〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプを例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
また、ヘッドランプは、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
以下では、本発明の照明装置として利用可能な発光装置の一例として、発光装置10について説明する。
(発光装置10の外観)
まず、本実施の形態に係る発光装置10の外観について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る発光装置10の外観を示す斜視図である。
発光装置10は、半導体レーザ3(図1参照)から出射されるコヒーレントな光を発光部7(図1参照)に照射すると、発光部7が蛍光を発生し、当該光を透明蓋23から出射するものである。同図に示すように、発光装置10は、円柱形状となっており、半導体レーザ3を支持する台座22と、透明性を有する透明蓋23とを接合(嵌合)することにより、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21(図1参照)および発光部7を一体に気密封止(密封)して、気密空間A1(図1参照)を形成している。また、発光装置10は、半導体レーザ3に電力を供給するためのリード24を台座22から延出した構成となっている。
なお、ここでは、発光装置10を円柱形状として説明するが、これに限らず、角柱形状、角錐台状、円錐台状など、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7を覆うことが可能な形状であれば、どのような形状であってもよい。
(発光装置10の構成)
次に、本実施の形態に係る発光装置10の構成について図1を用いて説明する。図1は、本実施の形態に係る発光装置10の概略構成を示すものであり、図2に示すA−A’線における断面模式図である。同図に示すように、発光装置10は、半導体レーザ3(励起光源)、発光部7、ステム20、角錐台状光学部材21(導光部)、台座22(支持体)、透明蓋23(蓋部)およびリード24を備えている。半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。
半導体レーザ3(半導体レーザ素子)は、励起光を出射する励起光源として機能するものであり、ステム20に実装されており、半導体レーザ3からレーザ光(励起光)が発振される。
半導体レーザ3は、1チップに6つの発光点(6ストライプ)を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力4.0W、動作電圧5V、電流2.67Aのものであり、直径9mmのステム20に封入されているものである。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、380nm以上470nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。なお、380nm以下の良質な短波長用の半導体レーザを作製することが可能であれば、本実施の形態の半導体レーザ3として、380nm以下で発振するように設計された半導体レーザを用いることも可能である。
本実施の形態では、図3に示すように、3つの半導体レーザ3が実装されているので(図1はそのうちの1つを図示している)、半導体レーザ3全体としての出力が12W、消費電力が40W(=5V×2.67A×3個)となる。なお、励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよい。しかし、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いることが好ましい。なお、図3は、半導体レーザ3と角錐台状光学部材21との位置関係を示す斜視図である。
また、各半導体レーザ3には、各半導体レーザ3に電力を供給するためのリード24がそれぞれ設けられている。リード24は、台座22を貫くように設けられ、台座22に支持されている。これにより、台座22は半導体レーザ3を支持しているといえる。台座22を貫いた部分のリード24の周囲には、例えば後述のシール材41(図7(b)参照)を入れ込むことで、台座22と透明蓋23とにより形成される気密空間A1の気密性を確保している。なお、台座22が半導体レーザ3を支持する構成は、これに限らず、例えば半導体レーザ3を支持するステム20がリード24とともに台座22に固定されている構成であってもよい。また、図示しないが、半導体レーザ3は、ワイヤーなどの導電部材がリード24と電気的に接続されることにより、上記電力を供給する外部電極と電気的に接続されている。
角錐台状光学部材21は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を集光して発光部7(発光部7のレーザ光照射面7a(受光面))へと導く導光部材であり、台座22および透明蓋23に接続された支持部材(図示せず)によって支持されている。この支持部材は、台座22または透明蓋23と一体となっていてもよい(すなわち、台座22または透明蓋23と同じ材料で作製されていてもよい)。角錐台状光学部材21は、半導体レーザ3が出射したレーザ光を受け取る光入射面211(入射端部)と当該光入射面211から入射したレーザ光を発光部7へ出射する光出射面212(出射端部)とを有している。言い換えれば、角錐台状光学部材21は、半導体レーザ3が出射したレーザ光を受け取り、当該レーザ光を出射するものといえる。
また、角錐台状光学部材21は、台座22および透明蓋23が形成する気密空間A1において半導体レーザ3と光学的に結合している。角錐台状光学部材21(気密空間A1を含む)の結合効率(半導体レーザ3から出射されるレーザ光の強度を1としたときの、角錐台状光学部材21の光出射面212から出射されるレーザ光の強度)は90%である。このため、半導体レーザ3から出射された12Wのレーザ光は、角錐台状光学部材21を通過すると、光出射面212から10.8Wのレーザ光として出射される。
