まず、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤について詳細に説明する。本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、フェノール化合物A〜Cからなる群から選ばれる1種以上からなるもので、フェノール系硬化剤である。以下、フェノール化合物A〜Cについて説明する。
フェノール化合物Aは、前記一般式(1)で表されるフェノール化合物である。一般式(1)において、R1は、炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素原子数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2級ブチル、イソブチル、t−ブチル等が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル、エチルフェニル、トルイル、クメニル、キシリル、プソイドクメニル、メシチル、t−ブチルフェニル、フェネチル等が挙げられる。R1としては、耐熱性が向上することから、メチル、フェニルが好ましく、メチルが最も好ましい。
一般式(1)において、aは3〜6の数を表わし、原料の工業的な入手が容易であることから、aは3〜5の数が好ましく、3〜4の数が更に好ましく、4が最も好ましい。
一般式(1)において、X1は前記一般式(4)で表わされる基を表わす。一般式(4)において、R3は炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基を表わす。炭素数2〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、1−メチルエチレン、2−メチルエチレン、2−メチルプロピレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン等が挙げられる。R3としては、耐熱性と、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。
一般式(4)において、R4は炭素原子数1〜4のアルキル基を表わす。炭素原子数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル等が挙げられる。R4としては、耐熱性から炭素原子数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、一般式(4)において、dは1〜2の数を表わし、1が好ましく、また、eは0〜3の数を表わし、耐熱性に優れることから、0が好ましい。一般式(4)では、フェノール性水酸基の位置は、特に限定されないが、エポキシ基との反応性が良好であることから、少なくとも1つの水酸基は、R3に対してパラ位にあることが好ましい。
フェノール化合物Bは、前記一般式(2)で表わされる基を複数有し且つ複数の該基が後述する特定基を介して連結された化合物であり、また、フェノール化合物Cは、前記一般式(2)で表わされる基及び前記一般式(3)で表わされる基を有し且つこれら両基が後述する特定基を介して連結された化合物である。
一般式(2)及び一般式(3)において、R2は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基が挙げられる。R2としては、耐熱性が向上することから、メチル、フェニルが好ましく、メチルが最も好ましい。また、一般式(2)及び一般式(3)において、X2は一般式(4)で表わされる基を表わす。一般式(2)及び一般式(3)のX2は、同じく一般式(4)で表される一般式(1)のX1と同様の基であり、好ましいものについても一般式(1)のX1について説明したものと同様である。また、一般式(2)及び一般式(3)において、bは2〜5の数を表わす。原料の工業的な入手が容易であることから、bは3〜5の数が好ましく、3〜4の数が更に好ましく、4が最も好ましい。また、一般式(3)において、cはb−cが0〜4の数となる1〜5の数を表わす。
前述したように、フェノール化合物Bにおいて前記一般式(2)で表わされる複数の基は特定基を介して連結されており、また、フェノール化合物Cにおいて前記一般式(2)で表わされる基と前記一般式(3)で表わされる基とは特定基を介して連結されているところ、両フェノール化合物B及びCにおけるこの特定基は、「1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下のビニル基含有特定化合物」から該ビニル基を除いた残基である。このビニル基含有特定化合物は、より具体的には、SiH基とヒドロシリル化反応が可能なビニル基を1分子中に2〜4個有し、フェノール性水酸基を有しない化合物であって、質量平均分子量が1000以下の化合物をいう。ビニル基含有特定化合物としては、例えば下記一般式(5)〜(11)で表わされる化合物が挙げられ、耐熱性からは、下記一般式(5)〜(7)で表わされる化合物が好ましく、工業的な入手の容易さからは、下記一般式(5)で表わされる化合物が好ましい。
(式中、R
5〜R
7は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、fは1〜3の数を表わし、g及びhは各々独立して0〜6の数を表わす。)
(式中、R
8〜R
10は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、jは0〜10の数を表わす。)
(式中、R
11は独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、kは3又は4の数を表わす。)
(式中、R
12及びR
13は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。)
(式中、R
14は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、グリシジル基又はアリル基を表わす。)
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(5)で表わされる化合物は、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物である。一般式(5)において、R5〜R7は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられ、耐熱性が良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。fは1〜3の数を表わし、g及びhはおのおの独立して0〜6の数を表わす。
一般式(5)において、fは1〜3の数を表わすところ、前記一般式(5)で表される化合物の好ましい具体例としては、fに応じて以下のものを例示できる。fが1である一般式(5)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、ジメチルジビニルシラン、ジエチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ジビニルジシロキサン等が挙げられ、中でもジメチルジビニルシラン、ジエチルジビニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンが好ましく、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンが更に好ましい。また、fが2である一般式(5)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、メチルトリビニルシラン、エチルトリビニルシラン、フェニルトリビニルシラン、1,1,3,5,5−ペンタメチル−1,3,5−トリビニルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3−フェニル−1,3,5−トリビニルトリシロキサン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルビニルシロキシ)フェニルシラン等が挙げられる。また、fが3である一般式(5)で表わされる化合物の中で、好ましい化合物としては、テトラビニルシラン、テトラキス(ジメチルビニルシロキシ)シラン等が挙げられる。