以下、本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下の実施形態に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。本実施形態において、タイヤは空気入りタイヤを例として説明するが、本実施形態の適用対象はタイヤ全般であり、空気入りタイヤに限定されるものではない。
以下の説明において、タイヤ赤道面とは空気入りタイヤのタイヤ回転軸に直交するとともに、空気入りタイヤのタイヤ幅の中心を通る平面を意味する。タイヤ幅方向(幅方向)とはタイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向内側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面に向かう側、タイヤ幅方向外側とはタイヤ幅方向においてタイヤ赤道面から離れる側を意味する。タイヤ径方向(径方向)とは空気入りタイヤ回転軸と直交する方向を意味し、タイヤ径方向内側とはタイヤ径方向においてタイヤ回転軸に向かう側、タイヤ径方向外側とは、タイヤ径方向においてタイヤ回転軸から離れる側を意味する。タイヤ周方向(周方向)とはタイヤ回転軸を中心軸とする周方向を意味する。以下、空気入りタイヤは、必要に応じてタイヤという。
図1は、タイヤの斜視図である。図2は、図1に示すタイヤの子午断面図である。図3は、図1に示すタイヤのトレッド面の概略構成を示す平面図である。図1のY軸がタイヤ回転軸であり、Z軸はタイヤ1が接地する路面と直交する軸であり、X軸はY軸及びZ軸に直交する軸である。図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心として回転する環状構造体である。図2に示すように、タイヤ1の子午断面には、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びビードコア5が現れている。タイヤ1のタイヤ径方向外側(路面との接地面側)には、キャップトレッド6が配置されている。タイヤ1は、母材であるゴムを、補強材であるカーカス2、ベルト3、あるいはベルトカバー4等の補強コードによって補強した複合材料の構造体である。カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4等の、金属繊維や有機繊維等のコード材料で構成される補強コードの層をコード層という。
カーカス2は、タイヤ1に気体(例えば、空気)を充填した際に圧力容器としての役目を果たす強度メンバーであり、タイヤ1の内部に充填される気体の圧力(内圧)によって荷重を支え、走行中の動的荷重に耐えるようになっている。ベルト3は、キャップトレッド6とカーカス2との間に配置されたゴム引きコードを束ねた補強コードの層である。なお、バイアスタイヤの場合にはブレーカと呼ぶ。ラジアルタイヤにおいて、ベルト3は形状保持及び強度メンバーとして重要な役割を担っている。
ベルト3の踏面G側には、ベルトカバー4が配置されている。ベルトカバー4は、例えば有機繊維材料を層状に配置したものであり、ベルト3の保護層としての役割や、ベルト3の補強層としての役割を持つ。ビードコア5は、内圧によってカーカス2に発生するコード張力を支えているスチールワイヤの束である。ビードコア5は、カーカス2、ベルト3、ベルトカバー4及びトレッドとともに、タイヤ1の強度部材となる。タイヤ1の側部はサイドウォール8と呼ばれており、ビードコア5とキャップトレッド6との間を接続する。また、キャップトレッド6とサイドウォール8との間はショルダー部Shである。
図2及び図3に示すように、キャップトレッド6の踏面G側(トレッド面)には、タイヤ周方向に延在する4本の主溝7a、7b、7c、7dが形成される。これによって、雨天走行時の排水性を向上させる。また、4本の主溝7a、7b、7c、7dが形成されることで、キャップトレッド6は、主溝7aよりのタイヤ幅方向外側の陸部11aと、主溝7aと主溝7bとの間の陸部11bと、主溝7bと主溝7cとの間の陸部11cと、主溝7cと主溝7dとの間の陸部11dと、主溝7dよりのタイヤ幅方向外側の陸部11eとを有する。陸部11cは、タイヤ赤道面Cを通る位置に形成されている。また、陸部11cは、主溝7a、7b、7c、7dよりも溝幅が狭く、溝深さが小さい飾り溝12を有する。さらに、陸部11bは、タイヤ幅方向に延びて、主溝7aから主溝7bまで延在するラグ溝14を、タイヤ周方向に一定間隔で複数有する。このような構造により、陸部11bは、主溝7aと主溝7bとラグ溝14とで囲われたブロック16が、タイヤ周方向に向かって複数列配置された形状となる。また、陸部11dも、タイヤ幅方向に延びて、主溝7cから主溝7dまで延在するラグ溝14を、タイヤ周方向に向かって一定間隔で複数有する。このような構造により、陸部11dは、主溝7cと主溝7dとラグ溝14とで囲われたブロック16が、タイヤ周方向に向かって複数列配置された形状となる。このように、タイヤ1は、陸部11b、11dに、周方向に一定間隔でラグ溝14を有する。このため、タイヤ1は、タイヤ周方向に不均一な形状、すなわち、タイヤ周方向に向かって凹凸が形成された形状になっている。また、タイヤ1は、タイヤ周方向に一定間隔でラグ溝14とブロック16とを交互に有する。このような構造により、タイヤ1は、タイヤ周方向において、ピッチP毎に同じ形状が繰り返す形状となっている。すなわち、タイヤ1は、タイヤ回転軸を中心として、ピッチPに対応する一定角度分の形状が繰り返し単位となり、ピッチPに対応する一定角度分の形状周方向に複数個並べた形状となる。次に、本実施形態に係るシミュレーションモデル作成方法及びシミュレーション方法を実行する装置について説明する。
