JP5758798B2 - 漏洩磁束測定によって表面近傍の欠陥を検出するための方法および装置 - Google Patents

漏洩磁束測定によって表面近傍の欠陥を検出するための方法および装置 Download PDF

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Description

本発明は、少なくとも部分的に強磁性材料からなる検査試料の表面近傍の欠陥を検出するための方法に、さらに、本方法を実行するのに適切な、表面近傍の欠陥を検出するための装置に関する。
表面近傍の欠陥について半製品を検査することに関連して、漏洩磁束法は、製品を製造する過程で品質を監視するための重要な構成要素である。漏洩磁束法は、例えば渦電流法または超音波検査よりも、半製品のいくつかの擾乱特性、例えば表面またはスケールコーティングの凹凸等に対して敏感ではない。これにより、用いられる信号とノイズ信号とのより優れた比率(S/N比)が得られ、この結果、より確実な欠陥識別が可能になる。
漏洩磁束測定により表面近傍の欠陥を検出するための装置において、検査試料の検査容積が、磁化装置によって磁化され、欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するための、磁界に敏感な少なくとも1つの検査プローブ(漏洩磁束プローブ)を用いて走査される。
検査試料の磁化装置によって発生した磁束は、欠陥のない材料では、空間的にほぼ均一に分布される。クラックまたは他の欠陥は、磁気抵抗が大きくなる領域として作用し、したがって、欠陥の近傍の磁界成分は、欠陥の周りに導かれ、さらに、表面の近傍の領域の金属から押し出される。押し出された磁界成分は、欠陥を検出するための漏洩磁束法で検出される。漏洩磁束測定では、検査試料から押し出された磁界成分が、検査プローブの領域まで達し、検出に十分な磁界強度を有するときに、表面近傍の欠陥(表面欠陥とも呼ばれる)を検出することができる。
例えば、材料の表面欠陥の位置に従って、それらの表面欠陥を分類することができる。表面近傍の欠陥には、検査試料の表面まで達するものがあり、すなわち、例えば、表面から、材料、または表面に開口した空洞内まで達するクラック等がある。これらの欠陥は、「開口欠陥」または「可視欠陥」と呼ぶことができる。さらに、欠陥には、擾乱を若干弱めるであろう表面下に隠れているものがあり、すなわち、例えば、応力欠陥等の材料の深さのクラック、あるいは1つの製造段階において表面まで達するが、次の圧延工程において表面近傍が変形することにより再び閉鎖されているクラックがある。これらの欠陥は「隠れた欠陥」と呼ぶことができ、さらに、中実材料からなる検査試料の場合には「コア欠陥」と呼ばれ、管状の検査試料の場合には「壁欠陥」と呼ばれる。
漏洩磁束検査法および検査装置は、検査されるべき材料がどのように磁化されるかに応じて、一定磁界の磁化(DC漏洩電流検査)による方法および装置と、交流磁界の磁化(AC漏洩電流検査)による方法および装置とに細分される。
一定磁界の磁化による方法は、管を検査する際に用いられ、ここで、両方の外部欠陥、すなわち、管の外側面の欠陥と、内部欠陥、すなわち、管の内部の欠陥とが検出されるように意図される。この場合、一定磁界の磁化の重要な利点、すなわち、深い侵入深さが利用され、その結果、内部欠陥も検出することができる。これに対して、非常に細いおよび/または斜めに通る欠陥の場合には、不十分でしかない検査結果が出ることが多い。
交流磁界の磁化による漏洩磁束法の重要な利点は、外面の非常に小さな欠陥に対して、すなわち開口欠陥に対して分解能が非常に高いことである。したがって、例えば、円形のビレット、正方形のビレットまたは棒鋼等の中実材料にしばしば当てはまる外部欠陥のみが検出されるように意図される場合に、交流磁界の磁化が一般に用いられる。このことで不利なことは、交流磁界の浅い侵入深さにより、表面に開口していない深い欠陥(隠れた欠陥)を不十分にしか識別することができないかまたは完全に識別することができないことである。
特許文献1は、漏洩磁束によって、強磁性鋼からなる管を非破壊検査するための方法および装置を記載しており、この場合、管(検査試料)は一定磁界によって磁化される。管外面と管内面との間におけるより優れた欠陥特定を可能にするために、漏洩磁束の均一な磁界成分の振幅(上記振幅は垂直方向に変化する)が、最初に、管外面からの表面近傍の距離で、次に、その距離からさらに離れた距離で検出され、検出された信号が差異形成によって互いに関連し、この場合、さらに、漏洩磁束の垂直磁界成分の振幅も検出され、表面近傍の距離でおよび/またはその距離からさらに離れた距離で測定された均一な磁界成分の振幅に関連する。
特許文献2は、漏洩磁束測定によって、強磁性検査試料の表面近傍のおよび表面から離れた欠陥を検出するための漏洩磁束測定器を記載しており、この場合も、検査試料が一定磁界によって磁化される。表面近傍の欠陥に対する感度を下げることなく、漏洩磁束観測によって、検査試料の材料表面下に隠された欠陥をより良く検出することができるという効果を得るために、少なくとも1つの平坦なコイルまたはプローブと、それに対して垂直に向けられた少なくとも1つのコイルまたはプローブとの組み合わせが検査プローブ側に設けられる。
独国特許出願公開第102004035174B4号明細書 独国特許出願公開第102006019128A1号明細書
本発明の目的は、漏洩磁束測定によって表面近傍の欠陥を検出するための方法と、表面に開口した欠陥および隠れた欠陥の両方を高感度に検出することを可能にする対応する装置とを提供することである。
この目的を達成するために、本発明は、請求項1の特徴を有する方法と、請求項14の特徴を有する装置とを提供する。有利な発展形態は従属請求項に記載される。全ての請求項の用語は参照により説明の内容に援用される。
少なくとも部分的に強磁性材料からなる検査試料の表面近傍の欠陥を検出するための方法では、検査試料の検査容積が、磁化装置によって磁化され、欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するための、磁界に敏感な少なくとも1つの検査プローブによって走査される。この場合、検査容積は、一定磁界によって、同時に、それに重畳された交流磁界によって磁化される。
この場合、「検査容積」という用語は、重畳された磁界(交流磁界および一定磁界)を用いて磁化される検査試料の容積領域を意味し、ここで、この容積領域は、検査容積内に位置する欠陥によって発生した漏洩磁界を検査プローブで検出することができるように、磁界に敏感な(少なくとも1つの)検査プローブの検出領域に同時に存在する。
