JP2008082532A - 摺動部材、及び該部材を含む摺動部品 - Google Patents

摺動部材、及び該部材を含む摺動部品 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れた摺動部材及び該摺動部材を含む摺動部品を提供する。
【解決手段】金属、セラミックス又はガラスである基材表面に、電解めっき、無電解めっき、溶射、接着、蒸着及びスパッタリングから選ばれる少なくとも1種の形成方法により形成され、層の厚さが、0.1〜1000μmであるAg層を形成してなる摺動部材で、基材表面にAg層を形成させることにより、高強度で、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等に優れた摺動部材を得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、摺動部材、及び該部材を含む摺動部品に関する。
自動車、自転車、船舶、飛行機等の乗物において、運転者の負担を軽減すべく、駆動力の伝達、速度及び進行方向の制御等を目的とした摺動部品に関するニーズがある。また、産業用設備においては、生産効率を向上すべく、物体の搬送や、回転、振動、往復等の動力伝達、さらには、それらの速度の制御等を目的とした摺動部品に関するニーズがある。これらのニーズに応えるためには、特に、油圧又は電力を用いることにより、小さな力で大きな効果を得ることができる摺動部品や短いレスポンスタイムで反応できるような摺動部品が求められている。これらの摺動部品は、通常、高圧下、高摺動下、高温下に晒される上、急激な制御(急冷、衝撃等)による影響を受けうる環境下にある。また、機能部品であるため、経時的な変色については問題ないが、剥離、摩耗等に対する耐久性が要求される。
さらに、DVDプレーヤー、家庭用ゲーム機、掃除機、洗濯乾燥機、クーラー、冷蔵庫、循環式浄水器、パソコン、プリンター等の家庭用機器のモーターにも駆動力を伝達するための摺動部品が用いられる。このモーターは、家庭用機器の種類によって様々であり、省電力であることや長期耐久性を有することが求められている。この摺動部品は、高摺動下に晒される上、通常、小型化されたパッケージ中に凝縮して設置される環境下にある。
従って、このような摺動部品は、高強度であるだけでなく、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等を有する必要がある。
従来、摺動部品に用いられる摺動部材として、基材表面にフッ素樹脂を含む皮膜を形成してなるものが知られている。
例えば、特許文献1には、フッ素化合物微粒子を含有するニッケル−鉄合金複合メッキ皮膜を摺動面に形成した摺動部材が開示されている。この摺動部材は、例えば、高強度、滑り性、耐衝撃性等の点では要求性能を概ね満足している。
しかしながら、この摺動部材は、有機材料であるフッ素樹脂を含有するため、耐熱性が低く、260℃以上の条件下での使用は困難である。
また、市販されている摺動部材として、硬質クロムめっきにより皮膜の硬度を向上させたものもあるが、この摺動部材は、皮膜が硬すぎるため欠けが生じやすい、金属の焼きつきが発生しやすい等の欠点を有する。
このように、従来の摺動部材は、使用条件の制約が大きく、適用範囲が限定されるという問題を有する。
従って、特に、耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れた摺動部材の開発が切望されている。
特開2001−081594
本発明は、耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れた摺動部材及び該摺動部材を含む摺動部品を提供することを主な目的とする。
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の摺動部材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の摺動部材及び該部材を含む摺動部品に係る。
1. 基材表面に、Ag層を形成してなる摺動部材。
2. 基材が、金属、セラミックス又はガラスである上記項1に記載の摺動部材。
3. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である上記項2に記載の摺動部材。
4. Ag層が、電解めっき、無電解めっき、溶射、接着、蒸着及びスパッタリングから選ばれる少なくとも1種の形成方法により形成されてなる上記項1〜3のいずれかに記載の摺動部材。
5. Ag層の厚さが、0.1〜1000μmである上記項1〜4のいずれかに記載の摺動部材。
6. 上記項1〜5のいずれかに記載の摺動部材を含む摺動部品。
