像である。図中のグレーの領域10は、化成皮膜である。図中の白色領域20は、りん酸塩皮膜が形成されず、表面(溶融亜鉛めっき層)が表出している部分である。
図1を参照して、皮膜を有さない鋼板で成形されたホットスタンプ鋼材では、りん酸塩皮膜が形成されていない領域20が多い。そのため、鋼材のりん酸塩処理性は低い。
これに対して、Zrを含有する皮膜を有する鋼板を利用した場合、図2に示すとおり、全体がグレー領域10となり、りん酸塩皮膜が表面全体を覆う。つまり、鋼材のりん酸塩処理性が高まる。一方、皮膜中のZr量が高すぎる場合、図3に示すとおり、再びりん酸塩皮膜が形成されない領域10が現れ、鋼材のりん酸塩処理性が低下する。
以上より、Zrを適量含有する皮膜がめっき層上に形成されたホットスタンプ用鋼板を用いてホットスタンプ鋼材を成形すれば、鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態のホットスタンプ鋼材の製造方法は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、溶融亜鉛めっき処理された鋼板の表面にジルコニウム化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を鋼板の表面に形成する工程と、皮膜が形成された鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、金型を用いて鋼板をプレスしながら焼入れしてホットスタンプ鋼材を成形する工程とを備える。
本実施形態によるホットスタンプ鋼材の製造方法は、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜がめっき層上に形成された鋼板に対してホットスタンプを実施してホットスタンプ鋼材を成形する。そのため、ホットスタンプ鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。
上記製造方法において、溶融亜鉛めっき処理をする工程は、溶融亜鉛めっき処理された鋼板を加熱して合金化処理を実施する工程を含んでもよい。
この場合、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)だけでなく、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)もホットスタンプ用鋼板として利用でき、上記と同様の効果が得られる。
本実施形態によるホットスタンプ用鋼板の製造方法は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、溶融亜鉛めっき処理された鋼板の表面にジルコニウム化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を鋼板表面に形成する工程とを備える。
この場合、製造されたホットスタンプ用鋼板は、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜がめっき層上に形成される。そのため、ホットスタンプにより成形されたホットスタンプ鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。
本実施形態によるホットスタンプ用鋼板は、母材と、めっき層と、皮膜とを備える。母材は、質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する。めっき層は、母材上に形成され、溶融亜鉛めっき層、及び、合金化溶融亜鉛めっき層のいずれかである。めっき層は、0.1〜1.0%のAlを含有する。皮膜は、めっき層上に形成され、20〜450mg/m2のZrを含有する。
以下、上述のホットスタンプ鋼材及びホットスタンプ用鋼板の製造方法について詳述する。
[製造工程]
本実施形態によるホットスタンプ鋼材の製造方法は、準備工程と、溶融亜鉛めっき処理工程と、皮膜形成工程と、ホットスタンプ工程とを備える。以下、各工程について詳述する。
[準備工程]
初めに、鋼板を準備する。鋼板は、次の化学組成を有する。以下、元素に関する「%」は、質量%を意味する。
C:0.05〜0.4%
炭素(C)は、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。C含有量が低すぎれば、上記効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、ホットスタンプ後の強度は高くなるが、鋼板の靭性が低下する。すなわち所望の強度と靱性が得られるようC量は調整されればよい。その際に好ましいC含有量は、0.05〜0.4%である。C含有量の好ましい下限は0.10%である。C含有量の好ましい上限は0.35%である。