このようにして、結合された交流磁界の磁化(AC磁化)と一定磁界の磁化(DC磁化)とが用いられる。結合されたAC/DC磁化により、表面に開口した欠陥に関する検出精度および高分解能に悪影響を与えることなく、従来の交流漏洩磁束法と比較して、検出深さをかなり深くすることができることが確認されている。したがって、磁化パラメータの選択が適切であるならば、検査されるべき検査試料が、適切な大きさを有する一定磁界にさらにさらされる場合に、交流漏洩磁束法により、著しく改善された結果を提供することができる。主に、より深い位置にある欠陥に関する検出感度の改善は、交流磁界に加えて作用する一定磁界によって、材料固有のヒステリシス曲線に対する磁気検査の動作点が、より好ましい範囲にシフトされるという事実によるものである。この場合、交流磁界用の漏洩磁束機構、すなわち交流磁界検査の動作機構が、従来の交流法と比較して十分に維持されるように、一定磁界の強度が有利に分布される。
冒頭に記載されている先行技術は、漏洩磁界プローブの複雑な構造によって、漏洩磁束法の検出特性の改善を試みている。検出されるべき漏洩磁界が弱すぎる場合に限界が生じる。それとは対照的に、本発明は、異なる方針をとるので、測定変数の、すなわち、検出されるべき漏洩磁界の元に直接影響が与えられる。したがって、プローブの種類に関係なく、改善された測定結果を得ることができる。
本方法および本装置は、欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するように構成され、すなわち、漏洩磁束検査法および漏洩磁束検査装置としてそれぞれ構成される。それに応じて、対応する漏洩磁束検査プローブを(受動的)漏洩磁束プローブとして構成することができ、このプローブは、能動的に通電される渦電流プローブとは対照的に励磁されず、したがって、プローブ自体は磁界を発生させない。磁界に敏感な漏洩磁束プローブは、実質的に磁束の不均一性のみを検出する。それに応じて、プローブ信号の判定は、例えば、インピーダンスの変化および/または磁気抵抗の変化が判定されないかまたは判定する必要がないように、漏洩磁束信号を判定すべく構成される。検査プローブから切り離された別個の磁化装置によって、磁界の発生が保証される。
検査では、好ましくは、検査試料と、それに作用する一定磁界との間に相対移動が発生し、この場合、その相対移動は、好ましくは、ほぼ検査試料内の一定磁界の磁力線の方向に向けられた相対速度成分を有する。一例として、検査試料内のその磁力線が、主に、ほぼ円周方向に、および/または検査試料の長手方向軸線に対してほぼ垂直に延びるように、一定磁界が検査試料内に結合される場合、検査試料と一定磁界磁化ユニットとの間の相対回転によって、相対移動を実現することができる。一定磁界と検査試料との相対移動によって、特に、それらの相対回転によって、一定磁界の強度が、例えば、検査容積の「視点」から周期的に変化する(しかし、その極性が変化しない)ことを実現することができる。一時的に変化している一定磁界は、導電性検査試料材料に渦電流を発生させることができ、この渦電流は、検査試料の深さへの一定磁界の侵入に対抗し、一定磁界(またはこれによって検査試料材料に発生した磁気誘導)が検査試料の表面近傍の領域に集中されることを保証し、ここで、基本的に材料への非常に深い侵入深さを有しない交流磁界も有効である。検査試料表面の近傍の一定磁界によって得られる誘導された磁束の集中により、そこにおいて検査試料材料の透磁率を大幅に低減することができ、その結果、検査試料材料の透磁率ではなく、実質的に検査試料材料のパーミアンスのみが、検査試料の内部への交流磁界の侵入を阻止する。結果として、交流磁界の、またはそれによって得られる誘導された磁束の侵入深さは、同時の一定磁界の磁化なしの検査と比較して、深くすることができる。検査プローブの検出領域にある検査試料の表面の近傍の一定磁界および交流磁界のこのような重畳により、従来の方法と比較して、表面近傍の欠陥に対する、特に、表面近傍の隠れた欠陥に対する検出感度を改善することが可能である。
検査試料材料の表面の直近において、磁気誘導の(または磁束密度の)有利な集中を得るための相対速度の最小値は、特に、検査試料材料の透磁率に、検査試料の形状に、さらに、検査装置の形状(例えば、一定磁界磁化ユニットの磁極の磁極面および磁極間隔)に依存する。一般に、例えば一定の磁力線の方向に測定される相対速度の成分は、少なくとも0.3m/sであるべきであり、この場合、特に好ましい値は、例えば、1m/s〜5m/sの範囲にあり、例えば約3m/sであり得る。
検査試料と一定磁界との相対回転は、例えば、検査試料の周りで移動されるように回転ヘッドに取り付けられている一定磁界磁化手段によって実現することができ、この場合、検査試料自体はその軸線を中心に回転する必要がない。さらに、検査試料がその軸線を中心に回転することと、一定磁界磁化手段が固定して取り付けられることが可能である。両方の移動の組み合わせも可能である。回転ヘッドを介した検査試料の同時の長手方向移動によって、検査試料表面の螺旋走査が可能であり、このことは、検査試料の通過速度と回転ヘッドの回転速度との適合が適切であるならば、連続的な検査のために利用することができる。
交流磁界の周波数は、特に、表面近傍の欠陥の所望の感度と、所望の検査処理能力または望ましい走査速度とに関連して最適化することができる。好ましい実施形態では、少なくとも1kHzの交流磁界周波数を有する交流磁界が発生し、この場合、交流磁界周波数は、好ましくは3kHz〜12kHzの間にあり、例えば約6kHz〜8kHzの範囲にある。特に、3kHz〜12kHzの範囲において、連続的な検査による十分に高い走査速度および対応して高い検査処理能力と共に、高い表面感度を得ることが可能である。
多くの検査作業について、検査容積内の一定磁界の磁界強度HDCが、交流磁界の磁界強度HACの少なくとも半分の大きさを有し、特に、磁界強度HACと少なくとも同じ大きさを有すると好都合であり得ることが確認されている。一般には、交流磁界強度HACの20倍を超過してはならない。いくつかの方法において、一定磁界の磁界強度と交流磁界の磁界強度との磁界強度比HDC/HACが、1〜20の間で、特に1〜5の間で用いられると好都合であり得る。適切な磁界強度比の設定にとって重要な影響因子は、特に、検査試料材料の飽和誘導および欠陥深さである。好都合な磁界強度比HDC/HACを設定することによって、外部欠陥用の分解能をそれほど損なうことなく、組み合わせ方法の検出深さを深くすることが可能である。
同一のまたは電気的に同様のコイル構造が、交流磁界および一定磁界を発生させるために使用される場合、磁界強度比HDC/HACは、定電流の電流強度IDCと交流の電流強度IACとの対応する励磁電流比IDC/IACによって設定または規定することができ、その結果、条件0.5≦IDC/IAC≦20、特に1≦IDC/IAC≦5も有効である。一定磁界および交流磁界の励磁電流は、一般に、検査容積の十分な磁化を保証するために1アンペア〜数アンペアの範囲にある。
いくつかの実施形態では、一定磁界の磁界強度HDCは、検査容積の検査試料材料の飽和磁界強度の約10%〜95%であり、好ましくは、飽和磁界強度の約70%〜約85%である。これにより、多くの場合において、検査容積の材料の完全飽和があるときよりも優れた結果を実現することが可能である。
