[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1〜図17に基づいて説明する。図1には、車両ドアロックシステム10を備えたスライドドア90を有する車両が示されている。このスライドドア90は、車両本体99の昇降口を閉じた状態から斜め後方に後退しかつ、途中から真っ直ぐ後退して全開状態になる。そして、車両ドアロックシステム10は、スライドドア90を閉鎖状態に保持するための前側ドアロック装置10Aと、全開状態に保持するための全開ドアロック装置10Cと、半ドア状態から全閉状態にするためのクローザ装置10Bと、リモコン装置91とを備えてなる。
図2に示すように、前側ドアロック装置10A及び全開ドアロック装置10Cは、スライドドア90の前端縁における高さ方向の中間部と下端部とに配置され、クローザ装置10Bは、スライドドア90の後端縁における高さ方向の中間部に配置されている。これらに対応して、ドア枠99W(昇降口の枠)の内側面における三箇所にストライカ40が設けられている(図1には、二箇所のストライカ40のみが示されている)。
クローザ装置10Bは本発明の「ドアラッチ装置」に相当し、図3〜図12に示されている。図3に示すように、クローザ装置10Bは、機構盤11にラッチ20及びラチェット30を回動可能に組み付けて備えている。
機構盤11は、板金を鈍角に曲げてその角部にストライカ受容口12Kを備えている。機構盤11のうち角部より一方側の先端部には、図6に示すようにベース盤81が重ねた状態にして連結され、他方側の内面には、ラッチ20、ラチェット30、ストライカ受容溝12等を有するラッチ機構20Kが設けられている。機構盤11は、スライドドア90の後端壁に内側から宛がわれて、ボルト固定孔13に通した図示しないボルトにて固定されている。また、ラッチ機構20Kは、図7に示すように機構カバー84によって覆われている。
機構盤11には、水平方向に延びたストライカ受容溝12が備えられている。このストライカ受容溝12の一端部が、車内側に向かって開放したストライカ受容口12Kになっており、他端部は閉じている。また、機構盤11が取り付けられたスライドドア90の後端壁にもストライカ受容溝12に対応した切り欠き(図示せず)が備えられている。そして、スライドドア90を閉じるとストライカ受容口12Kからストライカ受容溝12内にストライカ40が進入する。
機構盤11のうちストライカ受容溝12より下方には、ラチェット30が回動可能に軸支されている。ラチェット30は、ラッチ回動規制片31を回動軸30Jの側方に突出して備えている。また、ラチェット30と機構盤11との間にはトーションコイルバネ30S(図3参照)が備えられ、このトーションコイルバネ30Sによってラチェット30が図3における反時計回り方向に付勢されている。
図6に示すように、ラチェット30の回動軸30Jは機構盤11を隔ててラッチ回動規制片31と反対側に延び、その先端部が機構カバー84を貫通している。また、その回動軸30Jの先端部からは、側方にラチェット駆動レバー33が張り出している。ラチェット駆動レバー33の先端部は二股に分かれており、その二股の先端部の一方からストッパ片34が突出している。そして、ストッパ片34が機構カバー84に備えたストッパ84S(図7参照)と当接することで、ラチェット30がラッチ20の回動を規制可能な位置(図4及び図5の実線で示した位置)に位置決めされている。また、ラチェット駆動レバー33の二股の先端部の他方は、後述するオープンレバー60の押上片61によって押し上げ可能になっている。そして、図11に示すようにラチェット駆動レバー33が押し上げられることで、ラチェット30のラッチ回動規制片31がラッチ20の回動領域から退避したラッチリリース位置(図5の二点鎖線で示した位置)に移動し、ラッチ20の回動規制が解除される。
機構盤11のうちストライカ受容溝12より上方にはラッチ20が回動可能に軸支されている。ラッチ20には、1対の係止爪21,22が備えられ、それら係止爪21,22の間がストライカ受容部23になっている。また、ラッチ20は、機構盤11との間に設けたトーションコイルバネ20S(図3参照)によりロック解除方向(図3における時計回り方向)に付勢されている。そして、スライドドア90を開けた状態では、ラッチ20に備えたストッパ当接部24と機構盤11に備えたラッチストッパ14との当接によりラッチ20がアンラッチ位置(図3に示した位置)に位置決めされる。
そのアンラッチ位置では、前側の係止爪21がストライカ受容溝12の上方に退避しかつ、後側の係止爪22がストライカ受容溝12を横切った状態になり、ストライカ受容部23の開口端がストライカ受容溝12のストライカ受容口12K側を向く。そして、スライドドア90が閉動作すると、ストライカ受容溝12に進入したストライカ40がストライカ受容部23内に受容されると共に、ストライカ40が後側の係止爪22を押してラッチ20がロック方向(図3における反時計回り方向)に回動する。これにより、図4に示すように、ストライカ受容溝12のうちストライカ40よりストライカ受容口12K側が前側の係止爪21によって塞がれると共に、ラッチ20がストライカ40と噛み合った状態になる。
ここで、スライドドア90に勢いを付与して閉じると、スライドドア90がドア枠99Wとの間の防音部材(図示せず)を最大限に押し潰した位置まで閉じられ、このとき、ラッチ20は、ラチェット30を通過しかつそのラチェット30から僅かに離間したオーバーストローク位置に至る。そして、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻され、これに伴ってラッチ20がオーバーストローク位置からアンラッチ位置側に若干戻されると、図5に示すようにラッチ20の前側の係止爪21とラチェット30のラッチ回動規制片31とが当接し、ラッチ20がフルラッチ位置に位置決めされる。これにより、ラッチ20のロック解除方向(図5における時計回り方向)への回動が規制され、スライドドア90が全閉状態に保持される。
また、スライドドア90を閉じる際の勢いが弱いために、ラッチ20がフルラッチ位置に至らない状態で、防音部材の弾発力によりスライドドア90が戻されると、図4に示すようにラチェット30がラッチ20の後側の係止爪22の先端部に当接してラッチ20がハーフラッチ位置に位置決めされ、スライドドア90が、所謂、半ドア状態になる。