Si:0.5%以下
シリコン(Si)は一般的に鋼の脱酸目的で使用されることが多く、その場合不可避的に含有される。しかしながら、Si含有量が高すぎれば、ホットスタンプにおける加熱中に鋼中のSiが拡散し、鋼板表面に酸化物を形成する。酸化物はりん酸塩処理性を低下し得る。Siはさらに、鋼板のAc3点を上昇させる働きがあり、Ac3点が上昇するとホットスタンプ時の加熱温度が、Znめっきの蒸発温度を超えてしまう。したがって、Si含有量は0.5%以下である。好ましいSi含有量の上限は0.3%である。Si含有量の好ましい下限は、求められる脱酸レベルによるが、0.05%である。
Mn:0.5〜2.5%
マンガン(Mn)は、焼入れ性を高め、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、その効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、Mn含有量は0.5〜2.5%である。Mn含有量の好ましい下限は0.6%である。Mn含有量の好ましい上限は2.4%である。
P:0.03%以下
りん(P)は鋼中に含まれる不純物である。Pは粒界に偏析して鋼の靭性を低下し、耐遅れ破壊性を低下する。したがって、P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量は0.03%以下である。
S:0.01%以下
硫黄(S)は鋼中に含まれる不純物である。Sは硫化物を形成して鋼の靭性を低下し、耐遅れ破壊性を低下する。したがって、S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量は0.01%以下である。
sol.Al:0.1%以下
アルミニウム(Al)は一般的に鋼の脱酸目的で使用されることが多く、その場合不可避的に含有される。Alは鋼を脱酸する。一方、Al含有量が高すぎれば、脱酸は十分となるが、Al含有量が高すぎればさらに、鋼板のAc3点が上昇して、ホットスタンプ時の必要な加熱温度がZnめっきの蒸発温度を超える。したがって、Al含有量は0.1%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.05%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%である。本明細書におけるAl含有量は、sol.Al(酸可溶Al)の含有量を意味する。
N:0.01%以下
窒素(N)は鋼中に不可避的に含まれる不純物である。Nは窒化物を形成して鋼の靭性を低下する。Nはさらに、Bが含有される場合、Bと結合して固溶B量を減らす。その結果、焼入れ性が低下する。したがって、N含有量はなるべく低い方が好ましい。N含有量は0.01%以下である。
本実施形態の鋼板の化学組成の残部はFe及び不純物からなる。本明細書において、不純物とは、鉄鋼材料を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを意味する。
本実施形態による鋼板はさらに、B及びTiを含有してもよい。
B:0〜0.005%
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bは鋼の焼入れ性を高め、ホットスタンプ後の鋼材の強度を高める。しかしながら、B含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。したがって、B含有量は、0〜0.005%である。B含有量の好ましい下限は0.0001%である。
Ti:0〜0.1%
チタン(Ti)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、TiはNと結合して窒化物を形成する。そのため、BとNとの結合が抑制され、BN形成による焼入れ性の低下を抑制できる。しかしながら、Ti含有量が高すぎれば、上記効果が飽和し、さらに、Ti窒化物が過剰に析出して鋼の靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0〜0.1%である。Tiはそのピン止め効果により、ホットスタンプ加熱時のオーステナイト粒径を微細化し、それにより鋼材の靱性等を高める。Ti含有量の好ましい下限は0.01%である。
本実施形態による鋼板はさらに、Cr及びMoからなる群から選択される1種以上を含有する。これらの元素は任意元素であり、鋼の焼入れ性を高める。
Cr:0〜0.5%
