JP5795493B2

JP5795493B2 - 吸収性物品

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Publication number: JP5795493B2
Application number: JP2011114172A
Authority: JP
Inventors: 加藤　隆弘; 隆弘加藤; 剛大石川
Original assignee: Kao Corp
Current assignee: Kao Corp
Priority date: 2011-05-20
Filing date: 2011-05-20
Publication date: 2015-10-14
Anticipated expiration: 2031-05-20
Also published as: JP2012239722A

Description

本発明は、生理用ナプキン、パンティライナー（おりものシート）、失禁パッド、使い捨ておむつ等の吸収性物品に関する。

従来、生理用ナプキン等の吸収性物品において、身体への密着性や漏れ防止性を向上させるために、物品の着用者の排泄部に対応する部分やそこから着用者の臀部に対応する部分にかけて、吸収体を凸状に突出させて中高部を設けることが知られている。また、生理用ナプキン等の吸収性物品において、漏れ防止性や装着性を向上させるために、その肌当接面側に、表面シート及び吸収体を圧密化してなる溝部を形成することも知られている。

例えば特許文献１には、中高部の側部より所定距離離間した位置に防漏溝を形成し、該防漏溝と前記中高部の側部との離間域に、防漏溝部吸収体よりも低密度でかつ中高部吸収体よりも高密度の圧搾吸収体領域が形成されている吸収性物品が記載されている。この圧搾吸収体領域は、防漏溝部吸収体よりも厚く且つ吸収体の標準部よりも薄く段状に形成されている。特許文献１記載の吸収性物品によれば、吸収体の総厚を上げずに中高部の隆起を高くでき、かつ高低差による表面材の破れを防止できるとされている。また圧搾吸収体領域から防漏溝部へと繋がる密度勾配によって液拡散が促進され吸収能が高められるとされる。しかし、特許文献１には、厚み方向への液の引き込み性や、中高部における液残り防止を課題とする発明の開示はない。

特許文献２には、パンツやおむつ等の外部装着体の内側に重ねて使用される吸収性物品として、吸収体の中央領域の剛軟度を両側領域の剛軟度よりも高くした尿とりパッドに関する発明が開示されている。この尿とりパッドは厚みが一定であり、吸収コアの中央領域の繊維密度を高めることで剛軟度を高めようとするものである。これにより、外部装着体の内側に重ねたときに縒れやたくれが発生しにくくなるとされる。また中央領域の繊維密度を両側領域より高めたことで、排泄液の吸収速度と縦方向への液拡散とが高められるとされる。しかし、特許文献３の吸収性物品は、吸収体に中高部を設けることは記載されておらず、厚み方向への液の引き込み性や中央部での液残り防止を課題とする発明の開示はない。

特許文献３には、幅方向中央域に疎水性材と親水性材とが交互に配置された吸収体を備える吸収性物品が記載されている。特許文献３記載の吸収性物品によれば、吸収体内での幅方向の液拡散が抑制され、且つ吸収体の長手方向の液拡散が促進されるとされる。しかし、特許文献３の吸収性物品は、吸収体に中高部を設けることは記載されておらず、厚み方向への液の引き込み性や中央部での液残り防止を課題とする発明の開示はない。

特開２００２−３４５８８８号公報特開２０００−２２５１３８号公報特開平１−２８５２６６号公報

中高部を備える吸収体では、中高部が肌に当接して液を漏れなく引き込みやすいがその位置で液が保持されやすく肌の濡れ等につながりかねない。この中高部を備える吸収体では、できるだけ表面シートよりも遠い位置での液の素早い固定化が望まれる。特に複数層を積層させて中高部を形成する吸収体では、上層から下層への液の効率的な引き渡しも必要となる。

そこで本発明は、排泄部対応領域付近における吸収体の液の透過性をさらに高めて肌面側での液残りや液戻りを抑え、物品肌面側の濡れによる着用者の不快感を解消し得る吸収性物品の提供を課題とする。

本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シート間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、前記吸収体は、少なくとも表面シート側の上層吸収体とそれより非肌面側の下層吸収体とを有し、該吸収体の着用者の排泄部に対応する部分には物品幅方向中央部分が表面シート側に突出する中高部を有し、前記中高部の長手方向に沿う外側縁に連接する吸収体の部分は、上層吸収体と下層吸収体との積層部分を含み、前記中高部よりも密度が高められた側方高密度領域をなし、前記下層吸収体には、少なくとも前記側方高密度領域に、互いに坪量差のある高坪量部と低坪量部とがあり、かつ該低坪量部は前記高坪量部よりも厚みが薄く前記上層吸収体側へ偏在して配されている吸収性物品により上記課題を解決するものである。

本発明の吸収性物品は、泄部対応領域付近における吸収体の液の透過性をさらに高めて肌面側での液残りや液戻りを抑え、物品肌面側の濡れによる着用者の不快感を解消し得るという優れた作用効果を奏する。

本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキンを肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。本実施形態の生理用ナプキンの吸収体を肌当接面側から模式的に示した平面図である。図１に示すＩＩＩ−ＩＩＩ線断面である。本実施形態に係る下層吸収体の構造について、圧密化された下層高密度帯を有さない状態での基本構造を模式的に示した図であり、（Ａ）は平面図であり、（Ｂ）は（Ａ）のＢ−Ｂ断面図であり、（Ｃ）は底面図である。本実施形態に係る生理用ナプキンの上層吸収体及び下層吸収体の積層部分の構造を一部切欠して模式的に示した説明図である。本実施形態に係る下層吸収体前駆体の好ましい製造方法について、製造時におけるプレスロール加工前後の状態を概略化して示す工程説明図である。（ａ−１）は回転ドラムの外周面にあるポケットを一部拡大して示す斜視図であり、（ａ−２）は回転ドラムのポケットに繊維材料が堆積した状態を示す断面図である。吸収体前駆体が回転ドラムからバキュームコンベアへ離型される様子を示す説明図である。本実施形態に係る吸収体の好ましい製造工程（圧縮工程）を示した説明図である。

図１は、本発明における吸収性物品の一実施形態としての生理用ナプキン１０を肌当接面方向から示した一部切欠斜視図である。図２は、本実施形態の生理用ナプキン１０の吸収体３を肌当接面側から模式的に示した平面図であり、吸収体３の配置の理解のため生理用ナプキン１０の外形を二点鎖線で示した。なお煩雑さを避けるため、吸収体３のコアラップシートを省略して示す（図３以降の図においても同様）。

本実施形態の生理用ナプキン１０は、図１に示すように、肌当接面側に配置される液透過性の表面シート１、非肌当接面側に配置される裏面シート２、及び該両シートの間に配置される吸収体３を備え、縦長の形状である。吸収体３は肌当接面側の上層吸収体３１と非肌当接面側の下層吸収体３２とを積層させてなり、肌当接面側に隆起する中高部７を有する。下層吸収体３２は非肌当接面側に突出するブロック状の突出吸収部３３とそれより厚みが薄く肌当接面側に偏在した凹部吸収部３４とを有する。この上層吸収体３１と下層吸収体３２を備える吸収体３の詳細については後述する。

図１に示すように、生理用ナプキン１０において、吸収体３が裏面シート２の肌当接面側に接着剤等で接合され配設され、吸収体３の長手方向左右両側の外方に裏面シート２が延出してその肌当接面側とサイドシート４とが当接し接合されている。裏面シート２とサイドシート４とが当接した部分では表面シート１が裏面シート２とサイドシート４とで挟持され、さらにその幅方向（Ｘ方向）内方向に向け表面シート１が吸収体３よりも肌当接面側に位置されるように配されている。

このように積層された前記の各シート部材が吸収体３の外方で吸収体３を介在させずにヒートシール等により接合され、ナプキン１０の外周縁部６を形成している。この外周縁部６は、全体的な伸縮性を阻害せず、一度吸収した液が漏れない程度に接合されている。サイドシート４の自由端４１には外周縁部６へ向うポケット（図示せず）が形成され、液等の横モレを防ぐ効果を有する。前記外周縁部６の平面形状のうち、吸収体４の長手方向Ｘに沿う両側縁から外方部分はフラップ部６５をなしている。フラップ部６５には、着用時に着用者の排泄部（膣口）に対向配置される排泄部対向領域において物品幅方向の外方にさらに延出した一対のウイング部６５ａ，６５ａを有している。さらに、着用時に排泄部対向領域より着用者の背中側に配される後方領域において生理用ナプキン１０の幅方向の外方にさらに延出した一対の後方フラップ部６５ｂ，６５ｂを有している。生理用ナプキン１０使用時には、ウイング部６５ａをショーツにおける股下部の非肌当接面側に巻き込んでショーツに固定する。

生理用ナプキン１０の肌当接面側には、表面シート１の肌当接面側から吸収体３にかけて圧搾した防漏溝５が施されている。防漏溝５は、経血等の排泄部対応領域の物品幅方向の左右両端寄りに物品縦方向に沿う２条の条溝５１の部分を有する。防漏溝５は、条溝５１の端部から長手方向にさらに延びて、吸収体３の前後端に近づくにつれ徐々に吸収体３の中央方向に向かい湾曲し、前端、後端が一致して無端環状に連続した全周溝をなしている（図１参照）。このようにすることで、ナプキンを装着して使用する際の排泄液の横漏れを効果的に防止することができる。本実施形態における条溝５１を含む防漏溝５の平面視形状は、前述の形状に限定されず、無端環状の前端、後端で互いに交差していてもよく、条溝５１が全周溝の前後端部分と離間していてもよく、条溝５１とは別の筋状の溝が幅方向に並列されていてもよく、用途に合わせ適宜決められることができる。また条溝５１は可撓性を付与する部分でもあるため、条溝５１が幅方向外方に湾曲した形状であることが好ましい。これにより、吸収体３の中高部７を囲んで液の吸収保持領域を十分広さとできる。またナプキン１０の装着時に条溝５１がその湾曲形状に沿って着用者の股下肌側へ折れ曲がると、これに伴って吸収体３の中高部７が隆起するようにしっかりと着用者の体に当接し易く動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。

