JP5994335B2 - カテーテル - Google Patents
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Description
特許文献1には、カテーテル本体と、カテーテル本体の壁内に埋設されたコイルとを備えるカテーテルが開示されている。
カテーテル本体は、先端側に位置する第一領域と、この第一領域よりも基端側に位置する第二領域とを有している。第一領域においては、コイルが比較的小さいピッチで巻かれており、第二領域においては、コイルが比較的大きいピッチで巻かれている。そして、第一領域の剛性は、第二領域の剛性に比べて低くなっている。
特許文献1において、カテーテルの先端部の第一領域のコイルの巻きピッチを、基端側の第二領域のコイルの巻きピッチよりも小さくしているのは、上述した理由に基づくものであると推測できる。第一領域のコイルの巻きピッチを第二領域のコイルの巻きピッチよりも、小さくすることで第一領域のコイルの曲げ剛性が低くなっているのである。
コイルのループ間のピッチが狭くなると、ループ間に含浸される樹脂層の長さが短くなる。そのため、樹脂層がコイル軸方向に伸び縮みしにくくなる。さらには、コイルのループ間のピッチが狭くなると、単位長さあたりのループの数が増えるため、ループと樹脂層との接触箇所が多くなり、樹脂層がループ間で拘束される。
そのため、カテーテルを屈曲させた場合、ループ間の樹脂が曲がりにくく、変位量が小さくなり、結果として、カテーテルの曲げ剛性が高くなると考えられる。
特許文献1では、第一領域のコイルのピッチを、第二領域のコイルのピッチよりも小さくすることで、第一領域のコイルのループ間の樹脂層の変位が規制され、第一領域の曲げ剛性が高くなることがあった。
すなわち、本発明によれば、可撓性を有する樹脂層と、前記樹脂層に埋設されたコイルと、を備えるカテーテルであって、前記カテーテルの遠位端部側に位置する第一領域と、前記第一領域よりも近位端側に位置する第二領域と、を備え、前記コイルは前記第一領域に位置する第一コイルと、前記第二領域に位置する第二コイルとを含み、前記第一コイルおよび前記第二コイルにおいて、隣接するループ間に前記樹脂層が含浸しており、前記第一コイルは前記第二コイルよりも、前記ループ間の距離の方が大きく、単位長さの前記第一領域と単位長さの前記第二領域とを同じ曲げモーメントで湾曲させた場合に、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量を、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量よりも大きくすることにより、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層を、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層よりも撓みやすくし、前記第一領域の前記カテーテルの曲げ剛性が、前記第二領域の前記カテーテルの曲げ剛性よりも小さくなり、かつ前記第一コイルの曲げ剛性が前記第二コイルの曲げ剛性よりも大きくなるように構成されているカテーテルが提供される。
ここで、コイルのループ間とは、コイルの軸線方向に沿って隣接するワイヤ間を意味する。
従って、カテーテルの先端部側が屈曲しやすいものとなる。さらには、第二領域の曲げ剛性は第一領域よりも高くなっているので、カテーテルを体腔内に挿入する際に、カテーテルを押し込みやすくすることができる。
以上により、本発明では操作性に優れたカテーテルを提供することができる。
(第一実施形態)
図1〜図6を参照して、本実施形態について説明する。
〔構成例〕
はじめに、図1〜図3を参照して、本実施形態の医療機器であるカテーテル100の概要について説明する。
図1は、カテーテル100の先端部(遠位端部)の長手方向に沿った断面図であり、図2は、図1のII−II方向の断面図である。図3は、カテーテル100の長手方向に沿った断面図であり、シース、コイル以外の部材についての図示は省略したものである。
カテーテル100は、カテーテルの遠位端部側に位置する第一領域100Aと、前記第一領域よりも近位端側に位置する第二領域100Bと、を備える。
前記コイル層30は第一領域100Aに位置する第一コイル31と、第二領域100Bに位置する第二コイル32とを含む。第一コイル31および第二コイル32において、隣接するループ間に前記外層12が含浸している。
第一コイル31は第二コイル32よりも、ループ間の距離の方が大きく、第一コイル31の前記ループ間に含浸した前記樹脂層が、前記第二コイル32の前記ループ間に含浸した前記樹脂層よりも撓みやすいことにより、第一領域100Aのカテーテルの曲げ剛性が、第二領域100Bのカテーテルの曲げ剛性よりも小さくなる。
