本発明の細胞培養基板に形成される、前記の一般式(1)で表される基、及び/又は前記の一般式(2)で表される基を有するシリコーン樹脂(以下、本発明のシリコーン樹脂という場合がある)について説明する。
一般式(1)において、R1は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン及びデセンが挙げられ、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。R1において有してもよい置換炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、フェニルなどが挙げられるが、工業的な入手の容易さから、置換炭化水素基を有しないことが好ましい。なお、置換炭化水素基を有する場合は、置換炭化水素基を含めたR1全体で炭素数が1〜10である。
R2は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチルなどが挙げられる。R2としては、細胞密着性の点から炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。
aは0又は1〜4の数を表し、bは1〜3の数を表すが、a+bは5を超えない。aが2〜4の数の場合には、複数あるR2は、互いに同一のアルキル基でもよいし、異なるアルキル基でもよい。耐熱性から、aは0又は1の数が好ましく、0が更に好ましい。bは工業的な入手の容易さから、1又は2の数が好ましく、1の数が更に好ましい。
一般式(1)で表される基のカルボキシル基の位置は、特に限定されないが、耐熱性が向上することから、カルボキシル基の1つが、R2に対してパラ位にあることが好ましい。
一般式(2)において、R3は、置換炭化水素基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキレン基を表す。炭素数1〜10のアルキレン基としては、R1で挙げたアルキレン基が挙げられ、工業的な入手の容易さから、エチレン、プロピレン及びブチレンが好ましく、エチレン及びブチレンが更に好ましく、エチレンが最も好ましい。R1において有してもよい置換炭化水素基としては、R1で挙げた炭化水素基などが挙げられるが、耐熱性からは、置換炭化水素基を有しないことが好ましい。置換炭化水素基を有する場合のR3の炭素数はR1の場合と同様である。前記の一般式(1)で表される基と前記の一般式(2)で表される基の両方を有するシリコーン樹脂の場合、R1とR3とは、同一でも異なっていてもよい。
R4は、炭素数1〜4のアルキル基を表す。炭素数1〜4のアルキル基としては、R2で挙げたアルキル基などが挙げられる。R4としては、耐熱性から炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。前記の一般式(1)で表される基と前記の一般式(2)で表される基の両方を有するシリコーン樹脂の場合、R2とR4とは、同一でも異なっていてもよい。
cは0又は1〜4の数を表し、dは1〜3の数を表すが、c+dは5を超えない。cが2〜4の数の場合には、複数あるR4は、互いに同一のアルキル基でもよいし、異なるアルキル基でもよい。耐熱性から、cは0又は1の数が好ましく、0が更に好ましい。dは工業的な入手の容易さから、1又は2の数が好ましく、1が更に好ましい。
一般式(2)で表される基のフェノール性水酸基の位置は、特に限定されないが、耐熱性が向上することから、フェノール性水酸基の1つが、R4に対してパラ位にあることが好ましい。
本発明のシリコーン樹脂において、一般式(1)で表される基と一般式(2)で表される基との含量は、一般式(1)で表される基と一般式(2)で表される基との合計量が、シリコーン樹脂中に、0.1〜50質量%であることが好ましく、0.5〜40質量%であることが更に好ましく、1〜30質量%であることが最も好ましい。また、本発明のシリコーン樹脂中における、一般式(1)で表される基の含量に対する一般式(2)で表される基の含量は、モル比で、0〜1であることが好ましく、0.01〜0.7であることが更に好ましく、0.02〜0.5であることが最も好ましい。
本発明のシリコーン樹脂は細胞接着性が高く、細胞基板上にパターニングされることにより、培養される細胞の接着位置や形態を適切にコントロールすることが可能となる。パターニングの方法としては、簡便であり、微細な加工が可能であることから、フォトリソグラフィによるパターニング微細加工が好ましい。フォトリソグラフィによるパターニングに適したシリコーン樹脂としては、ポジ型感光性樹脂組成物から得られるシリコーン樹脂、又は光硬化性樹脂組成物から得られるシリコーン樹脂等が挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂が得られる、好ましいポジ型感光性樹脂組成物としては、例えば、下記の樹脂組成物Iおよび樹脂組成物IIが挙げられる。
<樹脂組成物I>
前記一般式(1)で表される基及び/又は前記一般式(2)で表される基を1分子中に少なくとも2個有するシロキサン化合物(以下、シロキサン化合物(A)という)、ジアゾナフトキノン類、及び有機溶剤を含有するポジ型感光性組成物。
<樹脂組成物II>
下記の一般式(3)で表される環状シロキサン化合物、及び/又は該環状シロキサン化合物とSi−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物とをヒドロシリル化反応させて得られるシロキサン化合物(以下、シロキサン化合物(B)という)と、
下記の一般式(1a)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2a)で表される化合物とを、
ヒドロシリル化反応させて得られるシロキサン化合物(以下、シロキサン化合物(C)という);並びに
光酸発生剤を含有するポジ型感光性組成物。
本発明のシリコーン樹脂が得られる、好ましい光硬化性樹脂組成物としては、例えば、下記の樹脂組成物IIIが挙げられる。
<樹脂組成物III>
前記一般式(1)で表される基、前記一般式(2)で表される基、下記一般式(1b)で表される基、及び下記一般式(2b)で表される基からなる群から選択される一種以上の基と、エポキシ基とを有するシロキサン化合物(以下、シロキサン化合物(D)という)、並びに光酸発生剤を含有する光硬化性樹脂組成物。
樹脂組成物Iについて説明する。シロキサン化合物(A)は、一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物若しくはクロロシラン化合物、及び/又は一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物若しくはクロロシラン化合物を加水分解・縮合反応させる方法;Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、下記一般式(1c)で表される化合物及び/又は下記の一般式(2c)で表される化合物をヒドロシリル化反応させる方法などにより製造することができる。
シロキサン化合物(A)をアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物を加水分解・縮合反応させる方法では、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物のどちらを使用してもよいが、反応の制御や副生物の処理が容易であることから、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。
一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリエトキシシランが挙げられ、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシエチルシランが好ましく、2−(4−カルボキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−カルボキシフェニル)エチルジメトキシメチルシランが更に好ましい。
また、一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物のうち、好ましい化合物の具体例としては、例えば、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジエトキシエチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシランが挙げられ、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシエチルシランが好ましく、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルジメトキシメチルシランが更に好ましい。