さらに、角錐台状光学部材21は、光入射面211から入射した各レーザ光を反射する角錐台側面213で囲まれた囲繞構造を有していると共に、光出射面212の断面積は、光入射面211の断面積よりも小さくなっている。角錐台状光学部材21は、光入射面211から入射した各レーザ光を、角錐台側面213により光出射面212に導光する。
これにより、角錐台状光学部材21は、光入射面211から入射した各レーザ光を、光入射面211の断面積(例えば10mm2)よりも小さい断面積(例えば2mm2)を有する光出射面212に導光する、すなわち、各レーザ光を、光出射面212に集光することができる。
また、角錐台状光学部材21は、例えば屈折率:1.45の石英ガラスの側面に、屈折率1.35の熱可塑性フッ素樹脂(ポリテトラフロオロエチレン:PTFE)がコーティングされることによって作製されている。なお、これに限らず、角錘台状光学部材21の材質は、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で作製されていてもよい。また、側面のコーティング材料は角錘台状光学部材21の屈折率よりも小さいものであればよく、コーティングを施さず直接空気に接するようにしても良い。
また、光入射面211および光出射面212の形状は、平面形状であっても曲面形状であってもよい。特に、光出射面212の形状が、例えば光出射面212に対して鉛直方向に軸を持つ平凸シリンドリカルレンズを一体化した構造となっている場合、光出射面212から出射したレーザ光を、発光部7のレーザ光照射面7aに分散して照射させることができる。
また、光出射面212とシリンドリカルレンズとを一体化した構造(すなわち、光出射面212が曲面形状)ではなく、これらが別体に備えられていてもよい。この場合、シリンドリカルレンズは、光出射面212と発光部7との間に設けられる。また、この場合の光出射面212は、平面形状であっても曲面形状であってもよく、曲面形状の場合、凸レンズ形状に限らず、凹レンズ形状であってもよく、凸レンズと凹レンズとを組み合わせた形状であってもよい。また、このレンズ形状は、球面、非球面、円筒状などであってもよい。すなわち、光出射面212から出射されるレーザ光を、レーザ光照射面7aに分散して照射させることが可能な構成であればよい。
また、各レーザ光は、角錐台側面213に1回だけ反射して光出射面212に導光される場合、角錐台側面213に複数回反射して光出射面212に導光される場合、角錐台側面213に1回も反射することなく光出射面212に導光される場合のいずれかの光路で導光される。
なお、本実施の形態では、角錐台状光学部材21を例にとって説明するが、光学部材の形状はこれに限られず、円錐台状、楕円錐台など様々な形状を採用することができる。
発光部7は、角錐台状光学部材21(具体的には光出射面212)から出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。言い換えれば、発光部7は、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受けて発光するもの、また、角錐台状光学部材21を介して、半導体レーザ3から出射されたレーザ光を受けるものといえる。
具体的には、発光部7は、蛍光体保持物質としてのシリコーン樹脂の内部に蛍光体が分散されているものである。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、10:1程度である。また、発光部7は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。蛍光体保持物質は、シリコーン樹脂に限定されず、ガラスであってもよい。
上記蛍光体は、酸窒化物系のものであり、青色、緑色および赤色の蛍光体がシリコーン樹脂に分散されている。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
上記蛍光体は、サイアロンと通称されるものが好ましい。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。
蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を例示することができる。
半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つは、同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径をナノメータサイズに変更することにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができる点である。例えば、InPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する(ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した)。
また、この半導体ナノ粒子蛍光体は、半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、この半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。
さらに、上述したように、発光寿命が短いため、レーザ光の吸収と蛍光体の発光を素早く繰り返すことができる。その結果、強いレーザ光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱を低減させることができる。
よって、発光部7が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置(基本構造のついては後述)の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