さらに、一定磁界の磁界強度HDCと交流磁界の磁界強度HACとの磁界強度の和ΣH=HAC+HDCが、検査試料材料の飽和磁界強度の10%〜100%の範囲にあり、特に約70%〜約85%の範囲にあると好都合であることが確認されている。検査試料材料の一定磁界と交流磁界との組み合わされた用途により、表面を起点として、純粋な交流磁界の磁化の場合におけるよりも、材料内に深く延びる飽和領域が得られることが前提とされる。材料品質および外面構成(例えば、圧延したおよび/またはスケールで覆われるかまたはむき出しの未完成品)は、適切な磁界強度または磁界強度比を設定する際に重要な役割を果たす。
好ましい実施形態では、一定磁界によって発生した誘導された磁束と、交流磁界によって発生した誘導された磁束とが、ほぼ同じ向きを有し、すなわち、ほぼ同一に向けられた磁力線によって特徴付けられることができるように、一定磁界と交流磁界とが検査容積内に結合される。検査容積の交流磁界(一時的に急変している極性)、ならびに一定磁界(検査容積における動的な磁界強度の適切な一時的変化、または検査容積に有効でありかつ一定磁界によって得られる誘導された磁束の強度の場合における一定の極性)の「同じ方向における」この重畳は、検出感度の改善に関連して特に有効であることが証明されている。
一定磁界によって発生した誘導された磁束が、交流磁界によって発生した誘導された磁束に対して横方向に、特にほぼ垂直に向けられる場合、主に、信号/ノイズ比の改善を得ることが可能である。このことは、一定磁界と交流磁界との相対方向に関係なく、交流磁界に加えて有効な一定磁界により、透磁率の不均一性および局部的な冷間変形の効果に関連して、検査容積の均一化を実現することが可能であることによるものである。その結果、材料組成物と製造方法の種類とに応じて、特に小さな欠陥に関して、干渉背景の減少、または信号/ノイズ比の改善、およびそれに関連する検出感度の向上を得ることが可能である。
例えば、磁化装置の同じコイル構造(AC/DCコイル構造)が、一定磁界を発生させるためにおよび交流磁界を発生させるために使用されるという事実によって、一定磁界および交流磁界の同じ向きを構造的に実現することができる。さらに、交流磁界を発生させるために、交流磁界コイル構造(ACコイル構造)を使用することと、一定磁界を発生させるために、交流磁界コイル構造とは別個の一定磁界コイル構造(DCコイル構造)を使用することも可能である。それらのコイル構造は、対応する誘導された磁束の異なる向きまたは同一の向きを形成するように配置することができる。
少なくとも部分的に強磁性材料からなる検査試料の表面近傍の欠陥を検出するための(本方法を実行するのに適切な)装置は、検査試料の検査容積を磁化するための磁化装置と、欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するための、磁界に敏感な少なくとも1つの検査プローブとを有する。その磁化装置は、一定磁界を発生させるための一定磁界磁化ユニットと、検査容積の一定磁界に重畳される交流磁界を発生させるための交流磁界磁化ユニットとを備え、上記交流磁界磁化ユニットは一定磁界磁化ユニットと同時に作動させることができる。
磁界に敏感な少なくとも1つの検査プローブの信号を処理する割り当てられた判定装置は、磁束の検出された不均一性を判定するために、およびそれらを処理して欠陥信号を生成するために、適切なハードウェアおよび/またはソフトウェアによって構成される。検査プローブの領域における特性の他の変化、例えば、抵抗変化および/またはインピーダンス変化は、純粋な漏洩磁束判定の場合には判定されない。
いくつかの実施形態では、磁化装置は、交流電圧源におよび定電圧源に同時に電気的に接続されるかまたは接続可能である少なくとも1つのAC/DCコイル構造を有する。AC/DCコイル構造を用いれば、検査容積において、交流磁界の磁力線が一定磁界の磁力線に対してほぼ平行に延びるという効果を有することが可能である。
いくつかの実施形態では、磁化装置は、交流電圧源に接続された少なくとも1つの交流磁界コイル構造(ACコイル構造)と、交流コイル構造とは別個でありかつ定電圧源に接続された少なくとも1つの一定磁界コイル構造(DCコイル構造)とを有する。これにより、必要に応じて、交流磁界によって発生した磁力線が、一定磁界によって発生した磁力線に対して横方向に、例えばほぼ垂直に延びるように、互いに重畳された磁界を検査容積内に結合することが可能になる。さらに、一定磁界および交流磁界の磁力線の平行な向きが別個のコイル構造によって可能である。
いくつかの実施形態では、磁化装置は、ヨークコアを有する少なくとも1つの磁性ヨークを備え、この磁性ヨークには、ACコイル構造および一定のコイル構造が巻かれる。これらのコイル構造は、電気的に切り離された電圧源に接続される空間的に分離したコイル構造であることができる。さらに、結合された少なくとも1つのAC/DCコイル構造を磁性ヨーク上に巻き付けることも可能である。いずれにしろ、共通のヨークコアは、交流磁界および重畳された一定磁界が、検査容積においてほぼ同じ向きを有することを保証する。
結合されたAC/DC漏洩磁束検査用の装置を実現するための多くの変形例がある。一例として、一定磁界磁化ユニットは、対応するDCコイル構造に直接接続された定電圧源を有することができる。いくつかの実施形態では、一定磁界磁化ユニットは、交流電圧源と、それに接続される整流器とを有し、この整流器の出力において、DCコイル構造を動作させるのに必要な定電圧をタッピングすることができる。この変形例の場合、非接触で動作する誘導変圧器(例えば回転変圧器)を交流電圧源と整流器との間に配置することが可能である。これにより、一定磁界の磁化を動作させるための電圧源を検査装置の固定部に取り付けることと、DCコイル構造を検査装置の移動可能な部分に、例えば回転ヘッドに取り付けることが簡単に可能になる。
簡単な装置では、交流磁界と一定磁界との磁界強度の比の固定設定を用いることが可能である。さらに、いくつかの実施形態では、交流電圧源と定電圧源とを互いに独立して設定することができることが意図される。このことは、検査試料形状および検査試料材料に対する、交流磁界および一定磁界の磁界強度の、さらには、それに対応する磁界強度比の特に正確な適合を可能にし、この結果、検査工程毎に、検出感度を個々に最適化することができる。
結合されたAC/DC磁化の場合の漏洩磁束を検出するために、例えば冒頭に記載されている構造のプローブシステムを含む、公知の全ての種類の漏洩磁束検査プローブ、特に、誘導検査プローブ、ホールプローブまたはGMR(巨大磁気抵抗)センサまたはそれらの組み合わせを使用することが可能である。
これらおよび別の特徴は、請求項からだけでなく、説明および図面からも明らかとなり、個々の特徴の各々は、本発明の実施形態においておよび他の分野においてサブコンビネーションの形で、それら自体でまたは複数のものとして実現することができ、有利かつ本質的に保護可能な実施形態を表すことができる。本発明の例示的な実施形態は、図面に示されており、以下により詳細に説明される。
