以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。実施の形態の説明において、個数、量などに言及する場合、特に記載ある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。実施の形態の図面において、同一の参照符号や参照番号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。また、実施の形態の説明において、同一の参照符号等を付した部分等に対しては、重複する説明は繰り返さない場合がある。
<実施の形態>
図1を参照して、実施の形態に係るICカードICDのブロック図を説明する。
ICカードICDは、電源端子VCC、I/O端子I/O、リセット端子/RES、クロック端子CLK,電源端子VSS、および半導体装置LSIを備える。本実施の形態に係るICカードICDとして接触型ICカードを想定しているが、非接触型ICカードにも適用可能である。ICカードICDをカードリーダ/ライタ(図示せず)に挿入することで、ICカードICDの各端子は、カードリーダ/ライタが備える対応する端子と各々電気的に接続される。なお、以下において、記号VCCおよび記号VSSは、各々、各端子に印加される電源電圧をも意味するものとする。
半導体装置LSIは、電源回路PWR、電圧監視回路V_DTC、I/Oポート1、中央処理装置CPU、RAM2、ROM3、不揮発性メモリNVM、およびクロック生成回路4の各種機能ブロックを有する。さらに、半導体装置LSIは、制御バスCNT_BUS、アドレスバスA_BUS、およびデータバスD_BUSを有する。
中央処理装置CPUは制御バスCNT_BUS、アドレスバスA_BUS、およびデータバスD_BUSを介して、半導体装置LSIを構成する各種機能ブロックの動作を制御する。クロック生成回路4は、半導体装置LSIを構成する機能ブロックへ、適宜、クロックを供給する。
電源回路PWRは、ICカードICDに供給される電源電圧VCCを昇圧または降圧して、電源電圧VPP、電源電圧VDD、および電源電圧VDD3Xを生成する。
電圧監視回路V_DTCは電源電圧VCCと所定の基準電圧Vrefとを比較し、その結果を2値の値を有するモニタ信号ERR_DTCとして制御バスCNT_BUSへ出力する。モニタ信号ERR_DTCは、制御バスCNT_BUSを介して、中央処理装置CPU処理に入力される。電源電圧VCCが基準電圧Vref以上の場合、モニタ信号ERR_DTCはハイレベルを維持する。電源電圧VCCが低下して基準電圧Vref未満となると、モニタ信号ERR_DTCはロウレベルに遷移する。
例えば、ユーザがカードリーダ/ライタからICカードICDを引き抜いた場合や、ICカードICDが挿入されているカードリーダ/ライタの電源電圧VCCが何らかの原因で低下した場合、モニタ信号ERR_DTCはハイレベルからロウレベルに変化する。つまり、モニタ信号ERR_DTCは半導体装置LSIへの電源電圧VCCの供給が遮断(以下、電源遮断、とも記載する。)されたことを検知する信号である。
I/Oポート1はI/O端子I/Oとのデータ入出力を行う。RAM2およびROM3は、各々、半導体装置LSIに内蔵されたSRAM等の揮発性メモリおよびマスクROM等の読み出し専用メモリである。RAM2およびROM3とも、制御バスCNT_BUSを介して中央処理装置CPUにより動作状態が制御される。RAM2およびROM3は、指定された動作状態と動作特性に応じ、アドレスバスA_BUSおよびデータバスD_BUSと必要なデータのやり取りを行う。
不揮発性メモリNVMは、制御バスCNT_BUSを介して、中央処理装置CPUにより動作モード(読み出し・消去・書き込み)が制御され、各動作モードに必要なアドレスおよびデータを、各々、アドレスバスA_BUSおよびデータバスD_BUSとやり取りする。モニタ信号ERR_DTCがハイレベルからロウレベルに変化すると、中央処理装置CPUは、不揮発性メモリNVMに対して電源遮断の発生を通知する。後述する通り、書き込み動作中に電源遮断の発生を通知された不揮発性メモリNVMは、電源遮断が発生したことを不揮発性メモリセル(以下、単にメモリセルとも記載する。)にデータとして書き込む。
図2を参照して、実施の形態に係る電源回路PWRおよび電圧監視回路V_DTCの構成を説明する。
電源回路PWRは、内部電圧発生回路20、発振器21、発振器22、周波数制御回路23、検出回路24、昇圧回路25、昇圧回路26、tr/tf制御回路27、および基準電圧発生回路BGRを備える。
内部電圧発生回路20は、電源電圧VCCを降圧して電源電圧VDDを出力する。電源電圧VDDは半導体装置LSIを構成する各回路に供給される。昇圧回路25および昇圧回路26は電源電圧VCCを昇圧して、各々、電源電圧VPPおよび電源電圧VDD3Xを生成する。電源電圧VDD3Xは、データ転送するためのトランスファーMOSトランジスタのゲートに印加される。