発光部7の形状および大きさは、例えば、3mm×1mm×1mmの直方体である。この場合、半導体レーザ3からのレーザ光を受けるレーザ光照射面7a(光出射面212と対向する発光部7におけるレーザ光の受光面)の面積は、3mm2である。日本国内で法的に規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現しやすくなる。発光部7は、直方体でなくてもよく、レーザ光照射面7aが楕円である筒状であってもよい。また、レーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。さらに、レーザ光照射面7aの面積は、1〜3mm2であることが好ましい。
また、発光部7は、透明板9の内側(光出射面212が位置する側)の面において、光出射面212と対向する位置に固定されている。
透明板9は、発光部7を支持(保持)するための透明な樹脂板であり、透明蓋23に接続されている。透明板9は、発光部7を支持できる程度の大きさを有していればよく、例えば透明板9に固定される発光部7の表面と同程度の幅を有していればよい。透明板9は、少なくとも気密空間A1を遮断しないように設けられている。この透明板9を、半導体レーザ3からのレーザ光を遮断するとともに、発光部7においてレーザ光を変換することにより生成された白色光(インコヒーレントな光)を透過する材質で形成することが好ましい。発光部7によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな白色光に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。
なお、このような効果を期待せず、かつ透明板9以外の部材によって発光部7を保持する場合には、透明板9を省略することが可能である。この場合、例えば透明蓋23における光出射面212と対向する位置に発光部7が固定される。
このように、発光装置10は、光出射面212から出射されるレーザ光が、レーザ光照射面7aに水平方向に拡散して照射されるため、発光部7に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。本実施の形態では、発光部7から放射される光束が約2000lm、かつ、発光部7の輝度が100cd/mm2という高輝度・高光束の発光装置10を実現することができ、ひいては小型でかつ軽量な発光装置10を実現することができる。
また、光出射面212から出射されたレーザ光をレーザ光照射面7a上の一点に集中して照射させず、角錐台状光学部材21を介してレーザ光照射面7aに分散して照射させるので、各半導体レーザ3から出射されたレーザ光が同一点に集中して照射されることによって発光部7が劣化してしまうことを防止することができる。従って、高光束・高輝度かつ長寿命を実現できる発光装置10を提供することができる。
さらに、発光装置10は、上述のように、台座22および透明蓋23を備えている。台座22は、半導体レーザ3を支持する金属製の部材であり、直径20mm(内径18mm)の中空円筒形状である。透明蓋23は、透明な樹脂製であり、直径20mm(内径18mm)の中空円筒形状である。透明蓋23は、台座22に対して、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7を覆うように固定される。
このように、台座22と透明蓋23とが固定(接合)されることにより、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7を囲む構成が実現される。また、台座22と透明蓋23とが接合されることにより、これらの部材が形成する内部空間が気密封止されることにより、気密空間A1が形成される。この気密封止を実現するために、台座22および透明蓋23は、上記内部空間を気密封止できる材質、すなわち、台座22と透明蓋23との接着性に優れた材質であることが好ましい。また、半導体レーザ3や発光部7などの熱源からの伝導熱を放熱可能な材質であることが好ましい。台座22の材質の一例として、例えばCu、Al、Ni、またはNiとFeとの合金、Fe、鉄−ニッケル−コバルト合金(コバール)、ステンレススチール(SUS)などが挙げられる。また、透明蓋23の材質の一例として、ガラス、石英、プラスチックなどの透明樹脂等が挙げられる。なお、台座22が透明性を有していてもよく、この場合には、透明蓋23と同じ材質を用いて作製することができる。
台座22および透明蓋23は、 透明蓋23がガラスあるいは石英の場合には低融点ガラスを間に挟んで溶着される。また、透明蓋23がプラスチックの場合にはシリコンシール剤やエポキシ系接着剤またはアクリル系接着剤にて接着される。これにより、台座22および透明蓋23が形成する気密空間A1の気密性を確保することができる。
また、気密空間A1には、水分濃度が1000ppm(parts per million)以下、より好ましくは200ppm以下の空気(すなわち乾燥空気(ドライエア))が充填されている。空気は、水分濃度を制御しやすく、毒性がないので、容易に取り扱うことができ、上記水分濃度以下に調整して気密空間A1に充填しやすい。また、空気は、安価であり、容易に入手可能であるので、安価な発光装置10の提供を実現できる。
ここで、上述のように、本発明者らは、励起光源や発光部などが大気下にある場合に、励起光源から励起光が発光部に向けて出射されると、励起光が出射される励起光源の表面、導光部材の表面および励起光が照射される発光部の表面に、シロキ酸やカーボンなどの堆積物が付着することを確認した。特に、470nm以下(青色光、青紫光、紫外光など)の励起光であり、各表面に水分濃度が、1000ppmを超えるような雰囲気ガスが接していて、かつ、発光部が励起光を受ける受光面の単位面積あたりに照射される励起光の放射束が、0.1W/mm2を超えるような場合に顕著に発生することを確認している。
図4は、本実施の形態に係る発光装置10を1万時間連続的に使用した場合における角錐台状光学部材21の透過率(1万時間使用後の導光部材の透過率)の、気密空間A1内に充填されている気体中の水分濃度(封入ガス中の水分量)に対する依存性について調べた結果を示す図である。