これらのアルコキシシラン化合物の加水分解・縮合反応は、いわゆるゾル・ゲル反応を行えばよく、溶媒中で、酸または塩基などの触媒を使用して加水分解・縮合反応を行う方法が挙げられる。この時に用いられる溶媒は特に限定されず、具体的には、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフランなどが挙げられる。加水分解反応は、空気中の水分、または、水以外の溶媒中にも含まれる微量の水によっても進行するが、反応を速やかに進ませるためには、適量の水を加えることが好ましく、触媒を水に溶解して加えてもよい。この加水分解・縮合反応で用いられる触媒としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸類;ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、リン酸モノイソプロピルなどの有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニアなどの無機塩基類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミン化合物(有機塩基)類などが挙げられる。加水分解・縮合反応の温度は、溶媒の種類、触媒の種類及び量などにより変わるが、0〜80℃が好ましく、5〜50℃が更に好ましく、8〜30℃が最も好ましい。
シロキサン化合物(A)を、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、前記一般式(1c)で表される化合物、及び/又は前記一般式(2c)で表される化合物をヒドロシリル化反応させる方法により製造する場合の、Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物としては、例えば、下記一般式(4)で表される直線状シロキサン化合物、下記の一般式(5)で表される環状シロキサン化合物等が挙げられ、一般式(5)で表される環状シロキサン化合物が好ましい。
一般式(4)において、Xは水素原子又はメチル基を表し、R8はメチル基又はフェニル基を表し、R9、R10及びR11は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、2級ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、2級ペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、2級ヘキシルなどが挙げられ、炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチルメチル、メチルシクロペンチル等が挙げられる。R8は、工業的に入手が容易であることから、メチルであることが好ましい。R9は、ヒドロシリル化反応への影響が少ないことから、メチル及びエチルが、好ましく、メチルが更に好ましい。R10及びR11は、細胞接着性の点から、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。Xは水素原子又はメチル基を表し、fは0〜1000の数を表し、gは0〜1000の数を表すが、fが0の場合には、Xは、水素原子を表す。f+gの値は、2〜5000の数であることが好ましく、5〜1000の数であることが更に好ましく、10〜500の数であることが最も好ましい。
一般式(5)において、R12、R13及びR14は炭素数1〜6のアルキル基、炭素数5〜6のシクロアルキル基又はフェニル基を表す。炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数5〜6のシクロアルキル基としては、R9、R10及びR11で挙げたアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。R12は、ヒドロシリル化の反応性が良好であることから、炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。また、R13及びR14は、細胞接着性の点から、メチル、エチル及びフェニルが好ましく、メチル及びフェニルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。hは2〜6の数を表し、jはh+jが3〜6となる0〜4の数を表す。工業的に入手が容易であることから、h+jは4〜6が好ましく、4〜5が更に好ましく、4が最も好ましい。また、jは、0であることが好ましい。
一般式(5)で表される環状シロキサン化合物の具体例としては、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが挙げられ、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
一般式(1c)において、R6はSi−H基と反応してR1となる基を表し、R1、R2、a及びbは一般式(1)と同義である。一般式(1c)で表される化合物として、好ましい化合物としては、例えば、2−ビニル安息香酸、3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸、2−アリル安息香酸、4−アリル安息香酸、2−イソプロペニル安息香酸、4−イソプロペニル安息香酸が挙げられ、2−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸が好ましく、4−ビニル安息香酸が更に好ましい。
また、一般式(2c)において、R7はSi−H基と反応してR3となる基を表し、R3、R4、c及びdは上記一般式(2)と同義である。一般式(2c)で表される化合物の好ましい具体例としては、2−ビニルフェノール、3−ビニルフェノール、4−ビニルフェノール、2−アリルフェノール、4−アリルフェノール、2−イソプロペニルフェノール、4−イソプロペニルフェノールが挙げられ、2−ビニルフェノール、4−ビニルフェノールが好ましく、4−ビニルフェノールが更に好ましい。
ヒドロシリル化反応する条件は、公知の条件で行うことができ、例えば、トルエン、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,2−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1−メトキシ−2−プロパノールアセテートなどの溶媒中で、必要に応じて、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−カルボニルビニルメチル錯体(Ossko触媒)、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)などの白金系触媒を触媒として、反応温度20〜130℃、好ましくは50〜80℃で反応を行うことができる。
シロキサン化合物(A)は、一般式(1c)で表される化合物及び/又は一般式(2c)で表される化合物に代えて、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物を用いて、上記と同様にヒドロシリル化反応を行い、その後、一般式(1a)で表される化合物に由来するフェノール性水酸基及び/又は一般式(2a)で表される化合物に由来する芳香性カルボキシル基をキャップしている酸乖離性保護基Tを脱離させる方法によっても得ることができる。