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(6)で表わされる化合物は、1分子中に4個のビニル基を有する化合物である。一般式(6)において、R8〜R10は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられ、耐熱性が良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。jは0〜10の数を表わす。一般式(6)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、1,3−ジメチル−1,1,3,3−テトラビニルジシロキサン、1,3,3,5−テトラメチル−1,1,5,5−テトラビニルトリシロキサン、1,5−ジメチル−3,3−ジフェニル−1,1,5,5−テトラビニルトリシロキサン等が挙げられる。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(7)で表わされる化合物は、1分子中に3〜4個のビニル基を有する化合物である。一般式(7)において、R11は独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられ、耐熱性が良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、一般式(7)において、kは3又は4の数を表わし、工業的な入手の容易さから4が好ましい。一般式(7)で表される化合物の好ましい具体例としては、kに応じて以下のものを例示できる。kが3である一般式(7)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリフェニル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6−フェニル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。また、kが4である一般式(7)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラエチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン2,4,6−トリメチル−8−フェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6,8−ジフェニル−2,4,6,8−テトラビニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(8)で表わされる化合物は、1分子中に2個のビニル基を有する化合物である。一般式(8)において、R12及びR13は各々独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられ、耐熱性が良好であることからメチル、エチル、プロピル、フェニルが好ましく、メチル、エチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。一般式(8)で表される化合物の中で、好ましい化合物としては、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,3−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジエチルビニルシリル)ベンゼン等が挙げられ、1,2−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンが好ましく、1,4−ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼンが更に好ましい。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(9)で表わされる化合物は、1分子中に2〜3個のビニル基を有する化合物である。一般式(9)において、mは1〜2の数を表わすところ、一般式(9)で表される化合物の好ましい具体例としては、mに応じて以下のものを例示できる。mが1である一般式(9)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼンが挙げられる。また、mが2である一般式(9)で表わされる化合物としては、1,2,4−トリビニルベンゼン、1,3,5−トリビニルベンゼンが挙げられる。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(10)で表わされる化合物は、1分子中に2〜4個のビニル基を有する化合物である。一般式(10)において、nは1〜3の数を表わすところ、一般式(10)で表される化合物の好ましい具体例としては、nに応じて以下のものを例示できる。nが1である一般式(10)で表わされる化合物としては、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサンが挙げられる。また、nが2である一般式(10)で表わされる化合物としては、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,3,5−トリビニルシクロヘキサンが挙げられる。また、nが3である一般式(10)で表わされる化合物としては、1,2,4,5−テトラビニルシクロヘキサンが挙げられる。
前記ビニル基含有特定化合物のうち、一般式(11)で表わされる化合物は、1分子中に2〜3個のビニル基を有する化合物である。一般式(11)において、R14は炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、グリシジル基又はアリル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられる。R14としては、メチル、エチル、グリシジル、アリルが好ましい。一般式(11)で表わされる化合物の中で好ましい化合物としては、1,3−ジアリル−5−メチルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−エチルイソシアヌレート、1,3−ジアリル−5−グリシジルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート等挙げられる。
フェノール化合物B、即ち、一般式(2)で表わされる基の複数が前記特定基(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下のビニル基含有特定化合物から該ビニル基を除いた残基)を介して連結されたフェノール化合物を一般式で表わせば、下記一般式(12)で表わすことができる。
(式中、R
15は、1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下のビニル基含有特定化合物から該ビニル基を除いた残基(特定基)を表わし、pは2〜4の数を表わし、R
2、X
2及びbは一般式(2)と同義である。)
一般式(12)において、R15は1分子中に2〜4個のビニル基を有し質量平均分子量が1000以下の化合物からビニル基を除いた残基を表わす。pは、一般式(12)で表わされる化合物(フェノール化合物B)中における、一般式(2)で表わされる基の数を表わし、通常、前記ビニル基含有特定化合物(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下の化合物)からビニル基を除いて残基R15(前記特定基)とした場合における、その除かれたビニル基の数に等しい。通常、ビニル基含有特定化合物から除かれるビニル基の数は、当該ビニル基含有特定化合物が有するビニル基の総数に等しい。例えば、R15が、1分子中に2個のビニル基を有するビニル基含有特定化合物から該ビニル基を除いた残基である場合には、pは2となり、1分子中に3個のビニル基を有するビニル基含有特定化合物から該ビニル基を除いた残基である場合には、pは3となり、1分子中に4個のビニル基を有するビニル基含有特定化合物から該ビニル基を除いた残基である場合には、pは4となる。