周波数制御回路23は、発振器21および発振器22が出力するクロックの周波数に基づき、電源電圧VPPおよび電源電圧VDD3Xを所定の値に維持する。検出回路24は昇圧回路25の出力と基準電圧発生回路BGRが生成する基準電圧Vrefとを比較し、その結果を周波数制御回路23へ出力する。このフィードバック制御により、メモリセルの消去・書き込み動作に伴う電源電圧VPPの電圧低下は迅速に回復する。なお、昇圧回路25の出力波形の傾斜はtr/tf制御回路27で調整され、出力電圧VPPとして消去・書き込み系回路に供給される。
電圧監視回路V_DTCは、電源電圧VCCおよび基準電圧発生回路BGRが出力する基準電圧Vrefの比較結果をモニタ信号ERR_DTCとして出力する。半導体装置LSIへ正常に電源電圧VCCが供給されている場合、モニタ信号ERR_DTCはハイレベルの値を有する。電源遮断の発生により電源電圧VCCが低下した場合、モニタ信号ERR_DTCはハイレベルからロウレベルに遷移する。なお、電圧監視回路V_DTCは電源電圧VCCと基準電圧Vrefとを直接比較してもよいし、電源電圧VCCに基づき生成した電圧と基準電圧Vrefとを比較してもよい。
図3を参照して、実施の形態に係る不揮発性メモリNVMのブロック図を説明する。
不揮発性メモリNVMは、メモリセルアレイMA、読み出し系XデコーダXDEC_R、消去/書き込み系XデコーダXDEC_EW、YデコーダYDEC、YセレクタYSEL,センスアンプ/ラッチSA_E/W、ウエル制御回路W_CTL、消去/書き込み制御回路EW_CTL、およびI/Oバッファ30を備える。
メモリセルアレイMAはアレイ状に配置された複数のメモリセルと、それらメモリセルが形成されるウエル領域(図示せず)を備える。ウエル制御回路W_CTLには、電源配線31を介して、電源回路PWRで生成された電源電圧が供給される。読み出し系XデコーダXDEC_RにはアドレスバスA_BUSからXアドレスX_ADDが入力され、YデコーダYDECにはアドレスバスA_BUSからYアドレスY_ADDが入力される。メモリセルアレイMAおよびデータバスD_BUSは、YセレクタYSEL、センスアンプ/ラッチSA_E/W、内部バスINT_BUS、およびI/Oバッファ30を介して、メモリセルの読み出しデータや書き込みデータのやり取りを行う。
消去/書き込み制御回路EW_CTLには、信号32が入力される。この信号32は、電圧監視回路V_DTCが出力するモニタ信号ERR_DTCを受けた中央処理装置CPUが制御バスCNT_BUSに出力する信号である。信号32を受けた消去/書き込み制御回路EW_CTLは、YデコーダYDECへ書き込み方式制御信号FN_HEを出力する。つまり、電圧監視回路V_DTCが電源遮断を検出すると、中央処理装置CPUは、消去/書き込み制御回路EW_CTLへ書き込み方式制御信号FN_HEを出力するように指示する。
図4を参照して、実施の形態に係る不揮発性メモリNVMの主要回路図を説明する。
不揮発性メモリNVMは、ウエル制御回路W_CTL、メモリセルアレイMA、読み出し系XデコーダXDEC_R、読み出し系分離回路X_SPT、消去/書き込み系XデコーダXDEC_EW、YセレクタYSEL、YデコーダYDEC、およびセンスアンプ/ラッチSA_E/Wを備える。
メモリセルアレイMAは、メモリセルMC11からメモリセルMCmnの総計mと
nの積算数のメモリセルを有する。メモリセルアレイMAは、データ領域DRおよび情報領域IRで構成される。データ領域DRはメモリセルMC11からメモリセルMCmn−1のメモリセルを有し、情報領域IRはメモリセルMC1nからメモリセルMCmnのメモリセルを有する。各メモリセルは、フローティングゲート構造またはMONOS構造の電荷蓄積部を有するn型トランジスタの不揮発性メモリセルであり、n型のソース領域およびn型のドレイン領域を有する。
メモリセルアレイMAを構成する各メモリセルは図示しないpウエル領域に形成される。このpウエル領域は半導体基板(図示せず)に形成されたp型不純物領域である。不揮発性メモリメモリセルがp型トランジスタの場合、メモリセルアレイMAはnウエル領域に形成される。pウエル領域に設けられたウエル端子WELLを介して、pウエル領域の電位はウエル制御回路W_CTLの出力で制御される。
X方向(行方向とも記載する。)に配置されたメモリセルMC11からメモリセルMC1nの各ゲート電極は、ワード線WL1と接続される。同様に、メモリセルMCm1からメモリセルMCmnの各ゲート電極はワード線WLmと接続される。ワード線WL1とワード線WLmとの間には、図示しない同様の接続関係を有するメモリセルが配置されている。
データ領域DRにおいて、Y方向(列方向とも記載する。)に配置されたメモリセルMC11からメモリセルMCm1のソース領域およびドレイン領域は、各々、ソース線SLおよびデータ線DLと共通に接続される。同様に、メモリセルMC1n−1からメモリセルMCmn−1のソース領域およびドレイン領域は、各々、ソース線SLおよびデータ線DLと共通に接続される。上記Y方向に配置された2つのメモリセル列の間には、図示しない同様の接続関係を有するメモリセルが配置されている。