図4は、本実施形態に係る解析・評価装置を示す説明図である。解析・評価装置50はコンピュータである。解析・評価装置50は、シミュレーションモデル作成装置及びシミュレーション装置であり、本実施形態に係るシミュレーションモデル作成方法及びシミュレーション方法を実現する装置である。図4に示すように、解析・評価装置50は、処理部52と記憶部54とを有する。この解析・評価装置50は、入出力装置51が電気的に接続されており、ここに備えられた入力手段53を介して、解析モデルの作成に必要な情報、あるいは接地解析や流体解析における境界条件等が処理部52や記憶部54へ入力される。また、解析・評価装置50は、入出力装置51の表示手段55に算出結果、入力結果等、種々の情報を表示させる。解析モデル(シミュレーションモデルに相当する)とは、コンピュータを用いて数値解析可能なモデルであり、数学的モデルや数学的離散化モデルを含む。
入力手段53には、キーボード、マウス等の入力デバイスを使用することができる。記憶部54には、タイヤの変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を含むコンピュータプログラムが格納されている。ここで、記憶部54は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ(CD−ROM等のような読み出しのみが可能な記憶媒体)や、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成することができる。
また、上記コンピュータプログラムは、コンピュータシステムにすでに記録されているコンピュータプログラムとの組み合わせによって、種々のタイヤのシミュレーション方法を実現できるものであってもよい。また、処理部52の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより構造物の変形解析や本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法を実行してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OS(Operating System)や周辺機器などのハードウェアを含むものとする。
処理部52は、第1モデル作成部52aと、接地解析部52bと、解析結果変換部52cと、第2モデル作成部52dと、流体解析部52eと、評価部52fとを含む。第1モデル作成部52aは、接地解析に供する解析モデルを作成して、記憶部54に格納する。なお、第1モデル作成部52aは、解析モデルとして、第1タイヤモデルと、第2タイヤモデルと、路面モデルと、ホイールモデルとを作成する。また、第1モデル作成部52aは、境界条件も設定する。これらの解析モデル及び境界条件は、解析・評価装置50の使用者によって入力手段53から入力された情報に基づいて作成され、設定される。
接地解析部52bは、第1モデル作成部52aが作成した解析モデルを記憶部54から読み出し、設定された条件で接地解析を実行する。解析結果変換部52cは、接地解析部52bが接地解析することによって得られたタイヤ形状から対応点(対応する節点)を抽出する。そして、解析結果変換部52cは、対応点の位置、回転角の情報及び速度情報を用いて、接地解析した結果を転動状態のタイヤ形状の時系列データに変換する。
第2モデル作成部52dは、解析結果変換部52cが変換した転動状態のタイヤ形状の時系列データを用いて、各時刻におけるタイヤ形状の周囲の空間を解析モデル化する。本実施形態では、タイヤ形状の周囲の空間に流体メッシュを作成した解析モデル(空間モデル)を作成する。流体解析部52eは、第2モデル作成部52dが作成した空間モデルを、設定された条件で流体解析する。なお、流体解析部52eが実行する解析(流体解析や音響解析)に用いる条件も、前記使用者が入力手段53から入力した数値等に基づいて作成、設定される。評価部52fは、流体解析部52eが解析した結果に基づいて、タイヤの性能を評価する。評価対象としては、タイヤの周囲における空気の流れ、タイヤの空気抵抗、タイヤの音響特性、タイヤのノイズ等がある。
処理部52は、例えば、メモリ及びCPU(Central Processing Unit)により構成されている。接地解析時、流体解析時においては、第1モデル作成部52a及び第2モデル作成部52dが作成した解析モデルや入力データ等に基づいて、処理部52が前記コンピュータプログラムを処理部52に組み込まれたメモリに読み込んで演算する。その際に処理部52は、演算途中の数値を記憶部54に適宜格納し、また記憶部54へ格納した数値を取り出して演算を進める。なお、この処理部52は、前記コンピュータプログラムの代わりに専用のハードウェアによって、その機能を実現するものであってもよい。
表示手段55には、液晶表示装置等を使用することができる。また、シミュレーションの結果やシミュレーションの条件等は、必要に応じて設けられた印刷機により、紙等の被記録媒体に出力することもできるので、表示手段55として印刷機を用いてもよい。記憶部54は、他の装置(例えばデータベースサーバ)内にあってもよい。例えば、解析・評価装置50は、入出力装置51を備えた端末装置から通信により処理部52や記憶部54にアクセスするものであってもよい。次に、本実施形態に係るシミュレーションモデル作成方法及びタイヤのシミュレーション方法を説明する。なお、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、上述した解析・評価装置50により実現できる。