カテーテル100は、シース10、コイル層30、操作線70、コート層50、操作部60(図6参照)、中空管82、マーカ40を備える。
なお、以下、シース10とカテーテル100の先端は遠位端DEとよぶが、シース10の後端は近位端PEとよび、カテーテル100の後端は近位端CEとよぶ。
メインルーメン20は、カテーテル100の長手方向と直交する断面形状が円形形状となっている。
外層12には熱可塑性ポリマーが広く用いられる。一例として、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)のほか、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)、ナイロンエラストマー、ポリウレタン(PU)、エチレン−酢酸ビニル樹脂(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)またはポリプロピレン(PP)などを用いることができる。なお、外層12の構成については、詳しくは後述する。
操作線70は、1本の線で構成されていてもよいが、複数本の細線を撚りあわせて構成された撚り線であることが好ましい。
中空管82は、サブルーメン80を区画するものである。サブルーメン80を区画する中空管82はカテーテル100の長手方向に沿って設けられ、図示はしないが、シース10の近位端PE側が開口している。また、中空管82のシース10の遠位端側は、マーカ40により閉鎖されている。
本実施形態では、図2に示すように、中空管82は、複数設けられている。具体的には、メインルーメン20を取り囲むように、同一の円周上に複数の中空管82が配置されている。本実施形態では、4つの中空管82が等間隔で配置されている。そして、メインルーメン20の中心を挟んで対向する一対の中空管82内部に操作線70が配置されている。また、メインルーメン20の中心を挟んで対向する他の一対の中空管82内部には、操作線70は配置されていない。
なお、中空管82やサブルーメン80の個数は、4つに限られるものではなく、必要に応じて適宜選択することができる。
中空管82は、外層12とは異なる材料で構成されている。このようにすることで、中空管82を、外層12よりも曲げ剛性や、引張り弾性率が高い材料で構成することができる。たとえば、中空管82を構成する材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等の材料が挙げられる。これらの材料のいずれか1種以上を主成分とすることが好ましい。これらの材料は、操作線の摺動性をよくでき、耐熱性も高い。
このような中空管82を使用することで、カテーテル100のねじり剛性を高め、シース10をその長手方向を回転軸として、回転させた際に、シース10が局所的にねじれてしまうことを防止できる。
ここでカテーテル100は、図3にも示すように、カテーテル100の近位端部に位置する第一領域100Aと、この第一領域100Aよりも基端側に位置する第二領域100Bとを有している。図3は、カテーテル100の長手方向に沿った断面図であり、コイル層30と、内層11、12との関係を示す図である。他の構成については図示を略している。
操作線70を操作した際に、第一領域100Aは、第二領域100Bよりも、大きい曲率で湾曲する。たとえば、第一領域100Aは、カテーテル100の遠位端から30mmまでの領域である。第二領域100Bは、第一領域100Aよりも近位端側であればよく、第一領域100Aと、第二領域100Bとの間に他の領域があってもよい。ただし、本実施形態では、前述したように、第一領域100Aと第二領域100Bとは隣接している。
コイル層30は、メインルーメン20を補強するためのものであり、メインルーメン20の長手方向に沿って配置されている。具体的には、コイル層30は内層11を取り囲むとともに、外層12に内包されて、シース10中に埋め込まれている。コイル層30の各ループ間には、外層12を構成する樹脂材料が含浸されている。
また、図示しないが、第二領域100Bの基端側(近位端側)には、第三領域があり、第三領域にはコイル層30を構成する他のコイルが配置されている。この第三領域に配置された他のコイルは多条コイルであることが好ましい。第三領域に多条コイルを使用することで、カテーテル100を周方向に回転させる際のトルクの伝達性を高めることができる。
コイル31は、コイル層30の最先端(最遠位端)に配置されるコイルである。
コイル31は、ピッチ巻きされたコイルであり、そのループ間の距離(コイル軸線に沿った距離)が、カテーテル100の遠位端側に向かって徐々に大きくなるように構成されている。換言すると、コイル31の巻きピッチが、カテーテル100の遠位端側に向かって徐々に大きくなっている。なお、コイルの巻きピッチとは、隣接するループのワイヤの幅の中心間の距離をいう。