情報領域IRにおいて、Y方向に配置された一列のメモリセルMC1nからメモリセルMCmnのソース領域およびドレイン領域は、各々、ソース線SLWおよびデータ線DLWと共通に接続される。なお、メモリセルアレイMAにおける情報領域IRの配置は図4に示すものに限定されない。情報領域IRを、データ領域DRを分割する位置、即ち、2つのデータ領域DRに挟まれる位置や、メモリアレイMAの左端側に配置してもよい。
ワード線WL1からワード線WLmの一端(図4では左端)には、読み出し系分離回路X_SPTを介して読み出し系XデコーダXDEC_Rが接続される。読み出し系XデコーダXDEC_RはXアドレスX_ADDで指定されたワード線を選択する。読み出し系XデコーダXDEC_Rの出力とワード線との間に接続される読み出し系分離回路X_SPTは、高耐圧系MOSトランジスタMs1からMsmで構成される。メモリセルの消去・書き込み動作時はこの高耐圧系MOSトランジスタMs1からMsmを非導通状態とし、消去・書き込み時のワード線に印加される高電圧により、読み出し系XデコーダXDEC_Rを構成するMOSトランジスタが破壊されることを防ぐ。
ワード線WL1からワード線WLmの他端(図4では右側)には、消去/書き込み系XデコーダXDEC_EWが接続される。消去/書き込み系XデコーダXDEC_EWは高耐圧系のドライバDRV1からDRVmで構成され、XアドレスX_ADDで指定されたワード線を選択し、メモリセルの消去または書き込みを行う。
ソース線SL、ソース線SLW、データ線DL、およびデータ線DLWはYセレクタYSELと接続される。YセレクタYSELは、ドレインがソース線SLと接続され、ソースに電源電圧VSSが印加される高耐圧MOSトランジスタM1〜Mn−1と、ドレインがソース線SLWと接続され、ソースに電源電圧VSSが印加される高耐圧MOSトランジスタMwとを有する。高耐圧MOSトランジスタM1〜Mn−1は、各ゲート電極に各々印加されるソース選択信号Read_Sにより選択(導通状態)される。高耐圧MOSトランジスタMwは、ゲート電極に印加される情報ソース選択信号Read_WRにより選択される。
YセレクタYSELは、さらに、ソース/ドレインの一方がデータ線DLまたはDLWに接続され、ソース/ドレインの他方が内部I/O回路E/Wに接続される高耐圧MOSトランジスタN1〜Nn―1およびNwと、ソース/ドレインの一方がデータ線DLまたはDLWに接続され、ソース/ドレインの他方がセンスアンプSAに接続される高耐圧MOSトランジスタNS1〜NSn−1およびNSwを有する。高耐圧MOSトランジスタN1〜Nn−1は各ゲート電極に印加されるデータ線選択信号ER_dにより選択され、高耐圧MOSトランジスタNS1〜NSn−1およびNSwは各ゲート電極に印加されるデータ線読み出し信号Read_SAにより選択される。
センスアンプ/ラッチSA_E/Wは、複数の内部I/O回路E/WおよびセンスアンプSAを有する。内部I/O回路E/Wは、メモリセルへの書き込みデータを内部バスINT_BUSから取込み保持するデータラッチ回路およびそのデータをレベル変換してデータ線DLまたはDLWへ出力するレベル変換回路を有する(いずれも図示せず。)。センスアンプSAは、データ線DLおよびDLWを介して、メモリセルのデータを内部バスINT_BUSへ出力する。内部I/O回路E/Wには電源電圧VPP、VDD3X、VDD、およびVSSが供給され、センスアンプSAには電源電圧VDDおよびVSSが供給される。
YデコーダYDECは、YアドレスY_ADDに基づき、ソース選択信号Read_S、データ線選択信号ER_d、およびデータ線読み出し信号Read_SAの電位を制御する。情報ソース選択信号Read_WRは、書き込み方式制御信号FN_HEによりその電位が制御される。
図5を参照して、実施の形態に係る不揮発性メモリNVMの主要回路部が有する寄生容量の分布を説明する。
メモリセルアレイMAを構成する各メモリセルのゲート電極およびウエル領域間の寄生容量は各ワード線とウエル領域間に並列接続され、1ワード線あたり寄生容量Cgwとなる。各メモリセルのソース領域およびドレイン領域とpウエル領域間には、各々、寄生容量Cswおよび寄生容量Cdwが形成される。
さらに、電源電圧VDDおよび電源電圧VSSを供給する電源配線も、各々、寄生容量CddおよびCssを有する。メモリセルアレイMAが有するワード線WL、ソース線SL・SLW、およびデータ線DL・DLWも寄生容量を有する。例えば、メモリセルアレイMAが64kBに相当するメモリセルを有する場合、不揮発性メモリNVMの主要回路部が有する上記寄生容量の総計値は500pF以上となる。
メモリセルアレイMAの周辺に配置されるウエル制御回路W_CTL、読み出し系分離回路X_SPT、消去/書き込み系XデコーダXDEC_EW、YセレクタYSEL、およびセンスアンプ/ラッチSA_E/Wには、電源回路PWRから電源電圧VPP、電源電圧VDD,電源電圧VSS、または電源電圧VDD3Xが供給される。従って、電源遮断が発生した場合、半導体装置LSIが保持する上記電源電圧は急激に低下することなく、上記寄生容量にしばらく保持される。
