本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。図1は、図4に破線で示した本実施の形態のカテーテル10の領域Iを拡大した縦断側面図であり、図2は、図1のII−II断面図(縦断正面図)である。図3は図6に破線で示した領域IIIを拡大した縦断側面図である。
図4は、本実施の形態のカテーテル10の全体を示す側面図であり、図5は、回動操作部材70の部分を示す縦断側面図である。図6は回動操作部材70および位置調整機構80の部分を示す縦断側面図および縦断平面図である。
図7は、位置調整機構の動作を示す側面図、図8は、スライド操作線を牽引操作した状態のカテーテルを説明する側面図である。本実施の形態では図示するように前後左右上下の方向を規定して説明する。
しかし、これは構成要素の相対関係を簡単に説明するために便宜的に規定するものである。従って、本発明を実施する製品の製造時や使用時の方向を限定するものではない。
本実施の形態のカテーテル10では、図1ないし図3に示すように、大径のルーメンが形成されている大径樹脂管20と、大径樹脂管20の少なくとも遠位端部でルーメンの外側に位置する一対の小径の操作線細管30(a,b)と、一対の操作線細管30(a,b)にスライド自在に個々に挿通されていて先端部が少なくとも大径樹脂管20の遠位端部15に連結されている一対のスライド操作線40(a,b)と、大径樹脂管20に操作線細管30(a,b)とともにコイル状に巻回されているワイヤ51からなるシース補強層50と、を有する。
なお、本実施の形態のカテーテル10では、フッ素コート層などからなる大径樹脂管20の外側にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などからなる別体の操作線細管30(a,b)が配置されており、この操作線細管30(a,b)と大径樹脂管20とにシース補強層50が巻回されている。
このシース補強層50は、図1に示すように、シース16の遠位端部などでは屈曲を容易とするためにワイヤ51が間隔を介して巻回されており、シース16の近位端部などでは屈曲を規制するためにワイヤ51が緊密に巻回されている。
より具体的には、本実施の形態のカテーテル10では、上述した大径樹脂管20と操作線細管30(a,b)とスライド操作線40(a,b)とシース補強層50の他、少なくとも外層60とコート層64とでシース16が形成されている。
このシース16は、内視鏡を通じて、または直接に、体腔内に挿通される可撓性の管状体であり、腹腔動脈などの血管、および肝動脈枝や内頚動脈枝などの末梢血管に挿通される。
図1ないし図3に示すように、外層60は、シース補強層50に被覆された樹脂層からなる。コート層64は、カテーテル10の最外層として、潤滑処理が外表面に施された親水性の樹脂層からなる。
コート層64には、ポリビニルアルコール(PVA)やポリビニルピロリドンなどの親水性材料を用いることができる。なお、図1および図3に示すように、コート層64は、シース16の遠位端部には形成されているが、近位端部では省略されている。
ここで、本実施の形態のシース16の代表的な寸法を例示する。シース16の最外径は直径1mm未満、具体的には700〜900μm程度である。大径樹脂管20の内径は400〜600μm程度、内層21の厚さは10〜30μm程度、外層60の厚さは100〜150μm程度、シース補強層50の厚さは20〜100μmである。また、操作線細管30(a,b)の内径は40〜100μm、スライド操作線40(a,b)の太さは30〜60μmである。
外層60には熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。
シース補強層50を構成するワイヤ51には、ステンレス鋼(SUS)やニッケルチタン合金などの金属細線のほか、PI、PAIまたはPETなどの高分子ファイバーの細線を用いることができる。ワイヤ51の断面形状は特に限定されず、円形、楕円形、正方形、長方形、多角形、等でよいが、本実施の形態では一般的な円形となっている。
操作線細管30a、30bは、大径樹脂管20の外周面に沿ってシース補強層50で保持されている。すなわち、外層60およびシース補強層50の内側には、操作線細管30a、30bが長手方向に延在して埋設されており、それぞれにスライド操作線40(a,b)がスライド自在に挿通されている。
また、操作線細管30(a,b)はシース16に対して一部または全部が螺旋状に設けられて長手方向成分とともに周回方向成分を含んでもよい。以下、スライド操作線40aを第一のスライド操作線、スライド操作線40bを第二のスライド操作線という場合がある。
本実施の形態のカテーテル10においては、スライド操作線40a、40bがそれぞれ挿通された一対の操作線細管30a、30bは、大径樹脂管20の周囲に対向して配置されている。
すなわち、本実施の形態では、カテーテル10の軸心を挟んで操作線細管30aと操作線細管30bとは180度対向して形成されている。そして、操作線細管30aにはスライド操作線40aが挿通され、操作線細管30bにはスライド操作線40bが挿通されている。
操作線細管30a,30bをシース補強層50の内側に設けることにより、摺動するスライド操作線40a,40bに対して、シース補強層50の外部の外層60、すなわち被験者の身体が保護される。
