以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
《紫外線硬化型組成物》
まず、本発明の紫外線硬化型組成物について説明する。
本発明の紫外線硬化型組成物は、紫外線の照射により重合する重合性化合物と、金属粉末とを含むものである。
ところで、従来から、光沢感のある外観を呈する装飾品の製造方法として、金属めっきや、金属箔を用いた箔押し印刷、金属箔を用いた熱転写等が用いられてきた。
しかし、これらの方法では、微細なパターンを形成することや、曲面部への適用が困難であるといった問題があった。
他方、顔料または染料を含む組成物を、インクジェット法により、記録媒体に付与する記録方法が用いられている。このような方法では、微細なパターンの形成や、曲面部への記録にも好適に適用できるという点で優れている。また、近年、耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を特に優れたものとするため等に、紫外線を照射すると硬化する組成物(紫外線硬化型組成物)が用いられている。
しかしながら、単に、顔料や染料の代わりに、金属粉末を適用しようとした場合、インクジェット法による液滴の吐出安定性に劣り、吐出不良を生じ易く、金属が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができないという問題点があった。
そこで、発明者は、上記のような問題を解決する目的で鋭意研究を行った結果、本発明に至った。すなわち、本発明の紫外線硬化型組成物(紫外線硬化型インクジェット組成物)は、金属粉末の構成粒子として、表面処理が施されたものを含み、かつ、金属粉末の体積平均粒径(D50)が0.2μm以上0.64μm以下である。
これにより、インクジェット法による吐出安定性に優れ、光沢感に優れたパターン(印刷部)を安定的に形成することができる。
<金属粉末>
本発明の紫外線硬化型組成物は、金属粉末を含むものである。
金属粉末は、複数個の粒子を含むものであり、金属粉末を構成する粒子は、外観上視認される部位の少なくとも一部が金属材料で構成されたものであり、通常、外表面付近が金属材料で構成されたものである。
本発明の紫外線硬化型組成物において、金属粉末は、構成粒子として、表面処理が施されたものを含む。すなわち、金属粉末は、母粒子と表面処理剤による被膜とを有する構成粒子を含むものである。
(母粒子)
まず、金属粉末を構成する粒子の母粒子(表面処理剤による表面処理を受ける粒子)について説明する。
金属粉末を構成する粒子の母粒子は、少なくとも、表面付近を含む領域が金属材料で構成されたものであればよく、例えば、全体が金属材料で構成されたものであってもよいし、非金属材料で構成された基部と、当該基部を被覆する金属材料で構成された被膜とを有するものであってもよい。
また、母粒子を構成する金属材料としては、単体としての金属や各種合金等を用いることができるが、母粒子は、少なくとも表面付近が主としてAlで構成されたものであるのが好ましい。Alが好ましい理由として、鉄などとくらべて低い比重(2.70g/cm2)が挙げられる。これにより、Alで構成された粒子を紫外線硬化型組成物中に分散させた場合の沈降が非常にゆっくり進行するため、濃度変化を生じることなく長期間にわたって紫外線硬化型組成物を保管することが可能となる。
加えて、記録物の生産コストの上昇を抑制しつつ、記録物の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができる。Alは、本来、各種金属材料の中でも特に優れた光沢感を呈するものであるが、紫外線硬化型組成物に、Alで構成された粒子を適用しようとした場合に、紫外線硬化型組成物の保存安定性は特に低いものとなり、ゲル化による粘度上昇による吐出安定性の低下等の問題が特に発生し易いことを本発明者は見出していた。これに対し、金属粉末の平均粒径を所定の範囲内の値とし、かつ、表面処理剤による表面処理を行うことにより、表面がAlで構成された粒子を用いた場合であっても、上記のような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、金属粉末の平均粒径が所定の範囲内の値であり、かつ、金属粉末が、少なくとも表面が主としてAlで構成された母粒子が表面処理剤で表面処理されたものであることにより、前述したような効果は特に顕著に発揮される。
母粒子は、いかなる方法で製造されたものであってもよいが、Alで構成されたものである場合には、気相成膜法によりAlで構成された膜を形成し、その後、当該膜を粉砕することにより得られたものであるのが好ましい。これにより、本発明の紫外線硬化型組成物を用いて形成されるパターン(印刷部)において、Alが本来有している光沢感等をより効果的に表現させることができる。また、各粒子間での特性のばらつきを抑制することができる。また、当該方法を用いることにより、比較的薄い金属粉末であっても好適に製造することができる。
このような方法を用いて母粒子を製造する場合、例えば、基材上に、Alで構成された膜の形成(成膜)を行うことにより、母粒子を好適に製造することができる。前記基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチックフィルム等を用いることができる。また、基材は、成膜面に離型剤層を有するものであってもよい。
また、前記粉砕は、液体中において、前記膜に超音波振動を付与することにより行われるものであるのが好ましい。これにより、後述するような粒径の金属粉末を容易かつ確実に得ることができるとともに、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきの発生を抑制することができる。
また、上記のような方法で、粉砕を行う場合、前記液体としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘプタン、n−オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トルエン、キシレン、シメン、デュレン、インデン、ジペンテン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン、シクロヘキシルベンゼン等の炭化水素系化合物、またエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、p−ジオキサン等のエーテル系化合物、さらにプロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサノン、アセトニトリル等の極性化合物を好適に用いることができる。このような液体を用いることにより、母粒子の不本意な酸化等を防止しつつ、母粒子、金属粉末の生産性を特に優れたものとし、また、各粒子間での大きさ、形状、特性のばらつきを特に小さいものとすることができる。
(表面処理剤)
次に、母粒子を表面処理する表面処理剤について説明する。
表面処理剤は、紫外線硬化型組成物中における金属粉末(粒子)の分散安定性を高め、インクジェット法による吐出安定性を向上させる機能を有する。また、金属粉末の表面エネルギーが低下するよう表面処理されたものであれば、紫外線硬化型組成物の構成材料として表面張力の低い重合性化合物を用いた場合であっても、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、確実に金属粉末を印刷部の外表面付近に好適に配列(リーフィング)させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性を十分に発揮させることができる。したがって、重合性化合物の選択の幅が広がり、金属材料が本来有している光沢感を犠牲にすることなく、紫外線硬化型組成物の特性や紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の特性(例えば、紫外線硬化型組成物の粘度、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐擦性等)を容易に調整することができる。
表面処理剤としては、例えば、炭素数が2以上4以下の置換基を有していてもよいアルキル基を有する短鎖化合物、炭素数が8以上20以下の置換基を有していてもよいアルキル基を有する長鎖化合物、シラン化合物、リン酸化合物、カルボン酸、イソシアネート化合物等を用いることができる。
短鎖化合物が有するアルキル基および/または長鎖化合物が有するアルキル基が置換基を有するものである場合、当該置換基としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基等のハロゲノ基、水酸基等が挙げられる。
シラン化合物としては、ケイ素原子に、水素原子および/または炭化水素基(水素原子の一部または全部が他の原子または原子団で置換されたものを含む)が直接結合した構造を有する化合物を用いることができる。
より具体的には、シラン化合物としては、例えば、水素化ケイ素(SinH2n+2(ただし、nは、1以上の整数である。))、HaSiR(4−a)(ただし、Rは、置換基を有していてもよい炭化水素基、aは、1以上4以下の整数である。)等を用いることができる。
リン酸化合物としては、例えば、炭素数が6以上のアルキル基を、分子内に少なくとも1つ有する化合物(長鎖アルキル系リン酸化合物)を用いることができる。
特に、リン酸化合物(長鎖アルキル系リン酸化合物)は、下記式(1)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
PORn(OH)3−n (1)
(式(1)中、Rは、CH3(CH2)m−、CH3(CH2)m(CH2O)l−、CH3(CH2)m(CH2CH2O)l−または、CH3(CH2)mO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは5以上19以下の整数であり、lは2以上20以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(1)中、mは、5以上19以下の整数であるのが好ましいが、7以上17以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(1)中、lは、2以上20以下の整数であるのが好ましいが、4以上16以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
カルボン酸としては、炭化水素基と、カルボキシル基とを有する化合物(脂肪酸)を用いることができる。このような化合物の具体例としては、デカン酸、テトラデカン酸、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸等を挙げることができる。
