JP5452026B2 - カテーテル - Google Patents
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押し/引きワイヤは、ガイドワイヤを挿通する主管腔よりも小径のワイヤ管腔に貫通されており、これを引っ張ることでワイヤ管腔側にカテーテルの遠位端が屈曲し、押し込むことで逆側に屈曲するとされている。
第一に、押し/引きワイヤをカテーテルに押し込んだ場合に、カテーテルの遠位端部はワイヤ管腔と逆側には必ずしも屈曲しない。すなわち、押し/引きワイヤを引っ張った場合にはカテーテルの遠位端部がワイヤ管腔側に屈曲することが予想されるものの、押し/引きワイヤを押し込んだ場合には、遠位端部はもっぱら真っ直ぐ伸張されるに留まり、ワイヤ管腔の逆側にはほとんど屈曲しない。
第二に、上記発明では、押し/引きワイヤを牽引した場合のカテーテルの遠位端部の曲率は、牽引長さに対応して一意に決められてしまう。このため、さまざまな角度に分岐する体腔に対してカテーテルを自在に進入させることが困難である。
前記カテーテルの遠位端部に固定された複数本の操作線が前記サブルーメンにそれぞれ摺動可能に挿通され、前記操作線の近位端部を牽引することにより前記カテーテルの遠位端部が屈曲するとともに、
牽引する前記操作線の選択により、屈曲する前記遠位端部の曲率が複数通りに変化することを特徴とする。
一の操作線が前記第一領域に配置され、他の操作線が前記第二領域に配置されていてもよい。
前記第二領域が、前記第一領域を構成する前記樹脂材料よりも高剛性の異種材料を含んでもよい。
前記ブレード層における前記ワイヤの編組密度が、前記第一領域よりも前記第二領域においてより高くてもよい。
本発明のカテーテルは操作線を牽引して遠位端部を屈曲させる方式であるため、遠位端部を十分に屈曲させることができる。
はじめに、本実施形態のカテーテル10の概要について説明する。
図1、2に示すように、本実施形態のカテーテル10は、長尺の管状本体(シース16)の内部に、メインルーメン20と、メインルーメン20よりも小径でメインルーメン20の周囲に分散して配置された複数のサブルーメン30(30a、30b)とが形成されている。
カテーテル10の遠位端部15に固定された複数本の操作線40(第一操作線40aおよび第二操作線40b)は、サブルーメン30(30a、30b)にそれぞれ摺動可能に挿通され、操作線40の近位端部17を牽引することによりカテーテル10の遠位端部15が屈曲する。
そして、本実施形態のカテーテル10は、牽引する操作線40(第一操作線40aまたは第二操作線40b)の選択により、屈曲する遠位端部15の曲率C(C1、C2)が複数通りに変化する。
本実施形態のカテーテル10において、操作線40(第一操作線40aまたは第二操作線40b)の近位端41を牽引すると、カテーテル10の遠位端部15に引張力が与えられて、当該操作線40が挿通されたサブルーメン30の側に向かって遠位端部15の一部または全部が屈曲する。
一方、操作線40の近位端41をカテーテル10に対して押し込んだ場合には、当該操作線40からカテーテル10の遠位端部15に対して押込力が実質的に与えられることはない。
また、カテーテル10が屈曲するとは、カテーテル10の一部または全部が、湾曲または折れ曲がって曲がることをいう。
図3は、カテーテル10の遠位端部15の横断面図である。図3に示すように、本実施形態のカテーテル10は、2個のサブルーメン30a、30bがメインルーメン20の周囲に180度間隔で対向して配置されている。
シース16の近位端部17は軸部71に固定されている。また、ハンドル部74と軸部71とは一体に構成されている。そして、把持部75とハンドル部74とを相対的に軸回転させることで、操作線40を含むシース16全体が軸部71とともにトルク回転する。
なお、本発明においては、シース16をトルク回転させる回転操作部としてのハンドル部74と、シース16を屈曲させるための屈曲操作部としてのスライダ72とが一体に設けられている。
そして、スライダ72aとスライダ72bを軸部71に対して個別に基端側にスライドさせることにより、これに接続された第一操作線40aまたは第二操作線40bが牽引され、シース16の遠位端部15に引張力が与えられる。これにより、牽引された当該操作線40の側に遠位端部15が屈曲する。
これにより、さまざまな角度に分岐する体腔に対してカテーテル10を自在に進入させることができる。
具体的には、図1(b)、(c)に示すように、第二操作線40bを牽引した場合の遠位端部15の曲率C1に比べて、第一操作線40aをこれと等しい長さだけ牽引した場合の遠位端部15の曲率C2は、より大きくなる。
サブルーメン30はカテーテル10の長手方向(図1、2における左右方向)に沿って設けられ、少なくともカテーテル10の近位端部17が開口している。
