以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機1ついて説明する。なお、以下では、パチンコ遊技機1を、単に、遊技機1という場合がある。
[パチンコ遊技機1の概略構成]
図1は、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機1の一例を示す概略正面図である。以下、図1を参照して、本発明の一実施形態に係るパチンコ遊技機1の概略構成について説明する。
図1において、遊技機1は、例えば遊技者の指示操作により打ち出された遊技球が入賞すると賞球を払い出すように構成されたパチンコ遊技機である。この遊技機1は、遊技球が打ち出される遊技盤2と、遊技盤2を囲む枠部材5とを備えている。枠部材5は、軸支側に設けられた蝶番を中心に、遊技機1の主部に対して開閉可能に構成され、遊技盤2に対して着脱自在に取り付けられている。そして、枠部材5の前面側となる所定位置(例えば、軸支側とは反対側となる端部)には錠部43が設けられており、錠部43を開錠することによって枠部材5を開くことが可能となる。
遊技盤2は、その前面に、遊技球により遊技を行うための遊技領域20が形成されている。図3を用いて後述するが、遊技領域20は、下方(発射装置211;図2参照)から発射された遊技球を、遊技盤2の主面に沿って上昇させて遊技領域20の上部位置へ案内する通路62を形成するガイドレール60及び61を備えている。
また、遊技盤2には、遊技者により視認され易い位置に、各種演出のための画像を表示する画像表示器21が配設されている。画像表示器21は、遊技者による遊技の進行に応じて、例えば、装飾図柄を表示することによって特別図柄抽選(大当たり抽選)の結果を遊技者に報知したり、キャラクタの登場やアイテムの出現による予告演出を表示したり、特別図柄抽選結果報知の実行が保留されている回数を示す保留画像を表示したりする。なお、画像表示器21は、液晶表示装置やEL(Electro Luminescence:電界発光)表示装置等によって構成されるが、他の任意の表示装置を利用してもよい。さらに、遊技盤2の前面には、各種の演出に用いられる可動役物22および盤ランプ23が設けられている。
遊技領域20には、遊技球が下方へ落下する方向を変化させる遊技くぎおよび風車(共に、図示せず)等が配設されている。また、遊技領域20には、入賞や抽選に関する種々の役物が所定の位置に配設されている。なお、図1においては、入賞や抽選に関する種々の役物の一例として、第1始動口25a、第2始動口25b、ゲート27、大入賞口28、および普通入賞口29が遊技盤2に配設されている。さらに、遊技領域20には、遊技領域20に打ち出された遊技球のうち何れの入賞口にも入賞しなかった遊技球を、遊技領域20の外に排出する排出口24が配設されている。
第1始動口25aおよび第2始動口25bは、それぞれ遊技球が入ると入賞して特別図柄抽選(大当たり抽選)が始動する。第1始動口25aは、予め定められた特別電動役物(大入賞口28)および/または表示器3の所定部分を作動させることとなる、遊技球の入賞に係る入賞口である。また、第2始動口25bは、上記特別電動役物(大入賞口28)および/または後述する表示器3の所定部分を作動させることとなる、遊技球の入賞に係る入賞口である。ゲート27は、遊技球が通過すると普通図柄抽選(下記電動チューリップ26の開閉抽選)が始動する。
第2始動口25bは、第1始動口25aの下部に設けられ、普通電動役物の一例として、遊技球の入口近傍に電動チューリップ26を備えている。電動チューリップ26は、チューリップの花を模した一対の羽根部を有しており、後述する電動チューリップ開閉部112(例えば、電動ソレノイド)の駆動によって当該一対の羽根部が左右に開閉し、開閉動作と共に点灯または点滅する。電動チューリップ26は、一対の羽根部が閉じていると、第2始動口25bの入口へ案内される開口幅が極めて狭いため、遊技球が第2始動口25bへ入らない状態となる。一方、電動チューリップ26は、一対の羽根部が左右に開くと、第2始動口25bの入口へ案内される開口幅が拡大するため、遊技球が第2始動口25bへ入り易くなるように構成されている。そして、電動チューリップ26は、ゲート27を遊技球が通過して普通図柄抽選に当選すると、点灯または点滅しながら一対の羽根部が規定時間開き、規定回数だけ開閉する。
大入賞口28は、第2始動口25bの下方に位置し、特別図柄抽選の結果に応じて開放する。大入賞口28は、通常は閉状態であり遊技球が入ることがない状態となっているが、特別図柄抽選の結果に応じて遊技盤2の主面から突出傾斜して開状態となって遊技球が入り易い状態となる。例えば、大入賞口28は、所定条件(例えば、29.5秒経過または遊技球9個の入賞)を満たすまで開状態となるラウンドを、所定回数だけ繰り返す。なお、普通入賞口29は、遊技球が入賞しても抽選が始動しない。