イソシアネート化合物としては、−N=C=Oで表される部分構造を有する化合物を用いることができる。このような化合物は、金属粉末(母粒子)を構成する金属材料と反応することにより、−NHCOO−で表される部分構造を有するものとして、粒子(母粒子)の表面を修飾することとなるが、−NHCOO−で表される部分構造においては、水素結合の力が働く。このため、粒子の表面に緻密な表面処理を施すことができ、上記のような効果を顕著に発揮させることができる。
イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のイソシアネート基を有する化合物を用いることができる。
イソシアネート化合物としては、例えば、下記式(2)で表される化学構造を有するものを用いることができる。
RNCO (2)
(式(2)中、Rは、CH3(CH2)m−であり、mは2以上18以下の整数である。)
式(2)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。
表面処理剤としては、例えば、フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)を用いてもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物中における金属粉末の化学的安定性および分散安定性を十分に優れたものとし、紫外線硬化型組成物の保存安定性、長期間にわたる吐出安定性を十分に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近に好適に配列させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。また、紫外線硬化型組成物の構成材料として表面張力の低い重合性化合物を用いた場合であっても、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、確実に金属粉末を印刷部の外表面付近に好適に配列(リーフィング)させることができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等の特性をより効果的に発揮させることができる。したがって、重合性化合物の選択の幅が広がり、金属材料が本来有している光沢感を犠牲にすることなく、紫外線硬化型組成物の特性や紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の特性(例えば、紫外線硬化型組成物の粘度、保存安定性、吐出安定性、記録物の耐擦性等)を容易に調整することができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)は、パーフルオロアルキル構造を有するものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性をさらに優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、フッ素系化合物(フッ素系表面処理剤)は、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を含むものであればよいが、より具体的には、例えば、上述したような短鎖化合物、長鎖化合物、シラン化合物、リン酸化合物、カルボン酸、イソシアネート化合物が有する水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換された構造を有する化合物(フッ素系短鎖化合物、フッ素系長鎖化合物、フッ素系シラン化合物、フッ素系リン酸化合物、フッ素置換脂肪酸、フッ素系イソシアネート化合物等)等が挙げられる。
このような化合物を表面処理剤として用いることにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。特に、金属粉末の構成粒子の表面自由エネルギーをより効果的に低下させることができ、重合性化合物との間での界面エネルギーの差をより大きいものとし、疎水性相互作用がより強く働くこととなり、記録物の表面に、金属粉末をより効果的に配列させることができる。その結果、記録物の光沢感を特に優れたものとすることができる。
中でも、フッ素系シラン化合物を用いた場合、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物が特に優れた耐久性、耐候性を示し、より長期にわたって膜の硬度が保持できる。
また、リン酸化合物の表面処理剤は酸に強いため、フッ素系リン酸化合物を用いた場合、酸性の環境下においても、紫外線硬化型組成物を用いて製造された記録物が優れた耐久性、耐候性を示す。
また、フッ素置換脂肪酸(フッ素系脂肪酸)を用いた場合、金、銀、白金等の貴金属、銅やアルミ等で構成された母粒子に対してより効果的に表面処理が行うことができ、官能基が小さく結晶性の高い膜(表面処理層)を形成することができるため、表面自由エネルギーを効果的に下げることができる。その結果、より小さな粒子を効果的に記録物の表面に並べることができ、耐擦性のさらなる向上を図ることができる。
また、フッ素系イソシアネート化合物を用いた場合、母粒子に対してより緻密な表面処理を施すことができるとともに、母粒子との結合力をより強固なものとすることができ、金属粉末の耐久性が高まるため、より長期にわたって耐擦性を保持することができる。
フッ素系シラン化合物としては、下記式(3)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
R1SiX1 aR2 (3−a) (3)
(式(3)中、R1は、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換された炭化水素基を表し、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、aは、1以上3以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(3)中のR1としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられ、さらに、分子構造に含まれる水素原子(フッ素原子で置換されていない水素原子)のうちの少なくとも一部がアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、チオール基等で置換されていてもよく、炭素鎖中に−O−、−S−、−NH−、−N=等のヘテロ原子やベンゼン等の芳香族環が挟まっていてもよい。R1の具体例としては、例えば、水素原子の一部または全部がフッ素原子で置換されたフェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ヒドロキシフェニル基、クロロフェニル基、アミノフェニル基、ナフチル基、アンスレニル基、ピレニル基、チエニル基、ピロリル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、ピリジニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、オクタデシル基、n−オクチル基、クロロメチル基、メトキシエチル基、ヒドロキシエチル基、アミノエチル基、シアノ基、メルカプトプロピル基、ビニル基、アリル基、アクリロキシエチル基、メタクリロキシエチル基、グリシドキシプロピル基、アセトキシ基等が挙げられる。
パーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(4)で表されるものが挙げられる。
CnF2n+1(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (4)
(式(4)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、nは、1以上14以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)5−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3(CF2)11−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3(CF2)3−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7−CH2CH2−Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)8−CH2CH2−Si(C2H5)(OC2H5)2等が挙げられる。
また、フッ素系シラン化合物としては、上述したパーフルオロアルキル構造(CnF2n+1)の代わりにパーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するものを用いることもできる。
パーフルオロアルキルエーテル構造(CnF2n+1O)を有するフッ素系シラン化合物としては、例えば、下記式(5)で表されるものが挙げられる。
CpF2p+1O(CpF2pO)r(CH2)mSiX1 aR2 (3−a) (5)
(式(5)中、X1は、加水分解基、エーテル基、クロロ基または水酸基を表し、R2は、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、pは1以上4以下の整数であり、rは1以上10以下の整数であり、mは、2以上6以下の整数であり、aは、1以上3以下の整数である。)
このような構造を有する化合物の具体例としては、CF3O(CF2O)6−CH2CH2−Si(OC2H5)3、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)2(CF2O)3−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C3F6O)8−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(OCH3)3、CF3O(C4F9O)5−CH2CH2−Si(CH3)(OC2H5)2、CF3O(C3F6O)4−CH2CH2−Si(C2H5)(OCH3)2等が挙げられる。
フッ素系リン酸化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有するリン酸化合物を用いることができる。
特に、フッ素系リン酸化合物は、下記式(6)で表される化学構造を有するものであるのが好ましい。
PORn(OH)3−n (6)