そして、本実施形態のようにサブルーメン30をブレード層50の外部に設けることにより、シース16内を摺動する操作線40に対して、ブレード層50の内部、すなわちメインルーメン20が保護される。このため、かりに操作線40がカテーテル10の遠位端部15から外れたとしても、操作線40がメインルーメン20の周壁を開裂してしまうことがない。
カテーテル10の遠位端部15には、X線等の放射線が不透過な材料からなるリング状のマーカー66が設けられている。具体的には、マーカー66には白金などの金属材料を用いることができる。本実施形態のマーカー66は、メインルーメン20の周囲であって外層60の内部に設けられている。
内層21にフッ素系樹脂を用いることにより、カテーテル10のメインルーメン20を通じて造影剤や薬液などを患部に供給する際のデリバリー性が良好となる。
ワイヤ52の断面形状は特に限定されず、丸線でも平線でもよい。
一方、予め成形されたシース16のサブルーメン30に対して操作線40を挿通する場合など、操作線40に耐熱性が求められない場合は、上記各材料に加えて、PVDF、高密度ポリエチレン(HDPE)またはポリエステルなどを使用することもできる。
メインルーメン20の半径は200〜300μm程度、内層21の厚さは10〜30μm程度、外層60の厚さは100〜150μm程度、ブレード層50の厚さは20〜30μmとすることができる。そして、カテーテル10の軸心からサブルーメン30の中心までの半径は300〜350μm程度、サブルーメン30の内径は40〜100μmをし、操作線40の太さを30〜60μmとすることができる。そして、カテーテル10の最外径を350〜450μm程度とすることができる。
すなわち、本実施形態のカテーテル10の外径は直径1mm未満であり、腹腔動脈などの血管に挿通可能である。また、本実施形態のカテーテル10に関しては、操作線40の牽引により進行方向が自在に操作されるため、たとえば分岐する血管内においても所望の方向にカテーテル10を進入させることが可能である。
本実施形態のカテーテル10では、遠位端部15のうち、図1から3における下部側に第一領域161が形成され、上部側に第二領域162が形成されている。
また、一の操作線(第一操作線40a)は第一領域161に配置され、他の操作線(第二操作線40b)は第二領域162に配置されている。
第一領域161と第二領域162との間には、所定幅の境界領域を備えてもよい。すなわち、第一領域161を構成する第一材料と、第二領域162を構成する第二材料とは境界領域において無段階に連続的に変化してもよく、または不連続に変化してもよい。
同様に、同図(c)に示すように、第一領域161に挿通された第一操作線40aをスライダ72aによって牽引すると、第一領域161はカテーテル10の長手方向に圧縮されて図中下方に撓む。
このとき、第二操作線40bにより圧縮される第二領域162は、第一操作線40aにより圧縮される第一領域161よりも剛性が高い。このため、第二操作線40bの牽引操作による遠位端部15の曲率C1は、第一操作線40aの牽引操作による遠位端部15の曲率C2よりも小さくなる。
すなわち、図1各図に示すように、カテーテル10は長手方向に沿って先端部11、中間部12および基端部13に区画されており、基端部13よりも中間部12において可撓性が高く、さらに中間部12よりも先端部11において可撓性が高くなっている。
ここで、カテーテル10の可撓性とは、径方向に単位荷重を付与した場合の曲がりやすさをいう。
なお、シース16の可撓性は、近位端PE側から遠位端DE側にむかって不連続かつ段階的に増大してもよく、または連続的かつ無段階に増大してもよい。
本実施形態のカテーテル10において、先端部11と遠位端部15とは一致してもよく、または一方が他方を包含してもよい。本実施形態の場合、図1では、先端部11および中間部12の一部を含む長さ領域として遠位端部15を図示している。
具体的には、基端部13において、近位端PEから中間部12に向かって硬度を連続的に増大させている。すなわち、基端部13は、近位端PE近傍よりも、中間部12に隣接する遠位側において、より高い可撓性を有している。
これにより、カテーテル10を先端部11から中間部12に至るまで屈曲させる際に、基端部13の剛性に拘束されて中間部12の変形が阻害されることがない。言い換えると、本実施形態によれば、カテーテル10の近位端PE近傍における耐モーメント性を維持しつつ、中間部12を十分に屈曲変形させることができる。
一方、カテーテル10の自重に起因する曲げモーメントがもっとも負荷される基端部13の剛性を高くすることにより、カテーテル10のコシを強くして形態安定性を保つことができる。