なお、全開ドアロック装置10Cは、図示しないがクローザ装置10Bと同様に動作するラッチ機構を有している。全開ドアロック装置10Cのラチェットにもクローザ装置10Bと同様にラチェット駆動レバーが備えられ、そのラチェット駆動レバーとリモコン装置91との間がオープンケーブル94W(図2参照)にて連結されている。
また、前側ドアロック装置10Aは、図示しないがクローザ装置10Bと同様なラッチ機構を有している。前側ドアロック装置10Aのラチェットにもクローザ装置10Bと同様にラチェット駆動レバーが備えられ、そのラチェット駆動レバーとリモコン装置91との間がオープンケーブル93W(図2参照)にて連結されている。なお、前側ドアロック装置10Aのラッチは、アンラッチ位置かフルラッチ位置のどちらかに位置決めされるようになっており、クローザ装置10Aのようにハーフラッチ位置で停止することはない。
クローザ装置10Bについてさらに説明を続ける。図6に示すように、クローザ装置10Bのラッチ20には、ラッチ駆動レバー25とセンサ連結ピン28とが備えられている。ラッチ駆動レバー25は、ラッチ20の回動軸20Jと直交する方向に延びている。そして、同図に示すように、ラチェット30がラッチ20の後側の係止爪22に当接してハーフラッチ位置になったとき、ラッチ駆動レバー25は斜め上方に延びている。この状態で後述するシーソー形回動盤55によってラッチ駆動レバー25が下方に押し下げられると、ラッチ20は、ストライカ40との係合を深めるロック方向に回動してフルラッチ位置(図5に示す状態)になる。詳細には、ラッチ20は、フルラッチ位置を一旦越えて図示しないオーバーストローク位置に至り、そのオーバーストローク位置からアンラッチ位置側に若干戻されてフルラッチ位置になる。
センサ連結ピン28は、ラッチ20の回動軸20Jから側方にずれた位置に設けられている。センサ連結ピン28は、回動軸20Jと平行かつ機構盤11から離れる方向に延びている。センサ連結ピン28の先端部は、機構カバー84を貫通し、機構カバー84に固定されたラッチ位置検出センサ83(図7参照)に連結されている。このラッチ位置検出センサ83によってラッチ20が、フルラッチ位置(図5参照)、ハーフラッチ位置(図4,図6参照)及びアンラッチ位置(図3参照)の何れの位置に配置されているかを検出する。
さて、クローザ装置10Bのベース盤81には、モータ41Mの動力をラッチ20及びラチェット30に伝達するためのモータ動力伝達部の構成部品が取り付けられている。モータ動力伝達部の構成は、以下のようである。即ち、ベース盤81には、本発明の「中継回動部材」に相当するアクティブレバー50が回動可能に軸支されている。アクティブレバー50には、その回動軸50J(図6参照)を挟んでラッチ機構20Kと反対側に扇形状の作動ギヤ51が備えられている。また、アクティブレバー50には、回動軸50Jよりラッチ機構20K側に突出した回動支持突片52が備えられ、その回動支持突片52の先端部にシーソー形回動盤55が回動可能に軸支されている。
シーソー形回動盤55は、回動軸55Jを挟んで両側に回動片が張り出したシーソー構造をなし、その下縁部からはベース盤81と反対側(図6における紙面手前側)に押下壁56が曲げ起こされている。押下壁56は、シーソー形回動盤55のうち回動軸55Jの下方位置からラッチ機構20K側の先端部に亘って延び、ラッチ駆動レバー25に上方から当接可能になっている。また、シーソー形回動盤55は、回動支持突片52との間に係止された図示しないトーションコイルバネにより、押下壁56がラッチ駆動レバー25から離れる方向(図6における時計回り方向)に付勢されている。
シーソー形回動盤55のうちラッチ機構20Kと反対側の端部には当接コロ57が取り付けられ、この当接コロ57の下方側から後述する位置決レバー63が突き当てられている。当接コロ57が位置決レバー63によって位置決めされた状態で、アクティブレバー50が図7の反時計回りに回動すると、シーソー形回動盤55の回動軸55Jが下方に移動し、シーソー形回動盤55の先端部における押下壁56がラッチ駆動レバー25を下方に押し下げる(図8の状態)。
また、位置決レバー63が当接コロ57から離れた位置に移動すると、シーソー形回動盤55がアクティブレバー50に対して自在に回転可能になり、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55へのモータ動力の伝達が遮断され、シーソー形回動盤55(押下壁56)によってラッチ駆動レバー25を押し下げることができなくなる。
図6に示すように、アクティブレバー50を挟んでラッチ機構20Kと反対側にはアクチュエータ41が設けられている。アクチュエータ41は、モータ41Mと減速機構41Gとからなる。減速機構41Gは、ウォームギヤ41Aとウォームホイール41Bとを備え、ウォームギヤ41Aにモータ41Mのモータ出力軸が連結されている。そして、ウォームホイール41Bと同軸上かつ一体に備えた小ギヤ41Xがアイドルギヤ41Yを介して作動ギヤ51にギヤ連結している。これによりアクティブレバー50を、モータ41Mによって時計回り方向と反時計回り方向の任意の方向に回動させることができる。
図6に示すように、ベース盤81のうちアクティブレバー50の回動軸50Jの下方には、位置決レバー63及びオープンレバー60が共通の回動軸60Jを中心に回動可能に軸支されている。オープンレバー60のうち回動軸60Jから上方に延びた部位の先端にはオープンケーブル92Wの一端部が連結され、そのオープンケーブル92Wの他端部はリモコン装置91(図2参照)に連結されている。
オープンレバー60の下端部からは、押上片61がラチェット30側に張り出している。オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られると、オープンレバー60が回動して押上片61がラチェット駆動レバー33を押し上げ(図11の状態)、これにより、前述の如く、ラチェット30がラッチリリース位置(図5の二点鎖線で示した位置)に移動して、ラチェット30によるラッチ20の回動規制が解除される。なお、オープンレバー60は、図示しないトーションコイルバネにより、押上片61がラチェット駆動レバー33から離れる方向(図6における反時計回り方向)に付勢されている。
