以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下では、本発明に係る画像形成装置として、コピー機、プリンター及びファクシミリ等の機能を併せ持つ電子写真方式の複合機を例示して説明する。
図1は、本実施形態に係る複合機100の要部構成を示す正面透視図である。この図1に示すように、複合機100は、原稿を読み取ってその原稿の画像データ(以下、原稿画像データと称す)を生成する原稿読取装置1と、原稿読取装置1から得られた原稿画像データまたは通信回線を介して外部機器から受信した画像データ(以下、受信画像データと称す)に基づいて印刷用紙(記録媒体)に画像を形成する複合機本体2とを備えている。
原稿読取装置1は、スキャナー10及びADF(Auto Document Feeder:自動原稿給紙装置)20から構成されている。スキャナー10は、プラテンガラス11上にセットされた原稿、またはADF20によって自動給紙される原稿の読み取りを行うものであり、プラテンガラス11、白色基準板12、フルレートキャリッジ13、ハーフレートキャリッジ14、集光レンズ15及びCCD(Charge Coupled Devices)センサー16を備えている。
プラテンガラス11は、読み取り対象の原稿を1枚ずつセットするためのガラス板である。白色基準板12は、シェーディング補正用の白色基準データを取得するための白色板である。フルレートキャリッジ13は、プラテンガラス11の下方において、不図示のキャリッジ搬送機構によりプラテンガラス11に沿って左右方向(走査方向)に往復移動可能に設けられており、照明光を斜め上方に向けて出射するランプ13aと、照明光の反射光を後述するハーフレートキャリッジ14に向けて反射するミラー13bを内蔵する。
ハーフレートキャリッジ14は、フルレートキャリッジ13と同様に、不図示のキャリッジ搬送機構によりプラテンガラス11に沿って左右方向に往復移動可能に設けられており、フルレートキャリッジ13のミラー13bからの入射光を下方に向けて反射するミラー14aと、ミラー14aからの入射光を後述する集光レンズ15に向けて反射するミラー14bを内蔵する。なお、キャリッジ搬送機構により、フルレートキャリッジ13の移動量とハーフレートキャリッジ14の移動量との比率は1:0.5となるように制御されている。これにより、集光レンズ15に達するまでの照明光の光路長が一定となるように制御される。
プラテンガラス11上にセットされた原稿を読み取る場合は、フルレートキャリッジ13及びハーフレートキャリッジ14を走査方向に移動させることで原稿をスキャンするが、後述するADF20によって原稿を自動給紙する場合には、フルレートキャリッジ13及びハーフレートキャリッジ14を所定の原稿読取位置にて待機させ、原稿側を移動(搬送)させることで複数枚セットされた原稿を連続的にスキャンする。
集光レンズ15は、ハーフレートキャリッジ14のミラー14bからの入射光を集光してCCDセンサー16の受光面に結像させる。CCDセンサー16は、不図示のCCD駆動部から供給されるタイミング信号に同期して作動し、受光面にて受光した光を光電変換することにより、読み取った原稿の画像に応じたアナログ電圧信号を生成してAFE(アナログフロントエンド:図示省略)に出力する。なお、AFEは、上記のアナログ電圧信号を所定のゲイン設定値にて増幅した後にデジタル変換することで、読み取った原稿の画像を表す原稿画像データを生成し、この原稿画像データを後述の複合機本体2の制御部60に出力する。
ADF20は、原稿載置トレイ22にセットされた複数枚の原稿を1枚ずつ連続的に自動給紙するものであり、プラテンカバー21、原稿載置トレイ22、ピックアップローラー23、レジストローラー24、プラテンローラー25及び排紙ローラー26等から構成されている。プラテンカバー21は、スキャナー10の上面に対して開閉可能に設けられており、プラテンガラス11上に原稿をセットして読み取りを行う場合における原稿押さえカバーとしての役割と、ピックアップローラー23、レジストローラー24、プラテンローラー25及び排紙ローラー26等の自動給紙機構に使用される部材の収納用筐体としての役割を担っている。なお、図1では、プラテンカバー21が閉じられた状態を示している。
原稿載置トレイ22は、読み取り対象の原稿をセットするためのトレイである。ピックアップローラー23は、原稿載置トレイ22にセットされた原稿を1枚ずつピックアップしてレジストローラー24に搬出するためのローラーである。レジストローラー24は、所定のタイミングで原稿をプラテンローラー25に搬送するためのローラーである。プラテンローラー25は、原稿を所定の原稿読取位置を経由して排紙ローラー26に搬送するためのローラーである。排紙ローラー26は、読み取り完了後の原稿を外部に排出するためのローラーである。これら各ローラーの回転動作は、複合機本体2の制御部60により制御されている。
