JP5793892B2 - 光硬化型インク - Google Patents
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Description
従来、金属光沢を有する印刷物を作製する際には、アルミニウム粒子等の金属粒子を含むインキによるグラビア印刷やスクリーン印刷等の他、金属箔を用いた箔押し印刷や熱転写印刷等が知られている。
近年、これらの課題を解消する印刷法としてインクジェット印刷の利用が拡大している。インクジェット印刷は、紙等の印刷面にインクを吐出し、定着させる方式であるため、インクの使用量が少ない。一方、インクを吐出するという原理上、インクの粘性を抑える必要がある。しかしながら、インクの粘性が低下することにより、吐出したインクが滲み易くなり、高精細な印字結果を得ることが難しくなる。特に、インクの吸収性が低い印刷面(例えば紙以外の媒体)に印刷するときには、その傾向が強くなるので、インクジェット印刷用のインクには十分な速乾性が求められる。
ところが、金属粒子を含む光硬化型インクは、その安定性において問題を抱えている。具体的には、光硬化型インクがゲル化する問題が挙げられる。これらの問題があると、インクジェット方式の液滴吐出により光硬化型インクを安定的に吐出することができない。
本発明の光硬化型インクは、インクジェット方式の液滴吐出に供される光硬化型インクであって、
金属粒子の表面をリン酸エステル系化合物の被膜により被覆してなる表面処理金属粒子と、
重合性化合物と、を含み、
遊離した前記リン酸エステル系化合物の含有率が0.01質量%未満であることを特徴とする。
これにより、保存安定性に優れ、インクジェット方式の液滴吐出において安定的に吐出可能な光硬化型インクが得られる。
脂肪酸のトリグリセリドは、分子構造が嵩高く細長いため、分子間相互作用が強く働く。このため、脂肪酸トリグリセリドリン酸エステルが金属粒子の表面に結合されることにより、均一かつ緻密な被膜が形成される。その結果、金属粒子の表面と重合性化合物との接触頻度が抑えられることとなり、金属粒子の触媒としての機能が抑制される。
リシノール酸は、分子鎖が長いため、分子間相互作用がより顕著に働く。
本発明の光硬化型インクでは、前記金属粒子は、鱗片状をなしていることが好ましい。
これにより、当該光硬化型インクを用いて製造された記録物は、一定の向きに配置された金属粒子に基づいて、優れた光反射特性を有するものとなり、金属材料が本来有している金属光沢感を十分に発現したものとなる。よって、得られた記録物は、美感、質感において特に優れたものとなる。
これにより、金属光沢性の特に高い記録物を製造可能であり、かつ、保存安定性の高い光硬化型インクが得られる。
本発明の光硬化型インクでは、前記金属粒子の平均粒径は、500nm以上2μm以下であることが好ましい。
これにより、光硬化型インクを用いて製造される記録物の光沢感、高級感をさらに優れたものにしつつ、金属粒子の表面積が最適化され、光硬化型インクの保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
これにより、光硬化型インクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の光硬化型インクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
これにより、光硬化型インクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の光硬化型インクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
本発明の光硬化型インクでは、前記重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよびアミノアクリレートのいずれか一方を含むことが好ましい。
これにより、光硬化型インクの保存安定性をより優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。
≪光硬化型インク≫
まず、本発明の光硬化型インクについて説明する。
本発明の光硬化型インクは、例えば液滴吐出装置により吐出され、これに光を照射して硬化させることで被膜(印刷物)を形成し得るインクである。
このような光硬化型インクを保存するとき、従来は、十分に脱気処理を施した上で、遮光された気密容器内に封入した状態(例えばインクパックの状態)で保存していた。しかしながら、金属粒子は、重合性化合物の重合反応を促進する触媒として機能するため、これにより保存中のインクがゲル化(硬化)することがあった。また、この重合反応においては、酸素が重合禁止効果を有しているため、脱気処理を施したことによって、かえって重合反応が促進されるという問題があった。すなわち、従来の光硬化型インクは、保存安定性が低いという問題を抱えており、そのため保存後にインクジェット方式の液滴吐出に供したとしても、安定した吐出を行うことができなかった。