一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物については、後述の樹脂組成物IIの説明における詳述を適宜適用することができる。フェノール性水酸基及び/又芳香性カルボキシル基をキャップしている酸乖離性保護基Tは、例えば、有機溶媒中、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等の酸触媒により脱離することができる。有機溶媒としては、25℃において水を1質量%以上溶解することができる有機溶剤が好ましい。このような有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類;1−メトキシ−エタノール、1−エトキシ−エタノール、1−プロポキシ−エタノール、1−イソプロポキシ−エタノール、1−ブトキシ−エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノールなどのエーテルアルコール類、1−メトキシ−エチルアセテート、1−エトキシ−エチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、3−メトキシ−1−ブチルアセテート、3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテートなどのエーテルアルコールの酢酸エステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;4−ヒドロキシ−2−ブタノン、3−ヒドロキシ−3−メチル−2−ブタノン、4−ヒドロキシ−2−メチル−2−ペンタノン(ジアセトンアルコール)などのケトアルコール類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフタン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類などが挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、1−メトキシ−2−プロピルアセテートが好ましい。
シロキサン化合物(A)の分子量が、あまりに小さい場合には、基板上への本発明のシリコーン樹脂の層の形成が不良となる場合があり、あまりに大きい場合には、現像液への溶解性又は分散性が低下し基板表面に残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が600〜50000であることが好ましく、800〜20000であることが更に好ましく、1000〜10000であることが最も好ましい。なお、本発明において、質量平均分子量とは、テトラヒドロフラン(以下、THFという)を溶媒としてGPC分析を行った場合のポリスチレン換算の質量平均分子量をいう。
シロキサン化合物(A)は、細胞接着性が向上することから、更に、シラノール基(Si−OH)を有することが好ましい。シロキサン化合物(A)中のシラノール基の含量は、OHの含量として、1〜30質量%であることが好ましく、3〜25質量%であることが更に好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。
シロキサン化合物(A)を、一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物、及び/又は一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物を加水分解・縮合反応させる方法で製造する場合には、加水分解・縮合反応時にトリアルコキシ化合物を併用することにより、シラノール基を導入することができる。トリアルコキシ化合物としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、シロキサン化合物(A)をSi−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物と、一般式(1c)で表される化合物、及び/又は一般式(2c)で表される化合物とをヒドロシリル化反応させる方法により製造する場合には、ヒドロシリル化反応時にビニルトリアルコキシ化合物を併用することにより、シロキサン化合物(A)にトリアルコキシ基を導入した後、他のトリアルコキシ化合物と共に加水分解・縮合反応させることに、シラノール基を導入することができる。
樹脂組成物Iに含有させるジアゾナフトキノン類としては、フェノール性水酸基を有する化合物の水素原子が下記式(6)で置換された化合物(4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)又は下記式(7)で置換された化合物(5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル)が好ましい。
このようなジアゾナフトキノン類の、好ましい具体例としては、例えば、以下の式(8)〜(13)で表される化合物及びそれらの位置異性体などを例示することができる。
式(6)で表される基はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適し、式(7)で表される基は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適していることから、露光する波長によって式(6)で表される基、式(7)で表される基の何れかを選択することが好ましい。
ジアゾナフトキノン類の含有量は、シロキサン化合物(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に1〜5質量部であることが、レジストの現像性、微細加工性の点から好ましい。
樹脂組成物Iに含有させる有機溶剤は、シロキサン化合物(A)及びジアゾナフトキノン類を溶解又は分散することのできる有機溶剤であれば、特に限定されず、シロキサン化合物(A)の製造で用いた有機溶剤を除去せずに、樹脂組成物Iの有機溶剤としてもよい。有機溶剤の含有量は、シロキサン化合物(A)100質量部に対して、10〜10000質量部、特に100〜1000質量部であることが、樹脂組成物Iを用いて永久レジストを形成する際の形成性や得られた永久レジストの物性などの点から好ましい。
樹脂組成物Iは、この他、レジストの現像性、微細加工性の点から、更にエポキシ化合物を含有することが好ましい。エポキシ化合物としては、樹脂組成物Iの保存安定性に悪影響が少ないことから、グリシジル化合物が好ましい。樹脂組成物Iに好ましく用いられるグリシジル化合物としては、例えば、1,3−ビス(3−グリシドキシプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、テトラキス[(3−グリシドキシプロピル)ジメチルシロキシ]シラン、2,4,6,8−テトラキス(3−グリシドキシプロピル)−2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリグリシジルイソシアヌレート、アリルジグリシジルイソシアヌレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、カテコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルが挙げられる。
樹脂組成物Iを用いて、パターニングする場合には、通常のポジ型感光性組成物と同様に、樹脂組成物Iの対象基材への塗布工程、樹脂組成物Iが塗布された対象基材のプリベイク工程、これにパターン化された光を照射する露光工程、これをアルカリ性溶液で処理してパターンを形成する現像工程、全体に光を照射して可視光透過性を向上させる透明化工程(ブリーチング露光工程)、ポストベイク工程等の工程を経て、パターニングすることができる。
樹脂組成物Iが塗布された対象基材をプリベイクする場合には、60〜140℃、好ましくは70〜120℃の温度で、30秒〜10分、好ましくは1〜5分の時間、加熱することが望ましい。露光工程における照射光の波長は、樹脂組成物Iに配合されたジアゾナフトキノン類の種類によって変えればよく、例えば、4−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合にはi線(365nm)を主体とする狭い波長の光を、5−ジアゾナフトキノンスルホン酸エステル類を使用した場合には、i線(365nm)、h線(405nm)及びg線(436nm)を含むブロードな波長の光を、高圧水銀灯、超高圧水銀灯などを用いて照射することが好ましい。ジアゾナフトキノン類は照射光により分解してインデンカルボン酸に変化し、樹脂組成物Iによる塗膜のうち照射光を受けた部分(露光部分)のアルカリ性溶液への溶解・分散が可能になる。現像工程は、露光部分をアルカリ性溶液へ溶解・分散させてパターンを形成する工程である。アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類の水溶液やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液が好ましい。次の透明化工程は、残存するジアゾナフトキノン類により淡黄色乃至淡褐色に着色したレジスト層に光を照射して、未反応のジアゾナフトキノン類を可視光領域で吸収のないインデンカルボン酸に変化させる工程である。透明化工程の照射光の波長や照射量は、露光工程と同様でよい。この照射光の照射により、レジスト層は可視光透過性が向上するが、アルカリ溶解性も向上することから、透明化工程の後に、120〜300℃、好ましく150〜250℃の温度で10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間の熱処理によりレジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させるポストベイクを行うのが望ましい。
