JP3728298B2 - 溶融Zn−Al系合金めっき鋼材およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フラックス法による均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、送電鉄塔、橋梁、道路用資材、建築金物、建築・土木用材料等の分野においては、経済性、耐久性、作業性等の観点から溶融Znめっき鋼材が多く用いられている。また、最近ではZnめっきよりも耐食性に優れるとのことからZn−Al合金めっきも使われつつある。これらZnめっきやZn−Al合金めっきにおいては、通常、めっきの付着量とその耐食性は比例関係にあり、めっきが厚いほど地鉄の露出に至るまでに長時間を要すため、耐食性は向上する。すなわち、Zn−Al合金めっきの耐食性がZnめっきの2倍あったとしても、Zn−Al合金めっきの付着量がZnめっきの半分しかない場合、その耐食性は同等となる。
【0003】
めっき付着量に影響を及ぼす因子としては、めっき浴の粘度や濡れ付着力、めっき時間、めっき温度、めっき浴からの素材の引き上げ速度、めっきのワイピング(たれきり)等が挙げられるが、これらの内、めっき浴の粘度や濡れ付着力の影響はそれほど大きくはない。また、めっき浴からの素材の引き上げ速度については、薄鋼板のめっきのような連続式においては、引き上げ速度の変更は容易であるが、フラックス式めっきのようなバッチ式のめっきにおいては、引き上げ速度の変更は難しい。めっきのワイピングについては、加工済の鋼材や溶接をした鋼材、また小物等の複雑な形状の素材をめっきする場合が多いフラックス式のめっきにおいては、均一なめっき付着量を得ることは難しく、そもそもワイピングはめっきの付着量を減少させる方向に作用するため、均一で高付着量のめっきを得るには不向きである。
【0004】
これらの理由のため、フラックス式めっきにおいては、めっき時間とめっき浴の温度によって、めっきの付着量を制御する場合が多い。めっき時間とめっき浴の温度は、地鉄とめっきの界面に生成するFe−Zn系合金層の厚みに特に大きな影響を与え、めっき時間が長いか、めっき温度が高いと合金層は厚くなり、結果としてめっきの付着量は大きくなる。ところで、この合金層の厚みは、めっき浴の組成によっても大きく異なる。例えば、浴中のAl量が0.02質量%以下であるようなZnめっきにおいては、めっき時間を長くするか、めっき温度を高くすることで、Fe−Zn系合金層は成長し、600g/m2 程度の厚いめっきも可能である。
【0005】
ところが、Alを0.1質量%以上含むようなZn−Alめっき浴では、Fe−Al系合金層が初期に生成し、これがFe−Zn系合金層の成長を妨げるために、めっき付着量が大きくなりにくい。このFe−Al系合金層は非常に安定で、例えば530℃程度までめっき温度を高くしても安定で、Fe−Zn系合金層の成長を抑制するため、めっき付着量は大きくならない。比較的高濃度のAlを含むめっき浴の場合、例えば、質量%で、10%以上Alを含むめっき浴の場合は、めっき浴温度を高くすることで、Fe−Al系合金層自体が成長するため、めっき付着量は大きくなる。しかし、めっきが不均一、つまり、局所的に厚くなり、外観が不良となるため、製品として適さない。
【0006】
また、めっき時間を長くしたとしても、Fe−Zn系合金層は成長しにくい。かなり長い時間、例えば、1時間程度めっき浴に浸漬したときは、めっき付着量が大きくなる場合もあるが、やはり不均一なめっきで、外観が不良となるため、製品として適さない。このように、高付着量で均一なZn−Al合金めっきを得ることは困難で、これまでに十分に検討されてはいない。これまでに知られている高付着量のZn−Al系合金めっきを得る方法としては次のようなものがある。例えば、通常のAlをほとんど含まない純Znめっきを行い、Fe−Zn系合金層を成長させた後に、Zn−Al系合金めっきを行うという2段めっき処理が一部で採用されている。しかしながら、この方法では、めっき浴を2槽有する必要があること、また、2回のめっき操作による作業時間の増加や維持管理費、設置場所の増加といった種々の欠点がある。
【0007】
特開平5−106002号公報(特許文献1)では、Zn−Al合金めっき浴中に1.5〜10質量%の銅を添加することで、比較的厚いZn−Al合金めっきが得られる方法が提案されている。しかし、この方法では、めっき浴の組成が変動しやすく、めっき品質にばらつきが出ることが懸念される。また、特開平9−25134号公報(特許文献2)では、鋼材を所定のフラックス処理した後に、Al濃度10〜20質量%からなるZnめっき浴に、めっき温度430〜520℃、めっき時間0.5〜10分の条件でめっきすることで、めっき厚み(めっき付着量)450g/m2 以上の厚めっきが得られるとされている。ところが、この方法では、Al濃度が10質量%以下のめっき浴の場合には適用できず、また、特殊なフラックスを使用する必要があるため、汎用性がない。
【0008】
