JP4115979B2 - 非鉛系はんだ材 - Google Patents
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Description
加我 他、「Sn−Ag−Cu系鉛フリーはんだの応力緩和と寿命曲線」、第9回エレクトロニクスにおけるマイクロ接合・実装シンポジウム論文集、9(2003)、345−350
本発明者らは、種々の金属材料について研究を重ねた結果、
(1)錫(Sn)−亜鉛(Zn)系はんだ材、(2)錫(Sn)−銀(Ag)系はんだ材、(3)錫(Sn)−銅(Cu)系はんだ材がクリープ特性に富んだ非鉛系はんだ材として有用であることを見出した。第1の実施形態にかかる非鉛系はんだ材によれば、低応力下においてもひずみ速度が速くクリープ性に富んだ特性を有するため、熱膨張係数の異なる基板、例えば、セラミックス基板と銅板とを接合した際に発生する熱応力を緩和し、基板の反り等を防止できる。以下これらのはんだ材について説明する。
錫−亜鉛共晶組成はんだ材は、融点が錫及び亜鉛よりも低く、また溶融状態での表面張力も錫及び亜鉛よりも小さい。さらに、他の非鉛系はんだ材に比べて融点が低く、錫・鉛共晶はんだ材の融点に近いため、従来の錫・鉛はんだ材と同じ接合温度で作業ができる。また、錫−鉛系はんだ材に比べ、錫−亜鉛系はんだ材は、導電性が高く、通電による発熱が少ないため、導電接合のエネルギー消費や熱対策の点でも有利である。
現在、錫・銀・銅系はんだ材は、非鉛系はんだ材として最も実用に適したはんだ材である。しかし、背景技術の欄で述べたように汎用的に用いられているSn−3.0Ag−0.5Cu系はんだ材をそのままパワーデバイスの接合材に使用するのは不適である。これは、はんだ材組織中に金属間化合物であるAg3Snが晶出するか、または、錫・銀・銅共晶組成が硬いことから、はんだ材の機械的強度が増し、変形能をもたないため応力緩和が起こらないためである。しかし、銀の割合を低くすることにより、やわらかくクリープ特性に富んだはんだ材が得られる。
錫・銅系はんだ材は、共晶組成が錫と銅の重量比でSn:Cu=99.3:0.7となり、大部分が錫で占められる。そのため、共晶組成からなる錫・銀系はんだ材、錫・亜鉛系はんだ材、錫・銅系はんだ材のクリープ特性を比較した場合、錫・銅系共晶はんだ材が最も富んだクリープ特性を示す。しかし、錫・銅系共晶はんだ材は、通常の実装条件での冷却速度でもって凝固した際には、過冷却によりはんだ内には硬く、脆い特性を有する金属間化合物のη相(Cu6Sn5)が晶出する。η相の晶出を完全になくすためには、銅の割合を低くし、亜共晶組成にすることが有効である。具体的には、錫と銅との重量比が、Sn:Cu=99.9:0.1〜99.5:0.5に配合することが好ましい。この組成比を持つはんだ材を汎用的な冷却速度でもって冷却させた場合、錫・銅共晶組織およびβ-Sn相から構成される金属組織が観察され、金属間化合物の晶出を抑制することができる。
(4)錫(Sn)−亜鉛(Zn)−銀(Ag)系はんだ材
錫・亜鉛系はんだ材は、上述のようにクリープ特性に富んだはんだ材であり、また接合温度、線膨張係数の点においても、パワーデバイスの内部接合材としての使用に適している。さらに、錫・亜鉛系はんだ材に銀を添加することにより、ぬれ性が向上する。
錫・亜鉛系はんだ材の固相線温度は約199℃であり、現行の錫・鉛共晶はんだ材での接合温度で作業可能である。さらに、錫・亜鉛系はんだ材において、銅の添加は亜鉛と同様に融点低下に作用する。
第2の実施形態は、第1の被接合体と、第1の被接合体とは熱膨張率が異なる第2の被接合体とを接合するためのはんだ材であって、錫と亜鉛とを含み、第1の被接合体に接する面の亜鉛含有量が、前記第2の被接合体に接する面の亜鉛含有量よりも大きい非鉛系はんだ材に関する。第2の実施形態は、良好な引張り強度と破断伸びを備えるといった作用効果を有する。以下図1を参照しながら第2の実施形態を説明する。
0≦Y≦(X−23) ・・・・・・(2)
ここで、(1)式は、パワー半導体装置の構造として、第2の被接合体8側を上部、第1の被接合体2側を下部とした場合、パワー半導体装置の上部側の第2の被接合体8と接する非鉛系はんだ材4の最上層部の亜鉛含有量がX(mass%)であることを示している。また、(2)式は、デバイス下部側の第1の被接合体2と接する非鉛系はんだ材4の最下層の亜鉛含有量Y(mass%)がXの従属変数として変化することを示している。Xの値が23より下回ると傾斜材料的な効果が薄れ、また、Xの値が40より上回ると非鉛系はんだ材4の延性が著しく小さくなるため、(1)式の範囲にあることが好ましい。さらに、(1)式で示されるXの値の範囲で傾斜材料的な構造を保つためにはシートはんだの場合、Yの値は(2)式の値の範囲にあることがプロセスコントロールのしやすさから好ましい。