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Crは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、Cr含有量が高すぎれば、Cr炭化物が形成され、ホットスタンプの加熱時に炭化物が溶解しにくくなる。そのためオーステナイト化が進行しにくくなり、焼き入れ性が低下する。したがって、Cr含有量は0〜0.5%である。Cr含有量の好ましい下限は0.1%である。
Mo:0〜0.5%
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、Mo含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、Mo含有量は0〜0.5%である。Mo含有量の好ましい下限は0.05%である。
本実施形態による鋼板素材はさらに、Nb及びNiからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。これらの元素は任意元素であり、鋼の靭性を高める。
Nb:0〜0.1%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbは炭化物を形成して、ホットスタンプ時に結晶粒を微細化する。細粒化により、鋼の靭性が高まる。しかしながらNb含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。Nb含有量が高すぎればさらに、焼入れ性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.1%である。Nb含有量の好ましい下限は0.02%である。
Ni:0〜1.0%
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは鋼の靭性を高める。Niはさらに、ホットスタンプでの加熱時に、溶融Znに起因した脆化を抑制する。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、上記効果が飽和する。したがって、Ni含有量は0〜1.0%である。Ni含有量の好ましい下限は0.1%である。
上述の化学組成を有する鋼板は、次の方法で製造される。上述の化学組成を有する溶鋼を製造する。製造された溶鋼を用いて、鋳造法によりスラブを製造する。製造された溶鋼を用いて、造塊法によりインゴットを製造してもよい。製造されたスラブ又はインゴットを熱間圧延して鋼板(熱延鋼板)を製造する。必要に応じて、熱延鋼板に対して酸洗処理を実施し、酸洗処理後の熱延鋼板に対して冷間圧延を実施して鋼板(冷延鋼板)としてもよい。
[溶融亜鉛めっき処理]
上記鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理を実施する。具体的には、鋼板をめっき浴(溶融亜鉛めっき浴)に浸漬して鋼板表面にめっきを付着させる。めっきが付着した鋼板をめっき浴から引きあげる。好ましくは、鋼板表面のめっき付着量を調整して20〜100g/m2にする。鋼板の引き上げ速度や、ワイピングのガスの流量を調整することにより、めっき付着量を調整できる。めっき付着量のさらに好ましい下限は25g/m2である。めっき付着量のさらに好ましい上限は80g/m2である。
溶融亜鉛めっき浴中のAl濃度は0.1〜0.25質量%である。めっき浴中のAl濃度が低すぎれば、FeAl合金相の形成が不十分となり、めっき皮膜が不均一に形成される。Al濃度が低すぎればさらに、鋼板中のFeがめっき浴中に溶出する。溶出されたFeはドロスを生成する。Al濃度が高すぎれば、めっき皮膜中のFeAl層が過剰に厚く形成される。後述する合金化処理を実施する場合、FeAl層が厚すぎれば、反応速度が遅くなり生産性が低下する。めっき浴中のAl濃度(Al含有量)は0.1〜0.25質量%である。好ましいAl濃度の上限は0.15質量%であり、さらに好ましくは、0.135質量%である。
[皮膜形成工程]
溶融亜鉛めっき処理後の鋼板に対して、次の方法により、Zrを含有する皮膜を形成する。
初めに、ジルコニウム化合物を含有したアルカリ水溶液を準備する。アルカリ水溶液に含有されるジルコニウム化合物は、塩基性ジルコニウム化合物である。塩基性ジルコニウム化合物は、水溶液がアルカリ性を示すジルコニウム化合物である。塩基性ジルコニウム化合物は特に限定されない。塩基性ジルコニウム化合物はたとえば、カチオンとして[Zr(CO32(OH)22-又は[Zr(CO33(OH)]3-を有する炭酸ジルコニウム化合物、上記カチオンを含有するアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等である。
ジルコニウム化合物を含有したアルカリ水溶液のpHは、好ましくは、7〜14である。pHが7〜14であれば、塩基性ジルコニウム化合物が安定して水溶化される。好ましいpHの下限は8であり、好ましいpHの上限は10である。