特開平11−350095号公報(特許文献3)では、所定のフラックス処理をした後に、溶融フラックス層を有するZn−Alめっき浴に浸漬することで、高付着量のめっきが得られるとされている。ところが、この方法においても、Al含有量が30〜70質量%であるめっき浴を主対象としていることのほか、特殊なフラックスを使用しており、汎用性がないこと、また、溶融フラックス層を必要とし、その劣化に対する交換、補充に対する作業に労力を要すること、また、フラックス中に弗化物を含んでいるため作業環境の悪化が懸念されること等、種々の問題点がある。
【0009】
さらに、特開平8−283925号公報(特許文献4)では、鋼材の表面粗度を一定の範囲内とし、さらに、めっき浴中に一定の鉄分成分を含ませることによって、高付着量で均一なZn−Al−Siめっきを得られるとされている。しかしながら、この方法は、Al−Siめっきを対象としており、めっき浴温が580℃以上と高いため、Znを主体とするめっきの場合には不適である。
【0010】
一方、特開平5−117830号公報(特許文献5)には、その付着量は明言されてはいないが、溶融Zn−Alめっき浴に特定量のMnを添加することで、不めっきを防止し、かつ表面にざらつきのない溶融Zn合金めっきが得られると記載されている。しかしながら、この方法では不めっきのないのめっきを得ることは可能であるが、Mnはめっきの耐食性を低下させる傾向にあるため、腐食環境の厳しい場所や長期耐久性を必要とされる場合には、適当でない。
以上のように、高付着量のZn−Al合金めっきを得る方法として、数種の方法が見出されているものの、作業性や作業環境、品質、また、耐久性といった面で問題点がある。また、高付着量のめっきができたとしても、安定的に均一な合金めっきを得ることは難しい。
【0011】
【引用文献】
(1)特許文献1(特開平5−106002号公報)
(2)特許文献2(特開平9−25134号公報)
(3)特許文献3(特開平11−350095号公報)
(4)特許文献4(特開平8−283925号公報)
(5)特許文献5(特開平5−117830号公報)
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このようなZn−Al合金めっきにおける従来の諸問題を解決し、フラックス法による、均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の従来の技術が抱える問題点を解決し、種々の組成のZn−Al系合金めっきについて、均一で高付着量かつ高耐食性のめっきを安定的に得る方法について鋭意検討を重ねた結果、めっき層中にMn及びMgを複合添加することで、均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を実現できることが分かり、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下の内容を要旨とする。
(1)Al:0.1〜15質量%を含み、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn−Al系合金めっき鋼材において、前記溶融Zn−Al系合金めっき層がMn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、及び、Si:0.05〜0.2質量%を含み、そのめっき付着量が732g/m2 〜1000g/m2 であることを特徴とする溶融Zn−Al系合金めっき鋼材。
【0015】
(2)フラックス処理をした鋼材を溶融Zn−Al系合金めっき浴に浸漬して溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を製造する方法であって、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴が、Al:0.1〜15質量%、Mn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、及び、Si:0.05〜0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、該めっき浴温が430〜550℃で、めっき浴浸漬時間が2分以上30分以内であることを特徴とする溶融Zn−Al系合金めっき鋼材の製造方法にある。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明における鋼材のめっき層中の成分について説明する。
本発明において、めっき層中のMnは、Zn−Al系合金めっきの付着量を大きくし、また、めっきを均一にさせる効果があり、0.5〜1質量%の範囲とする必要がある。Mnが0.5質量%未満ではその効果が不十分で、めっき付着量が732g/m2 未満の薄く不均一なめっきとなる。逆に、1質量%を超えると、めっき層と鋼材の密着性が低下するほか、耐食性が低下する傾向にあり、さらに、多量のドロスを形成し、めっき作業に問題を生じる。好ましいMnの範囲は0.1〜0.5質量%、より好ましくは0.2〜0.4質量%の範囲である。
【0017】
