JP5745224B2 - スタッドレスタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、スチールコードを赤道面に関して相互に反対向きに傾斜させて配列した2枚のベルトプライよりなるベルト層を有するスタッドレスタイヤに関し、特に、簡易な構造で氷上性能を向上させることができるものに関する。
スタッドレスタイヤにおいては、氷雪走行性能を高めるため、種々の工夫がなされていり、サイプを多数本設けたり、極めて柔らかいゴムを用いたりすることによりトレッド剛性を抑えることの他、例えば、サイドウォール部を2層のゴムを用いて構成したものが提案されている。
特開2001−206022号公報
しかしながら、このような構成では、タイヤの構造や使用する材料が複雑となるため、コストアップにならざるをえないという問題があった。本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、構造や材料を複雑化させることなく、氷上性能を向上させることのできるスタッドレスタイヤを提供する目的とする。
<1>は、スチールコードを赤道面に関して相互に反対向きに傾斜させて配列した2枚のベルトプライよりなるベルト層を有するスタッドレスタイヤにおいて、
前記ベルトプライのうちタイヤ半径方向外側に配置されたベルトプライの幅を、タイヤ最大幅の60〜65%とし、タイヤ半径方向内側のベルトプライの幅を、前記タイヤ半径方向外側のベルトプライの幅より24〜34mm広くして、タイヤを所定リムに装着して所定内圧を充填して最大負荷能力に対応する荷重を負荷させた接地条件でタイヤを側面から見たときの、接地面と踏み込み側トレッド周面の接地端における接線とのなす角度を2〜6度にしてなるスタッドレスタイヤである。
<2>は、<1>において、トレッド幅の、前記タイヤ半径方向外側のベルトプライの幅に対する割合を105〜125%としてなるスタッドレスタイヤである。
<1>によれば、前記ベルトプライのうちタイヤ半径方向外側に配置されたベルトプライの幅を、タイヤ最大幅の60〜70%としたので、これによって、操縦安定性を確保しつつ、ベルト剛性を低下させることによる、踏み込み角度、すなわちタイヤを側面から見たときの、接地面と踏み込み側トレッド周面とのなす角度を小さくし、氷上走行時、タイヤが踏み込む際に接地面溝部内に取り込む水の量を制限することができ、タイヤ半径方向外側に配置されたベルトプライの幅をタイヤ最大幅の60%未満とした場合には、ベルト剛性が低くなりすぎ、操縦安定性が悪化し、一方、これを、70%を超えるものとした場合には、ベルト剛性が高くなりすぎ、水の取込量を制限する作用がなくなる。
また、<1>によれば、タイヤ半径方向内側のベルトプライの幅を、前記タイヤ半径方向外側ベルトプライの幅より24〜36mm広くしており、この差を24mm未満とした場合には、タイヤ半径方向内側のベルトプライ幅が狭くなりすぎベルト全体の剛性が低下して操縦安定性が悪化し、一方、この差を、36mmを超えるものとした場合には、タイヤ半径方向内側のベルトプライ幅が広くなりすぎベルト全体の剛性が大きすぎるため踏み込み角度が十分小さくならず、また、タイヤ半径方向内側のベルトプライの端部の、走行時のタイヤ1回転ごとの断面形状の変化に伴う動きが大きくベルトエンドセパレーションを発生させる可能性が生じてしまう。
<2>によれば、トレッド幅の、前記タイヤ半径方向外側ベルトプライの幅に対する割合を105〜115%としたので、ベルト剛性を低下させることによりタイヤ接地長を従来のものより長くしている<1>のタイヤにおいては、接地長が長い分、タイヤ接地幅を小さくして、同じ接地面積を担持させつつ、雪上面に対する楔効果を向高めることができグリップ性能を向上させることができる。この割合を105%未満とした場合にはトレッド幅が狭くなりすぎてトレッド部の剛性が低下して操縦安定性が悪化し、一方、この割合を115%を超えるものとした場合には、トレッド幅がくなりすぎて上記楔効果を得ることができなくなる。
本発明に係る実施形態のスタッドレスタイヤを、その中心軸を含む断面において示す断面図である。 タイヤの接地状態を示す模式図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 ビードコア
5 ラジアルカーカス
5a ラジアルカーカス5の本体部分
5b ラジアルカーカス5の巻返し部分
6 ビードフィラ