なお、排泄部対応領域とは経血もしくはおりもの等の排泄を直接受ける部分及びその近傍である。通常、昼用のナプキンなど前後対象に形成される場合は、排泄部対応領域は、ナプキンを長手方向に３等分した場合の中央領域であり、夜用のナプキンなどは、後方に臀部を覆う左右幅広な後方フラップを有し、ナプキンを長手方向に２等分した際の前側の中央よりにある。また、昼用、夜用にかかわらず、ショーツの股下部に折り曲げて固定するウイングを備える場合は、該ウイングの存在する領域に沿った長手方向領域が排泄部に対応する。

さらに防漏溝５の厚み方向の形状について、深溝部５５と浅溝部５６とが交互に配され、その間を側壁部５７が繋いで全体として連続した防漏溝５の形状をなすことが好ましい（図１円内拡大図参照）。深溝部５５と浅溝部５６とによる段差の繰り返しによって、一般的に剛性が高くなりがちな防漏溝において、生理用ナプキン１０の全周に亘って適度な柔軟性を持たせることができる。この部分において高い柔軟性を維持し、良好なフィット性を発現することができる。加えて浅溝部５６下の部材の繊維密度は、深溝部５５下の部材の繊維密度よりも疎となって繊維密度の疎密勾配が形成されることが好ましい。この疎密勾配に基づく毛管力により、浅溝部５６から深溝部５５に向けて液が移行し易く、使用時には素早い液の透過がなされ、べたつきのない良好な使用感が得られる。

表面シート１、裏面シート２、サイドシート４、及び吸収体３の材料や寸法等に関する詳細は後述する。本実施形態において表面シート１は、排泄された液体を速やかに吸収し、吸収体に伝達する観点と、肌触りのよさの観点から肌当接面側及び非肌当接面側に繊維による突部を有した液透過性の不織布を用いている。また、裏面シート２としては、通気性を有した透湿性フィルムを単層で用いている。吸収体３としてはパルプ繊維等と吸収性ポリマーとを紙などのコアラップシート（図示せず）で被覆してなるものである。また、裏面シート２の非肌当接面側には、生理用ナプキン１０を着衣に固定するための粘着剤（図示せず）が塗布されている。該粘着剤によって、生理用ナプキン１０が使用者の着衣に接着固定される。本実施形態の生理用ナプキン１０は、その表面シート側を着用者の肌当接面側に向け、かつ、その縦方向を下腹部から臀部にかけて配し、その幅方向を左右の足をつなぐラインの方向に向けて配して着用する。

本発明においては、特に断らない限り、人体に接触する側の面を肌側面ないし肌当接面あるいは表面といい、これと反対側の面を非肌面ないし非肌当接面あるいは裏面という。この２つの面において、肌側面に近い方ないしその延長方向を肌面側、肌当接面側又は表面側といい、非肌面に近い方ないしその延長方向を非肌面側、非肌当接面側又は裏面側という。装着時に人体の前側に位置する方向を前方といいその端部を前端部とし、後側に位置する方向を後方といいその端部を後端部として説明する。吸収性物品の表面又は裏面の法線方向を厚み方向といいその量を厚さという。更に、吸収性物品の平面視において腹側部から股下部を亘り背側部に至る方向を長手方向または縦方向（Ｙ方向）といい、この縦方向と直交する方向を幅方向（Ｘ方向）という。なお、前記縦方向は典型的には装着状態において人体の前後方向と一致する。吸収体３の積層構造は、本実施形態の２層に限定されず、３層以上にしてもよく、各層を複数の部材から構成してもよい。

吸収体３は、肌当接面側の上層吸収体３１と非肌当接面側の下層吸収体３２とが積層されて形成されている。上層吸収体３１及び下層吸収体３２のいずれも、パルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合積繊物をティッシュペーパーや透水性の不織布からなるコアラップシートで被覆したものである。吸収体３は、図２に示すとおり、全体として平面視において角が丸みを帯びた矩形形状としており、その長手方向を生理用ナプキン１０の縦方向（Ｙ方向）に一致させて、物品幅方向（Ｘ方向）の中央に配されている。より詳細には、下層吸収体３２が前方領域Ｆから排泄部対応領域Ｃを介して後方領域Ｒに亘たる縦長として配され、上層吸収体３１が排泄部対応領域Ｃの幅方向中央において下層吸収体３２よりも短く幅狭な形状で上層吸収体３１の肌側面上に載置されている（図２参照）。また上層吸収体３１は、ナプキン１０の後方領域Ｒへ向けて先細りの略舟形形状となっている。吸収体３は、後述するように、互いに別体の２つの吸収構造体を重ね合せ両吸収構造体を一体化する工程を経て形成されている。

図３に示すとおり、上層吸収体３１と下層吸収体３２との積層部分において、ナプキン１０の幅方向（Ｘ方向）の中央部分は表面シート１側に突出した中高部７とされている。この中高部７の長手方向に沿う左右外側縁に連接する吸収体３の部分は、上層吸収体３１及び下層吸収体３２の積層部分を含み、パルプ繊維等が中高部７よりも圧密化された側方高密度部８となっている。吸収体３の平面視、側方高密度部８は、排泄部対応領域Ｃから前方領域Ｆ及び後方領域Ｒに亘りナプキン１０の長手方向（Ｙ方向）に沿って帯状に形成されている（図２参照）。側方高密度部８は、排泄部対応領域Ｃでは上層吸収体３１及び下層吸収体３２の積層部分が圧密化されており、前方領域Ｆ及び後方領域Ｒでは実質的に上層吸収体３１が配されず下層吸収体３２のみが圧密化されている（図２参照）。なお、中高部７と側方高密度部８とが「連接」するとは、吸収体３を構成するパルプ繊維等からなる吸収層が幅方向に実質的に連続する部分を有することを意味し、全体として連続した構造であれば一部に非連続な部分があってもよい。前記の連接する構造は、少なくとも上層吸収体３１において形成されていることが好ましい。

次に下層吸収体３１の構造について説明する。具体的には、まず図４を参照して、下層高密度帯８２を有さない状態での下層吸収体３２の基本構造とその作用について説明する。次に、この基本構造と作用とを具備する下層吸収体３１が上層吸収体３１とともに圧密化されたことによるさらなる作用について、図３及び５を参照して、上層吸収体３１とともに説明する。
図４は、実施形態に係る下層吸収体の構造について、圧密化された下層高密度帯を有さないものとして模式的に示した図であり、（Ａ）は平面図であり、（Ｂ）は（Ａ）のＢ−Ｂ断面図であり、（Ｃ）は底面図である。下層吸収体３２の平面及び肌当接面側とは、下層吸収体３２としてナプキン１０に配されるときに表面シート１側となる面であり、底面及び非肌当接面側とは、同様にして配されるときに裏面シート２側となる面である。また下層吸収体３２の縦方向、幅方向とは、下層吸収体３２としてその長手方向をナプキン１０の縦方向（Ｙ方向）に沿わせて配置したときの、物品縦方向（Ｙ方向）及び幅方向（Ｘ方向）に一致する。

下層吸収体３２の基本構造は、パルプ繊維及び吸水性ポリマーの積繊物の坪量が相対的に高い高坪量部としての突出吸収部３３と低坪量部としての凹部吸収部３４とを有する。高坪量部である突出吸収部３３は凹部吸収部３４よりも相対的に高密度にされており、低坪量部である凹部吸収部３４が突出吸収部３４を囲むようにして平面方向に連続配置されている。複数の突出吸収部３３が裏面シート２側に突出するようにして互いに非連続に点在して配されている。点在する突出吸収部３３の間には、吸収体３の非肌当接面側から肌当接面側へと厚み方向に窪んだ凹部３５とその肌当接面側に位置する吸収体の一部である凹部吸収部３４とがある。つまり、下層吸収体３２は、突出吸収部３３が凹部吸収部３４中に存在するようにした海−島構造である。また下層吸収体３２の肌当接面側は、凹部吸収部３４と突出吸収部３３の肌側面とで平坦な形状をなし、この凹部吸収部３４や突出吸収部３３を含む下層吸収体３２全体は継ぎ目のない一体構造である。

凹部３５は、下層吸収体３２の吸収性素材（パルプ繊維、高吸水性ポリマーなど）の量を非肌当接面側から厚み方向に少なくして形成された空隙部分である。凹部３５は、突出吸収部３３を囲むように非肌当接面側で幅方向（Ｘ方向）及び縦方向（Ｙ方向）に沿ってそれぞれ複数条を格子状に配して形成されている。この凹部３５の肌当接面側にはパルプ繊維を含む凹部吸収部３４が配されている。つまり凹部吸収部３４は、吸収体３の肌当接面側に偏在して配されている。非肌当接面側で格子状に連続的に配される凹部３５とこれに対応して肌当接面側で平面方向に連続的に広がる凹部吸収部３４とが厚み方向に連係して液を素早く透過させる通液構造となる。