Mgは、Mnと複合添加することで、Zn−Al系合金めっき層の耐食性を低下させずに、めっき付着量を大きくさせる効果があり、0.1〜15質量%の範囲とする必要がある。その機構については明言をし得ないが、0.1質量%未満では耐食性を向上させる効果に乏しく、15質量%を超えると耐食性は向上するものの、めっき層が脆くなり、加工性が低下するからである。そのため、本発明におけるMgの範囲を0.1〜15質量%とする。好ましい範囲は、0.5〜3質量%である。
【0018】
Alは、めっき層の耐食性を向上させる効果がある。本発明においては、めっき層中のAlの範囲を0.1〜15質量%としているが、その理由は次の通りである。Alが0.1質量%未満では、耐食性を向上させる効果に乏しい。また、Alが0.1質量%未満では、めっき層と地鉄界面に生成する合金層はFe−Zn系合金が主体であり、Alが0.05質量%を超すと、めっき層と地鉄界面に生成する合金層は非成長型のFe−Al系合金層が主体である。
【0019】
本発明においては、Mn及びMgによってFe−Al系合金層の制御を行っているために、その下限値を0.1質量%とした。Alが15質量%を超えた場合においても、Mn及びMgによるFe−Al系合金層の制御の効果は認められるが、外観が粗悪となる他、Mn及びMgの多量添加が必要となり、加工性が低下すること等の問題が生じるため、その上限値を15質量%とした。上記の問題を解決すれば、15質量%を超えるAlを含有する溶融Zn−Al系合金めっきにおいても、本発明を応用することは可能である。好ましいAlの範囲は、0.2〜12質量%である。
【0020】
本発明のめっきには、さらにSiを含ませる。Siは、めっきの耐食性及び加工性をさらに向上させる作用がある。この作用を効果的に得るには、本発明におけるSiの範囲を0.05〜0.2質量%の範囲とすることが好ましい。本発明のめっき付着量は732g/m2 〜1000g/m2 であることが必要である。732g/m2 未満では耐食性に劣る。1000g/m2 より大きい場合は、めっきと鋼材の密着性が低下するため不適である。
【0021】
本発明における被めっき材である鋼材の種類は限定されない。普通鋼、低合金鋼、高合金鋼、鋳物等、その鋼成分には限定されるものではなく、また、その形状についても、板、鋼管、形鋼、線材や、溶接やボルト等で接合した組み合わせ鋼材、ボルト、ナット等の小物等、また、鉄塔、橋梁部材等の鋼製部材にも適用でき、めっき浴に浸漬し、めっき処理が可能なものであれば何でも良い。但し、鋼成分によっては、めっき付着量に影響を与えるため、事前にめっき条件を決めておく必要がある。
【0022】
本発明の鋼材を製造するには、まず鋼材表面を公知の方法で前処理を行う。前処理としては、例えば一般的に行われている塩酸、硫酸等による酸洗のほか、ショットブラスト、グリッドブラスト、サンドブラスト、グラインダー処理等を実施することができる。鋼材の表面が十分に清浄化されれば、これら前処理の処理条件は何ら問わない。例えば、塩酸や硫酸による酸洗の条件としては、水溶液濃度:10〜20質量%、浴温:常温〜80℃、酸洗時間:5〜30分といった例を挙げることができる。
【0023】
次いで、フラックス処理をする。ここで言うフラックス処理とは、鋼材表面にフラックスを塗布、付着させる処理のことであり、フラックスの成分やその処理方法等については特に限定するものではなく、従来から知られている方法で良い。例えば、フラックス成分としては、塩化亜鉛、塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、塩化リチウム、塩化錫、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化鉛、塩化ナトリウム、塩化アンチモン、塩化インジウム、塩化ビスマス、塩化カドミウム等の塩化物や、アルカリ金属、アルカリ土類金属のフッ化物、ケイフッ化物、フッ化水素物等を挙げることができる。
【0024】
処理方法としては、乾式フラックス、湿式フラックス、溶融フラックス等を挙げることができる。乾式フラックスとは、前記フラックスを水溶液として、鋼材に付着させた後、乾燥し、その後めっき浴に浸漬するものである。湿式フラックスとは、前記フラックスをめっき浴上に浮遊させて、適当な厚みのフラックス層を形成させ、このフラックス層を介して鋼材をめっき浴に浸漬するものである。溶融フラックスとは、前記フラックス自体を溶融させた浴に鋼材を浸漬した後に、めっき浴に浸漬するものである。
【0025】
フラックス処理した鋼材は、Al:0.1〜15質量%、Mn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、Si:0.05〜0.2質量%、残部がZn及び不可避的不純物を含有する浴温430〜550℃のZn−Al系合金めっき浴に浸漬する。上記組成のめっき浴に浸漬することで、本発明の、Al:0.1〜15質量%、Mn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、Si:0.05〜0.2質量%を含み、残部がZn及び不可避的不純物からなる、めっき付着量が732g/m2 〜1000g/m2 の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を得ることができる。