第1及び第2の実施形態にかかる非鉛系はんだ材は、従来のパワー半導体装置の内部接合材の代替物として使用することができる。また、パワー半導体ペレット及びこれを用いた装置において、接合形成、皮膜形成に適した材料である。例えば、パワー半導体装置は、パワー半導体ペレットとして、パワーバイポーラトランジスタ、サイリスタ、GTOサイリスタ、パワーダイオード、パワーMOS電界効果トランジスタ(パワーMOSFET)などを用いた、パワートランジスタモジュール等のパワーモジュールやパワーIC等の形態に構成される。銅、銀、金、ニッケル、アルミニウム、SUSステンレス鋼等の単種の金属製の部材だけでなく、合金材及び複合金属材料等の部材の接合についても適用可能である。接合する部材の材質に応じて、部材に予め金属プリコートをメッキや圧着法等によって施してもよく、プリコートの組成やプリコート方法は適宜選択することができる。
(シート状はんだ材の調製)
角型のはんだ溶融槽内に純度99.99%以上の錫のインゴット片を投入した。そして、溶融槽の外部に取り付けたヒーターで加熱し、錫インゴットを融解させた。融解の開始とともに窒素を溶融槽の上部に流し続け、窒素雰囲気酸素濃度を50ppm以下となるようにした。融解後、溶湯の温度をフィードバック制御により250℃に保った。
得られた引張り試験片について、破断伸び(%)、ひずみ速度(1/sec)、引張り強さ(N/mm2)、クリープ特性を評価した。
Sn−Zn系はんだ材:Sn−Zn二元系合金は金属間化合物を形成しないという特性が寄与し、Zn含有量が9〜20mass%では、破断伸びの結果が示すように延性の低下は見られなかった。低応力荷重をかけたときのクリープ特性は、15mass%ZnをピークとしてSn−9Zn共晶よりも著しく富んだ特性が示された。強度性に関しては、Sn−Zn系全般に共通して良好であった。
(シート状はんだ材の調製)
表5及び6に示す組成比にしたことを除いて、実施例1〜8と同様にして、得られた均一なはんだ材を冷間圧延により、厚さ0.1mmのシート状に加工した。
次に、シート状はんだ材のぬれ性を確認するため、長さ1mm×幅1mm×厚さ0.1mmのシート状はんだ材を、長さ15mm×幅30mm×厚さ0.3mmの銅板(予め表面を酸で洗浄した無酸素銅)上に配置した。その後はんだ材をホットプレートにより250℃に加熱してはんだ材のぬれ性を確認した。その際、フラックスを用いた場合と、RAフラックスを用いない場合とで実験を行った。
実施例9〜23により、汎用性が高い原料を用いて安価且つ容易に調整でき、基板の熱膨張係数に起因する熱応力を緩和可能な非鉛系接合材が供給できることが確認された。
[試料の調製]
酸素濃度100ppm以下の窒素雰囲気中で、純度99.98%の錫、純度99.99%の亜鉛を用い、表7の実施例24〜39、及び比較例14〜17の組合せを有するように各合金を加熱溶融によって作製し、室温まで冷却した後、圧延機でシート状に加工しシート状はんだ材を得た。
得られたはんだ材の表面に、ロジン12mass%、塩素換算ハロゲン含有量0.1mass%のイソプロピルアルコールを溶剤とするフラックスを0.01cc/cm2の割合になるよう滴下した後、第2の被接合体としてのセラミック基板(寸法:35mm×70mm×1mmt)と第1の被接合体(ヒートシンク板/寸法:40mm×75mm×3mmt)としての銅板の間に挟み込んだ。さらに、リフローピーク温度230〜270℃の範囲で最大20秒間加熱溶融し、はんだ材を溶融し接合体を得た。このときの反りの発生具合として、厚さ100μmの錫/鉛共晶はんだのシートを2枚重ねる他は同じ方法を経て得られた接合体の反り(平均100μm)と比べて+30%以内のA判定、+30〜+70%のものをB判定、+70%以上のもの、あるいは、クラックの発生したものをC判定として評価した結果を表7に示す。
2…第1の被接合体(ヒートシンク)
4…非鉛系はんだ材
6、10a、10b…金属回路板
8…第2の被接合体(セラミック基板)
12a、12b…ソルダーレジスト
14a、14b…高温系はんだ材
16a、16b…パワー半導体ペレット
Claims (2)
- 錫と銀のみからなり、前記錫と前記銀を重量比で錫:銀=99.9:0.1〜98.0:2.0で含み、シート状に圧延加工されたことを特徴とする非鉛系はんだ材。
- 錫と銀を重量比で錫:銀=99.9:0.1〜99.0:1.0で含むことを特徴とする請求項1記載の非鉛系はんだ材。
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