JP5798427B2 - 空油冷内燃機関のオイル通路構造 - Google Patents
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Description
特許文献1に示されるように、冷却用のオイル通路は、シリンダヘッドの鋳造時に砂中子によって形成されるが、オイル通路には、砂中子を自立させるため砂中子に設けたボス部により突出部が形成されており、突出部の形状によってはオイルが突出部に滞留し易い場合がある。
また、内燃機関の仕様によっては、滞留したオイルの温度が高くなり過ぎ、オイル性能に影響が出る場合がある。
前記突出部が、前記シリンダヘッドと前記シリンダとの合わせ面まで延在するとともに、前記突出部の下端部から、前記ヘッド側冷却用オイル通路の下流側に連通され、且つ、前記ヘッド側冷却用オイル通路よりも小さな通路断面積のバイパス通路が設けられたことを特徴とする空油冷内燃機関のオイル通路構造である。
また、ヘッド側冷却用オイル通路から下方に分岐する突出部が、シリンダヘッドとシリンダとの合わせ面まで延在するので、ヘッド側冷却用オイル通路を形成するためのオイル通路中子において突出部を形成するために下方に向けて突出するボスが形成されて脚部となり、鋳造時においてシリンダヘッドの鋳型内でオイル通路中子が安定して自立可能となる。
なお、本明細書の説明および特許請求の範囲における前後左右上下等の向きは、本実施形態に係る空油冷内燃機関のオイル通路構造を備えた空油冷内燃機関を、小型車両に搭載した状態での車両の向きに従うものとする。本実施形態において小型車両は自動二輪車である。
また、図中矢印FRは車両前方を、LHは車両左方を、RHは車両右方を、UPは車両上方を、それぞれ示す。
また、図中に添記した黒小矢印は、本実施形態における本発明に係る冷却用のオイルの流れを模式的に示すものであり、図5から図8では、オイル通路中子をオイル通路と看做して、オイルの流れを模式的に示した。
本実施形態に係る内燃機関1は、そのクランクケース10内の後部に変速機4(図2参照)を一体に備えて、いわゆるパワーユニットを構成しており、そのクランク軸11を、自動二輪車2の車幅方向、すなわち左右方向に配向させて自動二輪車2に搭載された、空油冷単気筒の4ストロークサイクル内燃機関である。
また、ヘッドパイプ21から斜め急角度に下方へ左右一対のダウンフレーム23が、側面視でメインフレーム22の急傾斜部22aに略平行に延出している。
メインフレーム22の急傾斜部22aの下部に前端を支持されたリヤフォーク29が、後方へ延出し、その後端に後輪30が軸支され、リヤフォーク29と車体フレーム20のガセット24との間に、リヤクッション31が介装されている。
メインフレーム22の前部には、燃料タンク32が架設され、燃料タンク32の後方にシート33がシートレール25に支持されて設けられている。
シリンダヘッド13から前方には、その排気ポート16に接続して排気管38が延出し、下方に屈曲して内燃機関1の下方を後方に延び、後輪30の右側のマフラー39に至っている。
クランクケース10の前側部分の上に重ねられるシリンダ12,シリンダヘッド13およびシリンダヘッドカバー14は、クランクケース10から若干前傾した姿勢で上方に延出している(図1参照)。
シリンダヘッド13の下部には、シリンダボア12a中のピストン50に対向して、シリンダボア52aと一致する燃焼室周壁52aを画成して、燃焼室上壁53に覆われる燃焼室52が形成される。
燃焼室上壁53には、燃焼室52に開口して図示しない吸気弁により開閉される吸気ポート15(図1、図4参照)が後方へ延出し、図示しない排気弁により開閉される排気ポート16(図1、図4参照)が前方に延出し、さらに燃焼室52内に臨む点火プラグ55が装着される。
シリンダ12およびシリンダヘッド13の左側部(外側部)には、動弁機構60を駆動するカムチェーン64が収容されるカムチェーンチャンバ12b、13bが設けられている。
他方、クランク軸11のクランクケース10の右軸受壁10Rより右方に突出した部分には、プライマリ駆動ギヤ58が嵌合され、その右方を右ケースカバー57Rで覆われる。
