JP6883946B2 - 積層体及びその製造方法並びに基板の接着方法 - Google Patents

積層体及びその製造方法並びに基板の接着方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬化物と基材の接着方法に関する。
従来より、硬化物とガラスやシリコンウエハなどの基材を接着する際は接着剤を使用する。また、コーティングガラス、レンズ、プリズムなどの光学部品を組み立てる場合は着色し難い接着剤を使用する。しかし、接着剤を適切な量で塗布することが困難であったり、時間が経つと接着剤が着色することがあった。
特開2000−44693号公報
しかしながら、特許文献1で使用されているカップリング剤は長鎖炭化水素基を有するトリメトキシシランであり密着である。このような密着により組み立てた光学部品は、冷熱サイクル試験により剥がれることがある。
本発明は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐熱透明性に優れ、かつ、硬化膜と基材が化学結合により接着する、簡便な接着方法を提供することである。
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基材と、別の基材とを貼り合せて加熱圧着することによる基材の接着方法であって、未硬化の接着剤を用いることなしに、少なくとも片方の基材を、硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤により処理した後、貼り合せて加熱圧着する基材の接着方法を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の構成を含むものである。
〔1〕熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基材と、別の基材とを貼り合せて加熱圧着することによる基材の接着方法であって、未硬化の接着剤を用いることなしに、硬化膜を有する基材の硬化膜上及び/又は別の基材の少なくとも一方の面を、硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤により処理した後、硬化膜を有する基材の面とシランカップリング剤とが化学結合するように両基材を貼り合せて加熱圧着することを特徴とする基材の接着方法。
〔2〕前記少なくとも片方の基材が、熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基材であることを特徴とする〔1〕に記載の基材の接着方法。
〔3〕基材をシランカップリング剤により処理する際、シランカップリング剤を含む溶液に基材を数分間浸漬し、基材を乾燥させて液滴を取除くことを特徴とする〔1〕、〔2〕のいずれか1項に記載の基材の接着方法。
〔4〕シランカップリング剤がアミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である、〔3〕に記載の基材の接着方法。
〔5〕前硬化性組成物が、シリコーン系であることを特徴とする、〔1〕〜〔4〕のいずれか1項に記載の基材の接着方法。
〔6〕前硬化性組成物が、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する化合物と、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒を含有することを特徴とする、〔5〕に記載の基材の接着方法。
〔7〕前記硬化性組成物が、アルカリ現像可能の感光性樹脂を含有しており、前記硬化膜を有する基材がパターン化されている、〔1〕〜〔6〕のいずれか1項に記載の基材の接着方法。
〔8〕前アルカリ現像可能の感光性樹脂が、ネガ型であって、(A)成分として、1分子中に光重合性官能基を少なくとも2個有し、かつ、下記式(2)および(3)で示される構造、
Figure 0006883946
Figure 0006883946
フェノール性水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物を含有する、〔7〕に記載の基材の接着方法。
〔9〕(A)成分の光重合性官能基が、エポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される少なくとも一種である、〔8〕に記載の基材の接着方法。
〔10〕(A)成分の光重合性官能基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基又はグリシジル基である、〔8〕に記載の基材の接着方法。
〔11〕(A)成分が、下記化合物(α1)、(α2)、(β)、(γ)のヒドロシリル化反応により合成される変性ポリオルガノシロキサン化合物である、〔8〕〜〔10〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
(α1)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記式(2)および(3)で示される構造
Figure 0006883946
Figure 0006883946
フェノール性水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する有機化合物、
(α2)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物。
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物、
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
〔12〕化合物(α1)が、下記式(4)および(5)
Figure 0006883946
Figure 0006883946
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)から選ばれる少なくとも1種である、〔11〕に記載の基材の接着方法。
〔13〕(α1)成分が、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールS、ビニルフェノール、アリルフェノール、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸およびウンデシレン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、〔11〕に記載の基材の接着方法。
〔14〕(α2)成分が、下記式(6)
Figure 0006883946
(式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔15〕(β)成分が、下記式(7)
Figure 0006883946
(式中R、Rは炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)
で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、〔11〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔16〕(γ)成分が、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも一種である、〔11〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔17〕前記化合物(γ)が、下記式(8)
Figure 0006883946
(式中R、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物である、〔11〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔18〕
さらにカチオン重合開始剤を含有する、〔8〕〜〔17〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔19〕(A)成分が、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有する化合物を含有する、〔6〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の基材の接着方法。
〔20〕さらに光活性白金触媒を含有する、〔19〕に記載の基材の接着方法。
〔21〕熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基材、硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するカップリング剤層、他の基材の順で形成されており、硬化膜を有する基材と他の基材の間には接着剤層が存在せず、熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜は基材上にパターンを形成していることを特徴とする基材。
本発明は、上記構成により、耐熱透明性に優れ、かつ、硬化物と基材が化学結合により接着する、簡便な接着方法を可能にするという効果を奏する。
本発明の実施の形態について、以下に詳細に説明する。本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意味する。
本発明は、熱または光により硬化する硬化性組成物からなる硬化膜と基材の接着方法である。
硬化性組成物の種類としてはエポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、有機無機ハイブリッド樹脂が挙げられる。耐熱透明性、耐光透明性と基材接着性のバランスが優れる点で、有機無機ハイブリッド樹脂が好ましい。

〔シランカップリング剤〕
本発明のプライマー処理に使用する、シランカップリング剤について説明する。
シランカップリング剤は、硬化物に含まれる反応基との反応性を有する基をシランカップリング剤が有することが好ましい。シランカップルング剤としては、下記式(1)で表される。

F−R−Si(OR ・・・(1)

(Fは反応基であり、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、ウレイド基、イソシアネート基を表す。RはC、H、O、Nから構成された炭素数1〜10の二価の有機基を表す。Rはメチル、エチル、プロピル、メトキシエトキシを表す。それぞれのRは異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
シランカップリング剤としては、ビニルアルコキシシラン、メタクリルアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、ウレイドアルコキシシラン、イソシアネートアルコキシシランが挙げられる。
シランカップリング剤の具体例としては、ビニルアルコキシシランとしては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルメチルジメトキシシランが挙がられる。メタクリルアルコキシシランとしては、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。エポキシアルコキシシランとしては、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。メルカプトアルコキシシランとしては、3−メルカプトキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。アミノアルコキシシランとしては、3−アミノプロピルトリメトキシシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ウレイドアルコキシシランとしては、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。イソシアネートアルコキシシランとしては、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
硬化物に含まれる反応基がエポキシ基の場合、接着性が高くなる点から、シランカップリング剤としてはアミノアルコキシシラン、エポキシアルコキシシランが好ましく、アミノアルコキシシランがより好ましい。
また、硬化物に含まれる反応基がSiH基の場合、接着性が高くなる点から、シランカップリング剤としてはアミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシランが好ましく、アミノアルコキシシランがより好ましい。
〔シランカップリング剤処理方法と接着方法〕
本発明の、シランカップリング剤処理方法と接着方法について説明する。
シランカップリング剤を含む溶液に硬化物を数分間浸漬し、基材を乾燥させて液滴を取除き、別の基材と貼り合せて加熱圧着することにより硬化物と基材を接着する。
上記の硬化物としては、硬化物の成型体、基板上に成膜された硬化膜、基板上にパターニングされた硬化膜などが挙がられる。
溶剤としては、シランカップリング剤が溶解する溶剤であれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤が挙げられる。
溶剤に添加するシランカップリング剤量としては、0.05wt%〜5.0wt%が好ましく、0.1wt%〜2.0wt%がより好ましい。0.05wt%未満では接着しない場合がある。一方、5.0wt%を超えて添加しても接着効果が上がらない。
シランカップリング剤を含む溶液に硬化物を浸漬する時間は、10秒〜5分が好ましく、30秒〜2分がより好ましい。10秒未満では接着しない場合がある。一方、5分を超えて浸漬しても接着効果が上がらない。
基材の乾燥方法としては、圧縮空気や圧縮窒素などを吹きかけて乾燥してもよいし、放置して乾燥しても構わない。
基材の乾燥温度としては、5℃〜100℃が好ましく、20℃〜40℃がより好ましい。5℃未満では溶剤の乾燥に時間がかかり非効率である。一方、100℃以上ではシランカップリング剤が乾燥中に反応して接着効果が低下する。
基材を貼り合せる方法としては、プレス機などで加圧圧着することが好ましい。
基材を貼り合せるときの温度としては、80℃〜250℃が好ましく、120℃〜180℃がより好ましい。80℃未満では接着しない場合がある。一方、250℃以上では硬化物が劣化する場合がある。
さらに、基材を貼り合せるときの温度としては、硬化物のガラス転移温度(Tg)よりも高い方が、硬化物が加熱融着するために接着する。加熱圧着の温度としては、硬化物のTg以上であることが好ましく、硬化物のTgよりも30℃以上高いことがより好ましい。
〔熱硬化性樹脂〕
熱硬化型の有機無機ハイブリッド樹脂について説明する。
本発明の有機無機ハイブリッド樹脂は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する化合物と、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物とを、(C)ヒドロシリル化触媒の存在下で反応させて硬化物を得る。
<化合物(A)>
本発明の化合物(A)について説明する。(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する化合物である。
(A)成分は、耐熱性、耐光性が高いという観点から下記式(6)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
Figure 0006883946