図5は、本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法の手順を示すフローチャートである。本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、本実施形態に係るシミュレーションモデルの作成方法を含む。図6−1は、第1タイヤモデルの一例を示す側面図である。図6−2は、図6−1に示す第1タイヤモデルの一例を示す部分拡大図である。図7−1は、第2タイヤモデルの一例を示す側面図である。図7−2は、図7−1に示す第2タイヤモデルの一例を示す部分拡大図である。
本実施形態に係るシミュレーション方法を実行するにあたり、ステップS12で、図4に示す解析・評価装置50の第1モデル作成部52aは、第1タイヤモデル60(図6−1)と、前記評価対象の空気入りタイヤに基づいて作成される第2タイヤモデル80(図7−1)と、ホイールモデル64(図7−1)と、路面モデル66(図7−1)とを作成する(第1モデル作成ステップ)。第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80は、評価対象のタイヤに基づいて作成される。ホイールモデル64は、少なくとも第2タイヤモデル80に装着される。路面モデル66は、後述する接地解析で第2タイヤモデル80が接地する。これらは、いずれも解析モデルである。なお、第1モデル作成部52aは、解析に用いる境界条件も設定する。
本実施形態で用いる第1タイヤモデル60は、図1から図3に示すタイヤと同様の形状であり、かつタイヤ周方向に一定間隔でタイヤ幅方向に延在するラグ溝が形成された形状である。第1タイヤモデル60は、複数のブロック62が、タイヤ周方向に列上に配置された形状となる。すなわち、第1タイヤモデル60は、周方向に不均一な形状の解析モデルである。周方向に不均一な形状とは、周方向に向かい、第1タイヤモデル60の子午断面の少なくとも一部が異なる形状であることをいう。
第2タイヤモデル80は、実質的に周方向に均一、好ましくは周方向に均一な形状の解析モデルである。周方向に均一な形状とは、周方向に向かい、第2タイヤモデル80のいずれの子午断面も同一の形状であることをいう。このため、第2タイヤモデル80は、表面に溝がないか、溝を有する場合には周方向に向かって延在する周方向溝を有し、ラグ溝は有さない。本実施形態において、第2タイヤモデル80は、溝を有さない。第2タイヤモデル80が周方向溝を有する場合、周方向溝の幅方向中心を結んだ線は赤道面と平行である。
第2タイヤモデル80は、有限要素法や有限差分法等の数値解析手法を用いて接地解析を行うために用いるモデルである。例えば、本実施形態では、第2タイヤモデル80の接地解析に有限要素法(Finite Element Method:FEM)を使用するので、第2タイヤモデル80は、有限要素法に基づいて作成される。なお、本実施形態に係る接地解析に適用できる解析手法は有限要素法に限られず、有限差分法(Finite Differences Method:FDM)や境界要素法(Boundary Element Method:BEM)等も使用できる。また、境界条件等によって最も適当な解析手法を選択し、又は複数の解析手法を組み合わせて使用することもできる。なお、有限要素法は、構造解析に適した解析手法なので、特にタイヤのような構造体に対して好適に適用できる。
第1モデル作成部52aは、ステップS12において、環状構造体であるタイヤ(評価対象のタイヤ)を、複数かつ有限個の要素に分割して、図6−1、図7−1に示すような第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80を作成する。複数の要素は、それぞれ複数の節点を有する。第1モデル作成部52aは、例えば、評価対象のタイヤのCADデータを複数かつ有限個の要素に分割して第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80を作成する。本実施形態において、第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80は3次元形状の解析モデルとなる。
第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80が有する要素は、例えば、3次元体では四面体ソリッド要素、五面体ソリッド要素、六面体ソリッド要素等のソリッド要素や三角形シェル要素、四角形シェル要素等のシェル要素、面要素等、コンピュータで取り扱い得る要素とすることが望ましい。このようにして分割された要素は、解析の過程においては、3次元モデルでは3次元座標や円筒座標を用いて逐一特定される。ホイールモデル64は、第2タイヤモデル80と同様に作成されてもよいし、剛体モデルとして作成されてもよい。また、路面モデル66も、第2タイヤモデル80と同様に作成されてもよいし、サーフェスモデルとして作成されてもよい。
処理部52は、ステップS12で第1タイヤモデル60と、第2タイヤモデル80と、ホイールモデル64と、路面モデル66とを作成したら、これらを記憶部54に格納し、ステップS14へ進む。ステップS14において、解析・評価装置50の処理部52が備える接地解析部52bは、ステップS12で作成された第2タイヤモデル80の接地解析を実行する(接地解析ステップ)。本実施形態においては、接地解析に先立ち、ホイールモデル64に第2タイヤモデル80を装着する。