本実施形態では、コイル31のコイル軸線方向のループ間の距離は、カテーテル100の遠位端側に向かって2段階以上の複数段階で変化している。本実施形態では、コイル31は、遠位端側から順に並んだ領域31A〜領域31Cを有している。カテーテル100の遠位端側に最も近い領域31Aにおけるループ間距離laは、他の領域31B,31Cにおけるループ間距離lb、lcよりも大きくなっている。そして、領域31Bにおけるコイル31のループ間距離lbは、領域31Cにおけるコイル31のループ間距離lcよりも大きくなっている。
領域31A内ではコイル31のループ間距離laは等しい。同様に、領域31B内ではコイル31のループ間距離lbは等しい。さらに、領域31C内では、コイル31のループ間距離lcは等しい。
たとえば、領域31B内におけるコイルの巻きピッチPbは、領域31Aにおけるコイルの巻きピッチPaの1/2〜2/3であり、領域31Cにおけるコイルの巻きピッチPcは、領域31Bにおけるコイルの巻きピッチPbの2/3〜4/5とすることができる。
さらに、コイル31の軸方向に沿った領域31Aの長さは、各他の領域31B,31Cよりも長く、コイル31の軸方向に沿った長さの1/2以上が領域31Aとなっている。
なお、本実施形態では、コイル31はループ間の間隔が段階的に変化するものとしたが、これに限らず、たとえば、ループ間の距離が連続的に変化する構成としてもよい。たとえば、領域31B,31Cにおいて、連続的にループ間の距離が変化してもよい。
このコイル32は、ピッチ巻きのコイルである。本実施形態では、コイル32は、その全長にわたって隣接するループ間の距離(コイル軸線方向の距離)l2が等しい。そして、コイル32において隣接するすべてのループ間の距離は、コイル31の各領域31A〜31Cのすべての領域におけるループ間の距離よりも小さい。なかでも、コイル32のすべてのループ間の距離がコイル31のすべてのループ間の距離よりも小さいことが好ましい。すなわち、l2よりも、la、lb、lcは小さいことが好ましい。
なお、コイル32はすべてのループ間距離が一定であるとしたが、これに限らず、ループ間距離が異なる領域を有していてもよい。ただし、この場合にも、コイル32のすべてのループ間距離が、コイル31のループ間距離よりも小さいことが好ましい。
ここで、コイル31,32は同じ材料で構成されていてもよく、また、異なる材料で構成されていてもよい。さらには、コイル31,32の径は同じであっても、異なっていてもよい。
第一樹脂層121を構成する樹脂材料の弾性率は、第二樹脂層122を構成する樹脂材料の弾性率よりも低くなっている。
たとえば、第一樹脂層121の主成分となる樹脂と、第二樹脂層122の主成分となる樹脂とをソフトセグメント、ハードセグメントの比率が異なる同種のエラストマーで構成することで、第一樹脂層121の弾性率と第二樹脂層122の弾性率とが異なるものとすることができる。
また、第一樹脂層121の主成分となる樹脂と、第二樹脂層122の主成分となる樹脂とを異なる樹脂としてもよい。
換言すると、第一樹脂層121の一部は、コイル31の領域31A、31Bの隣接する各ループ間を埋めるように、螺旋状となっている。
また、第一樹脂層121は、領域31Cの一部も被覆している。
第二樹脂層122は、コイル32を被覆するとともに、コイル31の領域31Cの他の一部を被覆している。そして、第二樹脂層122の一部は、コイル32の隣接する各ループ間に含浸している。さらに、第二樹脂層122は、コイル31の領域31Cの隣接するループ間にも含浸している。換言すると、第二樹脂層122の一部は、コイル31の領域31C、コイル32の隣接する各ループ間を埋めるように、螺旋状となっている。
ここで、第一樹脂層121と、第二樹脂層122との境界線は、コイル31とコイル32との境界線よりもカテーテル100の遠位端部側にずれている。このようにすることで、カテーテル100の剛性の不連続性を緩和することが可能となる。
なお、第一樹脂層121と、第二樹脂層122との境界線は、コイル31とコイル32との境界線よりもカテーテル100の近位端側にずれていてもよい。たとえば、第一樹脂層121が、コイル32のコイル31側の一部を埋め込んでいてもよい。
一定の曲げモーメントを負荷して、第一領域100Aを曲げ変形させる際に、樹脂層(外層12)を挟む一対のループから樹脂層が圧縮あるいは引っ張りの力を受ける。隣接するループ間の距離が長い場合には、ループ間に含浸した樹脂層のコイル軸方向の長さが長くなり、コイル軸方向に伸び縮みしやすくなる。すなわち、ループ間に含浸した樹脂層のコイル軸方向の変位量が大きくなる。これに加え、ループ間に含浸した樹脂層が自由に変形できるので、コイル31の変形を阻害しにくくなる。