図6を参照して、実施の形態に係るメモリセルの消去動作および書き込み動作を説明する。
図6(a)は、消去期間および書き込み期間におけるメモリセルへの印加電圧の波形を示す。縦軸の電圧は、メモリセルアレイMAが形成されるpウエル領域の電位を基準(0V)としている。時刻t1から時刻t2は事前書き込み(pre−Write)の期間である。事前書き込みは、その後に実施する消去動作による過消去を防止するために行う。時刻t1からメモリセルのゲート電圧を段階的に0Vから13Vまで上昇させ、例えば、270μs経過後の時刻t2に0Vに戻す。
図6(b)および(c)は、事前書き込み、消去、および書き込み動作によるメモリセルの閾値電圧の時間的変化を示す。縦軸は閾値電圧を示し、縦軸の矢印方向に向かって閾値電圧が増大する。閾値電圧Vthrの値は0Vである。
以降の説明において、消去とはメモリセルの電荷蓄積部へホールを注入することを意味し、書き込みとは電荷蓄積部へ電子を注入することを意味する。従って、メモリセルを消去(データ”1”を保持)するとその閾値電圧は低下し、メモリセルにデータ”0”を書き込みを行うとその閾値電圧は増加する。なお、閾値電圧の大小とデータ”0”および”1”との対応付けは、本明細書では図6の通りとする。
図6(b)において、閾値電圧がVth1以上でVth0以下の範囲をメモリセルがデータ”0”を保持する範囲とし、閾値電圧がVth3以上でVth2以下の範囲をメモリセルがデータ”1”を保持する範囲とする。さらに、閾値電圧がVth2より大きくVth1未満の範囲をデータ不確定領域とする。閾値電圧Vth0を有するメモリセルはデータ”0”を10年間保持可能であり、閾値電圧Vth3を有するメモリセルはデータ”1”を10年間保持可能である。データ不確定領域の上限または下限の閾値電圧を有するメモリセルは、書込まれた各データを1週間程度保持するに過ぎない。
図6(b)に示す通り、事前書き込み前の時刻t0においてデータ”0”を保持していたメモリセルの閾値電圧Vth0は、事前書き込みが終了する時刻t2においてもその閾値電圧を維持する。図6(c)に示す通り、時刻t0においてデータ”1”を保持していたメモリセルの閾値電圧Vth3は、時刻t2において、データ”0”領域の閾値電圧まで上昇する。
図6(a)に戻り、時刻t2から時刻t3の消去期間(例えば、850μs)におけるメモリセルへの印加電圧を説明する。メモリセルのソース電圧およびドレイン電圧を0Vに維持した状態で、ゲートに0Vから11Vまで段階的に負の高電圧を印加する。この消去動作によりメモリセルの電荷蓄積部へホールが注入され、メモリセルの閾値電圧はデータ”1”領域の下限となる閾値電圧Vth3に設定される(図6(b)、(c))。
図6(a)の時刻t3から時刻t4の書き込み期間(例えば、800μs)におけるメモリセルへの印加電圧を説明する。メモリセルのゲートには0Vから13Vまで段階的に高電圧が印加される。この期間、書き込み対象の選択メモリセルのソースおよびドレインには0Vが印加され、書き込み対象外の非選択メモリセルのソースおよびドレインには6.5Vが印加される。
図6(b)および(c)の時刻t3から時刻t4における波形は、消去動作によりデータ”1”が書き込まれているメモリセルへ、データ”0”を書き込んだ場合の閾値電圧の変化を実線で示し、データ”1”を書き込んだ場合の閾値電圧の変化を破線で示す。時刻t3の時点でホールが注入されているメモリセル(データ”1”を保持)へデータ”0”を書込むと、電荷蓄積部へ電子が注入される結果、メモリセルの閾値電圧はデータ”1”の下限となる閾値電圧Vth3からデータ”0”の上限となる閾値電圧Vth0まで上昇する(”1”→”0”)。メモリセル(データ”1”を保持)へデータ”1”を書込んでもメモリセルの閾値電圧は書き込み前の閾値電圧Vth3を維持する(”1”→”1”)。時刻t3から時刻t4の書き込み期間は、例えば、800μsである。
図7を参照して、実施の形態に係るメモリセルの消去動作を説明する。
図7(a)は、電源遮断が無い場合の、消去動作時におけるメモリセルへの印加電圧を説明する回路図である。破線で囲んだデータ領域DRのメモリセルMCk1および情報領域IRのメモリセルMCknが消去対象のメモリセルであり、データ”1”を保持させる対象となる。メモリセルアレイMAが形成されるpウエル領域には0Vの電源電圧VSSが印加される。
消去対象のメモリセルMCk1およびメモリセルMCknの各ゲートにはワード線WLkの負の高電圧−11.5Vが印加され、データ線DLおよびデータ線DLWには、いずれも0Vが印加される。ソース線SLおよびソース線SLWはYセレクタYSELによりハイインピーダンスH−Zとされる。消去対象外のメモリセルMCj1およびメモリセルMCjnの各ゲートにはワード線WLjの電圧0Vが印加される。なお、ハイインピーダンスH−Zに設定される各メモリセルのソース線SLおよびソース線SLWは、消去動作時に消去対象以外のメモリセルで消去状態のメモリセルにより導通状態となるため、データ線DLおよびデータ線DLWと同電位となる。