また、遊技盤2の所定位置(例えば、右下)に、上述した特別図柄抽選や普通図柄抽選の結果や保留数に関する表示を行う表示器3が配設されている。
ここで、賞球の払い出しについて説明する。第1始動口25a、第2始動口25b、大入賞口28、および普通入賞口29に遊技球が入る(入賞する)と、遊技球が入賞した場所に応じて、1つの遊技球当たり規定個数の賞球が払い出される。例えば、第1始動口25aおよび第2始動口25bに遊技球が1個入賞すると4個の賞球、大入賞口28に遊技球が1個入賞すると13個の賞球、普通入賞口29に遊技球が1個入賞すると10個の賞球がそれぞれ払い出される。なお、ゲート27を遊技球が通過したことを検出しても、それに連動した賞球の払い出しは無い。
遊技機1の前面となる枠部材5には、ハンドル51、レバー52、停止ボタン53、取り出しボタン54、スピーカ55、枠ランプ56、演出ボタン57、演出キー58、皿59、および錠部43等が設けられている。
遊技者がハンドル51に触れてレバー52を時計回りに回転させる操作を行うと、その操作角度に応じた打球力にて所定の時間間隔(例えば、1分間に100個)で、発射装置211(図2参照)が遊技球を電動発射する。皿59は、遊技機1の前方に突出して設けられ、発射装置211に供給する遊技球を一時的に溜めておく。また、皿59には、上述した賞球が払い出される。そして、皿59に溜められた遊技球は、遊技者のレバー52による操作と連動したタイミングで、供給装置(図示せず)によって1つずつ発射装置211に供給される。
停止ボタン53は、ハンドル51の下部側面に設けられ、ハンドル51に遊技者が触れてレバー52を時計回りに回転させている状態であっても、遊技者に押下されることによって遊技球の発射を一時的に停止させる。取り出しボタン54は、皿59が設けられた位置近傍の前面に設けられ、遊技者に押下されることによって皿59に溜まっている遊技球を箱(図示せず)に落下させる。
スピーカ55および枠ランプ56は、それぞれ遊技機1の遊技状態や状況を告知したり各種の演出を行ったりする。
また、遊技機1の背面側には、払出用の遊技球を溜めておく球タンクや遊技球を皿59に払い出す払出装置(払出駆動部311)が設けられ、各種の基板等が取り付けられている。例えば、遊技盤2の後面には、メイン基板およびサブ基板等が配設されている。具体的には、メイン基板には、内部抽選および当選の判定等を行うメイン制御部100(図2参照)が構成されたメイン制御基板が配設されている。サブ基板には、遊技球を遊技領域20の上部へ発射する発射装置211を制御する発射制御部200(図2参照)が構成された発射制御基板、賞球の払出を制御する払出制御部300が構成された払出制御基板、演出を統括的に制御する演出制御部400が構成された演出制御基板、画像および音による演出を制御する画像音響制御部500が構成された画像制御基板、および各種のランプ(枠ランプ56、盤ランプ23)や可動役物22による演出を制御するランプ制御部600が構成されたランプ制御基板等が配設されている。また、遊技盤2の後面には、遊技機1の電源オン/オフを切り替えるとともに、遊技機1に供給された24V(ボルト)の交流電力を各種電圧の直流電力に変換して、それぞれの電圧の直流電力を上述した各種の基板等に出力するスイッチング電源が配設されている。
[パチンコ遊技機1の制御装置の構成]
図2は、パチンコ遊技機1に設けられた制御装置の構成の一例を示すブロック図である。以下、図2を参照して、パチンコ遊技機1における動作制御や信号処理を行う制御装置について説明する。
図2に示すように、遊技機1の制御装置は、メイン制御部100、発射制御部200、払出制御部300、演出制御部400、画像音響制御部500、およびランプ制御部600等を備えている。
メイン制御部100は、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)101、ROM(Read Only Memory)102、およびRAM(Random Access Memory)103を備えている。CPU101は、内部抽選および当選の判定等の払い出し賞球数に関連する各種制御を行う際の演算処理を行う。ROM102は、CPU101にて実行されるプログラムや各種データ等が記憶され、RAM103は、CPU101の作業用メモリ等として用いられる。以下、メイン制御部100の主な機能について説明する。
メイン制御部100は、第1始動口25aまたは第2始動口25bに遊技球が入賞すると特別図柄抽選(大当たり抽選)を行い、特別図柄抽選で当選したか否かを示す判定結果データを演出制御部400に送る。