一方で、一定の曲げモーメントを負荷して、第二領域100Bを曲げ変形させる際にも、樹脂層を挟む一対のループから樹脂層(外層12)が圧縮あるいは引っ張りの力を受ける。隣接するループ間の距離が短い場合には、ループ間に含浸した樹脂層のコイル軸方向の長さが短くなり、樹脂層がコイル軸方向に伸び縮みしにくくなる。すなわち、ループ間に含浸した樹脂層のコイル軸方向の変位量が少なくなる。これに加え、ループ間に含浸した樹脂層が自由に変形しにくくなるので、コイル32の変形を阻害しやすくなる。
以上により、第一領域100Aの曲げ剛性が、第二領域100Bの曲げ剛性よりも小さくなると考えられる。
第一領域100Aにおいては、隣接するループ間の距離(コイル軸方向の距離)が長いため、単位長さの第一領域100Aにおいて、ループ数が少なくなる。従って、ループと樹脂層(外層12)との接触面積が少なくなり、ループ間の樹脂層がループにより拘束されにくくなる。これにより、ループ間の樹脂層が自由に変形することができる。
第二領域100Bにおいては、隣接するループ間の距離(コイル軸方向の距離)が短いため、単位長さの第二領域100Bにおいて、ループ数が多くなる。従って、ループと樹脂層(外層12)との接触面積が多くなり、ループ間の樹脂層がループにより拘束されやすくなる。これにより、ループ間の樹脂層が自由に変形しにくくなる。
このような理由によっても、第一領域100Aの曲げ剛性が、第二領域100Bの曲げ剛性よりも小さくなると考えられる。
図4(a)に第二領域100Bにおけるコイル32と樹脂層122とを示す側面図を示し、図4(b)に第一領域100Aにコイル31と樹脂層121とを示す側面図を示す。
図4(a)、(b)はいずれもカテーテル側面からの平面図を模式的に示した図である。
図4に示すように、単位長さの第一領域100Aと、単位長さの第二領域100Bとを比較した場合、単位長さの第一領域100Aにおける樹脂層の量は、単位長さの第二領域100Bにおける樹脂層の量よりも多くなる。隣接するループ間の距離が長い第一領域100Aにおいては、単位長さの第一領域100Aにおけるループ数が少なくなり、樹脂層の量が多くなる。一方で、隣接するループ間の距離が短い第二領域100Bにおいては、単位長さの第二領域100Bにおけるループ数が多くなり、樹脂層の量が少なくなる。
第一領域100Aにおける巻き線のピッチ(隣接するループの幅(ワイヤの幅)の中心間の距離)が第二領域100Bにおける巻き線のピッチのn倍であったとする(nは1を超える)。
第二領域100Bの隣接するループ間の樹脂層の長さは、
P−dw(P:巻き線ピッチ、dw:コイル軸方向のワイヤ幅)
で示され、
第一領域100Aの隣接するループ間の樹脂層の長さは、
n×P−dw(P:巻き線ピッチ、dw:ワイヤ径)
で示される。
n×P−dw=n(P−dw)+(n−1)dwと変形できる。すなわち、第一領域100Aの隣接するループ間の樹脂層の長さは、第二領域100Bの隣接するループ間の樹脂層の長さを単にn倍したものではなく、n倍した長さよりも、(n−1)dwの分長くなっているのである。単位長さあたりの第一領域100Aと、単位長さあたりの第二領域100Bとを比較した場合であっても、(n−1)dwの分だけ、第一領域100Aの隣接するループ間の樹脂層の長さが長く、その分、第一領域100Aは、変形しやすくなっているといえる。
本実施形態では、コイル31の曲げ剛性は、コイル32の曲げ剛性よりも大きいにもかかわらず、ループ間の樹脂層の変形のしやすさの影響により、第一領域100Aの曲げ剛性が、第二領域100Bの曲げ剛性よりも小さくなっている。このことを以下のように示す。
第二領域100Bの曲げ剛性E2=コイル32の曲げ剛性Eコイル32+コイル32を除いた第二領域100Bの曲げ剛性Eその他2
とする。
Eその他1には、コイルを除いた種々の部材の曲げ剛性が含まれるが、前述したループ間の樹脂層の変位のしやすさが、曲げ剛性として反映されている。Eその他2についても同様である。
そして、Eコイル31よりも、Eコイル32の方が大きいにもかかわらず、E1がE2よりも、小さくなることを考慮すると、
|Eコイル31−Eコイル32|<|Eその他1−Eその他2|
となる。すなわち、第一領域100Aおよび第二領域100Bの曲げ剛性に対しては、コイル31,32ではなく、コイル以外の他の部材の曲げ剛性が支配的に影響を及ぼしていることがわかる。
なお、本実施形態では、Eコイル31−Eコイル32は、正であり、Eその他1−Eその他2が負であるが、Eコイル31−Eコイル32が負であり、Eその他1−Eその他2が負であってもよい。