同図に示すように、本発明者らは、封入ガス中の水分濃度が1000ppm以下になると、光学パーツの特性劣化(角錐台状光学部材21の透過率低下)が著しく減少し、当該水分濃度が200ppm以下になると、光学パーツの特性劣化がさらに減少することを見出した。図4に示すように、水分濃度が1000ppmを超える場合(約2500ppmのとき)の透過率が約50%であるのに対し、水分濃度が1000ppmのときの透過率が約85%であり、水分濃度が200ppmのときの透過率が約95%であることがわかる。なお、図4のグラフは上記気体として乾燥空気を用いた場合の結果を示したものであるが、乾燥窒素(実施の形態2を参照)や、その他の不活性ガスを用いたり、気密空間A1を減圧した場合であっても、図4に示す結果と同様の結果が得られた。また、図4では、導光部材として角錐台状光学部材21を用いているが、これに限らず、その他の形状の導光部材や、実施の形態2に係るヘッドランプ1(図6参照)のように反射鏡8とレンズ14とにより気密空間A1が形成された構成であっても、図4に示す結果と同様の結果が得られた。
さらに、1万時間使用した後に、レーザ光が出射される半導体レーザ3の表面や、角錐台状光学部材21の光入射面211および光出射面212など、発光装置10においてレーザ光が通過する(照射される)部材の表面を調べた。その結果、特に、水分濃度が1000ppmを超える場合で、かつ、上記表面の単位面積あたりに照射されるレーザ光の放射束が大きい部分に、上述した堆積物が付着していることが確認できた。この堆積物付着の原因としては、光化学反応や発熱などが挙げられる。ここでの光密度とは、上記表面の単位面積あたりに照射されるレーザ光の放射束を指す。
本実施の形態でいえば、気密空間A1が、例えば当該気密空間A1(発光装置10)の外部と同じ大気下である場合には、半導体レーザ3の表面と、角錐台状光学部材21の光入射面211および光出射面212と、発光部7のレーザ光照射面7aとに上記堆積物が付着するということである。大気の水分濃度は、25℃での常圧において、約14000ppm(湿度45%相当)〜約27000ppm(湿度85%相当)であり、1000ppmを大きく超えている。また、本実施の形態では、半導体レーザ3の出力が12Wであり、レーザ光照射面7aの面積が3mm2以下であるため、この場合、レーザ光照射面7aの単位面積あたりに照射されるレーザ光の放射束(以下「光密度」と称する)は、少なくとも4W/mm2であり、0.1W/mm2を超えている。このため、発光装置10において気密空間A1に大気を充填させた場合には、上記各表面への堆積物付着が顕著に発生することとなる。
本実施の形態では、半導体レーザ3の出力および発光部7の大きさ(レーザ光照射面7aの面積)が、0.1W/mm2より大きい光密度を実現している。このため、気密空間A1に、水分濃度が1000ppm以下の乾燥空気を充填することにより、上記各表面に堆積物が付着し、当該堆積物がレーザ光の進路を遮断してしまうといった不具合を未然に防ぐことができる。従って、発光装置10では、堆積物付着によるレーザ光の伝送ロスが生じないので、発光部7が発する光の光束の低下を防ぎ、ひいては発光効率の低下を防ぐことができる。
また、水分濃度が1000ppm以下の乾燥空気の露点は約−20℃以下である。このため、−20℃より温度の高い場所であればたとえ寒冷地において、本実施の形態に係る発光装置10、およびそれを備えた照明装置(例えば自動車用のヘッドランプ)を使用したとしても、結露を生じることない。すなわち、発光装置10および上記照明装置について、信頼性の高い動作を保障することができる。
さらに、乾燥空気の水分濃度が200ppm以下であることがより好ましい。この場合の乾燥空気の露点は−35℃以下であるため、さらに低温の寒冷地において発光装置10および上記照明装置を使用したとしても、結露を生じることがない。従って、この場合には、実用上十分な程度に、主要部品(半導体レーザ3、角錐台状光学部材21、発光部7など)の結露を防ぐことができる。
また、台座22と透明蓋23とが接合することによりその内部空間を気密封止している。言い換えれば、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7が、気密された気密空間A1に備えられている。このため、内部空間(気密空間A1)に埃が入り込むことを防ぐことができるので、半導体レーザ3から出射されたレーザ光(あるいは角錐台状光学部材21から出射されたレーザ光)が埃にあたって散乱することによる発光効率の低下を防ぐことができる。
以上のように、発光装置10は、半導体レーザ3および発光部7が、気密された気密空間A1内に備えられるともに、当該気密空間A1には、所定の水分濃度以下の気体が充填されている構成である。これにより、堆積物の付着に起因した発光効率の低下を防ぐことができるので、長期間に亘り、輝度・光束を一定に維持することが可能な発光装置10を実現することができる。
また、半導体レーザ3から出射された励起光を受光するレーザ光照射面7aの単位面積あたりに照射される、レーザ光の単位時間あたりの光量(光密度)が、0.1W/mm2より大きくなるように設計され、気密空間の水分濃度1000ppm以下(より好ましくは200ppm以下)としている。このため、レーザ光照射面7aなどへの堆積物付着を確実に防ぐことができる。
また、台座22に透明蓋23を固定するだけで気密空間A1を形成できる。さらに、所定の水分濃度(1000ppm)以下の気体が充填された空間で発光装置10が製造される場合には、台座22に透明蓋23を固定するだけで当該気体を注入することができる。このため、発光装置10を容易に製造することができる。
また、台座22および透明蓋23により、少なくとも半導体レーザ3および発光部7が一体に封止されているので、発光装置10の耐久性が向上し、堅牢な発光装置10を実現することができる。
また、気密空間A1内に、半導体レーザ3および発光部7とともに、角錐台状光学部材21が備えられ、気密空間A1には、所定の水分濃度以下の気体が充填されているので、光入射面211および光出射面212に堆積物が付着し、当該堆積物がレーザ光の進路を遮断してしまうといった不具合を未然に防ぐことができる。従って、角錐台状光学部材21を備えた構成であっても、光入射面211および光出射面212に堆積する堆積物によってレーザ光の伝送強度(光量)を低下させる(伝送ロスを生じさせる)ことなく、受け取ったレーザ光を発光部7に出射することができ、ひいては発光効率の低下を防ぐことができる。