接地解析は、設定されている解析条件に基づいて実行される。接地解析とは、第2タイヤモデル80と平面又は曲面との動的又は静的な接触状態において、少なくとも第2タイヤモデル80の変形やひずみの状態を解析するものである。本実施形態では、第2タイヤモデル80を接地対象(本実施形態では路面モデル66)に接触させた状態で第2タイヤモデル80の回転軸から荷重を与えて、第2タイヤモデル80の変形やひずみの状態が解析される。解析条件は、例えば、図4に示す入出力装置51の入力手段53を介して解析・評価装置50に入力されて、記憶部54に格納される。接地解析部52bは、解析条件が設定されたら、第2タイヤモデル80を路面モデル66に接触させるとともに、第2タイヤモデル80に荷重を負荷して接地解析を実行し、第2タイヤモデル80が有する節点の変位を求める。そして、接地解析部52bは、求めた変位を記憶部54に格納する。処理部52は、ステップS14で接地解析を実行したらステップS16に進む。
ステップS16において、解析・評価装置50の処理部52が備える解析結果変換部52cは、回転情報を第1タイヤモデル60の節点と第2タイヤモデル80の節点との相対的な位置関係を用いて付与する。回転情報とは、第2タイヤモデル80が有する節点の周方向位置(回転軸を中心とした中心角で表される)を時間に変換することによって得られる、前記節点の時間に対する変化(変位)を表す情報である。回転情報は、第2タイヤモデル80が有する節点の変位及び位置(座標)から求めてもよいし、接地解析によって得られた第2タイヤモデル80の節点の変位から得られた第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の変位及び位置(座標)から求めてもよい。
図8は、第1タイヤモデルの節点と第2タイヤモデルの節点との対応を説明するための模式図である。図9は、第1タイヤモデルの節点と第2タイヤモデルの節点との相対的な位置関係の説明図である。図10−1から図10−3は、第2タイヤモデルの外側に拡張領域を設ける例を示す説明図である。図11−1は、接地解析に基づいて対応点の位置を算出した一例を示す図である。図11−2は、対応点の位置を時間の関数に変換した一例を示す図である。回転情報を第1タイヤモデル60に付与するにあたっては、第1タイヤモデル60の節点と第2タイヤモデル80の節点との相対的な位置関係を把握しておく必要がある。これは、図9に示すように、第1タイヤモデル60の節点(図9の白丸)が、第2タイヤモデル80においてどの位置(図9の白丸)に対応するかを把握するとともに、図8に示すように、第1タイヤモデル60が有する表面の節点61が、第2タイヤモデル80が有するどの要素82に属するかを把握することである。
本実施形態において、第1タイヤモデル60と第2タイヤモデル80とは、前者が周方向に不均一な形状であり後者が周方向に均一な形状であるが、両者の寸法及び形状は略同一である。このため、第1タイヤモデル60と第2タイヤモデル80とは重ね合わせることができる。両者を重ね合わせたとき、第1タイヤモデル60が有する表面の節点61と、節点61が属する第2タイヤモデル80の要素82とは、両タイヤモデルの座標系(XYZ座標系又は円筒座標系等)を一致させることにより、把握することができる。処理部52は、第1タイヤモデル60及び第2タイヤモデル80を作成したときに、第1タイヤモデル60の表面の節点61がそれぞれ第2タイヤモデル80のどの要素82に属するかを求めておき、両者の関係を記憶部54に格納する。
第1タイヤモデル60の表面の節点61が第2タイヤモデル80の要素82に属するとき、節点61の変位は、例えば、複数の節点81A、81B、81C、81Dで構成される要素82の形状関数から求めることができる。第1タイヤモデル60は溝を有しているので、第1タイヤモデル60の溝壁や溝底に存在する節点は、第2タイヤモデル80の内部に存在することになる。この場合、溝壁や溝底に存在する節点は、第2タイヤモデル80の六面体要素や四面体要素等になるが、上述した例と同様に、前記節点の変位は、要素の形状関数から求めることができる。なお、節点61の変位を求める手法は、形状関数に限定されるものではない。解析結果変換部52cは、上述した手法により、第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の変位を第2タイヤモデル80が有する節点の情報(変位)から求め、記憶部54に格納する。
上述した手法によって、第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の変位が得られる。回転情報(より具体的には第1タイヤモデル60の回転情報)を求めるにあたり、解析結果変換部52cは、第1タイヤモデル60の各対応節点の位置を抽出する。具体的には、解析結果変換部52cは、接地時における第1タイヤモデル60のタイヤ表面の各節点のタイヤ周方向角度と座標との関係を算出する。その後、解析結果変換部52cは、算出した各節点の周方向における各節点の角度と座標との関係から、周方向に隣接する節点の情報を対応点の情報として抽出する。
すなわち、本実施形態において、解析結果変換部52cは、図6−1、図6−2に示すブロック62における一つの節点を対応節点70として特定し、各ブロック62の子午断面内において対応節点70と同じ位置に存在する節点をそれぞれのブロック62の対応節点70として、第1タイヤモデル60の周方向に対して一周分抽出する。そして、解析結果変換部52cは、それぞれの対応節点の周方向位置(回転軸を中心とした中心角で表される)と座標との関係を抽出する。ここで、図6−2では、ブロック62と対応節点70との関係を明確にするために、ブロック62の内部に対応節点70を示しているが、対応節点70は、ブロック62の表面の点(節点)である。