メイン制御部100は、電動チューリップ26の羽根部が開状態となる開時間や羽根部が開閉する回数、さらには羽根部が開閉する開閉時間間隔を制御する。また、メイン制御部100は、遊技球が第1始動口25aへ入賞したときの特別図柄抽選の結果の報知保留回数、遊技球が第2始動口25bへ入賞したときの特別図柄抽選の結果の報知保留回数、および遊技球がゲート27を通過したときの普通図柄抽選の結果の報知保留回数をそれぞれ管理し、これらの保留回数に関連するデータを演出制御部400に送る。
メイン制御部100は、特別図柄抽選の結果に応じて、大入賞口28の開閉動作を制御する。例えば、メイン制御部100は、所定条件(例えば、29.5秒経過または遊技球9個の入賞)を満たすまで、大入賞口28が突出傾斜して開状態となるラウンドを所定回数(例えば15回)だけ繰り返すように制御する。また、メイン制御部100は、大入賞口28が開閉する開閉時間間隔を制御する。
メイン制御部100は、第1始動口25a、第2始動口25b、大入賞口28、および普通入賞口29に遊技球が入賞すると、遊技球が入賞した場所に応じて1つの遊技球当たり所定数の賞球を払い出すように、払出数を払出制御部300に対して指示する。なお、メイン制御部100は、ゲート27を遊技球が通過したことを検出しても、それに連動した賞球の払い出しを払出制御部300に指示しない。払出制御部300がメイン制御部100の指示に応じて賞球の払い出しを行った場合、払出制御部300から払い出した賞球の個数に関する情報がメイン制御部100へ送られる。そして、メイン制御部100は、払出制御部300から取得した情報に基づいて、払い出した賞球の個数を管理する。
メイン制御部100は、発射制御部200を介して、遊技球を発射する発射装置211を制御する。例えば、メイン制御部100は、所定の条件に基づいて、発射装置211が遊技球を発射する動作を許可する信号を、払出制御部300を介して発射制御部200へ送信する。
上述した機能を実現するために、メイン制御部100には、第1始動口スイッチ111a、第2始動口スイッチ111b、電動チューリップ開閉部112、ゲートスイッチ113、大入賞口スイッチ114、大入賞口開閉部115、普通入賞口スイッチ116、表示器3が接続されている。
第1始動口スイッチ111aは、第1始動口25aへ遊技球が入賞したことを検出して、その検出信号をメイン制御部100へ送る。第2始動口スイッチ111bは、第2始動口25bへ遊技球が入賞したことを検出して、その検出信号をメイン制御部100へ送る。電動チューリップ開閉部112は、メイン制御部100から送られる制御信号に応じて、電動チューリップ26の一対の羽根部を開閉する。ゲートスイッチ113は、ゲート27を遊技球が通過したことを検出して、その検出信号をメイン制御部100へ送る。大入賞口スイッチ114は、大入賞口28へ遊技球が入賞したことを検出して、その検出信号をメイン制御部100へ送る。大入賞口開閉部115は、メイン制御部100から送られる制御信号に応じて、大入賞口28を開閉する。普通入賞口スイッチ116は、普通入賞口29へ遊技球が入賞したことを検出して、その検出信号をメイン制御部100へ送る。
また、メイン制御部100は、第1始動口25aへの遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選(以下、第1特別図柄抽選という場合がある)の結果を、表示器3の所定部分に表示する。メイン制御部100は、第2始動口25bへの遊技球の入賞により始動した特別図柄抽選(以下、第2特別図柄抽選という場合がある)の結果を、表示器3の所定部分に表示する。メイン制御部100は、第1特別図柄抽選結果報知を保留している保留回数を、表示器3の所定部分に表示する。メイン制御部100は、第2特別図柄抽選結果報知を保留している保留回数を、表示器3の所定部分に表示する。メイン制御部100は、ゲート27への遊技球の通過により始動した普通図柄抽選の結果を、表示器3の所定部分に表示する。そして、メイン制御部100は、普通図柄抽選結果報知を保留している保留回数を、表示器3の所定部分に表示する。
発射制御部200は、CPU201、ROM202、およびRAM203を備えている。CPU201は、発射装置211に関連する各種制御を行う際の演算処理を行う。ROM202は、CPU201にて実行されるプログラムや各種データ等を記憶しており、RAM203は、CPU201の作業用メモリ等として用いられる。
レバー52は、その位置が中立位置にある場合、信号を出力せずに発射停止状態となる。そして、レバー52は、遊技者によって時計回りに回転操作されると、その回転角度に応じた信号を打球発射指令信号として発射制御部200に出力する。発射制御部200は、打球発射指令信号に基づいて、発射装置211の発射動作を制御する。例えば、発射制御部200は、レバー52の回転角度が増すほど、遊技球が発射される速度が速くなるように、発射装置211の動作を制御する。また、発射制御部200は、メイン制御部100から発射を許可する信号を受信することによって、発射装置211の発射動作が可能となる。一方、発射制御部200は、停止ボタン53が押下された信号が出力されたり、メイン制御部100から発射を停止する制御信号が出力されたりした場合、発射装置211が遊技球を発射する動作を停止させる。