さらに、発光装置10が例えば自動車用のヘッドランプに適用された場合には、長期間に亘り、輝度・光束を一定に維持することが可能なヘッドランプを実現することができる。また、上述のように、発光部7から放射される光束が約2000lm、かつ、発光部7の輝度が100cd/mm2という高輝度・高光束の発光装置10であるため、発光装置10を備えたヘッドランプの小型化することができ、軽量化を図ることができる。
また、発光装置10をヘッドランプに備えるだけでよく、半導体レーザ3、角錐台状光学部材21および発光部7を別々に設ける必要がないので、ヘッドランプの製造を容易に行うことができる。なお、例えば図5に示す発光部7の位置に本実施の形態の発光部7が備えられるように、反射鏡8内に発光装置10が位置決めされることにより、発光装置10がヘッドランプに適用される。この場合、発光装置10は、反射鏡8から延出する棒状または筒状の部材によって固定される。
(半導体レーザ3の構造)
ここで、半導体レーザ3の基本構造について説明する。図4(a)は、半導体レーザ3の回路図を模式的に示したものであり、図4(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板としては、その他には、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることが出来る。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザ3から発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について図6〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。また、以下では、図6に示す光ファイバー5が複数の束(すなわち複数の出射端部5aを備えた構成)であるものとして説明しているが、これに限らず、光ファイバー5が1つのみ(すなわち出射端部5aが1つのみ)からなっていてもよい。
(ヘッドランプ1の構成)
まず、本実施の形態に係るヘッドランプ1(照明装置)の構成について図6を用いて説明する。図6は、ヘッドランプ1の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、照明装置の一例であるヘッドランプ1は、半導体レーザ収納部2、光ファイバー5(導光部)、フェルール6、発光部7、反射鏡8およびレンズ14(光透過部)を備えている。半導体レーザ収納部2、光ファイバー5、フェルール6および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。なお、ヘッドランプ1は、レンズ14を備えているが、例えばセミシールドビームヘッドランプに本発明を適用した場合にはレンズ14を省略できる。
半導体レーザ収納部2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ3(励起光源)(図示せず)を収納する筐体であり、反射鏡8を貫くことにより反射鏡8に支持されている。また、半導体レーザ収納部2は、レーザ光が出射される方向(光ファイバー5および発光部7が設けられている側)に開口している。このため、半導体レーザ3は、光ファイバー5および発光部7と同じ空間(気密空間A1)に備えられた構成を実現している。
本実施の形態では、気密空間A1には、水分濃度が1000ppm以下、より好ましくは200ppm以下の窒素(すなわち乾燥窒素)が充填されている。上述のように、本発明者らは、気密空間A1に窒素を充填させた場合であっても、図4に示す結果と同様の結果が得られることを確認している。また、窒素は、水分濃度を制御しやすく、毒性がないので、容易に取り扱うことができ、上記水分濃度以下に調整して気密空間A1に充填しやすい。また、窒素は、安価であり、容易に入手可能であるので、安価なヘッドランプ1の提供を実現できる。
また、半導体レーザ3に電力を供給するために、半導体レーザ3のリード24(図示せず)には電源コード26が接続されている。なお、半導体レーザ3の構成については、発光装置10が備える半導体レーザ3と同じであるので、ここではその説明を省略する。
なお、ここでは、半導体レーザ収納部2の一部が、反射鏡8およびレンズ14が形成する気密空間A1に含まれる構成となっているが、これに限らず、半導体レーザ収納部2を気密空間A1に完全に入れ込む構成としてもよい。この場合には、電源コード26が反射鏡8を貫く構成となる。さらに、半導体レーザ収納部2内部が密封された構成(すなわち開口部を備えない構成)となっており、光ファイバー5が半導体レーザ収納部2の壁面を貫くように設けられた構成であってもよい。この構成の場合であっても、半導体レーザ収納部2内部と気密空間A1とが光ファイバー5を介して繋がっているので、半導体レーザ収納部2内部(すなわち半導体レーザ3)が気密空間A1と同じ空間にあるといえる。
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。言い換えれば、光ファイバー5は、半導体レーザ3が出射したレーザ光を受け取り、当該レーザ光を出射するものといえる。出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔をおいて配置されてもよい。
複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面7a(図7参照)における互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。換言すれば、複数の出射端部5aは、発光部7の互いに異なる部分に対してレーザ光を出射する。これにより、レーザ光照射面7aに、レーザ光を一点に集中して照射させず、分散して照射させることが可能となる。
より詳細には、複数の出射端部5aから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分(最大光強度部分)が、発光部7の互いに異なる部分に対して照射されていればよい。