7 トレッドゴム
8 ベルト
10 スタッドレスタイヤ
11 第1ベルトプライ
12 第2ベルトプライ
20 ダイヤルゲージ
θ 踏み込み角度
図1は、本発明に係る実施形態のタイヤを、中心軸を通る断面において示す断面図であり、スタッドレスタイヤ10は、トレッド部1と、トレッド部1の側部に連なって半径方向内方へ延びるそれぞれのサイドウォール部2と、サイドウォール部2の内周側に配置したビード部3とを具え、それぞれのビード部3に配設したビードコア4間にトロイダルに延在させて、側部部分をビードコア4の周りで半径方向外方に巻返した少なくとも一枚のカーカスプライからなるラジアルカーカス5と、ラジアルカーカス5の本体部分5aと巻返し部分5bとの間で、ビードコア4の外周面に隣接させて配置したビードフィラ6とを設け、トレッド部1には、踏面を形成するトレッドゴム7と、ラジアルカーカス5およびトレッドゴム7の間に配設されたベルト8とを具えて構成される。
ベルト8は、赤道面に関して互いに反対に傾斜する向きに配列されたコードよりなる2層のベルトプライを半径方向内外に重ねて構成される。以降、半径方向内側のベルトプライ11を第1ベルトプライ、外側のベルトプライ12を第2ベルトプライと呼ぶこととする。
本発明は、上記のように構成されたタイヤにおいて、第2ベルトプライ12の幅2Wが、タイヤの最大幅MWの60〜70%であることを特徴とする。第2ベルトプライ12の幅を70%以下とすることによって、従来に対比してベルト剛性を大きく低下させ、これによって、図2に模式的に示すように、踏み込み角度、すなわちスタッドレスタイヤ10を側面から見たときの、接地面Gと踏み込み側トレッド周面とのなす角度θを小さくし、氷上走行時、タイヤが踏み込む際に接地面溝部内に取り込む水の量を制限し、氷上性能を向上させることができる。
もし、タイヤの最大幅MWに対する第2ベルトプライ12の幅2Wの割合を、70%を越えるものとした場合には、踏み込み角度が大きくなって氷上走行時に必要な性能を確保することができず、これを60%未満とした場合には、ベルト剛性が著しく低下して、操縦安定性が悪化してしまう。
なお、タイヤ最大幅MW、ベルトプライの幅1W、2Wは、タイヤを所定リムに装着して所定内圧を充填したときの幅をいうものとする。また、ベルトプライの幅1W、2Wは、赤道面に垂線な方向に測った、一方のベルトプライ端から他方のベルトプライ端までの直線的な距離をいい、ベルトプライに沿って計測するものではない。
上記の記載において、所定内圧、所定リムとは以下によって定義されるものである。すなわち、所定内圧とは所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける所定荷重に対応する空気圧のことであり、また所定リムとは同規格に記載されている適用サイズにおける標準リム(または“Approved Rim”、“Recommended Rim”)のことである。なお、上記における所定荷重とは、上記所定の産業規格に記載されている適用サイズにおける単輪の最大荷重(最大負荷能力)のことである。
かかる産業規格については、タイヤが生産もしくは使用される地域においてそれぞれ有効な規格が定められており、これらの規格は、例えば、アメリカ合衆国では“The Tire and Rim Association Inc. Year Book”(デザインガイドを含む)により、欧州では、“The European Tire and Rim Technical Organization Standards Manual”により、日本では日本自動車タイヤ協会の“JATMA YEAR BOOK”によりそれぞれ規定されている。
ここで、第2ベルトプライ12の幅の範囲を、トレッド幅や第1ベルトプライ11の幅ではなく、タイヤ最大幅を基準にして規定したのは、タイヤ最大幅は、タイヤの幅の基本になる寸法であるからであり、タイヤのサイズが決まれば明確に決まる幅であり、第2ベルトプライ12の幅がもたらすベルト剛性の大小が前記踏み込み角度に与える影響は、他の部材との複合作用的なものではなく直接的なものであるから、このようにサイズが決まれば一義的に決まる寸法を基準としたものである。