複合機本体2は、原稿読取装置1から得られた原稿画像データ、または通信回線を介して外部機器から受信した受信画像データがRGB色空間データである場合には、それらの画像データをCMYK色空間データである印刷用画像データに変換する機能を有している(後述の制御部60の機能)。周知のように、RGB色空間データとは、光三原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の各色相に対応する画素(画像を構成する最小単位)の階調値を示すデジタルデータである。
また、CMYK色空間データとは、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)の印刷用の色材(複合機100においてはトナー)の三原色にK(キープレート:ブラック)の色材を加えて減法混合により画像を表現するデータである。電子写真方式の複合機100においては、CMYKの各色相毎に感光体表面に現像したトナー画像を重ね合わせて一枚のトナー画像を形成する。各色相のトナー画像は、ドットと呼ばれるトナー配置ポイントの2次元配列によって構成されている。つまり、CMYK色空間データとは、各色相のトナー画像について、どの位置のドットにトナーを配置するのかを2値で示すデジタルデータである。
そして、この複合機本体2は、上記の印刷用画像データに基づくトナー画像を印刷用紙上に形成するトナー画像形成部3と、印刷用紙上にトナー画像を定着させて完成画像とする定着部4と、印刷用紙を搬送するための用紙搬送機構5と、各種サイズの印刷用紙を収容するための給紙カセット6、7、8とを備えている。さらに、複合機本体2には、手前側に開閉自在な手差しトレイ9が設けられており、手差しトレイ9に載置された印刷用紙を用紙搬送機構5によって搬送可能な構成となっている。
トナー画像形成部3は、中間転写ベルト31と、CMYKの各色相にそれぞれ対応したトナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FK)と、駆動ローラー32と、テンションローラー33と、二次転写ローラー34と、クリーナー35とから構成されている。中間転写ベルト31は、各トナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FK)によって形成(現像)される各色相のトナー画像を順次重ねて1次転写するための中間転写体であり、駆動ローラー32及びテンションローラー33に張架されて、図1において時計回りに回走する構成となっている。
トナー画像形成ユニットF(FY、FM、FC、FK)は、それぞれ感光体ドラムFaと、帯電部Fbと、露光部Fcと、現像部Fdと、一次転写ローラーFeとを備え、さらに不図示のクリーニング装置及び除電装置等とを備える。感光体ドラムFaは、円柱に形状設定され、その周面に静電潜像及び当該静電潜像に基づくトナー画像が形成されるものである。帯電部Fbは、感光体ドラムFaに対して対向配置され、感光体ドラムFaの周面を帯電状態とするものである。
露光部Fcは、レーザー光を帯電状態の感光体ドラムFaの周面において走査して静電潜像を形成するものであり、詳細には、トナーを配置すべきドット位置に対応する感光体ドラムFa上の位置に対してレーザー光を照射する。現像部Fdは、感光体ドラムFaの周面に対してトナーを付着させることによって感光体ドラムFaの周面上に静電潜像に基づくトナー画像を現像するものである。
一次転写ローラーFeは、中間転写ベルト31を挟んで感光体ドラムFaと対向配置され、感光体ドラムFaに現像されたトナー画像を中間転写ベルト31に一次転写するものである。二次転写ローラー34は、中間転写ベルト31を挟んで駆動ローラー32と対向配置されており、中間転写ベルト31表面に転写されているトナー画像(各色のトナー画像が重ね合されたもの)を、給紙カセット6、7、8のいずれかから用紙搬送機構5によって搬送される印刷用紙に2次転写するものである。クリーナー35は、クリーニングローラーやクリーニングブレード等を備え、中間転写ベルト31の残留トナーを除去するものである。
定着部4は、印刷用紙上に二次転写されたトナー画像を定着させて完成画像とするものであり、加圧・加熱することによりトナー画像を定着させる加熱ローラー41を備えている。用紙搬送機構5は、給紙カセット6、7、8から印刷用紙を1枚ずつ搬出するためのピックアップローラー51、52、53と、ピックアップした印刷用紙をトナー画像形成部3(駆動ローラー32と2次転写ローラー34とのニップ部分)に搬送するための給紙ローラー54、55、56と、定着部4による定着処理後の印刷用紙を外部に排紙するための排紙ローラー57等から構成されている。給紙カセット6、7、8は、複合機本体2に対して引き出し自在に取り付けられており、各種サイズの用紙を収容するものである。
図2は、複合機100の機能ブロック図である。なお、この図2において、図1と同じ構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。図2において、符号60は制御部、符号61は画像データメモリー、符号62は操作表示部、符号63は通信I/F、符号64は濃度センサーである。なお、符号200は、複合機100へ画像データを送信する外部機器(例えばパーソナルコンピューターやファクシミリ等)である。