払出制御部300は、CPU301、ROM302、およびRAM303を備えている。CPU301は、払出球の払い出しを制御する際の演算処理を行う。ROM302は、CPU301にて実行されるプログラムや各種データ等を記憶しており、RAM303は、CPU301の作業用メモリ等として用いられる。
払出制御部300は、メイン制御部100から送られたコマンドに基づいて、払出球の払い出しを制御する。具体的には、払出制御部300は、メイン制御部100から、遊技球が入賞した場所に応じた所定数の賞球を払い出すコマンドを取得する。そして、コマンドに指定された数だけの賞球を払い出すように払出駆動部311を制御する。ここで、払出駆動部311は、遊技球の貯留部(球タンク)から遊技球を送り出す駆動モータ等で構成される。
演出制御部400は、CPU401、ROM402、RAM403、およびRTC(リアルタイムクロック)404を備えている。また、演出制御部400は、演出ボタン57および演出キー58が接続され、遊技者が押下する操作に応じて演出ボタン57および演出キー58からそれぞれ出力される操作データを取得する。CPU401は、演出を制御する際の演算処理を行う。ROM402は、CPU401にて実行されるプログラムや各種データ等を記憶しており、RAM403は、CPU401の作業用メモリ等として用いられる。RTC404は、現時点の日時を計測する。
演出制御部400は、メイン制御部100から送られる特別図柄抽選結果等を示すデータに基づいて、演出内容を設定する。また、演出制御部400は、遊技者によって演出ボタン57または演出キー58が押下操作された場合、当該操作入力や検出結果に応じて演出内容を設定する場合もある。
画像音響制御部500は、CPU501、ROM502、およびRAM503を備えている。CPU501は、演出内容を表現する画像および音響を制御する際の演算処理を行う。ROM502は、CPU501にて実行されるプログラムや各種データ等を記憶しており、RAM503は、CPU501の作業用メモリ等として用いられる。
画像音響制御部500は、演出制御部400から送られたコマンドに基づいて、画像表示器21に表示する画像およびスピーカ55から出力する音響を制御する。
ランプ制御部600は、CPU601、ROM602、およびRAM603を備えている。CPU601は、盤ランプ23や枠ランプ56の発光、および可動役物22の動作を制御する際の演算処理を行う。ROM602は、CPU601にて実行されるプログラムや各種データ等を記憶しており、RAM603は、CPU601の作業用メモリ等として用いられる。
ランプ制御部600は、演出制御部400から送られたコマンドに基づいて、盤ランプ23や枠ランプ56の点灯/点滅や発光色等を制御する。
[本実施形態による特徴的構造]
次に、本実施形態による特徴的構造について説明する。
図3は、パチンコ遊技機1が備える遊技盤2の一例を示す図である。まず、図3を用いて、本実施形態によって防止する、釣り糸やピアノ線等の線材を遊技球に取り付けて不正に入賞を繰り返す不正行為(以下、線材不正行為という)の概要について説明する。
線材不正行為が行われる場合、不正な遊技者(以下、不正者という)は、遊技球65の一端に線材64を取り付け、線材64の他端を手で持って遊技球65を皿59(図1参照)に入れる。そして、不正者は、レバー52(図1参照)を操作して遊技球65を遊技領域20に打つ出す操作を行う。このことによって、図3に示すように、遊技球65は、発射装置211(図示なし)によって白抜き矢印で示される方向に打ち出される。打ち出された遊技球65は、外側ガイドレール60及び内側ガイドレール61によって形成される経路62を通って、遊技領域20の上部に打ち出される。遊技領域20の上部に打ち出された遊技球65は、図示しない遊技くぎ及び風車等に当たって方向を変えながら遊技領域20を流下する。図3では、一例として、流下する遊技球65が第1始動口25aに入賞する(入る)時点を示している。図3に示すように遊技球65が第1始動口25aに入賞すると、第1始動口25aの内部に配置された第1始動口SW111a(図2参照)は、遊技球65を検出する。この結果として、特別図柄抽選が1回実行され、又、1回の入賞に対応する賞球が払い出されることになる。ここで、不正者は、線材64の他端を手で引っ張った後に戻す動作(以下、不正動作という)を繰り返すことによって、第1始動口25aに入賞して第1始動口SW111aによって一旦検出された遊技球65を、第1始動口25aの内部で往復移動させる。このことによって、不正者は、第1始動口SW111aに何度も遊技球65を検出させて、不正に特別図柄抽選を実行させ、又、不正に賞球を得ることとなる。