変速クラッチ43のクラッチアウタ43aは、メイン軸41に回転自在に軸支されたプライマリ被動ギヤ44に緩衝部材を介して支持されており、メイン軸41に一体に嵌合されたクラッチインナ43bとの間に複数のクラッチ板が介装され、圧縮部材43cの駆動により断接を行う。
出力スプロケット45に巻き掛けられる駆動チェーン46が、後輪30側の被動スプロケット47に架渡されてチェーン伝達機構が構成され後輪30(図1参照)に動力が伝達される。
しかし、シリンダヘッド12の燃焼室52を覆う燃焼室上壁53の点火プラグ55の装着部の周辺、排気ポート16の燃焼室側開口16aの周辺は、奥まった燃焼室上壁53にあることから、冷却フィン13cを直接設けることが困難であり、内燃機関1の圧縮比等の仕様によっては、冷却フィンの放熱では冷却が不十分な場合がある。
したがって、オイルポンプからのオイルの一部は、スタッドボルト孔68Aを動弁機構60への潤滑用オイル通路として、シリンダヘッド13の上部に収容された動弁カム軸61、被動カムチェーンスプロケット62、吸気ロッカアーム65、排気ロッカアーム66等およびそれらの支持部材67等へ供給される。
したがって、潤滑用オイル通路としてのスタッドボルト孔68Aは、冷却用オイル通路7へのオイル供給通路を形成する
また、点火プラグ55を取りつける点火プラグ装着孔55aは、図3中に破線で示されるように燃焼室上壁53に開口するように形成され、吸気ポート15、排気ポート16の燃焼室側開口15a、16aは燃焼室周壁52aに内接するように、燃焼室上壁53に開口している(図3参照)。
図4に示されるように、連通部72はその軸線Rをシリンダ軸線Cに平行に下方に延出し、シリンダヘッド13とシリンダ12との合わせ面70に達して開口し、シリンダ12側にオイルを流出させる。
図5から図8においては参照のため、オイル通路中子8の各部符号に加え、それに対応する冷却用オイル通路7の各部符号を、カギカッコ内に添記し、形成された冷却用オイル通路7におけるオイルの流れを黒小矢印で添記する。
第1のボス81の下部には、鋳型内に設定時に姿勢を決める脚部81aが設けられるが(図6、図8参照)、オイル流入路71が接続するオイル供給通路としてのスタッドボルト孔68Aとオーバーラップする位置にあり、鋳造後の脚部81aの部分はスタッドボルト孔68Aの一部となる(図4参照)。
すなわち、重心CGは、直線L1に対して一方側(ここでは流れ方向右側)にオフセットした位置にあり、第3のボス85は、直線L1に対して重心CG側であって、重心よりもさらにオフセットした位置に配される。そのため、オイル通路中子8の重心CGを囲むように第1のボス81、第2のボス82、第3のボス85が配されるので、オイル通路中子8は、鋳造時においてシリンダヘッド13の鋳型内で安定して自立可能である。
第3のボス85は、鋳型内に設定時に姿勢を決める脚部となるものだが、シリンダヘッド13の鋳造後において、冷却用通路73における突出部75を形成する。
また、突出部75は、シリンダヘッド13がシリンダ12に締結されたとき、それらの合わせ面70まで延在する
したがって、形成された冷却用オイル通路7の連通部72では表面積を小さくでき、冷却通路73で冷却を行った後のオイルの流速を落とすことなくシリンダ12側に流出させることができるので、熱伝達率を高くできるため、効率的に冷却を行うことができる。
よって、本実施形態のオイル通路中子8の構造は、製造性に優れ、形成された冷却用オイル通路7が良好な冷却性能をもたらすものとなる。
図9に示されるように、シリンダ12には、冷却用オイル通路7からのオイルをクランクケース10内に導くオイル戻し通路9が設けられている。
冷却用オイル通路7のオイル流入路71は、オイル供給通路となるスタッドボルト孔68Aに接続するとともに、連通部72は、シリンダ12とシリンダヘッド13との接合面70において連通部72と一致する形状でシリンダ12側に凹設されたオイル受け部90と連通している。