制御部60は、例えばCPU(Central Processing Unit)コアや、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリー、入出力インターフェイスなどが一体的に組み込まれたマイクロコントローラーであり、操作表示部62から入力される操作信号、原稿読取装置1から得られた原稿画像データ、及び通信I/F63を介して外部機器200から受信した受信画像データに基づいて、複合機100の全体動作(原稿読取装置1による原稿読取動作、トナー画像形成部3によるトナー画像形成動作、定着部4による定着動作、用紙搬送機構5による用紙搬送動作など)を制御する。
また、上述したように、この制御部60は、原稿読取装置1から得られた原稿画像データ、または通信回線を介して外部機器200から受信した受信画像データがRGB色空間データである場合には、それらの画像データをCMYK色空間データである印刷用画像データに変換する機能も有している。
画像データメモリー61は、例えばフラッシュメモリーなどの書き換え可能な不揮発性メモリーであり、制御部60による制御の下、画像読取装置1から得られた原稿画像データや、外部機器200から受信した受信画像データ、及び上記の印刷用画像データなどの画像データを記憶する。
操作表示部62は、操作キー部62aと表示部62bとを備えており、ユーザーの操作に応じた指示を入力するとともに、複合機100の状態を示す情報等の各種情報を表示する。操作キー部62aは、スタートキー、ストップ/クリアキー、電源キー、テンキー(数値入力キー)、及び機能切替キー等のハードキーを備える。尚、機能切替キーとは、複合機100で実現されるコピー機能、プリント機能、スキャン機能、及びファクシミリ機能の各々をユーザーが使用する場合に、各機能の動作モードへ複合機100を切り替える為のキーである。表示部62bは、タッチパネル機能を有しており、ソフトキーを含む画面が表示される。
通信I/F63は、複合機100(詳しくは制御部60)と外部機器200との間で通信を行うためのインターフェイスであり、LAN(Local Area Network)等のネットワークによって外部機器200と通信可能に接続されている。
濃度センサー64は、各感光体ドラムFaに付着したトナーの濃度を検出し、その濃度検出値を制御部60に出力する。感光体ドラムFaに付着したトナーの濃度とトナーの残量とには相関関係があるので、この相関関係を予め測定しておくことにより、濃度センサー64の出力信号(濃度検出値)から各色相のトナー残量を検知(推定)することが可能となる(詳しくは特許文献1参照)。
つまり、本実施形態において、制御部60は、予め内蔵ROMに感光体ドラムFaに付着したトナーの濃度とトナーの残量との相関関係データを記憶しており、この相関関係データと濃度センサー64の出力信号(濃度検出値)とに基づいて各色相のトナー残量を検知する機能も有している。
さらに、本実施形態の制御部60は、各トナーの残量を検知して最も残量の少ないトナーと最も残量の多いトナーを把握し、ユーザーから指定された調整レベルに応じて印刷用画像データ(CMYK色空間データ)を補正することにより、印刷用紙上に形成される画像中の本来最も残量の少ないトナーを使用すべき領域の色相を、最も残量の多いトナーの色相方向へ段階的に調整する色相調整手段としての機能(以下、色相調整機能と称す)を有している。
次に、上記のように構成された複合機100の動作について説明する。
図3は、制御部60が上記の色相調整機能を実現するために実行する各処理を示したフローチャートである。この図3に示すように、制御部60は、まず、特定モードとしてトナー偏り抑制モードが選択されているか否かを判定する(ステップS1)。
ここで、制御部60は、例えばコピーモードの場合には、原稿がプラテンガラス11或いはADF20にセットされたことを検知した時に上記ステップS1の処理を開始し、例えばプリントモードの場合には、外部機器200から印刷指示信号と共に画像データ(RGB色空間データ)を受信した時に上記ステップS1の処理を開始する。
また、ユーザーは、例えばコピーモードの場合には、表示部62bに表示される特定のソフトキー、或いは操作キー部62aに設けられた特定のハードキーを押下することでトナー偏り抑制モードを任意に選択することができ、例えばプリントモードの場合には、外部機器200を利用した遠隔操作によってトナー偏り抑制モードを任意に選択することができる。
制御部60は、上記ステップS1にて「Yes」の場合(トナー偏り抑制モードが選択されている場合)、CMYKの各色相のトナー残量を検知し、最も残量の少ないトナーと最も残量の多いトナーを把握する(ステップS2)。具体的には、制御部60は、トナー画像形成部3を制御して各感光体ドラムFaに各色相のトナーを付着させ、この時、濃度センサー64から得られる濃度検出値と、予め内蔵ROMに記憶しているトナー濃度とトナー残量との相関関係データとに基づいて各色相のトナー残量を検知(推定)する。