図7(b)は、図7(a)に示す消去動作を模式的に説明するメモリセルの断面図である。ウエル端子WELLに0Vが印加(WELL=0V)され、消去対象セルであるメモリセルMCk1およびMCknが形成されるpウエル領域の電圧は0Vとなる。従って、ゲート電極に負の高電圧−11.5Vが印加されている消去対象セルにおいて、pウエル領域(半導体基板)のホールが、FNトンネル電流により電荷蓄積領域に注入される。
この結果、図6(b)または(c)に示す通り、データ”0”に対応した正の閾値電圧Vth0を有するメモリセルMCk1およびメモリセルMCknの閾値電圧は、データ”1”に対応した負の閾値電圧Vth3に変化し、消去が完了する。
図8を参照して、実施の形態に係るメモリセルの書き込み動作を説明する。
図8(a)は、電源遮断の発生がない場合の、書き込み動作時におけるメモリセルへの印加電圧を説明する回路図である。破線で囲んだデータ領域DRのメモリセルMCk1が書き込み対象のメモリセルであり、データ”0”を書込む対象となる。メモリセルアレイMAが形成されるpウエル領域には0Vの電源電圧VSSが印加される。メモリセルMCknは書き込み対象外のメモリセルであり、データ”1”を保持している。
書き込み対象のメモリセルMCk1および書き込み対象外のメモリセルMCknの各ゲートにはワード線WLkの正の高電圧13Vが印加される。書き込み対象のメモリセルMCk1のデータ線DLは0V、およびソース線SLはハイインピーダンスH−Zに、各々設定される。一方、書き込み対象外のメモリセルMCknのデータ線DLWは正の高電圧6.5V、およびソース線SLWはハイインピーダンスH−Zに、各々設定される。
なお、ハイインピーダンスH−Zに設定される各メモリセルのソース線SLは、書き込み動作時のメモリセルMCk1および書き込み対象以外のワード線のメモリセルで消去状態のメモリセルにより、データ線DLと同電位になる。また、ソース線SLWは、書き込み対象ワード線WLkと接続されている書き込み対象外メモリセルMCknが導通状態となるため、データ線DLWと同電位となる。
図8(b)は、図8(a)に示す書き込み動作を模式的に説明するメモリセルの断面図である。ウエル端子WELLに0Vが印加(WELL=0V)され、書き込み対象のメモリセルMCk1および書き込み対象外のメモリセルMCknが形成されるpウエル領域の電位は0Vとなる。従って、正の高電圧13Vが印加されているメモリセルMCk1において、pウエル領域(半導体基板)の電子が、FNトンネル電流により電荷蓄積領域に注入される。この結果、図6(b)または(c)に示す通り、時刻t3においてデータ”1”に対応した負の閾値電圧Vth3の領域の閾値電圧を有するメモリセルMCk1の閾値電圧は、時刻t4においてデータ”0”に対応した正の閾値電圧Vth0に変化し、書き込みが完了する。
一方、書き込み対象外のメモリセルMCknは、そのソース線SLWおよびデータ線DLWは正の高電圧6.5Vに設定されているため、pウエル領域の電子のFNトンネル電流による電荷蓄積部へ注入は抑制される。従って、メモリセルMCknの電荷蓄積部はホールの正電荷を保持し、メモリセルMCknはデータ”1”に対応した負の閾値電圧Vth3を維持する。
図9を参照して、実施の形態に係る、電源遮断が発生した場合のメモリセルの書き込み動作を説明する。
図9(a)は、書き込み動作中に電源遮断が発生する直前までのメモリセルMCk1への印加電圧を説明する回路図である。データ領域DRおよび情報領域IRの各メモリセルに対する供給電圧は図8(a)と同じであり、説明は省略する。
図9(b)は、書き込み動作中に電源遮断が発生した直後におけるメモリセルへの印加電圧を説明する回路図である。図9(a)と比較すると、書き込み対象のメモリセルがデータ領域DRのメモリセルMCk1から情報領域IRのメモリセルMCknに変化している点が異なる。さらに、メモリセルMCknのソース線SLWの電圧は、ハイインピーダンスH−Z(6.5V)から0Vに変化する。
図10を参照して、実施の形態に係る、電源遮断が発生した場合のメモリセルの書き込み動作を模式的に説明する。
図10(a)は、書き込み動作中に電源遮断が発生する直前までのメモリセルMCk1の書き込み動作を模式的に説明する断面図である。ウエル端子WELLに0Vが印加(WELL=0V)され、書き込み対象のメモリセルMCk1および書き込み対象外のメモリセルMCknが形成されるpウエル領域の電位は0Vとなる。従って、正の高電圧13Vが印加されているメモリセルMCk1において、pウエル領域(半導体基板)の電子が、FNトンネル電流により電荷蓄積領域に注入される。
一方、書き込み対象外のメモリセルMCknは、そのソース線SLWおよびデータ線DLWは正の高電圧6.5Vに設定されているため、pウエル領域の電子のFNトンネル電流による電荷蓄積部へ注入は抑制される。従って、メモリセルMCknの電荷蓄積部はホールの正電荷を保持し、メモリセルMCknはデータ”1”に対応した閾値電圧Vth3を維持する。