一方、フェノール化合物C〔一般式(2)で表わされる基と一般式(3)で表わされる基とが前記特定基(前記ビニル基含有特定化合物からビニル基を除いた残基)を介して連結されたフェノール化合物〕は、高分子量になるほど複雑な構造になり、化合物自体を一般式で表わすことは困難である。フェノール化合物Cに関し、前記ビニル基含有特定化合物(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下の化合物)のビニル基の数は、ハンドリング性がよい化合物が得られることから、2が好ましい。その場合、フェノール化合物Cにおいては、一般式(2)で表わされる1つの基と一般式(3)で表わされる1つの基とが、ビニル基の数が2であるビニル基含有特定化合物からその2つのビニル基を除いた残基(特定基)を介して、連結されている。また、フェノール化合物Cの分子量があまりに大きい場合には、ハンドリング性が不良となる場合があることから、フェノール化合物Cの質量平均分子量は、30000以下であることが好ましく、20000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。尚、本発明において、質量平均分子量とは、テトラヒドロフランを溶媒としてGPC(Gel Permeation Chromatography)分析を行った場合のポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
フェノール化合物A〜Cの製造方法について説明する。一般式(1)で表されるフェノール化合物Aは、例えば、下記一般式(1a)で表される環状シロキサン化合物と、下記一般式(4a)で表されるフェノール化合物とを、ヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。
(式中、R
4、d及びeは一般式(4)と同義であり、R
16は、SiH基と反応して一般式(4)におけるR
3となる不飽和基を表わす。)
一般式(1a)において、R1及びaは一般式(1)と同義である。一般式(1a)で表される環状シロキサン化合物のうち、好ましい化合物としては、2,4,6−トリメチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリエチルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリフェニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6−フェニルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラメチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラエチルシクロトリシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニルシクロトリシロキサン、2,4,6−トリメチル−8−フェニルシクロトリシロキサン、2,4−ジメチル−6,8−ジフェニルテトラビニルシクロトリシロキサン等が挙げられる。
一般式(4a)において、R4、d及びeは一般式(4)と同義であり、R16はSiH基と反応してR2となる不飽和基を表わす。一般式(4a)で表されるフェノール化合物のうち、好ましい化合物としては、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、4−(1−フェニルビニル)フェノール、2−メチル−4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、3−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、3−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノール、4−(3−ブテニル)フェノール、4−(4−ペンテニル)フェノール、4−(5−ヘキセニル)フェノール、4−(6−ヘプテニル)フェノール、4−(7−オクテニル)フェノール、4−(8−ノネニル)フェノール、4−(9−デセニル)フェノール、2−ビニル−1,4−ジヒドロキシベンゼン、5−ビニル−1,3−ジヒロロキシベンゼン等が挙げられる。これらのフェノール化合物の中でも、工業的に入手が容易であること及び硬化物の耐熱性の面からは、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノールが好ましく、2−ビニルフェノール、4−ビニルフェノールが更に好ましく、4−ビニルフェノールが最も好ましい。一般式(4a)で表されるフェノール化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
一般式(1a)で表される環状シロキサン化合物と、一般式(4a)で表されるフェノール化合物とのヒドロシリル化反応は、触媒(ヒドロシリル化触媒)を用いて行うことが好ましく、ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等が挙げられる。白金系触媒としては、例えば、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(KaRstedt触媒)、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金−オクチルアルデヒド錯体、白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt[P(C6H5)3]4、PtCl[P(C6H5)3]3、Pt[P(C4H9)3)4])、白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OC6H5)3]4、Pt[P(OC4H9)3]4)、ジカルボニルジクロロ白金等が挙げられる。パラジウム系触媒又はロジウム系触媒としては、例えば、前記白金系触媒の白金原子の代わりにパラジウム原子又はロジウム原子を含有する化合物が挙げられる。これらのヒドロシリル化触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。ヒドロシリル化触媒としては、反応性の点から、白金系触媒が好ましく、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体及び白金−カルボニルビニルメチル錯体が更に好ましく、白金−カルボニルビニルメチル錯体が最も好ましい。また、ヒドロシリル化触媒の使用量は反応性の点から、各原料の合計量の5質量%以下が好ましく、0.0001〜1.0質量%が更に好ましく、0.001〜0.1質量%が最も好ましい。ヒドロシリル化反応の反応条件は特に限定されず、前記ヒドロシリル化触媒を使用して従来公知の条件で行なえばよいが、反応速度の点から、ヒドロシリル化反応は室温(25℃)〜130℃で行なうのが好ましく、また、反応時にトルエン、ヘキサン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の従来公知の溶媒を使用してもよい。
また、一般式(4a)で表されるフェノール化合物の代わりに、下記一般式(4at)で表される化合物を、一般式(1a)で表される環状シロキサン化合物と反応させてから、下記一般式(4at)においてX4で表されるt−ブチル基等の酸解離性保護基を脱離して、一般式(1)で表されるフェノール化合物Aを得てもよい。下記一般式(4at)で表される化合物は、一般式(4a)で表されるフェノール化合物と同様の条件で、一般式(1a)で表される環状シロキサン化合物と反応させることができる。
(式中、R
4、d及びeは一般式(4)と同義であり、R
16は一般式(4a)と同義であり、X
4は酸解離性保護基を表わす。)
前記一般式(4at)において、X4は酸解離性保護基を表わす。本発明において、酸解離性保護基とは、酸性条件化で脱離可能な保護基を言う。酸解離性保護基としては、例えば、t−ブチル、t−ペンチル等の3級アルキル基;メトキシメチル、エトキシメチル、ベンジルオキシメチル、1−エトキシエチル等の1−アルコキシアルキル基;トリメチルシリル、トリエチルシリル等のトリアルキルシリル基;t−ブトキシカルボニル、t−ペンチロキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基等が挙げられる。X4としては、酸解離性に優れ、工業的な原料の入手が容易であることから、3級アルキル基、アルコキシメチル基が好ましく、3級アルキル基が更に好ましく、t−ブチルが最も好ましい。