位置決レバー63はオープンレバー60とベース盤81との間に挟まれており、位置決レバー63の側縁部から起立した連動当接片63Tが、オープンレバー60の一側縁部に側方から対向している。そして、オープンケーブル92Wがリモコン装置91側に引っ張られてオープンレバー60が図6における時計回り方向に回動すると、連動当接片63Tがオープンレバー60に押されて位置決レバー63も時計回り方向に回動し(図11参照)、位置決レバー63が当接コロ57から離間する。これによりアクティブレバー50からシーソー形回動盤55へのモータ動力の伝達が遮断され、ラッチ駆動レバー25を押し下げることができなくなる。
ベース盤81のうち、アクティブレバー50を挟んでラッチ機構20Kとは反対側には、リリースレバー70が回動可能に軸支されている。リリースレバー70はその下端部を貫通した回動シャフト71を中心にして回動可能となっており、上端部にはリリースケーブル91Wの一端が連結されている。そのリリースケーブル91Wの他端部は、リモコン装置91に連結されている。
リリースレバー70は、一端がベース盤81に係止されたトーションコイルバネ74により、図6における時計回り方向に付勢されている。ここで、リリースレバー70のうち回動シャフト71が貫通した下端部には、減速機構41G(例えば、ウォームホイール41Bを収容したハウジング)の一部が重なって配置されているため、他のトーションコイルバネのように、回動シャフト71と同軸線上にトーションコイルバネ74のコイル部74Cを配置することが困難となっている。そこで、本実施形態では、リリースレバー70のうち回動シャフト71の側方位置からコイル保持突片72を起立させて、そこにトーションコイルバネ74のコイル部74Cを保持するようになっている。
具体的には、図16(B)に示すように、コイル保持突片72は、リリースレバー70の縁部から突出した板金片をベース盤81とは反対側に直角曲げしてなる。リリースレバー70のうち、回動軸71を挟んでコイル保持突片72と反対側の縁部からは、バネ端部係止突片73が起立している。バネ端部係止突片73も、リリースレバー70の縁部から突出した板金片をベース盤81とは反対側に直角曲げしてなる。そして、図16(A)に示すように、一端部がベース盤81に係止されたトーションコイルバネ74のコイル部74Cがコイル保持突片72の外側に嵌合されると共に、トーションコイルバネ74の他端部がバネ端部係止突片73に係止されている。なお、リリースレバー70は、トーションコイルバネ74だけでなく、後述するリモコン装置91に備えた第1原点保持スプリング98S(図17参照)によってリリースケーブル91Wがリモコン装置91側に引っ張られることでも、図6における時計回り方向に付勢されている。
図6に示すように、リリースレバー70の上下方向における中間部には、リンクアーム75の一端が回動可能に軸支されている。リンクアーム75は、アクティブレバー50に向かって延びており、その先端部分がアクティブレバー50の作動ギヤ51に重なるように配置されている。リンクアーム75の先端部分には長孔76が貫通形成されており、作動ギヤ51からリンクアーム75に向かって突出したピン53が、その長孔76内で移動可能に挿入されている。なお、長孔76の基端部には挿抜用孔77が連続して形成されており、ここからピン53が挿抜可能になっている。
そして、図10から図11への変化に示すように、モータ41Mにてアクティブレバー50を時計回り方向に回動させた場合、リリースレバー70はリンクアーム75を介してアクティブレバー50側に引っ張られ、トーションコイルバネ74及び第1原点保持スプリング98Sの付勢力に抗して図10における反時計回り方向に回動する。これにより、リリースレバー70の上端部に連結されたリリースケーブル91Wをリモコン装置91からクローザ装置10B側に引くことができる。
図17に概念的に示すように、リモコン装置91は、前記オープンケーブル92W,93W,94Wが一端部に連結されたリモコン回動レバー98を備えている。そのリモコン回動レバー98は第1原点保持スプリング98Sとストッパ98Tとによって原点位置(図17に示した位置)に付勢かつ位置決めされている。また、リモコン回動レバー98のうちオープンケーブル92W,93W,94Wとの連結部分に対して回動中心を挟んで反対側の端部には、前記リリースケーブル91Wが連結されている。これにより、モータ41Mを駆動してリリースケーブル91Wをクローザ装置10B側に引くと、リモコン回動レバー98が原点位置から離れる方向(図17における反時計回り方向)に回動し、オープンケーブル92W,93W,94Wがリモコン装置91側に引かれる。これにより、前側ドアロック装置10A、クローザ装置10B、全開ドアロック装置10Cの全てのラチェット30がラッチリリース位置に移動し、全てのラッチ20の回動規制が一度に解除される。
リモコン装置91には、スライドドア90の内面と外面とに別々に備えられたハンドル95が備えられている。それらハンドル95は、第2原点保持スプリング97Sとストッパ97Tとによって原点位置に付勢かつ保持されている。そして、その第2原点保持スプリング97Sに抗してハンドル95を原点位置から離れる側に移動操作すると、ハンドル95に連結されたハンドル連動部品97が原点位置から所定の単独可動域L1を通過し、リモコン回動レバー98に当接する。そして、この状態でハンドル95を原点位置からさらに離れる側に移動すると、ハンドル連動部品97がリモコン回動レバー98を押して回動させる。また、リモコン装置91には、ハンドル連動部品97が原点位置側から単独可動域L1に進入したことを検出するためのハンドル操作検出センサ96が備えられている。また、上記したハンドル操作検出センサ96の検出信号は、前記ラッチ位置検出センサ83の検出信号と共に車両本体99に備えたECU120(図1参照)に取り込まれている。そして、ECU120が、それら検出信号に基づいてモータ41Mを以下に詳説するように駆動する。