続いて、制御部60は、ブラックトナーの残量が最も少ないか否かを判定し(ステップS3)、「No」の場合、つまり、CMYのカラートナーのいずれかの残量が最も少ない場合には、カラートナー用の調整レベル選択画面を、例えばコピーモードの場合には表示部62bに表示させ、例えばプリントモードの場合には外部機器200に表示させる(ステップS4)。
図4〜図9は、カラートナー用の調整レベル選択画面の一例である。制御部60は、CMYのカラートナーのいずれかの残量が最も少ない場合、最も残量の少ないトナーと最も残量の多いトナーを把握した結果に基づいて、カラートナー用の調整レベル選択画面を表示させることにより、色相の調整可能な範囲及び方向をユーザーに提示すると共に、選択候補として段階的に複数用意された調整レベルをユーザーに提示して調整レベルの選択を促す。
図4は、CMYのトナー残量の大小関係がY<M<Cである場合(イエロートナーの残量が最も少なく、シアントナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図4に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がY<M<Cである場合、CMY空間上において、イエローYからシアンCまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、イエローYからシアンCに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。つまり、調整レベルは、Lv.5が最も調整の度合いが大きくなる。
図5は、CMYのトナー残量の大小関係がC<Y<Mである場合(シアントナーの残量が最も少なく、マゼンタトナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図5に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がC<Y<Mである場合、CMY空間上において、シアンCからマゼンタMまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、シアンCからマゼンタMに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、図4と同様に、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
図6は、CMYのトナー残量の大小関係がM<C<Yである場合(マゼンタトナーの残量が最も少なく、イエロートナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図6に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がM<C<Yである場合、CMY空間上において、マゼンタMからイエローYまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、マゼンタMからイエローYに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、図4と同様に、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
図7は、CMYのトナー残量の大小関係がY<C<Mである場合(イエロートナーの残量が最も少なく、マゼンタトナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図7に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がY<C<Mである場合、CMY空間上において、イエローYからマゼンタMまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、イエローYからマゼンタMに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、図4と同様に、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
図8は、CMYのトナー残量の大小関係がM<Y<Cである場合(マゼンタトナーの残量が最も少なく、シアントナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図8に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がM<Y<Cである場合、CMY空間上において、マゼンタMからシアンCまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、マゼンタMからシアンCに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、図4と同様に、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