酸解離性保護基を脱離する場合の酸触媒としては、副反応が少なく温和な条件で反応できることから、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体が好ましい。このような脱離反応は、有機溶剤中で行うことが好ましく、有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;1−メトキシ−エタノール、1−エトキシ−エタノール、1−プロポキシ−エタノール、1−イソプロポキシ−エタノール、1−ブトキシ−エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール等のエーテルアルコール類;1−メトキシ−エチルアセテート、1−エトキシ−エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート等のエーテルアルコールの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)等のケトアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類等が挙げられ、中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフランが好ましい。
フェノール化合物B及びCは、例えば、下記一般式(2a)で表される環状シロキサン化合物と、前記ビニル基含有特定化合物(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下の化合物)及び前記一般式(4a)で表されるフェノール化合物とを、ヒドロシリル化反応させることにより得ることができる。ヒドロシリル化反応の反応条件は、前述したフェノール化合物Aの製造方法におけるものと同様の条件とすることができる。一般式(4a)で表されるフェノール化合物の代わりに、一般式(4at)で表される化合物を使用してもよく、酸解離性脱離基を脱離する場合は、フェノール化合物Aの製造方法におけるものと同様の条件で脱離させればよい。
前記一般式(2a)で表される環状シロキサン化合物と、前記ビニル基含有特定化合物及び前記一般式(4a)で表されるフェノール化合物とのヒドロシリル化反応では、通常、フェノール化合物Bとフェノール化合物Cとの混合物が得られる。該混合物の分子量があまりに大きい場合には、ハンドリング性が不良となる場合がある。斯かる点に鑑み、フェノール化合物Bとフェノール化合物Cとの混合物としての質量平均分子量は30000以下であることが好ましく、20000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
フェノール化合物Bとフェノール化合物Cとの混合物を製造せずに、フェノール化合物Bのみを選択的に製造する場合は、前記ビニル基含有特定化合物(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下の化合物)のビニル基に対して、一般式(2a)で表される環状シロキサン化合物を過剰に、好ましくは、前記ビニル基含有特定化合物のビニル基1モルに対して、一般式(2a)で表される環状シロキサン化合物を1.5モル以上用いて反応させ、その反応後に過剰の一般式(2a)で表される環状シロキサン化合物を除去した後に、一般式(4a)で表されるフェノール化合物を反応させればよい。
本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、従来のエポキシ樹脂用フェノール系硬化剤と同様に、常温で反応せず加熱によって反応が起こる、いわゆる潜在性硬化剤である。本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、通常、常温で液状でありハンドリング性に優れ、従来のエポキシ樹脂用フェノール系硬化剤に比べ、耐熱性及びエポキシ樹脂との反応性に優れ、従来のエポキシ樹脂用フェノール系硬化剤と同様の用途に好適に使用できる。本発明のエポキシ樹脂用硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させた硬化物は、耐熱性、電気特性、機械特性、透明性等に優れ、塗料、接着剤、各種成形材料等の幅広い用途に好適に使用できる。
次に、本発明のエポキシ樹脂組成物について詳細に説明する。本発明のエポキシ樹脂組成物は、前述した本発明のエポキシ樹脂用硬化剤とエポキシ樹脂とを含有する。本発明の硬化剤をエポキシ樹脂に配合することにより、熱硬化が可能なエポキシ樹脂組成物が得られる。本発明において、エポキシ樹脂とは、分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物をいう。エポキシ樹脂としては、分子中のケイ素原子の有無により、「分子中にケイ素原子を含有しないエポキシ樹脂」と「分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂」とに大別することができる。
分子中にケイ素原子を含有しないエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ブロム化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等のビスフェノール化合物のジグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;グリセリントリグリシジルエーテル、ポリアルキレンオキサイドのグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルのポリオール化合物のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;オキシ安息香酸のグリシジルエステルエーテル、ダイマー酸のグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;フェノールノボラックのグリシジルエーテル、クレゾールノボラックのグリシジルエーテル等のノボラックのグルシジルエーテル系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化ポリイソプレン等のエポキシ化ポリジエン化合物;エポキシ化大豆油、エポキシ化菜種油、エポキシ化ひまし油用のエポキシ化油脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、1,2−エポキシ−ビニルシクロヘキセンオリゴマー、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメタノール、ジシクロペンタジエンジエポキシド等の脂環式エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。
分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂は、分子中に少なくとも1つのケイ素原子を有するエポキシ樹脂であり、耐熱性の点から、シロキサン結合(−Si−O−Si−)を有するエポキシ樹脂が好ましい。シロキサン結合を有するエポキシ樹脂としては、下記一般式(13)で表わされる直線状エポキシ化合物、下記一般式(14)で表わされる環状エポキシ化合物、下記一般式(15)で表わされる鎖状構造と環状構造とを有するエポキシ化合物、下記一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物等が挙げられる。
(式中、R
17〜R
21は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、X
3はエポキシ含有基又はメチル基を表わし、Eはエポキシ含有基を表わし、qは0〜1000の数を表わし、rは0〜1000の数を表わす。但し、qが0又は1の場合には、X
3はエポキシ含有基を表わす。)
(式中、R
22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、Eはエポキシ含有基を表わし、sは3〜6の数を表わす。)