7. 操舵装置補助具用、搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用である上記項6に記載の摺動部品。
8. 音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用である上記項6に記載の摺動部品。
摺動部材
本発明の摺動部材は、基材表面に、Ag層を形成してなるものである。
本発明によれば、基材表面に、Ag層を形成させることにより、高強度で、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等に優れた摺動部材を得ることができる。特に、本発明の摺動部材は、耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れているため、操舵装置補助具用、搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用摺動部品の構成材料として有用である。また、本発明の摺動部材は、音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用摺動部品の構成材料としても有用である。
しかも、Ag層は抗菌作用を発揮できる。そのため、本発明の摺動部材は、付着した潤滑油等に不純物が含まれる場合の菌の増殖を抑制することができるため、異臭や腐食を有効に防止できる。
また、本発明の摺動部材は、白銀色であり、従来の摺動部材に比べて高い意匠性を有する。
基材は、Ag層の形成が可能な基材であればよく、特に限定されるものではないが、金属、セラミックス又はガラスが好ましい。基材として、金属、セラミックス又はガラスを用いることにより、高強度、耐熱性、耐熱衝撃性等の性能を満足する摺動部材を好適に得ることができる。
基材に用いる金属としては、Ag層を好適に形成できるものであればよいが、特に合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム、アルミニウム合金が好ましい。
合金鋼としては、例えばステンレス鋼、耐火鋼、耐熱鋼等が挙げられる。
アルミニウム合金としては、JIS規格2000系〜7000系のアルミニウム合金を好適に使用できる。JIS規格2000系〜7000系のアルミニウム合金としては、例えば、2000系のAl−Cu合金、3000系のAl−Mn合金、4000系のAl−Si合金、5000系のAl−Mg合金、6000系のAl−Mn−Si系合金、7000系のAl−Zn−Mg系合金等が挙げられる。
セラミックスとしては、例えば、アルミナ系セラミックス、シリカ系セラミックス、チタニア系セラミックス、炭化珪素系セラミックス、ジルコニア系セラミックス等が挙げられる。この中でも特に、ジルコニア系セラミックスが好ましい。
ガラスとしては、例えば、フリットガラス、結晶化ガラス、ホーローガラス等が挙げられる。その他、水ガラスを乾燥させて得られる硬化体も使用できる。
基材は、金属、セラミックス、ガラス等の基材構成材料を公知の方法により所定形状に加工することにより作製できる。例えば、基材構成材料として普通鋼、鋳鉄等の金属を用いる場合には、これらを溶解後、所定の部材形状を有する鋳鉄に流し込むことにより基材を作製できる。
本発明の摺動部材は、Ag層を基材表面の全体に有することが好ましいが、場合によっては、Ag層を基材表面の一部に有していてもよい。すなわち、摺動の際、他の構成部材(部品)と直接接触する部分にのみAg層を形成してもよい。
Ag層の厚さは特に限定されないが、通常0.1〜1000μm、好ましくは2〜20μm程度である。
Ag層は、電解めっき、無電解めっき、溶射、接着、蒸着及びスパッタリングから選ばれる少なくとも1種の形成方法により形成されてなるものが好ましい。このような形成方法によりAg層を形成させる場合、Ag層の厚みが均一になりやすい。
Ag層の形成方法
基材表面へのAg層の形成方法としては、常法に従えばよく特に限定されるものではないが、電解めっき、無電解めっき、溶射、接着、蒸着又はスパッタリングが好ましい。これらの形成方法によれば、均一な膜厚のAg層を好適に形成させることができる。これらの形成方法は、基材の形状、基材の厚み、目的とするAg層の厚み等に応じて2種以上の方法を併用してもよい。
以下、基材表面へのAg層の形成方法として、電解めっきを行うことにより基材表面にAg層を形成する場合を代表例として具体的に説明する。
電解めっきを行う方法としては、基材表面にAg層を形成できればよく、特に限定されるものではない。例えば、基材に対して、浸漬脱脂処理、電解脱脂処理、活性化処理、ストライク銀めっき処理及び銀めっき処理を順に行う方法が挙げられる。
浸漬脱脂処理
先ず、基材を脱脂液に浸漬することにより基材表面の脂分を脱脂する。