(式中R3は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR3は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
上記、式(6)のR3としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
ただし、上記のような式(6)で表される有機化合物の好ましい例においても、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有することは必要である。
以上のような式(6)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
Figure 0006883946
等が挙げられる。
硬化物の接着性向上のためには、(A)成分としてはジアリルモノグリシジルイソシアヌレートが好ましい。
さらに(A)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物を使用しても構わない。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物は、(B)成分のSiH基と反応すると架橋構造にならないため、過剰に添加すると架橋せず硬化物が得られない。一方、適性量を添加すれば、硬化物の架橋密度が下がり、軟質の硬化物を得ることができる。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する化合物の具体例としては、アリルグリシジルエーテル、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ビニルトリメトキシシラン、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキシド、1-ヘキセンが挙げられる。
(A)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
<化合物(B)>
本発明の化合物(B)は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物(以下において、単に「SiH基含有化合物」と略することがある) である。
化合物(B)については、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開第WO96/15194号パンフレットに記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
具体的には、例えば
Figure 0006883946
Figure 0006883946
等が挙げられる。
化合物(B)の炭素−炭素二重結合とのヒドロシリル化反応性が良く、しかも反応生成物の貯蔵安定性がよい点から、さらに下記式(13)
Figure 0006883946
(式中、R1は炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であっても良い。nは3〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
式(13)で表される化合物中の置換基R1、得られるオルガノシロキサン化合物を使用した硬化物の耐候性が良好である点から、C、H、Oから構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。それぞれの置換基R1は異なっていてもよく、同一であってもよい。式(13)で表される化合物としては、耐熱耐光透明性が優れる点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
本発明の製造方法において、化合物(B)には、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
また、(B)成分として、(A)成分と(B)成分のヒドロシリル化反応物である1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン化合物を使用しても構わない。具体的に例えば、
トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノメチルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、
アリルグリシジルエーテルとトリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルとジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、アリルグリシジルエーテルとジアリルモノメチルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物等を挙げることができる。
<ヒドロシリル化触媒(C)>
本発明で使用するヒドロシリル化触媒(C)について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体、白金− オレフィン錯体( 例えば、P t ( C H= C H C l ) 、白金− ビニルシロキサン錯体( 例えば、P t ( V i M eS i O S i M e V i ) n 、P t [ ( M e V iS i O ) ) 、ジカルボニルジクロロ白金、カールシュテト( K a r s t e d t ) 触媒、アシュビー(Ashby)の米国特許第3 1 5 9 6 0 1 号及び3 1 5 9 6 6 2 号明細書中に記載された白金− 炭化水素複合体、ラモロー( L a m o r e a u x ) の米国特許第3 2 2 0 9 7 2 号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック( M o d i c ) の米国特許第3 5 1 6 9 4 6 号明細書中に記載された塩化白金− オレフィン複合体も本発明において有用である。また、白金化合物以外の触媒の例としては、R h C l 、R h A l 、R u C l、I r C l 、F e C l 、A l C l 、P d C l ・2 H O 、N i C l 、T i C l 等が挙げられる。これらの中では、0価の白金系錯体が好ましく、例えば、白金−オレフィン錯体白金−ビニルシロキサン錯体、塩化白金酸が上げられる。なかでも、反応性が良好であるという点で白金-ビニルシロキサン錯体がより好ましい。
また、これらの触媒は、単独で使用してもよく、2 種以上併用してもよい。
硬化性組成物の硬化形式としては熱硬化タイプと光硬化タイプが挙げられる。硬化時間が短く、しかも低温硬化が可能の点で光硬化タイプが好ましい。さらに、光硬化タイプの中でも、硬化膜のパターニングが可能であるアルカリ現像タイプの感光性樹脂が好ましい。アルカリ現像タイプの感光性樹脂にはポジ型とネガ型がある。硬化膜が厚膜の場合、露光面が硬化して現像液が不溶になるネガ型の方が垂直パターン形状を得やすい点で好ましい。
〔ネガ型硬化性組成物〕
本発明の一実施形態に係るネガ型硬化性組成物は、1分子中に光重合性官能基を少なくとも2個有し、かつ、少なくとも一つの特定の酸性基を同一分子内に有する変性ポリオルガノシロキサン化合物(以下、単に「ポリシロキサン系化合物」と称することがある。)を含有する。本成分を含有することにより、アルカリ現像性を有すると共に、耐熱透明性に優れた硬化物を製造することができる。
以下、本成分のポリシロキサン系化合物について詳細に説明する。
(ポリシロキサン系化合物)
ポリシロキサン系化合物は、下記式(2)および(3)で示される構造;
Figure 0006883946
Figure 0006883946
と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群(以下、「上記式(2)〜(3)で表される各構造、フェノール性水酸基およびカルボキシル基」を「酸性基」と称することがある。)より選択される少なくとも一つを同一分子内に有する変性ポリオルガノシロキサン化合物が好ましく用いられる。上記酸性基を同一分子内に有することでアルカリ水溶液への溶解が可能となり、アルカリ現像可能なレジスト材料として適用することができる。
得られる硬化物が加熱後における着色が少ないと言う観点より、これら有機構造の中において、カルボキシル基および上記式(2)〜(3)で表される各構造が好ましく、さらに高温時の熱分解性の低い硬化物が得られる観点より特に上記式(2)〜(3)で表される各構造を有するものが好ましい。ポリシロキサン系化合物は、さらに、一分子中に光重合性官能基を少なくとも1個有する。ここでいう光重合性官能基とは、光エネルギーが外部より加わった際に光重合開始剤より発生するラジカルもしくはカチオン種によって重合、架橋する官能基を示し、特に反応・架橋形式は限定されるものではない。
中でも、特に反応性・化合物の安定性の観点より、光重合性官能基の少なくとも1個は、エポキシ基、架橋性ケイ素基(「加水分解性シリル基」と称することもある。)、(メタ)アクリロイル基、ビニロキシ基が好ましい。エポキシ基の中でも安定性の観点より、脂環式エポキシ基やグリシジル基が好ましく、特に光および熱によるカチオン重合性に優れる点では、脂環式エポキシ基が好ましい。
また、架橋性ケイ素基としては、アルコキシシリル基、アセトキシシリル基、フェノキシシリル基、シラノール基、クロロシリル基等の加水分解性を有するケイ素基が挙げることができ、特に入手性、化合物の安定性の点から、特にアルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、ケイ素に結合する官能基が、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基のものが挙げられ、硬化後の残留成分が残りにくいという観点から、特にメトキシ基、エトキシ基が好ましい。
反応性の観点より、アルコキシシリルエチル基またはアルコキシシリルプロピル基であることが好ましく、具体的には、(アルコキシシリルエチル)ジメチルシリル基、(アルコキシシリルエチル)ジフェニルシリル基、(アルコキシシリルプロピル)ジメチルシリル基および(アルコキシシリルプロピル)ジフェニル基が好ましい。
ポリシロキサン系化合物は、光重合性官能基を一分子中に少なくとも1個有すればよいが、好ましくは2個以上、より好ましくは3個以上である。3個以上であれば、架橋密度の高い硬化物が得られ耐熱性に優れるという利点がある。各光重合性官能基は同一であってもよく、2種以上の異なる官能基を有しても良い。
ポリシロキサン系化合物は、シロキサン単位Si−O−Siを有するものであれば特に限定されるものではない。これら化合物中のシロキサン単位のうち、構成成分中T単位(XSiO3/2)、またはQ単位(SiO4/2)の含有率が高いものほど得られる硬化物は硬度が高くより耐熱信頼性に優れ、またM単位(X3SiO1/2)、またはD単位(X2SiO2/2)の含有率が高いものほど硬化物はより柔軟で低応力なものが得られる。
上記酸性基構造および光架橋官能基をポリシロキサン中に導入することで、アルカリ現像可能なレジスト材料として適用することができる。上記酸性基構造および光架橋官能基のポリシロキサン中への導入方法としては、特に限定されないが、化学的に安定なSi−C結合で導入できるヒドロシリル化反応を用いるのが好ましい。
ポリシロキサン系化合物は、好適には、ヒドロシリル化反応生成物である。ヒドロシリル化反応生成物の好ましい態様として、例えば以下の態様をあげることができる。
第一の好ましい態様としては、下記化合物(α1)、(β)および(γ)のヒドロシリル化反応生成物:
(α1)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、上記式(2)〜(3)で示される構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群より選択される少なくとも1種を同一分子内に有する有機化合物、
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物、および
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
第二の好ましい態様としては、下記化合物(α1)、(α2)、(β)および(γ)のヒドロシリル化反応生成物:
(α1)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、上記式(2)〜(3)で示される構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群より選択される少なくとも1種を同一分子内に有する有機化合物、
(α2)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物、
(β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するポリシロキサン化合物、および
(γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
以下、ポリシロキサン系化合物の上記好ましい態様につき、説明する。
(化合物(α1))
化合物(α1)は、分子中に上記式(2)〜(3)で表される各構造と、フェノール性水酸基と、カルボキシル基とからなる群のいずれかの構造を有し、かつ、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上同一分子内に有する有機化合物であれば特に限定されるものではない。
有機化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素としてC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群より選択されるもののみを含むものであることが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、ガス透過性やはじきの問題がある。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。
化合物(α1)のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、特に限定されず用いることができ、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−ヒドロキシ−3−(アリルオキシ)プロピル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。特に反応性の点からビニル基、アリル基などが好適である。
化合物(α1)はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上有すればよいが、得られる硬化物の架橋密度が高いため耐熱信頼性が高いという点から、2個以上が好ましく、3個以上がより好ましい。
化合物(α1)としては、特に限定されるわけではないが、高温時の着色が少ない観点から、イソシアヌル環を有する下記式(4)および(5)で示される構造;
Figure 0006883946
Figure 0006883946
(式中、Rは、炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のRは、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物の少なくとも1種を使用するが好ましい。