たとえば、カテーテル100から、第一領域100Aを切断し、第一領域100Aの長手方向が水平となるように第一領域100Aの一方の端部を固定する。
そして、第一領域100Aの他方の端部に一定の荷重をかけてそのたわみ量を計測する。
カテーテル100から第二領域100Bも切断し、同様の方法で、たわみ量を計測する。たわみ量の大きい領域が曲げ剛性が小さい領域となる。
コイルに含浸された樹脂層は、螺旋状となっている(図5(a)参照)。したがってループ間の樹脂層は螺旋の一部を形成するような形状となっている。図5(b)に示すように、ループ間の樹脂層を切り出し、この樹脂層を円柱状に置換する。そして、単位長さの第一領域あるいは第二領域に一定の曲げモーメントを負荷する前の円柱のコイル軸方向の長さと、一定の曲げモーメントを負荷した後の前記円柱の湾曲の外側領域(アウトコース側)の長さとを算出し、変位量を算出することで、ループ間の樹脂層の変位量を把握することができる。
図6に示すように、カテーテル100は、操作部60を備える。操作部60は、カテーテル100の近位端部17に設けられている。また、遠位端部15と近位端部17との間を中間部16と呼ぶ。
図1に示すように、マーカ40が、シース10の遠位端DEに設けられている。このマーカ40は、X線等の放射線が不透過な材料からなるリング状の部材である。具体的には、マーカ40には白金などの金属材料を用いることができる。本実施形態のマーカ40は、メインルーメン20の周囲であって外層12の内部に設けられている。
次に、本実施形態のカテーテル100の動作例について、図6を参照して、説明する。
なお、以下の説明においてカテーテル100の遠位端部15は、第一領域100Aおよび一部の第二領域100Bを含んだ領域である。
まず、本実施形態のカテーテル100において、操作線70(第一操作線70aまたは第二操作線70b)の近位端を牽引すると、カテーテル100の遠位端部15、特に第一領域100Aに引張力が与えられて、当該操作線70(第一操作線70aまたは第二操作線70b)が挿通されたサブルーメン80(サブルーメン80aまたはサブルーメン80b)の側に向かって遠位端部15が屈曲する。一方、操作線70の近位端をカテーテル100に対して押し込んだ場合には、当該操作線70からカテーテル100の遠位端部15に対して押込力が実質的に与えられることはない。
一方で、図6(c)、(e)のように、遠位端部15は大きな曲率で屈曲する場合、第一領域100Aおよび第二領域100Bのいずれもが湾曲することとなるが、第一領域100Aが大きく湾曲し、第二領域100Bは、第一領域100A側の端部が第一領域100Aよりも、小さく湾曲する。
次に、カテーテル100の製造方法について説明する。
はじめに、コイル31,32を用意する。コイル31は、たとえば、次のようにして製造できる。一定の巻きピッチ(領域31Cの巻きピッチ)で巻いたコイルを用意する。このコイルの領域31Cと領域31Bとの境界となる部分を固定し、コイルの一方の端部をコイルの軸線方向に引っ張る。これにより、コイルの巻きピッチが大きくなった領域、すなわち、領域31Bの巻きピッチとなる部分が形成される。次に、領域31Bと領域31Aとの境界となる部分を固定し、コイルの一方の端部をコイルの軸線方向に引っ張る。これにより、コイルの巻きピッチがさらに大きくなった領域、すなわち、領域31Aが形成される。
このようにコイル31を製造することで、各領域間を溶融接合する接合部のないコイル31とすることができる。
一方で、コイル32を用意しておき、コイル31の領域31C側の端部と、コイル32のコイル31側となる端部とを溶融接合する。これにより、コイル層30が形成されることとなる。
また、ワイヤを巻き芯に巻回する際に、巻きピッチを変えながら巻回することで、一連のコイル層30を形成してもよい。この場合にも、溶融接合した接合部を有しないコイル層とすることができる。
その後、内層11の周囲にコイル層30を設ける。
さらに、外層12のうち、第一樹脂層121と第二樹脂層122とを別々に用意する。
第一樹脂層121、第二樹脂層122は、それぞれ押し出し成形により成形できる。
第一樹脂層121、第二樹脂層122に中空管82を挿入する孔が形成されるようにガス等の流体を吐出しながら押出成形する。
中空管82も中空管を構成する樹脂を含む材料を押出成形することによって作成する。長手方向に沿う長尺な中空部が形成されるように、中空管82の材料に対してガス等の流体を吐出しながら押出成形する。