図10(b)は、書き込み動作中に電源遮断が発生した直後におけるメモリセルMCk1およびメモリセルMCknの動作を模式的に説明する断面図である。メモリセルMCk1のソース、ドレイン、およびゲート電極に供給される電源電圧は、図10(a)と同じである。つまり、メモリセルMCk1の電荷蓄積部へのFNトンネル電流による電子の注入は継続される。しかしながら、FNトンネル電流による書き込み時間は電源遮断後に半導体装置LSIが書き込み動作を維持する時間(詳細は後述)以上を要するため、メモリセルMCk1への書き込みは正常に終了しない。
一方、メモリセルMCknのソースへ電圧を供給するソース線SLWの電圧は、電源遮断に応答して、6.5Vから0Vに変化する。この結果、メモリセルMCknのソース−ドレイン間に6.5Vの電圧が印加され、ドレイン近傍で発生したホットエレクトロンが電荷蓄積部へ注入される。このときデータ線DLWから供給される電流は10μA/bit程度と、セル書き込みに必要なFNトンネル電流値と比較して非常に大きい。一方、ホットエレクトロンによる書き込みは数10μs程度で完了し、FNトンネル電流と比較して非常に短い。
図11を参照して、実施の形態に係る、電源遮断前後における書き込み動作の電圧供給タイミングを説明する。
図11(a)は、電源遮断前後における情報領域IRのメモリセルMCknへ電圧を供給するソース線SLW、データ線DLW、およびワード線WLkの電圧変化を示す。時刻t0から時刻t3は、途中で電源遮断が発生しない場合に、メモリセルをFNトンネル電流で書込むのに必要な時間Twであり、500μsから数msの時間を要する。この時間Twにわたり、半導体装置LSIは書き込みに必要な高電圧を生成・維持する必要がある。
時刻t0に書き込みが開始されると、ワード線WLkは13Vまで、ソース線SLWおよびデータ線DLWは6.5Vまで上昇する。時刻t0から電源遮断が発生する時刻t1の期間におけるメモリセルMCknの状況は図10(a)に示す通りである。消去期間中に電荷蓄積部に注入されたホールは、メモリセルMCk1の書き込み期間中も維持される。
時刻t1に電源遮断が発生すると、電源電圧VCCおよび電源電圧VSSに基づき生成される電源電圧VPP等は低下する。この影響で、ワード線WLkの電圧も13Vから低下を開始する。時刻t1の電源遮断に応答して、ソース線SLWの電圧は6.5Vから0Vに設定される。データ線DLWは6.5Vの電圧を維持し、時刻t1から時刻t2の時間に、ホットエレクトロン注入によるメモリセルMCk1の書き込みが完了する。
図11(b)は、図11(a)の時刻t1から時刻t2の時間軸を拡大したタイミング図である。時刻t1に電源遮断が発生する前は、図10(a)に示す通り、データ領域DRのメモリセルMCk1をFNトンネル電流により書き込みを行う。しかしながら、書き込みが開始される時刻t0から電源遮断が発生する時刻t1までの時間は、メモリセルMCk1をFNトンネル電流で書き込むのに必要な時間Tw(図11(a))より短い。従って、時刻t1におけるメモリセルMCk1は、その閾値電圧がデータ”0”を10年間保持可能な閾値電圧Vth0に達しておらず、書き込みデータが確定していない不安定な状態にある。
ICカードICDが内蔵する不揮発性メモリNVMへデータを書き込み中に電源遮断が発生した場合、その発生事実を不揮発性メモリNVMに情報として記録しておく必要がある。その記録情報に基づき、電源遮断前に正常に書き込みが完了したメモリセルと電源遮断により正常に書き込みが終了しなかったメモリセルとを判別することにより、不揮発性メモリNVMのデータ修復が可能となる。
図11(b)において、時刻t1に電源遮断が発生した以降は、図10(b)に示す通り、情報領域IRのメモリセルMCknをホットエレクトロンで書き込みを行う。ホットエレクトロンによる書き込みは、時刻t1から数10μs経過後の時刻t2で完了する。この電源遮断後の書き込み動作は、図5に示す不揮発性メモリNVMの主要回路部が有する寄生容量に蓄積されているエネルギーを利用して行われる。数10μsという短時間のうちに、情報領域IRのメモリセルに安定したデータ”0”が書込まれる。このデータにより電源遮断発生が記録され、その記録データに基づき電源遮断発生時に書込んでいたワード線のアドレスが特定され、データ修復が可能となる。
図3および図4を参照して、図11に示す電源遮断発生後のソース線SLWの電圧変更方法を説明する。図3に示す電圧監視回路V_DTCは、電源遮断が発生するとモニタ信号ERR_DTCを制御バスCNT_BUSへ出力する。このモニタ信号ERR_DTCは、中央処理装置CPUおよび消去/書き込み制御回路EW_CTLを経由して、書き込み方式制御信号FN_HEとしてYデコーダYDECへ出力される。