特に、リン酸エステル系化合物は、金属粒子の表面に対して共有結合性の結合を生じるため、強固な被膜を形成することができる。このため、この被膜によって金属粒子の表面と重合性化合物との接触頻度が抑えられることとなり、上述した触媒としての機能が抑制される。その結果、光硬化型インクのゲル化を確実に抑制することができる。
また、遊離したリン酸エステル系化合物の含有率が高すぎると、吐出された光硬化型インクを透過する光の透過率が低下するため、光硬化型インクの内部に到達する光量が減少する。しかしながら、前記含有率が前記範囲内に設定されていると、この光量の減少が抑制されるため、光硬化型インクの内部においても十分な光量が得られる。その結果、光硬化型インクは、硬化性の高いものとなり、少ない積算光量であっても十分に硬化し得るものとなる。
また、遊離したリン酸エステル系化合物の含有率は、例えば、各種クロマトグラフィー等により測定することができる。
(表面処理金属粒子)
上述したように、本発明の光硬化型インクは、金属粒子の表面をリン酸エステル系化合物の被膜により被覆してなる表面処理金属粒子を含んでいる。
表面処理金属粒子中の金属粒子は、金属を含む粒子であればいかなるものでもよく、その構成材料としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム、銀、金、白金、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、銅のような金属の単体あるいはこれらの合金、混合物が挙げられる。また、光硬化型インク中に含まれる金属粒子は、2種以上の粒子を混合したものであってもよい。
また、金属粒子を鱗片状にするためには、アトマイズ法で金属粒子を製造した後、圧延処理を施すようにすればよい。圧延処理としては、例えば、ロール圧延、ボールミル、スタンプミル等を用いた処理が用いられる。
被膜の厚さは、特に限定されないが、例えば1nm以上10nm以下程度とされる。
上記リン酸エステル系化合物としては、リン酸とアルコールとが脱水縮合してなるエステルであればいかなる構造を有するものも用いることができる。具体的には、O=P(OH)3で表わされるリン酸中の水素原子のうち、全部または一部が有機基で置換された構造である。金属粒子の表面とリン酸エステル系化合物とが反応すると、この構造において二重結合が開裂し、酸素原子を介して金属粒子の表面とリン原子とが共有結合で結ばれる。その結果、リン酸エステル系化合物は、金属粒子の表面に形成された強固な被膜を形成することができる。
このようなリン酸エステル系化合物としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルまたはその塩、脂肪酸グリセリドリン酸エステルまたはその塩等が挙げられる。
このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルのモノエステル体は、下記一般式(1)で表される。
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルとしては、例えば、NIKKOL DDP−2、DDP−4、DDP−6、DDP−10、TLP−4、TCP−5、TDP−2、TDP−6、TDP−8、TDP−10(以上、日光ケミカルズ(株)製)、プライサーフ AL、A210D、A−208B、A219B(以上、第一工業製薬(株)製)、アデカコールCS−1361E(ADEKA社製)、フォスファノール RD−720(東邦化学工業(株)製)等が挙げられる。
このようなポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルの塩としては、例えば、NIKKOL DLP−10、DOP−8NV(以上、日光ケミカルズ(株)製)、プライサーフM−208F、M−208B(以上、第一工業製薬(株)製)等が挙げられる。
脂肪酸グリセリドリン酸エステルのモノエステル体は、下記一般式(3)で表される。
このような脂肪族グリセリドリン酸エステルの塩は、例えば、脂肪族グリセリドリン酸エステルと過塩基性スルホネート金属塩とを反応させる方法等により製造される。一例として、脂肪族グリセリドリン酸エステルのアルカリ金属塩を製造する場合は、過塩基性スルホネートのアルカリ金属塩が用いられる。
上述したように、本発明の光硬化型インクは、光の照射により重合し、硬化する成分である重合性化合物を含んでいる。このような成分を含むことにより、光硬化型インクを用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。重合性化合物は、液状をなすものであり、光硬化型インクにおいて、金属粒子を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。これにより、別途、記録物の製造過程において除去(蒸発)される分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の発生を防止することができ、環境保全あるいは安全性の観点から有用である。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、光硬化型インクを用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、光硬化型インクは、メディア対応性に優れたものとなる。