次に、第一樹脂層121、第二樹脂層122の周囲に、熱収縮チューブを被せる。加熱により、熱収縮チューブを収縮させて、第一樹脂層121、第二樹脂層122、コイル層30、内層11、中空管82を内層11の径方向に向かって外側から加圧する。また、前記加熱により、第一樹脂層121、第二樹脂層122を溶融させ、第一樹脂層121、第二樹脂層122を溶融接合する。なお、加熱温度は、第一樹脂層121、第二樹脂層122の溶融温度よりも高く、内層11、中空管82の溶融温度よりも低い。この加熱により、外層12と内層11とが溶着により接合する。このとき、第一樹脂層121、第二樹脂層122を構成する材料が、コイル31、コイル32を内包し、第一樹脂層121、第二樹脂層122にコイル層30が含浸されることとなる。
次に、熱収縮チューブに切り込みを入れ、該熱収縮チューブを引き裂くことによって、熱収縮チューブを外層12から取り除く。
内層11の周囲にコイル層30を被せた状態で、このコイル層30の周囲に第二樹脂層122をかぶせる。このとき、コイル層30の先端部(遠位端部)は、第二樹脂層122には被覆されず、露出した状態となる。そして、上述した熱収縮チューブによる加圧、さらには加熱を実施する。
その後、第一樹脂層121をコイル層30の先端部の周囲にかぶせ、上述した熱収縮チューブによる加圧、さらには加熱を再度、実施する。
その後、マーカ40に対する操作線70の先端部の固定と、外層12の先端部の周囲に対するマーカ40のかしめ固定と、を行う。
次に、別途作成した操作部60に対し、操作線70の基端部を連結する。
次に、コート層50を形成する。
以上より、カテーテル100を得ることができる。
本実施形態では、第一領域100Aのコイル31の巻きピッチは、第二領域100Bのコイル32の巻きピッチに比べて大きい。そのため、前述したように、第一領域100Aにおいては、第二領域100Bに比べて、曲げやすくなり、第一領域100Aの曲げ剛性が、第二領域100Bの曲げ剛性よりも小さくなる。したがって、カテーテル100の遠位端部側を屈曲させて、体腔内に容易に挿入させることができる。さらには、第一領域100Aよりも近位端側に位置する第二領域100Bの曲げ剛性は、第一領域100Aよりも高くなっているので、カテーテル100を体腔内に挿入する際に、カテーテル100を押し込みやすくすることができる。
これにより、第一領域100Aの曲げ剛性を、第二領域100Bの曲げ剛性に比べて小さくすることができる。
なお、第一樹脂層121と、第二樹脂層122との境界線は、コイル31とコイル32との境界線よりもカテーテル100の遠位端部側あるいは近位端部側にずれている。このようにすることで、カテーテル100の剛性の不連続性を緩和することが可能となる。
図7を参照して、本発明の第二実施形態について説明する。
前記実施形態では、コイル32は単条のコイルであったが、本実施形態では、コイル32に代えて多条のコイル42を使用する。他の点は前記実施形態と同様である。
コイル42は、ピッチ巻きとなっており、隣接するループ間の距離は等しい。図7に示すように、多条のコイル42において、隣接するループ間の距離(距離l)とは、隣接する各条(隣接する異なるワイヤ)間の距離である。
コイル42の隣接するループ間の距離lは、コイル31の隣接するループ間の距離(la〜lc)よりも小さく、コイル42の隣接するループ間には外層12の第二樹脂層122が含浸されている。
なお、コイル42のワイヤのピッチ角は、コイル31の各領域31A,31Bのワイヤのピッチ角よりも大きくてもよく、小さくてもよい。ただし、第二領域100Bの曲げ剛性を、第一領域100Aの曲げ剛性よりも高いものとするという観点からは、コイル42のワイヤのピッチ角は、コイル31の各領域31A,31B、31Cのワイヤのピッチ角よりも大きいことが好ましい。
さらには、本実施形態では、第二領域100Bに配置されたコイル42は多条コイルであるため、コイル42により第二領域100Bの曲げ剛性を高めることができる。
さらに、本実施形態では、第二領域100Bに配置されたコイル42を多条コイルとし、第一領域100Aに配置されたコイル31を単条のコイルとしている。これにより、操作線を牽引した際に、第二領域100Bをほとんど湾曲させずに、第一領域100Aを大きな曲率で湾曲させることができる。これにより、幅の狭い分岐血管等の体腔内に、カテーテル100を挿入しやすくすることができる。
また、本実施形態においては、第二領域100Bに配置されたコイル42は、多条コイルであるため、カテーテル100をその周方向に回転させた際の、回転トルクの伝達性が良好である。
たとえば、前記第二実施形態では、コイル31を単条のコイルとしていたが、これに限られず、多条のコイルとしてもよい。この場合においても、コイル31の条数は、コイル42よりも少ないことが好ましい。
さらに、前記各実施形態では、カテーテル100は、操作線70を有していたが、これに限らず、操作線はなくてもよい。たとえば、サブルーメン80内にガイドワイヤを挿入し、体腔内にカテーテルを進入させてもよい。