ここまでの構成に基づいて車両ドアロックシステム10の動作について説明する。スライドドア90を閉めると、前側ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が対応したストライカ40とそれぞれ噛み合って回動する。このとき、スライドドア90を比較的強い力で閉めてスライドドア90が全閉状態になると、前側ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラッチ20が図5に示すようにフルラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にラチェット30が係合し、各ラッチ20のロック解除方向への回動が規制される。これにより、スライドドア90が全閉状態に保持される。
また、スライドドア90を比較的弱い力で閉めたために半ドア状態になると、クローザ装置10Bのラッチ20が図4及び図6に示すようにハーフラッチ位置まで回動してそれらラッチ20にラチェット30が係合し、半ドア状態に保持される。すると、クローザ装置10Bのラッチ位置検出センサ83により、ラッチ20がハーフラッチ位置に位置していることが検出され、その検出結果がECU120に取り込まれる。そして、ECU120がクローザ装置10Bに備えたモータ41Mを一方に回転させ、アクティブレバー50を図7から図8への変化に示すように反時計回り方向に回動させる。すると、アクティブレバー50からシーソー形回動盤55にモータ動力が伝達され、シーソー形回動盤55がラッチ20のラッチ駆動レバー25を押し下げる。これにより、ラッチ20がハーフラッチ位置(図4及び図6参照)からフルラッチ位置(図5参照)に移動し、スライドドア90が半ドア状態から全閉状態になって保持される。以下、モータ動力によってスライドドア90を半ドア状態から全閉状態にする際のアクティブレバー50の動作を、「クローズ動作」という。
スライドドア90が全閉状態になると、スライドドア90とドア枠99Wとの間で防音部材が押し潰され、その反力によって前側ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの各ラチェット30と各ラッチ20とが摩擦係合した状態になる。
スライドドア90を開くためにハンドル95を操作すると、ラチェット30とラッチ20との摩擦抵抗がハンドル95にかかる前に、ハンドル操作検出センサ96がハンドル95が操作されたことを検出し、これを受けてECU120がモータ41Mを他方に回転させる。
すると、アクティブレバー50が図10から図11への変化に示すように時計回り方向に回転駆動され、そのアクティブレバー50にリンクアーム75を介して連結されたリリースレバー70が反時計回り方向に回動し、リリースケーブル91Wがクローザ装置10B側に引かれる。これにより、リモコン装置91のリモコン回動レバー98が回動し、オープンケーブル92W,93Wがリモコン装置91側に引かれて、モータ41Mの動力により前側ドアロック装置10A及びクローザ装置10Bの両ラチェット30をラッチリリース位置に移動することができる。以下、ハンドル95の開操作に起因してモータ動力によってラチェット30をラッチリリース位置に移動させる際のアクティブレバー50の動作を、「リリース動作」という。
以下、クローザ装置10Bのうち、本発明と特に深く関連する部分について詳説する。アクティブレバー50は、所定の可動範囲内で往復回動する。その可動範囲の一端位置Po(以下、「オーバー位置Po」という)ではラッチ20をオーバーストローク位置とし、可動範囲の他端位置Pr(以下、「リリース位置Pr」という)では、ラチェット30をラッチリリース位置とする。また、クローズ動作及びリリース動作を行っていない通常時、アクティブレバー50は、その可動範囲の中間に設定された中立領域N内に配置されて、ラッチ20及びラチェット30から切り離される。
アクティブレバー50の可動範囲のうちリリース位置Pr側にはリリース作動領域Srが設定されている。リリース作動領域Srは、オープンレバー60とストッパ片34にて位置決めされたラチェット駆動レバー33とが当接した位置P1から、さらに所定のリリース動作角だけ進んで、リリース位置Pr(図11に示す位置)に達するまでの領域であり、このリリース作動領域Srの間にアクティブレバー50は、ラチェット30をラッチ20の回動領域から退避させてラッチリリース位置に移動させる。
また、アクティブレバー50の可動範囲のうちオーバー位置Po側にはクローズ作動領域Scが設定されている。クローズ作動領域Scは、シーソー形回動盤55とハーフラッチ位置のラッチ20とが当接した位置P2(図7に示す位置)から、さらに所定のクローズ動作角だけ進んでオーバー位置Poの手前のクローズ位置Pc(図8に示す位置)に達するまでの領域であり、このクローズ作動領域Scの間でアクティブレバー50は、ラッチ20をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで移動させる。
リリース作動領域Srとクローズ作動領域Scとの間の領域は、アクティブレバー50がラッチ20及びラチェット30の両方から切り離された非作動領域Snとなっており、この非作動領域Sn内ではモータ41Mの回転動力がアクティブレバー50を介してラッチ20及びラチェット30に伝達されることはない。そして、非作動領域Snの中に、上記中立領域Nが設定されている。
ここで、中立領域にアクティブレバー50が位置するとは、スライドドア90を全閉状態にする(クローズ動作を行う)ことが可能な位置にアクティブレバー50が位置する状態のことである。具体的には、スライドドア90が手動で閉められたときに、ラチェット30とラッチ20とがフルラッチ位置で係止可能でありかつ、クローズ動作によりラッチ20をハーフラッチ位置からフルラッチ位置に回動させている途中にハンドル95等の操作によりアクティブレバー50からシーソー形回動盤55へのモータ動力の伝達が遮断されラッチ20がアンラッチ位置にされた後で、再度、スライドドア90が閉められた場合に、モータ動力によってラッチ20をハーフラッチ位置からフルラッチ位置まで回動させることが可能な位置にアクティブレバー50が位置する状態のことである。より具体的には、オープンレバー60がラチェット駆動レバー33を押し上げておらず、しかも、スライドドア90が閉められてラッチ20がアンラッチ位置からハーフラッチ位置に向かって回動するときにラッチ駆動レバー25とシーソー形回動盤55とが当たらないような位置にアクティブレバー50が位置する状態のことである。本実施形態では、例えば、図9に示すアクティブレバー50の位置を中立領域Nのクローズ位置Pc側の端部Ncに設定し、図12に示すアクティブレバー50の位置を中立領域Nのリリース位置Pr側の端部Nrに設定してある。