貫通している円形の材料の漏洩磁束検査用の回転ヘッドシステムの概略図を示している。 回転している検査試料を検査するための、結合されたAC/DC磁化を有する固定した漏洩磁束測定システムを概略的に示している。 検査試料の周りで回転する交流磁界の磁化と静的な一定磁界の磁化とを有する回転検査システムの側面図を概略的に示している。 結合されたAC/DCコイル構造を各々が有する2つの同一の磁性ヨークを有する、結合されたAC/DC磁化用の回路構造を概略的に示している。 表面に開口した4つの異なる欠陥と隠れた欠陥とを有する検査用の検査部の形状を示している。 インピーダンス平面の欠陥によって発生した欠陥幅の実施例を示している。 インピーダンス平面の欠陥によって発生した欠陥幅の実施例を示している。 欠陥幅の周囲に関連する実施例を示している。 欠陥幅の周囲に関連する実施例を示している。
図1は、漏洩磁束測定によって強磁性検査材料の表面近傍の欠陥を検出するための装置100の重要な構造部の軸方向図を概略的に示している。以下で漏洩磁束検査装置とも、または短くして検査装置とも呼ばれる検査装置100は、特に、円形断面を有する細長い半製品、例えば棒鋼または円形のビレット等の半製品非破壊検査のために、あるいはさもなければ管を検査するために使用することができる。
検査装置100は、回転ヘッド軸線112を中心に回転させることができる回転ヘッドを有し、実施例の場合、この回転ヘッドにおいて、移動可能なプローブ保持手段に配置された2つの漏洩磁束検査プローブ110A、110Bは、回転ヘッドが回転ヘッド軸線112を中心に回転すると、回転ヘッドを通る回転ヘッド軸線112に対してほぼ平行な検査試料150を中心とする円形循環経路で回転するように正反対に配置される。装置の実施形態によれば、回転ヘッドは、例えば、約100min−1〜3000min−1の回転速度で回転することができる。検査材料は、通常、最高3m/sの速度で検査ヘッドを介して同時に搬送される。回転運動中に、検査プローブ110A、110Bは、検査試料のほぼ円筒状の表面151でスライドし、処理走査において、中断されないように螺旋経路で上記表面を走査する。
検査装置は、検査試料150の表面近傍の検査容積を磁化するための磁化装置を有する。磁化装置は、回転ヘッドに正反対に取り付けられるほぼU字状の2つの磁性ヨーク120A、120Bを含み、これらの磁性ヨークの自由端は、磁極シューとして機能し、小さな半径方向距離において、検査試料表面からそれに対してほぼ半径方向に向けられ、それぞれ割り当てられた検査プローブ110A、110Bの両側にほぼ対称に配置される。2つの別個のコイル構造、すなわち、定電圧源130A、130Bに接続された一定磁界コイル構造135A、135Bと、交流電圧源140A、140Bに接続された交流磁界コイル構造145A、145Bとがヨーク120A、120Bの各々に巻かれる。交流電圧源140A、140Bは、互いに別個の交流電圧源であるかまたは全く同じ交流電圧源であることができ、さらに、定電圧源130A、130Bは、別個の電圧源または共通の定電圧源によって形成することができる。
交流電圧源は、数アンペアまで、例えば20アンペアまでまたはそれよりも大きな電流強度で、約3kHz〜約12kHzの範囲の交流電圧を発生させることができ、この場合、これらの範囲内において、所望の周波数および所望の電流強度を連続可変的に設定することができる。
検査装置の動作中に、電流が磁化コイル構造を介して送られる場合、コイル構造の電流積および巻数に等しい起磁力がコイル構造で得られる。上記起磁力は、ヨークを介して、および磁極シューと検査試料表面との間に形成された空隙を介して、誘導された磁束を検査試料の表面近傍の容積領域内にも移動させる。磁性ヨークの領域の閉鎖磁気回路によれば、図1は、磁極シューから検査試料表面に達する磁力線を概略的に示しており、さらに、検査試料の磁化された表面近傍の容積領域を斜線で示している。
欠陥なしの材料において、検査容積に発生した磁束は、実施例では、下部漏洩磁束プローブ110Bの近傍の欠陥なしの領域に示されているように、ほぼ均一に空間的に分布される。この場合、漏洩磁束は検査試料からほとんど侵入しない。これに対して、材料のクラックまたは他の欠陥は、磁気抵抗が大きくなる領域として作用し、したがって、欠陥の近傍の磁界成分を欠陥の周りに導くことができ、さらに、表面の近傍の領域の材料から押し出すことができる。これに関連して、図1は、例えば、検査試料150が、上部漏洩磁束プローブ110Aの領域に、表面まで延びるクラック152の形態の外部欠陥152を有することを示している。クラックの領域において、磁界成分は、漏洩磁束155として材料から押し出され、表面の近傍に配置された受動的検査プローブ110Aによって検出されることができ、この検査プローブは、表面151に対して移動され、電気信号に変換されることができる。測定原理は本質的に知られているので、この場合、さらなる説明は省略する。
検査装置100の1つの特別な特徴は、磁化装置が、一定磁界を検査容積で発生させるための一定磁界磁化ユニットを備え、さらに、一定磁界に重畳される交流磁界を検査容積で発生させるための同時に作動可能な交流磁界磁化ユニットを備えることである。一定磁界磁化ユニットは、定電圧源130A、130Bと、それらにそれぞれ接続された一定磁界コイル構造135A、135Bとを含み、一方、交流磁界磁化ユニットは、交流磁界コイル構造145A、145Bがそれぞれ接続された交流電圧源140A、140Bを含む。一定磁界コイル構造および交流磁界コイル構造の各々は共通のヨークコアに巻かれるので、交流磁界に関連する誘導された磁束線、および一定磁界に関連する誘導された磁束線は、ほぼ同じ向きを有し、すなわち、ヨークと検査試料とを介して互いにほぼ平行に延びる。磁束は、検査試料表面に対してほぼ垂直にまたは検査試料の長手方向に対してほぼ垂直に結合される。この場合、誘導された磁束線は、特に、検査プローブの検出領域にそれぞれ位置する検査容積を介して互いに平行にさらに延びる。検査試料において、誘導された磁束はほぼ円周方向に延び、この結果、この構造は、長手方向の欠陥、すなわち、検査試料の軸方向に対して平行にまたは比較的小さな角度で延びるそれらの欠陥の検出に特に適している。
検査中、定電圧源および交流電圧源の両方がそれぞれのコイル構造に接続されて作動されるようなときに、検査装置100が少なくとも動作され、その結果、同時に、検査容積が、一定磁界によっておよびそれに重畳された交流磁界によって磁化される。
例えば、約6kHz〜8kHzの交流磁界周波数を有することができる交流磁界は、表皮効果により、比較的浅い侵入深さまでのみ導電性検査試料材料に侵入する。さらに、一定磁界では、図1の表面の近傍の斜線領域で概略的に示したように、検査試料の表面近傍の領域への磁束線の集中が生じる。一定磁界磁化手段が、大きな相対速度成分で検査試料を中心に円周方向に回転することにより、検査試料材料からの一定磁界の(または関連する誘導された磁束の)この押し出しが生じ、その結果、一定磁界に関して、検査試料の表面近傍の容積領域は、さらに、常に変化している磁界強度にさらされるが、これらの磁界強度は、交流磁界とは対照的に、極性を変化させない。この場合、一定磁界の磁化の変化率は主に回転の回転速度によって決定される。強度が常に変化している一定磁界により、渦電流が検査試料で発生し、検査試料材料のより深い深さへの一定磁界の侵入を妨げる。これにより、検査プローブの検出領域にありかつより高周波の交流磁界の影響も受け、したがって表面の近傍のこの領域の交流磁界に重畳される当該領域の表面の近傍に、一定磁界の集中(一定磁界の誘導された磁束の集中)が生じる。