突出吸収部３３は、凹部吸収部３４よりも厚みのあることで高坪量部とされ、パルプ繊維と吸水性ポリマーとを多く含んで排泄液を吸収保持する部分となる。個々の突出吸収部３３の形状は、物品縦方向（Ｙ方向）に長さのある略直方体形状である。突出吸収部３３の配置は、平面視において自然状態で互いに所定の隙間ｓ，ｒを有するように縦横方向に整列配置されている。この配置は、多数の突出吸収部３３を縦方向及び横方向に投影したときにいずれの方向にもその投影像が重なる配置である。このように縦横の凹部３５によって区画されることによりその部分において可撓部位となる。そのため下層吸収体３２ａを用いた下層吸収体３２を有する生理用ナプキン１０においては、肌面の起伏にフィットする「身体適合性」、及び着用者の動きにも良好に追随して肌に対する部分的な隙間の発生が防止される「動作追随性」が極めて高くなる。なお、突出吸収部３３の配置は、本実施形態のものに限定されず、そのほか適宜用途や機能に応じて配列を選択することができ、例えば千鳥状配列（上記投影像が長手方向及び／又は幅方向にみて略半ピッチずれのある配置）であってもよい。また突出吸収部３３の形状も、液の適切な吸収保持性を有するのであれば、本実施形態の形状のほか任意の形状を採用可能である。

凹部吸収部３４は、厚みの薄さによる低坪量のため、繊維の少なさから液の通液抵抗が低く、液の圧力損失を損なわずに液を素早く吸収体の厚み方向に透過させることができる。また吸収体３の肌当接面側が平坦で、かつ凹部吸収部３４が肌当接面側で平面方向に連続的に広がっていることで、液との接触が良く、液を広い範囲で素早く吸収体３内部に引き込むことができる。つまり、凹部吸収部３４が導液路となり、肌当接面側からの液をすばやく内部に引き込むチャンバーとなる。さらに凹部吸収部３４に囲まれ連接する突出吸収部３３は、凹部吸収部３４よりも高密度な高坪量部である。そのため、凹部吸収部３４を通過した液は、凹部吸収部３４と突出吸収部３３との繊維の密度差あるいは密度勾配によって生じる毛管力によって突出吸収部３３へと素早く取り込まれ厚み方向に移動して保持される。加えて、経血等などの高粘性の液が一度に多量に排泄されたり繰り返し排泄されたりした場合にも、一度に突出吸収部３３で吸収保持できなくとも、凹部吸収部３４に厚み方向に繋がる凹部３５が一時的に液を保持する緩衝機能を果たし、高密度部分と低密度部分の境界領域では液を留め置かないように働く拡散作用をも果たす。しかも凹部３５が下層吸収体３２の非肌当接面側で連接されていることによって、肌当接面側よりも遠い位置で液を移動させて各突出吸収部３３で確実に吸収保持させることができる。このように凹部吸収部３４と凹部３５とからなる通液構造によって、液が肌当接面側から吸収体３内部に素早く取り込まれて突出吸収部３３で確実に吸収保持され得る。これにより下層吸収体３２の肌当接面側にある液は液残りせずに透過されやすく、吸収保持された液は肌当接面側への液戻りが生じ難くなる。また液が吸収保持されるのは肌当接面側よりも遠い位置にあり、かつ、ブロック状の突出吸収部３３自体が下層吸収体３２の支柱となって形状を保持しようとするので、外圧による液戻りやヨレが効果的に防止され得る。

下層吸収体３２において、凹部吸収部３４が液の保持量を抑えて液を素早く凹部３１へ移動させ、凹部３１が排泄液の一時貯蔵の機能を有して表面シート１側へ液を逆戻りさせないために、低密度な低坪量部である凹部吸収部３４の構成部材の平均密度（ｍ_４）は、０．０２〜０．０９ｇ／ｃｍ^３が好ましく、０．０３〜０．０８ｇ／ｃｍ^３がさらに好ましい。他方、確実な液の保持・固定のために、高密度な高坪量部としての突出吸収部３３の構成部材の平均密度（ｍ_５）は、０．１０〜０．２５ｇ／ｃｍ^３が好ましく、０．１０〜０．２０ｇ／ｃｍ^３がさらに好ましい。なお突出吸収部３３は、製造時の圧縮により高密度化される部分であるが、たとえその厚み方向に均一な密度が形成されなくとも、全体として凹部吸収部３４よりも密度が高まっていればよく、凹部吸収部３４の平均密度（ｍ_４）と突出吸収部３３の平均密度（ｍ_５）との比率（ｍ_４／ｍ_５）は、０．８０以下が好ましく、０．６０以下がさらに好ましい。この比率（ｍ_４／ｍ_５）について、上限以下とすることで、凹部吸収部３４ないしは凹部３５において液を一時的に保持し、突出吸収部３３との間に働く毛管力により、突出吸収部３３が効率良く液を吸引・保持する吸収機構が発現される。

また、同様の理由から、凹部吸収部３４の構成部材の平均坪量（ｗ_１）は、１０〜１５０ｇ／ｍ^２であることが好ましく、２０〜１４０ｇ／ｍ^２であることがさらに好ましい。突出吸収部３３の構成部材の平均坪量（ｗ_２）は、１６０〜４００ｇ／ｍ^２であることが好ましく、２００〜３５０ｇ／ｍ^２であることがさらに好ましい。さらに、両者の吸収体の構成部材の平均坪量比（ｗ_１／ｗ_２）は、０．０１〜０．９０であることが好ましく、０．１０〜０．７０であることがさらに好ましい。

さらに凹部３５の深さ（ｈ_２）の吸収体３の厚み（突出吸収体３３の厚み）（ｈ_１）に対する割合（％）（図２参照）は、２０〜８０％であることが好ましく、３０〜７０％であることがさらに好ましい。上記下限以上とすることで、表面シートへの液残りや液戻りをより効果的に抑制することができ、上限以下とすることで表面シートより受け取った液を広げすぎずに突出吸収部３３へと移動させることができる。

［突出吸収部３３及び凹部吸収部３４の平均密度の測定方法］
突出吸収部３３及び凹部吸収部３４の密度とは、吸収体３の構成部材であるパルプ繊維と高吸水性ポリマーとを併せた密度である。吸収体３を、凹部３５の壁面底部３５ａ，３５ａから厚み方向に延ばした仮想線ｔ，ｔ（図５（Ｂ）参照）で切断して、突出吸収部３３と凹部吸収部３４とし、これらをそれぞれ長さ５０ｍｍ、幅５ｍｍの大きさに切り出しサンプルを調製する。次いで、電子天秤(Ａ＆Ｄ社製電子天秤ＧＲ−３００、精度:小数点以下４桁)を用いサンプルの質量を測定する。定圧式厚み計を用い、サンプル厚みを測定し、測定したサンプルの質量を、サンプルの体積(厚み×長さ×幅)で除して各々の領域における部位の全材料の密度を算出する。なお、低圧式厚み計の測定時圧力は０．５ｇ／ｃｍ^２で行う。平均密度は、サンプルを任意の箇所で１０個調整して、その平均で求められる。

［突出吸収部３３及び凹部吸収部３４の平均坪量の測定方法］
突出吸収部３３の平均坪量（ｗ_２）及び凹部吸収部３４の平均坪量（ｗ_１）の測定方法は、測定するそれぞれの部位の面積を予め測定し、その測定領域を前述の仮想線ｔ，ｔ（図５（Ｂ）参照）でカッターで切断してその切断部の質量を測定する。測定した質量を面積で除して、各々の密度領域の平均坪量を測定する。平均坪量は、サンプルを任意の箇所で１０個調整して、その平均で求められる。

［突出吸収部３３と凹部吸収部３４（及び凹部３５）の厚みの測定］
まず、凹部３５は吸収体３の底部から肌当接面側に窪んで空隙のある部分とし、凹部吸収部３４は凹部３５の上部に位置する吸収体３の素材からなる部分として区分できる（図５（Ｂ））。突出吸収部３３は、厚み方向に並ぶ凹部３５及び凹部吸収部３４の低密度領域３９に隣接して囲まれる吸収体３の素材からなる上部から底部までの部分として区分できる（図５（Ｂ））。この突出吸収部３３と凹部吸収部３４及び凹部３５との境界は、凹部３５の壁面底部３５ａ，３５ａから厚み方向に延ばした仮想線ｔ，ｔとして規定できる（図５（Ｂ））。
このように区分される凹部吸収部３４の厚み（ｈ_３＝ｈ_１−ｈ_２）（図２参照）と突出吸収部３３の厚み（ｈ_１）（図２参照）の測定は、大きさ３７ｍｍ×３７ｍｍ、厚み３ｍｍのアクリルプレートを吸収体３の上に置き、ＫＥＹＥＮＣＥ社製非接触式レーザー変位計（レーザーヘッドＬＫ−Ｇ３０、変位計ＬＫ−ＧＤ５００を用い突出吸収部３３の厚み（ｈ_１）を計測し、凹部吸収部３４の厚み（ｈ_３）を吸収体の図２相当の断面をＫＥＹＥＮＣＥ社製マイクロスコープＶＨＸ‐１０００を用いることで計測できる。