上記アルカリ水溶液は、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤はたとえば、アンモニア水、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、リン酸、硝酸、フッ酸、炭酸、弗化アンモニウム等である。
上記アルカリ水溶液はさらに、鋼板の表面の濡れ性を高めるために、界面活性剤又は有機溶剤を含有してもよい。アルカリ水溶液はさらに、消泡剤を含有してもよい。
アルカリ水溶液はさらに、潤滑剤を含有してもよい。潤滑剤はたとえば、二硫化モリブデン、グラファイト、二硫化タングステン、窒化ホウ素、弗化黒鉛、弗化セリウム、メラミンシアヌレート、フッ素樹脂製ワックス、プレオレフィン系ワックス、コロイダルシリカ、気相シリカ等である。潤滑剤が含有された場合、皮膜が形成された鋼板に対してホットスタンプを実施するときに鋼材表面に疵が発生するのを抑制できる。さらに、金型が摩耗するのを抑制できる。
上述のアルカリ水溶液を鋼板上に塗布して、皮膜を形成する。塗布方法は特に限定されない。塗布方法はたとえば、スプレー法、浸漬法、ロールコート法、シャワーリンガー法、エアーナイフ法等である。
アルカリ水溶液を鋼板上に塗布した後、塗布されたアルカリ水溶液を乾燥して皮膜を形成する。たとえば、鋼板を加熱して、皮膜を形成する。好ましい加熱温度は50〜200℃である。加熱温度の好ましい下限は70℃である。加熱温度の好ましい上限は110℃である。加熱方法は特に限定されない。加熱方法は例えば、熱風、直火、誘導加熱、赤外線加熱、電気炉による加熱等である。
皮膜を形成するとき、皮膜に含有されるZr量が20〜450mg/m2となるように、アルカリ水溶液中のジルコニウム化合物の濃度、アルカリ水溶液の塗布量を調整する。皮膜中のZr量が20〜450mg/m2であれば、ホットスタンプ鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。その理由としては、次の事項が考えられる。
図4は、皮膜が形成されていないホットスタンプ用鋼板を用いてホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さ(μm)とAl含有量(Al濃度、単位は質量%)との関係を示す図である。図4〜図8中の実線はAl含有量、破線はZr含有量を示す。
図5は、図4のホットスタンプ用鋼板に40mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した後、ホットスタンプを実施して成形されたホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。
図6は、図4のホットスタンプ用鋼板に100mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した場合、図7は、230mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した場合、図8は500mg/m2のZrを含有した皮膜を形成した場合の、ホットスタンプ鋼材の表面からの深さとAl含有量及びZr含有量との関係を示す図である。
図4は、次の方法により得られた。上述の本実施形態の化学組成を有する鋼板を準備した。準備された鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有した溶融亜鉛めっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理を実施して、溶融亜鉛めっき層を備える5枚のホットスタンプ用鋼板を製造した。
鋼板に対してホットスタンプを実施して鋼材を製造した。製造されたホットスタンプ鋼材の表面(めっき層)を含むサンプルを採取した。採取後、高周波グロー放電発光表面分析装置(GDS)を使用して、めっき層の表面から5μm深さまでの表層の成分分析を実施し、表層でのAl濃度(質量%)を求め、図4を得た。
他の4枚のホットスタンプ用鋼板に対して、ジルコニウム化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、めっき層上に皮膜を形成した。皮膜中のZr含有量はそれぞれ、40mg/m2、100mg/m2、230mg/m2、500mg/m2であった。各ホットスタンプ用鋼板に対して皮膜を有さない鋼板と同じ条件でホットスタンプを実施して、鋼材を製造した。さらに、皮膜を有さない鋼材と同じ方法で、各鋼材の表層のAl濃度及びZr濃度を求め、図5〜図8を得た。