操作線細管30(a,b)は、詳細には後述するが、大径樹脂管20を構成する樹脂材料と共に押し出して、大径樹脂管20の外周面上に一体に形成することができる。操作線細管30(a,b)の材料は、外層60の樹脂材料よりも耐熱性に優れ、またスライド操作線40(a,b)との摺動性の観点から、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、などのフッ素系高分子材料を好適に用いることができる。
スライド操作線40(a,b)を操作線細管30(a,b)に挿通する方法は、種々をとることができる。予め操作線細管30(a,b)が埋設されたシース16に対して、その一端側からスライド操作線40(a,b)を挿通してもよい。または、予めスライド操作線40(a,b)が挿通された操作線細管30(a,b)を大径樹脂管20の樹脂材料と共に押し出してシース16を成形してもよい。
スライド操作線40(a,b)の具体的な材料としては、例えば、PEEK、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、PIもしくはPTFEなどの高分子ファイバー、または、SUS、耐腐食性被覆した鋼鉄線、チタンもしくはチタン合金などの金属線を用いることができる。
なお、操作線細管30(a,b)が予め埋設されたシース16に対してスライド操作線40(a,b)を挿通する場合など、スライド操作線40(a,b)に耐熱性が求められない場合には、上記各材料に加えて、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを使用することもできる。
図1に示すように、シース16の遠位端部15には、X線等の放射線が不透過な材料からなるリング状のマーカー66が設けられている。具体的には、マーカー66には白金などの金属材料を用いることができる。本実施の形態のマーカー66は、大径樹脂管20の外側であってコート層64の内側に設けられている。
スライド操作線40(a,b)の先端部分(遠位端部分)41は、カテーテル10の遠位端部15に固定されている。スライド操作線40(a,b)の先端部分41を遠位端部15に固定する態様は特に限定されない。
例えば、図5に示すように、スライド操作線40(a,b)の先端部分41をマーカー66に締結してもよく、シース16の遠位端部15に溶着してもよく、または接着剤によりマーカー66またはシース16の遠位端部15に接着固定してもよい。本実施の形態では、スライド操作線40(a,b)の先端部分41は外層60の樹脂に埋設されている。
シース16の遠位端部15とは、シース16の被験者の身体に挿入される先端側の所定領域をいう。また、シース16の近位端部17とは、操作者に操作される末端側の所定領域をいい、回動操作部材70の内部に挿通された領域を含む。
同様に、スライド操作線40(a,b)の先端部分41とは、スライド操作線40(a,b)の先端を含む所定領域をいい、スライド操作線40(a,b)の基端部分43とは、スライド操作線40(a,b)の基端を含む所定領域をいう。
本実施の形態のカテーテル10は、図5に示すように、シース16の近位端の近傍に長手方向と直交する軸心方向で回動自在に軸支されていて一対の操作線細管30(a,b)から引き出された一対のスライド操作線40(a,b)が外周面に両側から巻回されている少なくとも一個の回動操作部材70と、スライド操作線40(a,b)の基端部分43を引き出された操作線細管30(a,b)から離反した位置で回動操作部材70に固定している溝状の操作線固定部79とを、さらに有する。
図4等に示すように、回動操作部材70は、少なくとも手動操作により回動して一対のスライド操作線40(a,b)をスライド移動させ、スライド操作線40(a,b)は、少なくとも操作線細管30(a,b)をスライド移動することでシース16の遠位端部15を屈曲させる張力を発生する。
回動操作部材70は、図6等に示すように、実際にスライド操作線40(a,b)が巻回される円筒状のドラム部742、このドラム部742を操作本体部材72に回動自在に軸支している軸部741、ドラム部742より大径の円盤状で手動操作されるダイヤル部74、等が一体に形成されている。
ダイヤル部74は操作本体部材72より幅方向(図6(a)における上下方向)に突出している。操作者はダイヤル部74の周面を指の腹(図示せず)等で回動させることにより、ドラム部742を軸部741回りに正逆方向に回動操作することができる。
ドラム部742には、周囲から径方向の内側に切れ込むように操作線固定部79(79a、79b)が削成されている。操作線固定部79a、79bは、ドラム部742上の二箇所に形成されている。
操作本体部材72の内部には、シース16から分岐した二本の操作線細管30(a,b)をそれぞれ回動操作部材70のダイヤル部74に向かって案内するガイドローラー77(a〜d)が設けられている。
ガイドローラー77aと77bは、操作線細管30(a,b)を、シース16からダイヤル部74の軸方向(図8(b)における上方)にオフセットさせる回転機構である。ガイドローラー77aと77bは、それぞれ操作本体部材72に対して回転可能に取り付けられ、互いに平行である。ガイドローラー77aと77bの回転軸は、シース16の長手方向およびダイヤル部74の軸方向に対してともに直交する方向に延在している。