したがって、本実施形態のカテーテル10は、操作線40の牽引量を増加させることにより、曲率Cをほぼ維持したまま、屈曲長さを増加させることができる。
同図(a)は、血管100内に挿通されたカテーテル10の遠位端部15が、血管100の分岐部101に至った状態を示している。
ここで、分岐部101より血管枝103に向かって、図中の矢印の示す方向Xにカテーテル10を進行させることを試みる。
そこで、同図(a)に示すように、カテーテル10における操作線40の1本(第一操作線40a)の近位端41を牽引して、遠位端部15を方向Xに屈曲させたとする。
しかし、第一操作線40aを牽引した場合の遠位端部15の曲率C2が血管枝103の分岐角度に適合していない場合、同図(b)に示すように、血管100のコーナー部102で遠位端部15が二つ折りに折れ曲がってしまう。かかる状態でカテーテル10を主管104に対して押し込むと、カテーテル10は主管104の延長線上にあたる方向Yに進行してしまう場合がある。
ここで、血管枝103は、主管104に対して、曲率C2よりも小さな曲率で分岐しているとする。
これにより、同図に示すように、遠位端部15を血管枝103に対して十分に深く挿通することにより、カテーテル10の全体をこれに追随して進入させることができる。そして、シース16の中間部12や基端部13は、先端部11(遠位端部15)よりもリジッドに形成されているため、かりに中間部12や基端部13がコーナー部102に接触したとしても、もはやカテーテル10が二つ折りに折れ曲がることはない。
これにより、カテーテル10の全体の進行方向を、主管104の延在方向Yから、血管枝105の延在方向Zに変えることができる。
そして、カテーテル10の遠位端部15を血管枝105に十分な深さで進入させることにより、中間部12および基端部13をこれに追随させてカテーテル10の全体を血管枝105に進入させることができる。
以上より、さまざまな分岐角度で分岐する血管枝に対して本実施形態のカテーテル10を進入させることができる。
ここで、上記本実施形態のカテーテル10において、第一操作線40aと第二操作線40bとを共に牽引する場合には、牽引量を互いに相違させてもよい。すなわち、図5各図に示したように、カテーテル10を主管104から血管枝103や105に進入させる場合など、いずれの操作線40を個別に牽引しても所望の曲率が達成されない場合には、両方の操作線40を牽引して曲率を調整してもよい。
より具体的には、第一操作線40aおよび第二操作線40bがシース16の径方向に180度対向配置されている本実施形態のカテーテル10の場合、二本の操作線40(40a、40b)をともに牽引することにより、一本の操作線40のみを牽引した場合よりも、遠位端部15の曲率が減少する。これにより、操作者は、操作部70のスライダ72a、72bの牽引量を調整することにより、遠位端部15を所望の曲率で屈曲させることができる。
図6は、本実施形態にかかる内層21およびブレード層50の遠位端部15の部分斜視図である。
そして、ブレード層50におけるワイヤ52の編組密度は、第一領域161よりも第二領域162においてより高い。
したがって、本実施形態のカテーテル10においても、第一操作線40aおよび第二操作線40bはカテーテル10の剛心よりも径方向の外方に偏心して設けられることとなる。これにより、ブレード層50の編組密度の差異による第一領域161と第二領域162との剛性差に基づいて、各操作線40を牽引した場合に付与される遠位端部15へのモーメント荷重を良好に相違させることができる。
第一層53は、内層21の外周面のうち第二領域162にあたる一部領域に対して内層21の延在方向に沿って延びる縦ワイヤ52aからなる層である。
第二層54は、第一層53の外周に、縦ワイヤ52aに交差して巻回された横ワイヤ52bからなる層である。
第三層55は、第二層54の外周に、縦ワイヤ52aおよび横ワイヤ52bに対してともに交差して巻回された横ワイヤ52cからなる層である。
横ワイヤ52bと52cは、内層21の軸方向に対する交差角度が正負反転している。
ただし、本実施形態に代えて、縦ワイヤ52aを、シース16の全長さに亘って内層21の延在方向に沿って配置してもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
<1>
長尺の管状本体の内部に、メインルーメンと、前記メインルーメンよりも小径で前記メインルーメンの周囲に分散して配置された複数のサブルーメンとが形成されたカテーテルであって、
前記カテーテルの遠位端部に固定された複数本の操作線が前記サブルーメンにそれぞれ摺動可能に挿通され、前記操作線の近位端部を牽引することにより前記カテーテルの遠位端部が屈曲するとともに、
牽引する前記操作線の選択により、屈曲する前記遠位端部の曲率が複数通りに変化することを特徴とするカテーテル。