(式中、R
23〜R
27はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、Eはエポキシ含有基を表わし、tは2〜5の数を表わし、uは0〜3000の数を表わす。)
(式中、R
28は炭素数1〜4のアルキル基を表わし、R
29は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、Eはエポキシ含有基を表わし、wは2〜3の数を表わす。)
一般式(13)〜(16)において、Eで表わされるエポキシ含有基は、1つ以上のエポキシ基を含有する基であり、エポキシ含有基としては、下記式(17)〜(27)等の脂肪族エポキシ基、下記式(28)〜(30)等の芳香族エポキシ基、下記式(31)〜(35)等の脂環式エポキシ基等が挙げられる。
一般式(13)において、R17〜R21は同一でも異なっていてもよい炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられる。R17〜R21としては、メチル、エチル、フェニルが好ましく、メチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。qは0〜1000の数を表わし、rは0〜1000の数を表わす。X3はエポキシ含有基又はメチル基を表わすが、qが0又は1の場合には、エポキシ含有基を表わす。
一般式(13)で表される直線状シロキサン化合物の分子中のエポキシ基の割合があまりに少ない場合には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的物性が低下する場合があることから、一般式(13)で表される直線状シロキサン化合物のエポキシ当量は、1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。尚、エポキシ当量とは、エポキシ基1個当たりの分子量、即ち、1当量のエポキシ基を含むエポキシ化合物の質量(グラム数)である。
一般式(13)で表される直線状シロキサン化合物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、高粘度でハンドリング性が不良となる場合があることから、質量平均分子量が200000以下であることが好ましく、50000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
一般式(14)において、R22は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられる。R22としては、メチル、エチル、フェニルが好ましく、メチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、一般式(14)において、sは3〜6の数を表わし、原料の工業的な入手の容易さから、3〜5の数が好ましく、3〜4の数が更に好ましく、4が最も好ましい。
一般式(15)において、R23〜R27はそれぞれ独立して炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わし、炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられる。R23としては、原料の入手が容易であることから、メチル、エチル、フェニルが好ましく、メチル、フェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。R24、R25としては、原料の反応性が良好であることから、メチル、エチルが好ましく、メチルが更に好ましい。R26、R27としては、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性の点からは、メチル、フェニルが好ましく、フェニルが更に好ましいが、該硬化物の可撓性の点からは、メチル、エチルが好ましい。R26、R27として特に好ましいのは、メチルとフェニルとの組み合わせであり、その場合、一般式(15)において繰り返し単位数がuで表わされるユニットは、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、ジフェニルシロキシの組み合わせとなる。R26、R27がメチルとフェニルとの組み合わせである場合、メチル基とフェニル基との比(メチル基:フェニル基)は、モル比で99:1〜50:50であることが好ましく、95:5〜60:40であることが更に好ましく、90:10〜65:35であることが最も好ましい。
一般式(15)において、tは2〜5の数を表わし、原料の工業的な入手の容易さから、2〜4の数が好ましく、2〜3の数が更に好ましく、3が最も好ましい。
一般式(16)において、R28は炭素数1〜4のアルキル基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル等が挙げられ、反応性が良好であることからメチル、エチルが好ましく、メチルが更に好ましい。
一般式(16)において、R29は炭素数1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基を表わす。炭素数1〜4のアルキル基及び炭素数6〜10のアリール基としては、一般式(1)のR1で例示した基等が挙げられる。R29としては、耐熱性が良好となることから、メチル、エチル、フェニルが好ましく、メチル、フェニルが更に好ましく、フェニルが最も好ましい。また、一般式(16)において、wは2〜3の数を表わし、機械的強度に優れた硬化物が得られることから、wは3が好ましい。
前述したように、シロキサン結合を有するエポキシ樹脂(分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂)は、一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物として得ることができる。一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合反応は、必要に応じて酸触媒又は塩基触媒を使用し、有機溶媒中で行えばよい。加水分解縮合反応に用いる有機溶媒としては、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、トルエン等が挙げられる。酸触媒としては、塩酸、リン酸、硫酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピル等の有機酸類が挙げられ、塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン化合物(有機塩基)類等が挙げられる。加水分解縮合反応の温度は、溶媒の種類、触媒の種類及び量等により変わるが、0〜80℃が好ましく、5〜50℃が更に好ましく、8〜30℃が最も好ましい。
一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物は、一般式(16)で表わされる化合物のみの加水分解縮合物でもよいが、一般式(16)で表わされる化合物とエポキシ基を含有しない他のアルコキシシラン化合物との加水分解縮合物でもよい。エポキシ基を含有しない他のアルコキシシラン化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン等が挙げられる。
一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物中のエポキシ基の割合があまりに少ない場合には、本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の機械的物性が低下する場合があることから、一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物のエポキシ当量は、1000以下であることが好ましく、700以下であることが更に好ましく、350以下であることが最も好ましい。