ガイドローラー77cと77dはシース16を挟んでダイヤル部74の径方向に対向して設けられて、二本の操作線細管30(a,b)をドラム部742の接線方向に案内する回転機構である。
ガイドローラー77cと77dは、それぞれ操作本体部材72に対して回転可能に取り付けられ、互いに平行である。ガイドローラー77cと77dの回転軸は、シース16の長手方向に対して直交し、ダイヤル部74の軸方向と平行である。
図8は、第一のスライド操作線40aと第二のスライド操作線40b(ともに図1を参照)を牽引操作した状態のカテーテル10を説明する側面図である。同図(a)は、ダイヤル部74を図中の時計回りに回転させて第一のスライド操作線40aを牽引した第一状態を示している。
また、同図(b)は、ダイヤル部74を図中の反時計回りに回転させて第二のスライド操作線40bを牽引した第二状態を示している。以下、ダイヤル部74の回転方向に関し、同図の時計回りの回転方向を正方向、反時計回りの回転方向を逆方向という場合がある。
本実施の形態のカテーテル10は、シース16の近位端部17を収容し回動操作部材70のダイヤル部74が固定された操作本体部材72も備えている。本実施の形態のカテーテル10は、回動操作部材70のダイヤル部74が第一状態、第二状態、または第一状態と第二状態との間の中立状態の何れかにあることを示す指標部75も備えている。
より具体的には、操作本体部材72にはダイヤル部74の基準位置(ゼロ点位置)を示すマーク76が設けられている。そして、ダイヤル部74の指標部75と操作本体部材72のマーク76とを一致させることにより、ダイヤル部74は中立状態となる(図4を参照)。
中立状態では、第一のスライド操作線40aと第二のスライド操作線40bはともに自然状態、すなわち牽引されていない状態となり、張力がゼロとなる。そして、中立状態を基準として、ダイヤル部74を図8(a)のように時計回り(正方向)に回転させると、第一のスライド操作線40aが牽引された第一状態となる。そして、中立状態を基準として、ダイヤル部74を同図(b)のように反時計回り(逆方向)に回転させると、第二のスライド操作線40bが牽引された第二状態となる。
回動操作部材70のダイヤル部74が第一状態にあるときに、第一のスライド操作線40aは牽引されて緊張するとともに第二のスライド操作線40bは弛緩する。そして、ダイヤル部74が第二状態にあるときに、第一のスライド操作線40aは弛緩するとともに第二のスライド操作線40bは牽引されて緊張する。
ここで、第一のスライド操作線40aは、シース16の内部において同図の上方に挿通されている(図1を参照)。また、第二のスライド操作線40bは、同じく同図の下方に挿通されている。
図6は回動操作部材70および位置調整機構80の部分を示す縦断側面図および縦断平面図である。同図(a)は縦断側面図であり、同図(b)は横断平面図である。同図(b)は、図4に示すVI−VI断面図に相当する。図3は、図6に示す領域IIIの拡大した縦断側面図である。
シース16の近位端部17は、ダイヤル部74の操作本体部材72の内部に長手方向に貫通して収容されている。シース16の近位端部分PEは操作本体部材72および位置調整機構80よりも後方(図6における右方)に位置している。
操作本体部材72の先端部分には折止管78が長手方向に装着されている。折止管78は中空の管状部材であり、内部にシース16の近位端部17が挿通されている。折止管78は、シース16の近位端部17に付与される。
図3および図8に示すように、操作本体部材72の先端側の内部において、操作線細管30(a,b)の基端部32はスライド操作線40(a,b)とともにシース16から分岐している。より具体的には、操作本体部材72の内部に収容されたシース16の近位端部17には外層60の表面に切込部62が形成されている。
操作線細管30(a,b)は切込部を通じて外層60から外部に露出し、シース16の径方向の外方に分岐されている。一方、シース16は、操作本体部材72に対してスライド自在に長手方向に挿通され、図6に示すように、操作本体部材72の後方まで伸びている。
本実施の形態のカテーテル10では、スライド操作線40(第一および第二のスライド操作線40a、40b)のみならず、操作線細管30(a,b)をシース16から分岐させて、ガイドローラー77(a〜d)によってダイヤル部74に案内している。これにより、細径のスライド操作線40(a,b)がガイドローラー77(a〜d)と直接に接触して摩耗および破断することを防止している。
操作線細管30(a,b)の基端部32から突出した第一のスライド操作線40aおよび第二のスライド操作線40bは、それぞれドラム部742の周囲に約半周に亘って、互いに逆向きに巻回されている。
具体的には、図5等に示すように、第一のスライド操作線40aはドラム部742の上側半分に対して、先端側から基端側に向かって時計回りに巻回されている。一方、第二のスライド操作線40bはドラム部742の下側半分に対して、先端側から基端側に向かって反時計回りに巻回されている。
すなわち、第一のスライド操作線40aおよび第二のスライド操作線40bの基端部分43は、回動操作部材70のダイヤル部74に対して互いに異なる位置に係合している。
本実施の形態の場合、第一のスライド操作線40aおよび第二のスライド操作線40bは、ダイヤル部74のドラム部742に対してシース16を挟んで対称位置に係合している。