次に、樹脂組成物IIついて説明する。
樹脂組成物IIのシロキサン化合物(C)は、一般式(3)で表される環状シロキサン化合物及び/又はシロキサン化合物(B)を、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物と、ヒドロシリル化反応させて得られるシロキサン化合物である。ここで、シロキサン化合物(B)は、一般式(3)で表される環状シロキサン化合物と、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物とをヒドロシリル化反応させて得られるシロキサン化合物である。シロキサン化合物(C)は、現像性が良好で微細なパターニングが可能となることから、シロキサン化合物(B)と、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物とを、ヒドロシリル化反応させて得られるシロキサン化合物であることが好ましい。
一般式(3)において、R5は炭素原子数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表し、炭素原子数1〜8のアルキル基、シクロアルキル基としては、例えば一般式(4)のR9〜R11で挙げた基が挙げられ、アリール基としては、フェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、ジメチルフェニル等の炭素原子数6〜8のアリール基が挙げられる。ヒドロシリル化の反応性が良好であることから、R5は炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、メチル及びエチルが更に好ましく、メチルが最も好ましい。eは3〜6の数を表し、工業的な入手の容易さから、4〜5の数が好ましく、4の数が更に好ましい。一般式(3)で表される化合物の具体例としては、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラエチルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8−テトラフェニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8,10−ペンタメチルシクロペンタシロキサンが挙げられ、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサンが好ましい。
Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ビニルシクロヘキセン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン類、ジイソプロペニルベンゼン類、ジビニルシクロヘキサン類、3,9−ジビニル−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ジアリルエーテル、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル類、シクロヘキサンジメタノールジアリルエーテル類、ビスフェノールジビニルエーテル、水添ビスフェノールジビニルエーテル、水添ビスフェノールジアリルエーテル、ジアリルメチルイソシアヌレート、アジピン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,5−ジビニルトリシロキサン等のSi−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物;トリビニルベンゼン、トリビニルシクロヘキサン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、トリメリット酸トリアリル、トリアリルイソシアヌレート、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシロキサン等のSi−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に3個含有する化合物;ピロメリット酸テトラアリル、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン等のSi−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に4個含有する化合物が挙げられる。現像性が良好で微細なパターニングが可能となることから、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個含有する化合物が好ましく、ビニルベンゼン類(具体的には、1,2−ジビニルベンゼン、1,3−ジビニルベンゼン、1,4−ジビニルベンゼン)、ジビニルシクロヘキサン類(具体的には、1,2−ジビニルシクロヘキサン、1,3−ジビニルシクロヘキサン、1,4−ジビニルシクロヘキサン)、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル類(具体的には、1,2−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,3−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル)、ビス(ジメチルビニルシリル)ベンゼン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジフェニル−1,5−ジビニルトリシロキサンが更に好ましい。
シロキサン化合物(B)の製造の際の、一般式(3)で表される環状シロキサン化合物と、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物との使用割合(前者:後者)は、モル比で9:1〜1:9、好ましくは5:1〜1:2、より好ましくは4:1〜1:1である。一般式(3)で表される環状シロキサン化合物と、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上含有する化合物とをヒドロシリル化反応させる条件は、前記シロキサン化合物(A)の場合と同様の条件でよい。
一般式(1a)において、R6はSi−H基と反応してR1となる基を表し、Tは酸乖離性保護基を表し、R1、R2、a及びbは一般式(1)と同義である。また、一般式(2a)において、R7はSi−H基と反応してR3となる基を表し、Tは酸乖離性保護基を表し、R3、R4、c及びdは一般式(2)と同義である。酸乖離性保護基Tの好ましい具体例としては、例えば、t−ブチル、アセチル、1−エトキシエチル、t−ブチルトキシカルボニルが挙げられ、t−ブチル、アセチル及び1−エトキシエチルが好ましく、t−ブチルが最も好ましい。
一般式(1a)で表される化合物のうち、Tがt−ブチルであるものとしては、例えば、2−ビニル安息香酸t−ブチル、3−ビニル安息香酸t−ブチル、4−ビニル安息香酸t−ブチル、2−アリル安息香酸t−ブチル、4−アリル安息香酸t−ブチル、2−イソプロペニル安息香酸t−ブチル、4−イソプロペニル安息香酸t−ブチルが挙げられ、2−ビニル安息香酸t−ブチル、4−ビニル安息香酸t−ブチルが好ましく、4−ビニル安息香酸t−ブチルが更に好ましい。
また、一般式(2a)で表される化合物のうち、Tがt−ブチルであるものとしては、例えば、t−ブトキシ−2−ビニルベンゼン、t−ブトキシ−3−ビニルベンゼン、t−ブトキシ−4−ビニルベンゼン、t−ブトキシ−2−アリルベンゼン、t−ブトキシ−4−アリルベンゼン、t−ブトキシ−2−イソプロペニルベンゼン、t−ブトキシ−4−イソプロペニルベンゼンが挙げられ、t−ブトキシ−2−ビニルベンゼン、t−ブトキシ−4−ビニルベンゼンが好ましく、t−ブトキシ−4−ビニルベンゼンが更に好ましい。