上記有機基としては、炭化水素基(一部酸素で置換されていてもよい)、エポキシ基などが挙げられ、入手性の観点よりフェニル基、メチル基、エチル基、プロピル基、ベンジル基、グリシジル基が好ましく、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する有機基としては、アリル基、ビニル基が好ましい。
また、入手性の観点から、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ビニルフェノール、アリルフェノール、下記式(9)で示される構造;
Figure 0006883946
、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸、ウンデシレン酸が好ましい。これらの中でも特に耐熱性が高いという観点より、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールS、ビニルフェノール、アリルフェノールが好ましく、さらに硬化物の透明性の観点よりジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸が特に好ましい。
化合物(α1)には、単独又は2種以上のものを用いることが可能である。
(化合物(α2))
化合物(α2)は、上記化合物(α1)および後述する化合物(γ)に該当しない、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物であれば特に限定されない。
得られる硬化物の耐熱性が高いという観点より、アルケニル基を少なくとも1つ以上有するポリシロキサンであることが好ましく、具体的には、直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサン、分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサン、アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物などを使用することが可能であり、特に構造によって限定されるものではないが、耐熱性、耐光性、化学的安定性などを考慮すると、アルケニル基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンであることが好ましい。
直鎖構造を有するアルケニル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルビニルシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサンなどが例示される。
分子末端にアルケニル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルアルケニル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルアルケニルシロキサン単位とSiO単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
アルケニル基を含有する環状シロキサン化合物としては、1,3,5,7−ビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリビニル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジビニル−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリビニル−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタビニル−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサビニル−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
アルケニル基を有する多面体構造のポリシロキサンとしては、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサン(式(10))が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
Figure 0006883946
上記式中、R10〜R17はビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。
ただし、R10〜R17のうちの少なくとも1つは、ヒドロシリル化反応の反応性基であるアルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましい。
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX(式中、Rは、上述のR10〜R17を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって得られる。
または、RSiXの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。
化合物(α2)として、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸(式(11))が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。該化合物においては、多面体骨格を形成するSi原子と反応性基であるアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合していることから、得られる硬化物の剛直になり過ぎず、良好な成形体を得ることができる。
Figure 0006883946
上記の構造中、R18〜R41は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の有機基である。ただし、これらR18〜R41のうち、少なくとも1つはヒドロシリル化反応の反応性基であるアルケニル基である。前記アルケニル基においては、耐熱性の観点からビニル基が好ましい。
多面体構造を有するケイ酸塩の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成できる。前記合成方法としては、具体的には、テトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等が例示できる。4級アンモニウムヒドロキシドとしては、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが例示できる。また、本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するケイ酸塩を得ることが可能である。
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をアルケニル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子と反応性基であるアルケニル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。また、1分子中に含まれるアルケニル基の数は、少なくとも1つ、より好ましくは、少なくとも2つ、さらに好ましくは、少なくとも3つ含有することが望ましい。耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、ビニルおよびメチル基から構成されることが好ましい。
また、基材との密着性が高いという観点より、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物についても使用することができる。
化合物(α2)には、1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する有機化合物を使用することもできる。ここでいう有機化合物は、有機重合体系化合物と有機単量体系化合物に分類できる。
有機重合体系化合物としては例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアリレート系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、不飽和炭化水素系、ポリアクリル酸エステル系、ポリアミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)、ポリイミド系の化合物を用いることができる。
有機単量体系化合物としては、例えば、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系:直鎖系、脂環系等の脂肪族炭化水素系:複素環系の化合物およびこれらの混合物等が挙げられる。
化合物(α2)の具体的な例としては、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノベンジルイソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ノナンジオールジビニルエーテル、1,4−シクロへキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ビスフェノールSのジアリルエーテル、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(ビニルオキシ)アダマンタン、ジシクロペンタジエン、ビニルシクロへキセン、1,5−ヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジアリルエーテル、ビスフェノールAジアリルエーテル、2,5−ジアリルフェノールアリルエーテル、およびそれらのオリゴマー、1,2−ポリブタジエン(1、2比率10〜100重量%のもの、好ましくは1、2比率50〜100重量%のもの)、ノボラックフェノールのアリルエーテル、アリル化ポリフェニレンオキサイド、その他、従来公知のエポキシ樹脂のグリシジル基の全部をアリル基に置き換えたもの等が挙げられる。
化合物(α2)としては、骨格部分とアルケニル基(SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合)とに分けて表現しがたい、低分子量化合物も用いることができる。これらの低分子量化合物の具体例としては、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等が挙げられる。
特に耐熱性、耐光性が高いという観点から下記式(6)で表される化合物が特に好ましい。
Figure 0006883946
(式中、Rは、炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは、同一であっても異なっていてもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物が好ましい。
上記有機基としては、炭化水素基(一部酸素で置換されていてもよい)などが挙げられ、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20であることが好ましく、炭素数1〜10であることがより好ましく、炭素数1〜4であることがさらに好ましい。これらの好ましいR3の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
入手性の観点より、有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。化合物(α2)は、単独又は2種以上のものを用いることが可能である。
(化合物(β))
化合物(β)については1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194に記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
具体的には、直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサン、分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサン、ヒドロシリル基を含有する環状ポリシロキサン化合物を使用することが可能であり、特に構造によって限定されるものではない。耐熱性、耐光性、化学的安定性などを考慮すると、ヒドロシリル基を含有する多面体骨格を有するポリシロキサンであることが好ましい。化合物(β)は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
直鎖構造を有するヒドロシリル基含有ポリシロキサンの具体例としては、ジメチルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、メチルフェニルシロキサン単位とメチルハイドロジェンシロキサン単位及び末端トリメチルシロキシ単位との共重合体、ジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、などが例示される。
分子末端にヒドロシリル基を有するポリシロキサンの具体例としては、先に例示したジメチルハイドロジェンシリル基で末端が封鎖されたポリシロキサン、ジメチルハイドロジェンシロキサン単位(H(CH)2SiO1/2単位)とSiO単位、SiO3/2単位、SiO単位からなる群において選ばれる少なくとも1つのシロキサン単位からなるポリシロキサンなどが例示される。
ヒドロシリル基を含有する環状ポリシロキサン化合物としては、1,3,5,7−ハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1−プロピル−3,5,7−トリハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,5−ジハイドロジェン−3,7−ジヘキシル−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5−トリハイドロジェン−1,3,5−トリメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタハイドロジェン−1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロシロキサン、1,3,5,7,9,11−ヘキサハイドロジェン−1,3,5,7,9,11−ヘキサメチルシクロシロキサンなどが例示される。
ヒドロシリル基を含有する多面体構造のポリシロキサンとしては、多面体骨格に含有されるSi原子の数は6〜24であることが好ましく、具体的に、例えば、以下の構造で示される多面体構造を有するシルセスキオキサン(式(10))が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。
Figure 0006883946
上記式中、R10〜R17は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜10の非置換又は置換の1価の炭化水素基である。ただし、R10〜R17のうちの少なくとも1つは、ヒドロシリル化反応の反応性基であるヒドロシリル基である。