クローザ装置10Bには、アクティブレバー50が中立領域N内に配置されているか否かを検出するために、ロータリー式の中立検出スイッチ100が備えられている。図6に示すように、中立検出スイッチ100は、ベース盤81のうち、モータ41Mとオープンレバー60との間であってアクティブレバー50の下方位置に設けられている。
中立検出スイッチ100は、ベース盤81に固定された円筒形のスイッチケース110と、スイッチケース110に対して相対回転可能な連動回転部材101とを備えている。図14に示すように、連動回転部材101は、スイッチケース110内の図示しない検出ロータに連結されたロータ103と、ロータ103の外周面からスイッチケース110の外側に張り出した検出ギヤ102とを備えている。検出ギヤ102は、ロータ103から離れるに従って広がった扇形状をなしている。そして、図9〜図12に示すように、検出ギヤ102とアクティブレバー50の作動ギヤ51とがギヤ連結して、連動回転部材101がアクティブレバー50と連動回転するようになっている。
ロータ103の外周面には可動接点(図示せず)が備えられている。これに対し、スイッチケース110の内周面には、図示しない第1の固定接点(本発明の「第1検出手段」に相当する)と第2の固定接点(本発明の「第2検出手段」に相当する)とが周方向で間隔を空けて配置されている。
第1の固定接点は、アクティブレバー50が可動範囲内のクローズ側検出位置Pdcに位置するときに連動回転部材101の可動接点と接するように設けられている。また、第2の固定接点は、アクティブレバー50が可動範囲内のリリース側検出位置Pdrに位置するときに連動回転部材101の可動接点と接するように設けられている。図13に示すように、クローズ側検出位置Pdcは、中立領域Nにおけるクローズ位置側端部Nc(図9に示す位置)よりも少し中立領域Nの内側に入った位置に設定されており、リリース側検出位置Pdrは、中立領域Nにおけるリリース位置側端部Nr(図12に示す位置)よりも少し中立領域Nの内側に入った位置に設定されている。
ECU120は、中立検出スイッチ100の検出信号に基づいて、アクティブレバー50が中立領域N内に配置されているか否かを判定する。そして、中立領域N内に配置されていると判定した場合、モータ41Mに停止指令を出力して、アクティブレバー50を停止させるようになっている。なお、中立検出スイッチ100とECU120は本発明の「中立検出手段」に相当する。
詳細には、ECU120は、例えば、ラッチ位置検出センサ83がフルラッチ位置を検出しており、中立検出スイッチ100の可動接点が、第1の固定接点と接しかつ第2の固定接点と接していないことを以て、アクティブレバー50がクローズ位置Pc(図8参照)から中立領域N内に戻ったと判定し、モータ41Mを停止させる。即ち、クローズ動作の終了後、クローズ位置Pcでモータ41Mを反転させてアクティブレバー50を中立領域N内に戻す場合、アクティブレバー50が中立領域N内におけるクローズ位置側端部Nc(図9に示す位置)を通過しかつリリース位置側端部Nr(図12に示す位置)に達していないと判定すると、直ちにアクティブレバー50を停止させる。つまり、アクティブレバー50がクローズ側検出位置Pdcを通過した時点でモータ41Mを停止させる。
また、ECU120は、例えば、ラッチ位置検出センサ83がフルラッチ位置を検出しておらず、中立検出スイッチ100の可動接点が、第2の固定接点と接しかつ第1の固定接点と接していないことを以て、アクティブレバー50がリリース位置Pr(図11参照)から中立領域N内に戻ったと判定し、モータ41Mを停止させる。即ち、リリース動作の終了後、リリース位置Prでモータ41Mを反転させてアクティブレバー50を中立領域N内に戻す場合、アクティブレバー50が中立領域N内におけるリリース位置側端部Nrを通過しかつクローズ位置側端部Ncに達していないと判定すると、直ちにアクティブレバー50を停止させる。つまり、アクティブレバー50がリリース側検出位置Pdrを通過した時点でモータ41Mを停止させる。
ここで、ECU120が中立検出スイッチ100の検出信号に基づいてアクティブレバー50が中立領域N内に戻ったと判定してから、アクティブレバー50が実際に停止するまでには動作遅れが生じ得る。これに対し、本実施形態では、リリース位置Prから中立領域N内に戻る場合に、アクティブレバー50がリリース位置側端部Nrを通過して中立領域N内に進入した直後にモータ41Mに停止指令を出力し、クローズ位置Pcから中立領域N内に戻る場合に、アクティブレバー50がクローズ位置側端部Ncを通過して中立領域N内に進入した直後にモータ41Mに停止指令を出力する。よって、動作遅れがあっても、アクティブレバー50を確実に中立領域N内で停止させることができる。
ところで、連動回転部材101の検出ギヤ102と、アクティブレバー50の作動ギヤ51は、アクティブレバー50の可動範囲における一端寄りの端部領域で噛合解除されて互いに離間するようになっている。具体的には、検出ギヤ102と作動ギヤ51は、可動範囲におけるオーバー位置Poから中立領域Nのクローズ位置側端部Ncの手前の位置Pa(以下、「噛合解除位置Pa」という)までのクローズ側端部領域C(図13参照)で互いに離間し、そのクローズ側端部領域Cを除く可動範囲の残りの領域でのみ互いに噛合するようになっている。つまり、アクティブレバー50が噛合解除位置Paを越えてクローズ側端部領域C内で移動する場合(例えば図8に示す状態)、連動回転部材101はアクティブレバー50と連動しないようになっており、アクティブレバー50がクローズ側端部領域C以外の領域で移動する場合、連動回転部材101はアクティブレバー50と連動回転するようになっている。