以下では、図4〜図6を用いて、線材不正行為について詳しく説明する。
図4は、第1始動口SW111a、第2始動口SW111b、ゲートSW113、大入賞口SW116、又は普通入賞口SW116(図2参照)として使用される遊技球の通過を検出する通過センサ(検出部)66の一例を説明するための図である。まず、図4を参照して、通過センサ66の一例について説明する。図4(1)に示すように、通過センサ66は、一例として、直方体形状等の誘導型近接スイッチであり、遊技球を通過させる円筒状の貫通穴を有する。図4(2)は、図4(1)の通過センサ66のA−A’断面である。図4(2)に示すように、通過センサ66は、円筒状の貫通穴の近傍に磁界(点線で示す)を発生させる検出コイルを備えており、電磁誘導作用を利用して遊技球の接近(通過)を検出する。内、図4(1)及び(2)では、通過する遊技球を点線で示している。図4(3)は、図4(1)に示す通過センサ66のA−A’断面であり、この通過センサ66の検出領域Xについて説明するための図である。通過センサ66は、検出コイルによって発生させた磁界(図4(2)参照)の変化を用いて、図4(3)に示す検出領域X内に遊技球が存在するか否かを検出する。より具体的には、通過センサ66は、図4(3)に示す位置A〜位置Bまでの範囲(領域)に遊技球が存在するか否かを検出する。そして、メイン制御部100(図2参照)は、通過センサ66によって、検出領域Xに遊技球が存在することを検出した後に遊技領域Xに遊技球が存在しないことを検出した場合に、遊技球が通過したと判定する。
図5は、第1始動口25a周辺の線材不正行為を防止できない従来構造を説明するための図である。図5(1)は、第1始動口25a周辺の線材不正行為を防止できない従来構造の縦断面図である。図5(1)に示すように、第1始動口25aに入賞した(入った)遊技球は、この遊技球を通過センサ66の貫通穴に導く経路71(以下、入口側経路71という)と、入口側経路71に貫通穴の入口側が連結された通過センサ66と、この貫通穴の出口側が連結された経路72(以下、出口側経路72という)を通過して、遊技球を遊技機1の外部に排出するための所定位置(図示せず)に落下する。このことによって、第1始動口25aに入賞した遊技球は、検出領域Xを通過して通過センサ66にその通過を検出されることとなる。以下では、入口側経路71と通過センサ66と出口側経路72とで構成される経路を、検出経路73という。なお、入口側経路71及び出口側経路72は、それぞれ、筒形状をしている。また、図5(1)では、検出経路73の内部を通過する遊技球を、点線の円で表している。図5(2)は、出口側経路72の出口部分74を、図5(1)のMの方向から見た図である。図5(3)は、図5(1)を用いて説明した出口側経路72の出口部分74を、図5(1)のNの方向から見た図である。なお、図5(1)は断面図であるが、図5(2)及び(3)は、説明の便宜のため、断面図ではない。図5(2)及び(3)から解るように、出口側経路72の出口部分74は、筒形状の出口側経路72を、単に直線的にカットした形状である。
図6は、図5を用いて説明した従来構造において行われる線材不正行為について詳しく説明するための図である。図3を用いて説明したように、不正者は、線材64の一端を取り付けた遊技球65(以下、不正遊技球65という場合がある)を、線材64の他端を手で持った状態で遊技領域20に打ち出して、第1始動口25aに入賞させる。第1始動口25aに入賞した遊技球65は、検出経路73内の検出領域Xを通過し、検出経路73の出口から一旦出る。図6に示す位置Eの遊技球65は、検出経路73の出口から出た時点の遊技球65を示している。その後、不正者は、手に持った線材64の他端を引っ張ることによって、位置E又はそれよりも下流に在る遊技球65を、検出領域Xよりも上流の位置Cまで引っ張り上げる。そして、不正者は、引っ張り上げた線材64を戻すことによって、検出領域Xよりも下流の位置D又は更にそれより下流に、遊技球65を落下させる。不正者は、この不正動作を繰り返すことによって、遊技球65に検出領域Xを何度も通過させる。この結果として、不正に特別図柄抽選が実行され、又、不正に賞球が払い出されることとなり、不正者は、不正な利益を得ることとなる。
図7は、第1始動口25a周辺の線材不正行為を防止する本実施形態の特徴的構造を説明するための図である。図7(1)は、第1始動口25a周辺の線材不正行為を防止する構造の縦断面図である。図7(1)に示す構造は、図5(1)に示す従来構造と対応している。しかし、図7(1)に示す構造は、図5(1)に示す従来構造に対して、検出経路73を構成する出口側経路72が出口側経路75に置き換わっている。出口側経路75は、出口側経路72に対して、出口部分74の形状に特徴を有する点で異なる。図7(2)は、出口側経路75の出口部分74を、図7(1)のMの方向から見た図である。図7(3)は、出口側経路75の出口部分74を、図7(1)のNの方向から見た図である。なお、図7(1)は断面図であるが、図7(2)及び(3)は、説明の便宜のため、断面図ではない。図7(2)及び(3)に示すように、出口側経路75の出口部分74は、出口側経路75の出口方向が大きく開口したV字形状の切れ込み76を有する。以下では、この切れ込み76を有する出口側経路75の出口部分74を、戻り防止部77という。