上記、多面体構造を有するシルセスキオキサンは、例えば、RSiX(式中、Rは、上述のR10〜R17を表し、Xは、ハロゲン原子、アルコキシ基等の加水分解性官能基を表す)のシラン化合物の加水分解縮合反応によって、得られる。または、RSiXの加水分解縮合反応によって分子内に3個のシラノール基を有するトリシラノール化合物を合成したのち、さらに、同一もしくは異なる3官能性シラン化合物を反応させることにより、閉環し、多面体骨格を有するシルセスキオキサンを合成する方法も知られている。
化合物(β)として、さらに好ましい例としては、以下の構造で示されるような多面体構造を有するシリル化ケイ酸(式(11))が例示される(ここでは、Si原子数=8を代表例として例示する)。該化合物においては、多面体骨格を形成するSi原子と反応性基とが、シロキサン結合を介して結合していることから、得られる硬化物は剛直になり過ぎず、良好な硬化物を得ることができる。
Figure 0006883946
上記の構造中、R18〜R41は、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基を含有する有機基、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、またはこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などから選択される同一又は異種の有機基である。ただし、これらR18〜R41のうち、少なくとも1つはヒドロシリル化反応の反応性基であるヒドロシリル基である。
多面体構造を有するケイ酸塩の合成方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いて合成できる。前記合成方法としては、具体的には、テトラアルコキシシランを4級アンモニウムヒドロキシド等の塩基存在下で加水分解縮合させる方法が挙げられる。テトラアルコキシシランとしては、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラブトキシシラン等が例示できる。4級アンモニウムヒドロキシドとしては、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドが例示できる。また、本発明においては、テトラアルコキシランの替わりに、シリカや稲籾殻等のシリカ含有する物質からも、同様の多面体構造を有するケイ酸塩を得ることが可能である。
本合成方法においては、テトラアルコキシシランの加水分解縮合反応により、多面体構造を有するケイ酸塩が得られ、さらに得られたケイ酸塩をヒドロシリル基含有シリルクロライド等のシリル化剤と反応させることにより、多面体構造を形成するSi原子と反応性基であるヒドロシリル基とが、シロキサン結合を介して結合したポリシロキサンを得ることが可能となる。
本発明においては、多面体骨格に含有されるSi原子の数として、6〜24、さらに好ましくは、6〜10のものを好適に用いることが可能である。また、Si原子数の異なる多面体骨格を有するポリシロキサンの混合物であってもよい。
また、本発明においては、1分子中に含まれるヒドロシリル基の数は、少なくとも2つ、さらに好ましくは、少なくとも3つ含有することが望ましい。本発明においては、耐熱性、耐光性の観点から、Si原子上は、水素原子およびメチル基から構成されることが好ましい。
化合物(β)としては、入手性および化合物(α1)、(α2)および(γ)との反応性が良いという観点からは、下記式(7)で示される構造;
Figure 0006883946
(式中、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜6の有機基を表し、かつ、炭素数が同一であっても異なってもよく、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)で表される、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状オルガノポリシロキサンが好ましい。
上記有機基としては、炭化水素基(一部酸素で置換されていてよい)などが挙げられ、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、フェニル基が好ましく、入手性の観点よりメチル基、プロピル基、ヘキシル基、フェニル基がさらに好ましい。
式(7)で表される化合物中の置換基RおよびRは、C、H、Oからなる群より選択して構成されるものであることが好ましく、炭化水素基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
式(7)で表される化合物としては、入手容易性及び反応性の観点からは、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンであることが好ましい。
上記した各種化合物(β)は単独もしくは2種以上のものを混合して用いることが可能である。
(化合物(γ))
化合物(γ)は、1分子中に光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物であれば特に限定されない。なお、ここでいう光重合性官能基は、前述のポリシロキサン化合物が有する光重合性官能基と同一であって、好ましい態様も同様に好ましい。
SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合としては、上述の化合物(α1)および(α2)のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合と同様のものが好ましい。
光重合性官能基としてエポキシ基を有する化合物の具体例としては、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等が挙げられ、光重合反応性に優れている観点より、脂環式エポキシ基を有する化合物であるビニルシクロヘキセンオキシドが特に好ましい。
光重合性官能基として架橋性ケイ素基(加水分解性シリル基)を有する化合物としては、具体例としては、トリクロロビニルシラン、メチルジクロロビニルシラン、ジメチルクロロビニルシラン、フェニルジクロロビニルシランのようなハロゲン化シラン類;トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、メチルジエトキシビニルシラン、メチルジメトキシビニルシラン、フェニルジメトキシビニルシランのようなアルコキシシラン類;メチルジアセトキシビニルシラン、フェニルジアセトキシビニルシランのようなアシロキシシラン類;ビス(ジメチルケトキシメート)メチルビニルシラン、ビス(シクロヘキシルケトキシメート)メチルビニルシランのようなケトキシメートシラン類などがあげられるが、これらに限定されるものではない。これらのうちでは特に、アルコキシシラン類を好適に使用することができる。光重合性官能基が架橋性ケイ素基である場合、耐熱性に優れる利点がある。
また、入手性容易である観点から、下記式(8)で示される構造;
Figure 0006883946
(式中、RおよびRは、それぞれ炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物であることが好ましく、反応後の副生成物が除去されやすい等という観点より、特にトリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、ジメトキシメチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、メトキシジメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシランが好ましい。
光重合性官能基としてアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、および、ビニル基またはアリル基と下記式(12);
Figure 0006883946
(式中のR42は水素原子あるいはメチル基を表す。)で示される有機基とを同一分子内中に1個以上ずつ有する化合物、例えば、上述の式(6)において、式中のRの少なくとも1個が上記式(13)で示される基であり、かつ、R3の少なくとも1個がビニル基またはアリル基などのSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基である化合物が挙げられる。さらにヒドロシリル化の選択性が高いという観点より、メタクリロイル基が同一分子内にアリルまたはビニル基と共存する化合物であることが好ましく、特に入手性の面より(メタ)アクリル酸アリルおよび/または(メタ)アクリル酸ビニルが好ましく、中でもメタクリル酸アリル、メタクリル酸ビニルが好ましい。
またヒドロシリル化反応の際、光重合性官能基の種類を問わず、2種以上の化合物(γ)を併用することもできる。
(ヒドロシリル化触媒)
化合物(α1)、(α2)、(β)および(γ)をヒドロシリル化反応させる場合の触媒としては、公知のヒドロシリル化触媒を用いればよい。
触媒活性の点から塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
触媒の添加量は特に限定されないが、スムーズにヒドロシリル化反応を進行させるため、好ましい添加量の下限は、反応時に仕込んでいるSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合(以下、単に「アルケニル基」と称することがある。)1モルに対して10−8モル、より好ましくは10−6モルであり、好ましい添加量の上限は上記化合物のアルケニル基1モルに対して10−1モル、より好ましくは10−2モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10−2モル、より好ましくは10−1モルであり、好ましい添加量の上限は10モル、より好ましくは10モルである。
(ヒドロシリル化の反応方法)
反応の順序、方法としては種々挙げられるが、合成工程が簡便であると言う観点からは、全ての化合物を1ポットでヒドロシリル化反応させ、最後に未反応の化合物を除去する方法が好ましい。
低分子量体を含有しにくいと言う観点から、過剰のアルケニル基含有化合物(化合物(α1)および/または(α2))とSiH基含有化合物(化合物(β))とを、もしくは、過剰のSiH基含有化合物(化合物(β))とアルケニル基含有化合物(化合物(α1)および/または(α2))とをヒドロシリル化反応させた後、一旦、未反応の化合物を除き、得られた反応物と化合物(γ)とをヒドロシリル化反応させる方法がより好ましい。
各化合物の反応させる割合は特に限定されないが、反応させる化合物の総アルケニル基量をA、反応させる化合物の総SiH基量をBとした場合、1≦B/A≦30であることが好ましく、更に1≦B/A≦10であることが好ましい。1>B/Aの場合は、組成物中に未反応アルケニル基が残るため着色の原因となり、また30<B/Aの場合には、未反応のSiH基が多く残るため、組成物の硬化時における発泡、クラックの原因となる場合がある。
反応温度としては種々設定できるが、この場合好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなり、反応温度が高いと実用的でない。反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。ヒドロシリル化反応の際に酸素を使用できる。反応容器の気相部に酸素を添加することで、ヒドロシリル化反応を促進できる。酸素の添加量を爆発限界下限以下とする点から、気相部の酸素体積濃度は3%以下に管理する必要がある。酸素添加によるヒドロシリル化反応の促進効果が見られるという点からは、気相部の酸素体積濃度は0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましい。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
ポリシロキサン系化合物の上記製造方法では、目的によって種々の添加剤を使用できる。
(ゲル化抑制剤)
得られる反応物の保存安定性を改良する目的、或いは化合物(α1)(態様によっては、さらに化合物(α2))、化合物(β)および化合物(γ)をヒドロシリル化反応させた後に、溶媒及び/又は未反応の化合物を減圧脱揮により除去する場合の、加熱処理による増粘等の変質を抑制する目的で、ゲル化抑制剤を使用することができる。ゲル化抑制剤としては、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機イオウ化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等の公知のゲル化抑制剤を使用でき、これらを併用してもかまわない。
遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、トリフェニルホスフィン好ましい。
ゲル化抑制剤の添加量は種々設定できるが、使用するヒドロシリル化触媒1モルに対する好ましい添加量の下限は10−1モル、より好ましくは1モルであり、好ましい添加量の上限は103モル、より好ましくは102モルである。添加量が少ないと、所望の保存安定性や減圧脱揮時のゲル化抑制効果が得られない。添加量が多いと、硬化反応時の硬化阻害剤になり得る。
また、これらのゲル化抑制剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(光酸発生剤)
本ネガ型硬化性組成物は、光酸発生剤を含有していてもよい。上記光酸発生剤は、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線、i線等の活性エネルギー線を照射することにより、上記(B)成分中の架橋性シリル基を架橋させることができる酸性活性物質を放出することができる化合物であれば、特に限定されない。
光酸発生剤により発生する酸のpKaは、限定はされないが、好ましくは、3未満、さらに好ましくは1未満である。
本ネガ型硬化性組成物に使用できる光酸発生剤としては、公知の光酸発生剤を試用する事ができる。例えば、特開2000−1648号公報、特表2001−515533号公報、国際公開2002−83764号公報において好適とされている各種の化合物を挙げることができるが、本発明は特にこれらに限定されるわけではない。本発明において好ましく使用できる光酸発生剤としては、スルホネートエステル類、カルボン酸エステル類、オニウム塩類が挙げられ、好ましくは、オニウム塩類が用いられる。
スルホネートエステル類の光酸発生剤として、種々のスルホン酸誘導体を使用することができる。例えば、ジスルホン類、ジスルホニルジアゾメタン類、ジスルホニルメタン類、スルホニルベンゾイルメタン類、トリフルオロメチルスルホネート誘導体などのイミドスルホネート類、ベンゾインスルホネート類、1−オキシ−2−ヒドロキシ−3−プロピルアルコールのスルホネート類、ピロガロールトリスルホネート類、ベンジルスルホネート類を挙げることができる。