特に、光硬化型インクは、重合性化合物としてフェノキシエチル(メタ)アクリレートを含むものであるのが好ましい。これにより、光硬化型インクの保存安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の光硬化型インクの反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
光硬化型インク中の重合性化合物の含有量は、40質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、45質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
本発明の光硬化型インクは、上述した以外の成分(その他の成分)を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、分散剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光硬化型インクがスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
光硬化型インクが分散剤を含むものであると、金属粒子の分散性を優れたものとすることができ、光硬化型インクの保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、エポキシ樹脂等が挙げられる。
光硬化型インクが重合禁止剤を含むものであると、保存中の光硬化型インクにおいて重合性化合物の重合反応に対する禁止効果が発現し、保存安定性を高めることができる。
光硬化型インク中における重合禁止剤の含有量は、0.05質量%以上1質量%以下であるのが好ましく、0.1質量%以上0.5質量%以下であるのがより好ましい。重合禁止剤の含有量が前記範囲であると、保存中の重合反応を確実に抑制する一方、印刷後に硬化させる際の硬化速度が著しく低下するのを防止することができる。
本発明の光硬化型インクの室温(20℃)での粘度は、20mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
次に、本発明の光硬化型インクを製造する方法について説明する。
まず、金属粒子を分散媒に分散し、分散液を調製する。
分散媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼンのような芳香族炭化水素、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルのようなエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸第二ブチル、酢酸アミル、酢酸メトキシブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートのようなエステル類またはエーテルエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、メシチ ルオキサイド、メチルイソアミルケトン、エチル−n−ブチルケトン、エチルアミルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトン、ジイソブチルケトンのようなケトン類、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジメチルスルホキシド等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
また、分散液中の金属粒子の含有率は、特に限定されないが、1質量%以上10質量%以下程度であるのが好ましい。
分散液中のリン酸エステル系化合物の含有率は、特に限定されないが、0.1質量%以上5質量%以下程度であるのが好ましく、0.2質量%以上2質量%以下程度であるのがより好ましい。
また、分離操作には、濾過、遠心分離、沈降・浮上分離等の各種固液分離操作が用いられるが、好ましくは遠心分離が用いられる。分離操作の際には、分散液中から金属粒子のほぼ全てが分離された後、できるだけすぐに分離を停止するよう操作するのが好ましい。例えば遠心分離の場合、分離操作を停止するまでの時間は、金属粒子の沈降係数、遠心分離機のローターの最大半径、最小半径、ローターの単位時間当たりの回転数、ローターの角速度等の条件に基づき、公知の遠心理論によって算出される。具体的には、遠心理論から算出された理論上の必要時間を1としたとき、遠心分離の操作時間は1.2以下にするのが好ましく、1.1以下にするのがより好ましい。遠心分離の操作時間を前記範囲内にすれば、分散液に加わる遠心力を最小限に抑えることができ、リン酸エステル系化合物の脱離を抑制することができる。その結果、光硬化型インクに混入する遊離したリン酸エステル系化合物の含有率を前記範囲内に確実に抑えることができる。また、分離効率の観点から、遠心分離の操作時間は0.8以上であるのが好ましく、0.9以上であるのがより好ましい。
なお、分離操作の前には超音波処理等を施してもよく、分離操作後には減圧乾燥等の乾燥処理を施してもよい。