下層吸収体３２が有する基本構造において、整列配置されたブロック状の突出吸収部３３が高密度な高坪量部をなし、これを囲むように整列配置された凹部吸収部３４が低密度な低坪量部をなす場合、液残りや液戻りなく高い液透過性と液保持性とを実現するため以下の範囲であることが好ましい。使用する吸収性物品の用途によっても多少異なるが、ブロック状の突出吸収部３３の長手方向長さｋ_１（図５（Ｃ）参照）は、凹部を基軸に吸収体が徐々に肌当接面へ向かって湾曲し、着用者の身体の形状に沿って変形することを促すという観点から１０〜３０ｍｍが好ましく、１５〜２５ｍｍがより好ましい。その幅方向長さｋ_２は、凹部が着用中に吸収体に加わる幅方向からの圧縮力を緩和する観点から５〜２０ｍｍが好ましく、７〜１５ｍｍがより好ましい。また、凹部３５の長手方向長さｓは１〜５ｍｍが好ましく、１〜３ｍｍがより好ましい。幅方向長さｒは１〜５ｍｍが好ましく、１〜３ｍｍがより好ましい。
本発明において下層吸収体３２の基本構造は、図４に示す突出吸収部３３と凹部吸収部３４とによる整列配置の構造に限定されず、低密度な低坪量部が高密度な高坪量部を取り囲み、肌当接面側から素早く液を透過させて液戻りや液残りなく吸収保持させる構造であれば任意の形状や配置を採用することができる。その場合、前記の寸法と同様の趣旨で、吸収体の肌当接面側において、低密度な低坪量部の面積（ｑ_３）と高密度な高坪量部の面積（ｑ_４）との比率（ｑ_３／ｑ_４）が、１／１２〜２／３であることが好ましく、１／１０〜１／２であることが好ましい。

前述の下層吸収体３２の基本構造の液引き込み保持作用は、上層吸収体３１と積層され圧密化された側方高密度部８においても、上層吸収体３１の中高部７から側方へ向かって高まる密度差ないしは密度勾配による毛管力と連動して効果的に作用する。側方高密度部８は、その毛管力で中高部７で直接捕捉した排泄液を強く引き込み、さらに下層の凹部吸収部３４と凹部３５とからなる通液構造とこれに連動する突出吸収部３３の液保持構造とによって確実に厚み方向に吸引し、表面シート１上での液残りや液戻りをより効果的に抑制することができる。以下に、図２，３及び５を参照して、下層吸収体３２が上層吸収体３１と積層され圧密化された状態での中高部７及び側方高密度部８の構造とその特徴的作用につき詳述する。
なお中高部７にある、上層吸収体３１の部分を上層中高部７１とし、下層吸収体３２の部分を下層中高部７２として説明する。また側方高密度部８にある、上層吸収体３１の部分を上層高密度帯８１とし、下層吸収体３２の部分を下層高密度帯８２として説明する。さらに下層中高部７２にある突出吸収部３３及び凹部吸収部３４に対し、これに対応する下層高密度部８２の部分を高密度突出吸収部８３及び高密度凹部吸収部８４として説明する。

中高部７は、排泄部対応領域Ｃを中心に幅方向（Ｘ方向）の中央部分に配されている（図２参照）。また中高部７は、図３に示すとおり、上層吸収体３１と下層吸収体３２との積層部分が表面シート１側へ突出した部分（上層中高部７１及び下層中高部７２）であり、ナプキン１０の装着時には、着用者の肌に当接するようにされている。中高部７の突出した形状が、ナプキン１０と着用者の肌と密着性を高め、密着状態で素早く排泄液を余すことなく捕捉して吸収体３内部へと引き込むことができる。そのため、表面シート１側に液を滞留させ難く、液残りによる着用者の不快感を生じにくくすることができ、また排泄液の横漏れ防止に効果的である。

側方高密度部８は、上層吸収体３１と下層吸収体３２とが厚み方向に積層された部分を含み、吸収体３の他の部分よりも圧密化され高密度化された部分（上層高密度帯８１及び下層高密度帯８２）である。側方高密度部８は、吸収体３の平面視、該中高部７の長手方向両側縁に隣接して沿いかつ下層吸収体３の長手方向全長（Ｙ方向）に亘って配されている（図２参照）。排泄部対応領域Ｃにある側方高密度部８は、図３に示すとおり、中高部７にある上層吸収体３１の部分に連接した上層高密度帯８１と、中高部７にある下層吸収体３２の部分に連接した下層高密度帯８２とからなる。圧密化された側方高密度部８は、他の部分よりも非肌当接面側に窪んだ形状をしている。ここで、側方高密度部８の高密度とは、側方高密度部８全体の構成部材の平均密度（ｍ_２）が中高部７全体の平均密度（ｍ_１）より高められていることと定義でき、または上層高密度帯８１の平均密度（ｍ_２１）が上層中高部７１の平均密度（ｍ_１１）よりも高められ、かつ下層高密度帯８２の平均密度（ｍ_２２）が下層中高部７２の平均密度（ｍ_１２）よりも高められていることと定義することもできる。また下層高密度帯８２の平均密度（ｍ_２２）が下層中高部７２の平均密度（ｍ_１２）よりも高められているとは、下層高密度帯８２全体として下層中高部７２よりも平均密度が高められていると定義する場合の他、下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４の平均密度（ｍ_２４）が下層中高部７２の凹部吸収部３４の平均密度（ｍ_１４）より高められている、あるいは下層高密度帯８２の高密度突出吸収部８３の平均密度（ｍ_２３）が下層中高部７２の突出吸収部３３の平均密度（ｍ_１３）が高められていることと定義することもできる。

次に図５を参照し、生理用ナプキン１０における上述した中高部７及び側方高密度部を有し上層吸収体３１及び下層吸収体３２からなる吸収体３の動的相互作用の特徴を説明する。図５は、本実施形態に係る生理用ナプキン１０の上層吸収体３１及び下層吸収体３２の積層部分の構造を一部切欠して模式的に示した説明図である。
側方高密度８は、中高部７よりも圧密化され高密度化された部分として、中高部７から側方高密度部８へと毛細管力が働く部分となる。この毛管力により吸収体３内部での液の移動性が向上する。具体的には、まず、排泄液の透過を受けると（矢印ａ_１）、上層吸収体３１において、中高部７にある上層中高部７１から側方高密度部８にある上層高密度帯８１へと毛管力により液が素早く引き込まれ易い（矢印ｂ_１）。この液の引き込みにより、繊維量の多さゆえに液を貯蔵させやすい中高部７に液残りが生じ難い。

そして、引き込まれた液は、上層高密度帯８１の非肌側面に当接する下層高密度帯８２の肌側の平坦な面へと透過され易い。特に下層高密度帯８２のなかでも低密度で低坪量な高密度凹部吸収部８２が、平面方向に広く連続配置される導液部となって液を透過させ易い（矢印ｂ_２）。下層高密度帯８２に透過された液は、前述のとおり下層吸収体３の動的作用により高密度突出吸収部８３へと引き込まれ保持される（矢印ｂ_３）。このようにして排泄された液が、吸収体３内部で素早く引き込まれ側方高密度部８にある下層高密度帯８２で吸収保持されるので、生理用ナプキン１０は着用者の肌に当接する嵩高な中高部７に液残りが少なく液戻りも少ない。これにより排泄初期から着用者にドライ感を提供することができる。また、この構造を有する吸収体３では、中高部７の吸収性能が保持され易いので、その後の繰り返し排泄があっても十分対応可能である。このような液の素早い液の引き込み性を発揮するために、各部の構成部材の密度は、（上層中高部７１）＜（上層高密度帯８１）≒（下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４）＜（下層高密度帯８２の高密度突出吸収部８３）となることが好ましい。また、少なくとも排泄部対応領域Ｃの側方高密度部８（下層高密度帯８２）に、高密度突出吸収部８３及び高密度凹部吸収部８４が配されることが好ましい。

さらに本実施形態の生理用ナプキン１０は、下層高密度帯８２において高密度突出吸収部８３及び高密度凹部吸収部８４の組み合わせ構造が排泄部対応領域Ｃから前方領域Ｆ及び後方領域Ｒにまで及んで配されていることが好ましい。これにより、繰り返しの排泄や一度の排泄量が多い場合であっても、導液部としての高密度凹部吸収部８４を介して、液が長手方向に拡散され前方領域Ｆや後方領域Ｒの高密度突出吸収部８３で吸収保持される（矢印ｂ_４）。また本実施形態の生理用ナプキン１０は、中高部７にある下層中高部７２に突出吸収部３３及び凹部吸収部３４の組み合わせ構造を有することが好ましい。これにより中高部７においても、下層中高部７２の液の引き込み力及び効果的な吸収保持構造が作用して液を表面シート１から遠い位置で吸収保持できる（矢印ｂ_５）。加えて、中高部７における下層中高部７２の凹部吸収部３４と側方高密度部８における下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４との間に密度の密度差ないしは密度勾配を有し毛管力が作用することが好ましい。この毛管力により、液が下層中高部７２の凹部吸収部３２からその導水路を介して下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４へと引き取られて易い（矢印ｂ_６）。これにより、中高部７にある液が、上層中高部７１、下層中高部７２のいずれにあっても側方高密度吸収部８へと引き渡されて易くなる。

以上のとおり、本実施形態の生理用ナプキン１０は、中高部７及側方高密度部８における上層吸収体３１と下層吸収体３２との組み合わせによる動的相互作用によって、排泄初期の段階から側方高密度部８の吸収性能を用いて吸収保持することが可能となり、使用の最後の段階まで中高部７の吸収性能を保持しようとする構造とされている。そのため、生理用ナプキン１０は持続的に着用者にドライ感を提供することができる。