多くの場合、検査容積がその材料固有の飽和限界まで完全に磁化されず、検査容積内の誘導された磁束密度が飽和限界未満のままであるような程度にのみ磁化されると好都合であることが証明されている。これにより、欠陥152の領域において、欠陥152の領域と周囲材料との相対透磁率μに比較的大きな差が生じ、このようにして、比較的大きな磁界移動、したがって、1つまたは複数の欠陥の優れた検出能力が得られる。多くの場合、一定磁界の磁界強度HDCが、検査試料材料の飽和磁界強度の約70%〜約90%になるように設定される場合に、優れた結果を得ることができる。一定磁界のこの分布によって、交流磁界用の漏洩磁界機構が可能な限り最大の範囲になお維持される。一定磁界の磁界強度と交流磁界の磁界強度との最適な比率は、検査部毎にまたは材料毎に多様に存在する場合があり、一般に、適切な検査工程で確認される。検査装置における可変設定を可能にするために、1つまたは複数の定電圧源および1つまたは複数の交流電圧源を互いに独立して連続可変的に設定することができる。
図2は、回転している検査試料を検査するための固定した漏洩磁束検査装置200の概略図を示している。この場合、検査試料250は、強磁性金属からなりかつ管軸線を中心に回転する管である。中実材料からなる検査試料も可能である。検査試料を磁化するための磁化装置は、固定して取り付けられるほぼU字状の磁性ヨーク220を備え、検査試料に向き合う磁性ヨーク220の端部は検査試料の円筒状外面に従って円筒凹状に成形されるので、ほぼ均一な厚さを有する狭い空隙が、端部によって形成された磁極シューと検査試料表面との間に配置される。磁界を電磁的に発生させるために、結合された単一のAC/DCコイル構造235が設けられ、このコイル構造は、磁極シューの近傍の磁性ヨーク220に各々が巻かれる2つの直列に接続された巻回組立体225A、225Bを備える。コイル構造235は、結合された定電圧源および交流電圧源230に接続され、この電圧源は、定電流IDCと、それに重畳された交流IACとでコイル構造を励磁するように構成される。
検査プローブ210は磁性ヨークの磁極シューの間に取り付けられ、この検査プローブは、検査試料の半径方向に移動可能であり、バネ力によって検査試料表面に押圧することができるように取り付けられ、特に、ホールプローブ、誘導プローブまたはGMRプローブであることができる。概略的に図示した誘導された磁束線は、検査試料の表面近傍の領域において表面に対してほぼ平行に延びるので、検査容積の半径方向に対して半径方向または斜めに位置するクラックは、検査プローブ210によって検出することができる漏洩磁束を発生させる磁気抵抗として作用する。さらに、この例示的な実施形態では、一定磁界によって発生した誘導された磁束線、および同時に作用している交流磁界によって発生した誘導された磁束線は、同じ方向に延びるが、その理由は、それらの磁束線が、全く同じコイル構造と、同じ磁性ヨークとによって発生するからである。
図2において、検査試料250に延びる磁力線は、この変形例でも、同じ方向に(互いに平行に)延びる一定磁界のおよび交流磁界の磁束線が、検査試料の表面近傍の領域に、すなわち、磁化手段に向き合う領域に集中され、内部に非常に深く侵入しないことを示している。上記実施形態と同様に、このことは交流磁界成分によるものと理解することができる。一定磁界成分も表面の近傍の領域に集中されたままであるという事実は、実質的に、検査試料と、それに作用する一定磁界との間における、検査試料の円周方向に(同様に)延びる相対移動によるものである。検査試料の円周方向に、したがってさらに、磁性ヨーク220の磁極の間の方向に延びる相対速度成分は、表面の領域で有効な一定磁界の集中を得るために、0.3m/sよりも大きく、特に1m/sよりも大きいべきである。
図3は、円形の材料を連続的に検査するための漏洩磁束検査装置300の重要な部分を示している。検査装置は回転ヘッドを有し、この回転ヘッドを通って検査試料350が延び、この回転ヘッドには、互いに向き合う端部を有する磁性ヨーク320A、320Bが正反対の位置に取り付けられ、これらの磁性ヨークのそれぞれは、直列に接続されかつ共通の交流電圧源340に接続される交流コイル構造345A、345Bを支持する。さらに、回転ヘッドは、磁性ヨークに形成された磁極に対して90°だけ角度的にオフセットされるように配置された複数の漏洩磁束検査プローブ310を支持する。検査装置300の固定構成要素には、環状のコイル構造335と同軸の回転ヘッドに対して軸方向にオフセットされるように、その環状のコイル構造335が配置され、上記構造が定電圧源330に接続される。したがって、静的なDC磁化および回転しているAC磁化を有するこの回転検査システムの場合、一定磁界磁化ユニットと交流磁界磁化ユニットとには空間的分離がある。これによって、構造上の複雑さおよびそれに関連するコストを特に小さく維持することができる。DCコイル構造335の中心コイル軸線が回転ヘッドと同軸に向けられ、検査試料350が検査装置を介してこの共通軸とほぼ同軸に導かれるので、定電圧源が作動されるときに、一定磁界コイル構造335が一定磁界を発生させ、その磁束線336が、少なくとも、検査試料の長手方向軸線に対してほぼ平行な一定磁界コイル構造335の近傍に延びる。これに対して、交流磁界コイル構造320A、320Bによって発生する交流磁界の誘導された磁束線346は、検査試料の長手方向軸線に対してほぼ垂直な、したがってさらに、一定磁界の誘導された磁束線に対してほぼ垂直な面に延びる。
図4は、結合された一定磁界/交流磁界の磁化を有する漏洩磁束検査装置の磁化装置用の回路構造の一実施形態を示している。磁化装置は、同一に構成された2つの磁性ヨーク420A、420Bを有し、この場合、磁界を発生させるためのAC/DCコイル構造435Aと435Bのそれぞれがヨークの各々に巻かれる。コイル構造435A、435Bが同調回路にそれぞれ連結されるように、(キャパシタ436A、436Bによって記号化された)キャパシタンスが、コイル構造435A、435Bのインダクタンスにそれぞれ並列に接続される。図1の実施形態の場合と同様に、磁性ヨークは、検査装置の固定部420に対して回転ヘッド軸線を中心に回転させることができる回転ヘッド410に取り付けられる。
磁化装置に電力を供給するために、互いに独立して連続可変的に設定することができる2つの交流電圧源440A、440Bが、検査装置の固定部420に収容される。固定部420の交流電圧源と回転ヘッド410の電気構成要素との間の電気接続は、誘導回転変圧器445A、445Bによって実現される。この場合、第1の交流電圧源440Aは第1の回転変圧器445Aの主巻線446Aに接続され、第2の交流電圧源440Bは第2の回転変圧器445Bの副巻線446Bに接続される。第1の回転変圧器445Aの補助巻線447Aの一端は、キャパシタ448を介して、交流電圧に対して並列に接続されたコイル構造435A、435Bの一端の各々に接続される。補助巻線447Aの他方の端子は、コイル構造435Aと435Bのそれぞれの反対側の端子の各々に電気的に接続される。