【0026】
めっき浴温を430〜550℃の範囲に規定した理由は、この範囲外のめっき浴温度では本発明の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材が得られないばかりか、その他種々の問題を生じるからである。すなわち、めっき浴温が430℃未満では、めっき浴の流動性が低下して、不均一で外観が劣悪なめっきとなりやすく、また、めっき付着量が大きくならない。また、550℃を超える場合は、めっき浴中に多量のドロスが発生し、操業に困難をきたすだけでなく、このドロスが被めっき材の表面に付着し、外観が不良のめっきとなりやすい。また、めっき付着量が極度に多くなりやすい。さらに、めっき釜の寿命も短くなる。好ましいめっき温度は450〜500℃の範囲である。
【0027】
被めっき材をめっき浴に浸漬する時間は、2分以上30分以内である。この範囲内であれば、本発明の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を一層安定的に得ることができる。めっき浴中に上記範囲のSiを含ませることで、均一で高付着量、高耐食性、かつ密着性に優れた溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を得ることができる。
【0028】
また、このZn−Al系合金めっき浴には、例えば、Fe、Pb、Cd、Sn、Cu、Sb、Bi、Ag、Ni、As等が不可避的不純物として混入していても問題はない。被めっき材をめっき浴へ浸漬する速度は何ら規定するものではない。例えば、鋼管の連続めっきにおけるテーラーウィルソン方式のように、鋼管をめっき浴に落下させるような速い浸漬速度でも良いし、あるいは、鉄塔部材のような大型鋼製部材をめっきする場合のように、クレーンで被めっき材を吊り上げた後、ゆっくりとめっき浴に浸漬させるような遅い浸漬速度でもよい。
【0029】
被めっき材をめっき浴から取り出す速度も特に規定するものでない。テーラーウィルソン方式のように0.7〜2m/秒程度の高速で取り出しても良いし、あるいはクレーンを用いた場合のように0.2m/秒程度の低速で取り出しても良い。さらにめっき後の外観を良好にさせるため、必要に応じて水冷や湯冷による冷却を行っても良い。
以上の手順、条件で処理することで、均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を得ることができる。
【0030】
【実施例】
以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。
(実施例1)
大きさが50mm×100mm×厚さ2.3mmの黒皮付き普通鋼熱延鋼材を、15%塩酸中に30分間浸漬した後、引き上げ、スケール残りがないことを確認した。次いで、乾式フラックス処理を行った。乾式フラックス処理は、ZnCl2 :200g/l、NH4 Cl:40g/lからなる液温70℃のフラックスに鋼材を10秒間浸漬した後に引き上げ、200℃に設定した電気オーブンの中で5分間乾燥させる処理とした。その後、表1に示す組成のZn合金めっき浴(Zn−0.2質量%Al−0.5質量%Mgめっき浴を基準に、Mn、Siを添加)に2分間浸漬し、引き上げ後、湯冷して試験片を作製した。
【0031】
このようにして得られた試験片のめっき付着量は、めっきを塩酸で溶解し、その前後の質量変化から求めた。また、塩酸溶解によって得られためっき層を溶かし込んだ溶液を用い、ICP発光分析でそのめっき組成を分析した。また、その外観を目視観察し、下記基準で評価した。可以上の評点を合格とした。
良:表面が平滑で、めっき欠陥が全く無い。
可:凹凸がやや大きく、めっきやけが若干認められる。
劣:不めっきやピンホール、ドロス付着等が存在、又は、凹凸がやや多く、めっきや けが試験片面積の50%以上存在する。
なお、ここでいうめっきやけとは合金層がめっき表層まで成長していることである。
【0032】
また、90°折り曲げ試験を行い、めっきの密着性を目視観察による下記基準で評価した。可以上の評点を合格とした。
良:加工部にめっき割れが全く無い。
可:加工部に割れが僅かに存在。
劣:割れが加工部全面に存在、又は、加工部のめっきが剥離。
【0033】
耐食性については、塩水噴霧試験(35℃、5%NaCl)を2000時間実施した後のめっきの平均腐食減量を求め、下記基準で評価し、可以上の判定であれば合格とした。
優:めっき平均腐食減量率が0.1g/m2 /hr未満
良:めっき平均腐食減量率が0.1〜0.5g/m2 /hr
可:めっき平均腐食減量率が0.5〜1.0g/m2 /hr
劣:めっき平均腐食減量率が1.0g/m2 /hr超え、又は、めっきが消耗し赤錆 が発生
これらの試験結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