このように、周方向に延在している複数の対応節点の周方向位置と座標との関係を抽出すると、図11−1に示すように、径方向座標(径方向における変位)と周方向位置(すなわち回転軸を中心とした中心角)との関係を求めることができる。図11−1は、縦軸を径方向座標[mm]とし、横軸を角度[°]とした。この角度は、回転軸を中心とした中心角であり、対応節点の周方向位置に相当する。角度0°、360°が、路面から最も離れた位置(図6−1において、時計の12時の方向の位置)に相当し、角度180°が、路面に最も近い位置(図6−1において、時計の6時の方向の位置)である。また、径方向座標は、第1タイヤモデル60の接地対象面に直交する軸(図1のZ軸)の座標であり、第1タイヤモデル60の回転軸(Y軸)を基準(0mm)とした。図11−1に示す関係から、第1タイヤモデル60のブロック62の対応節点70が、どの周方向位置にあるかを求めることができる。図11−1では、径方向座標と周方向位置との関係を示したが、第1タイヤモデル60の接地対象面に平行、かつ幅方向に直交する方向、すなわち、図6−1における左右方向の座標と周方向位置との関係も同様に求めることができる。
次に、解析結果変換部52cは、各対応節点の周方向位置を時間に変換する。具体的には、解析結果変換部52cは、タイヤ転動速度を用いて、タイヤ周方向位置を時間に変換する。すなわち、タイヤ転動速度(°/s又はrad/s)が分かれば、1つの対応節点が一回転(360°)するのに要する時間が分かる。したがって、ある対応節点がある中心角だけ回転するのに要する時間も分かる。例えば、タイヤ転動速度がω[°/s]である場合、ある対応節点がθだけ回転するのに要する時間tは、θ/ωで求めることができる。解析結果変換部52cは、ある対応節点の周方向位置を基準(t=0)として、基準の周方向位置に対するそれぞれの対応節点の周方向位置θ(図9参照)を時間t(=θ/ω)に変換する。図11−2に示す例は、図11−1に示すθ=0を基準として、それぞれの対応節点の周方向位置θが時間に変換された結果である。これにより、図11−1に示す任意の対応節点の周方向位置と径方向座標との関係を、図11−2に示すように、1つの対応節点の時間と径方向座標との関係に変換できる。図11−2は、縦軸を径方向座標[mm]とし、横軸を時間[s]とした。
例えば、第1タイヤモデル60の転動速度が360°/sである場合、すなわち、第1タイヤモデル60が一回転するのに要する時間が1sである場合を考える。このとき、時間0sのときに周方向位置が0°である対応節点は、時間0.5sのときには角度180°の位置に回転移動し、時間1sのときには角度360°の位置に回転移動する。これにより、接地解析した結果から、各対応節点の各時間における位置を求めることができる。解析結果変換部52cは、第1タイヤモデル60の表面に存在するそれぞれの節点について、座標と回転角度との関係を座標と時間との関係に変換する。これにより、任意の時間において、第1タイヤモデル60の各節点がどの座標にあるかを知ることができる。このようにして、第1タイヤモデル60の回転情報が得られる。すなわち、前記回転情報は、第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の変位と時間との関係を示す情報である。なお、第1タイヤモデル60が同じピッチを繰り返して構成される場合、第1タイヤモデル60の各節点の座標と時間との関係は、1つのピッチ内にある表面の節点について座標と時間との関係を求めた後、他のピッチ内において対応する節点について、前記関係をピッチ間隔に対応する時間だけずらすことにより求めてもよい。
このようにして、第1タイヤモデル60の回転情報が得られる。第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の周方向位置又は時間に対する変化(変位)は、第2タイヤモデル80が有する節点の情報から求められる。したがって、回転情報、より具体的には、第1タイヤモデル60の回転情報は、第2タイヤモデル80が有する節点の周方向位置(回転軸を中心とした中心角で表される)を時間に変換することによって得られることになる。
上記例においては、第2タイヤモデル80が有する節点の情報を第1タイヤモデル60の表面の節点に付与してから、第1タイヤモデル60の回転情報を求めたが、第1タイヤモデル60の回転情報を求める手法はこれに限定されるものではない。例えば、第2タイヤモデル80が有する節点の変位と周方向位置との関係から、第2タイヤモデル80が有する節点の変位と時間との関係、すなわち回転情報(より具体的には第2タイヤモデル80の回転情報)を求める。そして、第1タイヤモデル60の節点と第2タイヤモデル80の節点との相対的な位置関係を用いて、得られた回転情報を第1タイヤモデル60の表面の節点に付与する。このような手法によって、第1タイヤモデル60の回転情報を得てもよい。第2タイヤモデル80の回転情報を求める手法は、図7−2に示す一つのピッチ(図7−2の点線で区画される領域)に存在する節点を対応節点81として特定し、ピッチの子午断面内において対応節点81と同じ位置に存在する節点をそれぞれのピッチの対応節点81として、第2タイヤモデル80の周方向に対して一周分抽出する。そして、それぞれの対応節点81の周方向位置(回転軸を中心とした中心角で表される)と座標との関係が抽出された後、前記関係が座標と時間との関係に変換される。
回転情報は、第1タイヤモデル60の節点の位置を表す情報に回転演算を施すことにより求めてもよい。第1タイヤモデル60の節点の位置を表す情報とは、第1タイヤモデル60の節点座標又は第1タイヤモデル60の節点を第2タイヤモデル80に投影した位置の座標を表す。そして、それらの座標情報に、時間と転動速度とに応じた回転演算を施すことで、回転情報を求めてもよい。本実施形態において、回転演算は、第1タイヤモデル60又は第2タイヤモデル80を実際に回転させるのではなく、例えば、ある節点がθだけ回転した場合、当該回転に相当する演算を前記節点の変位に施すことである。