また、カテーテル100は、サブルーメン80を有していたが、サブルーメン80がなくてもよい。メインルーメン20内にガイドワイヤを挿入して、ガイドワイヤにカテーテル100を沿わせて、体腔内に挿入させてもよい。
以下、参考形態の例を付記する。
1.可撓性を有する樹脂層と、前記樹脂層に埋設されたコイルと、を備えるカテーテルであって、
前記カテーテルの遠位端部側に位置する第一領域と、前記第一領域よりも近位端側に位置する第二領域と、を備え、
前記コイルは前記第一領域に位置する第一コイルと、前記第二領域に位置する第二コイルとを含み、前記第一コイルおよび前記第二コイルにおいて、隣接するループ間に前記樹脂層が含浸しており、
前記第一コイルは前記第二コイルよりも、前記ループ間の距離の方が大きく、
前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層が、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層よりも撓みやすいことにより、
前記第一領域の前記カテーテルの曲げ剛性が、前記第二領域の前記カテーテルの曲げ剛性よりも小さくなるように構成されているカテーテル。
2.1.に記載のカテーテルにおいて、
単位長さの前記第一領域と単位長さの前記第二領域とを同じ曲げモーメントで湾曲させた場合に、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量が、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量よりも大きくなることにより、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層が、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層よりも撓みやすくなり、
前記第一領域の前記カテーテルの曲げ剛性が、前記第二領域の前記カテーテルの曲げ剛性よりも小さくなるように構成されているカテーテル。
3.1.または2.に記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルの曲げ剛性が前記第二コイルの曲げ剛性よりも大きいカテーテル。
4.1.乃至3.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルの前記ループ間の距離が遠位端側に向かって大きくなっているカテーテル。
5.1.乃至4.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一領域および前記第二領域は互いに隣接する領域であり、
前記第一コイルの端部と、前記第二コイルの端部とが互いに接合されて、連続した前記コイルを構成しているカテーテル。
6.1.乃至5.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第二コイルが、複数本のワイヤを巻回した多条コイルであり、
前記第一コイルの条数は、前記第二コイルの条数よりも少ないカテーテル。
7.1.乃至6.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルの前記ループ間に含浸された前記樹脂層の樹脂材料の弾性率は、前記第二コイルの前記ループ間に含浸された前記樹脂層の樹脂材料の弾性率よりも低いカテーテル。
8.7.に記載のカテーテルにおいて、
前記第一領域および前記第二領域は互いに隣接する領域であり、
前記樹脂層は、前記第一コイルの前記ループ間に含浸するとともに、前記第一コイルを被覆する第一樹脂層と、
前記第二コイルの前記ループ間に含浸するとともに、前記第二コイルを被覆する第二樹脂層とを含み、
前記第一コイルと前記第二コイルとの境界線よりも、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層との境界線が当該カテーテルの遠位端側あるいは近位端側に位置しているカテーテル。
9.1.乃至8.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記樹脂層は、内部にメインルーメンが形成された管状本体を構成し、
前記コイルは、前記メインルーメンを取り囲むように配置され、
前記メインルーメンの外周側にサブルーメンが形成され、
前記サブルーメンに挿入された操作線を有し、
前記操作線を牽引することで、前記第一領域の曲率が前記第二領域の曲率よりも大きくなるように、前記第一領域が屈曲するカテーテル。
10.1.乃至9.のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルのすべてのループ間の距離が、前記第二コイルのすべてのループ間の距離よりも大きいカテーテル。