図4〜図8を参照して、皮膜が形成されていない場合(図4)、Al濃度は表面から0.5μmの範囲内で最も高くなる。一方、Zrを含有した皮膜が形成された場合(図5〜図8)、Al濃度は1μmよりも深い領域で最も高くなる。つまり、Zrを含有した皮膜が形成された場合、Al濃度のピークは図4よりも鋼材内部に移動する。
以上のことから、Zrを含有する皮膜をめっき層上に形成した場合、ホットスタンプ時において、皮膜が表層でのAl酸化膜の形成を阻害していると考えられる。
一方、図5〜図8を参照して、皮膜中のZr量が増大するに従い、鋼材の1μm深さの領域付近でZr濃度が上昇する。そして、皮膜中のZr量が500mg/m2の場合、鋼材の表面から1μm深さの領域内のZr含有量が増大する。この場合、図3の反射電子像に示すとおり、ホットスタンプ後の鋼材のりん酸塩処理性が低くなる。以上のことから、皮膜中の表面近傍のZr量が高くなりすぎても、鋼材の塗装密着性が低下すると考えられる。
皮膜中のZr量が20〜450mg/m2である場合、Zrを含有する皮膜により、ホットスタンプ鋼材の表面にAl酸化膜が形成されにくい。さらに、皮膜中のZr量が適切であるため、Zr自身もりん酸塩処理性を阻害しない。そのため、ホットスタンプ鋼材のりん酸塩処理性が高まり、塗装密着性が高まる。
皮膜中のZr量の好ましい下限は40mg/m2であり、さらに好ましくは50mg/m2である。Zr量の好ましい上限は420mg/m2であり、さらに好ましくは、400mg/m2である。
以上の工程により、本実施形態のホットスタンプ用鋼板が製造される。
[ホットスタンプ用鋼板について]
以上の製造工程により製造されたホットスタンプ用鋼板は、板材である母材と、めっき層と、皮膜とを備える。母材は、上記鋼板と同じ化学組成を有する。
めっき層は、質量%で0.1〜1.0%のAlを含有する。0.1〜0.25質量%のAlを含有しためっき浴を用いて溶融亜鉛めっき処理を実施するためである。
めっき層中のAl含有量は次の方法で測定される。ホットスタンプ用鋼板のめっき層を含むサンプルを採取する。採取されたサンプルのめっき層を、10%HCl水溶液で溶解し、ICP法によりめっき層の組成分析を行う。分析結果に基づいてめっき層中のAl濃度を求める。
皮膜は、めっき層上に形成される。皮膜は、上述のとおり、20〜450mg/m2のZrを含有する。皮膜中のZr量は、次の方法で求める。ホットスタンプ用鋼板から、皮膜を含むサンプルを採取する。皮膜を10%HCl水溶液で溶解し、ICP分析を実施して皮膜中の1m2あたりのZr量を測定する。
Zr量は次の方法で測定してもよい。あらかじめ上記方法で求めておいたZr量(mg/m2)既知の鋼板を検量線として、蛍光X線分析装置を用いて、皮膜中の1m2あたりのZr量を測定する。
[ホットスタンプ工程]
皮膜が形成されたホットスタンプ用鋼板に対して、ホットスタンプを実施する。ホットスタンプには、緩加熱によるホットスタンプと、急速加熱によるホットスタンプとがある。
緩加熱によるホットスタンプでは、主に輻射熱を加熱に利用する。初めに、ホットスタンプ用鋼板を加熱炉(ガス炉、電気炉、赤外線炉等)に装入する。加熱炉内で、ホットスタンプ用鋼板をAc3点〜950℃に加熱し、この温度で保持(均熱)する。加熱によりめっき層中のZnが液化する。しかしながらホットスタンプ用鋼板を上記温度で均熱することにより、めっき層中の溶融ZnがFeと結合して固相(Fe−Zn固溶体相)となる。めっき層中の溶融ZnをFeと結合して固相化した後、加熱炉から鋼板を抽出する。このように均熱によりめっき層中の溶融ZnをFeと結合してFe−Zn固溶体相として加熱炉から抽出し鋼板を準備してもよいし、加熱炉より抽出後、ZnFe合金相として固相化するまで降温させ、プレス用鋼板を準備してもよい。固相化するまでの降温中は、プレス成形等、鋼材に応力を付与することなく冷却する。具体的には、少なくとも鋼板の温度が782℃以下になるまで冷却する。冷却後、金型を用いて鋼板をプレスしながら焼入れする。
抽出された鋼板を、金型を用いてプレスする。鋼板をプレスするとき、金型により鋼板を焼入れする。金型内には冷却媒体(たとえば水)が循環しており、金型が鋼板を抜熱して焼入れする。以上の工程により、緩加熱によりホットスタンプ鋼材を製造する。
急速加熱によるホットスタンプでは、次の工程を実施する。初めに、ホットスタンプ用鋼板をAc3点〜950℃まで急速加熱する。急速加熱はたとえば、通電加熱又は誘導加熱により実施される。平均加熱速度は20℃/秒以上である。急速加熱の場合、鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、めっき層中の溶融ZnがFeと結合して固相(Fe−Zn固溶体相又はZnFe合金相)になるまで、プレス成形等、鋼材に応力を付与することなく冷却する。具体的には、少なくとも鋼板の温度が782℃以下になるまで冷却する。冷却後、金型を用いて鋼板をプレスしながら焼入れする。