なお、ダイヤル部74がスライド操作線40(a,b)に対して牽引力を付与することができる限り、スライド操作線40(a,b)とダイヤル部74との係合の態様は特に限定されない。本実施の形態では、スライド操作線40(a,b)の基端44が操作線固定部79に固定されるとともに、所定長さの基端部分43がドラム部742の周囲に当接している。
ただし、本実施の形態に代えて、スライド操作線40(a,b)の基端44を操作本体部材72に固定するとともに、偏心回転するダイヤル部(カム)によってスライド操作線40(a,b)の基端部分43に牽引力を与えてもよい。
第一のスライド操作線40aおよび第二のスライド操作線40bの基端44は、ドラム部742の操作線固定部79a、79bに対してそれぞれ固着されている。ダイヤル部74は、ドラム部742の周囲に巻回された第一のスライド操作線40a、第二のスライド操作線40bの脱離を防止している。また、ダイヤル部74には指標部75が設けられている。本実施の形態の場合、ダイヤル部74上の180度対向する位置に一対の指標部75が設けられている。
図6(a)に示すカテーテル10の自然状態では、一対の指標部75はシース16を挟んで対称位置にある。また、カテーテル10の自然状態では、操作線固定部79a、79bもまたシース16を挟んで対称位置にある。
この状態から、ダイヤル部74を正方向(時計回り)に回転させると、ガイドローラー77cから操作線固定部79aまでの、ドラム部742の周長が増大し、第一のスライド操作線40aは基端側に牽引されることとなる。
逆に、図6(a)の自然状態からダイヤル部74を逆方向(反時計回り)に回転させると、ガイドローラー77dから操作線固定部79bまでの、ドラム部742の周長が増大し、第二のスライド操作線40bは基端側に牽引されることとなる。これにより、図8各図を用いて上述したように、ダイヤル部74の正逆方向への回転操作によってシース16の遠位端部15の屈曲方向が選択される。
なお、本実施の形態ではダイヤル部74が操作本体部材72に対して並進方向が固定されているため、ダイヤル部74の回転方向の選択によって第一のスライド操作線40aまたは第二のスライド操作線40bの何れか一方のみが牽引される。
しかしながら、本発明はこれに限定されず、第一のスライド操作線40aと第二のスライド操作線40bとを同時に牽引してもよい。具体的には、ダイヤル部74を操作本体部材72に対して回転可能であるとともに長手方向にスライド可能に取り付けてもよい。
すなわち、長手方向を長径方向とする長孔を操作本体部材72に設け、かかる長孔に対してダイヤル部74の軸部741を装着することにより、ダイヤル部74は操作本体部材72に対して回転かつスライド可能となる。そして、ダイヤル部74をスライドすることで第一のスライド操作線40aと第二のスライド操作線40bをともに牽引することができる。
本実施の形態のカテーテル10において、第一のスライド操作線40aまたは第二のスライド操作線40bを牽引した場合には、シース16の遠位端部15に張力が与えられて、当該スライド操作線40(a,b)が挿通されている側に遠位端部15が屈曲する。
すなわち、本実施の形態のカテーテル10では、ダイヤル部74を回転操作して第一のスライド操作線40aを基端側(図8における右方向)に牽引すると、シース16の遠位端部15は同図の上方に屈曲する。
また、ダイヤル部74を反対方向に回転操作して第二のスライド操作線40bを基端側に牽引すると、シース16の遠位端部15は同図の下方に屈曲する。ここで、シース16が屈曲するとは、シース16の一部または全部が湾曲または折れ曲がることをいう。
従って、第一のスライド操作線40aまたは第二のスライド操作線40bを牽引して遠位端部15を当該スライド操作線の側に屈曲させた状態で、回動操作部材70の全体を軸回りに右ネジ方向または左ネジ方向に最大90度だけトルク回転させることで、遠位端部15を所望の向きに指向させることができる。
すなわち、本実施の形態のカテーテル10によれば、カテーテル10(回動操作部材70)全体のトルク回転を90度以下に抑えつつ、所望の方向に遠位端部15を屈曲させることができる。このため、操作者はカテーテル10の遠位端部15を所望の方向に迅速に指向させることができる。
本実施の形態のカテーテル10の位置調整機構80は、図7に示すように、回動操作部材70とシース16とをシース16の長手方向に相対移動させることにより、スライド操作線40a、40bの張力が増大または減少するように調整できる。
図6に示すように、本実施の形態のカテーテル10は、シース16の近位端部分PEが固定されるとともに位置調整機構80と係合するコネクタ90も備えている。コネクタ90は、シース16の近位端部分PEに対して装着される筒状の部材であり、基端には開口部92が形成されている。コネクタ90の先端はシース16の近位端部分PEを除いて閉止されている。
開口部92には、薬液等を充填したシリンジ(図示せず)が装着される。シリンジからシース16に対して供給された薬液等は、シース16の大径樹脂管20(図1,図8等を参照)を通じてシース16の遠位端部分DEから吐出される。
位置調整機構80には、シース16の近位端部分PEが取り付けられている。本実施の形態の場合、コネクタ90を介して間接的にシース16の近位端部分PEが位置調整機構80に取り付けられている。