具体的には、ジフェニルジスルホン、ジトシルジスルホン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(クロルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(キシリルスルホニル)ジアゾメタン、フェニルスルホニルベンゾイルジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)メタン、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドメチルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドトシルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、1、8−ナフタレンジカルボン酸イミドカンファースルホネート、コハク酸イミドフェニルスルホネート、コハク酸イミドトシルスルホネート、コハク酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、コハク酸イミドカンファースルフォネート、フタル酸イミドトリフルオロスルホネート、シス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸イミドトリフルオロメチルスルホネート、ベンゾイントシラート、1、2−ジフェニル−2−ヒドロキシプロピルトシラート、1、2−ジ(4−メチルメルカプトフェニル)−2−ヒドロキシプロピルトシラート、ピロガロールメチルスルホネート、ピロガロールエチルスルホネート、2,6−ジニトロフェニルメチルトシラート、オルト−ニトロフェニルメチルトシラート、パラ−ニトロフェニルトシラートなどを挙げることができる。
これらは、1種のみまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、カルボン酸エステル類も同様に使用することができる。
一般に、スルホン酸エステルおよびカルボン酸エステルは、酸を遊離するために、加熱ステップ(50℃〜100℃)を必要とする場合がある。
本発明で使用できるオニウム塩としては、テトラフルオロボレート(BF4−)、ヘキサフルオロホスフェート(PF6−)、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6−)、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6−)、ヘキサクロルアンチモネート(SbCl6−)、テトラフェニルボレート、テトラキス(トリフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロメチルフェニル)ボレート、過塩素酸イオン(ClO4−)、トリフルオロメタンスルフォン酸イオン(CF3SO3−)、フルオロスルフォン酸イオン(FSO3−)、トルエンスルフォン酸イオン、トリニトロベンゼンスルフォン酸アニオン、トリニトロトルエンスルフォン酸アニオン等のアニオンを有するスルホニウム塩またはヨードニウム塩を使用することができる。
スルホニウム塩としては、例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアシルネート、トリフェニルスルホニウムヘキサヘキサフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオベンジル)ボレート、メチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、メチルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジメチルフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルナフチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリトイルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、アニシルジフェニルスルホニウムヘキサヘキサフルオルアンチモネート、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、4−クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリス(4−フェノキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(4−エトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−アセチルフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−アセチルフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、トリス(4−チオメトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスフェート、ジ(メトキシスルホニルフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(メトキシナフチル)メチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジ(メトキシナフチル)メチルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジ(カルボメトキシフェニル)メチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(4−オクチルオキシフェニル)ジフェニルスルホニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリス(ドデシルフェニル)スルホニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、ジメチルナフチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフルオロメチルジフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、フェニルメチルベンジルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、10−メチルフェノキサチイニウムヘキサフルオロホスフェート、5−メチルチアントレニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9,9−ジメチルチオキサンテニウムヘキサフルオロホスフェート、10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムキサンテニウムテトラフルオロボレート、10−フェニル−9−オキソチオキサンテニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、5−メチル−10−オキソチアトレニウムテトラフルオロボレート、5−メチル−10−オキソチアトレニウムテトラキス(ペンタフルオロベンジル)ボレート、および5−メチル−10,10−ジオキソチアトレニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。これらは、1種のみまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明において使用できるヨードニウム塩としては、(4−n−デシロキシフェニル)フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムトリフルオロスルホネート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、〔4−(2−ヒドロキシ−n−テトラデシロキシ)フェニル〕フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロスルホネート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメチルスルフォネート、ジ(ドデシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジ(ドデシルフェニル)ヨードニウムトリフラート、ジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジブロモジフェニルヨードニウムビスルフェート、3,3’−ジニトロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジメチルジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ビススクシンイミドジフェニルヨードニウムビスルフェート、3−ニトロジフェニルヨードニウムビスルフェート、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウムビスルフェート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、(4−オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウムテトラキス(3,5−ビス−トリフルオロメチルフェニル)ボレート、米国特許第5,554,664号に開示されている(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(CH3C6H4)2I−(SO2CF3)3、米国特許第5,514,728号に開示されている(C6H5)2I−B(C6F5)4、および米国特許第5,340,898号に開示されているものなどが挙げられる。これらは、1種のみまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
その他のオニウム塩としては、芳香族ジアゾニウム塩を使用することができ、例えばp−メトキシベンゼンジアゾニウム・ヘキサフルオロアンチモネートなどを使用することができる。
商業的に入手できるオニウム塩としては、サンエイドSI−60、SI−80、SI−100、SI−60L、SI−80L、SI−100L、SI−L145、SI−L150、SI−L160、SI−L110、SI−L147(以上、三新化学工業(株)製)、UVI−6950、UVI−6970、UVI−6974、UVI−6990(以上、ユニオンカーバイド社製)、アデカオプトマーSP−150、SP−151、SP−170、SP−171、SP−172(以上、旭電化工業(株)製)、Irgacure 261(チバスペシャルティケミカルズ(株)製)、CI−2481、CI−2624、CI−2639、CI−2064(以上、日本曹達(株)製)、CD−1010、CD−1011、CD−1012(以上、サートマー社製)、DS−100、DS−101、DAM−101、DAM−102、DAM−105、DAM−201、DSM−301、NAI−100、NAI−101、NAI−105、NAI−106、SI−100、SI−101、SI−105、SI−106、PI−105、NDI−105、BENZOIN TOSYLATE、MBZ−101、MBZ−301、PYR−100、PYR−200、DNB−101、NB−101、NB−201、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−109(以上、ミドリ化学(株)製)、PCI−061T、PCI−062T、PCI−020T、PCI−022T(以上、日本化薬(株)製)、IBPF、IBCF(三和ケミカル(株)製)CD1012(サートマー社製)、IBPF、IBCF(以上、三和ケミカル(株)製)、BBI−101、BBI−102、BBI−103、BBI−109(以上、ミドリ化学(株)製)、UVE1014(ゼネラルエレクトロニクス社製)、RHODORSIL−PI2074(ローディア社製)等を挙げることができる。
また、J.Polymer Science:Part A:polymerChemistry,Vol.31,1473−1482(1993),J.Polymer Science:Part A:polymer Chemistry,Vol.31,1483−1491(1993)において記述されている方法により製造できるジアリールヨードニウム塩を使用することもできる。
本ネガ型硬化性組成物における光酸発生剤の含有量は、特に制限はないが、硬化性の点から、(B)成分100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、また、硬化物の物性バランスの点から0.1〜5.0重量部であることがさらに好ましい。光酸発生剤の量が少ないと硬化に長時間を要したり、十分に硬化した硬化物が得られない。また、光酸発生剤が多いと、色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色や、耐熱性や耐光性を損なうため、好ましくない。
(カチオン重合開始剤)
本ネガ型硬化性組成物は、カチオン重合開始剤を含有していてもよい。上記カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線によりカチオン種又はルイス酸を発生する、活性エネルギー線カチオン重合開始剤、又は熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。上記カチオン種またはルイス酸により、上記(B)成分が有する光重合性官能基を架橋させることができる。
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としては、米国特許第3379653号に記載されたような金属フルオロ硼素錯塩及び三弗化硼素錯化合物;米国特許第3586616号に記載されたようなビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩;米国特許第3708296号に記載されたようなアリールジアゾニウム化合物;米国特許第4058400号に記載されたようなVIa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4069055号に記載されたようなVa族元素の芳香族オニウム塩;米国特許第4068091号に記載されたようなIIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート;米国特許第41396
55号に記載されたようなチオピリリウム塩;米国特許第4161478号に記載されたようなMF6−陰イオン(ここでMは燐、アンチモン及び砒素から選択される)の形のVIa元素;米国特許第4231951号に記載されたようなアリールスルホニウム錯塩;米国特許第4256828号に記載されたような芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩;W.R.Wattらによって「ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、ポリマー・ケミストリー版」、第22巻、1789頁(1984年)に記載されたようなビス [4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル] スルフィド−ビスヘキサフルオロ金属塩(例えば燐酸塩、砒酸塩、アンチモン酸塩等);陰イオンがB(C6F5)4−である芳香族ヨードニウム錯塩及び芳香族スルホニウム錯塩の1種以上が包含される。
好ましい陽イオン系活性エネルギー線カチオン重合開始剤には、アリールスルホニウム錯塩、ハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウム又はヨードニウム塩並びにII族、V族及びVI族元素の芳香族オニウム塩が包含される。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990及びUVR−6974(ユニオン・カーバイド社)、UVE−1014及びUVE−1016(ジェネラル・エレクトリック社)、KI−85(デグッサ社)、SP−152及びSP−172(旭電化社)並びにサンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、WPI113及びWPI1