(式(6)中、Rは、CF3(CF2)m−、CF3(CF2)m(CH2)l−、CF3(CF2)m(CH2O)l−、CF3(CF2)m(CH2CH2O)l−、CF3(CF2)mO−、または、CF3(CF2)m(CH2)lO−であり、nは1以上3以下の整数であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとし、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(6)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましいが、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(6)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましいが、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
フッ素置換脂肪酸(フッ素系脂肪酸)としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子を有する脂肪酸を用いることができる。
フッ素置換脂肪酸としては、例えば、CF3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)3−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)6−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)7−CH2CH2-COOH、CF3(CF2)9−CH2CH2-COOHやこれらのエステル等が挙げられるが、中でも、CF3(CF2)5−CH2CH2-COOHが好ましい。
これにより、母粒子を構成するシリコン、アルミニウム、マグネシウム、チタン等の金属原子と、加熱による脱水反応により強固な結合を結び、緻密な膜を形成することができるため、粒子の表面エネルギーを効果的に下げることができる。
フッ素系イソシアネート化合物としては、分子内に少なくとも1個のフッ素原子と少なくとも1個のイソシアネート基とを有する化合物を用いることができる。
フッ素系イソシアネート化合物としては、例えば、下記式(7)で表される化学構造を有するものを用いることができる。
RfNCO (7)
(式(7)中、Rfは、CF3(CF2)m−、または、CF3(CF2)m(CH2)l−であり、mは2以上18以下の整数であり、lは1以上18以下の整数である。)
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、より好適に金属粉末を印刷部の外表面付近に配列(リーフィング)させることができ、製造される記録物の印刷部の光沢感を特に優れたものとすることができる。また、製造される記録物の印刷部の耐擦性を特に優れたものとすることができる。
式(7)中、mは、3以上14以下の整数であるのが好ましく、4以上12以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、式(7)中、lは、1以上14以下の整数であるのが好ましく、1以上10以下の整数であるのがより好ましい。これにより、上述したような効果がより顕著に発揮される。
また、金属粉末は、複数種の表面処理剤により表面処理されたものであってもよい。このような場合、同一の粒子に複数種の表面処理剤による表面処理が施されていてもよいし、金属粉末が、異なる表面処理剤による表面処理が施された複数種の粒子を含むものであってもよい。
上記のような表面処理剤は、母粒子に直接処理するものであってもよいが、前記母粒子に対して酸または塩基を処理させた後に、当該母粒子に対して表面処理剤による処理を行うのが好ましい。これにより、母粒子表面に、表面処理剤による化学的な結合による修飾をより確実に行うことができ、上述したような効果をより効果的に発揮させることができる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、酢酸、炭酸、蟻酸、安息香酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、亜硫酸、次亜硫酸、亜硝酸、次亜硝酸、亜リン酸、次亜リン酸等のプロトン酸を用いることができる。中でも、塩酸、リン酸、酢酸が好適である。一方、塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。
また、表面処理剤による母粒子への表面処理は、例えば、前述したように、気相成膜法により形成した金属製の膜を液体中で粉砕して母粒子を形成する際に、当該液体中に表面処理剤を含ませておくことにより行うものであってもよい。
これにより、均一にそろった母粒子の形成と並行して表面処理が進行するため、粉砕された清浄な表面に直ちに表面処理を行うことができ、金属粉末、紫外線硬化型組成物の品質および生産性を特に優れたものとすることができる。また、表面処理剤として前述したようなものを用いる場合(特に、フッ素系リン酸化合物を用いる場合)、表面処理された母粒子の凝集が適度に阻害されることで、母粒子を分散した溶液の流動性が高まり、前記膜の粉砕をより効率よく行うことができ、前述したような粒径の条件を満足する金属粉末をより効率よく得ることができ、金属粉末、紫外線硬化型組成物の品質および生産性をさらに優れたものとすることができる。
同一の粒子に対し、複数種の表面処理を施す場合、各表面処理剤に対応する複数の工程に分けて表面処理を行ってもよいし、同一工程で、複数種の表面処理剤による表面処理を行ってもよい。
金属粉末を構成する粒子は、球状、紡錘形状、針状等、いかなる形状のものであってもよいが、鱗片状をなすものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物が付与される記録媒体上で、当該粒子の主面が記録媒体の表面形状に沿うように、金属粉末を配置することができ、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感等を、得られる記録物においてもより効果的に発揮させることができ、形成されるパターン(印刷部)の光沢感、高級感を特に優れたものとすることができるとともに、記録物の耐擦性を特に優れたものとすることができる。また、上述したような表面処理剤による表面処理を施していない構成においては、金属粉末を構成する粒子が鱗片状をなすものであると、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性が低いものとなり易いが、金属粉末を構成する粒子が、所定の平均粒径を有するものであるとともに、表面処理剤による表面処理が施されたものであると、金属粉末を構成する粒子が鱗片状をなすものであっても、このような問題の発生を確実に防止することができる。すなわち、金属粉末を構成する粒子が、所定の平均粒径を有するとともに、表面処理剤による表面処理が施されたものであり、かつ、鱗片状をなすものである場合に、これらによる効果が相乗的に作用し、光沢感、高級感が特に優れた記録物を、特に優れた生産性で製造することができる。
本発明において、鱗片状とは、平板状、湾曲板状等のように、所定の角度から観察した際(平面視した際)の面積が、当該観察方向と直交する角度から観察した際の面積よりも大きい形状のことをいい、特に、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)が、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは8以上である。この値としては、例えば、任意の10個の粒子について観察を行い、これらの粒子についての算出される値の平均値を採用することができる。
金属粉末を構成する粒子が鱗片状をなすものである場合、粒子の平均厚さは、10nm以上80nm以下であるのが好ましく、20nm以上70nm以下であるのがより好ましい。比率(S1/S0)や厚さは、例えば、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いた観察により求めることができる。これらの装置の具体例としては、透過型電子顕微鏡(TEM、JOEL JEM−2000EX)、電界放射型走査電子顕微鏡(FE−SEM、日立S−4700)、走査型透過電子顕微鏡(STEM、日立ハイテクノロジーズ社製「HD−2000」)等が挙げられる。また、ここで、平均厚さとは、厚さ測定を10回行うことにより得られた値の平均値を意味する。
これにより、上述したような粒子が鱗片状であることによる効果がより顕著に発揮される。
金属粉末の体積平均粒径(D50)は、0.2μm以上0.64μm以下である。
金属粉末が、表面処理が施されたものであるとともに、所定の平均粒径を有するものであることにより、前述したような優れた効果が得られる。
これに対し、金属粉末の体積平均粒径が前記下限値未満であると、紫外線硬化型組成物中において、金属粉末の凝集が生じやすくなり、紫外線硬化型組成物の保存安定性が著しく低下する。また、このような凝集を生じることにより、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部において、不本意な色むら等を生じやすくなる。
また、金属粉末の体積平均粒径が前記上限値を超えると、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性が急激に低下する。
金属粉末の体積平均粒径(D50)は、0.2μm以上0.64μm以下であればよいが、0.25μm以上0.60μm以下であるのが好ましく、0.30μm以上0.55μm以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
なお、本発明において、体積平均粒径とは、粒子分散液をレーザー回折・散乱法を用いて測定された体積分布のメジアン径のことを指し、多数個の測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の累積として表した場合に、累積でちょうど中央値の50%を示す粒子のサイズである。測定装置としては、例えば、レーザー回折散乱式粒度分析計 マイクロトラック MT−3000(日機装社製)等が挙げられる。後述する実施例における体積平均粒径(D50)は、上記のマイクロトラック MT−3000により測定した値である。
金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は、0.10μm以上0.40μm以下であるのが好ましく、0.15μm以上0.35μm以下であるのがより好ましく、0.20μm以上0.30μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は、0.40μm以上1.10μm以下であるのが好ましく、0.45μm以上0.95μm以下であるのがより好ましく、0.50μm以上0.85μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