また、位置調整機構80は操作本体部材72に対して長手方向に螺合されており、位置調整機構80が操作本体部材72に対して螺進することにより、ダイヤル部74およびスライド操作線40a、40bとシース16とは長手方向に相対移動する。
具体的には、本実施の形態の位置調整機構80は、外周面にネジ溝86が螺刻された雄ネジ部材82と、ネジ溝86に装着されたストッパー部84とで構成されている。雄ネジ部材82は、長手方向に延在する通孔83を内部に備えている。
通孔83は両端が開口し、コネクタ90の先端部分およびシース16の近位端部分PEが挿通されている。コネクタ90の先端部分には、先端側に向かって縮径するテーパー部91が形成されている。
コネクタ90のテーパー部91は、雄ネジ部材82の通孔83に対して嵌合固定されている。一方、操作本体部材72の基端部分には長手方向に延在する雌ネジ部81が刻設されている。雌ネジ部81に雄ネジ部材82は螺合する。そして、位置調整機構80が操作本体部材72に対して螺進することにより、コネクタ90は長手方向に移動する。
なお、本実施の形態において位置調整機構80が操作本体部材72に対して螺進するとは、操作本体部材72に螺合された位置調整機構80が基端側または先端側の少なくとも一方に移動することをいう。
本実施の形態の場合、雄ネジ部材82を操作本体部材72よりも基端側に螺進させることにより、通孔83に嵌合しているコネクタ90とともにシース16が後方に移動する。
図7は位置調整機構の動作を示す側面図である。カテーテル10は、図6における位置調整機構およびコネクタ(破線で図示)に比べて、矢印で示すように位置調整機構80とコネクタ90を操作本体部材72から後方(同図における右方)に螺進させた状態にある。
ここで、ダイヤル部74は操作本体部材72に対して長手方向の前後移動が規制されている。従って、同図に示すように、位置調整機構80の雄ネジ部材82を操作本体部材72に対して後方に螺進させると、コネクタ90を介してシース16の近位端部分PE(図6を参照)は後方に牽引される。その結果、ダイヤル部74とシース16とは長手方向に相対移動する。
すると、図5に矢印で示すように、シース16は全体に後方に移動する。また、シース16から分岐してガイドローラー77a〜77dによってダイヤル部74に案内されている操作線細管30a,30bも、また全体にダイヤル部74に近づくこととなる。
一方、スライド操作線40a、40bの基端44はダイヤル部74の操作線固定部79に固定されている。よって、シース16の遠位端部15(図1を参照)が後退することにより、スライド操作線40a、40bはダイヤル部74への巻回張力が減少するか、または弛むこととなる。
なお、本実施の形態において、位置調整機構80によりスライド操作線40a、40bの張力が増大または減少調整されるとは、一対のスライド操作線40a、40bの何れか一本以上に関して、所定の基準状態から張力を少なくとも増大させるか、または減少させることができることをいう。
本実施の形態のカテーテル10では、位置調整機構80を操作本体部材72に対して螺進させることによりスライド操作線40a、40bの張力を増減調整する方式であるため、ダイヤル部74とシース16との相対移動量の微調整が可能である。
本実施の形態のカテーテル10においては、ダイヤル部74に基端44が固定されたスライド操作線40a、40bに対して、張力を増大させることも可能である。カテーテル10は、図6における位置調整機構およびコネクタ(図示せず)に比べて、矢印で示すように位置調整機構80とコネクタ90を操作本体部材72から前方(同図における左方)に螺進させた状態にある。
位置調整機構80の雄ネジ部材82を操作本体部材72に対して前方に螺進させると、雄ネジ部材82に嵌合固定されたコネクタ90は雄ネジ部材82とともに前進する。すると、コネクタ90に対して近位端部分PE(図6を参照)が固定されたシース16と、シース16より分岐した操作線細管30(a,b)は、全体にカテーテル10の先端側に向かって前進する。
一方、スライド操作線40aはダイヤル部74の操作線固定部79に対して基端44が固定されているため、シース16の遠位端部15(図1を参照)が前進することで、スライド操作線40a、40bはダイヤル部74への巻回張力が生じるか、または当該張力が増大することとなる。
以上より、本実施の形態のカテーテル10においては、位置調整機構80の操作によってスライド操作線40a、40bの張力が増大および減少調整される。このため、弛みおよび張力のない状態にスライド操作線40a、40bを調節することが可能となり、シース16の屈曲操作時の「遊び」が抑制され、またシース16の不測の屈曲の発生が抑えられる。
位置調整機構80のストッパー部84は雄ネジ部材82のネジ溝86に螺合されており、雄ネジ部材82とともに雌ネジ部81(図6を参照)に対して螺進する。ここで、雄ネジ部材82を操作本体部材72に対して前進させてスライド操作線40a、40bの張力を増大させる場合、所定以上の前進長さで雄ネジ部材82を螺進させることでストッパー部84が操作本体部材72の基端部分に当接する。これにより、雄ネジ部材82を誤って過大に螺進させてスライド操作線40a、40bを破断させることがない。
また、シース16を体腔内に挿通する際に、操作者が誤って雄ネジ部材82を回転させた場合も、ストッパー部84によって雄ネジ部材82の前進が規制されていることにより、スライド操作線40a、40bに不測の張力が発生することがない。このため、シース16の遠位端部15(図4および図1を参照)に不測の屈曲が生じることがない。