緩加熱及び急速加熱のいずれの工程においても、成形されたホットスタンプ鋼材の組織は、体積率で90%以上のマルテンサイトを含有する。そのため、ホットスタンプ鋼材は高い強度を有する。
製造されたホットスタンプ鋼材は、優れたりん酸塩処理性及び塗装密着性を有する。特に、本実施形態の製造方法は、急速加熱によるホットスタンプを実施したときに効果を発揮する。従来のホットスタンプ鋼材の製造方法において、緩加熱によるホットスタンプを実施する場合、加熱炉で鋼板が均熱される。この場合、ホットスタンプ用鋼板のめっき層の表層にAl酸化膜が形成されても、長時間の均熱によりAl酸化膜がある程度割れて分断される。一方、急速加熱によるホットスタンプを実施する場合、均熱時間が極めて短い。そのため、最表面に形成されたAl酸化膜は破壊されにくい。そのため、急速加熱によるホットスタンプでは、緩加熱によるホットスタンプと比較して、ホットスタンプ鋼材のりん酸塩処理性及び塗装密着性が低い。
本実施形態の製造方法を採用した場合、急速加熱によるホットスタンプを実施した場合であっても、ホットスタンプ鋼材は優れたりん酸塩処理性及び塗装密着性を有する。急速加熱を実施する前に、鋼板のめっき層上に適量のZrを含有した皮膜を形成するためである。
なお、本実施形態の製造方法を緩加熱によるホットスタンプを実施した場合も、従来の緩加熱によるホットスタンプを採用した製造方法と比較して、ホットスタンプ鋼材は優れたりん酸塩処理性及び塗装密着性を示す。
[合金化溶融亜鉛めっき鋼板を用いたホットスタンプの製造方法]
上述の製造方法では、溶融亜鉛めっき鋼板(GI:Galvanized Iron)を用いてホットスタンプ鋼材を製造した。しかしながら、本実施形態のホットスタンプ鋼材の製造方法では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA:Galvannealed Iron)を用いてホットスタンプ鋼材を製造してもよい。具体的には、溶融亜鉛めっき処理工程内において、合金化処理工程を実施する。
[合金化処理工程]
合金化処理工程では、溶融亜鉛めっき処理によりめっき層(溶融亜鉛めっき層)が形成された鋼板(溶融亜鉛めっき鋼板)を加熱する。加熱後、30秒以内で均熱し、その後、冷却する。上記加熱温度まで加熱した直後に冷却してもよい。均熱時間は上述の時間に限定されない。めっき層中の所望のFe濃度に応じて、加熱温度及び均熱時間は適宜設定される。
合金化処理における加熱温度の好ましい下限は470℃であり、さらに好ましくは540℃である。加熱温度の好ましい上限は600℃である。
以上の合金化処理により、めっき層として合金化溶融亜鉛めっき層を有するホットスタンプ用鋼板(GA)が製造される。以降の工程は、上述のとおりである。本実施形態の製造方法では、ホットスタンプ用鋼板のめっき層が合金化溶融亜鉛めっき層(GA)であっても、めっき層が溶融亜鉛めっき層(GI)の場合と同様の効果が得られる。
めっき層が合金化溶融亜鉛めっき層であっても、ホットスタンプ用鋼板のめっき層中のAl含有量は質量%で0.1〜1.0%である。合金化溶融亜鉛めっき層を形成する場合であっても、溶融亜鉛めっき処理に使用される浴中のAl含有量が0.1〜0.25質量%であるためである。
上述の製造方法はさらに、周知のスキンパス工程、ブランキング加工工程を含んでも良い。スキンパス工程はたとえば、溶融亜鉛めっき処理工程後であって皮膜形成工程前に実施される。ブランキング加工工程はたとえば、皮膜形成工程後であってホットスタンプ工程前に実施される。
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Fの鋼板を準備した。
表1を参照して、いずれの鋼の化学組成も、本実施形態の鋼板の化学組成を満たした。
上記化学組成の各鋼の溶鋼を製造した。溶鋼を用いて連続鋳造法によりスラブを製造した。スラブを熱間圧延し、熱延鋼板を製造した。熱延鋼板を酸洗した後、冷間圧延を実施して、冷延鋼板を製造した。冷延鋼板をホットスタンプ鋼材の製造に利用する鋼板とした。表1に示すとおり、各鋼種の鋼板の板厚はいずれも1.6mmであった。
鋼A〜Fの鋼板を利用して、表2中の試験番号1〜22の製造条件でホットスタンプ鋼材を製造した。
具体的には、試験番号1〜22の鋼板に対して、溶融亜鉛めっき処理を実施した。各試験番号で用いためっき浴のAl濃度はいずれも表2に示すとおりであり、0.1〜0.25質量%の範囲内であった。