第2の交流電圧源440Bは、副巻線446Bと補助巻線447Bとを有する第2の回転変圧器445Bを介して電気的構造の回転部に接続される。補助巻線447Bの端部の各々は、整流器449の入力に接続され、したがって、この整流器の出力は、第2の交流電圧源440Bと第2の回転変圧器445Bと整流器449とを備える定電圧源430の出力を形成する。定電圧源430の「+」出力から、定電流回路が、第1のヨーク420Aのコイル構造435Aを介して、第2の磁性ヨーク420Bの(定電流に対してコイル構造435Aと直列に接続された)コイル構造435Bを介して、定電圧源430の「−」出力に至る。定電圧源の出力の間に接続されたキャパシタ451は、AC/DCコイル構造435A、435Bが、定電流に対して互いに直列に、および交流に対して互いに並列に接続されることを保証する。
第1および第2の交流電圧源440A、440Bを同時に作動させると、交流IACが重畳される定電流IDCが、2つのコイル構造435A、435Bを介して流れる。この場合、定電流源430により、定電流成分IDCが供給され、一方、第1の回転変圧器445Aを使用して第1の交流電圧源440Aにより、交流成分IACが直接供給される。交流電圧源440A、440Bの出力比を設定することによって、交流と定電流との電流強度比、したがってさらに、一定電界と交流電界との磁界強度比を連続可変的に設定することができる。コイル構造435Aと435Bをそれぞれ有する同調回路の各々は、漏洩電流のみを供給しなければならないように同調共振回路として同調される。
純粋な一定磁界磁化装置としてまたは純粋な交流磁界磁化装置として、磁化装置を動作させることもできるように、交流電圧源440A、440Bを交互に作動させることもできることは言うまでもない。
いくつかの実施例を参照して、結合された一定磁界/交流磁界の磁化の重要な利点について以下に説明する。冒頭に記載したように、結合されたAC磁化およびDC磁化を有する検査装置は、純粋な交流磁界の磁化と比較して、検査材料に対してかなり深い侵入深さを有する。これによって、例えば、表面に開口していない応力クラック、または製造工程によって圧延されている欠陥等の非常に深い材料欠陥が、表面に開口した欠陥の信号振幅と同様の信号振幅によって示されることを実現することができる。さらに、交流磁界に加えて有効である一定磁界により、透磁率の不均一性に対する検査部の均一化、および局部的な冷間変形の効果を得ることができることに留意されたい。結果として、材料組成物と製造方法の種類とに応じて、干渉背景の低減を実現することができる。これらの利点は以下の検査結果から明らかとなる。
欠陥信号の品質に関する同時のAC/DC磁化の効果をチェックするために、図5を参照して説明する検査用の検査部が形成された。常温で延伸された鋼材からなる検査部は、40mmの直径と400mmの長さとを有する円形の円筒状断面を有した。図5Aのから明らかなように、検査部の周囲において、合計5つの長手方向の欠陥(検査部の長手方向軸線に対して平行な欠陥の向き)が鋸引き切断によって出現した。以下の表Aから全ての欠陥の特徴を理解することができる。
Figure 0005758798
欠陥の各々は、同じ幅(0.2mm)と、部分的に異なる深さおよび長さとを有しており、この場合、図5のCによる開口欠陥としてのNo.1〜4の欠陥が検査試料の表面に開口しており、一方は、No.5の欠陥が、圧延された鋸引き切断部として、すなわち、隠れた欠陥として具体化されており、その欠陥の空気が充満した擾乱領域は、表面まで全く延びないが、その理由は、鋸引き切断部の表面閉鎖をもたらす圧延ステップの後に、割れ目が発生したからである。その他の点では、No.5の隠れた欠陥はNo.4の開口欠陥と同じ寸法を有する。検査部は、約0.2m/secの速度で、固定式の、結合されたAC/DC漏洩磁束検査装置を介して導かれており、その過程において、例えば300rpm〜2400rpmの回転速度で検査部の長手方向軸線を中心に回転された。交流電圧源は、AC漏洩電流測定の典型的な周波数の範囲(約3kHz〜約12kHz)にある7.5kHzの周波数に設定された。IDC≒20Aの定電流、およびその電流強度IDCと交流の電流強度IACとの約4:1の励磁電流比IDC/IACは、定電圧源および交流電圧源によって設定された。対応する磁界強度比HDC/HAC≒4:1が検査材料で形成されるように、結合された一定磁界/交流磁界コイル構造が使用された。
図6および図7の各々は、インピーダンス平面の欠陥によって生じた欠陥幅の実施例を示している。この場合、延長信号の長さは欠陥幅を表し、一方、インピーダンス平面の信号の向きは、基準位置に対する欠陥幅の相対位相を表す。図6は、No.2の欠陥(0.3mmの深さ、0.2mmの幅の開口欠陥)の結果を示しており、一方、図7は、No.5の欠陥(8.1mmの深さ、0.2mmの幅の圧延された隠れた欠陥(図5のD参照))の結果を示している。左側のそれぞれの図、すなわち、図6のAおよび図7のAの各々は、IAC≒5AでありかつIDC=0Aである純粋な交流磁界の磁化に関する信号を示している。右側のそれぞれの図、すなわち、図6のBおよび図7のBは、結合された一定磁界/交流磁界の磁化に関する信号を示している。この場合、IDC≒20Aの定電流によって発生した一定磁界が不変の交流磁界(IAC≒5A)に重畳された。
図6のAおよび図6のBの信号の比較は、結合された一定磁界/交流磁界の磁化(図6のB)の場合の比較的小さな開口欠陥が、純粋な交流磁界励磁(図6のA)の場合とほぼ同じ欠陥幅および位相角を有することを示している。したがって、追加の一定磁界の磁化は、交流磁界の磁化による方法の感度の損失をもたらさない。対照的に、表面に対して閉鎖されたNo.5の隠れた欠陥の場合には、明確な差が生じる。純粋な交流磁界励磁(図7のA)による検査は、比較的小さな欠陥信号を示しているが、この確実な判定は、実際の欠陥信号と干渉背景との慎重な分離を必要とし、結合された一定磁界/交流磁界の磁化(図7のB)により、複合的に大きな欠陥幅を有する明確な欠陥信号が得られる。したがって、結合された一定磁界/交流磁界の磁化が、正確には、表面まで延びない開口欠陥の場合における純粋な交流磁界の磁化に関する大きな利点を提供することが明らかである。さらに、図7のBのNo.5の比較的深い欠陥の、およびそれに対する図6のBのNo.2のより浅い欠陥の欠陥幅の比較は、欠陥幅が欠陥深さに非常に依存していることを示している。