シロキサン化合物(C)の製造の際の、一般式(3)で表される環状シロキサン化合物及び/又はシロキサン化合物(B)と、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物との使用割合は、Si−H基に対して、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル比が好ましくは0.5〜5、より好ましくは0.7〜2、最も好ましくは0.8〜1.2である。一般式(3)で表される環状シロキサン化合物及び/又はシロキサン化合物(B)と、一般式(1a)で表される化合物及び/又は一般式(2a)で表される化合物とをヒドロシリル化反応させる条件は、前記シロキサン化合物(A)の場合と同様の条件でよい。なお、シロキサン化合物(C)にSi−H基が残存していると、本発明のシリコーン樹脂の細胞接着性が低下する場合があることから、残存するSi−H基を不活性化することが好ましい。不活性化の方法は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルビニルシランなどを、60℃〜70℃で1〜10時間反応させることにより不活性化させることができる。
シロキサン化合物(C)の分子量が、あまりに小さい場合には、基板上への本発明のシリコーン樹脂の層の形成が不良となる場合があり、あまりに大きい場合には、現像液への溶解性又は分散性が低下し基板表面に残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が1000〜50000であることが好ましく、2000〜40000であることが更に好ましく、3000〜20000であることが最も好ましい。
樹脂組成物IIに使用する光酸発生剤は、可視光線、紫外線等のエネルギー線の照射によって酸を発生する化合物であれば特に限定されず、ポジ型レジスト組成物に使用可能であることが知られている光酸発生剤が全て使用することができ、好ましい光酸発生剤としては、エネルギー線照射によってルイス酸を放出するオニウム塩である複塩、またはその誘導体が挙げられる。このようなオニウム塩のなかでも、特に芳香族オニウム塩を使用するのが特に有効である。中でも、特開昭50−151997号及び特開昭50−158680号公報に記載の芳香族ハロニウム塩、特開昭50−151997号,特開昭52−30899号,特開昭56−55420号及び特開昭55−125105号公報等に記載のVIA族芳香族オニウム塩、特開昭50−158698号公報記載のVA族芳香族オニウム塩、特開昭56−8428号、特開昭56−149402号及び特開昭57−192429号公報等に記載のオキソスルホキソニウム塩、特開昭49−17040号記載の芳香族ジアゾニウム塩、米国特許第4139655号明細書記載のチオビリリウム塩等が好ましく、下記一般式(14)で表される化合物が好ましい。
一般式(14)のX-としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ピレンスルホン酸、カンファースルホン酸等のスルホン酸類に由来するスルホン酸アニオンのほか、BF4 -、PF6 -、AsF6 -、SbF6 -、ClO4 -等が挙げられる。一般式(14)で表される化合物の具体例としては、ビス−[4−(ビス(4−ブトキシフェニル)スルフォニオ)フェニル]スルフィド・ビスヘキサフルオロアンチモネートを例示することができる。
樹脂組成物IIでは、紫外線の照射によって光酸発生剤から発生したルイス酸により、シロキサン化合物(C)に含まれる酸乖離性保護基Tが脱離して、フェノール水酸基や芳香族カルボン酸基が生成し、紫外線の照射された部分のアルカリ性溶液への溶解分散性が向上する。樹脂組成物II中の光酸発生剤の含量は、シロキサン化合物(C)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることが更に好ましい。
樹脂組成物IIは、有機溶剤を含有してもよい。樹脂組成物IIに用いることができる有機溶剤には、樹脂組成物Iにおける有機溶剤の説明を適宜適用することが可能である。
樹脂組成物IIを用いて、パターニングする場合には、通常の化学増感型のポジ型感光性組成物と同様に、樹脂組成物IIの対象基材への塗布工程、樹脂組成物IIが塗布された対象基材のプリベイク工程、これにパターン化された光を照射する露光工程、これをアルカリ性溶液で処理してパターンを形成する現像工程、全体に光を照射して残存する酸乖離性保護基を脱離させる工程、ポストベイク工程等の工程を経て、パターニングすることができる。
樹脂組成物IIが塗布された対象基材をプリベイクする場合には、60〜150℃、好ましくは80〜130℃の温度で、30秒〜10分、好ましくは1〜5分の時間、加熱することが望ましい。露光工程における照射光の波長や照射光の強度は、樹脂組成物IIに配合された光酸発生剤の種類によって変えればよい。露光によるルイス酸の発生量が不十分である場合には、現像工程の前に、加熱処理(PEB(post exposure bake)ともいう)を行ってもよい。現像工程は、露光部分をアルカリ性溶液へ溶解・分散させてパターンを形成する工程である。アルカリ性溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の無機アルカリ類の水溶液やテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩の水溶液が好ましい。現像工程の後に、120〜300℃、好ましく150〜250℃の温度で10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間の熱処理によりレジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させるポストベイクを行うのが望ましい。
次に、樹脂組成物IIIについて説明する。
樹脂組成物IIIが含有するシロキサン化合物(D)は、一般式(1)で表される基、一般式(2)で表される基、一般式(1b)で表される基、及び一般式(2b)で表される基からなる群から選択される一種以上の基と、エポキシ基とを有するシロキサン化合物である。樹脂組成物IIIの保存安定性が良好となることから、一般式(1b)で表される基及び/又は一般式(2b)で表される基と、エポキシ基とを有するシロキサン化合物が好ましい。
シロキサン化合物(D)のエポキシ基は、樹脂組成物IIIの保存安定性が良好となることから、グリシジル基が好ましいが、シロキサン化合物(D)が一般式(1)で表される基を有しなければ、脂環式エポキシ基でもよい。シロキサン化合物(D)中のエポキシ基の含量は、特に限定されないが、エポキシ当量(分子量をエポキシ基数で割った値)で、200〜3000が好ましく、300〜2000が更に好ましい。
シロキサン化合物(D)は、一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物、一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物、一般式(1b)で表される基を有するアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物、及び一般式(2b)で表される基を有するアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物からなる群から選択した一以上の化合物と、エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物又はクロロシラン化合物とを加水分解・縮合反応させる方法;Si−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物に、一般式(1a)で表される化合物、一般式(2a)で表される化合物、一般式(1c)で表される化合物、及び一般式(2c)で表される化合物からなる群から選択した一以上の化合物と、Si−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合を有するエポキシ化合物とをヒドロシリル化させる方法などにより製造することができる。
シロキサン化合物(D)を加水分解・縮合反応で製造する場合には、アルコキシシラン化合物、クロロシラン化合物のどちらを使用してもよいが、反応の制御や副生物の処理が容易であることから、アルコキシシラン化合物を使用することが好ましい。一般式(1)で表される基を有するアルコキシシラン化合物及び一般式(2)で表される基を有するアルコキシシラン化合物の好ましい化合物の具体例としては、シロキサン化合物(A)で挙げた化合物が挙げられ、それらの化合物のフェノール性水酸基又は芳香性カルボキシル基が、酸乖離性保護基Tでキャップされた化合物が、一般式(1b)で表される基を有するアルコキシシラン化合物又は一般式(2b)で表される基を有するアルコキシシラン化合物の好ましい化合物の具体例として挙げられる。