さらに、試験番号1〜5、7〜9、11〜18、20〜22の鋼板に対しては、合金化処理を実施した。合金化処理での最高温度はいずれも530℃であり、約30秒加熱した後、室温まで冷却した。以上の工程により、試験番号1〜5、7〜9、11〜18、20〜22では、合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GA)を製造し、試験番号6、10および19では、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を製造した。表2中の「鋼板種類」欄の「GA」は合金化溶融亜鉛めっき鋼板を意味し、「GI」は溶融亜鉛めっき鋼板を意味する。溶融亜鉛めっき処理を実施した後、後述の方法により、めっき層中のAl濃度を測定した。
製造された各試験番号の鋼板に対して、ジルコニウム化合物を含有したアルカリ水溶液を用いて、皮膜形成工程を実施した。いずれの試験番号においても、アルカリ水溶液は、塩基性ジルコニウム化合物として炭酸ジルコニウムアンモニウムを15%含有した。
皮膜形成工程の後、後述の方法により、各試験番号の鋼板の皮膜中のZr量を測定した。
皮膜形成工程後、各試験番号の鋼板に対して、急速加熱によるホットスタンプを実施した。具体的には、試験番号1〜22の鋼板に対して通電加熱を実施して、870℃に加熱した。加熱速度は85℃/秒および42.5℃/秒であった。
通電加熱後、鋼板温度が650℃になるまで冷却した。冷却後、水冷ジャケットを備えた平板金型を利用して、鋼板を挟み込んでホットスタンプ鋼材(鋼板)を製造した。ホットスタンプ時冷却速度が遅い部分でも、マルテンサイト変態開始点である360℃程度まで、50℃/秒以上の冷却速度となるように焼入れした。
[評価試験]
上記製造工程により製造されたホットスタンプ用鋼板及びホットスタンプ鋼材に対して、次の評価試験を実施した。
[めっき層中のAl濃度測定試験]
各溶融亜鉛めっき鋼板(GI及びGA)のめっき層のAl濃度は、次の方法により求めた。各溶融亜鉛めっき鋼板(GI及びGA)からサンプルを採取した。採取されたサンプルのめっき層を、10%HCl水溶液で溶解し、ICP法によりめっき層の組成分析を行った。分析結果に基づいてAl濃度(質量%)を求めた。その結果、表2に示すとおり、各試験番号のめっき層のAl濃度はいずれも、0.1〜1.0質量%の範囲内であった。
[皮膜中のZr量の測定試験]
皮膜形成後の各試験番号の鋼板から、皮膜を含むサンプルを採取した。サンプルに対して、ICP測定で濃度既知となった試験片を検量線に用いて、波長分散型蛍光X線分析装置(Phillips社製、商品名PW−2400)を用いて、皮膜中の1m2あたりのZr量(mg/m2)を測定した。
[りん酸塩処理性評価試験]
各試験番号の板状のホットスタンプ鋼材に対して、日本パーカライジング株式会社製の表面調整処理剤プレパレンX(商品名)を用いて表面調整を室温で20秒実施した。さらに、日本パーカライジング株式会社製のリン酸亜鉛処理液パルボンド3020(商品名)を用いてりん酸塩処理を実施した。処理液の温度は43℃とし、板状のホットスタンプ鋼材を処理液に120秒間浸漬後、水洗・乾燥を行った。
りん酸塩処理後のホットスタンプ鋼材の表面を任意の5視野(125μm×90μm)を1000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、反射電子像(BSE)を得た。反射電子像では、観察領域をグレースケールで画像表示した。反射電子像内において、化成皮膜が形成された部分と、化成皮膜が形成されていない部分とで、コントラストが異なる。そこで、りん酸塩皮膜が形成されていない部分の明度(複数階調)の数値範囲X1を、SEM及びEDS(エネルギ分散型X線分光器)によりあらかじめ決定した。
各視野の反射電子像において、画像処理により、数値範囲X1内のコントラストを示す領域の面積A1を求めた。そして、次の式(2)に基づいて、各視野の透け面積率TR(%)を求めた。
TR=A1/A0×100 (2)
ここで、A0は視野の全面積(11250μm2)である。5視野の透け面積率TR(%)の平均を、その試験番号のホットスタンプ鋼材の透け面積率(%)と定義した。
表2中の「化成処理性」欄の「×:NA」(Not Accepted)は、透け面積率が15%以上であったことを意味する。「○:G」(Good)は、透け面積率が5%以上15%未満であったことを意味する。「◎:E」(Excellent)は、透け面積率が5%未満であったことを意味する。透け評価において、「○:G」又は「◎:E」である場合、化成処理性に優れると判断した。
[塗装密着性評価試験]
上述のりん酸塩処理を実施した後、各試験番号の板状のホットスタンプ鋼材に対して、日本ペイント株式会社製のカチオン型電着塗料を電圧160Vのスロープ通電で電着塗装し、さらに、焼き付け温度170℃で20分間焼き付け塗装した。電着塗装後の塗料の膜厚の平均は、いずれの試験番号も10μmであった。