図8および図9は、欠陥幅の周囲に関連する実施例を示している。この場合、左側のサブ図8のA、図9のAの各々は、純粋な交流磁界の磁化の結果を示しており、右側のサブ図8のB、図9のBの各々は、結合されたDC磁界/AC磁界の磁化の結果を示している。図9の実施例は、図8の実施例と比較して減少された感度による検出から得られるが、互いに直接比較することができる。図8の実施例から、純粋な交流磁界の磁化と比較して、結合されたAC/DC磁化が、表面に開口した欠陥の場合には、実際に同一の欠陥幅をもたらし、したがって、分解能性能に関する損失を心配する必要がないことが明らかである。これに対して、図9のNo.4の欠陥(開口欠陥)とNo.5の欠陥(圧延されている隠れた欠陥)との比較は、圧延されたNo.5の欠陥に関する結合された一定磁界/交流磁界の磁化(図9のB)が、純粋な交流磁界の磁化(図9のA)よりもかなり大きな欠陥幅を形成することを示している。欠陥信号は干渉背景から明確に突出し、これにより、結合された一定磁界/交流磁界の磁化が、特に、隠れた欠陥の検出において、表面に開口した欠陥の場合における欠点を生じさせることなく、純粋な交流磁界の磁化よりも大きな利点を提供することが明らかとなる。
本発明は、多種多様な検査試料のために、例えば、管状の検査試料のために、さらに、中実材料からなる検査試料のために使用することができる。検査試料は円形断面を有することができるので、検査試料および検査プローブの相対回転が特に簡単に可能になり、この相対回転は、検査試料の回転によって、1つまたは複数のプローブを収容した検査装置の当該部分の回転によって、および/またはこれらの回転の組み合わせによって得ることができる。さらに、非円形断面を有する検査試料、例えば、三角形ビレットまたは四角形ビレット、あるいは他の多角形断面を有するビレット、および楕円形断面を有する検査試料を検査することができ、次に、この場合必要に応じて、実質的に、固定した検査装置に対する検査試料の移動によって、検査試料と検査プローブとの間の相対移動を行うことができる。
100 検査装置
110A 上部漏洩磁束検査プローブ
110B 下部漏洩磁束検査プローブ
112 回転ヘッド軸線
120A ほぼU字状の磁性ヨーク
120B ほぼU字状の磁性ヨーク
130A 定電圧源
130B 定電圧源
135A 一定磁界コイル構造
135B 一定磁界コイル構造
140A 交流電圧源
140B 交流電圧源
145A 交流磁界コイル構造
145B 交流磁界コイル構造
150 検査試料
151 検査試料のほぼ円筒状の表面
152 外部欠陥
152 クラック
155 漏洩磁束
200 固定した漏洩磁束検査装置
210 検査プローブ
220 ほぼU字状の磁性ヨーク
225A 巻回組立体
225B 巻回組立体
230 結合された定電圧源および交流電圧源
235 AC/DCコイル構造
250 検査試料
300 漏洩磁束検査装置
310 複数の漏洩磁束検査プローブ
320A 磁性ヨーク
320A 交流磁界コイル構造
320B 磁性ヨーク
320B 交流磁界コイル構造
330 定電圧源
335 環状のコイル構造
335 DCコイル構造
335 一定磁界コイル構造
336 一定磁界の磁束線
340 共通の交流電圧源
345A 交流コイル構造
345B 交流コイル構造
346 交流磁界の誘導された磁束線
350 検査試料
410 回転ヘッド
420 検査装置の固定部
420A 第1の磁性ヨーク
420B 第2の磁性ヨーク
430 定電圧源
430 定電流源
435A AC/DCコイル構造
435B AC/DCコイル構造
436A キャパシタ
436B キャパシタ
440A 第1の交流電圧源
440B 第2の交流電圧源
445A 第1の誘導回転変圧器
445B 第2の誘導回転変圧器
446A 第1の回転変圧器445Aの主巻線
446B 第2の回転変圧器445Bの副巻線
447A 第1の回転変圧器445Aの補助巻線
447B 補助巻線
448 キャパシタ
449 整流器
451 キャパシタ
AC 交流磁界の磁界強度
DC 一定磁界の磁界強度
AC 交流
AC 交流成分
AC 交流の電流強度
DC 定電流
DC 定電流成分
DC 定電流の電流強度
No.1 欠陥
No.2 欠陥
No.3 欠陥
No.4 欠陥
No.5 隠れた欠陥
μ 欠陥152の領域と周囲材料との相対透磁率

Claims (31)

  1. 少なくとも部分的に強磁性材料からなる検査試料(150、250)の表面近傍の欠陥を検出するための方法であって、
    欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するために、前記検査試料の検査容積が磁化されて走査される方法において、
    前記検査容積が、一定磁界によって磁化され、同時に、前記一定磁界に重畳された交流磁界によって磁化され、
    前記一定磁界によって発生した誘導された磁束と、前記交流磁界によって発生した誘導された磁束とが、ほぼ同じ向きを有するように、前記一定磁界と前記交流磁界とが前記検査容積内に結合され、
    前記検査試料と、前記検査試料に作用する前記一定磁界との間に、相対移動が発生し、前記相対移動が、ほぼ前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線の方向に向けられた相対速度成分を有し、
    前記一定磁界の前記磁力線の方向に測定される前記相対速度成分が、少なくとも0.3m/sであり、
    前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線が、ほぼ周方向に延びる断面、および前記検査試料の長手方向軸線に対してほぼ垂直に延びる断面の少なくとも1つにおいて、前記一定磁界が前記検査試料内に結合され、前記相対移動が、前記検査試料と一定磁界磁化ユニットとの間の相対回転によって実現される方法。
  2. 前記一定磁界の前記磁力線の方向に測定される前記相対速度成分が1m/s〜5m/sの範囲にある請求項1に記載の方法。
  3. 少なくとも1kHzの交流磁界周波数を有する交流磁界が発生する請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記検査容積内の前記一定磁界の磁界強度HDCが、前記交流磁界の磁界強度HACの少なくとも半分の大きさを有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記一定磁界の磁界強度HDCと前記交流磁界の磁界強度HACとの磁界強度比HDC/HACが1〜5である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記一定磁界の磁界強度HDCが、前記検査容積の前記検査試料材料の飽和磁界強度の約10%〜約95%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記一定磁界の磁界強度HDCと前記交流磁界の磁界強度HACとの磁界強度の和ΣH=HAC+HDCが、前記検査容積の前記検査試料材料の飽和磁界強度の約10%〜約100%である請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  8. 同じコイル構造(235、435A、435B)が、前記一定磁界を発生させるためにおよび前記交流磁界を発生させるために使用される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 交流磁界コイル構造(145A、145B)が、前記交流磁界を発生させるために使用され、前記交流磁界コイル構造とは別個の一定磁界コイル構造(135A、135B)が、前記一定磁界を発生させるために使用される請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 前記漏洩磁界が、磁界に敏感な少なくとも1つの漏洩磁界プローブを用いて検出され、前記漏洩磁界プローブのプローブ信号の判定が、漏洩磁界信号を判定するために構成され、または、前記漏洩磁界プローブのプローブ信号の振幅が、欠陥を特徴付けるために判定される請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 少なくとも部分的に強磁性材料からなる検査試料(150、250)の表面近傍の欠陥を検出するための装置であって、