エポキシ基を有するアルコキシシラン化合物としては、グリシジルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシラン、2−(4−グリシドキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、5−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン、6−(グリシドキシメチル)ノルボニルトリメトキシシラン等のグリシジルアルコキシシラン化合物;2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルトリメトキシシラン、2−(2,3−エポキシノルボルニル)エチルトリメトキシシラン等の脂環エポキシアルコキシシラン化合物が挙げられ、樹脂組成物IIIの保存安定性が良好となることから、グリシジルアルコキシシラン化合物が好ましく、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、ビス(3−グリシドキシプロピル)ジメトキシシランが更に好ましい。
シロキサン化合物(D)を加水分解・縮合反応で製造する場合には、他のアルコキシシラン又はクロロシランを併用してもよい。他のアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等が挙げられ、他のクロロシランとしては、これらのアルコキシシランのアルコキシ基が塩素原子で置換されたクロロシランが挙げられる。
シロキサン化合物(D)を加水分解・縮合反応で製造する場合は、シロキサン化合物(A)を加水分解・縮合反応で製造する場合と同様の反応条件で行えばよい。樹脂組成物IIIの保存安定性が良好となることから、シロキサン化合物(D)はシラノール基を含有しないことが好ましい。シロキサン化合物(D)のシラノール基は、トリメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物や加水分解性エステル化合物で処理することにより、封止することができ、処理が容易であることから、加水分解性エステル化合物で処理することが好ましい。加水分解性エステル化合物としては、オルトギ酸エステル、オルト酢酸エステル、テトラアルコキシメタン、炭酸エステルなどが挙げられ、オルト蟻酸トリアルキルエステル、テトラアルコキシメタン等が好ましい。加水分解性エステルでの処理場合には、樹脂組成物IIIまたはその溶液に、過剰量の加水分解性エステルを加えた後、攪拌、加熱をすればよい。
シロキサン化合物(D)をヒドロシリル化反応で製造する場合のSi−H基を1分子中に少なくとも2個有する化合物としては、シロキサン化合物(A)の製造で挙げた、一般式(4)で表される直線状シロキサン化合物、一般式(5)で表される環状シロキサン化合物が挙げられ、一般式(5)で表される環状シロキサン化合物が好ましい。一般式(1c)で表される化合物及び一般式(2c)で表される化合物としては、樹脂組成物Iに含有させるシロキサン化合物(A)の製造で挙げた化合物が挙げられ、一般式(1a)で表される化合物及び一般式(2a)で表される化合物としては、樹脂組成物IIに含有させるシロキサン化合物(C)の製造で挙げた化合物が挙げられる。シロキサン化合物(D)をヒドロシリル化反応で製造する場合は、シロキサン化合物(A)をヒドロシリル化反応で製造する場合と同様の反応条件で行えばよい。Si−H基に対するSi−H基への反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル比は0.5〜5、好ましくは0.7〜2、より好ましくは0.8〜1.2である。
シロキサン化合物(D)の分子量が、あまりに小さい場合には、基板上への本発明のシリコーン樹脂の層の形成が不良となる場合があり、あまりに大きい場合には、現像液への溶解性又は分散性が低下し基板表面に残渣が残留する場合があることから、質量平均分子量が500〜500000であることが好ましく、1000〜50000であることが更に好ましく、1500〜10000であることが最も好ましい。
シロキサン化合物(D)にSi−H基が残存していると、本発明のシリコーン樹脂の細胞接着性が低下する場合があることから、残存するSi−H基を不活性化することが好ましい。不活性化の方法は特に限定されるものではないが、例えば、トリメチルビニルシランなどを、60℃〜70℃で1〜10時間反応させることにより不活性化させることができる。
樹脂組成物IIIに使用する光酸発生剤としては、樹脂組成物IIで挙げた光酸発生剤が挙げられる。樹脂組成物III中の光酸発生剤の含量は、シロキサン化合物(D)100質量部に対して、0.01〜10質量部であることが好ましく、0.05〜5質量部であることが更に好ましい。
樹脂組成物IIIはシロキサン化合物(D)及び光酸発生剤のほかに、架橋剤として、従来公知のエポキシ化合物、エポキシオリゴマーまたはエポキシ樹脂を配合してもよく、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、エポキシシリコーン樹脂、アルファオレフィンオキサイド、エポキシ化脂肪酸等、エポキシ基を有する化合物なら制限はないが、中でも、脂環式エポキシ樹脂を用いることが好ましい。脂環式エポキシ樹脂の例としては、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオクチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。樹脂組成物III中の架橋剤の量は、シロキサン化合物(D)に対して0〜50質量%が好ましく、さらに好ましくは1〜30質量%である。
樹脂組成物IIIを用いて、パターニングする場合には、通常の光硬化性樹脂組成物と同様に、樹脂組成物IIIの対象基材への塗布工程、樹脂組成物IIIが塗布された対象基材のプリベイク工程、これにパターン化された光を照射する露光工程、これを有機溶剤で処理してパターンを形成する現像工程、ポストベイク工程等の工程を経て、パターニングすることができる。
樹脂組成物IIIが塗布された対象基材をプリベイクする場合には、50〜150℃、好ましくは60〜100℃の温度で、30秒〜10分、好ましくは1〜5分の時間、加熱することが望ましい。露光工程における照射光の波長や照射光の強度は、樹脂組成物IIIに配合された光酸発生剤の種類によって変えればよい。露光によるルイス酸の発生量が不十分である場合には、現像工程の前に、加熱処理(PEB(post exposure bake))を行ってもよい。現像工程は、未露光部分を溶剤へ溶解・分散させてパターンを形成する工程である。溶剤としては、アルカリ性水溶液、酸性水溶液、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ベンゼン、トルエン、キシレン、1,3,4−トリメチルベンゼン等が挙げられ、アセトンとイソプロパノールとの混合溶媒が好ましい。現像工程の後に、80〜200℃、好ましくは100〜150℃の温度で10分〜2時間、好ましくは15分〜1時間の熱処理によりレジスト層中のシリコーン樹脂を熱架橋させるポストベイクを行うのが望ましい。
なお、シロキサン化合物(D)が、一般式(1b)で表される基又は一般式(2b)で表される基を有する場合には、現像工程とポストベイク工程との間に、全体に光を照射して残存する酸乖離性保護基を脱離させる工程を入れることが好ましい。
本発明の細胞培養基板(細胞接着性基板)は、以上に詳述した本発明のシリコーン樹脂が表面に形成されたものである。本発明のシリコーン樹脂が形成される基材は、特に限定されず、表面に本発明のシリコーン樹脂を安定して形成できるものであれば、材質や形状に制限はない。このような基材としては、例えば、ガラス、石英ガラス、単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素等の無機基材;ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の成形可能な高分子化合物等が挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂は光透過性に優れていることから、培養細胞の光学顕微鏡による観察や、細胞を蛍光染色して蛍光顕微鏡による観察に好適である。このような顕微鏡観察をより好適に行なう観点から、本発明の細胞接着性基板のための基材としては、透明度の高い基材が好ましく、特に、ガラス、ポリスチレン、ポリカーボネート等が好ましい。