図9は、CMYのトナー残量の大小関係がC<M<Yである場合(シアントナーの残量が最も少なく、イエロートナーの残量が最も多い場合)の調整レベル選択画面である。この図9に示すように、CMYのトナー残量の大小関係がC<M<Yである場合、CMY空間上において、シアンCからイエローYまでの範囲が色相の調整可能な範囲として提示され、シアンCからイエローYに向かう方向が色相の調整可能な方向として提示される。また、調整レベルは、図4と同様に、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
一方、制御部60は、上記ステップS3にて「Yes」の場合(ブラックトナーの残量が最も少ない場合)には、ブラックトナー用の調整レベル選択画面を、例えばコピーモードの場合には表示部62bに表示させ、例えばプリントモードの場合には外部機器200に表示させる(ステップS5)。
図10は、ブラックトナー用の調整レベル選択画面の一例である。制御部60は、ブラックトナーの残量が最も少ない場合、図10に示すようなブラックトナー用の調整レベル選択画面を表示させることにより、選択候補として段階的に複数用意された調整レベルをユーザーに提示して調整レベルの選択を促す。ブラックトナーの調整レベルも、調整の度合いが小さい順にLv.1からLv.5までの5段階で提示される。
制御部60は、上記ステップS4或いはS5の処理によって調整レベル選択画面を表示させた後、ユーザーから調整レベルの指定があった場合には、指定された調整レベルを内蔵RAM等のメモリーに記憶する(ステップS6)。なお、ユーザーは、例えばコピーモードの場合には、表示部62bに表示される特定のソフトキー、或いは操作キー部62aに設けられた特定のハードキーを押下することで調整レベルを任意に選択することができ、例えばプリントモードの場合には、外部機器200を利用した遠隔操作によって調整レベルを任意に選択することができる。
そして、制御部60は、上記のようにユーザーに指定された調整レベルをメモリーに記憶した後、トナー偏り抑制モードによる印刷処理を開始する(ステップS7)。具体的には、例えばコピーモードの場合、制御部60は、コピースタートキーの押下を検知すると、原稿読取装置1に対してプラテンガラス11或いはADF20にセットされた原稿の読み取りを行うよう指示する。これにより、原稿読取装置1は、原稿の読み取りを行い、読み取った原稿の画像を表す原稿画像データ(RGB色空間データ)を生成して制御部60に出力する。
制御部60は、上記のように原稿読取装置1から取得した原稿画像データを画像データメモリー61に記憶させる一方、その原稿画像データをCMYK色空間データである印刷用画像データに変換し、その印刷用画像データも画像データメモリー61に記憶させる。そして、制御部60は、画像データメモリー61から印刷用画像データを読み出し、ユーザーから指定された調整レベルに応じて印刷用画像データを補正することにより、印刷用紙に形成される画像中の本来最も残量の少ないトナーを使用すべき領域の色相を、最も残量の多いトナーの色相方向へ段階的に調整する。
例えば、各トナーの残量が、シアンC=80%、マゼンタM=60%、イエローY=20%、ブラックK=70%である場合を想定する。この場合、CMYKを同量消費する画像を、通常の処理で印刷していくと、最も残量の少ないイエローYのトナーが最も早くなくなる。一方、本実施形態において、CMYのトナー残量の大小関係がY<M<Cであることから、図4に示したカラートナー用の調整レベル選択画面が表示されることになる。
ここで、例えばユーザーによってカラートナー用の調整レベルLv.1が指定されたとすると、制御部60は、画像中の本来イエロートナーが100%で使用される領域において、イエロートナーが95%で使用され、シアントナーが5%で使用されるように、言い換えれば、イエロートナーとシアントナーとの混合割合が、Y:C=95:5となるように、印刷用画像データを補正する。
また、例えばユーザーによってカラートナー用の調整レベルLv.5が指定されたとすると、制御部60は、画像中の本来イエロートナーが100%で使用される領域において、イエロートナーが5%で使用され、シアントナーが95%で使用されるように、言い換えれば、イエロートナーとシアントナーとの混合割合が、Y:C=5:95となるように、印刷用画像データを補正する。このように、調整レベルを変えることで、最も残量の多いトナーと、最も残量の少ないトナーの使用する割合を調整し、トナー色毎の残量の偏りを抑制することができる。
さらに、例えば、各トナーの残量が、シアンC=80%、マゼンタM=60%、イエローY=20%、ブラックK=10%である場合を想定する。この場合、CMYKを同量消費する画像を、通常の処理で印刷していくと、最も残量の少ないブラックKのトナーが最も早くなくなる。一方、本実施形態において、ブラックトナーの残量が最も少ないことから、図10に示したブラックトナー用の調整レベル選択画面が表示されることになる。