スタッドレスタイヤ10において、好ましくは、第1ベルトプライ11の幅1Wを、第2ベルトプライ12の幅2Wより24〜36mm広くする。このことは、第2ベルトプライ12の幅2Wを、従来のタイヤより狭くしたのに対して、第1ベルトプライの幅1Wは、ほぼ従来通りとすることに相当し、このことによって、ベルト8全体の剛性を最適に維持することができる。第1ベルトプライ11の幅1Wと第2ベルトプライ12の幅2Wとの差が24mm未満とした場合には、ベルトの剛性がくなりすぎて、踏み込み角度が小さくなり、十分な氷上性能を得ることができず、一方、この差を、36mmより大きくした場合には、タイヤ半径方向内側のベルトプライ幅が広くなりすぎベルト全体の剛性が大きすぎるため踏み込み角度が十分小さくならず、また、タイヤ半径方向内側のベルトプライ端部の、タイヤ1回転における断面形状の変化に伴う動きが大きくベルトエンドセパレーションを発生させる可能性が生じてしまう。
また、トレッド幅TWに対する第2ベルトプライの幅2Wの割合を80〜95%とするのが好ましく、この割合を80%未満とした場合には、トレッド幅TWが広くなりすぎて、その面圧が低下し、雪上におけるトラクション性能が低下し、一方、前記割合を、95%を越えるものとした場合には、トレッドの幅が狭くなりすぎて、ドライ走行時の操縦安定性が低下する。
さらに、上記タイヤにおいて、トレッドゴム7の動的弾性率を3〜20MPaの範囲とするのが好ましい。氷雪上の走行を目的としない夏用タイヤにおいては、トレッドゴム7の動的弾性率は通常25〜50MPaの範囲にあるが、氷雪上の走行を目的とするスタッドレスタイヤにおいては、トレッドゴム7は、その動的弾性率を20MPa以下とすることによって変形しやすくなり、その結果、接地面積が広くなって氷上での摩擦係数を高めることができるからである。但し、この動的弾性率が3MPa未満になると柔らかくなり過ぎて操縦安定性が極端に悪化してしまう。
第2ベルトプライ幅2Wの異なる複数のタイヤを試作し、それらについて、踏み込み角度、氷上フィーリング試験、氷上ブレーキ試験、直進安定性フィーリング試験、および、操縦安定性フィーリング試験を行った。第2ベルトプライ幅2W、タイヤ最大幅MWに対する第2ベルトプライ幅2Wの割合2W/MW(%)、および、評価結果を表1に示す。
なお、試作したタイヤの共通諸元は以下の通りである。
タイヤサイズ:195/65R15
タイヤ最大幅MW:198mm
第1ベルトプライ幅1W:153mm
トレッド幅TW:153m
ベルトプライの対赤道面コード角度:24°
ベルトコード:スチール(撚り構造:1x3)
踏み込み角度は、下記のようにして測定した。すなわち、図2に示すように、接地面に沿ってダイヤルゲージ20を移動させ接地面Gからタイヤまでの距離の、タイヤ非接地部分からタイヤ接地部分までのプロファイルを得、このプロファイルを元に踏み込み角度を計算で求めた。
前記各種試験は、これらのタイヤを所定リムに装着し所定の空気圧を充填してから、実車に装着して行った。
氷上フィーリング試験は、氷板路面のテストコースにおける制動性、発進性、直進性、コーナリング性を、ドライバが総合評価し、比較例2のタイヤの評価結果を100としたときの指数にて表1に示した。
氷上ブレーキ試験は、氷板上を20km/hからフル制動したときの制動距離を計測し、比較例2のタイヤの測定結果を100としたときの指数にて表1に示した。
操縦安定性フィーリング試験は、乾燥路のテストコースを直進走行時における、コーナリング時の操舵を行ったときの応答性、安定性について、ドライバが総合評価し、比較例2のタイヤの評価結果を100としたときの指数にて表1に示した。
Figure 0005745224

Claims (2)

  1. スチールコードを赤道面に関して相互に反対向きに傾斜させて配列した2枚のベルトプライよりなるベルト層を有するスタッドレスタイヤにおいて、
    前記ベルトプライのうちタイヤ半径方向外側に配置されたベルトプライの幅を、タイヤ最大幅の60〜65%とし、タイヤ半径方向内側のベルトプライの幅を、前記タイヤ半径方向外側のベルトプライの幅より24〜34mm広くして、タイヤを所定リムに装着して所定内圧を充填して最大負荷能力に対応する荷重を負荷させた接地条件でタイヤを側面から見たときの、接地面と踏み込み側トレッド周面の接地端における接線とのなす角度を2〜6度にしてなるスタッドレスタイヤ。
  2. トレッド幅の、前記タイヤ半径方向外側のベルトプライの幅に対する割合を105〜125%としてなる請求項1に記載のスタッドレスタイヤ。
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