本発明の細胞接着性基板の形状は、特に限定されず、円形でも四角形でもよく、プレート、シート、フィルム等の平面状でもよいし、外周に壁状構造物を設けた、いわゆるシャーレ状でもよい。平面状の細胞接着性基板は、必要に応じて、培養容器に入れて使用できる。形状がシャーレ状の接着性基板は、それ自体を培養容器として使用できることから、培養液を直接入れて培養ができ、培養操作が簡便となることから好ましい。
シャーレ状の細胞接着性基板を製造する場合には、シャーレ状の基材の凹部に直接、本発明のシリコーン樹脂を形成してもよいし、平面状の細胞接着性基板をシャーレ状の基板の凹部に接着させてもよい。外周に壁状構造物を有する形状の基材の凹部に、膜厚が均一なで微細なパターンを直接形成することは、平面状の基材の表面に比較して困難であることから、平面状の基材の表面に微細なパターンを形成した後、シャーレ状の基材の凹部に接着して細胞接着性基板として用いることが好ましい。
本発明の細胞接着性基板において、本発明のシリコーン樹脂は、基材上に平坦に形成されていてもよいし、微細なパターンが形成されていてもよい。パターンを形成する場合には、本発明のシリコーン樹脂が得られるポジ型感光性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を対象となる基材に塗布した後、前記樹脂組成物I〜IIIで説明した工程により微細なパターンを形成することができる。
形成させるパターンの形状、大きさ、幅、高さ、深さ等は、特に制限されず、本発明の細胞接着性基板で培養する細胞の種類、形成させる組織等により選択できるが、高さ、深さに関しては、十分な細胞接着性を確保する観点から、本発明のシリコーン樹脂を基材等へ塗布・風乾して皮膜を形成する際に0.1〜1000μmの厚みの皮膜となるようにすることが好ましい。パターンの形状としては、例えば、ライン状、ツリー状(樹状)、網目状、格子状、短冊状、円形、四角形等が挙げられる。また、培養面は平面状に限らず、曲面状、半球状、管状であってもよい。
培養する細胞や組織の種類によっては、本発明の細胞接着性基板の基材と接着性を有する場合があり、本発明の細胞接着性基板の基材と本発明のシリコーン樹脂との、細胞接着性の差が小さいと、シリコーン樹脂に選択的に細胞を接着させることが困難になる。このため、本発明の細胞接着性基板にパターンを形成する場合には、基板上に細胞非接着性のポリマーからなる部分を有してもよい。細胞非接着性のポリマーとしては、例えば、ポリ(2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン)および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン由来のユニットを有するポリマー、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルアルコールおよびその部分アセタール化物、ポリエチレングリコール−ポリラクチドブロック共重合体、その他のシリコーン樹脂等が挙げられ、本発明のシリコーン樹脂との密着性に優れることから、その他のシリコーン樹脂が好ましい。その他のシリコーン樹脂とは、本発明のシリコーン樹脂以外のシリコーン樹脂をいう。その他のシリコーン樹脂の中でも、本発明のシリコーン樹脂以外との密着性に優れることから、ケイ素に結合する有機基としてアリール基又はアラルキル基を有するシリコーン樹脂が好ましく、ケイ素に結合する有機基のうち、10モル%以上がアリール基又はアラルキル基であるシリコーン樹脂が更に好ましく、20モル%以上がアリール基又はアラルキル基であるシリコーン樹脂が最も好ましい。
基板上に、本発明のシリコーン樹脂からなる部分と細胞非接着性のポリマーからなる部分からなるパターンを形成する場合には、細胞接着性基板の基材に、(1)細胞非接着性のポリマーからなる塗膜を形成し、その塗膜上に本発明のシリコーン樹脂からなるパターンを形成する方法、(2)本発明のシリコーン樹脂からなる塗膜を形成し、その塗膜上に細胞非接着性のポリマーからなるパターンを形成する方法等が挙げられる。(1)の方法によればパターンの凸部が細胞接着性の部分となり、(2)の方法によればパターンの凹部が細胞接着性の部分となる。(2)の方法の細胞非接着性のポリマーからなるパターン形成は、微細なパターンが形成可能であることから、フォトリソグラフィによる微細加工が好ましい。フォトリソグラフィが可能な細胞非接着性のポリマーとしては、アジド基を有するポリビニルアルコール(例えば、東洋合成工業社製、商品名Biosurfine−AWP)、フォトリソグラフィが可能なその他のシリコーン樹脂(例えば、特開2004−10849号公報、特開2008−231068号公報を参照)等が挙げられる。
本発明の細胞培養基板に細胞を播種する場合には、細胞種や目的とする培養組織の大きさなどによって播種密度などを設定できるが、1〜1000個/mm2の範囲で播種密度を設定することが好ましい。また、培養の条件は、細胞種によって適宜設定できるが、哺乳類由来の細胞種の場合には、例えば、5%の二酸化炭素雰囲気下にて37℃で培養することが好ましい。
本発明の細胞培養基板は、接着状態で培養を行う細胞であれば目的に応じて如何なる細胞にも使用できる。例えば、神経細胞、肝細胞、繊維芽細胞、筋芽細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、骨格筋細胞、幹細胞、中胚葉系幹細胞、胚性幹細胞、グリア細胞、胎性幹細胞、造血幹細胞、肥満細胞、脂肪細胞、神経幹細胞、などの細胞全体(例えば、ヒト、あるいはマウス、ラットなどの動物から単離した初代培養細胞、およびそれらの形質転換細胞または非形質転換細胞);細胞塊などを適宜選択して使用できる。
本発明の細胞培養基板は、細胞接着性が高く、光リソグラフィーという比較的簡便な方法により微細なパターンの形成が可能であり、培養細胞の接着位置や伸長方向を制御し、任意のパターンにて培養育成することにより、培養細胞を基板上の微小な部分にのみ接着させ、配列させることが可能となる。このため、本発明の細胞培養基板は、バイオセンサー、バイオリアクター、薬物の影響を評価する細胞アレイ、培養した細胞による再生医療などに応用することが可能である。
以下、実施例等により本発明を更に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。尚、特に限定のない場合、実施例中の「部」や「%」は質量基準によるものである。
<製造例1:樹脂組成物Iの製造>
トルエン300質量部に、2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン100質量部、4−ビニル安息香酸−t−ブチルエステル85質量部、パラ−t−ブトキシスチレン110質量部、トリメトキシビニルシラン93質量部、及び白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.0001質量部を加えて、攪拌しながら60℃で15時間反応させた。この反応液から溶媒を60℃で減圧留去させ、環状シロキサン化合物(1)を得た。次いで、上記環状シロキサン化合物(1)の100質量部に、フェニルトリメトキシシラン40質量部、トルエン200質量部を加えて、10℃で氷冷攪拌しながら、5%シュウ酸水溶液の50質量部を30分かけて滴下した。系内温度を10℃に保ったまま15時間攪拌の後、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃、減圧下で還流脱水・脱アルコール処理し、50℃減圧下で溶媒のトルエンを1−メトキシ−2−プロパノールアセテート(以下PGMEAという)へと溶媒交換を行い、中間生成物(1)の25%PGMEA溶液を得た。中間生成物(1)の一般式(1)で表される基及び一般式(2)で表される基の保護基であるt−ブチル基を脱離するために、中間生成物(1)の25%PGMEA溶液400質量部、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体3質量部を加えて、80℃で3時間攪拌の後、減圧下で100質量部の脱溶媒処理をし、酸性物質の吸着剤(協和化学工業製、商品名:キョーワード500SH)を10質量部加えた後に80℃で1時間攪拌した。このスラリー液について、濾過により固形物を除去した後、減圧して濃縮し、硬化性シリコーン樹脂(a)の30%PGMEA溶液を得た。硬化性シリコーン樹脂(a)は樹脂組成物Iのシロキサン化合物(A)に相当する化合物であり、硬化性シリコーン樹脂(a)の一般式(1)で表される基の含量は原料の仕込み比から19質量%、一般式(2)で表される基の含量は同じく24質量%であり、GPC分析による質量平均分子量は6400、シラノール基含量は5.4質量%であった。