金属粉末の粒度分布における半値幅(D25とD75との距離、四分位範囲)は、0.45μm以下であるのが好ましく、0.40μm以下であるのがより好ましく、0.35μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の粒度分布をよりシャープなものとすることができ、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができる。
また、本発明の紫外線硬化型組成物では、金属粉末の体積平均粒径が前述したような所定範囲内の値であり、かつ、金属粉末の構成粒子として表面処理が施されたものを含むものであればよく、金属粉末の構成粒子の一部として、表面処理が施されていないものを含んでいてもよいが、このような場合であっても、金属粉末全体に対する表面処理が施された構成粒子の含有率は、90質量%以上であるのが好ましく、95質量%以上であるのがより好ましく、99質量%以上であるのがさらに好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
紫外線硬化型組成物中における金属粉末の含有率は、0.9質量%以上29質量%以下であるのが好ましく、1.2質量%以上19.3質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感を特に優れたものとすることができる。
<重合性化合物>
重合性化合物は、紫外線の照射により重合し、硬化する成分である。このような成分を含むことにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の耐擦性、耐水性、耐溶剤性等を優れたものとすることができる。
重合性化合物は、液状をなすものであり、紫外線硬化型組成物において、金属粉末を分散する分散媒として機能するものであるのが好ましい。
これにより、別途、記録物の製造過程において除去される(蒸発する)分散媒を用いる必要がなく、記録物の製造においても、分散媒を除去する工程を設ける必要がないため、記録物の生産性を特に優れたものとすることができる。また、分散媒として一般に有機溶媒として用いられているものを使用する必要がないため、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を防止することができる。また、重合性化合物を含むことにより、様々な記録媒体(基材)に対する、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の密着性を優れたものとすることができる。すなわち、重合性化合物を含むことにより、紫外線硬化型組成物は、メディア対応性に優れたものとなる。
重合性化合物としては、紫外線の照射により重合する成分であればよく、例えば、各種モノマー、各種オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)等を用いることができるが、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、少なくともモノマー成分を含むものであるのが好ましい。モノマーは、オリゴマー成分等に比べて、一般に、低粘度の成分であるため、紫外線硬化型組成物の吐出安定性を特に優れたものとする上で有利である。
特に、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、脂環構造を有するモノマーを含むのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーを、金属粉末(上述したような表面処理剤で表面処理された金属粉末)とともに含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性を特に優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとすることができる。
脂環構造を有するモノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ−ト、アダマンチル(メタ)アクリレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレ−ト、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル (メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル (メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン (メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、フェニルグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、トリ(メタ)アクリル化イソシアヌレート等が挙げられるが、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジルアクリレート、テトラメチルピペリジルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチル アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル アクリレート、メバロン酸ラクトン アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、シクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレート、および、(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、高級感をさらに優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができる。
中でも、アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、および、N−ビニルピロリドンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物中における金属粉末の分散安定性、インクジェット法による吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物の光沢感をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線を照射した際の紫外線硬化型組成物の硬化速度、記録物の生産性について更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、アクリロイルモルホリン、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリロイルモルホリン、および/または、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがより好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレートを含むものであるのがさらに好ましい。
また、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、および、ベンジルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ−ト、アダマンチルアクリレート、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニルアクリレート、および、アクリロイルモルホリンよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、γ−ブチロラクトンアクリレート、および/または、N−ビニルカプロラクタムを含むものであるのがより好ましい。
また、γ−ブチロラクトンアクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、イソボルニルアクリレート、および、テトラヒドロフルフリルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものである場合、紫外線硬化型組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
紫外線硬化型組成物中における脂環構造を有するモノマーの含有率は、40質量%以上90質量%以下であるのが好ましく、50質量%以上88質量%以下であるのがより好ましく、55質量%以上85質量%以下であるのがさらに好ましい。
これにより、金属粉末の分散安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、紫外線硬化型組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有するモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーは、共有結合により形成された環状構造の構成原子数が、5以上のものであるのが好ましく、6以上のものであるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性を特に優れたものとすることができる。
紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有するモノマーとして、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー(芳香族性を示さない複素環を有する単官能モノマー)を含むものであるのが好ましい。
これにより、金属粉末の分散安定性を特に優れたものとし、長期にわたって特に優れた吐出安定性が得られる。特に、紫外線硬化型組成物が分散剤を含まないものであっても、上記のような優れた効果が得られる。このような単官能モノマーとしては、例えば、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、γ−ブチロラクトン(メタ)アクリレート、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート、メバロン酸ラクトン (メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルホリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