16(和光純薬工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)として商品として入手できる。
熱カチオン重合開始剤としては、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、トリフルオロ酸塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、三弗化硼素等のようなカチオン系又はプロトン酸触媒が用いることができる。加熱によってカチオン種を発生するまでは高い安定性を持っているため潜在性硬化触媒と言える。置換基の種類やオニウム塩の陰イオンの種類により重合活性が変化し、特に、陰イオンについては、BF−<AsF6−<PF6−<SbF6−<B(C6F5)4−の順で重合活性が高くなることが知られている。この他、アルミニウム錯体とシラノール化合物、アルミニウム錯体とビスフェノールSなど特定のフェノール化合物がカチオン重合触媒になることが知られている。
活性エネルギー線カチオン重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン重合開始剤として用いることができる。例としては、サンエイドSI−60L、SI−80L及びSI−100L(三新化学工業社)、RHODORSIL PI2074(ローディア社)がある。これらのカチオン重合開始剤の中で、芳香族オニウム塩が、取扱い性及び潜在性と硬化性のバランスに優れるという点で好ましい。
カチオン重合開始剤の使用量は、(B)成分100重量部に対して、好ましくは0.01〜10重量部、より好ましくは0.1〜5重量部の量である。カチオン重合開始剤量が少ないと、硬化に長時間を要したり、十分に硬化した硬化物が得られない。開始剤量が多いと、開始剤の色が硬化物に残ったり、急硬化のために着色や隆起したり、硬化物の耐熱耐光性を損なうために好ましくない。
(ラジカル重合開始剤)
本ネガ型硬化性組成物は、ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。上記ラジカル重合開始剤としては、活性エネルギー線によりラジカル種を発生する、活性エネルギー線ラジカル重合開始剤、又は熱によりラジカル種を発生する熱ラジカル重合開始剤であれば、特に限定されず使用できる。上記ラジカル種により、(B)成分が有する光重合性官能基を架橋させることができる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾイン系化合物、ビイミダゾール系化合物、α−ジケトン系化合物、チタノセン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ケタール系化合物、アゾ系化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン系化合物、ジスルフィド系化合物、チウラム化合物類、フルオロアミン系化合物等が用いることができ、アセトフェノン系化合物の具体例としては、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4’−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2’−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−(4’−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4’−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシー1−〔4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチループロパンー1−オン等が挙げられ、アシルフォスフィンオキサイド系化合物の具体例としては、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられ、オキシムエステル系化合物の具体例としては、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられ、ベンゾイン系化合物の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2−ベンゾイル安息香酸メチル等が挙げられる。
ベンゾフェノン系化合物の具体例としては、ベンジルジメチルケトン、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられ、α−ジケトン系化合物の具体例としては、ジアセチル、ジベンゾイル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられ、ビイミダゾール系化合物の具体例としては、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール等が挙げられ、多核キノン系化合物の具体例としては、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン等が挙げられ、キサントン系化合物の具体例としては、キサントン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられ、トリアジン系化合物の具体例としては、1,3,5−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(2’−フリルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−ブロモ−4’−メチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−チオフェニルエチリデン)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。
特に薄膜硬化性に優れるという観点より、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシー1−〔4−[4−(2−ヒドロキシー2−メチループロピオニル)−ベンジル]フェニル〕−2−メチループロパンー1−オン、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
特に硬化物が透明性に優れるという観点より、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4’−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2’−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,2−ジメトキシアセトフェノンが好ましい。
また熱ラジカル重合開始剤の具体例としては、アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート等のパーオキシエステル類、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル等のアゾ系化合物類、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩類等が挙げることができる。
これらのラジカル重合開始剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
ラジカル重合開始剤の使用量は、光重合性官能基を有する化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.1〜10重量部の量である。カチオン重合開始剤量が少ないと、硬化が不十分でアルカリ現像時にコントラストが得られない傾向がある。開始剤量が多いと、硬化膜自体が着色するために好ましくない。
(その他の添加剤)
(架橋剤)
本ネガ型硬化性組成物には、作業性、反応性、接着性および硬化物強度の調整のために、光重合性官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤を添加することができる。上記架橋剤としては、硬化反応形式によって選択すれば特に限定されず、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アルコキシシラン化合物および(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
上記エポキシ化合物および上記オキセタン化合物の具体例としては、ノボラックフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、シクロヘキシルエポキシ基含有ポリオルガノシロキサン(環状または鎖状)、グリシジル基含有ポリオルガノシロキサン(環状または鎖状)、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2,2’−ビス(4−グリシジルオキシシクロヘキシル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカーボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−5,5−スピロ−(3,4−エポキシシクロヘキサン)−1,3−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、1,2−シクロプロパンジカルボン酸ビスグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、1,4−ビス{(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ}メチル}ベンゼン、ビス{1−エチル(3−オキセタニル)}メチルエーテル、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタンおよび3−エチル−3−(2−エチルへキシロキシメチル)オキセタン等が挙げられる。
上記アルコキシシラン化合物の具体例としては、テトラメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、メチルトリメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物、並びにジメチルジメトキシ(エトキシ)シランおよびその縮合物等が挙げられる。
上記(メタ)アクリレート化合物の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸変性アリルグリシジルエーテル(ナガセケムテックス製、商品名:デナコールアクリレートDA111)、ウレタン(メタ)アクリレート類、エポキシ(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン(メタ)テトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール系(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、(メタ)アクリレート基含有ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。
上記架橋剤の添加量は適宜設定され得るが、(B)成分100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜25重量部である。上記架橋剤の添加量が少ないと添加効果が表れず、上記架橋剤の添加量が多いと硬化物の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
(増感剤)
本ネガ型硬化性組成物には、光エネルギーで硬化させる場合には、光の感度向上のおよびg線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)と言われるような高波長の光に感度を持たせるために、適宜、増感剤を添加する事ができる。これら増感剤は、上記カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤、光酸発生剤等と併用して使用し、硬化性の調整を行うことができる。
添加する化合物には、アントラセン系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げることができる。
アントラセン系化合物の具体例としては、アントラセン、2−エチル−9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、1,4−ジメトキシアントラセン、9−メチルアントラセン、2−エチルアントラセン、2−tert−ブチルアントラセン、2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン、9,10−ジフェニル−2,6−ジ−tert−ブチルアントラセン等が挙げられ、特に入手しやすい観点より、アントラセン、9,10−ジメチルアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
硬化物の透明性に優れる観点からはアントラセンが好ましく、硬化性組成物との相溶性に優れる観点からは9,10−ジブトキシアントラセン、9,10−ジプロポキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン等が好ましい。
チオキサントン系の具体例としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,5−ジエチルジオキサントン等が挙げられる。
これらの増感剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本ネガ型硬化性組成物における増感剤の含有量は、増感効果を発揮できる量であれば、特に限定されないが、添加した開始剤(カチオン重合開始剤/ラジカル重合開始剤/光酸発生剤)1モルに対して、増感剤0.01〜300モル加えることが好ましく、0.1モル〜100モルであることがさらに好ましい。増感剤の量が少ないと、増感効果が得られず、硬化に長時間を要したり、現像性に好ましくない影響を及ぼす場合があり、一方、多いと、色が硬化物に残ったり、急硬化のための着色や、耐熱性や耐光性を損なう恐れがある。
(反応性調整剤)
本ネガ型硬化性組成物をラジカル硬化系として使用する際には、反応性調整および酸素による硬化阻害抑制等のため、チオール化合物、アミン化合物、ホスフィン化合物等を添加する事ができる。
チオール化合物の具体例としては、トリ(3−メルカプトプロピオニロオキシ)−エチル)イソシアヌレート、トリメチロールプロパントリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス−3−メルカプトプロピオネート、ジペンタエリスリトール−3−メルカプトプロピオネート、1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)、1,3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6トリオン、メルカプト基含有ポリオルガノシロキサン(信越化学製、KF2001、KF2004等)等が挙げられる。