そして、オイル受け部90とオイル戻し孔9との間には、シリンダ12側の合わせ面70に設けられた溝91が、カムチェーンチャンバ12bを廻り込むように接続して設けられている。 シリンダ12とシリンダヘッド13が締結された状態で、オイル受け部90と溝91は、冷却用オイル通路7の連通部72から受けたオイルを、連通部72と離間した位置に設けられたオイル戻し孔9へと流すシリンダ側オイル通路92となる。
そして、オイルは、シリンダヘッド13より温度が低いシリンダ側オイル通路92を流れ、燃焼室52やシリンダボア12aとはカムチェーンチャンバ12bの空間部を挟んで、シリンダ12のなかでも最も温度の低いカムチェーンチャンバ12bの外方に、連通部72と離間して設けられたオイル戻し孔9へと流されるので、オイルは不要な加熱を受けることが抑制され、相対的に冷却をうけることができるため、オイルの温度上昇を抑制できる。
特に、凹部状のオイル受け部90と溝91は、シリンダ12の鋳造時、鋳抜きでも形成できるので、形成が容易であり、コスト低減が可能である。
また、オイル受け部90は、連通部72と同じ形状に形成され、連通部72と一体の流路を形成するので、オイルの連通する流れがスムーズになる。
その場合、リンダ12の前方側でカムチェーンチャンバ12bを廻りこむようにした前述のシリンダ側オイル通路92と比べ、シリンダ側オイル通路92′を長く設定でき、比較的低温の吸気ポート15側(図3参照)を通ることとなるので、オイルの加熱防止ないし冷却上の利点が得られる。
なお、図9、図10において合わせ面70上に、冷却用オイル通路7以外に2点差線で示したものは、合わせ面70のガスケット18である。
そのため、図5、図6、図8に示されるように、形成された冷却用オイル通路7は、第3のボス85によって、その冷却通路73の第1通路73bの中間部から下方に分岐する突出部75を有するものとなる。突出部75は、シリンダヘッド13がシリンダ12に締結されたとき、それらの合わせ面70まで延在する。
バイパス通路97を形成するバイパス溝96による流路断面積は、冷却用オイル通路7の流路断面積より小さく設定されている。
なお、バイパス溝96は、合わせ面70のシリンダヘッド13側に形成されてもよい。
そして、バイパス通路97はその上流端部が、突出部75の下端部と一致する形状のバイパスオイル受け部95として形成されているので、突出部75とバイパスオイル受け部95が一体の流路を形成し、バイパスオイル受け部95のバイパスオイルの流れがスムーズである。
図12に示されるように、多気筒内燃機関1′は、気筒列方向に右側から順に第一気筒C1〜第四気筒C4が直列に並ぶ4気筒を有しており、シリンダヘッドにおいて、各気筒毎に燃焼室が形成され、その燃焼室上壁53′の頂部に点火プラグ55を装着させるための点火プラグ装着孔55aが設けられる。
また、各気筒の燃焼室上壁53′には、一対の吸気ポート燃焼室側開口15a′と、一対の排気ポート燃焼室側開口16a′が設けられる。
へ抜けるように、それぞれ第3冷却オイル通路79A、79Bが設けられている。
第三気筒C3の第1冷却オイル通路77Bの気筒前方側の下流端部77Baと、第四気筒C4の第3冷却オイル通路79Bの気筒前方側の上流端部79Baとは、第2冷却オイル通路78Bによって接続されている。
また、第三気筒C3の第1冷却オイル通路77B、第2冷却オイル通路78B、第四気筒C4の第3冷却オイル通路79Bは、シリンダヘッドにおいて、一連の冷却用オイル通路7Bを形成する。
特に、中間部のボスは、前述のオイル通路中子8の場合と同様に、冷却用オイル通路7Aおよび冷却用オイル通路7Bの中間部に、各気筒毎に、冷却用オイル通路7Aから分岐する突出部75A1、75A2、および冷却用オイル通路7Bから分岐する突出部75B3、75B4を形成するので、各突出部において、オイルの滞留、オイルの温度上昇のおそれを生じる。
また、第四気筒C4の突出部75B4の下端部から冷却用オイル通路7Bの下流部7Baに連通され、且つ、第四気筒C4の突出部75B4の下端部と第三気筒C3の突出部75B3の下端部とを連通する突出部連通路98Bを備えたバイパス通路97Bが備えられている。
各バイパス通路97A、97Bの流路断面積は、それぞれ冷却用オイル通路7A、7Bの流路断面積より小さく設定されており、バイパスオイルの流れが、冷却用オイル通路7A、7Bのオイルの流れを阻害することが防止されている。