図8は、図7を用いて説明した戻り防止部77によって、線材不正行為が防止される仕組みについて説明するための図である。また、図8の(1)〜(3)は、図7の(1)〜(3)の構造を示している。以下に、図8を参照して、図7に示した戻り防止部77によって、線材不正行為が防止される仕組みについて説明する。不正者が、検出経路73を一旦通過した位置Fの不正遊技球65を、線材64の他端を引っ張ることによって再び検出領域Xまで引き上げようとした場合を考える。この場合、図8(1)に示すように、位置Fの遊技球65は、線材64によって検出経路73の方向に引き上げられるが、戻り防止部77に引っかかって、それ以上は引き上げられることはない。以下、図8(2)及び(3)も用いて、より具体的に説明する。図8(2)は、戻り防止部77を、図8(1)のMの方向から見た図である。図8(3)は、戻り防止部77を、図7(1)のNの方向から見た図である。なお、図8(1)は断面図であるが、図8(2)及び(3)は、説明の便宜のため、断面図ではない。まず、検出経路73を一旦通過した位置Fの遊技球65が線材64によって検出経路73の方向に引き上げられると、線材64は、戻り防止部77の切れ込み76の内側に引き込まれる。その後、更に線材64が引っ張られると、遊技球65は、更に引き上げられる。しかし、線材64は戻り防止部77の切れ込み76の内側に引き込まれているので、図8(1)〜(3)に示すように、遊技球65は、位置Gにおいて戻り防止部77の切れ込み76に当接し(干渉し)、それ以上上流へは引き上げられることはない。このことから、遊技球65は、一旦通過した検出領域Xに戻ることはなく、この結果として、不正者は不正な利益を得ることはできない。
図9及び図10は、図7及び図8を用いて説明した戻り防止部77を設置するのに最も好ましい位置を説明するための図である。
ここで、不正者は、線材不正行為を行う際に、線材64を十分たるませて遊技球65を遊技領域20に打ち出す必要がある。これは、図3からも解るように、線材64のたるみが少ないと不正者が意図する始動口等まで遊技球65が届かないためである。このことから、不正遊技球65は、第1始動口25aに入賞した後、極めて高い確率で、図8(1)に示す検出経路73を一旦通過して位置F又はそれより下流まで移動する(落ちる)。この結果として、線材不正行為の殆ど全ては防止される。
しかしながら、もし仮に、線材64のたるみが少ないために不正遊技球65が戻り防止部77よりも上流で止まった場合、不正者が検出領域Xと戻り防止部77との間で不正遊技球65を往復させることによって線材不正行為が実行されてしまうおそれがある(図8参照)。
図9は、検出領域Xと戻り防止部77との間で不正遊技球65を往復させることによる上記した線材不正行為をも防止できる境界である戻り防止部77の位置(以下、境界位置という)を示している。図9(1)〜(3)は、図8(1)〜(3)に対応する。但し、図9(1)には、図8(1)に示した通過センサ66が図示されていない。これは、図8(1)に示す通過センサ66(図4参照)を用いた上で、戻り防止部77を上記した線材不正行為をも防止できる位置に配置した場合には、この通過センサ66が検出経路73を通過する遊技球と干渉してしまうからである。そのため、図9(1)の構造では、図8(1)に示した通過センサ66と同一の検出領域Xを有し、検出経路73を通過する遊技球と干渉しない形状の通過センサ(66)が使用される。この通過センサは、例えば、図4に示す誘導型近接スイッチのタイプであって、遊技球を通過させる貫通穴が図4に示す丸形状ではなくU字形状(つまり、貫通穴の側面が開放された形状)のものであって、検出経路73を通過する遊技球と干渉しない形状のものである。また、この通過センサは、例えば、検出経路73を通過する遊技球に光が遮られることを利用して遊技球の通過を検出する光センサであって、検出経路73を通過する遊技球と干渉しない形状のものである。
図9(1)〜(3)に示すように、戻り防止部77の境界位置は、下端が検出領域Xの下端に位置する位置Hの遊技球65が、遊技球65の中心Oを通る平面と戻り防止部77の下側面とが一致する状態で切れ込み76に挟まれる位置である。