図4に示すYデコーダYDECは、書き込み方式制御信号FN_HEに応答して、情報ソース選択信号Read_WRをロウレベルからハイレベルに変化させる。この変化により、高耐圧系MOSトランジスタMwが導通状態となり、情報領域IRに含まれるメモリセルのソース線SLWの電圧は6.5Vから電源電圧VSS(0V)に引き下げられる。メモリセルのデータ線DLWには、データ線選択信号ER_dで導通状態が制御される高耐圧系MOSトランジスタNwを介して、内部I/O回路E/Wから出力される6.5Vの電圧が供給される。
実施の形態に係る半導体装置LSIの効果を説明する。
低消費電力のシステムに採用される半導体装置に対し、その半導体装置が内蔵する不揮発性メモリセルの書き込みおよび消去動作時の低消費電力化が求められている。この要求に対する回答として、FNトンネル電流による書き込みおよび消去方法が知られている。しかしながら、FNトンネル電流による書き込みや消去には500μsから数ms程度の時間が必要となる。一方で、書き込み速度が数10μs程度の高速書き込みが可能なホットエレクトロンも知られているが、消費電力が大きいため低消費電力のシステムには不適切である。
低消費電力のシステムは蓄電池や非接触RF電源等の不安定な電源の環境下にあり、電源遮断発生の危険性も高くなる。電源遮断発生後にシステムを正常に再起動させるには、不揮発性メモリセルに記憶されている情報が正常か異常かを判定する必要がある。従来は、電源遮断への対応として、データ記憶領域とは別領域に同一情報を別タイミングで記憶する方法(データの二重化)や、管理領域に別タイミングで管理情報を記憶する方法が行われている。他の方法として、電源遮断時から半導体装置の内部処理が完了するまで電源供給可能な蓄電機能を付加することも行われている。
データの二重化や管理領域の設定は、メモリ領域の増加をもたらす。また、蓄電機能を半導体装置に付与する場合は、大きな蓄電容量が必要となる。
実施の形態に係る半導体装置LSIは、不揮発性メモリNVMへの書き込みを、電源遮断が発生するまではFNトンネル電流で行い、電源遮断発生後はホットエレクトロンで行う。この構成により、電源遮断が発生する前は低消費電力でメモリセルへデータを書き込み、電源遮断が発生した場合は高速にメモリセルへデータを書き込むことが実現可能となる。従って、データの二重化や、書き込み処理とは別のタイミングでバックアップデータや管理データを記録する必要がない。
高速にメモリセルへ書き込まれるデータに基づき、電源遮断の発生事実が情報として半導体装置LSIに記録される。ICカードICDがカードリーダ/ライタから正常な電源電圧の供給をうけると、両者間で電源遮断状態からの復帰が行われる。
実施の形態に係る半導体装置LSIは、メモリセルの消去や書き込み動作に必要な高電圧が印加される寄生容量を有している。この寄生容量に蓄積されたエネルギーを利用して、電源遮断後のメモリセルへの情報書き込みを短時間に行うことにより、特別な電源保持機構は不要となる。
<実施の形態の変形例1>
図12を参照して、実施の形態の変形例1に係る、電源遮断が発生した場合のメモリセルの書き込み動作を説明する。
図12(a)は、書き込み動作中に電源遮断が発生する直前までのメモリセルMCk1の印加電圧を説明する回路図である。データ領域DRおよび情報領域IRの各メモリに対する供給電圧は図9(a)と同じであり、説明は省略する。
図12(b)は、書き込み動作中に電源遮断が発生した直後におけるメモリセルへの印加電圧を説明する回路図である。図9(b)と比較すると、書き込み対象のメモリセルを情報領域IRのメモリセルへ変更せず、データ領域DRのメモリセルMCk1を維持している点が異なる。さらに、メモリセルMCk1のソース線SLの電圧は、ハイインピーダンスH−Z(0V)から6.5Vに変化している。
図13を参照して、実施の形態の変形例1に係る、電源遮断が発生した場合のメモリセルの書き込み動作を模式的に説明する。
図13(a)は、書き込み動作中に電源遮断が発生する直前までのメモリセルMCk1の書き込み動作を模式的に説明する断面図である。ウエル端子WELLに0Vが印加(WELL=0V)され、書き込み対象のメモリセルMCk1および書き込み対象外のメモリセルMCknが形成されるpウエル領域の電位は0Vとなる。従って、正の高電圧13Vが印加されているメモリセルMCk1において、pウエル領域(半導体基板)の電子が、FNトンネル電流により電荷蓄積領域に注入される。
一方、書き込み対象外のメモリセルMCknは、そのソース線SLWおよびデータ線DLWは正の高電圧6.5Vに設定されているため、pウエル領域から電荷蓄積部へのFNトンネル電流による電子の注入は抑制される。従って、メモリセルMCknの電荷蓄積部はホールの正電荷を保持し、メモリセルMCknはデータ”1”に対応した閾値電圧Vth3を維持する。
図13(b)は、書き込み動作中に電源遮断が発生した直後におけるメモリセルMCk1およびメモリセルMCknの動作を模式的に説明する断面図である。データ領域DRのメモリセルMCk1の書き込み中に電源遮断が発生した場合、そのメモリセルMCk1のソース線SLの電圧を0Vから6.5Vへ上昇させる。この結果、メモリセルMCk1のソース−ドレイン間に6.5Vの電圧が印加され、ソース近傍で発生したホットエレクトロンは電荷蓄積部へ注入される。一方、情報領域IRのメモリセルMCknはデータ”1”を保持する。