紫外線硬化型組成物中における前記単官能モノマー(脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマー)の含有率は、10質量%以上80質量%以下であるのが好ましく、15質量%以上75質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、硬化収縮を抑制し、散乱が少なく、より光沢感に優れたパターン(印刷部)を備えた記録物の製造に好適に用いることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造中にヘテロ原子を含む単官能モノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
本発明において、紫外線硬化型組成物を構成する重合性化合物は、脂環構造を有さないモノマーを含むものであってもよい。
このようなモノマー(脂環構造を有さないモノマー)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、および、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートラウリル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、PO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、EO変性2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、EO変性フェノール(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA EO変性ジ(メタ)アクリレート、1.6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール300ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、2−エチル−2−ブチル−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール600ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンEO変性トリ(メタ)アクリレート、グリセリンPO付加トリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、3−(メタ)アクリロイロキシプロピルアクリレート、w−カルボキシ(メタ)アクリロイルオキシエチルフタレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられるが、フェノキシエチルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレート、および、4−ヒドロキシブチルアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましい。
脂環構造を有するモノマーに加えて、このような脂環構造を有さないモノマーを含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性を優れたものとしつつ、インクジェット法による吐出後の紫外線硬化型組成物の反応性を特に優れたものとし、記録物の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
中でも、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物において、金属粉末を印刷部の外表面付近により好適に配列させることができ、得られる記録物の光沢感をさらに優れたものとすることができる。
また、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものである場合、紫外線を照射した際の紫外線硬化型組成物の硬化速度、記録物の生産性をさらに優れたものとすることができる。
また、フェノキシエチルアクリレート、および/または、2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の可撓性をさらに優れたものとすることができる。
また、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部の耐擦性の更なる向上を図る観点からは、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチル、ジプロピレングリコールジアクリレート、および、トリプロピレングリコールジアクリレートよりなる群から選択される1種または2種以上を含むものであるのが好ましく、アクリル酸2−(2−ビニロキシエトキシ)エチルを含むものであるのがより好ましい。
また、フェノキシエチルアクリレートを含むものである場合、紫外線硬化型組成物の硬化時における収縮率をより小さいものとし、紫外線硬化型組成物を硬化させて形成される印刷部に不本意な皺などが生じることによる光沢感の低下等をより効果的に防止することができる。
紫外線硬化型組成物中における脂環構造を有するモノマー以外のモノマーの含有率は、5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、10質量%以上40質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の硬化速度、可撓性、硬化時における収縮率等の調整がさらに容易になる。なお、紫外線硬化型組成物は、脂環構造を有さないモノマーとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として、モノマー以外に、オリゴマー(ダイマー、トリマー等を含む)、プレポリマー等を含むものであってもよい。オリゴマー、プレポリマーとしては、例えば、上述したようなモノマーを構成成分としたものを用いることができる。紫外線硬化型組成物は、特に多官能のオリゴマーを含むものであるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、インクジェット法による吐出安定性を優れたものとしつつ、形成されるパターンの耐擦性等を特に優れたものとすることができる。オリゴマーとしては、繰り返し構造がウレタンであるウレタンオリゴマー、繰り返し構造がエポキシであるエポキシオリゴマー等が好ましく用いられる。
紫外線硬化型組成物中における重合性化合物の含有率は、70質量%以上99質量%以下であるのが好ましく、80質量%以上98質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、重合性化合物として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
<物質A>
また、本発明の紫外線硬化型組成物は、下記式(8)で示される部分構造を有する物質Aを含むものであるのが好ましい。
紫外線硬化型組成物が、このような化学構造を有する物質Aを、上記のような表面処理が施された金属粉末とともに含むこと、さらには、脂環構造を有するモノマーとともに含むことにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、硬化性、インクジェット法による吐出安定性を特に優れたものとすることができる。また、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物においては、金属粉末を構成する金属材料が本来有している光沢感・高級感をより効果的に発揮させ、印刷部の光沢感、耐擦性を特に優れたものとし、記録物の耐久性を特に優れたものとすることができる。
式(8)中、R1は、酸素原子、水素原子、炭化水素基またはアルコキシル基(酸素原子に鎖式または脂環式の炭化水素基が結合したもの)であればよいが、特に、水素原子、メチル基、または、オクチルオキシ基であるのが好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
また、式(8)中、R2〜R5は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であればよいが、炭素数1以上3以下のアルキル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
紫外線硬化型組成物中における物質Aの含有率は、0.1質量%以上5.0質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感、耐擦性等をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、物質Aとして2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。
物質Aの含有率をXA[質量%]、金属粉末の含有率をXM[質量%]としたとき、0.01≦XA/XM≦0.8の関係を満足するのが好ましく、0.05≦XA/XM≦0.4の関係を満足するのがより好ましい。
このような関係を満足することにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性をさらに優れたものとすることができるとともに、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の光沢感、耐擦性をさらに優れたものとすることができる。
<分散剤>
本発明の紫外線硬化型組成物は、分散剤を含むものであってもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物中における金属粉末の分散安定性をさらに優れたものとすることができ、紫外線硬化型組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
特に、本発明の紫外線硬化型組成物は、分散剤として、塩基性で重合体構造を有するもの(以下、「塩基性高分子分散剤」ともいう)を含むものであってもよい。
これにより、紫外線硬化型組成物の保存安定性をさらに優れたものとすることができる。
なお、塩基性高分子分散剤は、塩基性を示し、重合体構造を有するものであればよく、具体的な分子量は限定されない。
塩基性高分子分散剤を構成する重合体構造は、特に限定されないが、例えば、アクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、メタクリル系の重合体構造(共重合体を含む)、ポリウレタン系の重合体構造、水酸基含有カルボン酸エステル構造、ポリエーテル系の重合体構造、シリコーン系の重合体構造等が挙げられる。
塩基性高分子分散剤のアミン価は、特に限定されないが、3mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であるのが好ましく、10mgKOH/g以上70mgKOH/g以下であるのがより好ましい。