また、突出部連通路98Aによって、各突出部75A1、75A2毎に冷却用オイル通路7Aの下流部7Aaに連通するバイパス通路を設ける必要がなく、構造の簡素化とコスト低減が図られる。
そのことは、第三気筒C3、第四気筒C4において、同様である。
すなわち、クランクケース10と、シリンダ12と、動弁機構60が取り付けられ収容されるシリンダヘッド13とを備え、シリンダヘッド13内に冷却用オイル通路7,7A,7Bが設けられ、冷却用オイル通路7,7A,7Bの中間部に、冷却用オイル通路7,7A,7Bから下方に分岐する突出部75,75A1,75A2,75B3,75B4を有する空油冷内燃機関1,1′のオイル通路構造において、突出部75,75A1,75A2,75B3,75B4が、シリンダヘッド13とシリンダ12との合わせ面70まで延在するとともに、突出部75,75A1,75A2,75B3,75B4の下端部から、冷却用オイル通路7,7A,7Bの下流側に連通され、且つ、冷却用オイル通路7,7A,7Bよりも小さな通路断面積のバイパス通路97,97A,97Bが設けられている。
また、冷却用オイル通路7,7A,7Bから下方に分岐する突出部75,75A1,75A2,75B3,75B4が、シリンダヘッド13とシリンダ12との合わせ面70まで延在するので、冷却用オイル通路7,7A,7Bを形成するためのオイル通路中子8において突出部75,75A1,75A2,75B3,75B4を形成するために下方に向けて突出するボス85が形成されて脚部となり、鋳造時においてシリンダヘッド13の鋳型内でオイル通路中子8が安定して自立可能となる。
空油冷内燃機関を搭載する小型車両は、自動二輪車に限定されず、シリンダが垂直より前傾する度合いも気筒数も図示のものに限定するものではなく、種々の態様の小型車両において同様の空油冷内燃機関を使用した場合にも、空油冷内燃機関のオイル通路構造として適用し、同様の効果を得ることができる。
Claims (4)
- クランクケース(10)と、シリンダ(12)と、動弁機構(60)が取り付けられ収容されるシリンダヘッド(13)とを備え、
前記シリンダヘッド(13)内にヘッド側冷却用オイル通路(7,7A,7B)が設けられ、
同ヘッド側冷却用オイル通路(7,7A,7B)の中間部に、同ヘッド側冷却用オイル通路(7,7A,7B)から下方に分岐する突出部(75,75A1,75A2,75B3,75B4)を有する空油冷内燃機関(1,1′)のオイル通路構造において、
前記突出部(75,75A1,75A2,75B3,75B4)が、前記シリンダヘッド(13)と前記シリンダ(12)との合わせ面(70)まで延在するとともに、
前記突出部(75,75A1,75A2,75B3,75B4)の下端部から、前記ヘッド側冷却用オイル通路(7,7A,7B)の下流側に連通され、且つ、前記ヘッド側冷却用オイル通路(7,7A,7B)よりも小さな通路断面積のバイパス通路(97,97A,97B)が設けられたことを特徴とする空油冷内燃機関のオイル通路構造。 - 前記バイパス通路(97)は、前記シリンダ(12)側または前記シリンダヘッド(13)側の前記合わせ面(70)上の溝(96)として設けられたことを特徴とする請求項1記載の空油冷内燃機関のオイル通路構造。
- 前記バイパス通路(97)の上流端部は、シリンダ軸方向に見て、前記突出部(75)の端部と重なる形状とされたことを特徴とする請求項2記載の空油冷内燃機関のオイル通路構造。
- 前記空油冷内燃機関(1′)が、多気筒内燃機関であり、
前記ヘッド側冷却用オイル通路(7A,7B)の突出部(75A1,75A2,75B3,75B4)が隣接する気筒ごとに少なくとも1つ以上設けられるとともに、前記バイパス通路(97A,97B)は、隣り合う前記突出部(75A1,75A2,75B3,75B4)の下端部同士を連通する突出部連通路(98A,98B)を備えたことを特徴とする請求項1記載の空油冷内燃機関のオイル通路構造。
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