例えば、解析結果変換部52cは、変形解析が終了した後における第2タイヤモデル80の節点の情報を、第1タイヤモデル60の節点と第2タイヤモデル80の節点との相対的な位置関係を用いて第1タイヤモデル60の表面の節点に付与する。そして、解析結果変換部52cは、第1タイヤモデル60の表面の節点に、回転演算を施すことにより、第1タイヤモデル60の回転情報を得る。また、解析結果変換部52cは、変形解析が終了した後における第2タイヤモデル80の節点の変位に回転演算を施すことにより、第2タイヤモデル80の回転情報を得る。そして、解析結果変換部52cは、得られた第2タイヤモデル80の回転情報を、第1タイヤモデル60の節点と第2タイヤモデル80の節点との相対的な位置関係を用いて第1タイヤモデル60の表面の節点に付与する。このようにして、第1タイヤモデル60の回転情報が得られる。
回転情報を求めるにあたって、解析結果変換部52cは、図10−1から図10−3に示すように、第2タイヤモデル80の外側に拡張領域84を設けてもよい。第1タイヤモデル60は、周方向に不均一な形状であるため、表面に凸部を有することがある。このため、要素分割の関係から、第1タイヤモデル60の表面に存在する節点は、第2タイヤモデル80の外側に存在することがある。図10−1に示す例においては、第2タイヤモデル80の表面に第1タイヤモデル60の節点61A、61Dが存在し、第2タイヤモデル80の表面に存在する節点81E、81Fの径方向外側に、第1タイヤモデル60の節点61B、61Cが存在する。
このような場合、第1タイヤモデル60の節点61B、61Cの座標を近似するために、解析結果変換部52cは、節点61B、61Cを含む第2タイヤモデル80の外側に拡張領域84を生成し、この拡張領域84を新たな要素として定義する。図10−1に示す例において、当該要素は、節点81E、81F、85B、85Aで構成される。解析結果変換部52cは、前記要素を構成する節点81E、81F、85B、85Aの情報から第2タイヤモデル80の外側に存在する第1タイヤモデル60の節点61B、61Cの情報を補間する。当該補間は、例えば、線形補間、2次補間、スプライン関数補間等を用いたり、前記要素の形状関数を用いたりすればよい。なお、図10−2に示す拡張領域84に定義した要素は、第2タイヤモデル80の接地形状に影響を与えないように、図10−3に示すように、路面モデル66との接触条件を考慮しない。その結果、路面モデル66を貫通した第1タイヤモデル60の節点は、路面モデル66の表面に最も近い位置に移動することになる。このようにすることで、第1タイヤモデル60の節点の変位情報を不足なく求めることができる。
図12は、タイヤの周辺のモデルの概略構成を示す斜視図である。処理部52は、ステップS16で回転情報が第1タイヤモデル60に付与されたら、ステップS18に進む。解析結果変換部52cは、ステップS18において、第1タイヤモデル60の表面形状の時系列データを作成する。具体的には、解析結果変換部52cは、ステップS16で求めた回転情報(すなわち、第1タイヤモデル60の表面に存在する節点の座標と時間との関係)を用いて、各時間における第1タイヤモデル60の表面形状(転動形状)を求める。すなわち、解析結果変換部52cは、節点の座標と時間との関係から、同じ時間における節点の座標(位置情報)を抽出することで、1つの時間における第1タイヤモデル60の表面形状を作成する。そして、解析結果変換部52cは、1つの時間における第1タイヤモデル60の表面形状の作成を繰り返すことで、第1タイヤモデル60の表面形状の時系列データを取得することができる。なお、本実施形態では、評価対象のタイヤを所定の回転速度で回転させる状態として周方向位置を時間に変換しているため、第1タイヤモデル60の表面形状の時系列データは、評価対象のタイヤが転動したときにおける前記タイヤの表面形状の時系列データとなる。上述したステップS16とステップS18とが、タイヤ転動形状作成ステップに相当する。
処理部52は、ステップS18で第1タイヤモデル60の表面形状の時系列データを作成したら、ステップS20に進む。解析・評価装置50の処理部52が備える第2モデル作成部52dは、ステップS20において、流体解析用モデル(空間モデルでありシミュレーションモデル)を作成する(第2モデル作成ステップ)。具体的には、第2モデル作成部52dは、ステップS18で作成された第1タイヤモデル60の表面形状の時系列データを用いて、各時間における前記表面形状の周囲に複数の流体メッシュ(要素)90を作成する(第2モデル作成ステップ)。このとき、第2モデル作成部52dは、転動形状に接する領域を含む領域を複数の要素に分割することにより、流体解析用モデルを作成する。
これにより、図12に示すように、第1タイヤモデル60の周囲に流体メッシュ90を形成することができる。また、流体解析用のモデルは、ホイールモデル64により、第1タイヤモデル60の内部の空間と、第1タイヤモデル60の外部の空間とが区画されている(分離されている)。また、第1タイヤモデル60は、路面モデル66に接地している。第1タイヤモデル60の内部の空間と、第1タイヤモデル60の外部の空間とを区画する場合、ホイールモデル64を用いなくてもよい。例えば、第1タイヤモデル60のビード部の径方向内側に存在する孔に、板状の解析モデルを取り付けてもよい。
処理部52は、ステップS20で流体解析用モデルを作成したら、ステップS22に進む。解析・評価装置50の処理部52が備える流体解析部52eは、ステップS22として、流体解析を行う。具体的には、ステップS20で作成した流体解析用モデルと各種の評価条件とに基づいて、評価対象のタイヤの周囲に存在する領域を流れる流体について解析する。なお、流体解析としては、空気の流れの解析や、空気抵抗の解析や、音の反響の解析や、気柱共鳴音などの流体騒音の解析がある。