硬化性シリコーン樹脂(a)の30%PGMEA溶液100質量部に、上記式(8)において全てのQが式(7)で表される基である化合物(ダイトーケミックス社製、商品名:PA−6)0.8質量部を配合し製造例1の硬化性樹脂組成物を調製した。製造例1の硬化性樹脂組成物は、樹脂組成物Iに相当するポジ型感光樹脂組成物である。
<比較製造例1>
2液混合式ポリジメチルシロキサン系硬化性樹脂(東レ・ダウコーニング社製、商品名シルポット184W/C;使用時には主剤100質量部に硬化剤10質量部を混合して使用)を比較用の樹脂組成物1とした。
<比較製造例2>
両末端にビニル基を有するポリジメチルシロキサン(質量平均分子量20000)100質量部をトルエン200質量部に溶かし、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(Karstedt触媒)0.003質量部及び2,4,6,8−テトラメチルシクロテトラシロキサン10質量部を加え、105℃で2時間反応させた。この後、3−ビニル−7−オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタン19質量部を加え、105℃で2時間攪拌し反応させた。溶媒を減圧留去してからアセトニトリルで洗浄し、その後、アセトニトリルを減圧留去して、エポキシ基を有する比較の硬化性シリコーン樹脂(質量平均分子量30000、エポキシ当量3000)を得た。比較の硬化性シリコーン樹脂100質量部及び酸発生剤として4,4’−ビス[ジ(4−ヘプトキシフェニル)スルホニオフェニル]スルフィドビスヘキサフルオロアンチモネート0.1質量部を混合し、硬化性を有する比較用の樹脂組成物2を得た。
<比較製造例3>
0.3質量%コラーゲン溶液(新田ゼラチン社製、商品名:Cellmatrix I−C、使用時に1mmol/Lの塩酸水溶液で20倍に希釈して使用)を比較用試料とした。
<実施例1、比較例1〜3:細胞培養基板の作製>
製造例1、比較製造例1〜2の硬化性樹脂組成物、又は比較製造例3の比較用試料を、縦25mm、横25mmのガラス板にスピンコートによりに厚さ5μmとなるよう塗布・風乾した後、常法により皮膜を形成させた。
製造例1及び比較製造例2の硬化性樹脂組成物の皮膜は更に、高圧水銀灯により紫外線(g線)を120mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した後、150℃で30分加熱し硬化させて、それぞれ実施例1及び比較例2の細胞培養基板とした。
比較製造例1の硬化性樹脂組成物及び比較製造例3の比較用試料の皮膜は、上記の紫外線照射及び加熱による硬化は行わずに、そのまま比較例1及び比較例3の細胞培養基板とした。
得られた細胞培養基板を用い、下記の試験例を実施した。これらの試験例に際しては、比較として、市販のポリスチレン製シャーレを縦25mm、横25mmに切断したもの、皮膜を形成させていないガラス板(ブランク)も用いた。また、試験例において使用した細胞は以下の通りである。
COS−1細胞:アフリカ緑ザル肝臓由来
U2OS細胞:ヒト骨肉腫由来、G1S Cell cycle phase markersによる蛍光標識すみ。
褐色脂肪前駆細胞:ラットの褐色脂肪組織由来、プライマリーセル社製
<試験例1:細胞接着性評価試験>
実施例1及び比較例1〜3の細胞培養基板並びにポリスチレン及びガラス板それぞれに、同量の試験細胞を播種した。5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で培養した。培養時間は、Cos−1細胞及びU2OS細胞が24時間、褐色脂肪前駆細胞は48時間とした。培養後、U2OS細胞はそのまま、Cos−1細胞及び褐色脂肪前駆細胞は核酸染色試薬(ヘキスト33342)で染色した後、蛍光顕微鏡を用いて、培養基板に接着した生細胞数を調べ、ブランクのガラス板に接着した細胞数に対する実施例1、比較例1〜3の培養基板及びポリスチレンに接着した細胞数の比を求め、細胞接着率(%)とした。結果を表1に示す。
<試験例2:細胞分化能評価試験>
実施例1及び比較例1、3の細胞培養基板並びにガラス板それぞれに、褐色脂肪前駆細胞を180個/mm2となるように播種し、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で2日間培養した後、インシュリン、デキサメタゾンと3−イソブチル−1−メチルキサンチンにより細胞の分化誘導を行い、更に7日間培養を行った。
培養後、顕微鏡を用いて培養基板に接着した生細胞数を調べ、培養前の生細胞数に対する培養後(培養9日後)の生細胞数割合を細胞生存率(%)とした。
次に、培養後の細胞を細胞内に存在するトリアシルグリセロールを染色する試薬(Walkersville 社製、商品名:AdipoRedTM、Lonza)で染色し、培養基板に接着している分化した生細胞数を調べ、培養基板に接着した生細胞数に対する分化した細胞の数を細胞分化率(%)とした。なお、褐色脂肪前駆細胞を用いた細胞分化試験では、分化した細胞のみが細胞内にトリアシルグリセロールを蓄積することから、細胞内に存在するトリアシルグリセロールを染色する試薬を使用することにより、分化した細胞のみを検出することが可能となる。
結果を表2に示す。また、実施例1の細胞培養基板の蛍光顕微鏡観察画像を図1に示す。
<実施例2〜3、比較例4〜5:微細構造を有する細胞培養基板の作製>
製造例1、比較製造例2の硬化性樹脂組成物を用いて、縦25mm、横25mmのガラス板にスピンコートによりに厚さ5μmとなるよう塗布し、常法により硬化させた後、風燥した。このガラス板を95℃で2分間加熱処理(プリベイク)した後、ガラス基板上部に線幅10μmが描かれたフォトマスク(実施例2、比較例4)又は線幅40μmが描かれたフォトマスク(実施例3、比較例5)を設置し、高圧水銀灯により紫外線(g線)を120mJ/cm2(波長365nm露光換算)で照射した。この後、比較製造例2の硬化性樹脂組成物を用いたもの(比較例4〜5)は、混合質量比が1:1のアセトン−イソプロパノール混合溶媒で現像し、比較例4〜5の細胞培養基板とした。製造例1の硬化性樹脂組成物を用いたもの(実施例2〜3)は、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で現像した後、更に、紫外線を同量照射し150℃で30分加熱し硬化させることにより、実施例2〜3の細胞培養基板とした。
<試験例3:細胞培養評価試験>
線幅10μmの微細構造を有する細胞培養基板(実施例2、比較例4)に、試験例1で用いたのと同じアフリカ緑ザル肝臓由来のCos−1細胞を50個/mm2で播種し、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で培養した。2日間培養後、核酸染色試薬(ヘキスト33342)で染色した細胞を蛍光顕微鏡観察した。製造例1の樹脂組成物を用いて作製した実施例2の細胞培養基板の蛍光顕微鏡観察画像を図2に示す。
製造例1の樹脂組成物を用いた実施例2の細胞培養基板では、立体的に制御された培養基板の表面形状に合わせて細胞が接着しており、微細構造の上においても細胞が培養できることが示されたが、比較製造例2の樹脂組成物を用いた比較例4の細胞培養基板では、細胞の接着が見られなかった。
また、線幅40μmの微細構造を有する細胞培養基板(実施例3、比較例5)に、試験例1で用いたのと同じ細胞周期フェーズマーカーが組み込まれたヒト骨肉種細胞株の株化細胞U2OSを50個/mm2で播種し、5%二酸化炭素雰囲気下、37℃で培養した。2日間培養後、核酸染色試薬(ヘキスト33342)で染色した細胞を蛍光顕微鏡観察した。製造例1の樹脂組成物を用いて作製した実施例3の細胞培養基板の蛍光顕微鏡観察画像を図3に示す。
製造例1の樹脂組成物を用いた実施例3の細胞培養基板では、立体的に制御された培養基板の表面形状に合わせて細胞が接着しており、微細構造の上においても細胞が培養できることが示されたが、比較製造例2の樹脂組成物を用いた比較例5の細胞培養基板では、細胞の接着が見られなかった。