さらに本実施形態の生理用ナプキン１０の吸収体３において、少なくとも排泄部対応領域Ｃの側方高密度部８と液防漏性で繊維密度のもっとも高い条溝５１との間に、側方高密度部８よりも繊維密度の低い側方低密度部９が配されることが好ましい（図３参照）。この場合、繊維密度の粗部（中高部７）、密部（側方高密度部８）、粗部（側方低密度部９）、高密部（条溝５１）が順次配置されている。粗部（側方低密度部９）が、密部（側方高密度部８）と高密部（条溝５１）との間の緩衝部となって、両者間の密度差による強い毛管力の直接的作用を抑制する。つまり、側方低密度部９があることで、排泄液がさらに幅方向へと拡散しようとしても、いきなり高密部の条溝５１まで液が拡散することが抑制される。これにより液の横漏れを効果的に抑制することができるので好ましい。

吸収体３において、中高部７と側方高密度部８との連携により液を素早く側方に引き込んで中高部７の吸収性能を持続可能とするために、中高部７の全構成部材の平均密度（ｍ_１）は、０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ^３が好ましく、０．０８〜０．１５ｇ／ｃｍ^３がさらに好ましい。同様に、側方高密度部８の全構成部材の平均密度（ｍ_２）は、０．１０〜０．７０ｇ／ｃｍ^３が好ましく、０．２０〜０．５０ｇ／ｃｍ^３がさらに好ましい。また、中高部７の全構成部材の平均密度（ｍ_１）と側方高密度部８の全構成部材の平均密度（ｍ_２）との比率（ｍ_１／ｍ_２）は、１／１４〜３／４が好ましく、１／１０〜２／３がさらに好ましい。上記の下限以上の比率とすることで側方高密度部８が圧縮により著しく硬くなることを防止することができ、上限以下とすることで中央部７から側方高密度部８にかけて適切な粗密勾配が形成され、排泄点である中央部７から側方高密度部８に向かい体液が素早く移行することから、排泄点付近をドライに保ち、着用者に快適な着用感を提供できる。
さらに幅方向への液拡散の効果的な防止のため、側方低密度部９の全構成部材の平均密度（ｍ_３）は、０．０５〜０．２０ｇ／ｃｍ^３が好ましく、０．０８〜０．１５ｇ／ｃｍ^３がさらに好ましい。また、また、側方高密度部８と側方低密度部９の密度の比率（ｍ_２／ｍ_３）は、４／３〜１０／１が好ましく、３／２〜５／１がさらに好ましい。上記の下限以上の比率とすることで側方高密度部８が圧縮により著しく硬くなることを防止することができ、上限以下とすることで側方高圧縮部８から側方低密度部９への液の移行を抑制し、製品幅方向からの体液の漏れを防止することができる。

中高部７の上層中高部７１から側方高密度部８の上層高密度帯８１へと液を素早く引き込むため、上層中高部７１の平均密度（ｍ_１１）と上層高密度帯８１の平均密度（ｍ_２１）との比率（ｍ_１１／ｍ_２１）は、１／１０〜３／４が好ましく、１／５〜２／３がさらに好ましい。また確実に高密度突出吸収部８３で液を吸収保持させるため、下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４の平均密度（ｍ_２４）と下層高密度帯８２の高密度突出吸収部８３の平均密度（ｍ_２３）との比率（ｍ_２４／ｍ_２３）は、１／３〜４／５が好ましく、１／２〜３／４がさらに好ましい。上記の下限以上の比率とすることで上層高密度帯８１及び下層高密度帯８２が圧縮により著しく硬くなることを防止することができ、上限以下とすることで上層中高部７１から上層高密度帯８１へ素早く液を移行し排泄点付近を効果的にドライに保つことができると共に、確実に高密度突出吸収部８３に液を導き体液を吸収保持することができる。
さらに吸収体３全体として、上層中高部７１から高密度突出吸収部８３への液の素早い移行のため、前述のとおり各部の構成部材の平均密度が（上層中高部７１）＜（上層高密度帯８１）≒（下層高密度帯８２の高密度凹部吸収部８４）＜（下層高密度帯８２の高密度突出吸収部８３）となるのが好ましく、その比率（ｍ_１１／ｍ_２１／ｍ_２４／ｍ_２３）は、１／１０／１０／３０〜３／４／４／５が好ましく、１／５／５／１０〜４／６／６／９がさらに好ましい。上記の下限以上の比率とすることで側方高密度部８が圧縮により著しく硬くなることを防止することができ、上限以下とすることで上層中高部７１から上層高密度帯８１、高密度凹部吸収部８４、さらに高密度突出吸収部８３へと液を移行する毛管勾配が形成され、排泄された体液を素早く移行し吸収することで排泄点付近をドライに保つことができ、着用者に優れた装着感を提供することができる。

加えて、中高部７における厚み方向の液の透過と下層中高部７２における突出吸収部３２での液の確実な吸収保持のため、上層中高部７１の平均密度（ｍ_１１）と下層中高部７２の平均密度（ｍ_１２）との比率（ｍ_１１／ｍ_１２）は、１／５〜４／５が好ましく、１／３〜３／４がさらに好ましい。下層中高部７２の平均密度（ｍ_１２）と下層高密度帯８２の平均密度（ｍ_２２）との比率（ｍ_１２／ｍ_２２）は、１／３〜９／１０が好ましく、１／２〜４／５がさらに好ましい。下層中高部７２から下層高密度帯８２へのスムーズな液の移行のため、凹部吸収部３４の平均密度（ｍ_１４）と高密度凹部吸収部８４の平均密度（ｍ_２４）との比率（ｍ_１４／ｍ_２４）は、１／１０〜２／３が好ましく、１／５〜１／２がさらに好ましい。なお、下層中高部７２における凹部吸収部３４と突出吸収部３３とにおける好ましい密度、坪量及び寸法は、前述の下層吸収体３２の基本構造で述べた数値範囲、測定方法を採用することができる。

吸収体３における液の素早い引き込み性の実現において、中高部７の幅方向の平均長さは、吸収体３の幅方向長さの２０〜６０％が好ましく、２５〜４０％がさらに好ましい。側方高密度部８の幅方向平均長さは、吸収体３の幅方向長さの５〜４０％が好ましく、５〜３０％がさらに好ましい。側方低密度９の幅方向の平均長さは、吸収体３の幅方向長さの１０〜４５％が好ましく、１５〜４０％がさらに好ましい。

上記密度の測定において、凹部吸収部３４の平均密度（ｍ_１４）、高密度凹部吸収部８４の平均密度（ｍ_２４）、及び高密度突出吸収部８３の平均密度（ｍ_２３）は、前述の下層吸収体における凹部吸収部３４及び突出吸収部３３の密度の測定方法を用いることができる。その他の密度の測定方法については以下のとおりである。

［中高部７及び側方高密度部８の平均密度（ｍ_１），（ｍ_２）の測定方法］
まず、中高部７、側方高密度部８、それぞれの部位を所定の長さ、幅になるようカッターで切断し、切り出した各々のサンプルの質量を測定する。次に、切り出した各々のサンプルの断面を、ＫＥＹＥＮＣＥ社製マイクロスコープＶＨＸ−１０００を用い観察し、各々のサンプルの厚みを測定する。測定したサンプルの質量をサンプルの長さ、幅、厚みで除することで、各々のサンプルの平均密度が求められる。

［上層中高部７１及び上層高密度帯８１の平均密度（ｍ_１１），（ｍ_２１）の測定方法］
まず、厚みが変化しないように十分に注意を払い、上層吸収体３１と下層吸収体３２を分離する。分離した上層吸収体３１より、所定の長さ、幅になるようにカッターを用いて上層中高部７１及び上層高密度帯８１を切り出し、切り出した各々のサンプルの質量を測定する。次に、切り出した各々のサンプルの断面を、ＫＥＹＥＮＣＥ社製マイクロスコープＶＨＸ−１０００を用い観察し、各々のサンプルの厚みを測定する。測定したサンプルの質量をサンプルの長さ、幅、厚みで除することで、各々のサンプルの平均密度が求められる。

［下層中高部７２及び下層高密度帯８２の平均密度（ｍ_１２），（ｍ_２２）の測定方法］
まず、厚みが変化しないように十分に注意を払い、上層吸収体３１と下層吸収体３２を分離する。分離した下層吸収体３２より、所定の長さ、幅になるようにカッターを用いて下層中高部７２及び下層高密度帯８２を切り出し、切り出した各々のサンプルの質量を測定する。次に、切り出した各々のサンプルの断面を、ＫＥＹＥＮＣＥ社製マイクロスコープＶＨＸ−１０００を用い観察し、各々のサンプルの厚みを測定する。測定したサンプルの質量をサンプルの長さ、幅、厚みで除することで、各々のサンプルの平均密度が求められる。

本実施形態の生理用ナプキン１０において、その排泄部対応領域Ｃの幅方向両端にある２条の条溝５１，５１は、その位置において吸収体３の複数の突出吸収部３３と凹部吸収部３４とを物品縦方向（Ｙ方向）に繋ぐように配設されることが好ましい。こうすることでナプキン１０装着時に、着用者の足の付け付近において、突出吸収部３４同士のせん断による形状崩れが防止され、幅方向からの液漏れを抑え得る。また、ナプキン１０装着時に条溝５１，５１が折れ曲がり部となって着用者の体にフィットさせ易く、吸収体３の幅方向中央部分の突出吸収部３３へ不要な負荷が掛かり難くなる。その結果、幅方向中央部分の液を多く保持する突出吸収部３３の形状が崩れ難く液漏れがさらに防止され得る。また、凹部３１が条溝５１の幅方向外方の部分にまで延在して配されることが好ましい。この配置によって、製品の幅方向を軸とした製品曲げ剛性が低減され、股間から臀部にかけて着用者の身体のカーブに合わせて変形しやすくなるとともに、横漏れを起こし易い吸収体３両側部にも可撓性を付与し、着用者の股下にフィットさせることができ、着用者の体の動きにも追従して隙間が生じるのを防ぐことができる。また、条溝５１が幅方向外方に湾曲した形状であることで、中高部７との距離が得られ、液の吸収保持部となる側方高密度部８と液の拡散抑制部となる側方低密度部９を広い幅で形成することができるので好ましい。