本実施の形態のカテーテル10では、上述のように大径樹脂管20の外周にブレードではなくワイヤ51が巻回されてシース補強層50が形成されているので、その自由な屈曲が容易で細血管などにも容易に挿通することができる。
しかも、スライド操作線40(a,b)がシース補強層50の内側に位置するので、シースの自由な屈曲によりスライド操作線40(a,b)が大幅にスライド移動して操作性が阻害されることがない。
また、スライド操作線40(a,b)は大径樹脂管20の外側に位置するが、その外側に位置するのがブレードではなくシース補強層50なので、スライド操作線40(a,b)によりシースを容易に屈曲操作することができる。
さらに、本実施の形態のカテーテル10では、大径樹脂管20の外側に別体の操作線細管30(a,b)が配置されている。このため、大径樹脂管20と操作線細管30(a,b)とを各々に最適な材料で形成することができ、大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)を配置することも容易である。
<カテーテルの製造方法>
ここで、本実施の形態のカテーテル10の製造方法を図9および図10を参照して以下に簡単に説明する。本実施の形態のカテーテル10の製造方法では、大径樹脂管20と操作線細管30(a,b)とが挿通される少なくとも一つの貫通孔110が形成されている芯線支持部材100を用意する。
より具体的には、図9に示すように、大径樹脂管20が挿通される大径の貫通孔110の外周部に操作線細管30(a,b)が挿通される小径の穴部111が形成されている芯線支持部材100を用意する。
そして、図9(b)および図10に示すように、芯線120が挿通されている大径樹脂管20を操作線細管30(a,b)とともに芯線支持部材100の貫通孔110に挿通させ、芯線支持部材100の貫通孔110に挿通される大径樹脂管20と操作線細管30(a,b)とにワイヤ51を巻回してシース補強層50を形成する。
このワイヤ51は、例えば、八条のシース補強層50を形成するように、八本が放射方向から大径樹脂管20と操作線細管30(a,b)とに同時に巻回される。なお、前述のようにシース補強層50は、図1に示すように、シース16の遠位端部などでは屈曲を容易とするためにワイヤ51が間隔を介して巻回され、シース16の近位端部などでは屈曲を規制するためにワイヤ51が緊密に巻回される。
これは、シース16の遠位端部ではワイヤ51の巻回速度を低下させ、シース16の近位端部ではワイヤ51の巻回速度を向上させることなどで実現される。また、シース16の遠位端部では上述のように八本のワイヤ51を巻回し、シース16の近位端部では十六本のワイヤ51を巻回することなどでも実現される(図示せず)。
上述のようにすることで、本実施の形態のカテーテル10の大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)をシース補強層50で固定することができる。なお、上述のようにワイヤ51を巻回すると操作線細管30(a,b)は大径樹脂管20の外周面に強固に圧接される。
しかし、巻回が完了するとシース補強層50は、いわゆるスプリングバックによりワイヤ51が緩むので、操作線細管30(a,b)はスライド操作線40(a,b)の挿通に適切な状態に保持されることになる。
また、本実施の形態のカテーテル10では、コイル状のシース補強層50は、円筒状の芯線120の外周面の両側に操作線細管30(a,b)が配置されているため、楕円形状に巻回されることになる。このため、本実施の形態のカテーテル10は、図2の左右方向には柔軟に湾曲しやすく血管への追従性が良好である。
一方、図2の上下方向では左右方向に比較して柔軟性が低下することになるが、この上下方向にはスライド操作線40(a,b)の操作により能動的に屈曲されるので、血管への挿通が阻害されることはない。
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成される限りにおける種々の変形、改良等の態様も含む。例えば、上記形態では操作線細管30(a,b)が樹脂で形成されていることを例示した。
しかし、操作線細管が微細なワイヤを巻回した細管コイルで形成されていてもよい(図示せず)。このような細管コイルからなる操作線細管は、耐圧性が高いので、シース補強層50のワイヤ51を巻回するときに圧縮されにくい。さらに、スライド操作線40(a,b)との接触の面積が極端に減少するので、スライド操作線40(a,b)のスライド移動の摩擦力を低減することもできる。
また、上記形態では操作線細管30(a,b)から前方に突出したスライド操作線40(a,b)が外層60の樹脂に埋設されて大径樹脂管20の遠位端部に連結されていることを例示した。しかし、図11に例示するカテーテル130のように、操作線細管30(a,b)の先端側の少なくとも一部が細管コイル131からなってもよい。
このような細管コイル131は、極細ワイヤ132を操作線細管30(a,b)の樹脂部分と同径に巻回した構造からなり、例えば、20〜30(mm)の全長に形成される(図11では図示を簡単とするために極端に短縮して表記している)。このようなカテーテル130では、細管コイル131の部分ではシース16が容易に屈曲するので、シース16の遠位端部の屈曲性を向上させることができる。