耐熱性に優れるという観点より、特に3,5−トリス(3−メルカブトブチルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6トリオン、トリ(3−メルカプトプロピオニロオキシ)−エチル)イソシアヌレート、メルカプト基含有ポリオルガノシロキサン(信越化学製、KF2001、KF2004等)が好ましい。
ホスフィン化合物の具体例としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン等が挙げられる。
(接着性改良剤)
本ネガ型硬化性組成物には、接着性改良剤を添加することもできる。接着性改良剤としては一般に用いられている接着剤の他、例えば種々のカップリング剤、エポキシ化合物、オキセタン化合物、フェノール樹脂、クマロン−インデン樹脂、ロジンエステル樹脂、テルペン−フェノール樹脂、α−メチルスチレン−ビニルトルエン共重合体、ポリエチルメチルスチレン、芳香族ポリイソシアネート等を挙げることができる。
カップリング剤としては例えばシランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、分子中に有機基と反応性のある官能基と加水分解性のケイ素基を各々少なくとも1個有する化合物であれば特に限定されない。有機基と反応性のある基としては、取扱い性の点からエポキシ基、メタクリル基、アクリル基、イソシアネート基、イソシアヌレート基、ビニル基、カルバメート基から選ばれる少なくとも1個の官能基が好ましく、硬化性及び接着性の点から、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基が特に好ましい。加水分解性のケイ素基としては取扱い性の点からアルコキシシリル基が好ましく、反応性の点からメトキシシリル基、エトキシシリル基が特に好ましい。
好ましいシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ官能基を有するアルコキシシラン類:3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシメチルトリエトキシシラン等のメタクリル基あるいはアクリル基を有するアルコキシシラン類が例示できる。
シランカップリング剤の添加量としては種々設定できるが、光重合性官能基を有する化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜20重量部、より好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化性や硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、これらのカップリング剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物等は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明においてはカップリング剤やエポキシ化合物の効果を高めるために、カルボン酸類及び/または酸無水物類を用いることができ、接着性の向上及び/又は安定化が可能である。このようなカルボン酸類、酸無水物類としては特に限定されないが、2−エチルヘキサン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、メチルシクロヘキサンジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルハイミック酸、ノルボルネンジカルボン酸、水素化メチルナジック酸、マレイン酸、アセチレンジカルボン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、桂皮酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、およびそれらの単独あるいは複合酸無水物が挙げられる。
これらのカルボン酸類および/または酸無水物類のうち、得られる硬化物の物性を損ない難いという点においては、好ましいカルボン酸類および/または酸無水物類としては、例えば、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸およびそれらの単独あるいは複合酸無水物等が挙げられる。
カルボン酸類および/または酸無水物類を用いる場合の使用量は種々設定できるが、カップリング剤および/またはエポキシ化合物100重量部に対しての好ましい添加量の範囲は0.1〜50重量部、より好ましくは1〜10重量部である。添加量が少ないと接着性改良効果が表れず、添加量が多いと硬化物物性に悪影響を及ぼす場合がある。
また、これらのカルボン酸類および/または酸無水物類は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
(溶剤)
本ネガ型硬化性組成物に使用される、ポリシロキサン系化合物が高粘度である場合、溶剤に溶解して用いることも可能である。使用できる溶剤は特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート(PGMEA)、エチレングリコールジエチルエーテル等のグリコール系溶剤、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤を好適に用いることができる。
ヒドロシリル化の反応性の観点より、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、クロロホルムが好ましい。
使用する溶媒量は適宜設定できるが、用いる硬化性組成物1gに対しての好ましい使用量の下限は0.1mLであり、好ましい使用量の上限は10mLである。使用量が少ないと、低粘度化等の溶媒を用いることの効果が得られにくく、また、使用量が多いと、材料に溶剤が残留して熱クラック等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり工業的利用価値が低下する。
これらの、溶媒は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。

本ネガ型硬化性組成物には、その他、熱可塑性樹脂、リン化合物、充填材、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、着色剤、離型剤、難燃剤、難燃助剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、反応性希釈剤、酸化防止剤、熱安定化剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、熱伝導性付与剤、物性調整剤等を本発明の目的および効果を損なわない範囲において添加することができる。
(硬化性組成物の調整方法および硬化方法)
本ネガ型硬化性組成物の調製方法は特に限定されず、種々の方法で調製可能である。各種成分を硬化直前に混合調製してもよく、全成分を予め混合調製した一液の状態で低温貯蔵しておいても良い。
光硬化させるための光源としては、使用する重合開始剤や増感剤の吸収波長を発光する光源を使用すればよく、通常200〜450nmの範囲の波長を含む光源、例えば、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、発光ダイオードなどを使用できる。
露光量は特に制限されないが、好ましい露光量の範囲は1〜5000mJ/cm、より好ましくは1〜1000mJ/cmである。露光量が少ないと硬化しない。露光量が多いと急硬化のために変色することがある。好ましい硬化時間の範囲は30〜120秒、より好ましくは1〜60秒である。硬化時間が長いと、光硬化の速硬化の特徴が生かされない。
また溶剤除去および硬化物の物性向上の目的で、光硬化前後に熱を加えプリベークおよびアフターベークさせてもよい。硬化温度としては種々設定できるが、好ましい温度の範囲は60〜400℃、より好ましくは90〜350℃である。
このようにして得られた硬化物(すなわち、上記硬化性組成物が硬化した硬化物)も本発明に包含される。
(積層体)
本ネガ型硬化性組成物は、液状でハンドリングおよび溶液塗布により容易に薄膜形成できるため、基材上に層状硬化させることにより積層体を容易に形成させうる。
本積層体は、具体的に例えば、以下の方法で作成することができる。上記ポリシロキサン系組成物を、基材上に、スピンコート法、ロールコート法、印刷法、バーコート法等の方法で、膜厚が通常0.05〜100μm、好ましくは、0.1〜50μm、より好ましくは、0.5〜20μmになるように塗布する。基材としては、例えば、ガラス類、ポリカーボネート類、フィルム類、撮像素子の形成されたシリコンウェハー、LCD又はCCD用カラーフィルターのパターン化された着色樹脂膜、印刷用紙、印刷用繊維、金属板等が挙げられる。次に上記活性エネルギー線により露光を行うことで積層体を得ることができる。
このようにして得られた積層体は、次いで、後述するように、アルカリ現像液により現像処理することができる。
(アルカリ現像方法)
アルカリ現像によるパターニング形成について特に限定される方法はなく、一般的に行われる浸漬法やスプレー法等の現像方法により未露光部を溶解・除去し所望のパターン形成させることができる。
またこの時の現像液については、一般に使用するものであれば特に限定なく使用することができ、具体例としては、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液やコリン水溶液等の有機アルカリ水溶液や、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸リチウム水溶液などの無機アルカリ水溶液やこれら水溶液に溶解速度等の調整のためにアルコールや界面活性剤などを添加したもの等を挙げることができる。本発明の硬化性組成物は、未硬化部分の現像液に対する溶解速度を調整することができるため、未硬化部分の溶解・除去を高精度で行うことができ、タックおよびパターニング性に優れた硬化物を製造することができる。
水溶液濃度に関しては、露光部と未露光部のコントラストがつきやすいという観点より、25重量%以下であることが好ましく、より好ましくは10重量%以下、更に好ましくは5重量%以下であることが好ましい。

<C.用途>
本ネガ型硬化性組成物およびその硬化物は、種々の用途に用いることができる。従来のエポキシ樹脂、アクリル樹脂およびシリコーン樹脂接着剤が使用される各種用途に応用することが可能である。
例えば、透明材料、光学材料、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、光学部品用接着剤、光導波路結合用光学接着剤、光導波路周辺部材固定用接着剤、DVD貼り合せ用接着剤、粘着剤、ダイシングテープ、電子材料、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、高電圧絶縁材料、層間絶縁膜、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、絶縁用パッキング、絶縁被覆材、接着剤、高耐熱性接着剤、高放熱性接着剤、光学接着剤、LED素子の接着剤、各種基板の接着剤、ヒートシンクの接着剤、塗料、UV粉体塗料、インク、着色インク、UVインクジェット用インク、コーティング材料(ハードコート、シート、フィルム、剥離紙用コート、光ディスク用コート、光ファイバ用コート等を含む)、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、シーリング材料、ポッティング材料、封止材料、発光ダイオード用封止材料、光半導体封止材料、液晶シール剤、表示デバイス用シール剤、電気材料用封止材料、各種太陽電池の封止材料、高耐熱シール材、レジスト材料、液状レジスト材料、着色レジスト、ドライフィルムレジスト材料、ソルダーレジスト材料、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料、光造形、太陽電池用材料、燃料電池用材料、表示材料、記録材料、防振材料、防水材料、防湿材料、熱収縮ゴムチューブ、オーリング、複写機用感光ドラム、電池用固体電解質、ガス分離膜に応用できる。また、コンクリート保護材、ライニング、土壌注入剤、蓄冷熱材、滅菌処理装置用シール材、コンタクトレンズ、酸素透過膜の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。
中でも、本発明の硬化性組成物は、アルカリ現像性透明レジストとして使用できる材料であり、特にFPD用材料として好適な材料である。より具体的には、TFT用パッシベーション膜、TFT用ゲート絶縁膜、TFT用層間絶縁膜、TFT用透明平坦化膜、カラーフィルター用バインダー樹脂、カラーフィルター用透明平坦化材料、ブラックマトリクス用バインダー樹脂、液晶セル用フォトスペーサー材料、OLED素子用透明封止材料などが挙げられる。
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
次に本発明の組成物を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1〜5、比較例1〜6)
実施例1〜5および比較例1〜6の硬化性組成物を表1に示す比率で調整した。
表中、BBI−103はみどり化学製の光カチオン開始剤である。9,10−ジブトキシアントラセンは増感剤である。ビス(2−モルホリノエチル)エーテルは酸拡散抑制剤である。KBM9659は信越化学製のシランカップリング剤である。PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)は溶剤である。白金触媒(白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液、白金として3wt%含有)は硬化触媒である。1―エチニルシクロヘキサノールは硬化遅延剤である。また、下述の方法により評価し、その結果を表1に示す。
Figure 0006883946
表1に示すように、成膜表面の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤で処理することにより、接着性の向上が確認された。比較例5,6は、成膜表面の反応基との反応性を有する基を含まないシランカップリング剤で処理しており、接着性の向上が見られない。また、成膜のTgが圧着加熱温度より低い方が、接着性の向上が確認された。
(合成例1)
ジアリルイソシアヌル酸40g、ジアリルモノメチルイソシアヌル酸29gをジオキサン264gに溶解させ、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)124mgを加えた。このようにして得られた溶液を、3%酸素含有の窒素雰囲気下、105℃に加熱した1,3,5,7−テトラハイドロジェン−1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン88g、トルエン176gの溶液に3時間かけて滴下した。滴下終了から30分後にH−NMRでアルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した後、1-ビニル-3,4-エポキシシクロヘキサン62g、トルエン62gの溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了から30分後にH−NMRでアルケニル基の反応率が95%以上であることを確認した後、冷却により反応を終了した。溶媒のトルエンとジオキサンを減圧留去した後、プロピレングリコール1-モノメチルエーテル2-アセタートに置換し、無色透明の75wt%ポリシロキサン化合物溶液「反応物A」を得た。