本実施形態の吸収体３は、液を保持して液戻りし難い吸水性ポリマーを含有することが好ましく、特に下層吸収体３２に含まれることが好ましい。表面シート１上への液戻りをより効果的に抑制するため、該吸水性ポリマーは、凹部吸収部３４や高密度凹部吸収部８４よりも突出吸収部３３や高密度突出吸収部８３の部分に多く偏在して配されるのが好ましく、凹部吸収部３４や高密度凹部吸収部８４に配されずに突出吸収部３３や高密度突出吸収部８３においてその非肌面側に多く偏在して配されることがさらに好ましい。また、凹部３５の非肌面側に吸水性ポリマーを配することも同様の観点から好ましい。

次に、本実施形態で用いられる吸収体３の好ましい製造方法について図６〜９を参照して説明する。吸収体３の製造工程は、上層吸収体前駆体１０１及び下層吸収体前駆体１０２を積層させてなる吸収体前駆体１０３を製造する前駆体製造工程と、吸収体前駆体１０３を圧縮する圧縮工程とを有している。吸収体前駆体１０３は、中高構造を有し、パルプ繊維および吸水性ポリマーを含んで構成され、その組成は吸収体３と同じであり、その密度は、吸収体前駆体１０３の全域にわたって略均一である。上層吸収体前駆体１０１は下層吸収体１０２よりも短く幅狭な舟形形状で、この種の生理用ナプキンにおける吸収体に用いられる積繊装置で製造することができる。下層吸収体前駆体１０２は、上層吸収体前駆体１０１の載積面とは反対側に凹凸のある形状である。この下層吸収体前駆体１０２の製造方法について好ましい製造方法の一例を示す。

（１）下層吸収体前駆体１０２の製造工程（吸収体前駆体１０３の製造工程を含む）
図６は、生理用ナプキン1０の吸収体３の製造に好ましく用いられる吸収体の製造装置６０を示す図である。製造装置６０は、外周面に複数のポケット６２ａ(堆積部)がます目状に区切られた積繊プレートを有する回転ドラム６２（図７（ａ−１）参照）と、回転ドラム６２の外周面に向けて、繊維材料Ｓを飛散状態にて供給するダクト６３と、ダクト６３に繊維材料Ｓを供給する繊維材料供給部６４と、ポケット６２ａにあふれるように堆積させた過剰量の繊維材料を掻き取るスカッフィングロール６６と、ポケット６２ａから離型した堆積体(下層吸収体前駆体１０２の連続体)を前記吸収体前駆体の上下面をコアラップシート３ｂで被覆する被覆機構(図示せず)と、下層吸収体前駆体１０２の連続体を、個々の生理用ナプキンに使用される寸法に切断して加工後の下層吸収体前駆体１０２とする切断装置(図示せず)を備えている。

回転ドラム６２は、円筒状をなし、図８中の矢印Ａ方向に一定速度で回転駆動される。回転ドラム６２の内側(回転軸側)の非回転部分には、吸気ファン(図示せず)が接続されており、該吸気ファンの駆動により、回転ドラム内側の仕切られた空間Ｂ及びＥが負圧に維持される。外周面にある個々のポケット６２ａの底面部には、メッシュプレートが配設され（図示せず）、多数の細孔を有している。個々のポケット６２ａが、負圧に維持された空間Ｂ，Ｅ上を通過している間、各ポケット６２ａの底面部の細孔が吸引孔として機能する。

ダクト６３は、回転ドラム６２の外周面の一部を覆う吹き出し端部６３ａと、繊維材料供給装置６４に接続された吹き込み端部６３ｂとを有しており、空間Ｂ上に位置するポケット６２ａの底面部からの吸引により、ダクト６３内に、回転ドラム６２の外周面に向けて流れる空気流が生じさせるように構成されている。繊維材料供給部６４は、解繊機６４ｅを備えており、ラチス６４ｄにある原料Ｓ’が解繊機６４ｅで解繊され、解繊された繊維材料Ｓをダクト６３内に供給するように構成されている。

スカッフィングロール６６は、周囲にブラシを有しており、該ブラシにより、ポケット６２ａ内からあふれた繊維材料Ｓを掻き取る。スカッフィングロール６６に掻き取られずポケット９内に残った堆積体(下層吸収体前駆体１０２の連続体)は、回転ドラム６２の下方においてポケット６２ａから離型される。ポケット６２ａからの離型は、回転ドラム６２内の仕切られた空間Ｄを図示しない加圧手段により陽圧に維持して、ポケット６２ａの底面部の細孔から空気を吹き出させると共に、バキュームコンベア６７側から吸引することにより行う。前記被覆機構は、バキュームコンベア６７上に、コアラップシート３ｂを供給する公知の搬送機構と、コアラップシート上に堆積体(下層吸収体前駆体１０２の連続体)が載置された後に、該コアラップシートの両側部を、該堆積体(下層吸収体前駆体１０２の連続体)上に折り返し、その折り返しにより、堆積体(下層吸収体前駆体)１０２の上下両面をコアラップシート３ｂで被覆する機構（図示せず）とで構成されている。

図６に示す吸収体の製造装置６０を用いて、上述した下層吸収体前駆体１０２を製造する方法について説明する。
まず、回転ドラム６２及びスカッフィングロール６６を回転させると共に、上記吸気ファン及び上記加圧手段を作動させて、空間Ｂ及びＥを負圧にし、空間Ｄを陽圧にする。また、バキュームコンベア６７、圧縮手段９０及び上記切断装置を作動させる。吸気ファンの作動により、空間Ｂ上に位置するポケット６２ａの底面部に吸引力が生じると共に、ダクト６３内に、回転ドラム６２の外周面に向けて流れる空気流が生じる。そして、繊維材料供給装置６４を作動させて、ダクト６３内に繊維材料Ｓ（パルプ繊維４１及び高吸水性ポリマー４２）を供給すると、該繊維材料Ｓは、飛散状態となって、ダクト６３内を流れる空気流に載って、回転ドラム６２の外周面に向けて供給される。

個々のポケット６２ａが、負圧に維持された空間Ｂ上を通過している間、ダクト６３から供給される繊維材料Ｓが各ポケット６２ａに吸引されて堆積する（図７（ａ−１）及び（a−２）参照）。この点について図７（ａ−２）を参照して説明すると、回転ドラム６２の外周面にある積繊プレートにおいて、複数の仕切り６２ｂをより分けてパルプ繊維と吸水性ポリマーとの混合物が積繊され、さらに仕切り６２ｂの高さを超えて回転ドラム６２の高さいっぱいにまで積繊される。各ポケット６２ａには、やや過剰量の繊維材料を堆積させ、ポケット６２ａ内からあふれる繊維材料がスカッフィングロール６６で掻き取られる。スカッフィングロール６６に掻き取られずポケット６２ａ内に残った堆積体（下層吸収体前駆体１０２の連続体）は、バキュームコンベア６７上に供給されたコアラップシート上に離型される（図８参照）。その際、下層吸収体前駆体１０２は、回転ドラム６２の手前からコンベアで搬送されてくる上層吸収体前駆体１０１の上面にコアラップシートを介して載置される。該堆積体(下層吸収体前駆体１０２の連続体)には、ポケット６２ａ内の複数の溝部６２ｃに対応する複数の凸状部３３Ａが形成されている。下層吸収体前躯体１０２のうち、仕切り６２ｂの上に堆積した部分が吸収体３の凹部吸収部３４となり、仕切り６２ｂが配されていた部分が吸収体３の凹部となる。下層吸収体前駆体１０２の連続体は、上層吸収体前駆体１０１上に載積された状態で、図示しない切断手段で切断されて個々の生理用ナプキンに使用される寸法の下層吸収体前駆体１０２となる。そして、上層吸収体１０１と下層吸収体前駆体１０２との積層物を下層吸収体前駆体１０２が下側にくるように反転させて吸収体前駆体１０３となる。吸収体前駆体１０３では、上層吸収体前駆体１０１及び下層吸収体前駆体１０２はそれぞれ個別にコアラップシートで被覆されている。

（２）圧縮工程
図９は、吸収体前駆体１０３の好ましい圧縮工程の一例を示す説明図である。
吸収体前駆体１０３の圧縮工程では、圧縮手段９０とこの圧力を受ける受け手段９１との間に、吸収体前駆体１０３を供給し、圧縮手段９０を押圧することによって、上方に隆起した部分（隆起部１０３ａ）を上層吸収体前駆体１０側からその厚み方向に圧縮する。圧縮手段９０および受け手段９５は、エンボス加工などに用いられる回転可能なロール状のものでも良く、上下に往復動する板状のものでも良い。

圧縮手段９０における、吸収体前駆体１０３の圧縮時に該吸収体前駆体１０３と対向する面９１には、図９に示すように、吸収体前駆体１０３の供給方向（図５が記載された紙面に対して垂直方向）に延びる所定幅の凹部９２が形成されている。凹部９２は、底部と該底部から立設する、吸収体前駆体１０３の供給方向に沿う左右一対の側壁部９２ａ，９２ａとを有し、全体としてコの字形状である。凹部９２は、吸収体前駆体１０３の隆起部１０３ａを上層吸収体前駆体１０１側からその内部に押し込んで変形させて前述の中高部７を形成するためのものであり、その寸法は、中高部７ないしは上層中高部７１の所望の寸法に応じて設定される。隆起部１０３ａの幅（＝上層吸収体前駆体１０１の幅）（ｗ_１０）と凹部９２の開口幅（ｗ_１１）との比率（ｗ_１０／ｗ_１１）は、中高部７の形成容易性の観点から、１〜５が好ましく、１〜３がさらに好ましい。