図9(1)〜(3)から解るように、戻り防止部77がこの境界位置及びそれよりも上側に配置された場合、不正者が線材64を引っ張ったり戻したりすることによって、遊技球65は検出領域Xの下端を出入りできることとなる。つまり、不正者は、戻り防止部77の下側で遊技球65を上下移動させることによって、線材不正行為を実行できることとなる。一方で、戻り防止部77がこの境界位置よりも下側に配置される場合、より下側に配置される程、図8を用いて既に説明したように、検出領域Xと戻り防止部77との間で不正遊技球65を往復させることによる線材不正行為が実行される可能性が高まる。
以上のことから、図10に示すように、戻り防止部77は、図9(1)に示す境界位置よりも僅かに下側に配置されるのが最も好ましい。言い換えると、戻り防止部77は、図10に示すように、下端が検出領域Xの下端よりも僅かに下側に位置する位置Iの遊技球65が、遊技球65の中心Oを通る平面と戻り防止部77の下側面とが一致する状態で切れ込み76に挟まれる位置に配置されるのが最も好ましい。この様な位置に戻り防止部77が配置されることによって、最も効果的に線材不正行為を防止することができるからである。
以上に説明したように、本実施形態では、通過センサ66の検出領域Xを一旦通過した遊技球65が、不正者の不正動作によって検出領域Xに戻ることを防止する位置に、戻り防止部77を設ける。このことによって、線材不正行為を効果的に防止することができる。また、戻り防止部77は、出口側経路75の一部として出口側経路75と一体的に同一材料で形成されている。このことから、戻り防止部77を設けるために新たに部品を追加する必要はなく、単に、出口側経路75の形状を変更するだけでよい。この結果として、部品点数を増やすことなく線材不正行為を効果的に防止することができる。
[本実施形態の変形例]
なお、上記した本実施形態では、第1始動口25aに戻り防止部77が備えられる場合を、一例に挙げて説明した。しかし、戻り防止部77は、第2始動口25b、普通入賞口29、大入賞口28、ゲート27等の、遊技球の通過を検知する他の部分に設けられてもよい。つまり、戻り防止部77は、遊技球の通過によって遊技者が利益を得ることとなる部分に設けられればよい。
また、上記した本実施形態では、図8等に示すように、通過センサ66は、一例として、真下に落下する遊技球を検出する構成として説明した。しかし、通過センサ66は、検出経路73を上流から下流に向けて移動する遊技球を検出する構成であればよく、例えば、斜め下方向に転がり落ちる遊技球を検出する構成であってもよい。
また、上記した本実施形態では、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状を、一例として、V字形状とした(図7等参照)。しかし、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、不正動作によって不正遊技球が経路の上流へ引き戻される際に線材64が切れ込み76内に引き込まれて、かつ、不正遊技球が切れ込み76に引っかかる形状であればよい。例えば図11(1)に示すように、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、下流方向が大きく開口した台形形状であってもよい。また、例えば図11(2)に示すように、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、図7等を用いて説明したV字形状を、切れ込みの内側が凸となる円弧形状にした変形V字形状としてもよい。この様にすることによって、不正者が不正遊技球65を引っ張った際に変形V字形状の先端に線材64が食い込み易くなり、更に有効に線材不正行為を防止することができる。また、例えば図11(3)に示すように、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、図7等を用いて説明したV字形状において、その断面(C−C’断面)がくさび形状(刃物形状)をしていてもよい。つまり、刃部を有してもよい。この様にすることによって、不正者が不正遊技球65を引っ張った際に、このくさび形状が刃物として作用して線材64を切断することができるので、更に有効に線材不正行為を防止することができる。また、例えば図11(4)に示すように、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、図11(2)に示した変形V字形状において、その断面(D−D’断面)がくさび形状をしていてもよい。この様にすることによって、不正者が不正遊技球65を引っ張った際に、このくさび形状が刃物として作用して図11(3)の形状よりも更に確実に線材64を切断することができるので、更に有効に線材不正行為を防止することができる。また、例えば図11(5)に示すように、戻り防止部77が備える切れ込み76の形状は、複数の切れ込み76を備えていてもよい。