脱脂液としては、例えば、苛性ソーダ溶液、中性洗剤等を使用できる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
脱脂液の濃度は、特に限定されるものではなく、脱脂を好適に行うことができ、且つ、廃棄処理を容易に行える範囲に設定すればよい。例えば、脱脂液として苛性ソーダ溶液を用いる場合、苛性ソーダ溶液の濃度は、50〜100g/L程度が好ましい。
前記脱脂に際しては、超音波洗浄機を併用してもよい。
脱脂液の温度は、特に限定されないが、室温〜80℃程度が好ましい。また、浸漬時間は、脱脂液の温度、使用する脱脂液の種類等に応じて適宜設定すればよいが、40〜80℃の場合は5分〜1時間程度、40℃以下の場合は、30分〜半日程度が好ましい。
脱脂処理後は、必要に応じて基材表面を水洗することにより脱脂液を除去すればよい。
電解脱脂処理
浸漬脱脂処理を行った後、基材を電解液に浸浸することにより電解脱脂を行う。
電解液としては、特に限定されず、通常、アルカリ脱脂剤(例えば、苛性ソーダ溶液等)を用いることができる。
電解条件については、微細な凹凸に付着した脂分、バフカス等を除去できる程度であればよく、特に限定されるものではないが、通常、電流密度0.5〜5A/dm程度で、1〜10分間程度電解脱脂処理を行うことが好ましい。
電解脱脂処理後は、必要に応じて基材表面を水洗することにより脱脂液を除去すればよい。
活性化処理
浸漬脱脂処理を行った後、基材表面に対し、活性化処理を行う。これにより基材表面のサビや熱処理により生成する黒皮を除去することができ、結果、銀めっき効率を向上させることができる。
活性化処理を行う方法としては、例えば基材を酸水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
酸としては、基材の種類等に応じて適宜選択でき、例えば、塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上で使用できる。
酸水溶液における酸の含有量は、3〜20重量%程度であればよく、特に限定されるものではない。
酸水溶液の温度は、基材の種類等に応じて適宜設定すればく、通常10〜40℃程度である。基材の浸漬時間は、1〜10分間程度であればよい。
ストライク銀めっき処理
活性化処理を行った後、基材表面に対し、ストライク銀めっき(予備めっき)処理を行う。ストライク銀めっき処理を行うことにより、Ag層の付着性、密着性等を向上させることができる。
めっき浴としては、例えば、1〜2g/lのシアン化銀及び80〜150g/lのシアン化カリウムを含有するめっき浴を使用できる。
めっき浴の温度は、常温(20℃)でよい。また、基材の浸漬時間は後述する銀めっき処理の浸漬時間よりも短く、通常5〜20秒程度である。
電流密度は2〜3A/dm2程度であればよい。
基材がセラミックス、ステンレス、ガラスである場合、ストライク銀めっき処理に先立って、無電解めっき等により基材表面に導電処理を行うことが好ましい。基材がセラミックス、ステンレス、ガラスである場合、電解めっきによりAg層を形成しにくいが、電解めっきに先だって、無電解めっき等による導電性処理を行うことにより、電解めっきにより好適にAg層を形成することが可能となる。
なお、前記導電処理に先だって、基材表面に触媒化処理を施すことが好ましい。触媒化処理を行うことにより、基材表面に無電解めっき等を好適に行うことができる。
触媒化処理は、公知の方法に従って行えばよい。公知の方法としては、例えば、塩化パラジウム、塩化ナトリウム等の塩を含む酢酸緩衝液等に活性化処理後の基材を浸漬する方法が挙げられる。
酢酸緩衝溶液における塩の含有量は、特に限定されないが、1〜10重量%程度が好ましい。
銀めっき処理
ストライク銀めっき処理により得られた処理物に対し、銀めっき(本めっき)処理を行う。
銀めっき浴としては、例えば、(1)5〜50g/l、好ましくは5〜10g/lのシアン化銀、(2)13〜115g/l、好ましくは13〜25g/lのシアン化カリウム、及び(3)9〜11g/l、好ましくは9.5〜10.5g/lの炭酸カリウムを含有する混合溶液を使用できる。
めっき浴の温度は、常温(20℃)でよい。また、基材の浸漬時間は、通常5〜30分間程度、好ましくは15〜25分間程度である。
電流密度は0.2〜1A/dm2程度、好ましくは0.2〜0.5A/dm程度である。
銀めっき処理後は、必要に応じて水洗、乾燥等の後処理を行えばよい。
摺動部品
本発明の摺動部品は、上記摺動部材を含むことを特徴とする。具体的には、上記摺動部材を当該部材の形状に応じてそのまま摺動部品とする場合、上記摺動部材を摺動部品の一部として含む場合、複数個の上記摺動部材を組み合わせて摺動部品とする場合等が挙げられる。