前記圧縮工程において、圧縮手段９０で吸収体前駆体１０３の一面側（隆起部１０３ａの形成面側）を押圧し、凹部９２及びその開口周辺平坦部９１ａを隆起部１０３ａに押し当てていくと、隆起部１０３ａにおける開口周辺平坦部９１ａと対向する部分が押し潰されると共に、隆起部１０３ａの一部が凹部９２内に侵入し、凹部９２内を満たすように変形する。前記圧縮工程において、隆起部１０３ａに対する圧縮力は、開口周辺平坦部９１ａにおいても最も高く、凹部９２の幅方向中央に近づくほど低下し、凹部９２の幅方向中央部が最も低く、略ゼロである。また、吸収体前駆遺体１０３における隆起部１０３ａによりも幅方向外方に位置する部分にかかる圧縮力、即ち（上層吸収体前駆体１０１の幅方向外方にある下層吸収体前駆体１０２の部分への圧縮力もほとんどかからない。

このような吸収体前駆体１０３に対する圧縮力の不均一分布により、前記圧縮工程を経て得られた吸収体３には、前述した粗密構造が形成される。得られた吸収体３においては、前記圧縮工程にいて、凹部９２の開口周辺平坦部９１ａ及びその周辺部（上層吸収体前駆体１０１と重なる部分）で圧縮された部分が側方高密度部８となっており、また開口部周辺平坦部９１ａ及びその周辺部よりも幅方向内方に位置する、凹部９２の幅方向中央部で圧縮された部分が中高部７となっている。また、開口周辺平坦部９１ａ及びその周辺部よりも幅方向外方域で下層吸収体前駆体１０２のみに対して圧縮された部分が、側方低密度部９となっている。

また前記圧縮工程において、受け手段９５に当接する下層吸収体前駆体１０２の面には凸状部３３Ａが複数あり、圧縮手段９０と受け手段９５との間における加工手段６０の押圧力で凸状部３３Ａがつぶされて圧蜜化し、高密度な高坪量部としての突出吸収部３３となる。特に、凹部９２の開口周辺平坦部９１ａ及びその周辺部（上層吸収体前駆体１０１と重なる部分）では、下層吸収体前駆体１０２においても圧縮力が最も高く、側方高密度部８を構成する下層高密度帯８２となる。同時に、下層高密度帯８２では、中高部７の突出吸収部３３よりも高密度な高密度突出吸収部８３が形成され、また中高部７の凹部吸収部３４よりも高密度な高密度凹部吸収部８４が形成される。こうして吸収体３が得られる。

前記吸収体３の形成後、得られた吸収体３の上層中高部７１側に表面シート１（図示せず）を、反対側に裏面シート２（図示せず）をそれぞれ供給し、吸収体３が存する領域に対し、該表面シート１側からエンボス加工を施して防漏溝５を形成する。さらに、吸収体３の周囲において表面シート１と裏面シート２との間を接合することにより生理用ナプキン１０が得られる。

なお、前述したように、吸収体前駆体１０３においては、上層吸収体前駆体１０１及び下層吸収体前駆体１０２がそれぞれ個別にコアラップシートで被覆されているため、吸収体前駆体１０３を用いて得られた吸収体３においては、上層吸収体３１と下層吸収体３２との間に、これらのコアラップシートが挟持固定される。

次に、本実施形態の生理用ナプキン１０を構成する部材の形成素材について説明する。
表面シート１、裏面シート２、吸収体３、サイドシート４の形成材料としては、この種の物品に採用されるものを特に制限なく用いることができる。例えば、表面シート１としては、各種不織布（たとえば、エアスルー不織布やスパンボンド不織布など）の重ね合わせた構成や、不織布とフィルムとのラミネートからなり多数の開孔が形成されている複合シート等が用いられる。また、表面シートとして上層・中層・下層の３層からなり、上層及び下層を突出部とエンボスによる圧密化させた部分との起伏のある形状として、平坦な中層に接合させたものであってもよい。また表面シート１は、前記の突起のある上層及び下層とからなるｍのであってもよく、起伏のある上層と平坦な中層との２層からなるものであってもよい。この場合、表面シートに繊維の密度勾配ができ、表面シート１上の液を素早く吸収体３側へ透過させることができるので好ましい。上層及び下層の部材として、カード法によって形成されたウェブや嵩高な不織布などの繊維同士が極めて緩く絡んでいる状態の繊維集合体を用いることができ、中層の部材としてカード法によって形成されたウェブや熱収縮性を有する不織布を用いることができる。

吸収体３の構成材料としては、特に制限はないが繊維材料、多孔質体、それらの組み合わせなどを用いることができる。繊維素材としては例えば、木材パルプ、コットン、麻などの天然繊維、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオフィレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等の合成樹脂からなる単繊維、これらの樹脂を２種以上含む複合繊維、アセテートやレーヨンなどの半合成繊維を用いることができる。合成繊維からなる繊維を用いる場合、該繊維は熱によって形状が変化する熱収縮繊維であってもよい。例えば、熱によって繊度は大きくなるが繊維長が短くなるものや、繊度はほとんど変化しないが、形状がコイル状に変化することでみかけの繊維の占有する長さが短くなるものであってもよい。多孔質体としては、スポンジ、不織不、高吸水性ポリマーの凝集物（高吸水性ポリマーと繊維とが凝集したもの）などを用いることができる。

裏面シート２は、透湿性フィルム単独、又はフィルムと不織布の貼り合わせ、撥水性の不織布（ＳＭＳやＳＭＭＳ等）を用いることができる。コスト面やズレ止め粘着剤とのマッチングなどから、透湿フィルム単独を防漏材として用いることが最も好ましい。この場合のフィルム材としては、熱可塑性樹脂と、これと相溶性のない無機フィラーを溶融混練して押し出したフィルムを所定の寸法に延伸して微細孔をあけたフィルム、または、本質的に水分の相溶性が高く、浸透膜のように水蒸気排出可能な無孔性のフィルムが挙げられる。本発明に関わる湿度排出の性能を十分に発現し、かつ、水分のにじみ出しがない防漏層を具現化するには、透湿度は、０．７〜３．０ｇ／１００ｃｍ^２ｈｒの範囲にあることが好ましく、１．０〜２．５の範囲にあることが更に好ましい。さらっと感を十分に高める観点からは１．５〜２．５にあることが最も好ましい。また、フィルムの破れ等のトラブルなく使用可能であるためには、フィルム坪量は１８〜７０ｇ／ｍ^２、より好ましくは２５〜６０ｇ／ｍ^２である。また好ましい無機フィラー配合量は、フィルム全体の質量に対するフィラーの質量％として３０〜６５質量％、より好ましくは４０〜６０質量％である。

サイドシート４は撥水性の不織布が好ましく、カード法により製造された不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、ヒートロール不織布、ニードルパンチ不織布等の中から撥水性の物、または撥水処理した種々の不織布を用いることができる。特に好ましくは、例えば、スパンボンド不織布、スパンボンド−メルトブローン（ＳＭ）不織布、スパンボンド−メルトブローン−スパンボンド（ＳＭＳ）不織布等が用いられる。

本発明において、吸収体の積層構造は、本実施形態の２層に限定されるものではなく、下層吸収体の構造的特徴を含めた吸収体全体の粗密構造による液の引き込み性を有するものであれば、単層あってでも３層以上であってもよい。また中高部の形状は、本実施形態のように２つの隆起に限定されるものではなく、肌に当接して液を直接取り込む構造で全体として吸収体の他の部分よりも隆起する形状であれば、中高部の肌当接面側に複数の隆起から構成されてもよく、また高さの異なる複数の突起があってもよい。側方高密度部の形状は、本実施形態のように平坦（表面シートに対して平行）な形状に限定されず、例えば、中高部から傾斜をつけてテーパ形状とされてもよく、また密度も側方高密度部内で勾配があってもよい。さらに中高部の幅方向の側部が側方高密度部へ向けた傾斜をつけてテーパ形状とされてもよく、また密度の勾配があってもよい。

本発明の吸収性物品は、上記の実施形態の生理用ナプキンに制限されるものではなく、例えば失禁パッド、失禁ライナ等に適応することができる。また、経血に限らずその他、尿、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。また、表面シート、吸収体、裏面シート及びサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の生理用ナプキンの表面シート、吸収体及び裏面シートの材料、製法における条件や、製品の寸法諸言は特に限定されず、通常の生理用ナプキン等において用いられている各種材料を用いることができる。

以下に、本発明について実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明がこれにより限定して解釈されるものではない。

［実施例１及び２］
図１に示す構成の生理用ナプキンを常法に従って製造し、これを実施例１及び２のサンプルとした。吸収体を構成する吸収性コアの構成材料として、パルプ繊維および吸水性ポリマーを用い、これらの混合積繊体（吸収性コア）と該混合積繊体を被覆するコアラップシートとからなる吸収体前駆体１０３を前述の方法により製造し、前述の方法により吸収体を製造した。実施例１の吸収体中における吸水性ポリマーの含有量は、該吸収体の全重量に対して２０重量％であった。また、前記コアラップシートとして、坪量１６ｇ／ｍ^２の吸収紙で被覆して使用した。また、表面シートとして、坪量２５ｇ／ｍ^２のエアスルー不織布を使用し、裏面シートとして、坪量３０ｇ／ｍ^２の非透湿ポリエチレン製フィルムを使用した。