ここで、1つの出射端部5aから出射されたレーザ光は、所定の角度で広がりつつレーザ光照射面7aに到達する。また、複数の出射端部5aからレーザ光が出射されると、レーザ光照射面7aには複数の照射領域が形成される。そのため、複数の光ファイバー5の出射端部5aが、レーザ光照射面7aに対して平行な平面において並んで配置されていたとしても、これら出射端部5aからのレーザ光によって形成される照射領域が、互いに重なることがある。
このような場合でも、出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布における最も光強度が大きいところ(各レーザ光がレーザ光照射面7aに形成する照射領域の中央部分(最大光強度部分))が、発光部7のレーザ光照射面7aの互いに異なる部分に対して出射されれば、レーザ光照射面7aに対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することができる。
すなわち、複数の出射端部5aのうちの1つから出射されたレーザ光が発光部7に照射されることによって形成される投影像において最も光強度が大きい部分である最大光強度部分の位置が、他の出射端部5aに由来する投影像の最大光強度部分の位置と異なっていればよい。それゆえ、照射領域を互いに完全に分離する必要は必ずしもなく、レーザ光を一点に集中して照射させない構成であればよい。
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
なお、導光部材として光ファイバー以外の部材、または光ファイバーと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。この導光部材は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を受け取る少なくとも1つの入射端部と当該入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有するものであればよい。例えば、少なくとも1つの入射端部を有する入射部、および複数の出射端部を有する出射部を光ファイバーとは別の部材として形成し、これら入射部および出射部を光ファイバーの両端部に接続してもよい。
また、光ファイバー5は、半導体レーザ3から出射されるレーザ光をもれなく導光できるように、入射端部5bが半導体レーザ3の近傍となるように設けられている。光ファイバー5は、例えば反射鏡8または半導体レーザ収納部2から延出する棒状または筒状の部材によって固定されている。
図7は、出射端部5aと発光部7との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面7aに対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。なお、図7では、半導体レーザ3の個数(すなわち光ファイバー5の個数)にあわせて出射端部5aを3つ示しているが、出射端部5aの数は3つに限定されない。
発光部7は、光ファイバー5(具体的には出射端部5a)から出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。発光部7は、例えば直径1mmおよび高さ(母線)3mmの円柱形状となっており、出射端部5aから出射されたレーザ光を、当該円柱の側面(光出射面212と対向する発光部7におけるレーザ光の受光面(レーザ光照射面7a))において受ける。
また、発光部7は、例えばフェルール6に接合された支持部材(図示せず)に接合されることにより、当該支持部材に支持されている。なお、発光部7が支持される構成は、これに限らず、フェルール6に直接接合される構成や、反射鏡8に接合され、レンズ14と略平行に設けられた透明板に接合される構成などにより実現されてもよい。この場合、発光部7は、透明板の内側(出射端部5aが位置する側)の面において、出射端部5aと対向する位置に固定されている。また、この透明板は、発光装置10の透明板9と同じ材料を用いて作製されている。
このように、ヘッドランプ1は、実施の形態1と同様、出射端部5aから出射されるレーザ光が、レーザ光照射面7aに水平方向に拡散して照射されるため、発光部7に含まれる蛍光体の全体に亘って低エネルギー状態の電子が高エネルギー状態に効率良く励起する。本実施の形態においても、発光部7から放射される光束が約2000lm、かつ、発光部7の輝度が100cd/mm2という高輝度・高光束の発光装置を有するヘッドランプ1を実現することができる。
反射鏡8は、発光部7から出射した蛍光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡8は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材であり、反射した光の進行方向に開口している。言い換えれば、反射鏡8は、光線束の進む方向に開口した開口部を有するものといえる。
反射鏡8の開口部の面積(レンズの面積)は、例えば300mm2(もしくは100mm2)以上2000mm2より小さく(開口部の直径(光学系直径)19.5mm以上50mmより小さく)なるように設計されている。すなわち、反射鏡8にて反射した光が出射される方向(車両の真正面)から見たときの反射鏡8の大きさが300mm2以上2000mm2より小さくなるように設計されている。また、開口部の面積は、この範囲に限らず、500mm2以上1500mm2より小さく(開口部の直径(光学系直径)25.2mm以上43.7mmより小さく)なるように設計されていてもよい。なお、開口部とは、反射鏡8にて反射した光の進行方向に対して垂直な平面(反射鏡8の、ヘッドランプ1(自装置)の外部に出射される光の進行方向に垂直な平面)で、かつ、レンズ14が固定された面ともいえる。
レンズ14は、発光部7から出射された光を集光し、集光した光をヘッドランプ1の前方へ投影するものであり、反射鏡8の開口部に備えられている。言い換えれば、レンズ14は、反射鏡8の開口部に固定される、上記光線束が透過する部材であるといえる。本実施の形態では、金属製の反射鏡8と、透明性を有するレンズ14とを接合することにより、半導体レーザ3、光ファイバー5および発光部7を一体に気密封止(密封)している。なお、レンズ14の代わりに、例えば発光装置10の透明板9が備えられてもよい。すなわち、反射鏡8と接合されることで、半導体レーザ3、光ファイバー5および発光部7を一体に気密封止できる構成であればよい。