ここで、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが離間状態のときに、例えば、クローザ装置10Bに振動や衝撃が加わることで連動回転部材101の位置が変化すると、作動ギヤ51と検出ギヤ102の再噛合が不可能になったり、再噛合時に位相がずれるという可能性がある。
そこで、本実施形態では、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが噛合状態から離間状態に切り替わる噛合解除位置Paで、連動回転部材101を回転不能に保持するための回止係止機構を備えている。
具体的には、図14(A)に示すように、連動回転部材101のうち検出ギヤ102を構成する扇形板状の回動板部104には、可撓片105が形成されている。可撓片105は、回動板部104にスリット106を形成して回動板部104の一部を両持ち梁状に切り離した構造になっている。また、可撓片105は、回動板部104における他の部分より薄肉となっており検出ギヤ102の歯底円dと同心の円弧状に延びている。その可撓片105のうち、ベース盤81との対向面には図14(B)に示すように、係合突起107が突出形成されている。係合突起107は、例えば半球状となっている。
一方、図15に示すように、ベース盤81のうち連動回転部材101との対向面には、その反対面を膨出させることで凹ませた係合凹部85と円弧溝86とが形成されている。係合凹部85と円弧溝86は、係合突起107の移動軌跡に沿って配設されており、係合凹部85と円弧溝86との間には、それらに対して相対的に凸となった隆起部87が形成されている。
係合凹部85は、係合突起107の形状に対応して、例えば半球状に陥没しており、アクティブレバー50が中立領域N内におけるクローズ位置側端部Ncを越えて噛合解除位置Paに位置するときに、係合突起107と凹凸係合して連動回転部材101を回転不能に保持する(図15(A)に示す状態)。これら係合突起107と係合凹部85とで回止係止機構が構成されている。
円弧溝86は断面半円形に陥没しており、係合突起107を移動可能に受容している。円弧溝86は、アクティブレバー50がリリース位置Prから噛合解除位置Paの手前に至るまでの間の係合突起107の移動軌跡に沿って延びている(図15(B)参照)。
なお、図14に示すように、連動回転部材101のうちベース盤81との対向面には、検出ギヤ102の歯底円dに沿って延びた突条108が突出形成されている。突条108を設けたことで、連動回転部材101とベース盤81との対向面の接触面積を小さくすることができ、連動回転部材101をスムーズに回動させることが可能になる。そして係合突起107はこの突条108よりもベース盤81側に突出している。
図14(A)に示すように、連動回転部材101には、検出ギヤ102と共にトリガ突起109が一体形成されている。トリガ突起109は、検出ギヤ102のうち作動ギヤ51が離間する直前まで作動ギヤ51と噛合している一端位置のギヤ構成歯102Tの隣(アクティブレバー50がクローズ動作を行った場合の連動回転部材101の回転方向における後隣。図14(A)における左隣)に設けられている。トリガ突起109は、検出ギヤ102の歯底円dの延長線上から作動ギヤ51に向かって突出していると共に、ギヤ構成歯102Tの歯先円eより外側に突出している。
回止係止機構(係合突起107及び係合凹部85)によって連動回転部材101が回転不能に保持されたとき、検出ギヤ102の各ギヤ構成歯102Tは作動ギヤ51の回動領域の外側に配置されるのに対し、トリガ突起109だけが作動ギヤ51の回動領域の内側に配置される。
次に、アクティブレバー50と連動回転部材101の動作について説明する。ハンドル95の開操作によりアクティブレバー50がリリース動作を行う場合、作動ギヤ51と検出ギヤ102は終始、噛合しており、連動回転部材101は、図10から図11への変化に示すように、アクティブレバー50と連動回転する。このとき、連動回転部材101の係合突起107は円弧溝86内を移動する。
図11に示すように、アクティブレバー50がリリース位置Prに到達(リリース動作が終了)すると、ラッチ20とラチェット30との係合が解除され、スライドドア90とドア枠99Wとの間で押し潰された防音部材の反力によってスライドドア90が開放側に移動する。すると、ラッチ位置検出センサ83がフルラッチ位置を検出しなくなり、モータ41Mの回転が反転して、アクティブレバー50が中立領域N内に戻される。
アクティブレバー50がリリース位置Pcから中立領域N内に戻る場合も、作動ギヤ51と検出ギヤ102は終始、噛合しており、図11から図12への変化に示すように、連動回転部材101はアクティブレバー50と連動回転する。そして、アクティブレバー50が、中立領域N内のリリース位置側端部Nr(図12に示す位置)を通過した直後にモータ41Mが停止して、アクティブレバー50が中立領域N内に停止する。
スライドドア90が半ドア状態になってアクティブレバー50がクローズ動作を行う場合、図12から図8への変化に示すように作動ギヤ51と検出ギヤ102とは途中まで(噛合解除位置Paまで)噛合状態であり、その間、連動回転部材101はアクティブレバー50と連動回転する。そして、アクティブレバー50が中立領域Nのクローズ位置側端部Ncを越えて噛合解除位置Paに至ると、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが離間して、図7から図8への変化に示すように、アクティブレバー50は連動回転部材101を置き去りにしてさらに回動する。
詳細には、アクティブレバー50がクローズ動作を行う場合、連動回転部材101の係合突起107は円弧溝86内を移動すると共に、作動ギヤ51が検出ギヤ102から離間する直前に、円弧溝86から隆起部87に乗り上がる。このとき可撓片105が弾性変形する。そして、アクティブレバー50が中立領域Nのクローズ位置側端部Ncを越えて噛合解除位置Paに至ると、係合突起107が隆起部87を乗り越えて可撓片105が復元し、係合突起107が係合凹部85に凹凸係合する(図15(A)の状態)。これにより、連動回転部材101が回転不能に保持される。