さらに、上述のように操作線細管30(a,b)の先端側が細管コイル131からなるとともに、基端側が大径樹脂管20より硬質な硬質樹脂管からなり、シース補強層50は、図11に示すように、操作線細管30(a,b)が細管コイル131からなる位置では間隔を介して巻回されているとともに、硬質樹脂管からなる位置では緊密に巻回されていてもよい。
なお、シース補強層50は、操作線細管30(a,b)が細管コイル131からなる位置の先端から巻回されていてもよく、細管コイル131の途中から巻回されていてもよい。このようなカテーテル130では、遠位端部の屈曲性が極めて良好であり、近位端部の剛性も適切に確保することができる。
また、上述したカテーテル10,130では、操作線細管30(a,b)の先端部が外層60に埋設されている位置の外側にマーカー66が配置されていることを想定した。しかし、このマーカー66の位置より後方で操作線細管30(a,b)の先端部が外層60に埋設されていてもよい(図示せず)。
さらに、上記形態ではシース16のシース補強層50のワイヤ51を近位端部では緊密に巻回し、遠位端部では一本ずつ隙間を介して巻回することを例示した。しかし、図11に例示するカテーテル130のように、シース16の遠位端部では、四本などの所定本数ずつ緊密に配置したワイヤ51を四本分の隙間を介して巻回してシース補強層50を形成してもよい。この場合、四本などの所定本数ずつ緊密に配置したワイヤ51をリボン状に大径樹脂管20に巻回すればよいので、その生産性を向上させることができる。
また、上記形態では大径樹脂管20の内部が直接に開口していることを例示した。しかし、このような大径樹脂管20の内周面にフッ素コート(PTFE)などの内層を15μmなどの層厚で形成してもよい。
このような内層を形成するときは、前述の芯線120にコートしておけばよい。また、このような内層はポリエーテルブロックアミド共重合体のコートなどで形成してもよい(図示せず)。
さらに、上記形態では一対のスライド操作線40(a,b)を一個の回動操作部材70に連結した構造とすることで、シース16の遠位端部15を二方向に偏向させられることを例示した。
しかし、二対のスライド操作線40(a,b)を軸心方向が直行する二個の回動操作部材70に連結した構造とすることで、シース16の遠位端部15を上下左右の四方向に偏向させるようなこともできる(図示せず)。
また、上記形態では大径樹脂管20の外周面上に別体の操作線細管30(a,b)を配置することを例示した。しかし、前述の芯線支持部材100と同様な開口孔を有するダイスを使用することにより、送風により大径樹脂管と一体に操作線細管を形成してもよい(図示せず)。
さらに、上記形態では断面形状が正円の大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)が位置することを例示した。しかし、図12および図13に例示するカテーテル140,150のように、大径樹脂管141,151の少なくとも一部で外周面に凹溝142,152を形成しておき、この大径樹脂管141,151の凹溝142,152に操作線細管30(a,b)の少なくとも一部を配置してもよい。
図12に例示するカテーテル140では、大径樹脂管141の凹溝142に操作線細管30(a,b)が半分ほど配置されている。一方、図13に例示するカテーテル150では、大径樹脂管151の凹溝152に操作線細管30(a,b)の全部が配置されている。
これらのカテーテル140,150では、大径樹脂管141,151の外周面上を操作線細管30(a,b)が変位しないため、ワイヤ51の巻回作業を安定かつ高速に実行することができる。
しかも、カテーテル150では、ワイヤ51を断面形状が正円のコイル状に巻回できるので、シース補強層50の断面形状が楕円形となることによる上下左右の屈曲の異方性も解消することができる。
なお、このようなカテーテル150では、図13および図14に示すように、大径樹脂管151の略全長に凹溝152を形成しておき、この大径樹脂管151の凹溝152の全体に操作線細管30(a,b)を配置してもよい。
このようなカテーテル150を製造する場合には、図15および図16に示すように、外周面に一対の凹溝210が形成されている芯線200を用意する。その外周面にフッ素コート層などからなる大径樹脂管151を配置し、凹溝210の位置に操作線細管30(a,b)を圧入する。
このような状態で、芯線200が挿通されている大径樹脂管151を操作線細管30(a,b)とともに芯線支持部材220の円形の貫通孔221に挿通させ、芯線支持部材220の貫通孔221に挿通される大径樹脂管151と操作線細管30(a,b)とにワイヤ51を巻回してシース補強層50を形成すればよい。
また、上記形態では大径樹脂管151の外周面上に操作線細管30(a,b)のみ配置した状態でワイヤ51を巻回することを例示した。しかし、図17に示すように、大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)と多数のダミー樹脂線161とを緊密に配置しておき、これにワイヤ51を巻回してもよい。
この場合も、大径樹脂管20の外周面上を操作線細管30(a,b)が変位しない。しかも、ワイヤ51を断面形状が正円のコイル状に巻回できるので、シース補強層50の断面形状が楕円形となることによる上下左右の屈曲の異方性も解消することができる。