本発明の摺動部品は、特に、操舵装置補助具用、搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用として好適に使用できる。即ち、本発明の摺動部品は、自動車、自転車、船舶、飛行機等の乗り物において、駆動力の伝達、速度及び進行方向の制御等を目的とした摺動部品として有効に使用できる。また、本発明の摺動部品は、産業用設備において、物体の搬送や、回転、振動、往復等の動力伝達、さらには、それらの速度の制御等を目的とした摺動部品として有効に使用できる。
さらに、本発明の摺動部品は、音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用としても好適に使用できる。
本発明によれば、基材表面に、Ag層を形成することにより、高強度で、耐衝撃性、耐熱衝撃性、耐食性、耐熱性、耐摩耗性等に優れた摺動部材を得ることができる。特に、本発明の摺動部材は、耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れているため、操舵装置補助具用、搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用摺動部品や音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用摺動部品の構成材料として有用である。
しかも、Ag層は抗菌作用を有するため、本発明の摺動部材は、付着した潤滑油等に不純物が含まれる場合の菌の増殖を抑制することができるため、異臭や腐食を有効に防止できる。
また、Ag層を有する本発明の摺動部材は白銀色であることから、高い意匠性が要求される摺動部品の部材として好適に使用できる。
本発明の摺動部品は、上記摺動部材を含むため、自動車、自転車、船舶、飛行機等の乗り物において、駆動力の伝達、速度及び進行方向の制御等を目的とした操舵装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用摺動部品として好適に使用できる。
また、本発明の摺動部品は、産業用設備において、物体の搬送や、回転、振動、往復等の動力伝達、さらには、それらの速度の制御等を目的とした搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用摺動部品として好適に使用できる。
さらに、本発明の摺動部品は、音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用摺動部品として好適に使用できる。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されるものではない。
実施例1
<基材>
基材として、鋳鉄(SS400)により作製したテストピース(φ50×2t)を用意した。
<Ag層の形成>
前記基材に対して、浸漬脱脂処理、電解脱脂処理、活性化処理、ストライク銀めっき処理及び銀めっき処理を行うことにより、基材表面に厚み5μmのAg層を形成させて摺動部材を作製した。
なお、浸漬脱脂処理、電解脱脂処理、活性化処理、ストライク銀めっき処理及び銀めっき処理は下記の通り行った。
(1)浸漬脱脂処理
基材を50℃の脱脂液に10分間浸漬することにより浸漬脱脂を行った。
脱脂液としては、商標名:NTクリーン(奥野製薬工業株式会社製、50g/l)を使用した。
その後、基材を脱脂液から取り出し、水洗した。
(2)電解脱脂処理
(1)の処理を行った後、基材を50℃の電解液に浸漬した状態で2分間電解脱脂を行った。
電解液としては、アルカリ脱脂剤(商標名「メルテックスクリーナー160」メルテックス株式会社製、濃度:50g/l)を使用した。
電解条件は、下記の通りである。
電流密度:1A/dm
処理時間:5分間
その後、基材を電解液から取り出し、水洗した。
(3)活性化処理
(2)の処理を行った後、基材を20℃の塩酸水溶液(10重量%)に2分間浸漬することにより活性化処理を行った。
(4)ストライク銀めっき処理
(3)の処理を行った後、基材を25℃の電解液(シアン化銀:2g/l、シアン化カリウム:80g/l)に浸漬することにより基材表面にストライク銀めっき処理を行った。
電解条件は下記の通りである。
電流密度:2.5A/dm2
処理時間:10秒間
(5)銀めっき処理
(4)の処理を行った後、得られた処理物を25℃の電解液(シアン化銀:10g/l、シアン化カリウム:20g/l)に浸漬して基材表面に銀めっき処理を行った。
電解条件は下記の通りである。
電流密度:0.4A/dm2
処理時間:25分間
実施例2
<基材>
基材として、ジルコニア系セラミックス(ZrO:約95%、Y:約4%、その他(Al、Fe等):約1%)により作製したテストピース(φ50×2t)を用意した。