本発明で用いることのできる塩基性高分子分散剤の具体例としては、DISPERBYK−116(ビックケミー社製)、DISPERBYK−182(ビックケミー社製)、DISPERBYK−183(ビックケミー社製)、DISPERBYK−184(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2155(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2164(ビックケミー社製)、DISPERBYK−108(ビックケミー社製)、DISPERBYK−112(ビックケミー社製)、DISPERBYK−198(ビックケミー社製)、DISPERBYK−2150(ビックケミー社製)、PAA−1112(日東紡社製)等を挙げることができる。
紫外線硬化型組成物が分散剤を含むものである場合、紫外線硬化型組成物中における分散剤の含有率は、5.0質量%以下であるのが好ましく、0.01質量%以上2.0質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、紫外線硬化型組成物を用いて製造される記録物の光沢感を十分に優れたものとしつつ、紫外線硬化型組成物の保存安定性、吐出安定性、硬化性をさらに優れたものとすることができる。なお、紫外線硬化型組成物は、塩基性高分子分散剤として2種以上の化合物を含むものであってもよい。この場合、これらの化合物の含有率の総和が前記範囲内の値であるのが好ましい。なお、紫外線硬化型組成物中における分散剤の含有率が高すぎると、金属粉末の分散安定性が過度に向上することで、記録媒体に付与された紫外線硬化型組成物において、金属粉末の内部存在比率が高まり、付与された紫外線硬化型組成物の外表面付近に、金属粉末を好適に配列させることが困難となり、最終的に得られる記録物(印刷部)の光沢感、耐擦性を十分に優れたものとすることが困難になる可能性がある。
<その他の成分>
本発明の紫外線硬化型組成物は、上述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、光重合開始剤、スリップ剤(レベリング剤)、溶剤、重合促進剤、重合禁止剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、着色剤、定着剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、キレート剤、増粘剤、増感剤(増感色素)等が挙げられる。
光重合開始剤は、紫外線照射によってラジカルやカチオン等の活性種を発生し、上記重合性化合物の重合反応を開始させるものであれば特に制限されない。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤や光カチオン重合開始剤を使用することができるが、光ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。光重合開始剤を用いる場合、当該光重合開始剤は、紫外線領域に吸収ピークを有していることが好ましい。
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物等)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物等が挙げられる。
これらの中でも、重合性化合物への溶解性および硬化性の観点から、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、アシルホスフィンオキサイド化合物およびチオキサントン化合物を併用することがより好ましい。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、2,4−ジエチルチオキサントン、およびビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられ、これらのうちから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
紫外線硬化型組成物中における光重合開始剤の含有量は、0.5質量%以上10質量%以下であるのが好ましい。
光重合開始剤の含有量が前記範囲であると、紫外線硬化速度が十分大きく、かつ、光重合開始剤の溶け残りや光重合開始剤に由来する着色がほとんどない。
紫外線硬化型組成物がスリップ剤を含むものであると、レベリング作用により記録物の表面が平滑になり、耐擦性が向上する。
スリップ剤としては、特に限定されないが、例えば、ポリエステル変性シリコーンやポリエーテル変性シリコーン、ポリアクリレート変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、ポリアクリレート、ポリエステル等の高分子系界面活性剤を用いることができ、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、または、ポリアクリレート変性ジメチルシロキサンを用いることが好ましい。
なお、本発明の紫外線硬化型組成物は、重合禁止剤を含むものであってもよいが、重合禁止剤を含む場合であっても、紫外線硬化型組成物中における重合禁止剤の含有率は、0.6質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、相対的に、紫外線硬化型組成物中における重合性化合物の含有率を高いものとすることができるため、紫外線硬化型組成物を用いて形成される印刷部の耐擦性等を特に優れたものとすることができる。
また、本発明の紫外線硬化型組成物は、記録物の製造工程において除去される(蒸発する)有機溶剤を含まないものであるのが好ましい。これにより、揮発性有機化合物(VOC)の問題の発生を効果的に防止することができる。
振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定される、本発明の紫外線硬化型組成物の室温(20℃)での粘度は、25mPa・s以下であるのが好ましく、3mPa・s以上15mPa・s以下であるのがより好ましい。
これにより、インクジェット法による液滴吐出を好適に行うことができる。
《記録物》
次に、本発明の記録物について説明する。
本発明の記録物は、上述したような紫外線硬化型組成物をインクジェット法により記録媒体上に付与し、その後、紫外線を照射することにより製造されたものである。
このような記録物は、光沢感に優れ、欠陥の発生が防止されたパターン(印刷部)を有するものである。
上述したように、本発明に係る紫外線硬化型組成物は、重合性化合物を含むものであり、記録媒体に対する密着性に優れるものである。このように、本発明の紫外線硬化型組成物は記録媒体に対する密着性に優れるものであるため、記録媒体は、いかなるものであってもよく、吸収性または非吸収性のいずれを用いてもよく、例えば、紙(普通紙、インクジェット用専用紙等)、プラスチック材料、金属、セラミックス、木材、貝殻、綿、ポリエステル、ウール等の天然繊維・合成繊維、不織布等を用いることができる。また、記録媒体の形状は、特に限定されず、シート状等、いかなるものであってもよい。
液滴吐出方式(インクジェット法の方式)としては、ピエゾ方式や、インクを加熱して発生した泡(バブル)によりインクを吐出させる方式等を用いることができるが、紫外線硬化型組成物の変質のし難さ等の観点から、ピエゾ方式が好ましい。
インクジェット法による紫外線硬化型組成物の吐出は、公知の液滴吐出装置を用いて行うことができる。
インクジェット法により吐出された紫外線硬化型組成物は、紫外線の照射により硬化する。
紫外線源としては、例えば、水銀ランプ、メタルハライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV−LED)、紫外線レーザダイオード(UV−LD)等を用いることができる。中でも、小型、高寿命、高効率、低コストの観点から、紫外線発光ダイオード(UV−LED)および紫外線レーザダイオード(UV−LD)が好ましい。
本発明の記録物は、いかなる用途のものであってもよく、例えば、装飾品やそれ以外に適用されるものであってもよい。本発明の記録物の具体例としては、コンソールリッド、スイッチベース、センタークラスタ、インテリアパネル、エンブレム、センターコンソール、メーター銘板等の車両用内装品、各種電子機器の操作部(キースイッチ類)、装飾性を発揮する装飾部、指標、ロゴ等の表示物等が挙げられる。
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、前述した実施形態では、本発明の記録物が記録媒体(基材)と印刷部とからなるものである場合について中心的に説明したが、本発明の記録物は、記録媒体(基材)、印刷部に加え、他の構成を有するものであってもよい。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
[1]記録物製造用組成物の製造
(実施例1)
まず、表面が平滑なポリエチレンテレフタレート製のフィルム(表面粗さRaが0.02μm以下)を用意した。
次に、このフィルムの一方の面の全体にシリコーンオイルを塗布した。
次に、シリコーンオイルを塗布した面側に、蒸着法により、Alで構成された膜を形成した。
次に、Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)を、ジエチレングリコールジエチルエーテル:99質量部にフッ素系表面処理剤としてのCF3(CF2)5(CH2)2O−PO−(OH)2:1質量部を溶解してなる液体中に入れ、55℃にて27kHzの超音波振動を3時間付与した。これにより、Al製の母粒子にCF3(CF2)5(CH2)2O−PO−(OH)2による表面処理が施された鱗片状の粒子からなる金属粉末の分散液が得られた。
このようにして得られた金属粉末の体積平均粒径は0.45μm、金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率10%での粒径(D10)は0.28μm、金属粉末の微粒子側からの体積累積分布率90%での粒径(D90)は0.76μm、金属粉末の粒度分布における半値幅は0.32μmであった。これらの値は、マイクロトラックMT−3000(日機装株式会社製)を用いた測定により求めた。
次に、金属粉末の分散液を、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアクリロイルモルホリン、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレート、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルアクリレート、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−2155(ビックケミー社製)、下記式(9)で表される化学構造を有する物質A、光重合開始剤としてのIrgacure819(チバ・ジャパン社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure TPO(ACETO社製)、光重合開始剤としてのSpeedcure DETX(Lambson社製)、および、LF−1984(楠本化成社製)と混合することにより、記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を得た。