処理部52は、ステップS22で流体解析が終了したら、ステップS24に進む。解析・評価装置50の処理部52が備える評価部52fは、ステップS24として、ステップS22の解析結果を評価する。具体的には、評価部52fは、流体解析の結果が条件に一致しているか、許容値を満たしているか否かを判定し、評価対象のタイヤの性能を評価する。評価部52fは、評価対象のタイヤの評価結果を数値で算出したり、合格、不合格等の評価で算出したりすることができる。処理部52は、評価対象のタイヤを評価したら、本処理を終了する。
このように、本実施形態のシミュレーションモデル作成方法及びシミュレーション方法は、接地状態と転動状態とで、タイヤの表面の形状は同じになると仮定し、接地状態で算出したタイヤ表面形状から転動状態のタイヤの表面形状に変換する。これにより、準静的な接地解析からタイヤの流体解析に用いるシミュレーションモデルを作成することができる。このように、接地解析を用いて、転動解析のタイヤ表面形状を予測し、作成することで、タイヤを転動解析してタイヤの表面形状を算出するよりも、計算量を少なくすることができる。その結果、計算時間を短縮することができる。
なお、本実施形態のように、準静的な接地解析に基づいて作成されたシミュレーションモデルを用いても、転動解析によりシミュレーションモデルを作成した場合と同等の結果を得ることができる。すなわち、本実施形態によって作成したシミュレーションモデルを用いた流体解析は、タイヤの解析モデルを転動解析して作成したシミュレーションモデルを用いた流体解析と同等の結果を得ることができる。このように、本実施形態は、シミュレーションの精度を維持しつつ、計算量を少なくすることができるので、シミュレーションの効率が向上する。なお、本実施形態のように評価対象のタイヤの周辺における流体解析を行う場合は、タイヤの表面形状を時系列データで取得すればよく、内部の応力分布等の情報は算出しなくてよい。なお、タイヤの表面形状は、タイヤの表面の節点(対応点等)の座標の情報である。
また、本実施形態では、周方向に均一な形状の第2タイヤモデルから得られる回転情報を第1タイヤモデルに付与し、この第1タイヤモデルを用いてタイヤの流体解析に用いるシミュレーションモデルを作成する。このため、複数の異なる第1タイヤモデルを作成し、これらの節点と第2タイヤモデルの節点との相対的な位置関係を把握しておけば、第2タイヤモデルの接地解析から得られた回転情報をそれぞれの第1タイヤモデルに付与するだけで、異なる第1タイヤモデルの表面形状の時系列データを得ることができる。そして、これらの表面形状の時系列データを用いて流体解析に用いるシミュレーションモデルを作成できる。したがって、本実施形態によれば、例えば、トレッドパターンが異なる複数のタイヤを評価する場合であっても、変形解析は一回で済む。このため、複数のタイヤを評価する場合でも、すべてのタイヤに対して変形解析を実行する必要はないので、計算時間を短縮できる。その結果、流体解析に用いるシミュレーションモデルを効率的に作成できるので、評価の効率が向上する。
なお、本実施形態では、いずれもシミュレーションモデルを作成した後、流体解析シミュレーションを行ったが、本実施形態はこれに限定されず、作成したシミュレーションモデルを他のシミュレーションに用いてもよい。また、流体解析は、他の装置で行うようにしてもよい。また、本実施形態では、解析結果の評価を行ったが、評価部による評価は行わなくてもよい。
なお、ステップS20で第1タイヤモデル60の周囲に作成する流体メッシュ90は、実行する流体解析によって種々のメッシュとすることができる。具体的には、差分法に用いるメッシュを作成することも、有限要素法に用いるメッシュを作成することもできる。なお、本実施形態では、メッシュを作成したが、タイヤ周辺の流体解析に用いるモデルを作成することができれば、メッシュに限定されない。すなわち、第1タイヤモデル60の周囲を要素分割しない空間モデルを用いて流体解析が実行されてもよい。また、流体解析用モデルは差分法を対象とした構造格子(直交格子)で構成されていてもよいし、有限体積法や有限要素法を対象とした非構造格子で構成されていてもよい。
本実施形態に係るタイヤのシミュレーション方法は、ステップS12の接地解析において、第2タイヤモデル80にホイールモデル64を装着したが、ホイールモデル64が装着されない第2タイヤモデル80を路面モデル66に接地させて、接地解析を実行してもよい。また、ホイールモデル64は、ステップS22の流体解析時に、第1タイヤモデル60の内部の領域と、第1タイヤモデル60の外部の領域とを区画できればよいので、上述したものに限定されるものではない。なお、ホイールモデル64は、必要に応じて形状を設定すればよく、実際のホイールを忠実に再現した詳細な形状とすることもできる。
図13は、第1タイヤモデルの表面に存在する節点の周方向位置を時間に変換した他の例を示す説明図である。本実施形態において、回転情報(第1タイヤモデル60の回転情報)は、第1タイヤモデル60の周方向に隣接するピッチに存在する節点(対応節点)間の情報(変位と時間(位置)との関係)を補間することにより求められてもよい。例えば、図13に示す丸の点の径方向座標及び周方向位置情報に基づいて補間をすることで、三角の点の径方向座標を取得することができる。このようにすれば、第1タイヤモデル60の任意の時間における転動形状をより詳細にかつ精度よく求めることができる。補間には、線形補間、2次補間、スプライン関数補間等を用いることができる。