ここで、例えばユーザーによってブラックトナー用の調整レベルLv.1が指定されたとすると、制御部60は、画像中の本来ブラックトナーが100%で使用される領域において、ブラックトナーが95%で使用され、CMYトナーが5%で使用されるように、言い換えれば、ブラックトナーと他のカラートナーとの混合割合が、K:CMY=95:5となるように、印刷用画像データを補正する。
また、例えばユーザーによってブラックトナー用の調整レベルLv.5が指定されたとすると、制御部60は、印刷用紙に形成される画像中の本来ブラックトナーが100%で使用される領域において、ブラックトナーが0%で使用され、CMYトナーが100%で使用されるように、言い換えれば、ブラックトナーと他の全てのカラートナーとの混合割合が、K:CMY=0:100となるように、印刷用画像データを補正する。これにより、ブラックトナーが最も少ない場合はブラックトナーの消費を抑え、その分CMYのトナー消費量を調整することで、黒色を再現できるようになる。
制御部60は、以上のような処理によって印刷用画像データを補正すると、補正後の印刷用画像データに基づいて、トナー画像形成部3によるトナー画像形成動作、定着部4による定着動作、用紙搬送機構5による用紙搬送動作を制御することにより、印刷用画像データに基づく画像を印刷用紙上に印刷する。
なお、制御部60は、上記ステップS1にて「No」の場合(トナー偏り抑制モードが選択されていない場合)、通常の印刷処理、つまり補正なしの印刷用画像データに基づいて、トナー画像形成部3によるトナー画像形成動作、定着部4による定着動作、用紙搬送機構5による用紙搬送動作を制御することにより、印刷用画像データに基づく画像を印刷用紙上に印刷する(ステップS8)。
以上のように、本実施形態では、各トナーの残量を検知して最も残量の少ないトナーと最も残量の多いトナーを把握し、ユーザーから指定された調整レベルに応じて印刷用画像データを補正することにより、印刷用紙に形成される画像中の本来最も残量の少ないトナーを使用すべき領域の色相を、最も残量の多いトナーの色相方向へ段階的に調整する。これにより、最も残量の少ないトナーの消費が抑えられ、最も残量の多いトナーの消費が増加するので、各トナーの消費の偏りを抑制できると共に画像の薄化も抑制することができる。
また、本実施形態によると、画像中の本来最も残量の少ないトナーを使用すべき領域の色相が、最も残量の多いトナーの色相方向へ調整されるので、最終的に印刷用紙上に形成される画像の色合いが本来期待していたものと異なっている可能性があるが、その調整の度合いをユーザーが調整レベルを指定することで任意に変えることができるので、ユーザーの使い勝手は良好である。
以上、本発明の一実施形態による複合機100について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。
例えば、トナー画像形成部3が補正後の印刷用画像データに基づく画像を印刷用紙上に形成する前に、補正後の印刷用画像データに基づく画像をプレビュー表示する機能を制御部60に設けても良い。これにより、ユーザーは、印刷前に画像がどのように変化するのかを知ることができ、無駄な印刷を行わなくて済むようになる。なお、制御部50は、コピーモードの場合、補正後の印刷用画像データに基づく画像を表示部62bにプレビュー表示させ、プリントモードの場合、補正後の印刷用画像データに基づく画像を外部機器200にプレビュー表示させる。
また、調整レベルを提示する際に、各トナーの残量に基づいて、色合い変化が小さく、各トナーの消費の偏り抑制効果も高い推奨の調整レベルを提示する機能を制御部60に設けても良い。一般的なユーザーは、調整レベルから即座にどのような画像が得られるかを認識することができないので、上記のように推奨の調整レベルをユーザーに提示することにより、ユーザーの使い勝手が向上する。
また、上記実施形態では、トナー残量の検知方法として、各感光体ドラムFaに各色相のトナーを付着させ、この時、濃度センサー64から得られる濃度検出値と、予め制御部60の内蔵ROMに記憶しているトナー濃度とトナー残量との相関関係データとに基づいて各色相のトナー残量を検知(推定)する手法を例示したが、トナー残量の検知方法はこれに限定されない。例えば、他のトナー残量の検知方法として、特許文献1に記載されているように、トナー交換時点から得られた印刷用画像データ(CMYK色空間データ)を画素毎に累積加算した値から予測する方法も挙げられる。
また、上記実施形態では、本発明に係る画像形成装置が複合機100である場合を例に挙げて説明したが、本発明は、プリンター、複写機、ファクシミリ等の他の画像形成装置にも適用することができる。また、本発明に係る画像形成装置として、4つの色相CMYKのそれぞれに対応するトナーを使用する複合機100を例示したが、本発明は、さらに複数色の色相に対応するトナーを使用する画像形成装置や色材としてインクなどを使用する画像形成装置にも適用することができる。