ここで、反射鏡8とレンズ14との接合例について、図8を用いて説明する。図8は、図6に示す反射鏡8とレンズ14との接合部分Bにおける反射鏡8の先端部の形状を示す図であり、図8(a)は、シール材41により接合された場合の反射鏡8の先端部の形状を示すものであり、図8(b)は、パッキン42を用いて接合された場合の反射鏡8の先端部の形状を示すものである。
図8(a)に示すように、反射鏡8の先端部8aは、反射鏡8の内側(レンズ14が取り付けられる側)が切断され、先端部8a以外の反射鏡8の厚さよりも細く作製されている。この先端部8aの切断された部分に、レンズ14の先端部と、当該先端部を囲むようにシール材41とを挿入する。シール材41としては、例えば、耐水性、耐熱性、耐候性および接着性に優れたシリコンシーラントが用いられる。シール材41は、上記切断された部分へ挿入されると、硬化してゴム状となり、反射鏡8とレンズ14とを隙間なく接着させる。すなわち、反射鏡8とレンズ14との界面(接触部位)は、シール材41によって接着される。このように、反射鏡8の先端部8aとレンズ14の先端部とをシール材41にて接着することにより、気密空間A1の気密性を確保することが可能となる。
また、図8(b)では、反射鏡8の先端部8aの外側が切断され、その切断された部分に(すなわち先端部8aの外周に沿って)螺旋状の溝を形成することにより、先端部8aに雄ねじが形成されている。また、ねじ付きリング43は、反射鏡8の開口部における外周とほぼ同じ内径を有する環状部材であり、先端部8aに形成された雄ねじと嵌合するように、その内側に雌ねじとしての溝が形成されているものである。すなわち、このねじ付きリング43を先端部8aにねじ込むことにより、ねじ付きリング43と先端部8aとが嵌合される。
ねじ付きリング43を先端部8aにねじ込む途中に反射鏡8の内側に形成される、先端部8aとねじ付きリング43との間の空間に、レンズ14の外周部とパッキン42とを挿入する。パッキン42は、レンズ14の外周部が先端部8aとねじ付きリング43とに接触しないようにするために、その外周に沿うように設けられる。上記空間内にレンズ14とパッキン42とが挿入された後、さらにねじ付きリング43をねじ込むことで、反射鏡8とレンズ14とにより気密空間A1が形成される。すなわち、反射鏡8とレンズ14との界面は、パッキン42を介して接着されているといえる。
なお、パッキン42としては、例えば、断面がO形(円形)の環型をした密封用(シール用)部材であるOリング(O-ring)が用いられる。また、このOリングの材質としては、ゴム、テフロン(登録商標)などが挙げられる。また、ねじ付きリング43は、反射鏡8と同じ材質であるが、先端部8aにねじ込むことが可能な部材であればその材質はどのようなものであってもよい。
このように、反射鏡8の先端部8aとレンズ14の外周部とをパッキン42を介してねじ止めすることにより、気密空間A1の気密性を確保することが可能となる。なお、図8(b)では、レンズ14は、片側のみ凸レンズとした構成となっているが、図6および図8(a)と同様、両面を凸レンズとしたものを用いてもよい。
また、気密空間A1の気密性を確保するために、図8(a)および図8(b)の何れの構成を用いてもよいが、レンズ14の交換など、反射鏡8とレンズ14とを分解することを考慮する場合には、図8(b)のパッキン42を介してねじ止めを行う構成を用いた方がよい。
なお、半導体レーザ収納部2は、反射鏡8を貫くことにより反射鏡8に支持されているが、これらの部材を図8(a)および図8(b)と同様に接合することにより、気密空間A1の気密性を確保するようにしてもよい。すなわち、半導体レーザ収納部2および反射鏡8の各界面の間に、シール材41を挿入するか、パッキン42を介してねじ止めすることにより、半導体レーザ収納部2と反射鏡8とを接合してもよい。また、半導体レーザ収納部2全体が反射鏡8内(気密空間A1)に入れ込まれた構成の場合には、電源コード26だけを反射鏡8から引き出し、当該引き出された部分を、例えばシール材41で密閉するようにしてもよい。
さらに、半導体レーザ収納部2が反射鏡8の外部に設けられるようにした場合には、半導体レーザ収納部2内部が密封されており、当該内部に光ファイバー5の入射端部5bが入り込み、光ファイバー5が反射鏡8を貫くように構成されている。この場合にも、反射鏡8と光ファイバー5との界面をシール材41などで接着するようにすることで、気密空間A1の気密性を確保することが可能である。
このように、反射鏡8とレンズ14とが接合されることにより、少なくとも半導体レーザ3、光ファイバー5および発光部7を囲む構成が実現される。また、反射鏡8とレンズ14とが接合されることにより、これらの部材が形成する内部空間が気密封止されることにより、気密空間A1が形成される。言い換えれば、反射鏡8およびレンズ14により気密された気密空間A1が形成され、当該気密空間A1内に、半導体レーザ3、光ファイバー5および発光部7が備えられているといえる。このため、内部空間(気密空間A1)に埃が入り込むことを防ぐことができるので、半導体レーザ3から出射されたレーザ光(あるいは光ファイバー5から出射されたレーザ光)が埃にあたって散乱することによる発光効率の低下を防ぐことができる。
また、気密空間A1には、水分濃度が1000ppm以下、より好ましくは200ppm以下の乾燥窒素が充填されている。言い換えれば、反射鏡8およびレンズ14が形成する囲繞構造の内部は、気密されているとともに、所定の水分濃度の気体が充填されている構成であるといえる。
本実施の形態では、実施の形態1と同様、半導体レーザ3の出力および発光部7の大きさ(レーザ光照射面7aの面積)が、0.1W/mm2より大きい光密度を実現している。このため、実施の形態1にて説明したように、気密空間A1に、水分濃度が1000ppm以下、より好ましくは200ppm以下の乾燥窒素を充填した場合であっても、半導体レーザ3のレーザ光を出射する表面、光ファイバー5の出射端部5aおよび入射端部5bの表面、並びに、レーザ光が照射される発光部7の表面への堆積物の付着を防止することができる。従って、ヘッドランプ1では、堆積物がレーザ光の進路を遮断してしまうといった不具合を未然に防ぐことができるので、堆積物付着によるレーザ光の伝送ロスが生じず、発光部7が発する光の光束の低下を防ぎ、ひいては発光効率の低下を防ぐことができる。