<2>
前記複数本の操作線の近位端部をそれぞれ個別に牽引した場合の前記遠位端部の曲率が互いに相違することを特徴とする<1>に記載のカテーテル。
<3>
前記管状本体のうち少なくとも遠位端部に、第一領域と、前記第一領域よりも剛性の高い第二領域とが、前記メインルーメンの周囲に形成されていることを特徴とする<1>または<2>に記載のカテーテル。
<4>
前記第一領域および第二領域が前記サブルーメンの延在方向にそれぞれ延びて形成されているとともに、
一の操作線が前記第一領域に配置され、他の操作線が前記第二領域に配置されていることを特徴とする<3>に記載のカテーテル。
<5>
前記管状本体が樹脂材料からなるとともに、
前記第二領域が、前記第一領域を構成する前記樹脂材料よりも高剛性の異種材料を含むことを特徴とする<3>または<4>に記載のカテーテル。
<6>
前記管状本体が、前記メインルーメンの周囲にワイヤを編成してなるブレード層を含むとともに、
前記ブレード層における前記ワイヤの編組密度が、前記第一領域よりも前記第二領域においてより高いことを特徴とする<3>から<5>のいずれかに記載のカテーテル。
<7>
前記操作線がそれぞれ挿通された前記サブルーメンが、前記ブレード層の外側に形成されていることを特徴とする<6>に記載のカテーテル。
<8>
前記管状本体の可撓性が、近位端側から遠位端側にむかって増大することを特徴とする<1>から<7>のいずれかに記載のカテーテル。
<9>
前記管状本体の前記遠位端部を回転操作するための回転操作部をさらに備える<1>から<8>のいずれかに記載のカテーテル。
11 先端部
12 中間部
13 基端部
15 遠位端部
16 シース
161 第一領域
162 第二領域
17 近位端部
20 メインルーメン
21 内層
30 サブルーメン
40 操作線
41 近位端
50 ブレード層
52 ワイヤ
60 外層
64 コート層
66 マーカー
70 操作部
71 軸部
72 スライダ
74 ハンドル部
75 把持部
C,C1,C2 曲率
DE 遠位端
PE 近位端
Claims (9)
- 長尺の管状本体の内部に、メインルーメンと、前記メインルーメンよりも小径で前記メインルーメンの周囲に分散して配置された複数のサブルーメンとが形成されたカテーテルであって、
前記カテーテルの遠位端部に固定された複数本の操作線が前記サブルーメンにそれぞれ摺動可能に挿通され、前記操作線の近位端部を牽引することにより前記カテーテルの遠位端部が屈曲するとともに、
牽引する前記操作線の選択により、屈曲する前記遠位端部の曲率が複数通りに変化し、
前記管状本体のうち少なくとも前記遠位端部に、第一領域と、前記第一領域よりも剛性の高い第二領域とが、前記メインルーメンの周囲に形成されており、
前記第一領域および第二領域が前記サブルーメンの延在方向にそれぞれ延びて形成されているとともに、
一の操作線が前記第一領域に配置され、他の操作線が前記第二領域に配置されていることを特徴とするカテーテル。 - 前記複数本の操作線の近位端部をそれぞれ個別に牽引した場合の前記遠位端部の曲率が互いに相違することを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。
- 前記管状本体が樹脂材料からなるとともに、
前記第二領域が、前記第一領域を構成する前記樹脂材料よりも高剛性の異種材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のカテーテル。 - 前記管状本体が、前記メインルーメンの周囲にワイヤを編成してなるブレード層を含むとともに、
前記ブレード層における前記ワイヤの編組密度が、前記第一領域よりも前記第二領域においてより高いことを特徴とする請求項1乃至3に記載のカテーテル。 - 前記操作線がそれぞれ挿通された前記サブルーメンが、前記ブレード層の外側に形成されていることを特徴とする請求項4に記載のカテーテル。
- 前記管状本体の可撓性が、近位端側から遠位端側にむかって増大することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のカテーテル。
- 前記管状本体の前記遠位端部を回転操作するための回転操作部をさらに備える請求項1から6のいずれかに記載のカテーテル。
- 前記複数本の操作線の近位端部をそれぞれ個別に牽引した場合の前記遠位端部の屈曲方向および前記曲率が互いに相違する請求項1に記載のカテーテル。
- 前記第一領域と、前記第二領域とが、前記メインルーメンの周方向における一方側と他方側とに形成されている請求項1に記載のカテーテル。
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