    前記検査試料の検査容積を磁化するための磁化装置と、
    欠陥によって発生した漏洩磁界を検出するための、磁界に敏感な少なくとも1つの検査プローブ(110A、110B、210)と、
    を備え、
    前記磁化装置が、一定磁界を発生させるための一定磁界磁化ユニットと、前記検査容積内の前記一定磁界に重畳される交流磁界を発生させるための交流磁界磁化ユニットとを備え、
    前記検査容積が、一定磁界によって磁化され、同時に、前記一定磁界に重畳された交流磁界によって磁化され、
    前記一定磁界によって発生した誘導された磁束と、前記交流磁界によって発生した誘導された磁束とが、ほぼ同じ向きを有するように、前記一定磁界と前記交流磁界とが前記検査容積内に結合され、
    前記検査試料と、前記検査試料に作用する前記一定磁界との間に、相対移動が発生し、前記相対移動が、ほぼ前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線の方向に向けられた相対速度成分を有し、
    前記一定磁界の前記磁力線の方向に測定される前記相対速度成分が、少なくとも0.3m/sであり、
    前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線が、ほぼ周方向に延びる断面、および前記検査試料の長手方向軸線に対してほぼ垂直に延びる断面の少なくとも1つにおいて、前記一定磁界が前記検査試料内に結合され、前記相対移動が、前記検査試料と一定磁界磁化ユニットとの間の相対回転によって実現される装置。
  12. 前記磁化装置が、交流電圧源におよび定電圧源に同時に電気的に接続されるかまたは接続可能である少なくとも1つの交流磁界/一定磁界コイル構造(235、435A、435B)を有する請求項11に記載の装置。
  13. 前記磁化装置が、交流電圧源(140A、140B)に接続された少なくとも1つの交流電圧コイル構造(145A、145B)と、前記交流電圧コイル構造とは別個でありかつ定電圧源(130A、130B)に接続された少なくとも1つの定電圧コイル構造(135A、135B)とを有する請求項11に記載の装置。
  14. 前記磁化装置が、ヨークコアを有する少なくとも1つの磁性ヨーク(120A、120B、220)を有し、前記磁性ヨーク(120A、120B、220)には、交流電圧コイル構造と定電圧コイル構造とが巻かれる請求項11又は13に記載の装置。
  15. 前記交流電圧コイル構造(145A、145B)が、前記定電圧コイル構造(135A、135B)とは空間的に分離してヨークコアに巻かれる請求項14に記載の装置。
  16. 前記交流電圧コイル構造および前記定電圧コイル構造が、前記同じコイル構造(235、435A、435B)によって形成される請求項11又は12に記載の装置。
  17. 前記一定磁界磁化ユニットが、交流電圧源(440B)と、前記交流電圧源に接続された整流器(449)とを備える請求項11〜12のいずれか1項に記載の装置。
  18. 非接触で動作する誘導変圧器(445B)が前記交流電圧源(440B)と前記整流器(449)との間に配置される請求項17に記載の装置。
  19. 前記交流電圧源(440A)と前記定電圧源(430)とを互いに独立して設定することができる請求項11〜18のいずれか1項に記載の装置。
  20. 前記交流磁界磁化ユニットの交流電圧源が、3kHz〜12kHzの範囲の交流電圧、および/または数アンペアまでの電流強度を発生させるように構成される請求項11〜19のいずれか1項に記載の装置。
  21. 前記検査試料(150、250)と、前記検査試料に作用する前記一定磁界との間に相対移動を発生させるための装置であることを特徴とする請求項11〜20のいずれか1項に記載の装置。
  22. 一定磁界磁化手段が、前記検査試料(150)の周りで移動されることができるように回転ヘッドに存在することを特徴とする請求項11〜21のいずれか1項に記載の装置。
  23. 前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線が、断面において、ほぼ円周方向に、および/または前記検査試料の長手方向軸線に対してほぼ垂直に延びるように、前記一定磁界が前記検査試料(150、250)内に結合されるべく、前記一定磁界磁化ユニットが配置される請求項11〜22のいずれか1項に記載の装置。
  24. 磁界に敏感な前記少なくとも1つの検査プローブ(110A、110B、210)のプローブ信号を処理するための判定装置であって、前記判定装置が、前記検査プローブによって検出された磁束の不均一性を判定するように、前記磁束の不均一性を処理して欠陥信号を生成するように構成され、又は、前記欠陥信号の欠陥幅が、欠陥を特徴付けるために判定されることを特徴とする請求項11〜23のいずれか1項に記載の装置。
  25. 前記交流磁界周波数が、3kHz〜12kHzである請求項3に記載の方法。
  26. 少なくとも前記交流磁界の前記磁界強度HACと同じ大きさを有し、または前記交流磁界の前記磁界強度の20倍にはならない請求項4に記載の方法。
  27. 前記飽和磁界強度の約70%〜約85%である請求項6に記載の方法。
  28. 前記飽和磁界強度の約70%〜約85%である請求項7に記載の方法。
  29. 磁性ヨークが、ほぼU字状の磁性ヨークとして具体化され、前記磁性ヨークの自由端が、磁極シューとして機能し、前記検査試料表面に対してほぼ半径方向に向けられ、前記磁極シューが、割り当てられた検査プローブ(110A、110B、210)の両側にほぼ対称に配置される請求項14に記載の装置。
  30. 前記相対移動が、ほぼ前記検査試料内の前記一定磁界の磁力線の方向に向けられた相対速度成分を有し、前記相対移動が、前記検査試料と一定磁界磁化ユニットとの間の相対回転を含む請求項21に記載の装置。
  31. 前記交流磁界磁化ユニットの交流電圧源が、20アンペアまでのまたはそれ以上の電流強度を発生させるように構成される請求項11〜19のいずれか1項に記載の装置。
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