また、実施の形態1と同様、水分濃度が1000ppm以下である場合の乾燥窒素の露点は−20℃である。このため、−20℃より温度の高い場所であればたとえ寒冷地において、本実施の形態に係るヘッドランプ1を使用したとしても、結露を生じることない。すなわち、ヘッドランプ1について、信頼性の高い動作を保障することができる。
さらに、水分濃度が200ppm以下である場合の乾燥窒素の露点は−35℃以下であるため、さらに低温の寒冷地においてヘッドランプ1を使用したとしても、結露を生じることがない。従って、この場合には、実用上十分な程度に、主要部品(半導体レーザ3、光ファイバー5、発光部7、反射鏡8、レンズ14など)の結露を防ぐことができる。
以上のように、ヘッドランプ1は、反射鏡8およびレンズ14により気密された気密空間A1が形成され、当該気密空間A1内に、少なくとも半導体レーザ3および発光部7が備えられるとともに、所定の水分濃度以下の気体が充填されている構成である。これにより、堆積物の付着に起因した発光効率の低下を防ぐことができるので、長期間に亘り、輝度・光束を一定に維持することが可能なヘッドランプ1を実現することができる。
なお、ヘッドランプ1は、上記部材の他、ハウジング、エクステンションおよび外部レンズを備えた構成であってもよい。この場合、ハウジングは、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している部材である。エクステンションは、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンションも反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された部材である。外部レンズは、ハウジングの開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している部材である。発光部7が発した光は、外部レンズを通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
〔気密空間A1に充填される気体について〕
ここで、気密空間A1に充填される気体として、実施の形態1では空気、実施の形態2では窒素を用いた例を挙げて説明したが、これに限らず、アルゴンガスなどの不活性ガスを用いてもよい。すなわち、上記充填される気体は、水分濃度を制御しやすく、容易に入手可能で、毒性がないといった条件を満たせば、どのような気体であってもよい。
ただし、気密空間A1に水素を充填した場合、半導体レーザ3に用いられるGaN中の不純物(ドーパント)と結びつき、半導体レーザ3を不活性化させてしまい、半導体レーザ3の特性を悪化させてしまう。また、気密空間A1を真空雰囲気とした場合、気密空間A1が破られると、水分を含む周囲雰囲気を一気に吸い込んでしまうため、急激に、光学パーツの表面に堆積物が付着してしまい、発光効率を低下させてしまう。従って、半導体レーザ3の特性の悪化や、気密空間A1が破られたときの急激な発光効率の低下を考慮する場合には、気密空間A1に水素を用いたり、気密空間A1を真空雰囲気とすることは避けた方が好ましい。なお、光学パーツとは、レーザ光を照射する半導体レーザ3の表面、角錐台状光学部材21の光入射面211および光出射面212、光ファイバー5の出射端部5aおよび入射端部5b、発光部7のレーザ光照射面7aなどを指す。
〔本発明の別表現〕
なお、本発明は、以下のようにも表現できる。
本発明に係る発光装置は、GaN系の発光ダイオードや半導体レーザ素子からなる固体素子励起光源と、励起光源から放射される励起光を集光・導光する手段と、点状蛍光体発光部と、を組み合わせた高輝度・高光束な固体素子光源に関するものであり、前記励起光源と、集光・導光手段と蛍光体発光部とが一体に封止・密封されていることを特徴とする。
また、本発明に係る発光装置は、前記一体に封止・密封する手段として、光学系部材である反射鏡・レンズを用いてもよい。
また、本発明に係る発光装置は、封止・密封の雰囲気は水分濃度が1000ppm以下の乾燥空気(ドライエア)がもっとも適当であり、その他に水分濃度が1000ppm以下の真空や窒素雰囲気であってもよい。
〔補足〕
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、励起光源として高出力のLEDを用いてもよい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザ、例えば高出力の発振が可能な発光ダイオードを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
また、半導体レーザ3からのレーザ光が発光部7のレーザ光照射面7aに適切に照射されるように半導体レーザ3と発光部7とだけを一体に封止した構成(角錐台状光学部材21および光ファイバー5を必要としない構成)であってもよい。
また、半導体レーザ3と、角錐台状光学部材21の光入射面211または光ファイバー5の入射端部5bとの間には、非球面レンズが備えられていてもよい。この非球面レンズは、半導体レーザ3から発振されたレーザ光を、角錐台状光学部材21の光入射面211(または光ファイバー5の入射端部5b)に入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズとして、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズの形状および材質は特に限定されないが、405nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
また、反射鏡8の開口部は、車両の真正面からみたとき円形であるが、これに限らず、反射鏡8により反射した光が効率よく外部に出射されるのであれば、楕円や矩形などであってもよい。