図8に示すように、アクティブレバー50がクローズ位置Pcに到達(クローズ動作が終了)すると、ラッチ位置検出センサ83がフルラッチ位置を検出し、モータ41Mの回転が反転して、アクティブレバー50が中立領域N内に戻される。
クローズ位置Pcから中立領域Nの手前の噛合解除位置Paまでの間は、検出ギヤ102と作動ギヤ51は離間しているので、連動回転部材101は回止係止機構(係合突起107と係合凹部85)によって保持されたままであり、動かない。
アクティブレバー50が噛合解除位置Paに至ると作動ギヤ51の回動方向における前端部が、連動回転部材101のトリガ突起109に当接し、作動ギヤ51によるトリガ突起109の押圧により連動回転部材101が回動して、係合突起107が係合凹部85から隆起部87に乗り上がる。このとき可撓片105が弾性変形する。そして、係合突起107が隆起部87を乗り越えると可撓片105が復元して係合突起107が円弧溝86に受容される共に、検出ギヤの102における一端のギヤ構成歯102Tが作動ギヤ51と再噛合して、連動回転部材101とアクティブレバー50との連動が再開される。また、アクティブレバー50が、中立領域N内のクローズ位置側端部Nc(図9に示す位置)を通過した直後にモータ41Mが停止して、アクティブレバー50が中立領域N内に停止する。
このように、本実施形態によれば、アクティブレバー50に備えた作動ギヤ51と、連動回転部材101に備えた検出ギヤ102は、アクティブレバー50の可動範囲のうちオーバー位置Poから中立領域N内のクローズ位置側端部Ncの手前の噛合解除位置Paまでの間のクローズ側端部領域Cで互いに離間し、そのクローズ側端部領域Cを除く可動範囲の残りの領域(リリース位置Prから噛合解除位置Paまでの領域)でのみ互いに噛合する。また、連動回転部材101にはトリガ突起109が設けられ、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが互いに離間した位置から作動ギヤ51が検出ギヤ102に向かって接近すると、作動ギヤ51の端部がトリガ突起109に当接し、これをきっかけにして作動ギヤ51と検出ギヤ102とが再噛合される。
つまり、連動回転部材101は、アクティブレバー50の可動範囲の全域で連動回転する構成ではなく、可動範囲におけるクローズ側端部領域Cを除く領域でのみ連動回転するようにしたので、連動回転部材101の移動領域を狭めることができ、クローザ装置10Bを構成する部品の配置の自由度を向上させることができる。また、これにより、クローザ装置10Bのコンパクト化を図ることができる。
ここで例えば、アクティブレバー50と連動回転部材101とをそれらの回転軸方向(図6の紙面と直交する方向)で重ねてピンと長孔とで連結した場合には、アクティブレバー50の回転軸方向、即ち、スライドドア90の厚さ方向でクローザ装置10Bが大型化し、スライドドア90の薄型化、ひいては車室空間拡張の妨げとなり得る。これに対し、本実施形態の構成では、アクティブレバー50と連動回転部材101とを、それらの回転半径方向でギヤ連結させたので、アクティブレバー50の回動軸方向におけるクローザ装置10Bの大型化を抑制することができる。
また、トリガ突起109を検出ギヤ102の歯底円dから突出させると共に、ギヤ構成歯102Tの歯先円eよりも外側に突出させたことで、互いに離間した位置から検出ギヤ102に向かって接近する作動ギヤ51の端部をトリガ突起109に確実に当接させることができ、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが離間した状態からの再噛合の確実性を高めることができる。
さらに、万が一、クローザ装置10Bに振動や衝撃が加わった場合でも、連動回転部材101を、作動ギヤ51と検出ギヤ102が噛合状態から離間状態に切り替わった位置に保持しておくことができるから、作動ギヤ51と検出ギヤ102とを互いに離間した状態から、正規の位相で確実に再噛合させることができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態は、図18〜図21に示されており、連動回転部材101Vの係止構造が前記第1実施形態と異なる。即ち、本実施形態の連動回転部材101Vは、樹脂の成形品であって、図18に示すように、回動軸を挟んで検出ギヤ102と反対側に弾性梁133を備えている。弾性梁133は、連動回転部材101Vの回動軸を中心とした円弧状をなし、両端部が連動回転部材101Vの本体部分に連絡されている。また、連動回転部材101Vの本体部分と弾性梁133との間は、円弧状のスリット130になっている。そして、弾性梁133の長手方向の中央から側方に向けて第1摺接突起131が突出し、その第1摺接突起131の係合相手が、中立検出スイッチ100のスイッチケース110に設けられている。
スイッチケース110は、図19に示すようにベース盤81に螺子Nにて固定された台座部111と、台座部111のうちベース盤81との当接面の反対面の一側縁部から側方に張り出した回転入力部112とを備えている。また、台座部111は第1摺接突起131の回動領域の側方に配置され、回転入力部112はベース盤81との間で連動回転部材101Vを回動中心部分を挟んで対向している。さらに、連動回転部材101Vの一部が回転入力部112内の図示しない検出ロータに連結されている。また、台座部111は、図18に示すように、連動回転部材101Vの回動中心側を向いた側面111Sが凹状の円弧面になっていて、その側面111Sに第2摺接突起132が設けられている。
第1及び第2の摺接突起131,132は、共に断面三角形の突条形状をなして連動回転部材101Vの回動軸に向かって延びている。また、第1及び第2の摺接突起131,132の断面形状である三角形は、連動回転部材101Vの回動中心から延びた回動半径を中心として左右対称な形状になっている。そして、第1及び第2の摺接突起131,132のうちアクティブレバー50がオーバー位置Poに配置された状態で、互いに対向する傾斜面が本発明に係る「1対の摺接ガイド部」に相当するガイド傾斜面131S,132Sになっていて、その反対側は、弾性梁133を弾性変形させるための乗上傾斜面131T,132Tになっている。