(実施例2〜20)
金属粉末の構成粒子を、表1に示すような構成にするとともに、記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)の調製に用いる原料の種類・比率を変更することにより、表2、表3に示すような組成となるようにした以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
(比較例1)
Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)に対して超音波振動を付与する際に、表面処理剤を含まない液体(ジエチレングリコールジエチルエーテル)を用いた以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。すなわち、本比較例の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)は、金属粉末の構成粒子として、表面処理が施されていない粒子のみを含むものである。
(比較例2、3)
Alの膜が形成されたポリエチレンテレフタレート製のフィルム(基材)に対する超音波振動の付与時間等を変更することにより、金属粉末の粒度分布を変更した以外は、前記実施例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
(比較例4)
前記実施例1と同様にして得られた鱗片状の金属粉末と、1,2−ヘキサンジオールと、トリメチロールプロパンと、サーフィノール465(日信化学工業社製)と、トリエタノールアミンと、グリセリンと、ポリフロー401(日信化学工業社製)と、イオン交換水とを混合することにより、記録物製造用組成物を製造した。すなわち、本比較例の記録物製造用組成物は、紫外線の照射により硬化する重合性化合物(バインダー)を含まないものである。
(比較例5)
金属粉末として、ガスアトマイズ法を用いて製造された球形状のAl粉末(表面処理剤による表面処理を施していないもの)を用いた以外は、前記比較例1と同様にして記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を製造した。
前記各実施例および比較例について、記録物製造用組成物に含まれる金属粉末の構成を表1にまとめて示し、記録物製造用組成物の組成を表2、表3にまとめて示した。なお、表中、フッ素系リン酸化合物としてのCF3(CF2)5(CH2)2O−PO−(OH)2を「FAP1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)7CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS1」、フッ素系シラン化合物としての(CF3(CF2)5CH2CH2Si(OC2H5)3)を「FAS2」、フッ素置換脂肪酸としてのCF3(CF2)7(CH2)2COOHを「FFA1」、フッ素系イソシアネート化合物としてのCF3(CF2)7(CH2)2NCOを「IS1」、アルキルリン酸化合物としてのラウリルリン酸:CH3(CH2)11−(OCH2CH2)2−O−PO(OH)2を「LA」、アルキルエーテルリン酸化合物としてのラウレス−2リン酸:CH3(CH2)11−(OCH2CH2)2−O−PO(OH)2を「LP」、アルキルシラン化合物としてのオクチルトリエトキシシランを「OTS」、CH3(CH2)7O−PO(OH)2を「AP1」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンアクリレートを「BLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルアクリレートを「THFA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルカプロラクタムを「VC」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのN−ビニルピロリドンを「VP」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアクリロイルモルホリンを「AMO」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートを「TAOEI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルアクリレートを「DCPTeOEA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルアクリレートを「AA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを「DMTCDDA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジメチロールジシクロペンタンジアクリレートを「DMDCPTA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルアクリレートを「DCPTeA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルアクリレートを「DCPTaA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルアクリレートを「IBA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルアクリレートを「CHA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジアクリル化イソシアヌレートを「DAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのトリアクリル化イソシアヌレートを「TAI」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのγ−ブチロラクトンメタクリレートを「BLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラヒドロフルフリルメタクリレートを「THFM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレートを「DCPTeOEM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのアダマンチルメタクリレートを「AM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのペンタメチルピペリジルメタクリレートを「PMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのテトラメチルピペリジルメタクリレートを「TMPM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−メチル−2−アダマンチル メタクリレートを「MAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての2−エチル−2−アダマンチル メタクリレートを「EAM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのメバロン酸ラクトン メタクリレートを「MLM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンテニルメタクリレートを「DCPTeM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのジシクロペンタニルメタクリレートを「DCPTaM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのイソボルニルメタクリレートを「IBM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキシルメタクリレートを「CHM」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としてのシクロヘキサンスピロ−2−(1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「CHDOLA」、脂環構造を有するモノマー(重合性化合物)としての(2−メチル−2−エチル−1,3−ジオキソラン−4−イル)メチルアクリレートを「MEDOLA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのフェノキシエチルアクリレートを「PEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのジプロピレングリコールジアクリレートを「DPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのトリプロピレングリコールジアクリレートを「TPGDA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピルアクリレートを「HPPA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としての4−ヒドロキシブチルアクリレートを「HBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのエチルカルビトールアクリレートを「ECA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのメトキシトリエチレングリコールアクリレートを「MTEGA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのt−ブチルアクリレートを「TBA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルアクリレートを「BA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのアクリル酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルを「VEEA」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのベンジルメタクリレートを「BM」、脂環構造を有さないモノマー(重合性化合物)としてのウレタンアクリレートを「UA」、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−182(ビックケミー社製、アミン価:13mgKOH/g)を「D2」、塩基性高分子分散剤としてのDISPERBYK−2155(ビックケミー社製、アミン価:48mgKOH/g)を「D5」、上記式(9)で表される化合物(物質A)を「A1」、下記式(10)で表される化合物(物質A)を「A2」、下記式(11)で表される化合物(物質A)を「A3」、下記式(12)で表される物質Aを「A4」、Irgacure 819(チバ・ジャパン社製)を「ic819」、Speedcure TPO(ACETO社製)を「scTPO」、Speedcure DETX(Lambson社製)を「scDETX」、BYK−350(ビックケミー社製)を「BYK350」、ヒドロキノンモノメチルエーテルを「MEHQ」、1,2−ヘキサンジオールを「1,2HD」、トリメチロールプロパンを「TMP」、サーフィノール465(日信化学工業社製)を「S465」、トリエタノールアミンを「TEA」、グリセリンを「GL」、LHP−96(楠本化成社製)を「LHP」、LF−1982(楠本化成社製)を「LF−1」、LF−1984(楠本化成社製)を「LF−2」、ポリフロー401(日信化学工業社製)を「PF401」で示した。