<Ag層の形成>
活性化処理を行った後、触媒化処理を行い、さらに無電解めっき処理を行うことにより導電処理された基材に対してストライク銀めっき処理を行った以外は、実施例1と同様の方法により、基材表面に厚み5μmのAg層を形成させて、摺動部材を作製した。
触媒化処理は、活性化処理後の基材を塩化パラジウム(II)(6×10−3重量%)及び塩化ナトリウム(0.6重量%)を溶解したpH5の酢酸緩衝液500ml(濃度:0.3モルdm−3)に浸漬した後、室温(20℃)で30分間静置することにより行った。
無電解めっき処理は、触媒化処理後の基材を、スクリュー攪拌下、無電解ニッケルめっき浴に浸漬することにより行った。
無電解ニッケルめっき浴のめっき液の組成、液温及びpHは下記の通りである。
めっき液組成:硫酸ニッケル20g/l、次亜リン酸ナトリウム25g/L、乳酸25g/L及びプロピオン酸3g/L
液温:90℃
pH:4.6
無電解めっき処理により形成したニッケル層の厚みは1μmであった。
試験例1(外観観察)
実施例1〜2で得られた摺動部材の表面の状態を肉眼観察により確認した。
試験例2(均一性)
実施例1〜2で得られた摺動部材のAg層に、色の異なる斑点模様、キズ等がないかどうかを肉眼観察により確認した。実施例1〜2で得られた摺動部材の表面に、色の異なる斑点模様、キズ等は存在しなかった。
試験例3(密着性)
実施例1〜2で得られた摺動部材のAg層の密着性を確認した。具体的には、に、実施例1〜2で得られた摺動部材にニチバンセロテープ(登録商標)を貼り付けた後、そのテープを剥がすことによりAg層が剥離しないかどうかを肉眼観察により確認した。実施例1〜2で得られた摺動部材からニチバンテープを剥がしてもAg層は剥離しなかった。
試験例4(耐熱性)
実施例1〜2で得られた摺動部材を800℃の電気炉で20分間加熱し、室温まで徐冷した後の摺動部材の外観を肉眼観察により確認して、摺動部材の損傷の有無を調べた。
試験例5(耐熱衝撃性)
実施例1〜2で得られた摺動部材を300℃の電気炉で20分間加熱し、0℃の氷水で急冷した後の摺動部材の外観を肉眼観察により確認して、摺動部材の損傷の有無を調べた。
試験例6(耐摩耗性)
実施例1〜2で得られた摺動部材に対して、ステンレス球を1kg/cmの荷重をかけた状態で、5cmの距離を往復させた。ステンレス球の移動速度は、10cm/secであった。ステンレス球を2万回往復させた後の摺動部材を秤量計にて秤量することにより重量変化を調べた。
なお、比較のために、鋳鉄(SS400)により作製したテストピース(φ50×2t)(比較例1)、ジルコニア系セラミックスにより作製したテストピース(φ50×2t)(比較例2)、ステンレス鋼により作製したテストピース(φ50×2t)(比較例3)、及び比較例1のテストピースの表面にNi−Cr層を形成したもの(比較例4)についても上記試験例1及び4〜6の試験を行った。
上記試験例1及び4〜6の試験結果を表1に示す。
Figure 2008082532
表1から、実施例1〜2で得られた摺動部材は耐熱性、耐熱衝撃性及び耐摩耗性に優れていることがわかる。特に、Ag層を形成してなる実施例1〜2の摺動部材は、Ag層を形成していない比較例1〜4の部材に比べ、優れた耐摩耗性を有することがわかる。
また、実施例1〜2で得られた摺動部材は、白銀色であり、意匠性が高いことがわかる。

Claims (8)

  1. 基材表面に、Ag層を形成してなる摺動部材。
  2. 基材が、金属、セラミックス又はガラスである請求項1に記載の摺動部材。
  3. 金属が、合金鋼、炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム又はアルミニウム合金である請求項2に記載の摺動部材。
  4. Ag層が、電解めっき、無電解めっき、溶射、接着、蒸着及びスパッタリングから選ばれる少なくとも1種の形成方法により形成されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の摺動部材。
  5. Ag層の厚さが、0.1〜1000μmである請求項1〜4のいずれかに記載の摺動部材。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の摺動部材を含む摺動部品。
  7. 操舵装置補助具用、搬送装置補助具用、動力伝達装置用、又は速度制御装置用である請求項6に記載の摺動部品。
  8. 音響製品、清掃機、洗濯機、空調機、保温・保冷機、ポンプ・循環器、又はOA機器のモーター用である請求項6に記載の摺動部品。
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