その後、得られた表面処理金属粒子と、重合性化合物と、その他の成分とを混合し、光硬化型インクを調製する。
次に、本発明の光硬化型インクを用いて製造される記録物について説明する。
この記録物は、上述したような光硬化型インクを記録媒体上に付与し、その後、光を照射することにより製造されたものである。このような記録物は、光沢感、耐擦性に優れたパターン(印刷部)を有するものとなる。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、光硬化型インクの変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インクジェット法により吐出された光硬化型インクは、光の照射により硬化する。
光源には、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザーダイオード(UV−LD)等が用いられる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザーダイオード(UV−LD)が好ましい。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
1.光硬化型インクを封入したインクパックの製造
(サンプルNo.1)
まず、水アトマイズ法によりアルミニウム粉末を製造した。次いで、ジルコニアビーズ(直径:5mm)を用いた遊星ボールミルに得られたアルミニウム粉末を投入し、アルミニウム粉末を鱗片状に加工した。なお、得られた平板状アルミニウム粒子は、平均粒径D50が0.8μmであった。
次いで、得られた分散液に、リシノール酸トリグリセリドリン酸エステルを0.5質量%の割合で添加した。そして、この分散液を室温で1時間撹拌し、その後、遠心分離により表面処理を施した平板状アルミニウム粒子を回収した。
<光硬化型インクの組成>
・表面処理金属粒子
:リシノール酸トリグリセリドリン酸エステル処理を施した平板状アルミニウム粒子
・重合性化合物
:フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)
:アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル((株)日本触媒製)
:トリプロピレングリコールジアクリレート
:ジプロピレングリコールジアクリレート
:4−ヒドロキシブチルアクリレート
:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(チバ・ジャパン(株)製、IRGACURE819)
:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(Lambson社製、speedcure TPO)
:2,4ジエチルチオキサントン(Lambson社製、speedcure DETX)
・重合禁止剤
:p−メトキシフェノール
・レベリング剤
:シリコーン系表面調整剤(ビックケミー・ジャパン(株)製、UV−3500)
次いで、光硬化型インクに脱気処理を施し、空気を巻き込まないようにして容器内に封入した。これにより、インクパックを得た。なお、使用した容器は、以下に示す外装用フィルム2枚を重ね、その外縁部を熱溶着により封止することで製造されたものである。
・層構成 :3層構造フィルム
第1層(最内層):ポリプロピレンフィルム(平均厚さ60μm)
第2層(中間層):アルミニウム層(平均厚さ10μm)
第3層(最外層):ナイロンフィルム(平均厚さ15μm)
・酸素透過度 :0[cc/m2・day・atm]
・水蒸気透過度:0[g/m2・day]
インクパック中の光硬化型インクの調製に用いる原料の種類、比率、および光硬化型インクにおける遊離したリン酸エステル系化合物の含有率を、それぞれ表1または表2に示すように変更した以外は、それぞれ、サンプルNo.1と同様にしてインクパックを得た。
2.1.粘度評価
各サンプルNo.で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における粘度変化を以下のようにして評価した。
まず、各インクパックに封入する光硬化型インクの25℃における初期粘度をPhysica社製の粘度計MCR−300により測定した。その結果、初期粘度はいずれも3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。
次いで、光硬化型インクを容器内に封入し、得られたインクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクの粘度を再び測定した。その上で、加熱前の粘度(初期粘度)を1としたときの加熱後の粘度の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
◎◎:加熱後の粘度の相対値が1.05未満である
◎ :加熱後の粘度の相対値が1.05以上1.1未満である
○ :加熱後の粘度の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の粘度の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の粘度の相対値が2以上である