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。アクティブレバー50が中立領域Nからオーバー位置Poに向かって回動すると、作動ギヤ51が検出ギヤ102から離間する直前位置で、第1及び第2の摺接突起131,132の乗上傾斜面131T,132T同士が摺接して弾性梁133が弾性変形する。そして、作動ギヤ51から検出ギヤ102に動力を伝達することができなくなる前に、第1及び第2の摺接突起131,132のピーク同士がすれ違って、ガイド傾斜面131S,132S同士が当接した状態になる(図20参照)。この状態で、作動ギヤ51が検出ギヤ102から離間すると、弾性梁133の弾発力を動力にしてガイド傾斜面131S,132S同士が摺接することで、検出ギヤ102が作動ギヤ51の回動領域から離れるように微少に回転駆動される(図21参照)。これにより、作動ギヤ51が逆方向に回動した際に、検出ギヤ102の歯先に作動ギヤ51が突き当たるような事態が防がれ、作動ギヤ51と検出ギヤ102との再噛合をスムーズに行うことができる。
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記実施形態において作動ギヤ51と検出ギヤ102は、アクティブレバー50の可動範囲のうちクローズ側端部領域Cで互いに離間するように構成されていたが、リリース位置Prから中立領域Nのリリース位置側端部Nrの手前の噛合解除位置Pbまでのリリース側端部領域R(図13参照)で互いに離間し、可動範囲におけるリリース側端部領域Rを除く領域でのみ互いに噛合するように構成してもよい。
(2)上記実施形態では、可撓片105を両持ち梁状にしていたが、片持ち梁状にしてもよい。
(3)上記実施形態では、連動回転部材101に可撓片105と係合突起107とを設けかつベース盤81に係合凹部85を設けていたが、可撓片105、係合突起107、係合凹部85は、連動回転部材101とベース盤81のどちらに設けてもよい。例えば、連動回転部材101に可撓片105とその可撓片105に陥没形成された係合凹部85とを設け、ベース盤81に係合突起107を設けてもよい。
または、連動回転部材101に可撓片を設けずに係合突起107を設け、ベース盤81に可撓片105とその可撓片105に陥没形成された係合凹部85とを設けてもよい。
または、連動回転部材101に可撓片を設けずに係合凹部85を設け、ベース盤81に可撓片105とその可撓片105から突出した係合突起107を設けてもよい。
(4)上記実施形態では、連動回転部材101に設けた係合突起107と、ベース盤81に設けられた係合凹部85とが凹凸係合することで、連動回転部材101を回転不能に保持していたが、連動回転部材101とベース盤81との間の摩擦力で連動回転部材101を回転不能に保持するようにしてもよいし、連動回転部材101とベース盤81とに設けた磁石の吸引力で連動回転部材101を回転不能に保持する構成としてもよい。
(5)または、作動ギヤ51と検出ギヤ102とが噛合状態から離間状態に切り替わる位置で連動回転部材101と当接するストッパと、そのストッパに連動回転部材101を押し付けるバネとで回止係止機構を構成してもよい。なお、上記実施形態の構成は、バネや磁石が不要である点、バネの付勢力や磁石の吸引力がモータ41Mの負荷にならないという点で優れている。
(6)上記実施形態では、トリガ突起109を検出ギヤ102の歯底円dから突出させると共にギヤ構成歯102Tの歯先円eより外側に突出させていたが、互いに離間した位置から近づいた作動ギヤ51の端部と当接可能であれば、ギヤ構成歯102Tと同じ突出量または同一形状でもよい。
(7)上記実施形態では、中立検出スイッチ100が、中立領域N内のリリース側検出位置Pdrとクローズ側検出位置Pdcとを検出する2接点方式であったが、中立領域N内の1つの位置を検出する1接点方式にしてもよい。
(8)上記実施形態では、車両のスライドドア90に備えたクローザ装置10Bに本発明を適用していたが、車両のバックドアに備えたドアラッチ装置に本発明を適用してもよい。
(9)上記実施形態では、アクティブレバー50の可動範囲の一端にラッチ20をオーバーストローク位置にするオーバー位置Poが設定されていたが、アクティブレバー50の可動範囲の一端をクローズ位置Pcにしてもよい。
(10)前記第2実施形態では第2摺接突起132が中立検出スイッチ100(詳細には、台座部111)に設けられていたが、図22に示した第2摺接突起135のように、ベース盤81の縁部から直角曲げされた突壁81Tに設けてもよい。但し、前記第2実施形態のように第2摺接ガイド部132を中立検出スイッチ100に設ければ、第1と第2の摺接突起131,132同士の相対位置の精度を高めることができる。詳細には、中立検出スイッチ100のスイッチケース110は連動回転部材101Vの回転位置を検出するために連動回転部材101Vの回転中心に対して比較的高い精度で位置合わせして取り付けられている。従って、連動回転部材101Vに第1摺接突起131を設ける一方、スイッチケース110の台座部111に第2摺接突起132を設ければ、第1と第2の摺接突起131,132同士の相対位置の精度を高めることができ、ガイド傾斜面131S,132S同士の摺接動作を安定させることができる。
(11)前記第2実施形態の第1及び第2の摺接突起131,132は、三角形であったが、本発明に係る第1及び第2の摺接突起は、三角形に限定されるものではなく、作動ギヤ51が検出ギヤ102から離間するときに、弾性梁133の弾発力を動力にして互いに摺接しながら検出ギヤ102を作動ギヤ51の回動領域から離すように微少回転させるものであれば、どのような形状であってもよいし、また、第1及び第2の摺接突起における互いに摺接する斜面は、平面であっても曲面であってもよい。具体的には、本発明に係る第1及び第2の摺接突起は、共に半円状であってもよいし、一方が半円状で他方が三角形状という組み合わせでもよい。また、本発明に係る第1及び第2の摺接突起は、連動回転部材の回動中心から延びた回動半径を中心とした左右対称形でなくもてよい。