一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物の分子量は、特に限定されないが、あまりに大きい場合には、高粘度でハンドリング性が不良となる場合があることから、質量平均分子量が200000以下であることが好ましく、50000以下であることが更に好ましく、10000以下であることが最も好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物に含有されるエポキシ樹脂としては、透明性及び耐熱性に優れた硬化物が得られることから、分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂(シロキサン結合を有するエポキシ樹脂)が好ましい。硬度が高く耐擦傷性に優れた硬化物が要求される場合には、分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂の中でも、前記一般式(14)で表わされる環状エポキシ化合物、前記一般式(16)で表わされる化合物の加水分解縮合物が好ましく、前記一般式(14)で表わされる環状エポキシ化合物が更に好ましい。また、可撓性に優れた硬化物が要求される場合には、前記一般式(13)で表わされる直線状エポキシ化合物、前記一般式(15)で表わされる鎖状構造と環状構造とを有するエポキシ化合物が好ましく、前記一般式(15)で表わされる鎖状構造と環状構造とを有するエポキシ化合物が更に好ましい。また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、必要に応じて、2種以上のエポキシ樹脂を組み合わせて用いてもよい。
ところで、エポキシ基を分類する場合に、エポキシ基を含有する分子における当該エポキシ基の位置に基づき、分子の末端に存在するエポキシ基を「末端エポキシ基」、分子の末端以外の部位に存在するエポキシ基を「内部エポキシ基」とする場合がある。末端エポキシ基は、下記一般式(36)のように、オキシラン環がメチレン基を有しているところに特徴があるのに対し、内部エポキシ基は、オキシラン環がメチレン基を有していない。例えば、前記式(17)〜(35)のエポキシ基含有基のうち、前記式(17)〜(30)が末端エポキシ基であり、前記式(31)〜(35)が内部エポキシ基である。また、分子中にケイ素原子を含有しないエポキシ樹脂のうち、内部エポキシ基を有するものとしては、例えば、エポキシ化油脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物のエポキシ樹脂のエポキシ基としては、前述した本発明の硬化剤との反応性が良好であることから、内部エポキシ基が好ましい。本発明の硬化剤は、内部エポキシ基との反応に優れており、反応系の温度が180℃以上であれば、触媒や反応促進剤がなくても硬化反応が可能であり、良好な硬化物を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物において、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との含有比は、エポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、該硬化剤のフェノール性水酸基が0.6〜1.15モルとなるように調整することが好ましく、0.7〜1.1モルとなるように調整することがさらに好ましく、0.8〜1.05モルとなるように調整することが最も好ましい。前記含有比がこの範囲外では、十分な硬化が得られない場合がある。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤及びエポキシ樹脂に加えて、必要に応じ更に、任意成分として、硬化促進剤、無機性フィラー、帯電防止剤、耐候性付与剤、離型剤等を含有してもよい。本発明のエポキシ樹脂組成物において、これらの任意成分の含有量は、本発明のエポキシ樹脂組成物の効果を損なわないようにする観点から、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して、無機性フィラーを除く任意成分の量が20質量%以下の範囲とすることが好ましい。
硬化促進剤は、本発明の硬化剤のフェノール性水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基との反応を促進させることができる化合物であり、例えば、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等の有機ホスフィン類;1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン等のジアザビシクロウンデセン類;トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン等の3級アミン類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール類等が挙げられる。これらの硬化促進剤の中では、有機ホスフィン類、イミダゾール類が好ましく、トリフェニルホスフィン、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールがより好ましい。硬化促進剤を含有させる場合、本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化促進剤の含有量は、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して、0.05〜3質量%であることが好ましい。
但し、前述した本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ基との反応性が良好であるため、該硬化剤とエポキシ樹脂とを含有する本発明のエポキシ樹脂組成物は、前記硬化促進剤を含有していなくても、加熱のみで十分に硬化し得る。硬化促進剤は、フェノール性水酸基とエポキシ基との反応を促進させ、本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化温度を低下させることが可能であるが、硬化促進剤を用いると、耐熱性の低下による着色や強度の低下等の物性低下の原因となる場合があることから、本発明のエポキシ樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂が、内部エポキシ基を有するエポキシ樹脂である場合、又は分子中にケイ素原子を有するエポキシ樹脂である場合には、本発明のエポキシ樹脂組成物の耐熱性の点からは、硬化促進剤を含有しないことが好ましい。
無機性フィラーは、いわゆる充填剤、鉱物等の無機材料及びそれらを有機変性処理等により改質したものを指す。具体的には、例えば、コロイダルシリカ、シリカフィラー、シリカゲル等の二酸化ケイ素類;酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ベリリウム等の金属酸化物;マイカ、モンモリロナイト、けい石、珪藻土、セリサイト、カオリナイト、フリント、長石粉、蛭石、アタパルジャイト、タルク、ミネソタイト、パイロフィライト等の鉱物類;窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素等のセラミックス類;これらを有機変性処理等によって改質したものが挙げられる。これらの無機性フィラーの粒径は、耐熱性の点から100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物における無機性フィラーの含有量は、エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物に対する要求性能に応じて適宜設定することができ、例えば、硬化物の透明性を重視する場合には、無機性フィラーを使用しないか又はできる限り少量の無機性フィラーの使用が好ましいので、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して0〜10質量%が好ましく、また、硬化物の耐熱性向上、増粘、チクソ性付与等を目的として無機性フィラーを使用する場合には、該合計量に対して10〜90質量%が好ましい。