11 内層
12 外層
15 遠位端部
16 中間部
17 近位端部
20 メインルーメン
30 コイル層
31 コイル
31A 領域
31B 領域
31C 領域
32 コイル
40 マーカ
42 コイル
50 コート層
60 操作部
61 軸部
62 ハンドル部
63 把持部
64 スライダ
64a スライダ
64b スライダ
70 操作線
70a 操作線
70b 第二操作線
71 先端部
71a 先端部
71b 先端部
80 サブルーメン
80a サブルーメン
80b サブルーメン
82 中空管
82a 中空管
82b 中空管
100 カテーテル
100A 第一領域
100B 第二領域
121 第一樹脂層
122 第二樹脂層
CE 近位端
DE 遠位端
l 距離
l2 距離
la ループ間距離
lb ループ間距離
lc ループ間距離
Pa ピッチ
Pb ピッチ
Pc ピッチ
PE 近位端
α 角度
Claims (8)
- 可撓性を有する樹脂層と、前記樹脂層に埋設されたコイルと、を備えるカテーテルであって、
前記カテーテルの遠位端部側に位置する第一領域と、前記第一領域よりも近位端側に位置する第二領域と、を備え、
前記コイルは前記第一領域に位置する第一コイルと、前記第二領域に位置する第二コイルとを含み、前記第一コイルおよび前記第二コイルにおいて、隣接するループ間に前記樹脂層が含浸しており、
前記第一コイルは前記第二コイルよりも、前記ループ間の距離の方が大きく、
単位長さの前記第一領域と単位長さの前記第二領域とを同じ曲げモーメントで湾曲させた場合に、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量を、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層の変位量よりも大きくすることにより、前記第一コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層を、前記第二コイルの前記ループ間に含浸した前記樹脂層よりも撓みやすくし、
前記第一領域の前記カテーテルの曲げ剛性が、前記第二領域の前記カテーテルの曲げ剛性よりも小さくなり、かつ
前記第一コイルの曲げ剛性が前記第二コイルの曲げ剛性よりも大きくなるように構成されているカテーテル。 - 請求項1に記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルの前記ループ間の距離が遠位端側に向かって大きくなっているカテーテル。 - 請求項1または2に記載のカテーテルにおいて、
前記第一領域および前記第二領域は互いに隣接する領域であり、
前記第一コイルの端部と、前記第二コイルの端部とが互いに接合されて、連続した前記コイルを構成しているカテーテル。 - 請求項1乃至3のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第二コイルが、複数本のワイヤを巻回した多条コイルであり、
前記第一コイルの条数は、前記第二コイルの条数よりも少ないカテーテル。 - 請求項1乃至4のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルの前記ループ間に含浸された前記樹脂層の樹脂材料の弾性率は、前記第二コイルの前記ループ間に含浸された前記樹脂層の樹脂材料の弾性率よりも低いカテーテル。 - 請求項5に記載のカテーテルにおいて、
前記第一領域および前記第二領域は互いに隣接する領域であり、
前記樹脂層は、前記第一コイルの前記ループ間に含浸するとともに、前記第一コイルを被覆する第一樹脂層と、
前記第二コイルの前記ループ間に含浸するとともに、前記第二コイルを被覆する第二樹脂層とを含み、
前記第一コイルと前記第二コイルとの境界線よりも、前記第一樹脂層と前記第二樹脂層との境界線が当該カテーテルの遠位端側あるいは近位端側に位置しているカテーテル。 - 請求項1乃至6のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記樹脂層は、内部にメインルーメンが形成された管状本体を構成し、
前記コイルは、前記メインルーメンを取り囲むように配置され、
前記メインルーメンの外周側にサブルーメンが形成され、
前記サブルーメンに挿入された操作線を有し、
前記操作線を牽引することで、前記第一領域の曲率が前記第二領域の曲率よりも大きくなるように、前記第一領域が屈曲するカテーテル。 - 請求項1乃至7のいずれかに記載のカテーテルにおいて、
前記第一コイルのすべてのループ間の距離が、前記第二コイルのすべてのループ間の距離よりも大きいカテーテル。
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