図14を参照して、実施の形態の変形例1に係る、電源遮断後における書き込み動作の電源供給タイミングを説明する。
図14(a)は、電源遮断前後におけるデータ領域DRのメモリセルMCk1へ電圧を
供給するソース線SL、データ線DL、およびワード線WLkの電圧変化を示す。書き込みが開始される時刻t0から電源遮断が発生する時刻t1の時間、ソース線SLおよびデータ線DLは0Vを維持し、ワード線WLkは13Vまで上昇後その値を維持する。この結果、メモリセルMCk1の電荷蓄積部にはFNトンネル電流による電子の注入が行われ、閾値電圧はデータ”1”の領域からデータ”0”の領域へ上昇する。しかし、メモリセルMCk1を書込むのに必要な時間Tw経過前に電源遮断が発生したため、その閾値電圧は不安定な状態にある。
図14(b)は、図14(a)の時刻t1から時刻t2の時間軸を拡大したタイミング図である。時刻t1に電源遮断が発生する前は、図14(a)に示す通り、データ領域DRのメモリセルMCk1をFNトンネル電流により書き込みを行う。時刻t1に電源遮断が発生すると、メモリセルMCk1に対してホットエレクトロンで書き込みを行う。そのため、メモリセルMCk1のソースと接続されているソース線SLの電圧を0Vから6.5Vまで上昇させ、データ線DLの電圧は0Vを維持する。このホットエレクトロンによる書き込みは、時刻t1から数10μs経過後の時刻t2で完了する。
以上の書き込み処理により、電源遮断が発生してもメモリセルへ本来書き込むべきデータを安定して書込むことが可能となる。本実施の形態の変形例1のように情報領域IRを設ける場合、電源遮断発生後のホットエレクトロンによる高速書き込みをデータ領域DRおよび情報領域IRのメモリセルのいずれかを選択して書込むことが可能となる。情報領域IRが不要の場合は、メモリセルアレイMAから削除してもよい。
<実施の形態の変形例2>
図15を参照して、実施の形態の変形例2に係る、書き込み動作の電圧供給タイミングを説明する。
図15は、電源遮断の発生とは無関係に、メモリセルの電荷蓄積部への電子の注入を、FNトンネル電流およびホットエレクトロンを組み合わせて行う場合の電圧供給のタイミング図である。時刻t0から時刻t1の時間にわたり、FNトンネル電流による書き込みを行ない、時刻t1から時刻t21の時間にわたり、ホットエレクトロンによる書き込みを行う。FNトンネル電流のみで書き込みを行う場合は、時刻t3に書き込みが完了する。一方、FNトンネル電流およびホットエレクトロンを組み合わせて行う場合は、時刻t21に書き込みが完了する。この結果、時刻t2から時刻t3の時間分、メモリセルの書き込み時間を短縮することが可能となる。
電荷蓄積部への電子を注入する場合、FNトンネル電流による方法はホットエレクトロンによる方法と比較して、メモリセルの酸化膜等に与えるダメージが少ない。一方、メモリセルの書き込み速度は、ホットエレクトロンによる方法はFNトンネル電流による方法と比較して、高速である。本実施の形態によれば、両書き込み方法の長所を生かしたメモリセルの書き込みを実施することが可能となる。
具体的なメモリセルへの電源供給タイミングは、図14と同様である。ただし、図14における書き込み方式の変更は、電圧監視回路V_DTCが出力するモニタ信号ERR_DTCに応答して行われる。図15の時刻t1における書き込み方式の変更は、例えば、書き込みモードを設定する制御信号に基づき行う。
図16を参照して、実施の形態およびその変形例における電源方式を説明する。
図16は、メモリセルの読み出し、書き込み、および消去の各動作時に供給する3つの電源生成方式を示す。実施の形態およびその変形例では、正電源方式を前提に説明した。正電源方式は、メモリセルやウエル領域へ値の異なるいくつかの正電圧を供給する方式である。それら正電圧は、半導体装置LSIに供給される電源電圧VCCおよび電源電圧VSSに基づき、電源回路PWR(図1、図2)で生成する。正・負電源方式および負電源方式(負電源のみ供給)も、半導体装置LSIが電源電圧VCCおよび電源電圧VSSに基づき、各々生成する。これらの電源方式は、半導体基板およびウエルの構成やメモリセルのトランジスタの導電型に応じて選択される。
図16において、3つの電源方式における”読出し(Read)”、”書込み(Write)”、および”消去(Erase)”の各欄に記載の数値は、ソース線(S)、データ線(D)、およびワード線(WL)に印加される電圧(単位はV)の一例を示す。各欄において、読出し、書込み、および消去の対象とするメモリセルは破線で囲まれている。”各電源電圧(V)”の欄は、図2に示す電源回路PWRが生成する電源電圧値の一例を示す。電源電圧VDDは、メモリセルアレイMAの周辺制御回路にも適用される共通電源電圧である。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。