(合成例2)
トリアリルイソシアヌレート90g、トルエン90g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)57mgの混合液を、3%酸素含有の窒素雰囲気下、105℃に加熱したトルエン602g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン626gの溶液に40分かけて滴下した。滴下終了から4時間後にNMR測定でアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体を得た。得られた生成物はNMR測定より、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートのアリル基と反応したものであり、8.6mmol/gのSiH基を含有していることがわかった「反応物B」。
(合成例3)
ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート100g、トルエン100g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)49mgの混合液を、3%酸素含有の窒素雰囲気下、105℃に加熱したトルエン362g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン362gの溶液に90分かけて滴下した。滴下終了から2時間後にNMR測定でアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン及びトルエンを減圧留去し、無色透明の液体を得た。得られた生成物はNMR測定より、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートのアリル基と反応したものであり、7.7mmol/gのSiH基と、エポキシ基を含有していることがわかった「反応物C」。
(合成例4)
アリルグリシジルエーテル171g、トルエン171g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)49mgの混合液を、窒素雰囲気下、50℃に加熱したトルエン720g、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン240gの溶液に90分かけて滴下した。滴下終了から1時間後にNMR測定でアリル基の反応率が95%以上であることを確認した。トリアリルイソシアヌレート17g、トルエン17gの混合液を添加し、反応温度を50℃から105℃に上げた。
105℃で、トリアリルイソシアヌレート66g、トルエン66g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有33の混合液を、30分かけて滴下した。滴下終了から4時間後にH−NMRでアリル基の反応率が95%以上であることを確認し、冷却により反応を終了した。未反応の1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トルエン及びアリルグリシジルエーテルの副生物(アリルグリシジルエーテルのビニル基の内転位物)を減圧留去し、無色透明の液体を得た。得られた生成物は、H−NMR測定より、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がアリルグリシジルエーテル及びトリアリルイソシアヌレートのアリル基と反応したものであり、3.9mmol/gのSiH基と、エポキシ基を含有していることがわかった「反応物D」。
(ダイシェア試験サンプルの作製)
表1の硬化性組成物をガラス基板にキャストし、スピンコーターにより、硬化後の膜厚が50μmになるように調整した。
表1の実施例1,5および比較例1,5は感光性樹脂である。ガラス基板にコーティング後、ソフトベイク、露光、アルカリ現像、ハードベイクにより成膜サンプルを作製した。
ソフトベイクはホットプレート上で120℃10分間加熱した。露光は高圧水銀ランプ、大日本科研社製の露光機を使用して1000mJ/cmを照射した。アルカリ現像は、TMAH2.38%水溶液で480秒間現像した後、30秒間水洗し、圧縮空気または圧縮窒素により乾燥した。ハードベイクはホットプレート上で230℃30分間加熱した。
表1の実施例2〜4および比較例2〜4,6は熱硬化性樹脂である。ガラス基板に硬化性組成物をコーティングし、ホットプレート上で120℃30分、180℃30分加熱することにより成膜サンプルを作製した。
実施例1〜4は、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランを0.3wt%含有する蒸留水に、上記の成膜サンプルを1分間浸漬した後、30秒間水洗し、圧縮空気または圧縮窒素により乾燥した。シリコンウエハ(□2×2mm、厚さ0.4mm)の光沢面側を成膜と貼り合せ、0.2kg/cm、150℃10分間の圧着加熱によりダイシェア試験サンプルを作製した。
実施例5は、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シランを0.3wt%含有する蒸留水に、上記の成膜サンプルを1分間浸漬した後、30秒間水洗し、圧縮空気または圧縮窒素により乾燥した。シリコンウエハ(□2×2mm、厚さ0.4mm)の光沢面側を成膜と貼り合せ、0.2kg/cm、150℃10分間の圧着加熱によりダイシェア試験サンプルを作製した。
比較例1〜4は、シリコンウエハ(□2×2mm、厚さ0.4mm)の光沢面側を成膜と貼り合せ、0.2kg/cm、150℃10分の圧着加熱によりダイシェア試験サンプルを作製した。
比較例5,6は、n−デシルトリメトキシシランを0.3wt%含有する蒸留水に、上記の成膜サンプルを1分間浸漬した後、30秒間水洗し、圧縮空気または圧縮窒素により乾燥した。シリコンウエハ(□2×2mm、厚さ0.4mm)の光沢面側を成膜と貼り合せ、0.2kg/cm、150℃10分間の圧着加熱によりダイシェア試験サンプルを作製した。
(ダイシェア接着性試験)
□2×2mm、厚さ0.4mmのシリコンウエハをダイとして、デイジ社製、シリーズ4000ボンドテスター試験機、DS100KGロードセルにより23℃で接着強度を測定した。サンプル5個を測定し、最高値と最低値を除く3点の平均を接着強度とした。
(ガラス転移温度)
120℃30分、180℃30分の加熱により硬化物を作製し、硬化物より30mm×5mm×2mmの試験片を切り出した。アイティー計測制御社製DVA−200を用いて、引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温速度5℃/分の条件にて動的粘弾性測定を行った。tanδのピーク温度を硬化物のガラス転移温度(Tg)とした。
本発明によれば、硬化物と基材を接着することできるため、光学部品の接着、積層体の接着などに利用できる。

Claims (22)

  1. 熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基板と、別の基板とを貼り合せて加熱圧着することによる積層体の製造方法であって、
    前記硬化性組成物はアルカリ現像可能のネガ型感光性樹脂を含有し、前記硬化膜は垂直パターン形状に形成され、
    前記パターン形状に形成された硬化膜を有する前記基板の硬化膜上及び/又は前記別の基板の少なくとも一方の基板を、前記硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤により処理した後、前記硬化膜を有する基板硬化膜上とシランカップリング剤とが化学結合するように両基板を貼り合せて加熱圧着することを特徴とする積層体の製造方法
  2. 前記硬化膜を有する基板又は前記別の基板をシランカップリング剤により処理する際、シランカップリング剤を含む溶液に前記いずれかの基板10秒〜5分間浸漬し、前記基板を乾燥させて液滴を取除くことを特徴とする請求項1に記載の積層体の製造方法
  3. 前記硬化膜を有する基板前記シランカップリング剤により処理され基板であることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法
  4. 熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基板、硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤層、基板の順で形成されており、
    前記硬化性組成物はアルカリ現像可能のネガ型感光性樹脂を含有し、前記硬化膜は垂直パターン形状に形成されていることを特徴とする積層体
  5. 前記シランカップリング剤がアミノアルコキシシラン、ビニルアルコキシシランからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載の積層体
  6. 硬化性組成物が、シリコーン系であることを特徴とする、請求項4又は5に記載の積層体
  7. 硬化性組成物が、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも1個含有する化合物と、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状のポリオルガノシロキサン化合物と、(C)ヒドロシリル化触媒と、を含有することを特徴とする、請求項4〜6のいずれか1項に記載の積層体
  8. A)成分として、1分子中に光重合性官能基を少なくとも2個有し、かつ、下記式(2)および(3)で示される構造
    Figure 0006883946
    Figure 0006883946
    フェノール性水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する化合物を含有する、請求項7に記載の積層体。
  9. (A)成分の光重合性官能基が、エポキシ基、架橋性ケイ素基および(メタ)アクリロイル基からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項8に記載の積層体
  10. (A)成分の光重合性官能基の少なくとも1個が脂環式エポキシ基又はグリシジル基である、請求項8に記載の積層体
  11. (A)成分が、下記化合物(α1)、(α2)、(β)、(γ)のヒドロシリル化反応により合成される変性ポリオルガノシロキサン化合物である、請求項8〜10のいずれか項に記載の積層体
    (α1)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有し、かつ、下記式(2)および(3)で示される構造、
    Figure 0006883946
    Figure 0006883946
    フェノール性水酸基およびカルボキシル基からなる群から選ばれる少なくとも一種を同一分子内に有する有機化合物、
    (α2)1分子中にSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上有する化合物
    (β)1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するオルガノシロキサン化合物、
    (γ)1分子中に、光重合性官能基を少なくとも1個と、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1個以上とを有する化合物。
  12. 化合物(α1)が、下記式(4)および(5)
    Figure 0006883946
    Figure 0006883946
    (式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)から選ばれる少なくとも一種である、請求項11に記載の積層体
  13. (α1)成分が、ジアリルイソシアヌル酸、モノアリルイソシアヌル酸、ジアリルビスフェノールA、ジアリルビスフェノールS、ビニルフェノール、アリルフェノール、ブテン酸、ペンテン酸、ヘキセン酸、へプテン酸およびウンデシレン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項11に記載の積層体
  14. (α2)成分が、下記式(6)
    Figure 0006883946
    (式中Rは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのRは異なっていても同一であってもよく、少なくとも1個のRはSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を含む)で表される化合物である、請求項11〜13のいずれか項に記載の積層体
  15. (β)成分が、下記式(7)
    Figure 0006883946
    (式中R、Rは炭素数1〜10の有機基を表し同一であっても異なっても良く、nは1〜10、mは0〜10の数を表す)で表されるSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン化合物である、請求項11〜14のいずれか1項に記載の積層体
  16. (γ)成分が、ビニルシクロヘキセンオキシド、アリルグリシジルエーテル、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートおよびモノアリルジグリシジルイソシアヌレートからなる群から選ばれる少なくとも一種である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の積層体
  17. γ)成分が、下記式(8)
    Figure 0006883946
    (式中R、Rは炭素数1〜6の有機基を表し、nは1〜3、mは0〜10の数を表す)で表される化合物である、請求項11〜15のいずれか1項に記載の積層体。
  18. 前記硬化性組成物が、さらにカチオン重合開始剤を含有する、請求項8〜17のいずれか項に記載の積層体。
  19. (A)成分が、SiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に2個以上有する化合物を含有する、請求項〜18のいずれか項に記載の積層体
  20. 前記硬化性組成物が、さらに白金触媒を含有する、請求項19に記載の積層体。
  21. 熱または光により硬化する硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜を有する基板と、別の基板とを貼り合せて加熱圧着することによる基板の接着方法であって、
    前記硬化性組成物はアルカリ現像可能のネガ型感光性樹脂を含有し、前記硬化膜は垂直パターン形状に形成され、
    前記パターン形状に形成された硬化膜を有する前記基板の硬化膜上及び/又は前記別の基板の少なくとも一方の基板を、前記硬化膜中の反応基との反応性を有する基を有するシランカップリング剤により処理した後、前記硬化膜を有する基板硬化膜上とシランカップリング剤とが化学結合するように両基板を貼り合せて加熱圧着することを特徴とする基板の接着方法
  22. 前記両基板を貼り合せるときの温度は、前記硬化のガラス転移温度(Tg)よりも高いことを特徴とする請求項21に記載の基板の接着方法。
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