図14は、流体解析用モデルの他の例を示す概略構成図である。図15−1は、図14に示す流体解析用モデルの一部を拡大して示す拡大図である。図15−2は、図14に示す流体解析用モデルの一部を拡大して示す拡大図である。流体解析用モデル(空間モデル)は、流体メッシュ101が第1タイヤモデル60の周囲に形成され、第1タイヤモデル60の表面形状の時間変化(転動形状)に応じて要素構造が変化する第1要素領域102と、第1要素領域102の外周に形成され、要素構造が変化しない第2要素領域104とを含むことが好ましい。流体メッシュ101は、第1タイヤモデル60の周囲に形成されている。また、本流体解析用モデルは、ホイールモデル64及び路面モデル66も有している。本実施形態においては、第1要素領域102に属する要素の寸法は、第2要素領域104に属する要素の寸法よりも小さい。このような構造により、第1タイヤモデル60の表面に近い境界層(速度境界層や温度境界層等)の現象を精度よくシミュレーションできる。
第1要素領域102は、第1タイヤモデル60の外周の全域に設けられている。また、第2要素領域104は、第1要素領域102の外側、すなわち、第1要素領域102よりも第1タイヤモデル60から径方向外側に離れた領域に設けられている。第1要素領域102は、第1タイヤモデル60の形状に応じて要素構造、より具体的には要素の形状及が変化する。本実施形態においては、図15−1に示す第1タイヤモデル60が、1ピッチ分に対応する回転角よりも狭い角度分回転し、図15−2に示す第1タイヤモデル60の位置になると、第1タイヤモデル60の形状の変化に応じて、第1要素領域102から第1要素領域102aに要素の形状が変化する。すなわち、図15−2に示す第1要素領域102aは、図15−1に示す第1要素領域102とは異なる形状となる。これに対して、第2要素領域104は、第1タイヤモデル60の形状によらず一定のメッシュとなる。すなわち、図15−2に示す第2要素領域104は、図15−1に示す第2要素領域104と同じ形状となる。
このように、流体解析用モデルは、第1タイヤモデル60の周囲に形成され、第1タイヤモデル60の形状の時間変化に応じて要素構造が変化する第1要素領域と、第1要素領域の外周に形成され、第1タイヤモデル60の形状の時間変化に応じて要素構造が変化しない第2要素領域とを含む。このような構造により、流体解析用モデルは、第1タイヤモデル60の形状の時間変化に応じて要素を再形成する領域を少なくすることができる。これにより、流体解析用モデルを作成する際に、流体解析用モデルが有するすべての要素を再生成する必要はなくなるため、解析・評価装置50は要素を生成する負担が低減される。
また、第1タイヤモデル60の形状に対する要素の形成位置を固定する、すなわち、第1タイヤモデル60とともに第1要素領域102を回転させることで、第1タイヤモデル60の形状とメッシュとの関係を一定に保つことができる。また、第1要素領域102と第2要素領域104との境界を、第1要素領域102の回転に関わらず一定としてもよい。このようにすることで、時系列毎に流体解析用モデルの要素を生成することなく、流体解析用モデルを作成することができる。
なお、流体解析時には、第1要素領域102と第2要素領域104との間で物理量の受け渡しが行われる。また、本実施形態では、第1要素領域102の境界と第2要素領域104の境界とを一致させたが、第1要素領域102の境界と第2要素領域104の境界とは一致しなくてもよい。すなわち、第1要素領域102と第2要素領域104との境界が一部重なるようにしてもよい。
図16は、本実施形態の他の例に係る流体解析用モデルの概略構成を示す斜視図である。上述した実施形態では、第1タイヤモデル60及びホイールモデル64及び路面モデル66の周囲に存在する空間の流体解析を行ったが、前記周囲に存在する空間に、他の物体の解析モデルを設けるようにしてもよい。例えば、解析対象のタイヤが装着される車両又は当該車両の一部を解析モデル化し、当該解析モデルと第1タイヤモデル60の転動形状とに接した領域を含む領域を、複数の要素に分割して流体解析用モデル(空間モデル)を作成してもよい。また、その流体解析用モデルを用いて流体解析を実行してもよい。
本変形例では、第1タイヤモデル60の周囲に存在する対象物(タイヤハウスやタイヤ試験器等)の対象物表面情報を用いて得られる対象物表面領域を用いて流体解析用モデル210を作成する。すなわち、タイヤ境界領域及び路面モデル66の表面情報から得られる接触表面領域に加えて、さらに1以上の境界を設ける。実際にタイヤを転動させる際には、車体が有するホイールハウスやサスペンションアーム等の部材がタイヤの近傍に設けられている。また、タイヤを試験する場合、試験装置がタイヤの近傍に配置される。車体が有する部材や試験装置等は、タイヤが発生した放射音を反射したり吸収したりする。また、車体が有する部材や試験装置等は、タイヤの周辺における空気の流れに影響を及ぼしたりする。したがって、前記部材や試験装置等を流体解析用モデル210が有する境界として追加することにより、より実際の事象に近い状態を再現できる。
図16に示す流体解析用モデル210は、仮想的な境界である半球領域220で区画されるタイヤ周辺空間222内に、対象物としてタイヤハウスモデル224を設置し、このタイヤハウスモデル224の表面に、境界としての対象物表面領域を設けている。このように表面に境界条件が設定されたタイヤハウスモデル224が設けられた流体解析用モデル210が複数の要素で分割されることにより、流体解析用モデル210が作成される。
このように、タイヤ周辺空間222内に、タイヤの近傍に存在する部材を解析モデル化して配置し、前記解析モデルの表面に対象物表面領域を設定することで、評価対象のタイヤの周囲における空気の流れや音の解析をより実際の状態に近い条件で解析することができる。なお、他の解析モデルは複数設けられていてもよい。例えば、タイヤハウスモデル224に加えて車軸の解析モデルやサスペンションアームの解析モデル等を追加してもよい。