また、表中、実施例15について、母粒子の構成材料の組成は、各元素の含有率を重量比で示した。また、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)の20℃における粘度は、いずれも、3mPa・s以上15mPa・s以下の範囲内の値であった。また、前記各実施例の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)を構成する金属粉末に関して、それぞれ任意の10個の金属粒子について、透過型電子顕微鏡(TEM、JOEL JEM−2000EX)を用いた観察を行い、投影面積が最大となる方向から観察した際(平面視した際)の面積S1[μm2]と、当該観察方向と直交する方向のうち観察した際の面積が最大となる方向から観察した際の面積S0[μm2]に対する比率(S1/S0)を求め、これらの平均値を求めたところ、S1/S0の平均値は、いずれも、19以上であった。また、D2、D5は、いずれも、塩基性で重合体構造を有するもの(塩基性高分子分散剤)である。また、前記各実施例および比較例2〜4の記録物製造用組成物(紫外線硬化型組成物)においては、金属粉末全体に対する表面処理が施された構成粒子の含有率は、いずれも、99質量%以上であった。
[2]記録物製造用組成物の周波数特性(吐出安定性)
チャンバー(サーマルチャンバー)内に設置した液滴吐出装置および前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用意し、ピエゾ素子の駆動波形を最適化した状態で、25℃、50%RHの環境下で、各記録物製造用組成物について、ノズル穴のサイズが直径22μmの液滴吐出ヘッドの全ノズルから、ピエゾ素子の振動数(周波数)を変化させつつ、液滴吐出を行った。各周波数での液滴吐出時間は20分間とした。20分間の吐出後時点で未吐出のノズル数が全ノズル数の0.5%未満の周波数までを実使用可能な最高周波数として、実使用可能な周波数範囲を以下の4段階の基準に従い、評価した。この値が大きいほど周波数特性に優れていると言える。
A:15kHz以上。
B:11kHz以上15kHz未満。
C:5kHz以上11kHz未満。
D:5kHz未満。
[3]記録物製造用組成物の保存安定性評価(長期安定性評価)
[3.1]分散性
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、40℃の環境下に、60日間放置した後、ろ過精度3μmのカプセルフィルタ(ヤマシンフィルタ社製)にて1L通液した際の通液前後の金属粉末の含有率(記録物製造用組成物中の金属粉末の含有率)を測定し、分散不足による粗大粒子をフィルタろ過することによるロスを金属粉末の含有率の減少率で求め、以下の基準に従い、評価した。
A:金属粉末の含有率の減少率が5%未満。
B:金属粉末の含有率の減少率が5%以上10%未満。
C:金属粉末の含有率の減少率が10%以上20%未満。
D:金属粉末の含有率の減少率が20%以上40%未満。
E:金属粉末の含有率の減少率が40%以上。
[3.2]粘度の上昇率
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、40℃の環境下に、60日間放置した後、振動式粘度計を用いて、JIS Z8809に準拠して測定された前記各実施例の記録物製造用組成物の20℃における粘度を測定し、製造直後からの粘度の上昇率を求め、以下の基準に従い、評価した。
A:粘度の上昇率が5%未満。
B:粘度の上昇率が5%以上10%未満。
C:粘度の上昇率が10%以上18%未満。
D:粘度の上昇率が18%以上23%未満。
E:粘度の上昇率が23%以上、または、異物の発生が認められる。
[4]硬化性
前記各実施例および比較例の記録物製造用組成物について、エプソン製インクジェットプリンター;PM800Cへ導入し、記録媒体として三菱樹脂(株)製、ダイアホイル G440E(厚さ38μm)を用いて、インク量wet 9g/m2にて、ベタ印刷を行い、印刷後、ただちにLED−UVランプ;フォセオン社製 RX firefly(ギャップ6mm ピーク波長395nm 1000mW/cm2)を用いて紫外線の照射を行い、記録物製造用組成物が硬化したか否かを確認し、以下の5段階の基準に従い、評価した。硬化したか否かは、綿棒にて表面をこすって、未硬化のインク組成物が付着しないか否かで判断した。なお、下記A〜Eの照射量に該当するかどうかは、ランプを何秒照射したかによって算出できる。
A:200mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
B:200mJ/cm2以上350mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
C:350mJ/cm2以上500mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
D:500mJ/cm2以上1000mJ/cm2未満の紫外線照射量にて硬化した。
E:1000mJ/cm2以上の紫外線照射量にて硬化する。もしくはまったく硬化
しない。
[5]記録物の製造
各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、以下のようにして、記録物としてのインテリアパネルを製造した。
まず、記録物製造用組成物をインクジェット装置に投入した。
その後、ポリカーボネート(旭硝子社製、カーボグラス ポリッシュ 2mm厚)を用いて成形した曲面部を有する基材(記録媒体)上に、所定のパターンで、記録物製造用組成物を吐出した。
その後、60℃で5分間加熱した後、365nm、380nm、395nmの波長に極大値を有するスペクトルの紫外線を、照射強度160mW/cm2を10秒間照射し、基材上の記録物製造用組成物を硬化させ、記録物としてのインテリアパネルを得た。
上記のような方法を用いて、各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、10個のインテリアパネル(記録物)を製造した。
また、基材として、ポリエチレンテレフタレート(三菱樹脂社製 ダイアホイル G440E 38μm厚)を用いて成形したもの、低密度ポリエチレン(三井化学東セロ社製 T.U.X(L−LDPE) HC−E #80)を用いて成形したもの、2軸延伸ポリプロピレン(三井化学東セロ社製 OP U−1 #60)を用いて成形したもの、硬質塩化ビニル(アクリサンデー社製 サンデーシート(透明)0.5mm厚)を用いて成形したものを用いた以外は、上記と同様にして、各実施例および比較例の記録物製造用組成物を用いて、それぞれ、10個ずつのインテリアパネル(記録物)を製造した。
[6]記録物の評価
上記のようにして得られた各記録物について、以下のような評価を行った。
[6.1]記録物の外観評価
前記各実施例および比較例で製造した各記録物を目視により観察し、以下の7段階の基準に従い、評価した。
A:高級感に溢れる光沢感を有し、極めて優れた外観を有している。
B:高級感に溢れる光沢感を有し、非常に優れた外観を有している。
C:高級感のある光沢感を有し、優れた外観を有している。
D:高級感のある光沢感を有し、良好な外観を有している。
E:光沢感に劣り、外観がやや不良。
F:光沢感に劣り、外観が不良。
G:光沢感に劣り、外観が極めて不良。
[6.2]光沢度
前記各実施例および比較例で製造した各記録物のパターン形成部について、光沢度計(MINOLTA MULTI GLOSS 268)を用い、煽り角度60°での光沢度を測定し、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度が350以上。
B:光沢度が250以上350未満。
C:光沢度が150以上250未満。
D:光沢度が150未満。
[6.3]耐擦性
前記各実施例および比較例に係る記録物について、記録物の製造から48時間経過した時点で、JIS L0849に準じ、学振式堅牢度試験機において500gの荷重を載せて布擦りを30回行い、上記[6.2]で述べたのと同様の方法により、布擦り後の記録物についても光沢度(煽り角度60°)を測定し、布擦り前後での光沢度の低下率を求め、以下の基準に従い評価した。
A:光沢度の低下率が10%未満。
B:光沢度の低下率が10%以上20%未満。
C:光沢度の低下率が20%以上30%未満。
D:光沢度の低下率が30%以上50%未満。
E:光沢度の低下率が50%以上。
これらの結果を表4に示す。なお、表4中、ポリカーボネート製の基材を用いて製造された記録物を「M1」、ポリエチレンテレフタレート製の基材を用いて製造された記録物を「M2」、低密度ポリエチレン製の基材を用いて製造された記録物を「M3」、2軸延伸ポリプロピレン製の基材を用いて製造された記録物を「M4」、硬質塩化ビニル製の基材を用いて製造された記録物を「M5」で示した。
表4から明らかなように、本発明の組成物(紫外線硬化型組成物)は、液滴の吐出安定性、保存安定性および硬化性に優れていた。また、本発明の記録物は、優れた光沢感、外観を有しており、パターン形成部の耐擦性にも優れていた。また、本発明の組成物(紫外線硬化型組成物)を用いることにより、記録媒体の種類によらず、安定的に優れた結果が得られた。これに対して、比較例では、満足な結果が得られなかった。