帯電防止剤としては、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、トリアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、ポリアミン四級塩等のカチオン系帯電防止剤;高級脂肪酸塩、アルケニルコハク酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルファスルホ脂肪酸エステル塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物硫酸エステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキシド付加物リン酸エステル塩等のアニオン系帯電防止剤;多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコール脂肪酸エステル、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸エステルポリエチレングリコール、高級アルコールエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールエチレンオキシド付加物、ジエタノールアミン脂肪酸アミド等のノニオン系帯電防止剤;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性型アルキルベタイン、イミダゾリン型両性活性剤、アルキルアミンオキシド等の両性帯電防止剤が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物における耐候性付与剤の含有量は、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して、0.0001〜10質量%が好ましく、0.005〜5質量%が更に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。
耐候性付与剤としては、光安定剤、紫外線吸収剤、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。光安定剤としては、ヒンダードアミン類等が挙げられ、紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、2−(2−ヒドロキシフェニル)トリアジン類、ベンゾエート類、シアノアクリレート類等が挙げられ、フェノール系酸化防止剤としては、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−t−ブチル−メチルフェノール(BHT又はDBPC)等が挙げられ、硫黄系酸化防止剤としては、ジアルキルチオジプロピオネート類、β―アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられ、リン系酸化防止剤としては、有機ホスファイト類が挙げられる。本発明のエポキシ樹脂組成物における耐候性付与剤の含有量は、透明性、耐熱性、電気特性、硬化性、力学特性、保存安定性及びハンドリングの点から、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して、0.0001〜10質量%が好ましく、0.005〜5質量%が更に好ましく、0.05〜1質量%が最も好ましい。
離型剤としては、例えば、ステアリン酸、モンタン酸及びミスチリン酸等の脂肪酸、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸カルシウム等の脂肪族酸金属塩、リン酸エステル等の界面活性剤、カルナバワックス、カルボシキル基含有ポリオレフィン等が挙げられ、カルナバワックスが好ましい。本発明のエポキシ樹脂組成物における離型剤の含有量は、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂との合計量に対して、0.0001〜1質量%が好ましく、0.005〜0.3質量%が更に好ましく、0.05〜0.1質量%が最も好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、常温で液状であり、加熱によって硬化して硬化物となる。前述した本発明のエポキシ樹脂用硬化剤は、エポキシ基との反応性が良好であり、本発明の硬化剤とエポキシ樹脂とを含有する本発明のエポキシ樹脂組成物は、いわゆる一液型のエポキシ樹脂組成物として、硬化促進剤を使用せずに加熱のみでエポキシ樹脂が硬化して硬化物となることが可能である。本発明のエポキシ樹脂組成物の加熱処理(硬化処理)の条件(加熱温度、加熱時間)は、含有するエポキシ樹脂の種類等によって異なるところ、該エポキシ樹脂組成物が含有する本発明の硬化剤は、特に前記内部エポキシ基との反応性が良好であるため、含有するエポキシ樹脂が前記内部エポキシ基を有する場合は、前記加熱処理の条件を比較的緩やかに設定することが可能である。例えば、本発明のエポキシ樹脂組成物が、本発明の硬化剤と、エポキシ基が前記内部エポキシ基であるエポキシ樹脂とからなる場合には、該エポキシ樹脂組成物の加熱処理(硬化処理)において、加熱温度を好ましくは180〜250℃、更に好ましくは200〜230℃とし、加熱時間を好ましくは30〜180分間、更に好ましくは60〜90分間とすることにより、該エポキシ樹脂組成物を硬化させることができる。これに対し、本発明のエポキシ樹脂組成物が、本発明の硬化剤と、エポキシ基が前記末端エポキシ基であるエポキシ樹脂とからなる場合には、該エポキシ樹脂組成物の加熱処理(硬化処理)において、加熱温度を好ましくは210〜260℃、更に好ましくは220〜240℃とし、加熱時間を好ましくは30〜180分間、更に好ましくは60〜90分間とすることにより、該エポキシ樹脂組成物を硬化させることができる。尚、本発明のエポキシ樹脂組成物において、硬化促進剤の配合は任意であるが、硬化促進剤を配合することにより、加熱温度(硬化温度)の低下や加熱時間(硬化時間)の短縮が可能であり、特に、熱劣化しやすいエポキシ樹脂を使用する場合には硬化促進剤を配合することが好ましい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、加熱処理等の硬化処理により、透明性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的性質等に優れた硬化物となることから、半導体素子の封止材、半導体素子の絶縁材、半導体装置用中空パッケージ形成材料、画像表示装置の画像表示面のハードコート材料、トップコート材等の用途に好適に使用できる。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例1〜14のうち、実施例1〜5及び12は参考例である。
〔製造例1〕硬化剤A−1の製造
窒素ガス導入管、温度計、冷却管、攪拌装置を備えたガラス製反応容器に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンを24g(0.1モル)、溶剤としてトルエンを100g、及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)を各原料の合計量の0.0001質量%加えて、攪拌しながら、60℃で、パラ−t−ブトキシスチレン70.5g(0.4モル)を2時間かけて滴下し、更に60℃で15時間撹拌し反応させた。60℃で減圧することにより、溶媒のトルエンを留去させた後、溶媒として1−メトキシ−2−プロパノールアセテート200g、触媒として三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体2gを添加し、80℃で3時間攪拌することによりt−ブチル基を脱離させた。この後、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10g加えて、80℃で1時間攪拌し、スラリー液を得た。このスラリー液を濾過して、固形物を除去し、減圧して溶媒を除去することにより、収率87%で本発明の硬化剤A−1を得た。硬化剤A−1は、一般式(1)で表わされるフェノール化合物Aであり、一般式(1)において、R1がメチル、X1が2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、aが4である、フェノール化合物である。
〔製造例2〕硬化剤A−2の製造