また、上記した本実施形態では、通過センサ66の一例として、図4を用いて説明した誘導型近接スイッチを用いる構成とした。しかし、通過センサ66は、検出経路73を通過する遊技球を検出できるものであれば他の検出方式のものであってもよい。例えば、既に説明したが、通過センサ66は、検出経路73を通過する遊技球に光が遮られることを利用して遊技球の通過を検出する光センサであってもよい。また例えば、通過センサ66は、検出経路73を通過する遊技球にスイッチ部材が当たることによってこのスイッチ部材が移動することを利用して遊技球の通過を検出する機械的なセンサであってもよい。
また、上記した本実施形態において、通過センサ66の検出領域Xの大きさは、図8等に示される大きさには限られない。
また、上記した本実施形態において、戻り防止部77は、出口側経路75の一部として形成されていた。しかし、戻り防止部77は、出口側経路75とは別個に、独立した部品として形成されてもよい。
また、上記した本実施形態において、図8〜図10を用いて、通過センサ66の検出領域Xを一旦通過した不正遊技球が検出領域Xに戻らない位置に、戻り防止部77を設置する構成について説明した。しかし、検出領域Xの上側の領域において不正遊技球が検出領域Xを出入りすることによる線材不正行為をも防止するために、図12に示すように、一旦検出領域Xに入った不正遊技球が検出領域Xの上流側に引き戻されない位置にも、戻り防止部77を設けてもよい。なお、図12を用いて説明した位置にのみ、戻り防止部77を設けてもよい。
また、上述したパチンコ遊技機1に設けられている各構成要素の形状、数、および設置位置等は、単なる一例に過ぎず他の形状、数、および設置位置であっても、本発明の範囲を逸脱しなければ本発明を実現できることは言うまでもない。また、上述した処理で用いられている数値等は、単なる一例に過ぎず他の数値であっても、本発明を実現できることは言うまでもない。
以上、本発明を実施形態を用いて詳細に説明してきたが、前述の説明はあらゆる点において本発明の例示にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義も含めて)が優先する。
[以上の実施形態の効果例]
上記した実施形態では、遊技球の経路(73)において通過センサ66の近傍に配置され、通過センサ66を通過した遊技球が戻ることを防止する戻り防止部(77)が設けられる。このことから、同一の遊技球が複数回検出されることを防止でき、線材不正行為を効果的に防止することができる。
また、戻り防止部77は、通過センサ66を一旦通過した遊技球が当該通過センサ66によって再度検出される境界位置(図9)よりも、遊技球の経路において下流側に配置されることが好ましい(図8)。このことにより、より効果的に同一の遊技球が複数回検出されることを防止でき、線材不正行為を効果的に防止することができる。
また、戻り防止部77は、上記境界位置の下流側直後に配置されることが最も好ましい。このことにより、検出領域Xの下流側(下側)端部において同一の遊技球が不正行為によって複数回検出されることをも防止できるので、線材不正行為を最も効果的に防止することができる。
また、戻り防止部77は、板形状であって、遊技球の経路における上流側から下流側の向きに、下流側端部が開放した切れ込み(76)を有し、この切れ込みは、上流側の先端から所定距離までの範囲の幅が、遊技球の直径より小さいことが好ましい(図8)。このことによれば、不正者によって引き戻される不正遊技球65がこの切れ込みに引っかかるので、確実に線材不正行為を防止することができる。
また、上記切れ込みの少なくとも先端部分は、刃部を有してもよい。このことによれば、切れ込み76に引き込まれた線材が切断されるので、より確実に線材不正行為を防止することができる。線材64が引っ張られた場合に、線材64が切れ込み76に引き込まれ、又、引き上げられる不正遊技球65が切れ込み76に引っかかる。このことによって、不正遊技球は再び検知部に検出されることはなく、線材不正行為が防止されることとなる。
また、上記境界位置は、検出領域Xの下流側端部と遊技球の下流側端部とが一致する位置に在る遊技球が、当該遊技球の中心を通る平面と当該戻り防止部77の下流側表面とが一致する状態で前記切れ込みに挟まれる位置であることが最も好ましい(図9)。このことによれば、上記境界位置よりも下流側直後に戻り防止部77を配置することによって、線材不正行為を最も効果的に防止することができる。
また、上記切れ込みの形状は、V字形状であってもよい。このことによれば、切れ込み76の開放端側が大きく開放されるので、不正遊技球65に取り付けられた線材64を確実に切れ込み76の内部に引き込むことができる。
また、戻り防止部77は、遊技球の経路(75)に、当該経路と同一材料で一体的に形成されてもよい。このことによれば、戻り防止部77を設けるために新たに部品を追加する必要はなく、単に、出口側経路75の形状を変更するだけでよい。この結果として、部品点数を増やすことなく線材不正行為を効果的に防止することができる。