電着塗装後、ホットスタンプ鋼材を、50℃の温度を有する5%NaCl水溶液に500時間浸漬した。浸漬後、試験面60mm×120mmの領域(面積A10=60mm×120mm=7200mm2)全面に、ポリエステル製テープを貼り付けた。その後、テープを引きはがした。テープの引きはがしにより剥離した塗膜の面積A2(mm2)を求め、式(3)に基づいて塗膜剥離率(%)を求めた。
塗膜剥離率=A2/A10×100 (3)
表2中の「塗装密着性」欄の「×:NA」は、塗膜剥離率が10.0%以上であったことを意味する。「○:G」は塗膜剥離率が10.0%未満5.0%以上であったことを意味する。「◎:E」は塗膜剥離率が5.0%未満であったことを意味する。「塗装密着性」欄において、「○:G」又は「◎:E」である場合、塗装密着性に優れると判断した。
[試験結果]
表2に試験結果を示す。試験番号2〜6、9、11、13、15及び18〜19、21〜22では、鋼板の化学組成及び皮膜中のZr量が適切であった。そのため、そのため、ホットスタンプ鋼材において、優れた化成処理性及び塗装密着性が得られた。
特に、試験番号3〜5、9、11、13及び18〜19、21〜22では、皮膜中のZr量の下限が50mg/m2以上であった。さらに、皮膜中のZr量の上限が420mg/m2以下であった。そのため、これらの試験番号では、試験番号2、6、15と比較して、さらに優れた化成処理性及び塗装密着性が得られた。
一方、試験番号1、8、17及び20では、皮膜中のZr含有量が低すぎた。そのため、化成処理性及び塗装密着性が低かった。
試験番号7、10、12、14及び16では、皮膜中のZr含有量が高すぎた。そのため、化成処理性及び塗装密着性が低かった。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
本実施形態によるホットスタンプ鋼材の製造方法は、ホットスタンプにより製造される鋼材の製造方法として広く適用可能である。急速加熱によるホットスタンプを実施する場合において、特に適する。
10,20 領域

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、
    前記鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、
    前記溶融亜鉛めっき処理された鋼板の表面にZr化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を前記表面に形成する工程と、
    前記皮膜が形成された前記鋼板をAc3点〜950℃に加熱した後、金型を用いて前記鋼板をプレスしながら焼入れしてホットスタンプ鋼材を成形する工程とを備える、ホットスタンプ鋼材の製造方法。
  2. 請求項1に記載のホットスタンプ鋼材の製造方法であって、
    前記溶融亜鉛めっき処理を実施する工程は、前記溶融亜鉛めっき処理された前記鋼板を加熱して合金化処理を実施する工程を含む、ホットスタンプ鋼材の製造方法。
  3. 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する鋼板を準備する工程と、
    前記鋼板に対して、0.1〜0.25質量%のAlを含有する溶融亜鉛めっき浴を利用した溶融亜鉛めっき処理を実施する工程と、
    前記溶融亜鉛めっき処理された鋼板の表面にZr化合物を含有するアルカリ水溶液を塗布して、20〜450mg/m2のZrを含有する皮膜を前記表面に形成する工程とを備える、ホットスタンプ用鋼板の製造方法。
  4. 請求項3に記載のホットスタンプ用鋼板の製造方法であって、
    前記溶融亜鉛めっき処理を実施する工程は、前記溶融亜鉛めっき処理された前記鋼板を加熱して合金化処理を実施する工程を含む、ホットスタンプ用鋼板の製造方法。
  5. 質量%で、C:0.05〜0.4%、Si:0.5%以下、Mn:0.5〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.01%以下、sol.Al:0.1%以下、N:0.01%以下、B:0〜0.005%、Ti:0〜0.1%、Cr:0〜0.5%、Nb:0〜0.1%、Ni:0〜1.0%、及び、Mo:0〜0.5%を含有し、残部がFe及び不純物からなる化学組成を有する母材と、
    前記母材上に形成され、溶融亜鉛めっき層、及び、合金化溶融亜鉛めっき層のいずれかであるめっき層と、
    前記めっき層上に形成される皮膜とを備え、
    前記めっき層は、0.1〜1.0質量%のAlを含有し、
    前記皮膜は、20〜450mg/m2のZrを含有する、ホットスタンプ用鋼板。
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