なお、ダミー樹脂線161を、融点が操作線細管30(a,b)より充分に低く外層60と同等な樹脂で形成しておくことにより、外層60の形成時にダミー樹脂線161を融解させて操作線細管30(a,b)を確実に固定することができる。
同様に、図18に示すように、操作線細管30(a,b)の直径と同等な板厚で断面形状が円弧状のダミー樹脂部材162を形成し、これを大径樹脂管20の外周面上で操作線細管30(a,b)の両側に配置してワイヤ51を巻回してもよい。
また、上記形態では大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)が配置されていることを例示した。しかし、図19,図20に例示するカテーテル170,180のように、大径樹脂管20の少なくとも一部で操作線細管30(a,b)がルーメンに位置してもよい。
この場合、操作線細管30(a,b)がルーメンに位置する部分ではワイヤ51が大径樹脂管20に直接に巻回されるので、そのコイル状のシース補強層50の断面形状が正円となり、シース補強層50の断面形状が楕円形となることによる上下左右の屈曲の異方性を解消することができる。
なお、図19に例示するカテーテル170では、遠位端部で大径樹脂管20の外周面上に位置する操作線細管30(a,b)の外側にワイヤ51が巻回されている。一方、図20に例示するカテーテル180では、遠位端部で大径樹脂管20の外周面上にワイヤ51が巻回されており、その外周面上に操作線細管30(a,b)が位置している。
さらに、前述のように大径樹脂管20の外周面上に操作線細管30(a,b)が配置されている構造で、その全体を外形の断面形状が正円の樹脂でコーティングして中間層とし、この中間層の外周面上にワイヤ51を巻回してコイル状のシース補強層50の断面形状を正円とすることもできる(図示せず)。
また、前述した芯線120の外周面上に操作線細管30(a,b)を直接に配置し、その全体を外形が断面形状が正円の樹脂でコーティングして大径樹脂管とし、この大径樹脂管の外周面上にワイヤ51を巻回してコイル状のシース補強層50の断面形状を正円とすることもできる(図示せず)。
さらに、前述した芯線120の外周面上に操作線細管30(a,b)を直接に配置し、その外周面上にワイヤ51を巻回してシース補強層50を形成し、このシース補強層50に樹脂を含浸させて大径樹脂管を形成してもよい(図示せず)。また、大径樹脂管20の中間部で操作線細管30(a,b)の一部ないし全部がルーメンに露出して基端部まで位置してもよい(図示せず)。
なお、当然ながら、上述した実施の形態および複数の変形例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態および変形例では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
大径のルーメンが形成されている大径樹脂管と、
前記大径樹脂管の少なくとも遠位端部で前記ルーメンの外側に位置する少なくとも一つの小径の操作線細管と、
前記操作線細管にスライド自在に挿通されていて先端部が少なくとも前記大径樹脂管の前記遠位端部に連結されているスライド操作線と、
前記大径樹脂管に前記操作線細管とともにコイル状に巻回されているワイヤからなるシース補強層と、
を有するカテーテル。
2.
前記大径樹脂管の外側に別体の前記操作線細管が配置されている1.に記載のカテーテル。
3.
前記操作線細管の先端側の少なくとも一部が細管コイルからなる2.に記載のカテーテル。
4.
前記大径樹脂管の長手方向の少なくとも一部で外周面に凹溝が形成されており、
前記大径樹脂管の前記凹溝に前記操作線細管の少なくとも一部が配置されている1.ないし3.の何れか1つに記載のカテーテル。
5.
前記大径樹脂管の長手方向の少なくとも一部で前記操作線細管の少なくとも一部が前記ルーメンに位置する1.ないし4.の何れか1つに記載のカテーテル。
6.
前記操作線細管の少なくとも一部が前記大径樹脂管より硬質な硬質樹脂管からなる1.ないし5.の何れか1つに記載のカテーテル。
7.
前記シース補強層は、前記大径樹脂管の少なくとも前記遠位端部の位置では間隔を介して巻回されているとともに少なくとも近位端部の位置では緊密に巻回されている1.ないし6.の何れか1つに記載のカテーテル。
8.
前記操作線細管の先端側の少なくとも一部が細管コイルからなるとともに基端側の少なくとも一部が硬質樹脂管からなり、
前記シース補強層は、前記操作線細管が前記細管コイルからなる位置の少なくとも一部では間隔を介して巻回されているとともに前記硬質樹脂管からなる位置の少なくとも一部では緊密に巻回されている7.に記載のカテーテル。
9.
前記大径樹脂管と前記操作線細管とが一体に形成されている1.に記載のカテーテル。
10.
1.ないし9.の何れか1つに記載のカテーテルの製造方法であって、
前記大径樹脂管と前記操作線細管とが挿通される少なくとも一つの貫通孔が形成されている芯線支持部材を用意し、
芯線が挿通されている前記大径樹脂管を前記操作線細管とともに前記芯線支持部材の前記貫通孔に挿通させ、
前記芯線支持部材の前記貫通孔に挿通される前記大径樹脂管と前記操作線細管とに前記ワイヤを巻回して前記シース補強層を形成するカテーテルの製造方法。