［実施例１］
実施例１で用いた吸収体の寸法は、下層吸収体の長さが２７５ｍｍ、下層吸収体の幅が８０ｍｍ、下層吸収体の厚みが２ｍｍ、上層吸収体の長さが１２０ｍｍ、上層吸収体の厚みが３ｍｍ、中高部の幅が３５ｍｍ、側方高密度部の幅が５ｍｍ、側方低密度部の幅が２５ｍｍであった。溝部の幅は２ｍｍであった。
また、中高部の坪量は４００ｇ／ｍ^２、密度は０．１〜０．２ｇ／ｃｍ^３であり、側方高密度部の坪量は４００ｇ／ｃｍ^３、密度は０．２〜０．５ｇ／ｃｍ^３であった。側方低密度部の坪量は１６０ｇ／ｃｍ^３、密度は０．１〜０．２ｇ／ｃｍ^３であった。また中高部と側方高密度部との密度比は０．５、側方高密度部と側方低密度部との密度比は０．９であった。上層中高部と上層高密度帯との密度比は０．５０、下層高密度帯における高密度凹部吸収部と高密度突出吸収部との密度比は０．６０であった。上層中高部と下層中高部との密度比は０．５０、下層中高部と下層高密度帯との密度比は０．７０であった。下層中高部の凹部吸収部と下層高密度帯の高密度凹部吸収部との密度比は０．３５であった。これらの密度比は、前述した方法により算出した。

［実施例２］
実施例２で用いた吸収体の寸法は、下層吸収体の長さが３１０ｍｍ、下層吸収体の幅が８０ｍｍ、下層吸収体の厚みが３ｍｍ、上層吸収体の長さが８０ｍｍ、上層吸収体の厚みが４ｍｍ、中高部の幅が３５ｍｍ、側方高密度部の幅が５ｍｍ、側方低密度部の幅が２５ｍｍであった。溝部の幅は２ｍｍであった。
また、中高部の坪量は５４０ｇ／ｍ^２、密度は０．１０〜０．１８ｇ／ｃｍ^３であり、側方高密度部の坪量は５４０ｇ／ｃｍ^３、密度は０．２０〜０．４５ｇ／ｃｍ^３であった。側方低密度部の坪量は２００ｇ／ｃｍ^３、密度は０．１０〜０．２０ｇ／ｃｍ^３であった。また中高部と側方高密度部との密度比は０．５、側方高密度部と側方低密度部との密度比は０．９であった。上層中高部と上層高密度帯との密度比は０．５０、下層高密度帯における高密度凹部吸収部と高密度突出吸収部との密度比は０．６５であった。上層中高部と下層中高部との密度比は０．４０、下層中高部と下層高密度帯との密度比は０．７５であった。下層中高部の凹部吸収部と下層高密度帯の高密度凹部吸収部との密度比は０．３０であった。これらの密度比は、前述した方法により算出した。

［比較例１］
吸収体として、特許文献１に記載の方法に従って製造されたものを用い、実施例１と同様にして生理用ナプキンを製造して得た。これを比較例のサンプルとした。比較例１で用いた吸収体の構成材料ならびに各部の長さおよび幅は、概ね実施例１で用いた吸収体３と同じである。また、中高部の坪量は４００ｇ／ｍ^２、密度は０．１〜０．２ｇ／ｃｍ^３であり、側方高密度部に相当する部分の坪量は４００ｇ／ｍ^２、密度は０．１ｇ／ｃｍ^３〜０．３ｇ／ｃｍ^３以下であった。また、中高部と側方高密度部に相当する部分との密度比（前者／後者）は０．３であった。

［評価］
実施例および比較例のサンプル（生理用ナプキン）について、表層液戻り量、液拡散性をそれぞれ下記方法により測定した。それらの結果を下記表１に示す。

＜表面液残り量＞
表層液戻り量の測定方法を以下に説明する。この表層液戻り量とは、吸収体に吸収された液が加圧によってどれだけ表層（表面シート）側へ戻るかを示したものである。この量が少ないほど、吸収体の液保持性が高く、装着時のドライ感が得られ易い。
まず生理用ナプキンを水平に置いた。この生理用ナプキン上に、底部に直径１ｃｍの注入口がついた円筒つきアクリル板を重ねて、サンプルの排泄部対向領域（サンプルの長手方向前端から４０ｍｍの位置）に注入口から粘度を８．０±０．１ｃＰに調整した３ｇの脱繊維馬血を注入した。注入後、その状態を１分間保持した。次に、円筒つきアクリル板を取り除き、表面シートの表面上に、縦６ｃｍ×横９．５ｃｍで坪量１３ｇ／ｍ^２の予め質量を測定しておいた吸収紙（市販のティッシュペーパー）を載せた。さらにその上に圧力が４．５×１０^２Ｐａになるように錘を載せて５秒間加圧した。加圧後、吸収紙を取り出し、加圧前後の吸収紙の質量変化を測定し、吸収紙に吸収された脱繊維馬血の質量を表面液残り量とした。
次いで、試験後のサンプルに再び上記のアクリル板を重ね、１回目の注入から３分後に再び注入口から３ｇの脱繊維馬血を追加して注入した。生理用ナプキンへの馬血の注入位置は、最初の３ｇを注入した位置と同じとした。そして、注入後１分間その状態を保持したままにした後、アクリル板を取り除き、前回と同様にして２回目の表面液残り量を測定した。さらに、２回目の注入から３分後、その測定方後のサンプルに、前記と同様にして、３ｇの脱繊維馬血を追加して注入し、前回と同様にして３回目の表面液残り量を測定した。また、各々の液注入の際、液を注入してから全ての液を吸収するまでの時間（液吸収時間）を測定した。

＜液拡散性の測定方法＞
次に液拡散性の測定方法を以下に説明する。
サンプルの排泄部対向領域（サンプルの長手方向前端から４０ｍｍの位置）に、粘度を８．０±０．１ｃＰに調整した馬血３ｇを３分間隔で３回、累計吸収量が９ｇとなるまで一定間隔ごとに繰り返し注入し、３回目の注入後、１分間サンプルを放置した後の液拡散面積を測定した。液拡散面積は、吸収体の非肌当接面（裏面シートとの対向面）で測定した。

表１に示す結果から明らかなように、実施例１及び２は比較例に比べ、液の吸収速度が高く、累計９ｇ注入（３ｇ注入を３回繰り返した）の１〜３回のいずれの段階においても表層液残り量が少なく、液の引き込み性に優れることがわかった。このように、液の保持性に優れ、着用者の肌側に液を戻しにくいことから、着用者に優れたドライ感を与えてより快適な着用感を提供することができる。また、累計９ｇ注入後（３ｇ注入を３回繰り返した後）の液の拡散状態を観察すると、実施例１及び２は比較例に比べ、吸収体の非肌当接面（裏面シートとの対向面）における製品長手方向の液の移動性が高く、非肌当接面側で広く拡散することが分かった。よって、液が肌側に滞留することなく、吸収体４に素早く拡散、吸収され、保持されるので、快適な装着感を得ることができる。特に、一度の排泄液量が多いときであっても、液の拡散、吸収が素早く行われるので、横漏れの心配がなくなるという効果が得られる。

１表面シート
２裏面シート
３吸収体
３１上層吸収体３１
３２下層吸収体３２
３３突出吸収部
３４凹部吸収部
３５凹部
４サイドシート
５防漏溝
７中高部
７１上層中高部
７２下層中高部
８側方高密度部
８１上層高密度帯
８２下層高密度帯
８３高密度突出吸収部
８４高密度凹部吸収部
９側方低密度部
１０生理用ナプキン

Claims

肌当接面側に配置される液透過性の表面シート、非肌当接面側に配置される裏面シート、及び両シート間に配置される吸収体を有する縦長の吸収性物品であって、
前記吸収体は、少なくとも表面シート側の上層吸収体とそれより非肌面側の下層吸収体とを有し、該吸収体の着用者の排泄部に対応する部分には物品幅方向中央部分が表面シート側に突出する中高部を有し、
前記中高部の長手方向に沿う外側縁に連接する吸収体の部分は、上層吸収体と下層吸収体との積層部分を含み、前記中高部よりも密度が高められた側方高密度領域をなし、
前記下層吸収体には、少なくとも前記側方高密度領域に、互いに坪量差のある高坪量部と低坪量部とがあり、かつ該低坪量部は前記高坪量部よりも厚みが薄く前記上層吸収体側へ偏在して配されており、
前記吸収性物品には、前記表面シート及び前記吸収体を表面シート側から厚み方向に圧搾してなる防漏溝があり、該防漏溝は、少なくとも前記側方高密度領域の側縁外方に物品長手方向に沿う条溝を有し、前記条溝と前記側方高密度領域との間には、側方高密度領域に隣接し、該側方高密度領域よりも相対的に密度の低い側方低密度領域が配されている吸収性物品。
前記下層吸収体の肌面側からの平面視、前記低坪量部が高坪量部を囲むように連続して下層吸収体全面に配されている請求項１記載の吸収性物品。
前記下層吸収体の側方高密度領域における前記高坪量部は、前記低坪量部よりも相対的に高密度にされている請求項１又は２記載の吸収性物品。
前記条溝は、物品幅方向外方に湾曲した形状である請求項１〜３のいずれか１項に記載の吸収性物品。