××:加熱途中で完全硬化してしまう
各サンプルNo.で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、加熱前後における硬化性変化を以下のようにして評価した。
まず、加熱前の光硬化型インクをガラス基板上に滴下し、ピーク波長365nmの紫外線を照射して滴下した組成物が硬化するまでの時間を測定した。なお、照射強度は20mW/cm2とした。
次いで、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。そして、加熱後の光硬化型インクについて上述したようにして硬化時間を測定した。その上で、加熱前の硬化時間を1としたときの加熱後の硬化時間の相対値を算出し、これを以下の評価基準に基づいて評価した。
◎◎:加熱後の硬化時間の相対値が1.05未満である
◎ :加熱後の硬化時間の相対値が1.05以上1.1未満である
○ :加熱後の硬化時間の相対値が1.1以上1.5未満である
△ :加熱後の硬化時間の相対値が1.5以上2未満である
× :加熱後の硬化時間の相対値が2以上である
××:パック中でインクが硬化し、評価できない
一方、別の各インクパックを60℃の温度で10日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
また、さらに別の各インクパックを60℃の温度で60日間加熱した。そして、上記と同様にして加熱後の硬化時間を評価した。
各サンプルNo.で得られたインクパック中の光硬化型インクについて、下記に示すような試験による評価を行った。
まず、各インクパックを60℃の温度で5日間加熱した。
次いで、チャンバー(サーマルチャンバー)内に、液滴吐出装置を設置するとともに、加熱した各サンプルNo.のインクパックを用意した。そして、液滴吐出装置のピエゾ素子の駆動波形を最適化した後、25℃、55%RHの環境下で、液滴吐出ヘッドのノズルから、2000000発(2000000滴)の光硬化型インクの液滴の連続吐出を行った。そして、着弾した各液滴の中心位置の中心狙い位置からのズレ量dの平均値を求め、以下の5段階の基準に従ってそのズレ量dの平均値を評価した。この値が小さいほど飛行曲がりの発生が効果的に防止されており、吐出安定性が高いと言える。
A:ズレ量dの平均値が0.09μm未満である
B:ズレ量dの平均値が0.09μm以上0.15μm未満である
C:ズレ量dの平均値が0.15μm以上0.18μm未満である
D:ズレ量dの平均値が0.18μm以上0.22μm未満である
E:ズレ量dの平均値が0.22μm以上である
以上、2.1〜2.3の評価結果を表3に示す。
一方、比較例に相当する光硬化型インクについて、(2.3)において5日加熱後のインクパックを液滴吐出装置のインク供給系に接続し、封入していた光硬化型インクの吐出を行ったところ、いずれのインクを吐出した場合でもノズルのつまりが発生した。すなわち、比較例に相当する光硬化型インクは、いずれも吐出安定性に問題があった。
一方、比較例に相当する光硬化性インクは、いずれも硬化性が低かった。これは、光硬化性インク中において遊離したリン酸エステル系化合物が、光硬化性インクを透過する紫外線の透過率を低下させ、内部における硬化性が低下したためであると推察される。
Claims (8)
- インクジェット方式の液滴吐出に供される光硬化型インクであって、
金属粒子の表面をリン酸エステル系化合物の被膜により被覆してなる表面処理金属粒子と、
重合性化合物と、を含み、
遊離した前記リン酸エステル系化合物の含有率が0.01質量%未満であり、
前記リン酸エステル系化合物は、脂肪酸トリグリセリドリン酸エステルである
ことを特徴とする光硬化型インク。 - 前記脂肪酸は、リシノール酸である請求項1に記載の光硬化型インク。
- 前記金属粒子は、鱗片状をなしている請求項1または2に記載の光硬化型インク。
- 前記金属粒子の構成材料は、アルミニウムである請求項1ないし3のいずれかに記載の光硬化型インク。
- 前記金属粒子の平均粒径は、500nm以上2μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の光硬化型インク。
- 前記重合性化合物として、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを含む請求項1ないし5のいずれかに記載の光硬化型インク。
- 前記重合性化合物として、前記フェノキシエチルアクリレートに加え、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1ないし6のいずれかに記載の光硬化型インク。
- 前記重合性化合物として、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレートおよびアミノアクリレートのいずれか一方を含む請求項1ないし7のいずれかに記載の光硬化型インク。
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