製造例1と同様の反応容器に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンを24g(0.1モル)、溶剤としてトルエンを100g、及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)を各原料の合計量の0.0001質量%加えて、攪拌しながら、60℃で、ジメチルジビニルシラン5.6g(0.05モル)を30分かけて滴下し、更に60℃で5時間撹拌し反応させた。この反応液に、パラ−t−ブトキシスチレン52.9g(0.3モル)を2時間かけて滴下し、更に60℃で15時間撹拌し反応させた。以下、製造例1と同様の操作を行い、収率85%で本発明の硬化剤A−2を得た。硬化剤A−2は、一般式(2)で表わされる基を複数有し且つ複数の該基が特定基を介して連結されたフェノール化合物Bであり、一般式(2)において、R2がメチル、X2が2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、bが3であり、且つ前記特定基が、前記ビニル基含有特定化合物(1分子中に2〜4個のビニル基を有し且つ質量平均分子量が1000以下の化合物)であるジメチルジビニルシランから全てのビニル基を除いた残基(即ち、ジメチルシリレン基)である、フェノール化合物である。
〔製造例3〕硬化剤A−3の製造
製造例1と同様の反応容器に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンを24g(0.1モル)、溶剤としてトルエンを100g、及び触媒として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)を各原料の合計量の0.0001質量%加えて、攪拌しながら、60℃で、1,4−ジビニルベンゼン6.5g(0.08モル)を30分かけて滴下し、更に60℃で5時間撹拌し反応させた。この反応液に、パラ−t−ブトキシスチレン42.3g(0.24モル)を2時間かけて滴下し、更に60℃で15時間撹拌し反応させた。以下、製造例1と同様の操作を行い、収率83%で本発明の硬化剤A−3を得た。硬化剤A−3は、一般式(2)で表わされる基及び一般式(3)で表わされる基を有し且つこれら両基が特定基を介して連結されたフェノール化合物Cであり、一般式(2)及び一般式(3)において、R2がメチル、X2が2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、bが3であり、一般式(3)において、cが1〜3であり、且つ前記特定基が、前記ビニル基含有特定化合物である1,4−ジビニルベンゼンから全てのビニル基を除いた残基(即ち、1,4−フェニレン基)である、フェノール化合物である。
軟化点85℃、水酸基当量105のフェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社製、商品名「H−100」)を、本発明の範囲外の硬化剤である硬化剤B−1とした。
特開2000−169537号公報(特許文献3)の実施例1に準拠して調製したフェノール/o−クレゾールノボラック樹脂(質量平均分子量740、水酸基当量127)を、本発明の範囲外の硬化剤である硬化剤B−2とした。
〔実施例1〜14、比較例1〜12〕エポキシ樹脂組成物の製造及び評価
前記各硬化剤(フェノール系硬化剤)と下記エポキシ樹脂C−1〜5及び下記硬化促進剤D−1とを用いて、表1に示す組成にて実施例1〜14、比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物をそれぞれ製造した。表1中のカッコ内の数値は、エポキシ樹脂組成物における各成分の含有量(質量部)を示す。尚、何れのエポキシ樹脂組成物においても、硬化剤とエポキシ樹脂との含有比は、エポキシ樹脂組成物中のフェノール性水酸基とエポキシ基とが等モルとなるように調整した。
エポキシ樹脂C−1:下記式(37)で表わされる化合物(2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラキス{2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル}シクロテトラシロキサン)
エポキシ樹脂C−2:下記式(38)で表わされる化合物
エポキシ樹脂C−3:3,4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート
エポキシ樹脂C−4:2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラキス(3−グリシドキシプロピル)シクロテトラシロキサン
エポキシ樹脂C−5:ビスフェノールAジグリシジルエーテル
硬化促進剤D−1:トリフェニルホスフィン
尚、前記各エポキシ樹脂のうち、C−1、C−2、C−3は、前記内部エポキシ基を有するエポキシ樹脂、C−4、C−5は、前記末端エポキシ基を有するエポキシ樹脂であり、また、C−1、C−2、C−4は、分子中にケイ素原子を含有するエポキシ樹脂、C−3、C−5は、分子中にケイ素原子を含有しないエポキシ樹脂である。
実施例1〜14、比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物について、下記方法により、該組成物の流動性及び反応性(ゲル化時間)並びに硬化物の耐熱性を評価した。結果を表2に示す。
<流動性>
JIS K2269(原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法)に規定する目盛り付き試験管(内径30mm、高さ120mmの平底円筒型透明ガラス製試験管で、管底から55mm及び85mmの高さのところに標線〔以下、管底から55mmの高さの標線を「A線」、管底から85mmの高さの標線を「B線」という〕があるもの)を用いた。試験管の管底からA線まで評価対象のエポキシ樹脂組成物を入れ、ゴム栓で密栓した後、試験管を直立状態で25℃の恒温槽に1時間保管した。その後、直立状態のまま試験管を取り出し、直ちに台の上に水平に倒し、試験管を倒してから試験内のエポキシ樹脂組成物の液面の先端がB線を通過するまでの時間を測定し、以下の基準で流動性を判定した。
○:B線を通過するまでの時間が10秒未満であり流動性に優れる。
△:B線を通過するまでの時間が10秒以上、90秒未満であり流動性がやや不良である。
×:B線を通過するまでの時間が90秒以上であり流動性が不良である。
<ゲル化時間>
JIS K5600−9−1(塗料一般試験方法−第9部:粉体塗料−第1節:所定温度での熱硬化性粉体塗料のゲルタイムの測定方法)の方法に準じ、評価対象のエポキシ樹脂組成物のゲル化時間を測定した。尚、実施例1〜11、比較例1〜10のエポキシ樹脂組成物(硬化促進剤を含有する組成物)については、160℃におけるゲル化時間を測定し、実施例12〜14、比較例11〜12のエポキシ樹脂組成物(硬化促進剤を含有しない組成物)については、220℃におけるゲル化時間を測定した。
<硬化物の耐熱性>
評価対象のエポキシ樹脂組成物をメチルイソブチルケトンに溶解し、メチルイソブチルケトンの40重量%溶液を調製した。この溶液を、1辺20mmの正方形のガラス基板に乾燥後の膜厚が10μmになるよう塗布した。このガラス基板を90℃でプレベイクした後、窒素雰囲気下230℃で1時間加熱し、前記溶液の塗膜を硬化させてガラス基板上に硬化物を形成し、これを試験片とした。各試験片について、紫外可視分光光度計を用いて、波長400nmの光の透過率を測定した後、大気雰囲気下230℃で1時間加熱処理した。加熱処理後の試験片について、波長400nmにおける光の透過率を測定し、加熱処理前の透過率に対する加熱処理後の透過率の減少率(%)を算出した。この透過率の減少率が小さいほど、硬化物の耐熱性が高いことを示す。
表2から明らかなように、本発明の硬化剤を用いた実施例1〜14のエポキシ樹脂組成物は、本発明の範囲外の硬化剤を用いた比較例1〜12のエポキシ樹脂組成物に比して流動性に優れており、また、ゲル化時間についても、同じエポキシ樹脂を使用した比較例よりも短縮されており、ハンドリング性に優れている。また、実施例1〜14のエポキシ樹脂組成物は、硬化物の耐熱性についても良好な結果を残しており、以上のことから、本発明のエポキシ樹脂用硬化剤及びそれを含有するエポキシ樹脂組成物の有用性が明らかである。