No.1は、Zn−0.2質量%Al−0.5質量%Mgめっき浴を基準に、Mnを0.5質量%、Siを0.1質量%含ませた場合である。得られためっき層中の成分は、いずれも本発明の範囲内であり、めっき付着量、外観、密着性、耐食性のいずれも良好である。
【0036】
(比較例)
大きさが50mm×100mm×厚さ2.3mmの黒皮付き普通鋼熱延鋼材を、15%塩酸中に30分間浸漬した後、引き上げ、スケール残りがないことを確認した。次いで、乾式フラックス処理を行った。乾式フラックス処理は、ZnCl2 :200g/l、NH4 Cl:40g/lからなる液温70℃のフラックスに鋼材を10秒間浸漬した後に引き上げ、200℃に設定した電気オーブンの中で5分間乾燥させる処理とした。その後、表2に示す組成のZn系合金めっき浴に2分間浸漬し、引き上げ後、湯冷して試験片を作製した。
このようにして得られた試験片のめっき付着量、外観、めっき密着性、耐食性は、実施例1と同様の方法にて評価し、結果を表2に示した。
【0037】
【表2】
【0038】
No.2は、めっき層中にAl、Mn、Mg、Siのいずれも含まないZnめっきをした場合である。耐食性に劣るため不適である。No.3は、めっき層中にAlを0.4質量%含む場合である。めっき付着量が少なく(732g/m2 未満)、耐食性に劣る(赤錆が発生)ため不適である。No.4は、めっき層中にAl:0.4質量%、Mn:0.1質量%を、No.5はめっき層中にAl:0.4質量%、Mn:1.0質量%を含む場合である。いずれもめっき付着量は多くなるものの、耐食性に劣る(めっき平均腐食減量が1.0g/m2 /hr以上)ため不適である。
【0039】
No.6は、めっき層中にAl:0.4質量%、Mg:0.2質量%を、No.7は、めっき層中にAl:0.4質量%、Mg:10質量%を含む場合である。いずれもめっき付着量が少なく(732g/m2 未満)、耐食性に劣る(赤錆が発生)ため不適である。No.8は、めっき層中にAl:0.4質量%、Mn:0.1質量%、Mg:20質量%含む場合である。めっき付着量は多く、耐食性も良好であるが、めっきの密着性に劣るため不適である。No.9は、めっき層中にAl:0.4質量%、Mn:2.5質量%、Mg:0.5質量%含む場合である。耐食性は良好であるが、めっき付着量が極度に多く(1000g/m2 より多い)、密着性に劣るため不適である。
【0040】
No.10、No.11は、それぞれ、めっき層中にMn:0.1質量%、Mg:0.5質量%を含み、いずれも本発明の範囲内であるが、Alのみが本発明の範囲外である場合、すなわち、Al:0.05質量%(No.10)、Al:20質量%(No.11)である場合である。Alが0.05質量%の場合、めっき付着量が極度に多く(1000g/m2 より多い)、さらに耐食性に劣るため不適である。また、Alが20質量%である場合は、めっきの付着量及び耐食性は良好であるが、外観が不均一で劣るため不適である。
【0041】
【発明の効果】
以上、本発明の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材は、従来は不可能であった、フラックス法による均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を実現したものである。すなわち、Zn−Al系合金めっき中にMn及びMgを含ませ、めっき浴温を所定の範囲内とすることで、均一で高付着量、高耐食性かつ外観が良好な溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、従来のめっき設備を改造することなく、めっき浴組成を変更するだけで、均一で高付着量かつ高耐食性の溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を安価、簡便に製造することができる。このため、長期耐久性が求められる送電鉄塔、橋梁、道路用資材、建築金物等、建築・土木用材料等にこの鋼材を適用することで、これら施設のメンテナンスフリーが実現でき、産業上の価値は極めて大きい。
Claims (2)
- Al:0.1〜15質量%を含み、残部がZn及び不可避的不純物からなる溶融Zn−Al系合金めっき鋼材において、前記溶融Zn−Al系合金めっき層がMn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、及び、Si:0.05〜0.2質量%を含み、そのめっき付着量が732g/m2 〜1000g/m2 であることを特徴とする溶融Zn−Al系合金めっき鋼材。
- フラックス処理をした鋼材を溶融Zn−Al系合金めっき浴に浸漬して溶融Zn−Al系合金めっき鋼材を製造する方法であって、前記溶融Zn−Al系合金めっき浴が、Al:0.1〜15質量%、Mn:0.5〜1質量%、Mg:0.1〜15質量%、及び、Si:0.05〜0.2質量%を含有し、残部がZn及び不可避的不純物からなり、該めっき浴温が430〜550℃で、めっき浴浸漬時間が2分以上30分以内であることを特徴とする溶融Zn−Al系合金めっき鋼材の製造方法。
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